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Stage3.派遣労働者として働く 28 Q12 年次有給休暇 派遣元に年次有給休暇を取りたいと申し出たところ、「派遣先の許 可を得るように」と言われました。しかし派遣先は「忙しいから派遣 社員を雇っているのに、休まれたら困る」と言います。これではいつ までたっても年次有給休暇が取れません。 派遣労働者も、労働基準法に基づいた要件を満たせば年次 有給休暇を取ることができます。 年次有給休暇とは、所定の休日以外に賃金をもらいながら仕事を休むこ とができる休暇で、要件を満たしていれば、法律上、当然に生じる、労働 者の権利です(労働基準法第39条)。派遣元は、派遣労働者が年次有給休 暇を取得したことを理由として、賃金の減額その他不利益な取扱いをして はなりません(同法第136条)。 年次有給休暇が付与される要件は、次のとおりです。 【年次有給休暇が付与される要件】 ① 派遣元との間で「雇う・雇われる」という関係が6ヶ月間継続してい ること 6ヶ月に満たない短期契約であっても、契約を更新して6ヶ月以上継 続して勤務するようになった場合には、これに該当します。 さらに継続雇用が続くときには、6ヶ月を超えて継続勤務をした1年 ごとに新たな有給休暇が付与されます。 ② 全労働日(労働契約や就業規則等で労働日として定められている日) の8割以上を出勤していること 最初は入社日から6ヶ月までの全労働日、以降は1年間における全労 働日の8割以上出勤することが必要です。 労働基準法は派遣労働者にも適用されますので、これらの要件を満たす 場合には、派遣労働者も年次有給休暇を取得することができます。

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Q12 年次有給休暇 派遣元に年次有給休暇を取りたいと申し出たところ、「派遣先の許可を得るように」と言われました。しかし派遣先は「忙しいから派遣社員を雇っているのに、休まれたら困る」と言います。これではいつまでたっても年次有給休暇が取れません。

派遣労働者も、労働基準法に基づいた要件を満たせば年次有給休暇を取ることができます。

 年次有給休暇とは、所定の休日以外に賃金をもらいながら仕事を休むことができる休暇で、要件を満たしていれば、法律上、当然に生じる、労働者の権利です(労働基準法第39条)。派遣元は、派遣労働者が年次有給休暇を取得したことを理由として、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはなりません(同法第136条)。 年次有給休暇が付与される要件は、次のとおりです。

【年次有給休暇が付与される要件】① 派遣元との間で「雇う・雇われる」という関係が6ヶ月間継続していること 6ヶ月に満たない短期契約であっても、契約を更新して6ヶ月以上継続して勤務するようになった場合には、これに該当します。 さらに継続雇用が続くときには、6ヶ月を超えて継続勤務をした1年ごとに新たな有給休暇が付与されます。② 全労働日(労働契約や就業規則等で労働日として定められている日)の8割以上を出勤していること 最初は入社日から6ヶ月までの全労働日、以降は1年間における全労働日の8割以上出勤することが必要です。

 労働基準法は派遣労働者にも適用されますので、これらの要件を満たす場合には、派遣労働者も年次有給休暇を取得することができます。

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 登録型派遣労働者の場合は、労働契約が結ばれている全期間を通じて、実態として継続して勤務していると判断されれば年次有給休暇を取得することができます。

 これらの要件を満たした労働者には、派遣元は、少なくとも10日の年次有給休暇を与えなければなりません(同法第39条第1項)。同じ派遣元で働き続ける場合には、20日になるまで、勤務年数に応じて加算した年次有給休暇を与えなければなりません。 また、労働者の過半数を代表する者等と労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で年次有給休暇を取得できます(同条第4項)。 なお、週の所定労働時間が30時間未満の労働者については、所定労働日数に応じて年次有給休暇を付与しなければなりません(同条第3項)。 年次有給休暇の付与日数は次のとおりです。

 年次有給休暇の時効は、年次有給休暇の付与日から起算して2年です(労働基準法第115条)。年次有給休暇を1年以内に全部とらなかった場合、残りの休暇はその翌年に限り、取得することができます。

【年次有給休暇の付与日数】

短 時 間労働者の週 所 定労働時間

短 時 間労働者の週 所 定労働日数

1年間の所定労働日数(週以外の期間によって労働日数を定めている場合)

継続勤務期間に応じた年次有給休暇の日数

6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上

30時間以上10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

30時間未満

5日以上 217日以上

4日 169〜 216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日

3日 121〜 168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日

2日 73〜 120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日

1日 48〜 72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

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年次有給休暇は、派遣元の責任で与えます。派遣元の事業の正常な運営に支障がない限り、派遣元は派遣労働者からの年次有給休暇の請求を拒否することはできません。

 派遣労働においては、年次有給休暇は派遣元の責任において派遣労働者に与えなければなりません。 年次有給休暇を取得するには、事前に派遣元に取得希望日を申し出ることが必要ですが、利用目的によって、与えたり与えなかったりすることはできません。 派遣元は、派遣労働者が請求した時季に年次有給休暇を与えなければなりません(労働基準法第39条第5項)。

 ただし、事業の正常な運営が妨げられる場合に限って、派遣元は、年次有給休暇を他の時季に与えることができます(「時季変更権」同項但書)。

 厚生労働省の通達によると、ここでいう「事業」とは派遣元の事業であり、「派遣労働者が年次有給休暇を取ることで派遣先の事業の運営に支障が生じる場合であっても、派遣元と派遣労働者との関係においては事業の運営に支障がないこともありうるので、派遣元は代替労働者の派遣の可能性も含めて事業の正常な運営を妨げるかどうかを判断すること」と示しています(昭和61年6月6日、基発333号)。ですから、派遣元は派遣先の業務が多忙であるという理由で、派遣労働者の年次有給休暇の請求を拒否することはできません。

 また、退職時に年次有給休暇の取得を申請した場合、使用者(派遣元)は、時季変更権の行使ができない(年次有給休暇の取得を拒否できない)とされています。