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ニュースレター生活困窮社会における地域づくり研究会 2号
2017.1
生活困窮者・家族の多くは、経済的な問題のみならず、複雑な生活課題を抱え、制度の隙間に陥るケースが多くみられます。第2回では、障害者支援、医療保健、保護司と3つの立場から実践報告をいただきました。
第2回研究会レポート実践報告「生活困窮社会の実像」に迫る②
「全国手話研修センターの就労支援の取り組み」~働くことを切り口に生活全体をとらえる~小出 新一委員
(社会福祉法人全国手話研修センター常務理事)
当事者とともにその人にあった働く場をつくる○全国手話研修センターは、聴覚障害の職員を中心に手話通訳事業、ホテル事業の運営、障害者福祉サービス事業等と障害当事者とともに事業を展開している。
○ホテルの清掃の仕事や農業事業は、短時間労働をつくりやすく、精神障害等の方も従事してもらいやすい。しかし、働く場の保障と賃金保障には差がある。
障害と深く結びつく貧困の実態○生活困窮者自立相談支援事業を受託し相談窓口を行っているが、生活できないという相談は多く、まず生活保護を受給し安定させるというケースもでてきている。
○相談を受けることで問題点や課題を明確にできる。しかし、その先の支援として他の関係機関とのつながりや制度が不足している。出口支援、就労体験後の雇用先の確保が大事。法人としてソーシャルファームの実践にチャレンジしているが、限界がある。
○生活困窮の原因はさまざまだが、経験的に何らかの障害があると感じることがある。周囲との関係が作れない、軽度の知的障害で仕事が続かない等が原因で困窮状態になったケースもみられる。
○50代以上の高齢の方は、就業に結びつきにくい。その方に合った仕事の求人が少なく整備が必要である。
質疑応答Q.雇用先の理解と本人が継続するような支援の事例があれば。
A.その人の力、条件で働いてもらうとことで本人の自信になり、継続につながる。その人その人に合わせた仕事がつくれるかがポイントではないか。
Q.地域の社会的な意識として、障害のある人の貧困は家族犠牲が当たり前の状況。どう考えるか。
A.障害がある家庭の生活の問題について、最近では、障害がある人の賃金が家族を支えているケースもみられる。地域では見えてこない。生活全体をどうみるかという視点が必要。
(文責:事務局)
「急性期病院の取り組みと現状」~生活の不安定が病状の悪化につながる~甲田 由美子委員
(京都民医連中央病院患者総合支援部門部⾧)
急性期病院の取り組みと現状○お金がなくても安心して医療を受けられる仕組み、無料低額診療事業を実施している。生活保護基準の189%未満の所得の方を対象として、基準を分類し、減免割合を決めている。○対象者は低所得者、要保護者、生活困難者、ホームレスなど、公的医療制度から排除されている層。年々、増加傾向。○50代男性。脳梗塞後の後遺症で、収入減。治療費の工面が難しく、定期受診を減らしたいとの申し出。主治医より、無料定額診療の申請の依頼があり、状況確認の上、自己負担0円となり治療継続ができた。○30代単身女性。助産制度を利用し二人目の出産。パートナーとは別れ、友人宅に居候。生活保護もすすめるが、借金があり住所を定められない。一人目出産、退院支援からかかわるが、生活は安定せず。緊急入院からみる高齢者の実態○予定入院と異なり、準備なく緊急に入院をするケースが高齢者には多い。入院の約半数が緊急入院。○誤嚥性肺炎、心不全が多いが、ほかにも疾患をかかえており、治療に時間がかかる。しかし、現状の医療制度では、治療期間の縛りが強制退院の促進となっている。○退院にこぎつけても、減免がない介護サービスの利用を躊躇し、環境不備で再入院となることも多い。質疑応答Q.母子の事例への対応について。A.一人目のときも保健センターとカンファレンスを実施
したが、退院後の状況は、保健センターに委ねている。○母子生活支援センターに入所をされるケースがあり、医
療、子育て、借金等のさまざまな課題がある。一番必要な人に支援が届いていない実態。関係機関が連携・協力して対応することが大切。
Q.無料低額診療の対象可否の判断は?A.所得証明と可能であれば通帳で病院が判断する。○無料低額診療は病院の判断。実施は、医療SWの配置、
支援が必要。ただし、薬代は対象外なので長期の費用負担が大きい。また広報も不十分である。
発 行:社会福祉法人 京都府社会福祉協議会生活困窮者支援事業推進チーム
事務局:京都市中京区竹屋町通烏丸東入ル清水町 3 7 5連絡先:T E L 0 7 5 - 2 5 2 - 6 2 9 3
F A X 0 7 5 - 2 5 2 - 6 3 1 1
第3回研究会のご案内日 時:平成29年3月8日(水)第1部13:45~16:45
第2部17:00~18:30場 所:京都リサーチパーク
東地区1号館サイエンスホール内 容:第1部「生活困窮社会の実像」に迫る③
~当事者の声から~第2部 参加者交流会(会費:1,000円程度)
備 考:◆参加には事前申込が必要です。◆定員(90名程度)で締め切ります。◆申込先;京都府社会福祉協議会
(075)252-6293
「立ち直りを支える地域のチカラ」中西 多嘉子委員
(保護司地域福祉権利擁護事業生活支援員)
住民の思いとともに活動をつくる~社協職員の経験から~○町社協に勤務していた25年前に住民の心配ごと、困りごととボランティアに関するアンケートを実施した。その中で、たくさんの住民同士の支え合いグループの立ち上げに関わり、今では有償ボランティアとなり発展してきている。
○自分たちの町を自分たちで支えていこうという気持ち、地域の力が大切。
地域のために自分ができることを~保護司の経験から~○40代女性。子ども2人を出産、離婚。地域とのつながりもなく、薬物に手を出し警察に逮捕された。子どもは身元引受人のところで生活。戻ってきた母親に保護観察で関わることとなった。少しずつ距離を縮め関係性を深めた。生き方、気持ちが変わるということを感じた。
○コミュニケーションを深める中で、気持ちの変化を注意し保護観察所の観察官との連携、再犯とならないように地域で支えることを意識した。
○口を閉ざしていた人が話すことができるようにすることが大事。“聞くこと”を丁寧にし、つなげていくことが大事である。
○南丹市では、保護司が45名。犯罪のないまちを目指すのは地域の力。ひとりが100回動くより、100人が1回動くことが重要。
○地域に住んでいて犯罪を起こすまでをどう防ぐかということを支える。顔の見える関係、地域での声かけや見守りが大きな力になる。
○働くところがあり、そのことが本人の自信になり更生につながっていく。退所者が就労できるような体制づくりをもっとお願いしたい。
意見交換Q.触法の人の支援で近所の力を借りるのは難しい場面が
多いが、住民との関係をどのように取り持っているのか。
A.本人も声をかけてほしくない、周囲も声をかけづらいなど現実には難しい。仕事に行くようになったらあいさつをかわすなどの時間の中で、声かけができる。関係づくりから住みよい地域をつくることが大切。
参加者の声 ~感想レポートより~
当日いただいたレポートから、感想をご紹介します。
○最低賃金や、一社での受入数の限界、個別企業の維持等、企業側にも困難があります。地域の方と企業とのつながりを深める必要性を認識しました。
○無料低額診療についての広報がまだされておらず、支援者でも知らない人が多い。勉強になった。
○地域で丁寧な人的つながりの重みと活動をされている実態の素晴らしさを知ることができた。
○セーフティネットとしての施設の役割を改めて認識することになった。
○実際の事例が多く、生活困窮の現実はさまざまでいろんなことが重なったり、人によって求めることが違うなど、他人事ではなく考えることができました。
座長 吉永 純 花園大学社会福祉学部教授副座長 志藤 修史 大谷大学文学部社会学科教授
委員 久泉昭人・宇治市役所福祉こども部生活支援課長 / 芹澤出・野菊荘施設長(社会福祉法人宏量福祉会理事長)/ 平田義・愛隣デイサービスセンター所長(社会福祉法人イエス団常務理事・民生委員) / 小出新一・全国手話研修センター所長(社会福祉法人全国手話研修センター常務理事) / 甲田由美子・京都民医連中央病院患者総合サポートセンター長 / 中西多嘉子・保護司、地域福祉権利擁護事業生活支援員 / 霜澤太・社会福祉法人綾部市社会福祉協議会生活サポートセンター主任 / 西野美穂・社会福祉法人長岡京市社会福祉協議会総合生活支援センター長/ 渡邊かおる・社会福祉法人木津川市社会福祉協議会事務局長※第2回より、新委員として、 川田雅之氏(社会福祉法人京都老人福祉協会 春日丘センター施設長)が加入されました。
研究会委員氏名・所属(平成29年1月現在,敬称略)