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スペシャルインタビュー リン・レッドグレーブ 「見出した強さ」 2008年・春 FREE PiNK www.runforthecure.org

PiNK Spring 2008

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PiNK Spring 2008

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Page 1: PiNK Spring 2008

スペシャルインタビュー

リン・レッドグレーブ「見出した強さ」

2 0 0 8 年・春 F R E E

PiNK

2008 springVolum

e 1 / Issue 2 季

刊誌

www.runforthecure.org

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Contents30

2008年 春

BODY WISE 栄養と運動

08 リビィ・ロス財団 ヨガプログラム

12 ゴルフ 生涯にわたるゲーム

SPIRIT HOUSE 心の声を聞く

18 がん治療と調べを合わせて

22 がんを契機にキャリアが展開 がんの診断がきっかけとなった転職—4つの物語

30スペシャルインタビュー / リン・レッドグレーブ

見 出した 強 さ

08

18

3spring 2008 • PiNK

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発行人 : Vickie Paradise Green

編集 : デイビッド 梅田

監修 : 中山 比登志

    難波 清

翻訳 : 株式会社アスカコーポレーション

制作 : パラダイム

www.paradigm.co.jp

[email protected]

クリエイティブ・ディレクター : Richard Grehan

アート・ディレクター : 増子 由紀

寄稿者 : Annabel Clark; Mia James; Diana Price; Duane

Reade; Marnee M. Spierer, MD; Wakako Tanaka

校正/編集 : 古月 チヒロ、 石黒 千恵、 浜 直緒子

中山 比登志、 難波 清

発行元 : NPO法人Run for the Cure® Foundationwww.runforthecure.org

事務局長 : 伊禮 太郎

〒150 - 0047東京都渋谷区神山町18 - 6神山アンバサダー108Tel:03 - 3466 - 4798 Fax:03 - 3466 - 4799E-mail:[email protected]

免責事項:PiNKに掲載される情報は、医療提供者による個別のアドバイスに替わるものではありません。PiNKに掲載される見解はあくまでも著者の見解であり、必ずしもスポンサー、諮問委員会、発行者の見解を反映するものではありません。PiNK

に掲載される情報を、医療提供者のみが提供可能な専門的アドバイスと捉えないでください。本誌に掲載される情報が確実に正確な情報であるよう、入念な注意を払っていますが、情報の継続的な容認性に関して、もしくは、不注意に起因するか否かを問わず、あらゆるミス、脱落、不正確な点に関して、もしくは、それらに起因するいかなる結果に関しても、著者、NPO法人Run for the Cure® Foundation、およびその代理人に責任はなく、一切の法的責任を負いません。PiNKの諮問委員会は、コラムを提供し、その他編集上のサポートも行いますが、本誌に掲載される見解については一切の責任を負いません。

Women & Cancer Executive Editor: CHARLES H. WEAVER, MD / Medical Editor: JULIANA HANSEN, MD / Managing Editor: DIANA PRICE / Associate Editor: MIA JAMES / Copy Editor: ELIZABETH VON RADICS

Volume 1 / Issue 2 季刊誌

INSIDE PLEDGE 未来への約束

40 ニューバランス ジャパン インタビュー

THE WAR ROOM ニュースで見る治療の進歩と薬

46 最新ニュースを入手しよう

50 ある女性の物語

54 がんを生き抜き、豊かに暮らす

SUPPORTIVE CAREがん治療を乗り越えるための方法

65 一部の漢方薬が化学療法に伴う悪心の軽減に有効

FIND YOUR WAY 医療制度の謎を解く

68 医者に聞いてみよう

70 RESOURCES

Contents

40

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BO

DY W

ISE

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リビィ・ロス財団

ヨガプログラム

ゴルフ生涯にわたる

ゲーム

BO

DY W

ISE

栄 養 と 運 動

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リビィ・ロス財団

ヨガプログラムDiana Price

8 PiNK • spring 2008

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「ヨガには身体にとってメリットが多いんです」とタリは明言します。たとえば、ストレスの解消と管理、体力向上と可動域の拡大、循環器機能の向上、緊張、うつ、衰弱や疲労の軽減、リンパ水腫の予防、術後の回復促進、化学療法や放射線療法などの治療に耐える力がつく、治療による体重増加が最小限に止まる、ボディイメージとウェルビーイングが向上する…など挙げればキリがありません。

ロリー・ロス(Lori Ross)とマーラ・ウィルナー(Marla Willner)によって設立されたリビィ・ロス財団(Libby Ross Foundation)は、独自のサポートプログラムを通じて乳がんに苦しむ女性の生

活向上を図るべく活動しています。また、研究と早期発見による乳がん撲滅も支援。そうした活動の一環としてヨガの普及を目指しているのです。タリは、財団でヨガが女性の生活にもたらすプラス効果を伝えようと活動しています。

乳がん生還者対象のヨガクラスを開催することは、いろいろな意味で財団のミッションを果たすことでもあります。「身体を回復させるヨガのゆったりとした動きと呼吸法は、女性にとって、リラックスした状態で体力と柔軟性を身に付けるチャンスだと私たちは考えています。ヨガのクラスとリトリートはまた、乳がんの経験がある、または今まさに乳がんと闘っている女性同

士が仲良くなる機会も提供します」と、ロリー・ロスは話します。

乳がん生還者対象のリビィ・ロス財団のヨガプログラムは、心身両面をサポートするというヨガ特有のメリットを女性に提供したいとの願いで、2002年にOMヨガとの提携でスタート。ニューヨーク市内複数の会場で、3カ月コースとして始まったこのプログラムは、今では週1回のクラス、週末の長時間クラス、3日間のリトリート・コースといった豊富なプログラムを提供するほど拡大しました。通常クラスは今もニューヨーク市で、また、リトリートコースはニューヨーク州、カリフォルニア州、アラバマ州で開かれています。

ヨガ・アライアンス認定インストラクターのタリ・プリンスター(Tari Prinster)は、ヨガ歴10年の乳がん生還者。自らの体

験をもとに、乳がん生還者のための回復プログラムのひとつとしてのヨガのメリットについて語ります。「乳がん生還者は、副作

用、外見が損なわれる、手術で身体が衰弱する、繰り返し不安にさいなまれるなど、たくさんの悩みを抱えています。ヨガは、そ

んな中で不安を切り抜け、体力と柔軟性を身に付け、ウェルビーイング(身体的、精神的、および社会的に安定した状態)を

実現するための方法のひとつ。ヨガが身体に良いと言うことは知っていても、なぜ良いのか、どのように良いのか、それを理解し

ている人はほとんどいないようです。」

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3日間にわたる週末のリトリートには、通常30 ~ 40名の女性が参加。身体を回復させるゆったりしたヨガのクラスと、ホリスティックヘルス(精神、身体、環境がほどよく調和し、与えられた条件において最良のQOL(生活の質)が得られた状態)、さらに美容について学ぶワークショップが盛り込まれています。「ヨガのポーズを指導することに加えて重視しているのは、乳がん生還者が自らの体験を語り合い、親交を深めることのできるような “安心できる場所” を提供すること」であり、「参加者が精神的安寧を感じられて、がん生還者特有のニーズ、制約、そして感情面の問題に対応することができる環境を作ろうとしているのです。」と、タリは語ります。

身体と心、双方のヒーリングこそがヨガ本来の意味であり、またその組合せが

あってこそ、がん生還者にとってヨガが役にたつのです。「インストラクターとしての私の目標は、すべての参加

者がヨガの動き、呼吸法、自分の身体に精神を集中させる新しい方

法を学ぶことでヨガの楽しさを体験すること、他の生還者

と時間とコミュニティを共有すること、そし

て最後に、ヨガのリラックス

効果、身体を回復させる効果に満足してもらうことです」とタリは語ります。

ロリーは、ヨガが参加者に与える効果を日々目の当たりにしています。そして、その明らかなヒーリング効果に鼓舞され、プログラムをさらに拡大するために懸命に取り組んでいます。「プログラムの初日から、ヨガが参加者にもたらす効果を実感してきました。衝撃的な体験の後に自分自身の身体と再び向き合うことで、女性たちは心身両面で強くなるんです。女性達が自分自身のヒーリングプロセスのために参加する、そんな素晴らしい場を提供できることを光栄に思っています。そして、より多くの乳がんの患者と生還者に参加してもらえるよう、このプログラムを全米に拡大しようと固く誓っています。」と、瞳を輝かせるのでした。

ヨガ・プログラムに対するリビィ・ロス財団の真摯な姿勢は、財団が展開している募金活動をみても明らかです。 財団では、支払能力の有無を問わず、乳がん生還者全員が参加できるプログラムの実現を目標にしています。ディレクターを務めるジェイム・ ガ ー ゼ(Jaime Gazes) は、 財団に差し伸べられるさまざまな支援に対し深い感謝の意を表しています。「提携先やSwarovski North Americaなどの企業、個人の皆様からお寄せいただいた多額の寄付、そして私たちが実施する資金カンパによって、リトリートにかかる費用の大半をまかなうことができています。」

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橋のポーズ乳がん生還者を対象としたリビィ・ロス財団ヨガプログラムで、ボランティアインストラクターを務めるヨガ・アライアンス認定インストラクター、タリ・プリンスターは、自宅でもできる、ゆったりした橋のポーズを勧めています。(腋窩部リンパ節や乳房再建の手術を最近受けた人は、このポーズが自分に適切かどうか主治医に確認してください。)

あおむけに寝ころび、仙骨の下にブロックまたは固い枕を置きます。1. 膝を曲げ、脚を腰幅に開きます。2. 腕をゆっくりと頭の上にもっていき、「サボテン」のような形を作ります(腋窩部リ3. ンパ節の手術で伸ばせない場合は、誰かのサポートが必要です)。呼吸運動を行って心を落ち着かせてから、アイピローをして瞑想します。4.

このポーズの効果支えがある状態で胸が開く• 胸腺を刺激する• 身体の伸びを助長する• 下部脊椎をリラックス、回復させる効果が大きい•

リビィ・ロス財団と乳がん生還者のためのヨガプログラムに関する詳しい情報については、www.thelibbyrossfoundation.comをご覧下さい。

そう、参加者はわずかな負担(通常は交通費と宿泊費のほんの一部)でリトリートに参加することができるのです。また、その費用も、給費資格のあるがん生還者の場合は免除されます。リトリートへの参加申し込みはリビィ・ロス財団で受け付けています。(http://thelibbyrossfoundation.com/yogaworkshops.asp)。参加は先着順となり、給費志願者には特別な便宜を提供してもらえるそうです。

リビィ・ロス財団の寛容の精神は、ヨガプログラムを通じてがん生還者と関わるその献身的な姿勢。この精神こそ、女性が新しい身体技能を学び、新しい支援コミュニティに参加する機会を生み出してきました。プログラムの参加者、たとえばリトリートに参加したベッキー(Becky)の言葉が、それを何よりも物語っているでしょう。「リトリートを受けて一番良かったのは何かと言葉で説明するのはとても難しい。ただ、あの時間のすべてがとても貴重でした。とにかくスタッフと参加者に対して感動しっぱなしで、永遠に記憶に残る体験になりましたね。こんなによくしてもらったことはなかったし、これほどすばらしく勇敢で楽しい女性たちに出会ったことも無かった。ましてや乳がんの事であんなに笑ったことはなかったです。リトリートの終わりには、私は変わり者ではない、他の人と同じなんだと思ったし、病気を人に隠すのではなく人と共有できると実感できたんです。」

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ゴ ル フ生涯にわたるゲーム Diana Price

伝説の女子プロゴルファー、ジェーン・ブラロック(Jane Blalock)は現役当時、LPGA(女子プロゴルフ協会)のトーナメントで27勝を記録。今なお、現役顔負けのショットを維持しています。60歳という年齢を感じさせない驚異的なエネルギーと、ゴルフとビジネスに関する豊富な知識を発揮し、「女性のためのLPGAゴルフクリニック」を通して働く女性を支援しています。そしてジェーンのそんな活動は、アメリカ国内における乳がんのチャリティ活動全体に大きな変化をもたらしています。

LPGAレディース・ゴルフクリニックは、女性が個々

の職業人生を充実させ、自分の乳房の健康の主導権

をにぎるよう応援したいという願いのもと、乳がん撲

滅を目指す非営利団体、スーザン・G・コメン・フォー・

ザ・キュア(Susan G. Komen for the Cure)財

団を支援しています。

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レジェンドツアー世界トップクラスの女子ゴルフが真心をたずさえてあなたの街にやって来る!

マサーチューセッツ州ケンブリッジのゴルフイベントマーケティング会社、JBCゴルフ(JBC Golf)の創立者ジェーン・ブラロックは、レジェンドツアー創設者の1人であり、会長を務めています。レジェンドツアーとは、45歳以上の女性が参戦するLPGAの公式シニアツアー。ジェーンいわく、このレジェンドツアーのメンバー表は「女子ゴルフ人名録」さながら。全米各地で開かれる大会では、チャリティ活動資金が集められています。

LPGAレディースゴルフクリニックもそうであるように、ジェーンはこのレジェンドツアーに、ゴルフへの愛情と、女性に働きかける慈善運動をしたいという願いを込めています。レジェンドツアーでは、それぞれの大会にスポンサーが付きます。各スポンサーは、大会による支援を希望する開催地コミュニティのチャリティの中からひとつ(もしくは複数)を選択します。こうしてレジェンドツアーは、観客が楽しみ、関係者全員が満足できる大会となるのです。

2007年、米国内の7都市とオーストラリアのシドニーを巡るレジェンドツアーは、女子ゴルフの面白さを伝えると同時に、米国各地の慈善団体の資金集めをバックアップ。現在、レジェンドツアーでは、このような女性たちのスポーツ・慈善イベントに関心のあるコミュニティを探しています。レジェンドツアーについての詳細は、www.thelegendtour.comをご覧ください。

ジェーン・ブラロック

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女性従業員の支援に熱心な企業がスポンサーとなり、米国内15都市でLPGAゴルフクリニックが開催され始めて17年。身体的能力と仕事の能力の両方を高めるためのスキルを身につけたいと考える、働く女性たちを強力にサポートしてきました。1990年に同クリニックとコメン財団が提携して以来、女性たちには乳房の健康に関する重要な情報が提供されてきました。しかも、自らの参加ががんのチャリティに役立つという実感が、毎回ボーナスとして付いてきたというわけです。

クリニックの参加者には、乳房の健康と乳がんの早期発見に関する教材が入ったギフトバッグが配られます。さらに、地元のコメン財団担当者が講演を行います。乳がんの生還者であり、ミネアポリスでコ

メン財団の代表を務めるミネソタ州出身のナンシー・マニング(Nancy

Manning)は、クリニックのざっくばらんな、盛んに情報交換

が行われている雰囲気に感心したそうです。「クリニックにはあらゆる年齢層の女性が楽しそうに集っていて、私も乳がんの診断や治療の進歩について意見交換する有意義な機会を持つことができました。このクリニックは女性たちの気持ちを解放的にしてくれる。そのおかげで、他では聞きづらいような質問もできるのです。」

コメン財団との提携で、乳がんに関する重要な情報や意見交換が広く行われるようになったことに加えて、各大会でのサイレントオークションの売上金が財団地方支部の活動資金となり、その結果コミュニティとのつながりがうまれます。「米国各地で開かれるLPGAレディースゴルフクリニックは、全米規模のプログラムと地方支部の双方でコメン財団を強力に支援してくれています。このような組織がコメン財団に関与し、乳がんとの闘いに参加しているなんてすごいことです」と、ナンシーは語ります。

女性たちがゴルフと仕事を通して互いに支え合う機会と、乳がんとのかかわりに変化をもたらす機会が組み合わさったことで、さまざまなドラマがうまれました。「『何らかの形で乳がんの影響を受けたことがある人はどれくらいいますか』と質問すると、ほとんど全員が起立するんです。」とジェーン。たとえば、娘たちが母親を連れてくるといったように、乳がんに罹った女性の家族がクリニックに一緒に参加するケースもありま

2005年、ボストンで行われたBJチャリティチャンピオンシップ(BJ’s Charity Championship)では2チームが勝利を分かち合う―(写真左より)シンディー・ラリックとジャンスティーブンソン(Jan Stephenson)のチームとパティ・シーハン(Patty Sheehan)とパット・ブラッドリーのチーム

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す。さまざまなきっかけで集うメンバーは、互いにインスピレーションを受け合います。そして、予防と支援の両面から乳がんに目を向けることで、参加者は自身の健康に主体的になるだけでなく、慈善事業についてより多くの知識を得るための洞察力を身につけることができるようになります。まさに、「クリニックは、女性たちが集い大好きなゴルフを楽しめる1日を提供するだけでなく、誰かの役に立つ活動を支援する機会にもなるのです。こんなに良いことはないでしょう」というナンシーの言葉通りです。

一 流ゴ ルファー の 指 導 も受 けられるLPGAクリニックの支援運動は、生涯スポーツとしてのゴルフのスキルはもちろんのこと、ビジネスの世界で自信を持ってプロとして活躍できるためのスキルを与えてくれる場です。「参加者の皆さんが強くなれるように指導します。けれど、それはゴルフに限った話ではありません。参加者の皆さんは、リーダーシップを取るためのスキルも教わっているのです。私たちは、女性がもっと強く、もっと自分に満足できるようになるための手段を提供しています。いわば生涯にわたるゲームを教えているのです」と、ナンシーは語ります。

出席者だけでなく、クリニックのスポンサー企業にも大きなプラス効果があるとジェーンは指摘します。スポンサー企業は自社の女性従業員だけでなく、コメン財団

と全国の乳がん生還者をも支援しているのです。それこそが、ジェーンが誇りをもって育んでいるパートナーシップ。ジェーンは、クリニックの17年の歴史についてこう話します。「コメン財団への数百万ドルの寄付を企業に奨励できたことは大きな誇りです。しかしそれ以上に、他のさまざまな団体に私たち(コメン財団)の事を知ってもらうことで、このような募金運動の火付け役となったということに意義を感じています。」

心から愛するゴルフを教える喜びはもちろんのこと、企業社会に与える影響やクリニックが参加者に及ぼすさまざまな影響を目の当たりにするたびに刺激と活力を得るというジェーンは、「ゴルフは心と身体と魂に触れるゲーム」だといいます。1日の終わりに、女性たちが「信じられない、先生は私の人生を変えてしまったわ」と瞳を輝かすたびに、心から嬉しく思うそうです。それは、自分が貴重なスキルを伝授できたこと、乳がんに関する重要な情報を正しく理解してもらったことを実感できる瞬間だからです。

LPGAレディースゴルフクリニックについて詳しくは、www.jbcgolf.comをご覧ください。

ジェーン・ブラロック、パット・ブラッドリー(Pat Bradley)(LPGAおよび世界ゴルフ殿堂のメンバー)、シンディー・ラリック(Cindy Rarick)―ニュージャージー州パラマスのリッジウッド・カントリークラブ(Ridgewood Country Club)で行われた、2007年デュアン・リード・チャリティー・クラシック(Duane Reade Charity Classic)にて

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SPIRIT H

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SE

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がん治療と調べを合わせて

がんを契機にキャリアが展開

SPIRIT H

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心 の 声 を 聞 く

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がん治 療と調べを合わせて Mia James

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音楽鑑賞や作曲がなによりも好きという方も多いでしょう。ご存知でしたか?—ある人にとっては大切な楽しみであり、またある人にとっては人生をかける情熱であり職業でもある音楽が、がん患者の治療にも大きな役割を果たすのです。ウェルネスの向上、ストレスの管理、痛みの緩和、記憶力の向上、患者が意志を伝え感情を表現するお手伝い、さらにはリハビリの促進などを目的として、音楽療法が医学的な治療と併用されることがあります。また、研究により、作曲または音楽鑑賞によって血圧が下り、心拍数と呼吸数が低下することが明らかになっています。しかし、クリーブランド大学病院アイルランドがんセンター(University Hosp i ta l s o f C leve l and I re l and Cancer Center)の音 楽 療 法 部 長であるデフォリア・レーン博士(Dr. Deforia Lane) に よ ると、 音 楽 が、 が ん の 治

療を受けている人にもたらす最大の効果は、患者さんの心の琴線に触れるという事。診断では見ることのできないその人本来の姿を引き出して賞賛し、自由な自己表現を可能にすることに他ならないと言います。

現在、医療専門職として定着している音楽療法のルーツの歴史をたどると、古代の有名な事例から1940年代のより正式な適用まで実にさまざま。たとえば古代ギリシャ文化では、音楽は肉体と精神を癒すものだと信じられていました。一方、アメリカ先住民は、癒しの儀式に歌とチャントを取り入れました。こうした歴史的な事例をみると、人のウェルビーイング(身体的、精神的、および社会的に安定した状態)と、さまざまな文化と伝統の持つハーモニーやリズムには、時代を超えた関係があることがわかります。このような長きにわたる音楽とウェルビーイングの自然な関係から、

アメリカでは第二次世界大戦中、退役軍人病院が砲弾神経症(戦闘へのストレス反応)に苦しむ兵士の治療に音楽を取り入れることになったのです。それから間もない1944年、ミシガン州立大学(Michigan State University)が世界で初めて音楽療法の学位課程を導入しました。

それ以降、70以上の大学で学位課程が創設されたり、米国音楽療法協会(Amer-ican Music Therapy Association:AMTA)が設立されるなど、音楽療法分野は著しく発展しました。AMTAは、治療への音楽の導入の開発を監督し、音楽療法士の教育およびトレーニングの基準を検討する機関です。音楽療法士はインターンシップを含む承認されたカリキュラムを終え、音楽療法士認定委員会の試験に合格することがAMTAによって義務付けられています。

音楽療法…心と身体のウェルビーイング向上で患者を支える

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心をこめて歌う

生還者の合唱団 —音楽療法は治療の枠組みを超える

積極的がん治療がひととおり終わった後も、音楽療法のもたらす感情面および社会面のメリットは多々あります。MDアンダーソンがんセンター(M. D. Anderson Cancer Center) の・ プレース・オブ・ウェルネス(Place of Wellness)の補完療法プログラム、セレブレーション・シンガーズ(Celebra-tion Singers)のメンバーが、治療後の音楽の役割について語ってくれました。MDアンダーソンがんセンターの音楽療法プログラムの責任者を務める、米国公認音楽療法士マイケル・リチャードソン(Michael Richardson) は、 合 唱団は、がん生還者が自分の体験を理解してくれる他者と交流するまたとない場だと言います。生還者の中には支援グループに参加したがらない人もいますが、こうした人々にとっては「合唱団が支援グループになる」というのです。これには合唱団のメンバーたちも声をそろえて同意しています。

乳がん生還者ヴィオラ・ローレス(Vi-ola Lawless)は、支援グループに参加する気は全くありませんでしたが、合唱団に入団した後、自分も支援グループに入ったようなものだと気付いたそうです。

「マイケルは、歌の練習をしながらがんの体験と思いを共有できるようにしてくれていたんだと気付きました」。ヴィオラは、

最初は合唱団への参加をためらっていた1人。「最初は情緒不安定だったけれど、やがて客観的に話ができるようになった」と言います。体験談を語り合っていると、音楽は二の次にように思えることもあります。「いつも歌って、おしゃべりして、泣いて。やがて、マイケルがパフォーマンスへと導いてくれるという感じです」

2005年に卵巣がん、翌年には乳がんの診断を受けるという事態に直面したアンジェラ・ランキン(Angela Rankin)も、合唱団を通して得られたサポートに感謝し、こうした団体への参加は「お勧め」といいます。テキサス州シュガーランド出身の文学教師であるアンジェらは、「親切で愛情溢れる」シンガー仲間から受けたすばらしいサポートを理由に、こうアドバイスしてくれました。マイケルと楽しみを共有すること、それから笑い(「マイケルは面白い人」だそうです)も、彼女たちの集まりの大きな要素なのです。

軟組織肉腫から生還したエレン・バール(Ellen Barr)にとって、音楽は治療中の ‘慰め’ でした。そしてセレブレーション・シンガーズに加わったことにより、音楽は自分ががん患者からがん生還者となるための ‘支え’ であったと気付いたと言います。エレンの回復に向けた第一歩は、通院を「前向きな体験」と捉え、つらい治療のためではなく合唱団の練習のために病院に行くんだと考えることでした。今や、歌うための通院は「楽しい時間」となり、「皆の歌声とマイケルのピアノを聞くと気持ちが和む」といいます。そんなエレンのがん治療のさなか、夫が白血病の診断を受けるという出来事がありました。 特に仲間に対して、生還者と介護者の両方の視点で話をすることができたという点で、自分がこのグループに与え、そして与えられたサポートはとても満足のいくものだったとエレンは付け加えています。今は辛い時期だけれど、音楽を通

して心の平安と親交を見出したのです。音楽教育の博士号に加え音楽療法士

の資格を持つレーン博士は、音楽療法は個々の患者に合わせて取り入れるべきだといいます。「患者の反応はさまざまなので、多様な対応が必要」なのです。治療では、作曲をしたり、患者の好む楽器を使ったり、患者の要望に応じた生演奏やレコード鑑賞を状況に合わせて取り入れ、時には映像を見て、心地よい香りをプラスします。

がん患者にとって、音楽への前向きな感情反応がきわめて有益であることは言うまでもありませんが、音楽療法が身体に重要な反応を引き起こすことも研究によって明らかになっています。レーン博士によると、そのひとつが痛みの緩和。脳では、痛みと音楽の感覚を伝達するために同一の神経伝達物質が使われており、両方の要素が同時にキャッチされた場合、どちらも脳に完全に到達することはありません。このため痛みが軽く感じられ、患者は鎮痛剤に頼ることが少なくなる可能性があります。

また、音楽に対する身体の反応として、筋肉が弛緩し、静脈が拡張します。これによって、骨髄穿刺などの処置が楽になる場合があります。さらに音楽はリハビリの助けにもなります。動けなかった患者が身体の使い方を教わる時、リズムが動作の反復を容易にしたり、リズムにあわせて知らず知らずのうちに長い距離を歩けたり、身体を自然に動かす手助けになったりするのです。

自分自身も2度、がんから生還しているレーン博士は、物理的には測定不可能で経験的に証明することもできない音楽のメリットについて、ナット・キング・コール(Nat King Cole)の「アンフォーゲッタブル」に合わせて体を揺らしながら、「忘れられない経験こそが自分の仕事の真髄」といいます。家族に頼まれて「アメージング・グレース」をかけると、それまでは反応のなかっ

セレブレーション・シンガーズ

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た患者が涙を流したこと、昏睡状態だった患者が意識のない時に聞いた音楽を記憶していて、目が覚めたら「音楽がかかっていた」と聞かされた、などの体験は、レーン博士の音楽療法への意欲を裏打ちするものです。がん治療における音楽療法の役割について、博士は「助けとなるもの、希望を与えてくれるものは何でもその価値を認めます」と話しています。

レーン博士のような熱心な音楽療法士と、近年徐々に増えつつある音楽療法士たちが、これからますますがん治療を受けている人々に心身の癒しと、時には幸福を与えてくれるでしょう。また、音楽療法の可能性は、医療全体における役割が高まることでますます広がることでしょう。一人でも

多くの患者や生還者に適用できる療法にしてゆくべく、音楽療法士と医師との強いコラボレーションに期待が寄せられます。

音楽療法について詳しくは、米国音楽療法協会のウェブサイトwww.musicthera-py.orgをご覧ください。

自身は 音 楽 家 でもシンガ ー でもないWomen & Cancerの 副 編 集 長 ミ ア・ジェームズ(Mia James)は、デフォリア・レーン博士とセレブレーション・シンガーズのメンバーたちへのインタビューを通して音楽の癒しの力を確信すると同時に、音楽療法がいかにがん患者の生活に貢献しているかを目の当たりにし、感動したと言います。「彼女たちの話には圧倒されるばかりでし

た。また、研究者がより効果的な新しい治

療法や画像技術を模索してくれているのと同じように、今病気に立ち向かっている人々に癒しと幸福を与えるために働いている多くの熱意ある人々がいるということを知り、嬉しく思いました。素晴らしいことです。」こうしたひたむきな人々について知ることができたことこそ、がん関連のテーマを扱って得られる最大のご褒美だと話しています。

ウェルネスの向上、ストレスの管理、痛みの緩和、

記憶力の向上、患者が意志を伝え感情を表現するお手伝い、

さらにはリハビリの促進などを目的として、

音楽療法が医学的な治療と併用されることがあります。

21spring 2008 • PiNK

Page 22: PiNK Spring 2008

若くして乳がんの生還者となったロビン・ミラー(Robin Miller)とレイチェル・トロクセル(Rachel Troxell)は、乳がんの治療後にリンパ浮腫と診断された時、大きなショックを受けました。ロビンとレイチェルは治療中に共通の友人を通して知り合い、とても親しくなっていました。2人揃ってリンパ浮腫に立ち向かわなければならないことは、まさに運命のいたずらのようでした。

リンパ浮腫とは、手術や放射線療法によるリンパ系の損傷のためにリンパ液と呼ばれる体液が過剰となり、組織にたまり、むくみが起こる慢性疾患です。乳がん生還者では、腕、手、胴体にむくみが生じます。リンパ浮腫の治療法には、むくみを予防、軽減する圧迫スリーブがあります。リンパ浮腫は対処可能な疾患であるものの、多くの女性が診断を受けて心に傷を負います。それは、慢性疾患であるリンパ浮腫と一生つきあっていくことになる女性たちが、この圧迫スリーブのせいで、決して消えることのない乳がんの辛い体験を身体と心の両方で思い出してしまうからなのです。

このような現実に直面した若くてファッションに敏感なロビンとレイチェルは、共通の診断に同様に落ち込みました。2人は、残りの一生を、あの嫌らしい肌色の圧迫スリーブをつけて過ごすことが耐え難く、そうかといって他によい方法があるとも思え

ませんでした。ところが、このフラストレーションからひらめきが生じたのです―自分達で、おしゃれな着け心地のよいスリーブを作ればいいんだ!

ロビンは、2人のアイデアを実行に移すべく、ファッションデザイナーの友人、クリスティン・ダッドレー(Kristin Dudley)に連絡を取りました。こうして誕生したのが、有限会社LympheDIVAsです。同社のミッションは、「医学的に適正なスタイル、すなわち乳がんから生還しリンパ浮腫を発症した有能でおしゃれな女性を対象とした、着けた人が自分を美しく、強く感じ、自信を持つことができるような圧迫用のアパレルを作ること」です。

現 在、LympheDIVAsはウェブ サ イト(www.lymphedivas.com) を 公 開 し、乳がん専用のブティックに商品を販売し、リンパ浮腫を発症してもおしゃれを諦めない女性のために、ピンク、ブルー、黒、ラメ

(金または銀)のアームスリーブと、ピンク、黒、ブルーのガントレット(指なし手袋)を提供しています。製品は、360度ストレッチ、吸湿・速乾技術、柔らかさを出すためのライクラ®ボディーケアを用いた素材で作られています。

ロビンとレイチェルが同事業から得た満足感は計り知れません。「製品について、よくお客様から感謝されます。私は仕事をし

がんを契 機 にキャリアが 展 開がんの診断がきっかけとなった転職—4つの物語Diana Price

ロビン・ミラー、レイチェル・トロクセル、クリスティン・ダッドレー:リンパ水腫からLympheDIVAsへ

22 PiNK • spring 2008

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ていてそれが一番嬉しく、達成感を感じます。私たちは、皆さんが乳がん以上に辛いと訴える何かを乗り越えるお手伝いをしているのです。こんなにシンプルなことが、不安な気持ちやセルフイメージをこれほど変化させることができるとは驚きです」とロビンは言います。

おしゃれなスリーブを身につけることで、もちろんロビン自身にも変化が生じました。「このスリーブを着けるようになってから、『腕、どうしたの?』と聞かれなくなりました。私は自分の腕とリンパ浮腫に自意識過剰になっていて、いつも人に見られているような気がして落ち着きませんでした。LympheDIVAsのスリーブを着けるように

なってからは、皆これを純粋なファッションの表現だと思っています。気が付くと、スリーブのどれかに合う服を買っているんです。」

ロビンがこの仕事を選んで正解だったと思うのは、おしゃれな装いという明確な目標と、他の生還者のために尽力することでもたらされる精神的な励ましのためだけではありません。それは、彼女がこのプロジェクトに情熱を感じているからです。「私が作っているのは、私自身が心身共に気持ちよく感じられる製品です。私はこの圧迫帯を一生着けていくでしょうから、この製品を手に入る最高のものにすることに個人的に関心があります。私はLympheDIVAsに全身全霊を注ぎこんでいます」とロビンは

語ります。がん体験をきっかけに起業を考えている

他の生還者へのアドバイスを求められると、ロビンはこう答えました。「私からのアドバイスは、とにかくやってみるということです。最高のビジネスは情熱から生まれるものです。何が必要かわかっているのであれば、是非ともそれを満たすために努力すべきです。あなたはがんを乗り越えてきたわけですから、他のがん患者が何を必要としているかご存知でしょう。」ただし、成功を収めたあらゆる経営者と同じようにロビンはこう警告しています。「必ず十分に調査し、できる限りの支援を得て、そして長い目で見て準備をしてください。」

「私からのアドバイスは、とにかくやってみ

るということです。最高のビジネスは情熱か

ら生まれるものです。何が必要かわかってい

るのであれば、是非ともそれを満たすために

努力すべきです。あなたはがんを乗り越えて

きたわけですから、他のがん患者が何を必要

としているかご存知でしょう。」

左から:レイチェル・トロクセル、クリスティン・ダッドレー、ロビン・ミラー

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2001年 に 乳 が ん と 診 断 さ れ た 時、ジョージア州ノークロス在住のアンジー・パターソン(Angie Patterson)は、ベルサウス社(BellSouth)のネットワークサービス事業の取締役を務めていました。IT業界で20年以上のキャリアを持ち、ベルサウス社に18年間勤務したアンジーの目標は、いつの日か大企業の情報統括責任者(CIO)になることでした。

乳がんの診断を受けた時、アンジーは彼女曰く「すばらしい特典」である13週間の障害休暇を取得することができました。そして治療中と回復期にわたり、このような協力的な安定した企業に居られて本当に幸運だと感じていました。アンジーはまた、自分と同じ境遇にある女性たちの手助けをしたいと思い、ベルサウス社ならびに地元コミュニティで、がん生還者を支援し、将来の研究を支持するためのボランティア活動を始めました。アンジーとベルサウス社の地域担当副社長が共に進めていた社内企画の1つは、従業員とその家族、そして管理職に、がんが人の生活に及ぼす影響を理解してもらう一助となるライフカウント

(Life Count®)という社内プログラムを立ち上げることでした。アンジーは、がんのケアと自分が調整に努めた支援サービスについて知るにつれ、支援活動に貢献したいという気持ちが強くなっていきました。

2004年4月、アンジーは、ジョージアが ん 連 合(Georgia Cancer Coalition)の会長兼CEOであるビル・トッド氏(Bill Todd)による、同連合のミッションに関する講演を聴きました。そして、自分が最も情熱を感じているのは、実は「本業」の傍らにやってきた支援活動であることを悟った

のです。ビルもまた、アンジーの情熱と才能を認めました。「初めてアンジーに会った時、彼女はちょうど過渡期にありました。がんからの生還という体験が彼女の人生を永遠に変えたのです。私はアンジーが副業に熱心に打ち込む姿を見ていましたが、彼女には米国有数の大企業で培ったマネージメントと技術職の経験があることも知っていました。普通だったら採用できないような人材

を連合に迎える絶好のチャンスだったわけです。好きなことをやって収入を得ることは職業を選択する際の推進力となるはずですが、残念ながらアンジーの場合は例外でした」とビルは述べています。

がん連合で働くという考えはすぐにアンジーの心を捉えましたが、まだ心のどこかに再発するかもしれないという不安があり、そのような本格的な転職には慎重にならざるを得ませんでした。「高校生の子供を持つシングルマザーとして、私はベルサウスのような大企業を辞めることによる経済的影響を考え、辞めてもやっていけるかどうか検討しなければなりませんでした。多くのがん生還者と同じように、私も医療給付金のことがとても気になって心配でした。」

そこでビルが解決策を提示しました。アンジーが連合で働くために1年間の長期休暇を取れるよう、ベルサウス社の経営陣を説得したのです。「長期休暇を取ったことで、私はその年ベルサウス社の給付金を継続して受け、ベルサウス社の給付のもとで『がん生還5周年』を迎えることができました」とアンジーは言います。アンジーは、数カ月のうちに、連合に留まりたいと思うようになりましたが、医療給付金を維持できるという安心感が気持ちを楽にしてくれたといいます。

現 在、ジョージアがん連 合の副会長兼最高執行責任者として、アンジーは自分がまさ

に情熱に導かれて仕事をしていると

いう事実に驚いています。「今、仕事がとても充実

しています。ジョージア州のがん死亡者数を減少させ、ジョージア州をがんのケアにおいて全米トップに持っていくというジョージアがん連合のミッションに、私の仕事すべてが役立っているのです。毎日情熱を傾けることのできる仕事を持つことができて、本当にありがたいと思います。私はどうしても他のがん生還者のお手伝いをしたくて、ボランティア活動をしていました。今は仕事が、私と同じ道を歩んできたがん生還者と連絡を取り合う機会を与えてくれます。」

アンジーは、企業の管理職であった数年間に培ったスキルを、自分が強く信じるミッションを促進する上でも役立てることができます。「ベルサウス社では、私には取締役として、数百万ドルの予算を有する従業員143人の組織に対する責任がありました。私は、率直なコミュニケーションを展開し、信頼を構築することによって、さま

ざまな組織と協力関係を築

「私はどうしても他のがん生還者のお手伝いを

したくて、ボランティア活動をしていました。

今は仕事が、私と同じ道を歩んできたがん生還

者と連絡を取り合う機会を与えてくれます。」

がん生還者アンジー・パターソン―会社役員からがん連合へ

アンジー・パターソン

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オレゴン州ポートランドに本 拠を置くハラリー・ ウェイントロ ーブ(Haralee Weintraub) の 会 社(Haralee.com)のモットーは、「ホットな女性にクールなファッションを(Cool Garments for Hot Women)」です。この言葉を聞いて笑う人がいるかもしれません。けれども、ハラリー自身は、彼女がビジネスのアイデアを思いつくきっかけとなった、寝汗とホットフラッシュ

(ほてり、のぼせ)が笑い事ではないことを知っています。「がんと診断された時、私は更年期ではなかったのですが、手術と化学内分泌療法のために更年期症状が出て、ひどい寝汗をかくようになりました。症状が徐々に進むのではなく、いきなり更年期がやってきたのです」とハラリーは言います。

びっしょりと寝汗をかき、目覚めると寒さと惨めさに襲われる―この悪循環には解決策が必要でした。スキーとサイクリングが得意で、屋外で運動して一汗かくことが習慣となっているハラリーは、「スキータイツかサイクリング用の短パンをはいて寝ようかしら」と友人に冗談を言うようになりました。なぜスポーツウェアなのでしょう。いずれのアイテムも、線維が汗を吸収し、すばやく蒸発させ、皮膚を乾いた状態に保つ速乾性の素材で作られていることがわかりました。しかし、冗談はすぐに真剣な気持ちに変わったとハラリーは言います。「やってみようかしら。私はサイクリング用の短パンの生地を手に入れ、30年も

ののミシンを引っぱり出して最初の試作品を作りました。それは不恰好だったけれど、役には立ちました。その後、もっと軽くて見た目のよい生地を見つけ、もう1つ試作品を作ってみました。それを乳がん生還者の支援グループの人たちに見せたら、皆さん大喜びだったのです。」

アイデアが生まれたら、次はビジネスプランを立て、仕事に着手すべき時でし

がん生還者の寝汗を素敵な夢に変えるハラリー・ウェイントローブ

「乳がんの治癒のために、祈る以上のことを

したのです。私は、売り上げの5%をスーザ

ン・G・コメン財団と地元の病院の研究施設

に寄付しています。」

いていく方法を学びました。このスキルは、私の生活のあらゆる面において必要不可欠であることがわかりました」とアンジーは述べています。現在、連合で5人のフルタイム職員のうちの1人として働きながら、アンジーはそのスキルを活用しています。彼女の目標は今も「組織のミッションを達成するために、適切な人材を団結させ、意見の一致を図ること」です。

連合のミッションを促進すべく、アンジーは生還者、医療提供者、政治家、そしてジョージア州近辺の経営者層の組織と連携しながら、支援活動のコーディネート、イベントの企画、ジョージア州におけるがんの支援状況の検討を進めています。連合は小規模な組織なので、コピー機の修理を依頼する電話をかけたり、職員のための休日のパーティーの計画をしたりと、アンジーの日常は大忙しです。しかし、こうしたことすべてが彼女に達成感を与えています「私は、あれほど大きな、人生を変えてしまう決断

ができたことに達成感と自由を感じています」とアンジーは言います。それは、アンジーが、あの決断は結局自分にとって正しかったと知っているからなのです―「今ほど幸せだと思うことはありません!」

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ノースカロライナ州在住のヘザー・カズミア(Heather Kuzmier) は、 乳 房 切除術の後、きれいでいたいと思いました。へザーは乳房を失ったばかりで、その変化の重大さに直面し、外見だけでも何とかできないものかと思っていました。ところが、

「(最初の8週間)乳房として着けるポリ

エステル製のふわふわしたボールと、それを入れる年寄り臭い上着を渡されて、サイズを合わせるには詰め物を一部むしり取ればいいと言われた」というのです。

へザーは、その時の心の痛みを今も覚えています。「これは、乳房を失った女性に対する侮辱だと思いました。」他の選択肢を求

めている女性たちのために行動を起こす決心をしたヘザーは、友人のキャロル・トーン(Carole Torn)にその旨を告げました。化学療法の最中だという事実をものともせず、2人はヘザーの治療中、役に立ちそうなアイテムをいろいろと試してみました。

2人の努力の成果が、乳がん生還者が自

た。翌年は忙しい年となりました。ついにハラリーはウェブサイト(www.haralee.com)を立ち上げ、自ら選んだ生地でパターンを縫製する、女性だけの小さな会社を創立したのです。

ハラリーは、がんの診断と治療の直後に亡くなった父親から受け継いだ遺産をビジネスにつぎ込みました。「がんで亡くなった私の父はビジネスマンでしたから、きっと喜んでいると思います」とハラリーは言います。夫を亡くして落胆していたハラリーの母親も、新しい会社で働き始めました。「母には副社長になってもらい、名刺を作ってあげました。ひどく沈んでいた時に集中すべきことを与えられ、私たちには毎日の話

題ができました。今は痛みや苦しみより、色やスタイルの話をするようになりました。母が『今日の調子はどう?』と言うのを聞くことが私の大きな支えです。」さらに、ハラリーの夫が営業部長に就任しました。彼は倉庫を運営し、商品の発送と受け取

りを担当しています。「私たちは一緒に働いたことが

ないので、夫が私と同じくらいこの事業に乗り気で楽しそうにしているのが嬉しいのです」とハラリーは言います。

ハラリーは、治療中に出会った女性たちの思い出に刺激されている部分があるといいます。彼女らにはハラリーのような資産もサポートもありませんでした。「幸い私には治療費を払うための医療保険がありましたが、私が直接会った中には、ご家族が治療費のことで困っている人もいました。」こうした女性たちの境遇に変化をもたらすために、ハラリーは収益の一部を乳がんの研究に寄付しています。「乳がんの治癒のために、祈る以上のことをしたのです。私は、売り上げの5%をスーザン・G・コメン財団(Susan G. Komen

Foundation)と地元の病院の研究施設に寄付しています」とハラリーは語ります。

さらに、ウェブサイトを利用した際に女性や介護者が聞かせてくれるがんの体験談も、喜んでもらえる実用的で美しい商品を作り続けようというハラリーの気持ちを後押ししてくれます。更年期を乗り越えたというのに、抗がん剤のために再び寝汗に悩まされることになり、落ち込んでいる67歳の女性からの電話は、特に彼女の心に残っています「彼女が辛い体験を話してくれて、私たちは泣いてしまいました。」

最後にハラリーは、苦しい体験から生まれた自分のビジネスは、充実したキャリアになったと言います。ハラリーががんを通して得られたキャリアを高く評価している理由を見れば、彼女が仲間である生還者を支援し、有意義な影響を与えるチャンスを楽しんでいることは明らかです。「私は、女性たちが気持ちよく眠り、周りからもそう見えるように、そしてシルクのような肌触りのセクシーな美しいナイトウエアを身にまとい、再び前向きなセルフイメージを確立するお手伝いをしています。また、友人や家族が大切な人に、その女性が自分では買わないかもしれないプレゼントをするご相談にも乗ります。私には、女性を寛大で前向きにし、毎晩を涼しく快適にする商品をご提供することができます。」

自信をつけるファッションを生み出すヘザー・カズミアとキャロル・トーン

ハラリー・ウェイントローブ

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尊心を高め自信を取り戻す一助となるように開発された、乳房

切除術後のためのファッショナブルな衣類と人工乳房のシリーズ、スティルユー(Still You™)(www.stillyoufashions.com)です。どの服にも両サイドにブラポケットが付いています。ポケットは、特別にデザインされた人工乳房がぴたりと収まるようになっています。ヘザーによると、スティルユーの重さはわずか170グラム(通常の人 工 乳 房の重さは900 ~ 1,300グラム)のため、手術直後でも着けることができます。独自のクリーム状の充填材とデザインにより、スティルユーは本物そっくりに見えるので、水泳や温水浴槽でも着けることができます。

ヘザーは、物理的なデザインや外見もさることながら「手ごろな値段の人工乳房を作ることが重要だった」といいます。標準的な人工乳房は200 ~ 2,000ドル

(約22,000 ~ 220,000円 ) も す る ため、多くの女性にとって手の届かないものであることが2人にはわかっていました。ヘザーとキャロルは、最終的に48 ~ 60ドル(約5,300 ~ 6,600円 ) のシリーズを開発しました。

「私は、担当の外科医が『実に多くの女性が変化を求め、乳がん用製品を開発したいと言うけれど、実行に移す人はほとんどいない』と言われたことをこれからも思い出すでしょう。手術から1年もしないうちに私はスティルユーに着手し、変化を起こすための行動を開始していました。現在私たちは、メモリアル・スローン・ケタリング(Memorial Sloan-Kettering)、 ダナ・ファーバー(Dana-Farber)、ヴァージニアGパイパーがんセンター(Virginia G. Piper Cancer Center)などの大病院に商品を販売しています。また、米国の400を超える店舗が私たちの商品を取り扱っています」とヘザーは語ります。

ヘザーとキャロルは今も自分たちの構想に専心し、高いモチベーションを持っています。「私たちは、乳がんに罹患した、あるいは日々乳がんの診断を受けている全米の200万人の女性に触発されているのです」とヘザーは言います。ヘザーはまた、仕事の大切さを絶えず示してくれたのは、自分を担当した医療チームだったと言います。「腫瘍科、腫瘍外科、形成外科の先生方、看護師や職員の皆さんが私に刺激を与えてくれました。これらの人達が多くの女性を治療し、助けるのを私は見ていました。何か手伝えることがあったらとよく思いました。」今、ヘザーは、顧客に提供すること

のできる支援によって自分の成功を評価することができるといいます。「もし、辛い道のりを和らげるお手伝いができたのであれば、私たちは成功したのだと思います。」

乳がんの研究と支援活動を促進したいという共通の強い希望を持つヘザーとキャロルは、スーザン・G・コメン財団、リビング・ビヨンド・ブレスト・キャンサー(Living

ヘザー・カズミアキャロル・トーン

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HEA

R M

E RO

AR

Beyond Breast Cancer)、 米 国 乳 がん 学 会(American Breast Cancer Society)、フレンズ・フォー・アン・アーリー・ディテクション(Friends for an Early Detection)などのさまざまな機関、複数の地域病院や支援団体に、毎年収益の18 ~ 20%を寄付しています。ヘザーとキャロルは、手助けを必要としている個人のみならず、これらの機関に利益を還元できることに大変満足しています。「がんという体験によって人の目的は変わると思います。がんのお陰で少しペースダウンして、自分が持っているものに感謝できるようになります」とヘザーは言います。

ヘザーは、がんと闘っていた時、そしてスティルユーを立ち上げた時に自分を助けてくれた家 族や友 人、その他の 人々について話す時、 人生のすべての贈り物に対する感 謝の気 持ちでいっぱいに

なると言います。「私たちの一番のサポーターは家族と友人でした。この事業を始めて以来、友人のリストが日々膨らんでいます。起業にあたっては、信じられないほどの支援をいただきました。カメラマンと2人のアシスタントは、最初のモデル写真撮影に丸1日付き合ってくれましたし、メーカーのウェルズ・ホージアリー・アンド・ ア パレル 社(Wells Hosiery and Apparel)は、デザイン、準備、変更に当たり膨大な時間を割いてくれました。」ヘザーは、家族のサポートが一番大きかったといいます。16歳の息子と13歳の娘はいつもビジネスを向上させる新しいアイデ

アを出してくれました。また、夫のジョンの愛情とサポートのおかげで状況は大きく変わったといいます。

ヘザーとキャロルは事業全般において、商品を使用している女性と、2人に堅実な忠告と有益な視点を提供してくれるビジネスのプロと努めて密に交流するようにしてきました。2人と同じようにビジネスを考えている他の女性に対するアドバイスは、この点だとヘザーは言います。しかし、最も重要なことは「自分に正直である」ことだとヘザーは付け加えます。「調査して計画を立て、これはうまくいくと思ったら前進あるのみ。諦めてはいけません。辛い状況にあってもその中でベストを尽くすこと―これこそがすばらしい好機なのです。」スティルユーと、ヘザーとキャロルが受け取る感謝に満ちたフィードバックが、2人に真に素晴らしい報酬をもたらしてくれるのです。

「何か手伝えることがあったらとよく思いまし

た。」今、ヘザーは、顧客に提供することので

きる支援によって自分の成功を評価することが

できるといいます。

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women share their personal stories

見出した強さ

心 を 伝 え るHEA

R M

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見出した強さ女優、リン・レッドグレーブ(Lynn Redgrave)が語る、乳がん体験、そして創意に富んだ試みのかずかず。体験を通してリンは自分の持つ強さを知り、人生の宝物は何なのかを知りました。

Diana PricePhotos by Annabel Clark

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「私は自分がどんな人間か、知っています。そして、その自分に満足しています」

苦労の末ようやく学んだ教訓はそれだけではありません。けれどもそれは、人気女優であるリンが、がんと診断された2002年12月からほぼ1年にわたって耐え抜いた乳がん治療から学んだ中でおそらく最も意義深い教訓なのです。

右の乳房にある大きなしこりが気になって眠れなかったリンは、オーストラリアでの映画撮影から帰宅するや医師を訪ねました。すると、リンパ節転移が認められる約6.4cm弱の腫瘍が見つかったとの診断。そして乳腺切除、化学療法、放射線療法が必要であると告げられました。完璧に打ちのめされました。リンは、「いつの間に、どうして、こんなにまでなってしまったのだろう」と考えたといいます。「特に、終わったばかりだったけれど、映画の役柄のために時代物のコルセットで日々体を締め付けていたことを思うと…」。診断後、リンの中で、自分の分別のなさを責め立てる気持ちと、他の女性たちに初期徴候と予防策についての意識を高めてもらうために、この情報を伝えようという気持ちが湧き上がりました。「はっきりと覚えているのは、オースト

ラリアでバスルームの鏡をのぞき込んだとき、右の乳房がいつもと違うように見えた事。でも、調べたほうがいいなどとは考えもしなかった。右の乳房は変わった形になっていたけれど、『老化って面白い。乳房がこんなに変わった形になったことはないわ』と思っただけでした」。仕事と生活と健康に対する無知が重なって、その変化の深刻さが見えていなかったのです。オーストラリアに発つ前に定期検診の予約を入れなかったのも、彼女はずっと健康で、マン

モグラフィでも何の影も認められなかったからでした。

リンは、婦人科で年に1度の定期検査を受けていました。ただ、そのときは画像診断センターでマンモグラフィ検診を予約しなかったのです。センターの受付係がリンに伝えたのは、家族歴と前回のマンモグラフィで異常がなかったことを考えると、予約が詰まっている同センターではリンは優先的に検査を受けなければならない患者ではなく、予約を先に延ばしても差し支えないということでした。その時点で腫瘍が発見可能であったかどうかはわかりませんが、リンは自分のことは自分で守るよう女性たちに勧めなければと、この話を教訓として伝え続けています。あなたの健康が危険にさらされているときは、常にあなたが最優先です。そのことに気付いてください。そのことを主張してください。予防策を講じてください。

診断結果を子供たちに伝えるのは、時期を待ったとリンは言います。彼女の息子ベン(Ben)とお嫁さんのニバ(Niva)には2人目の子供が生まれようとしていたところで、彼らの喜びに水を差すようなことは避けたかったのです。英国に住む上の娘ケリー(Kelly)については、クリスマスに帰省することがわかっていたので、その時に伝えようと考えました。だから、最初にこのニュースを聞いたのは下の娘アナベル(Annabel)でした。写真家で、当時はパーソンズ・スクール・オブ・デザイン

(Parsons School of Design) の4年生だったアナベルに、リンは乳がんであることを伝え、同時に、がん治療の過程を記録するように頼みました。母と娘が共に歩んだ道程は2004年にUmbrage Editionsよ

「私は自分がどんな人間か、知っています。

     

そして、その自分に満足しています」

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り出版された「Journal : A Mother and Daughter’ s Recovery from Breast Cancer(日記:母と娘、乳がんからの復活)」に記されています。同著は、リンの日記とアナベルによって撮影された、母の治療と回復を記録した写真で構成されています。

ただし、化学療法で髪が抜けてしまったリンを追った写真、乳腺切除術の傷跡を曝した写真、絶望に沈み込んでいる時から平穏を見出すまでを捉えた写真など、一般の目にさらすことが目的で掲載したのではありませんでした。「私たちには決して、写真を見てもらおうという意図はありませんでした」とリンは言います。当初の目的は、カメラのレンズを通すことでアナベルが母の治療というトラウマをいくぶんでも距離を置いて見られるようにすることでした。「写真はアナベルにとっての芸術—彼女がカメラのレンズを通して私を見る時、私は彼女の芸術の対象になるのです。私は被写体であり、アナベルは客観的になります。そんな風に私の病気に関わることで、対応できるようになる—私はそう考えたのです」。

Journalの前書きでアナベルは、自分も当初はこの企画を治療目的としか考えていなかったと記しています。「母の乳がんを1つの企画にしてしまえば、それほど怖くもなくなるでしょう。母の乳がんを1つの対象として観察できるでしょう。そして、私たちがこの企画の完成を楽しみに待てるなら、この病気の結末も楽しみに待てると思ったんです」。

けれども、辛い気持ちを別の方向に向けてくれるものとして始まり、娘を守りたいとの気持ちから押し進めて行ったこの企画に、母も娘も夢中ですがりつくようになってしまいました。程なくして焦点が変わってしまったのです。「最初はアナベルを守ることが第一だったのに、私がそれに依存するようになった」とリンは話しています。娘と時間を共に過ごすということが、治療という現実ではなく、楽しみな予定のようになってゆくのです。「私にとって、病院は娘に会い写真を撮ってもらうために行く、という事になっていきました。そしてそれが、マイナスの感情で膨れ上がってしまいそうな現実から逃避させてくれる、私たちの企画のすべてでした」。

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アナベルが撮影した写真を見直すことで、リンは自分の病気や外見について前向きな考え方ができるようになりました。「特に髪が抜けることについてはそうです。私が知っている、同じ経験をした女性の大半が、髪を失うことが最悪だと言います。最初は、『大丈夫、私は女優なのだから。髪がないことは何とかできるわ』と思っていました。でも、できなかった。鏡に映る顔には決して満足できませんでした。満足すべきと思いつつも、鏡の中の自分が嫌いだった。歯磨きのたびに、顔をしかめずにはいられませんでした。けれども、写真を見るときは、あら面白いわねと、言うことができました」。自分の体験をカメラのレンズを通して解釈することで、リンは、日々の厳しい状況から逃れると同時に、写真に映る自分の強さを発見することができたのです。

アナベルはリンの同意を得て、撮影した写真を学校の授業に持ち込み、批評してもらうようになりました。これはとても前向きなことでした。母親と共に過ごす、授業に出る、という以外にほとんど時間がなかったアナベルは、自分の最後の作品展に写真を展示してもいいかどうか母に尋ねました。「言われて10秒くらいは、『ギャラリーの壁に掛けられるのね。写真は私—写真に映っているのが私だって、みんなが知ることになる』と、ためらいを感じました。でも、すぐに『それではまるで検閲ね。私は検閲には反対。だれも芸術を検閲することはできない。私はわが娘の芸術を検閲する気はない』と考えました」。だからリンは、「いいわよ」と言い、どの写真を使うかについてもアナベルの自由にさせました。写真のタイトルにリンの日記からの抜粋を使うことを思い付いたのは、アナベルでした。そして作品展初日、アナベルの作品の横には、一冊の本となった日記が置かれました。

リンは作品展初日の夜のことをこう話しています。「私はアナベルをこころから自慢に思いました。そして、自分自身のことも、少し自慢に思いました」。ニューヨークタイムズ誌がその作品展を取り上げ、その後、出版契約が交わされるに至りました。リンとアナベルが一緒に歩んだ乳がん治療の道程は、母と娘が協力し合った感動的なストーリーです。そこに描かれた、回復に向

けた1年にわたる彼女らの素晴らしい歩みと強さは、人々の間に感動と賞賛の声を巻き起こしました。

Journalの写真にもはっきりと表れていますが、自分は強いという自覚、これが、リンが乳がん治療の道程で学んだものです。それと同時に、弱さ、絶望感、喜びも知りました。「私は自分が立ち直りの早いタイプだといつも思っていました。本当にそうだったのです。つまり、何か辛い事が起こったとき、最初はまったく手も足も出なくなるのですが、その後すっかり気分が回復し、立ち直るのです。そういう家系みたいです。辛い事に見事なほど感情で反応し、そして、何とか乗り切ってしまうんです」とリンは話します。しかし、本当の意味で試された時、圧倒されてしまっている自分がいることを知り、その認識は変わったと言います。「自分に強さがあるとは思えなかった。でも今は、強さがあることを確信しています」。

リンの持つ強さ—彼女自身はそれを発見して驚いたのですが、女優・リンのファンなら、おそらくその強さを疑わないでしょう。彼女は長年にわたり、舞台でも映画でも、信じられないほど強く、才能豊かに、さまざまな役柄を演じてきたからです。最新作では、彼女自身が脚本を手がけた一人芝居、「ナイチンゲール(Nightingale)」やゴールデングローブ賞にノミネートされた映画「ゴッド・アンド・モンスター(Gods and Monsters)」、 ま た、 近 年 の 作 品としては「シャイン(Shine)」、「キンゼイ(Kinsey)」、「上 海の伯 爵 夫 人(The White Countess)」 な ど が あ り ま す。両 親 はマイケル・レッドグレーブ(Sir Michael Redgrave)とレイチェル・ケンプソン(Rachel Kempson)、姉のバネッサ(Vanessa)、 兄 の コ リ ン(Corin)、姪のナターシャ・リチャードソン(Natasha Richardson)、ジョエリー・リチャードソン(Joely Richardson)、ジェマ・レッドグローブ(Jemma Redgrave)という俳優の家系に生まれ、リンは批評家からも大衆からも高く評価されています。

 舞台に上がり続けることが彼女の仕事

への情熱であり、こだわりでした。そしてそのこだわりが、治療の間ずっと、リンの元気の源となったのです。乳がんと診断される前から、リンはオフブロードウェイの舞台、

「トーキング・ヘッズ(Talking Heads)」でフォザード夫人(Mrs. Fozzard)の役に打ち込んでいて、治療中も休むことはありませんでした。喜んで取り組める気晴らしであると同時に、エネルギーの源でもある「演劇という医師」のおかげで、リンは、乳がんから離れた生活に集中し続けることができました。また、自分の体験談が他の女性に影響を与えることができる、役に立つかもしれないと彼女が分かったのも、女優としての役目の中でのことでした。

ラリー・キング・ライブ(CNNの人気番組)で自分の体験を伝えようと決意した頃(他のメディアが彼女のストーリーの放送を予定していることが分かり、出演を決意)、リンは自身のウェブサイトを通じて、同じ境遇のがん生還者から励ましのメッセージを受け取るようになりました。リンの体験について聞くこと、また、自分の体験を伝えることで女性たちが安らぎを見出していると知ったとき、自分の体験を伝えることに人を癒す効果があると分かったのです。「告白することはすばらしいと思いました。なぜかというと、たぶん、そこには私たちのような人間同士が知り合える巡り合わせのようなものがあるからです。それによって人に話しかけ、援助の手を差し伸べることができるか

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らです」とリンは話します。リン自身は、家族の愛情のおかげで力強

く支えられたと言います。もともと親密な家族でしたが、それでもリンは、乳がんとの闘いを記録する作業を通じて彼女とアナベルが築き上げた信じられないほど親密な関係に驚いています。彼女はまた、息子やその家族と過ごす時間も楽しく(がんとの闘いの日記には、孫との楽しい一時が綴られています)、もっと時間が欲しいといつも思っていました。要するに、乳がんと診断された後、愛する人との日常的な交流にとても大きな魅力を感じるようになった、とリンは言います。そして彼女は時間という贈り物に対して特に敏感になりました。

楽しくも辛くもある、意外な運命のいたずらもありました。リンの治療の間、姉のバネッサがたまたまニューヨークで仕事があり(ブロードウェイで「夜への長い旅路

(Long Day’ s Journey into Night)」に出演)、92歳の母を連れてきていました。偶然にも、彼女たちの母はリンの治療中、バネッサのニューヨーク滞在中に亡くなりました。母を失うのはとても辛かったけれども、母は愛する人たちの前で安らかに永遠の眠りにつきました。それはある意味、

自分が愛する人々を大切にし、

自分が好きなことをする。

今がそのとき、

ここがその瞬間にいるべき場所。

そして、私はあらゆる面で前進している。

それを確信していると、彼女は言います。

34 PiNK • spring 2008

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美しい時間だったとリンは話します。「命に何か別のすばらしく優美な事が起きたようでした。私ががんに罹ってしまい、バネッサがニューヨークに来て、私たちは一緒にいられた。あの年は、どんなにすばらしかったことでしょう。母は、私たちみんなに囲まれて最期を迎えることができました」。それは、人生がはっきりと見えたもう一つの瞬間でした。リンは、愛の大切さ、時間の尊さ、一生を通じて人を導いてくれる関係の力に気付きました。この教訓は今も私たち兄弟の心の中に生きていると、リンは言います。「バネッサと私とコリンはみな、今では高

齢者です。そして、私たちはお互いを大切にし、共に過ごし、お互いを見ています。若かったときにはそれが出来なかった。『私たちは兄弟よ。一緒に育った。あと回しにしても大丈夫』と考えていたんです。でも今、その「あと」が来ました。だから、私たちはみんな、実際に一緒にいられないときは電話を通じて一緒にいられる時間を作り、お互いに強く支え合っています」。

また、リンはより一層精神世界にも支えを見出すようになりました。「私にはこの種の漠然とした霊性がありました」と、彼女

はがんと診断される前の自分の生活について話します。彼女は女優として、初演の夜の前にセント・パトリック大聖堂でろうそくをともす儀礼を進んで行っていました。また、地域で行われる礼拝では常に安らぎを感じていました。しかし、がんと診断されて以降は、平和と平和がもたらす社会を願っている自分を自覚し、彼女はより霊的な営みに意義を見出すようになりました。「そのおかげで大きく変わりました。はまり込んでしまったとでも言うのでしょうか。私は礼拝に行くのが好きです。礼拝の終わりには、穏やかな気持ちになるんです」。地域の教会の祈祷から得られる力のおかげで、自信が持てるようになったとリンは言います。「それは私をまったく別の人生に引き合わせてくれました。精神的にずいぶん安定させてくれます」。

彼女はまた、旅公演のときに自分が精神世界の安らぎを特に意識していることに気付きました。「がんに罹ってしまったせいで、遠く見知らぬ場所にいると、時々少し怖くなります。ニューヨークにいるとき、コネチカットの自宅にいるとき、家族や友人と一緒にいるときは、自分がどこにいるか、自分が足をどの地面に下ろしているのか分かっています。でも、そういった状況から離れると、

不安で少し震えるのを感じるんです。そんな時には『ええ、でも向こうには家族がいて、日曜日にはマチネの前に礼拝に行ける。私は今、何かの一部。精神的に安定していられる』と言葉にすることで、落ち着きます」。

精神的に安定すること、自分が何者か、何を欲しているかを知ること—これらが、リンが乳がん治療の道程で学んだ教訓です。「正直に言うと、いろんな意味で、これを学んだ事が私にとって最高のできごとです。おかげで私の人生はすべて前向きに変わりましたから」。自分が愛する人々を大切にし、自分が好きなことをする。今がそのとき、ここがその瞬間にいるべき場所。そして、私はあらゆる面で前進している。それを確信している、と彼女は言います。

「仕事は目が回るほど忙しい。でも、コネチカットの自宅の庭で過ごす時間も大切にしています。お祝い事は逃しません。自分が存在する必要のある場所に飛んでいきます、それが最後にならないように」。マイナス面は無いのかと問うと、語気を弱め、ほろ苦さだというリン。「唯一のマイナス要素は、のしかかってくる恐怖です。私は欲張り—もっと時間が欲しい。やりたいことがありすぎるの」。

35spring 2008 • PiNK

Page 36: PiNK Spring 2008

ACCJ集会において、5つのチャリティ団体代表者にそれぞれ300万円の小切手が進呈されました。

3 0 0万円の小切手をいただきました!

在 日 米 国 商 工 会 議 所(ACCJ) は、

企業は良き企業市民であるべしとの理

念を掲げています。企業は自らが奉仕

するコミュニティに対して責任ある参加

者となり、消費者を保護するための適

切でバランスのとれた対策を講じるだ

けでなく、社会安全のための効果的な

インフラストラクチャーにも配慮した投

資を促進することが、ひいては社会全

体の経済的安定に不可欠だと考えてい

るのです。ACCJが2007年に展開した

一連のチャリティキャンペーンでは、総

額37,955,379円の募金を集めること

ができました。

<http://www.accjcharityball.org/>

その 大 半 は、2007年12月1日 に 開

催された2007ACCJチャリティ・クリス

タルボールでの収益です。おかげさま

で入場券は完売、500名の参加を頂き

盛大に催されました。

毎年恒例のこのイベントは、ACCJメ

ンバーとその構成企業が年に1度、地

域社会に還元する好機となっています。

慎重な調査と審査を経て、数多くのチャ

リティ団 体 の 中から2007年 度 の 収 益

を分配したのは、以下の団体です。

■女性の家 HELP

http://www18.ocn.ne.jp/

kyofukai/04fahelp.htm

福祉サービスの提供と日本人女性の

地位向上を目指し活動

■ポラリスプロジェクト

奴隷制と人身売買撲滅活動

■ラン・フォー・ザ・キュアファンデーション

乳がんに対する教育・啓発活動

■YMCA障がい児支援プロジェクト

知的または肢体に障害のある子ども達

の支援活動

■ACCJホームレス基金

日本国内の、ホームレス問題に関わるチャ

リティ活動を管理するACCJによる基金

ラン・フォー・ザ・キュア・ファン デ ー ション か ら の

最 新 ニュ ー ス や イ ベ ント な ど の お 知 ら せ で す 。

36 PiNK • spring 2008

Page 37: PiNK Spring 2008

ファンデーションからの声

イベント・スポンサー、ボランティアを募集しています!

ラン・フォー・ザ・キュアファンデーショ

ン支援者の皆様の多大なるご支援ご協

力により、昨年は4100万円の寄付金

を集めることができました。厚く御礼申

し上げます。

様々な募金イベントへのご参加、寛

大なご寄付をいただき、このたびマン

モグラフィ機 器を4台 追 加 発 注するこ

とができました。これによって、ラン・

フォー・ザ・キュアファンデーションに

よる高性能機器の寄贈台数は合計8台

となり、実質的には、国内で医療

サービスが不足している地域に対し

約4000のマンモグラムが提供されるこ

とになります。5年という期間は、乳が

んサバイバーの方にとっても大きな節

目を意味します。当ファンデーションも

今年で創設5年を迎えますが、乳がん

に対する取り組みがより一層進む一年

となることを期待しています。

私たちは引き続き、日本人女性に対

して意識付けの向上、高精度のスクリー

ニング、早期発見および早期治療を目

指し鋭意活動して参ります。

乳が んリスクは、2004年には30人

に1人 だった の が、2007年 に は23人

に1人と悪化傾向にあり、1日に平均

26人が乳がんによって命を落としてい

るのが現状です。

ラン・フォー・ザ・キュアファンデー

ションのミッション遂行には、皆様方の

協同者としてのご参加が不可欠です。

以下、本年度の各行事日程をご確認

いただき、ふるってご参加くださいます

ようお願い申し上げます。

9月27日(土) : 東京アメリカンクラブ/ NAF厚木ゴルフトーナメント

10月18日(土) : ランフォーザキュア/ウォークフォーライフ

10月31日(金) : ピンクボール (ファンデーション創設5周年)

上記募金イベントへのスポンサー参加もお待ちしております。

また、各イベント・ボランティアや、当誌PiNKの編集・校正をお手伝いいた

だける方、さらに、寄稿してい ただける方を募集しています。お力を貸してい

た だける方が いらっしゃいましたら、 是 非、 伊 禮 太 郎(イレイタロウ)tirei@

runforthecure.orgまでご連絡をお待ちしております。

37spring 2008 • PiNK

Page 38: PiNK Spring 2008

INSID

E PLEDG

E月に1度の自己検診

自己検診でいつもの感触を覚えて、

小さな変化を早く感じ取りましょう。

早期発見があなたの胸を、そして命を救います。

自己検診の時期

生理の終了後、乳房の緊張や

腫れがない時が最適です。

生理が不規則な場合や、閉経しているなら

毎月同じ日を決めて励行しましょう。

自己検診の方法1. �鏡の前で、乳房に赤み・腫れはないか、乳首から分泌物はないかを目で確かめます。

2.お風呂やシャワーで体を洗う時に、��・左手の人差し指、中指、薬指の3本の指腹を使って、右の

乳房に固まりやしこりがないかどうか調べます。つまんでは

いけません。

��・まんべんなく調べてその感触を記憶しておきます。指先の

動かし方の一例としては図のような方法があります。

��・同時に左の乳房も調べる(この時は右の手で触ります)

3.あおむけに寝て右肩の下に枕を入れ、右手は頭の下に置い������た状態でも調べるとより確実です。

変化や異常を感じたときは、すぐに専門医(外科、乳腺外科、乳腺科)に相談しましょう。

年に一度は、マンモグラフィ検診を受ける事が推奨されています。触ってもわからないような小さながんを見つけることができます。

監修:癌研究会付属病院乳腺外科 高橋かおる

38 PiNK • spring 2008

Page 39: PiNK Spring 2008

INSID

E PLEDG

E

未 来 へ の 約 束

ニューバランス ジャパン

インタビュー

39spring 2008 • PiNK

Page 40: PiNK Spring 2008

ニューバランス

ジャパン・販売促進課

田中

和加子さん

インタビュー

Interview by Chihiro KogetsuPhotos by Taro Irei

40 PiNK • spring 2008

Page 41: PiNK Spring 2008

ニューバランス ジャパン社は、ラン・フォー・ザ・キュア・ファンデーションの乳がん教育・啓発活動、定期健診の促進および助成活動にスポンサーとして  大きく貢献しているだけでなく、   他団体による運動にも協賛するなど多角的・   積極的にピンクリボン活動をサポートしている企業のひとつです。 その社内にあって、全女性社員向けマンモグラフィ検診の仕組みを立ち上げた田中和加子さんにお話を伺いました。

田中:もともとニューバランスUSAがピンクリボン活動に取り組み始めたのは1991年のことで、以来積極的に貢献活動を展開してきました。ニューバランス ジャパンも、その理念を受け継ぐかたちで2005年から本格的にピンクリボン活動を開始しました。

私は一担当者としてその運営に携わっていた訳ですが、心の中に「対外的な活動と同時に、まずは社内の女性の乳がん対策・啓発を考えたほうがいいのでは無いか」という意識があり、提案を投げかけていたんです。 

でも正直、最初からすんなりとはいきませんでした。(笑) 社長自らが社としてのピンクリボン活動に関して積極的でし

たから、全社的に今後さらに活動を展開していこうという意識も空気もありました。ですが、社員健康診断にマンモグラフィを導入するという事にはすぐに結びつかなかったというか。最初は会社へのプレゼンテーションから始めました。

どんなプレゼンを?田中:まずは、日本での乳がんを取り巻く状況の報告ということで、罹患率から死亡率までさまざまな医療データを収集しました。同時に女性社員への意識調査も行いました。 

日本女性の23人に1人が乳がんになるという統計を考えると、社内に少なくとも2~3人は居るということになるわけです。ですから、協賛活動をしている以上、ますは自社社員における状況把握と健康管理の為にも受診をうけさせてくださいとお願いしたんですね。 

すすでに個人的に定期検診をうけているという社員も、もちろん居ました。でも、社をあげて、福利厚生の一環として、全女性社員に向けてその機会を提供し検診を義務付けることで、当社の乳がんに対する姿勢が対外的にもより明確になるのでは無いかと。

そう訴え続けた結果、2007年10月に従来の社員向け健康診断に加え、新たにマンモグラフィ検診が組み込まれる事になりました。検診方法は会社の前に検診車が来て、皆で検診を受けるという当社の新しい社内健康診断がスタートしました。

費用が会社負担というだけでなく、会社の前で検診が出来るなんて、なおさら受診しやすいですね。田中:そうなんです。当社が健康診断をお願いしている病院では健康診断の中にマンモグラフィ検診のシステムが無かったので、せっかくだから皆にとって最も受けやすい方法でと探していたところ、この検診車という仕組みに出会ったんです。オフィスの目の前に検診車に来てもらえるので、各自仕事のスケジュールの合間に、それこそ15分もあれば検診を受けられるんですよね。

弊社は東京と大阪にオフィスがあるので各1日ずつ検診の日程を設けて、社員には事前に日程を案内し、「当日はなるべく予定入れないように調整し、検診予約を取って下さい」と告知しました。今回お世話になった(株)ATMCさんという乳がん検診車の会社が予約システム等を完備なさっていたので、その後の個々の連絡などの実務は全部お任せすることができて助かりました。ウェブ上で随時予約空き状況がわかる仕組みになっ

ているので、それぞれに仕事のやりくりをしながら「じゃ、この時間に受けてこよう」スケジュールに合わせて調整できるので、社員からも「受けやすかった」との声が多かったですね。 検診費用は、全額会社負担です。

ただ、検診を受けた人からは受診費用という名目で一人当たり1,000円を徴収します。そしてその金額は会社に還元するのではなく、寄付金としてラン・フォー・ザ・キュアファンデーションに提供させていただくことで啓発活動の一端を担うという仕組みを作りました。「検査を受ける、自分の身体を調べる」というのは、いわば

会社からの援助ですが、実際に検診を受けると個々人の意識は多少変わりますよね。そこからもう一歩踏み込み「寄付をする」という行為によって、よりモチベーションを高める、乳がんに対する意識を向ける・育てるという効果を期待したんです。実際、社員の皆もとても喜んでくれて、賛同はしても、「なんで寄付?」というような否定的な意見というのは一切ありませんでした。

受診率は?田中:ほぼ100%。 

当社がピンクリボン活動に協賛しているということは、社員は当然知っています。 そして、「広く世間には乳がん検診の機会を提供しているのに、なぜ社員向けには無いのだろう」という声があったんですね。それは意識調査でも明らかになっていたわけですが、実際にこの制度が誕生したときに、とても多くの人から

「よかった」「うれしい」「ありがとう」の言葉をもらって… ほんとうに、すごく嬉しかったです。

当社の平均年齢が30歳ということもあり、20代を中心に検診を受けたことの無い人が圧倒的でした。でも検査後は「実際に経験してみてよかった」「おもったより平気だった」という反応ばかりでした。

実感としての成果は?田中:第一回の検診で実際に「影」が見つかった方もいたんです。でも極めて早期に発見できたので、大事に至らずに対処でき

41spring 2008 • PiNK

Page 42: PiNK Spring 2008

ました。それこそまさに意図としていたことというか、社員の健康管理・乳がんの早期発見という意味で目標にしていることなので、私個人としても嬉しかったし、当人も喜んでくれました。

マンモグラフィ等の検査があることも、早期発見の必要性・有効性も知っている。でも、受けた事が無いという人が実際には大多数。その理由はなんだと思いますか?田中:1つには「痛い」「こわい」という意見。そして、働いていると検診に出かける時間を取りにくいという声も多いですね。また、「検査費用が安くは無い」という金銭的な理由というのもあります。

当社の女性社員に対してのアンケート結果は、「乳がんに対しての意識も興味もあるけれど、検査を受けた事は無い」という明確なものでした。つまり、少しでも受けやすい環境を整えなくては、受診率は上がらないという事だと考えたんです。そして、協力的な上司にも恵まれて、この仕組みをスタートすることができました。

田中さんの、そのひたむきな情熱の源は?田中:なんでしょうね(笑) まあ、私自身33歳という年齢で、乳がんに気をつけなくてはならない時期にあるわけです。そういう意味での個人的な「意識」や「関心」がまずあると思います。

あと、身近に乳がんにかかった人が居たという事もありますね。その人たちから聞く「治療の苦しみ」や「副作用の辛さ」は壮絶です。でも、そうなる前に、ごく早期に発見出来ればそんな辛い思いをしなくて済むし、95%が治癒するということを知ったんです。だから、同僚社員はもちろんですが、友人など身の回りの全ての人に、「まずは検診を受けよう」とすすめてい

るのが私の日常になりました。 

自分の会社でもこの制度を取り入れたいという人へのアドバイスは?田中:余計に費用がかかったとしても、決してマイナスな事では無いんだという事を強く申し上げたいです。社員の啓発、健康管理という意味でも大きな意味がありますし、社会活動としてピンクリボンを推進していらっしゃる企業ならなおさらのこと、対外的な説得力も認知度も増すことになると思いますので、是非取り入れていただきたいです。

当社ウェブサイト上のピンクリボン活動へのアクセス数も増加しています。社会的にも意識が高まっている事が分かりますし、とにかく反応があるということの大切さを日々感じています。

今後やりたいことは?田中:今回はチームを組める体制ではなかったので、微力でも1人で頑張ろう、とやってきました。でも、当社のピンクリボン活動は今後より積極的に展開していこうという動きがありますので、事業部を作りたいというのが次の目標です。社内の女性のなかには、当社のピンクリボン活動に自ら関わりたいと言う人が居るのかな?と期待しているんですけど(笑)

そして、社内での啓発活動として、乳がんに関わる講習・セミナーを展開していきたいです。乳がんについて、社員の一人ひとりが国内での現状や早期発見・早期診断・早期治療の重要性を認知してもらう事がとても重要だと考えているので、女性だけでなく男性をも対象にしたいと考えています。 

常に自らのハードルをあげて、目標をつくって、これからも努力していきたいです。

NBJとしてのピンクリボン活動についてピンクリボン商品 売り上げの一部をラン・フォー・ザ・キュアファンデーションに寄付USAで作るピンクリボン商品に加えて日本オリジナルも作っていて、ランニング・フィットネス・ウォーキングの3カテゴリーでご用意。ワンポイントで付いているピンクリボンマークが「カワイイ」と女性に好評です。すべてのピンクリボン商品にはタグをつけ、当社のピンクリボン活動についてお知らせしています。

半期に一度、新モデルピンクリボンシューズは2007年秋冬モデルから販売をスタート。来年からは春夏と秋冬の半期に一度、新モデルを発表します。ピンクリボンシューズ購入者には、オリジナル・シューレースやタオルなどをプレゼントしています。

ピンクリボン募金箱オフィシャルショップにはピンクリボン募金箱を設置し、募金して下さった方にはオリジナル・ピンクリボン・バッジをプレゼントしています。小売店さんからも「募金箱を設置したい」「ピンクリボン商品を取り扱いたい」などのご要望が増えてきており、今後ますます広く皆様のお手元にピンクリボン商品をお届けし、募金へのご協力も仰ぐことができると考えています。

毎年10月の「乳がん月間」の集中的な取り組みではなく、一年を通した恒常性のある取り組み、社の理念として、イベント協賛だけではなく、NBJのブランドとして出来ることをという視点で積極的にピンクリボン活動を展開しています。これからも皆様の健康を願うスポーツブランドとして、誇りを持ってピンクリボン活動をサポートして参ります。

数あるCSR活動のなかで、何故ピンクリボン?アメリカのニューバランスは1989年から SusanG.Komenに関わり、1991年よりSusan G.Komen Race For the Cureのスポンサーとして活動してきました。元々はニューバランスの社員が地元/現地のRace for the Cureイベントに参加し、興味を持ったことがきっかけでした。そこからNBの社員に対してはもちろん、お客様にとっての、乳がんの重要性を感じ、 長期的にSusanG.Komenと提携するようになりました。

ニューバランスは、社会貢献活動がいろいろある中で、第一に健康を考えているスポーツブランドとして、このようなイベントにスポンサードすることで、スポーツをする消費者と強い絆を結ぶ貴重な機会だと思っています。

その他の啓発運動はピンクリボンフェスティバル• ピンクリボン・スマイルウォーク大会•

http://www.newbalance.co.jp

42 PiNK • spring 2008

Page 43: PiNK Spring 2008

ごく早期に発見出来ればそんな辛い思いをしないで済む、

95%が治癒するということを知ったんです。

43 winter 2008 • PiNK

Page 44: PiNK Spring 2008

NPO法人Run for the Cure® Foundation

〒150 - 0047 東京都渋谷区神山町18 - 6 神山アンバサダー108号

Tel:03 - 3466 - 4798 / Fax:03 - 3466 - 4799

E-mail:[email protected]

担当者:事務局長 伊禮(イレイ)

ラン・フォー・ザ・キュアファンデーションの基金について

当ファンデーションは、趣旨を同じくする法人に対し積極的に助成金の提供を行っていきたいと考えています。助成金に関するお問い合わせはこちらまでお寄せ下さい。

THE W

AR

RO

OM

ラン・フォー・ザ・キュアファンデーションは、全国において乳がんの早期発見啓発/教育活動を実施している、特定非営利活

動法人です。ファンデーションは、マンモグラフィ機器の寄贈、技師の教育研修また、マンモグラフィ検診料金の助成等を主な

活動としています。

マンモグラフィ機器の寄贈

ファンデーションは現在に至るまで、計4台のマンモグラフィ機器(GE横河メディカル社製performer)を千葉と大阪に寄

贈致しました。そしてこのたび、あらたに4台の追加発注が実現し、現在それらの寄贈準備を進めています。

医療法人社団千葉県勤労者医療協会 健生クリニック/医療法人社団雅厚生会 千葉新都市/

ラーバンクリニック/糸氏医院、大阪府下医療機関(選定中)

マンモグラフィ検診料金助成プログラム

ファンデーションは、マンモグラフィ機器を寄贈した各医療機関において、500名のマンモグラフィ検診の提供を行っています。

マンモグラフィ検診の助成に関するお知らせについては、地域広報誌への掲載、地域掲示板・薬局へのポスター掲載などを行

い、特に企業検診等を受診する機会のない女性たちに提供しています。検診を受診した約60%の女性が初めてマンモグラフィ

検診を受診すると、アンケートに回答しており、マンモグラフィ検診が一般的に普及していないことを物語っています。

医療法人社団千葉県勤労者医療協会 健生クリニック

〒270-1337 千葉県印西市草深138

電話:0476-40-7711

http://www.chibashintoshi.or.jp/

糸氏クリニック

〒559-0016 大阪市住之江区西加賀屋1-1-6

電話:06-6681-2772

http://www.myclinic.ne.jp/itoujiclinic/pc/index.html

医療法人 純幸会 豊中渡辺病院

〒561-0858 大阪府 豊中市服部西町3-1-8

電話:06-6864-230

http://www.watanabe-hp.or.jp/hospital/

44 PiNK • spring 2008

Page 45: PiNK Spring 2008

ニ ュ ー ス で 見 る 治 療 の 進 歩 と 薬THE W

AR

RO

OM

最新ニュースを入手しよう

ある女性の物語

がんを生き抜き、豊かに暮らす

45fall 2007 • PiNK

Page 46: PiNK Spring 2008

最新ニュースを入手しよう

乳がんのMRI検診

核磁気共鳴画像診断(MRI)は、乳が

ん発症リスクが高い女性の乳がん検診、乳

がんが診断されて間もない女性における反

対側乳房の乳がん検出にとって重要な検査

法となるかもしれません。

先 頃、 米 国 が ん 協 会(American

Cancer Society)は、乳がんの検診に年

に1回のMRIを導入する(マンモグラフィと

併用)という勧告を発表しました1。米国が

ん協会による新しいガイドライン2は、乳がん

リスクの高い女性のMRI検診に関する複数

の試験結果を基に作成されました。これらの

試験では、マンモグラフィにMRIを加えるこ

とで、マンモグラフィ単独の場合と比較して、

偽陽性の検査結果の頻度が増加するもの

の、乳がんの検出が大幅に向上することが

明らかになりました。

 これらの結果に基づき、米国がん協会

は以下の高リスク集団について、年に1回、

マンモグラフィに加えて乳房のMRI検診を受

けることを推奨しています。

BRCA1またはBRCA2変異がある女性• 一親等血縁者(親、姉妹、または子供)に• BRCA1またはBRCA2変 異がある女 性

(女性自身がまだ検査を受けていない場

合を含む)リスク評価ツールに基づく乳がんのリスク• が20 ~ 25%以上の女性10 ~ 30歳の間に胸部に放射線照射を• 受けた女性リ・フラウメニ症候群、コーデン症候群、ま• たはBannayan-Riley-Ruvalcaba症 候

群を持つ女性および一親等血縁者の既

往にこれら症候群のいずれかを持つ可能

性がある女性

ガイドラインは、MRI検診は「疑わしい結果

を追跡するために、MRIガイド下生検を実施

できる施設において、経験豊富な医療提供

者によって行われるべきである」としています。

乳がんが診断され、治療を受けたことの

ある女 性では、 視 触 診 検 査やマンモグラ

フィ検査でがんの兆候が認められない場合

でも、最大10%の女性に最終的に反対側

の乳房に乳がんが発見されます。 反対側

乳房の乳がん発生率が高いことから、研究

者らは、乳がんが新たに診断された女性に

対して反対側乳房のMRI検診を実施するこ

との有 効 性を評 価しました3。 本 試 験は、

反対側乳房のマンモグラフィや視触診検査

で異常が認められなかった乳がん患者969

人を対象に実施されました。すべての患者

がMRI検診を受けました。

MRIにより、患者の3.1%で反対側乳房• に乳がんが検出されました。MRIで異常が認められた患者のうち、約• 21%が乳がんでした。

研究者らは、「MRIは、最初の乳がん診

断時に、マンモグラフィや視触診検査で見

落とされた反対側乳房の乳がんを検出するこ

とができる」と結論付けました。

乳がんと診断された患者は、マンモグラ

フィと臨床乳房検査の結果が陰性であった

後に反対側乳房のMRI検診を受ける個々

のリスクとベネフィットについて医師に相談

するとよいでしょう。

参考文献1. American Cancer Society Guidelines for the Early Detection of Cancer. American Cancer Society Web site. Available at: http://www.cancer.org/docroot/ped/content/ped_2_3x_acs_cancer_detection_guidelines_36.asp. Accessed April 11, 2007.2. Saslow D, Boetes C, Burke W, et al. American Cancer Society guidelines for breast screening with MRI as an adjunct to mammography. CA: A Cancer Journal for Clinicians. 2007;57(2):75-89.3. Lehman CD, Gatsonis C, Kuhl CK, et al. MRI evaluation of the contralateral breast in women with recently diagnosed breast cancer. New England Journal of Medicine. 2007;356(13):1295-303.

46 PiNK • spring 2008

Page 47: PiNK Spring 2008

タイカーブが進行性乳がんを対象に承認を取得

米 国 食 品 医 薬 品局(FDA)は、 進 行性乳がんの治療に分子標的薬、タイカーブ®(ラパチニブ)を承認しました。タイカーブの適応には、化学療法剤ゼローダ®

(カペシタビン)との併用による、進行性または転移性乳がんの治療が含まれ、がんがヒト上皮成長因子受容体2(HER2)を過剰発現しており、アントラサイクリン、タキサン、ハーセプチン®(トラスツズマブ)による前治療の後にがんが進行した女性を対象としています。

米国だけでも、年間約4万人の女性が乳がんで死亡しています。転移性乳がんは、乳房から離れた部位に広がったがんを指します。一方、難治性乳がんは、標準療法に反応しなくなったがんを指します。

タイカーブは、転移性または難治性乳がんの女性において有望な結果が得られている分子標的療法です。

分子標的療法は、がん細胞を治療する一方で、正常で健康な細胞へのダメージを最小限に抑えるよう設計された抗がん剤です。タイカーブは、乳がん細胞でしばしば機能

に異常をきたす2つのたんぱく質(HER2とEGFR)を標的にします。これらのたんぱく質ががん細胞で過剰発現された場合(HER2陽性および/またはEGFR陽性がんと呼ばれます)、たんぱく質の機能が異常をきたす傾向にあり、その結果、抑制を受けることなく、がん性細胞が複製・増殖します。

今回の承認は、英国とペンシルベニア州のアレゲーニー総合病院(Allegheny General Hospital)の研 究 者によって実施された第III相臨床試験に基づいています。同試験では、HER2陽性乳がん患者を対象に、タイカーブとゼローダの併用療法とゼローダ単剤療法が直接比較されました。同試験にはHER2陽性、難治性、進行性または転移性乳がんの患者324例が登録されました。すべての患者は、以前にアントラサイクリン、タキサン、ハーセプチンによる治療を受けていました。

患者はタイカーブとゼローダの併用療法群またはゼローダ単剤療法群のいずれかに割り付けられました。

がん進行までの時間の中央• 値(半数の女性ががんの進

行を経 験するまでの 時 間 )

は、併用療法群で8.4カ月、単剤療法群で

4.4カ月でした。全生存期間について、両群間に差は認め• られませんでした。副作用は、両群で概ね類似していました• が、併用療法群の患者において、下痢、

胃のむかつき、発疹がより高い頻度で生じ

る傾向にありました。

 前治療の後に進行した進行性HER2陽性乳がんの患者は、タイカーブによる治療のリスクとベネフィットについて医師と話し合ってください。

参考文献タイカーブ®(ラパチニブ)は、化学療法剤ゼローダ®(カペシタビン)との併用で、前治療後に進行した、進行性または転移性乳がんを対象にFDAの承認を取得しています。グラクソ・スミスクライン社ウェブサイト: us.gsk.com/ControllerServlet?appId=4&pageId=402&newsid=1039. Accessed April 11, 2007.

47spring 2008 • PiNK

Page 48: PiNK Spring 2008

Cancer(キャンサー、米国癌学会雑誌)に発表された試験結果によると、リンパ節転移陰性、エストロゲン受容体陽性(ER陽 性 ) 乳 がんの 女 性 において、Oncotype DX™検査結果に基づき治療を決定すると、良好なアウトカムが得られ、費用が許容範囲内に収まりました。

早期リンパ節転移陰性乳がんの女性の多くには化学内分泌療法が推奨されますが、化学内分泌療法のベネフィットはさまざまです。化学内分泌療法の恩恵を受けられる可能性がもっとも高い女性を事前に特定できれば、さらなる個別化治療が可能になるでしょう。一方、化学内分泌療法の恩恵を受けられる可能性が低い女性は、治療の毒性効果を回避することができます。

Oncotype DXはゲノム検査の一種で、新 規に診 断された、I期またはII期、リンパ節転移陰性、ER陽性の乳がん患者のうち、ホルモン療法に追加したアジュバント化学内分泌療法の恩恵を受けられる可能性がある患者を特定するのに有用です。Oncotype DX™ は、 診 断 後10年間にがんが再発するリスクを予測します。Oncotype DX™は、患者から採取したがん試料で21の遺伝子の活性を調べ、患

者の再発スコア(Recurrence Score:RS)を決定します。RSの範囲は0 ~ 100で、スコアが高いほど再発のリスクが高くなります。

リンパ節転移陰性、ER陽性乳がんの治療を導く目的でOncotype DX™を使用する場合の潜在的結果と費用を評価するために、3つの異なる治療方法(全患者をタモキシフェンのみで治療、全患者をタモキシフェンと化学療法剤で治療、Oncotype DX™再発スコア(RS)を用いて治療決定を導く)が比較されました。RSを用いた方法では、リスクが低い女性はタモキシフェン単剤療法を受け、リスクが中程度または高い女性は、タモキシフェンと化学療法剤による併用療法を受けます。

全患者をタモキシフェンのみで治療した場• 合と比較して、RSを用いた治療アプロー

チでは、平均余命は長くなりましたが、費用

は高くなりました(それでも許容範囲内)。全患者をタモキシフェンと化学療法剤で• 治療した場合と比較して、RSを用いた治

療アプローチでは、平均余命がほぼ等し

く、費用が低くなりました。

同試験から、早期ER陽性乳がん女性では、治療を個別化するためにOncotype DX™検査を使用することで、許容範囲内の費用と良好なアウトカムが得られる可能性が示唆されます。

乳がん管理におけるOncotype DX™検査の使用は、TAILORx乳がん試験として知られる現在実施中の臨床試験でさらに検討されています。同臨床試験に関する詳しい情報については、www.cancer.g o v / c l i n i c a l t r i a l s / d i g e s t p a g e /TAILORxをご覧下さい。

Oncotype DX™(Oncotpeとは癌遺伝子型の意)は乳がん治療を効果的に導く

参考文献Lyman GH, Cosler LE, Kuderer NM, Hornberger J. Impact of a 21-gene RT-PCR assay on treatment decisions in early-stage breast cancer: an economic analysis based on prognostic and predictive validation studies. Cancer. 2007;109(6):1011-18.

48 PiNK • spring 2008

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HER2陽性乳がんを対象に、標準療法に追加して用いる治験薬、Myocet®(ドキソルビシン非ペグ化リポソーム製 剤 )の第III相臨床試験(FDAによる審査前の最終相)において現在、患者登録が進められています。

転移性乳がんとは、原発部位から遠隔部位に広がったがんを指します。転移性乳がんに対する標準療法には、ホルモン療法ないし標的療法を伴うまたは伴わない化学療法がしばしば含まれます。ドキソルビシンは、乳がんの治療に一般的に用いられる化学療法剤ですが、不可逆的な心臓の障害など、重大な副作用を引き起こす可能性があります。

Myocetは、活性型ドキソルビシンを含みますが、薬剤に関連する副作用を軽減するよう処方された治験薬です。

乳がんの20 ~ 30%でHER2として知られるたんぱく質が過剰発現されています(作られ過ぎています)。 同たんぱく質 の 過 剰 発 現 は、HER2陽 性 乳 がんと呼ばれ、がん細 胞の増 殖 亢 進と乳がん予後の悪化をもたらします。ハーセプチン®(トラスツズマブ ) は、HER2陽 性細胞を認識し、結合する薬剤です。ハー

セプチンの効果は、細胞増能の低下と細胞死の増加と考えられています。

研究者らは、Myocetの有効性をさらに評価するために、転移性HER2陽性乳がんの患者を現在試験に登録しています。同臨床試験は、転移性乳がんに対する初回療法として、ハーセプチン+タキソール®(パクリタキセル)からなる標準療法とMyocet+ハーセプチン+タキソールの組み合わせを直接比較するものです。同臨床試験の目的は、標準療法にMyocetを追加することで、これらの患者の抗がん反応が向上するか否かを明らかにすることです。

乳がんに対するMyocetを評価する臨床試験が現在患者を登録中

本試験の患者登録について詳しくは、以下のウェブサイトをご覧ください。http://ecancertrials.com/ClinicalTrials.aspx?CancerTypeld=4&CancerStageld=NULL&State=All&Protocolled=STM01-102

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遺伝子情報の贈り物

ある女性の物語

Sue Friedman, DVM FORCE(Facing our Risk of Cancer Empowered)のために

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そ れ は 遺 伝 子 の 中 に〜 が ん と 家 系 〜

10年前、33歳で乳がんと診断され、乳がんと子宮がんのリスクが高いことを示すBRCA2遺伝子変異を自分が持っていること知ったとき、まず頭に浮かんだのは自分自身についての心配でした。しかし、程なくして私の思いは、この診断が家族に持つ意味合いへと向かいました。

診断を受けた時、私は家族の病歴についてほとんど何も知りませんでした。私たちはとても親密というわけではなく、父母の家系に女性はわずかしかいませんでした。母も私も一人娘で、父には兄弟が3人と姉が1人だけでした。家族の病歴について実際に知っていることと言えば、父方の祖母が1940年代に肝臓がんで若くして亡くなったということでした。母は動脈瘤のため(やはり若くして)亡くなりました。母方の祖父母は、母より長生きし、80歳代に安らかにこの世を去りました。父は当時まだ健康でしたが、後に前立腺がんで亡くなりました。

若い頃、自分自身が何らかのがんを発症するリスクが高いと考えたことはありませんでした。医師は決まってがんの家族歴について尋ねましたが、家族での唯一のがんは父方の祖母で、肝臓がんで亡くなったと伝えると、それ以上は何も質問されませんでした。幸いなことに、私は健康に十分気を配っていたで、29歳で自己乳房検診を行いました。良性のしこりを発見したのは最初の自己検診の時でした。その時から、定期的にマンモグラフィ検査を受け始めました。そして4年後の追跡マンモグラフィ検査で乳がんが発見されたのです。

診断の後でさえ、私が33歳で乳がんになり、父方の祖母が若くしてがんで亡くなっていることを気に留める医師はいませんでした。診断の8カ月後に偶然、新聞記事を見つけるまで、自分の乳がんと祖母のがんとの関連を考えたことはありませんでした。その記事では、遺伝性乳がんと子宮がんの関連性が指摘され、双方のがんの原因になる可

能性がある遺伝子変異を持つ、特にリスクの高い特定の集団について説明されていました。遺伝子検査を受ければ、そのような変異を持っているかどうかを確認できるとのことでした。いくつかの考えがすぐに思い浮かびました。第一に、1940年代にさかのぼって、医療がそれほど高度でなはなかった頃、進行した子宮がんを肝臓がんと間違える可能性が非常に高かったのではないかということ。第二に、私がさらにがんになるリスクが高いかもしれないということ。そして第三に、検査を受けたいということでした。

あれこれ調べた結果、遺伝子検査を受ける前に、予測検査のリスクとベネフィットについて詳しく説明してくれる、遺伝子カウンセラーと呼ばれる専門家に会う必要があることを知りました。カウンセラーにはまず、がんと他の疾患について家族歴を調べるようにと言われました。私が家族の医学的背景についてほとんど何も知らないということ、さらには連絡を取り合っていた親戚から得られる情報がいかに少ないかということに気付き、私は愕然としました。それでも、遺伝子カウンセリングは非常に有用で多くの情報が得られると思い、後に検査を受けることに決めました。検査の結果はBRCA2変異陽性でした。この結果は、私がさらなる乳がんと子宮がんを発症するリスクが極めて高いことを意味しているのです。

検査結果のショックが和らいでから、家族に情報を伝えることを決意しました。プライバシーと潜在的な遺伝子差別の問題は心配でしたが、同じようにリスクが高いかもしれない家族に知らせずにはいられませんでした。遺伝子カウンセラー曰く、私は家族の中の「遺伝性がんの危険信号」でした。インターネットを使ってできるだけ多くの親族を探し出しました―20年以上も話をしていない従姉妹を含めて。電話をかけることは容易ではありませんでしたが、彼女らの健康に関するこの重要な情報を知らせる義務

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があると感じました。私の遺伝子検査の結果と一緒に、選択肢について話し合うことのできる遺伝子カウンセラーを居住地域で見つける方法も伝えました。

私 は、 後 に 設 立 し た 非 営 利 団 体FORCE(Facing Our Risk of Cancer Empowered)を通して、高リスクのコミュニティーを代弁することができました。遺伝子検査の結果について誰に知らせるべきかという問題は定期的に持ち上がります。複数の家族が似た診断を受けていた場合でさえ、親戚のがんについて知らされたことのなかった多くの若いがん患者を数多く知っています。もし知らされていれば、家族のがん症候群が前もって警告されたかもしれません。非常に切実な理由から、親族と医学的情報を話し合うことができなかった生還者たちも知っています。しかし、がんの診断が恥と狼狽で覆い隠された日々、一部の家族のあいだだけで囁かれ、秘密裏に治療さ

れた日々は、願わくは過去のものです。私の場合、疑いはありませんでした。重大かつ残念な情報を家族に伝えなければならなかったのです。

がんは、遺伝的要素が考えられる数多い疾患のひとつです。がんの原因がすべて解明されているわけではなく、また、大部分のがんは遺伝性でないと信じられています。もちろん、家族の1人ががんであったからといって、自動的に他の家族もがんのリスクが高いということにはなりません。それでもやはり、誰が、何歳の時に診断されたのか、家系におけるその人の位置付けといった医学的情報は、重要な命の助けとなる可能性がある病歴の構成要素かもしれません。私のがん診断は決して好ましいこととは言えませんでしたが、医学的情報の共有は、私が進んで親戚にあげた贈り物です。この情報がこのような気持ちで受け入れられ、他の家族とも共有されることを願います。

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若い頃 、自分自身が 何らかのがんを発 症するリスクが

高いと考えたことはありませんでした。

医 師は決まってがんの家 族 歴について尋 ねましたが 、

家 族での唯 一のがんは父 方の祖 母で 、肝 臓 がんで 亡くなったと伝えると、

それ 以 上は何も質 問されませんでした。

家族に情報を提供する方法

2006年2月、フロリダ 州タンパにて、遺伝性乳がんおよび子宮がんをテーマとした初の患者フォーラムが開催されました。

「リスクとうまく付き合う」と題するセッションにおいて、がんやリスクに直面している本人と家族のカウンセリングを専門にしている臨床心理学者ポール・ジェイコブソン博士(Dr. Paul Jacobsen)は、遺伝子検査から生じる感情的、心理学的、家族的な問題について論じました。

検査前でさえ、家族の病歴を収集することや親戚に検査を受けるよう求めることは衝突を生む可能性があります。また、検査結果を家族に伝えることは、それ以前の疎遠な関係を考えると、非常に困難になる可能性があります。ジェイコブソン博士は、難しいシナリオとして次の例を挙げました。「私は25年間、従姉妹たちと話をし

ていません。これから突然電話をかけて、彼女たちが乳がんと子宮がんのリスクを高める遺伝子変異を持っているかもしれないと伝えます。」

ジェイコブソン博士は、指示的な言い方(「私にはこの変異があります。あなたと娘さんも検査を受ける必要があります」)ではなく、親戚が自分自身で選択ができるよう中立的な言い方で情報を提供することを薦めます(私は検査を受けて結果を持っています。興味がありますか)。既に家族間で対立がある場合は、建設的なコミュニケーションを促すために、メンタルヘルスの専門家など中立的な第三者を含めることを推奨します。

FORCEは、遺伝性乳がんおよび子宮がんに取り組む全米規模の非営利団体です。詳しくは、www.facingourrisk.orgをご覧下さい。

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がんを生き抜き、豊かに暮らすMia James

がん生 還 者 の 長 期 的 な 健 康とウェルビ ーイングに専 心する専 門 施 設 が 、ランス・アームストロング 基 金と力をあわせ 、質 の 高いサバイバ ー ケア実 現 へ 。

サバイバーシップ 人 生を幸 福に生き抜くとき

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2005年、自転車選手ランス・アームストロング(Lance Armstrong)は、ツール・ド・フランス7連覇を達成

しました。1996年に睾丸がんと診断され、すでに脳と肺にまで転移していたという事実を考えると、同ア

スリートの記録的な勝利は偉業というほかはありません。特にがん患者、生還者とその家族、医療提供者

にとってもっとも重要なポイントは、この自転車レースチャンピオンが生還者であるという事実でしょう。アー

ムストロングのがんからの勝利の帰還から、何百万人もの米国人ががんの診断を生き抜き、豊かで活動

的な生活を送っていることが浮き彫りになります。

55spring 2008 • PiNK

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けれども、サバイバーシップには新たな問題が浮上します。疾患と治療によって身体は永久的に変化しています。さらに、治療が終わっても、生還者は新しい社会的、財政的、教育的、雇用的問題を抱えた生活に直面します。幸いなことに、ランス・アームストロング 基 金(Lance Armstrong Foundation:LAF)リブストロング・サバイバーシップ・センター・オブ・エクセレンス・ネットワーク(LIVESTRONG® Survivorship Center of Excellence Network)と、LAF助成金を受けて運営されている優れたサバイバーシッププログラムが、米国内で1000万人と推定されるがん生還者が抱える特有のニーズに、うまく応えています。たとえば、シアトルのフレッド・ハッチンソンがん研究センター(Fred Hutchinson Cancer Research Cen-ter)のサバイバーシッププログラムとイリノイ州のエヴァンストン・ノースウェスタン・ヘルスケア(Evanston Northwestern Healthcare:ENH)のリビング・イン・ザ・フュー チャー(Living in the Future:LIFE)プログラムは、がん生還者に、長期的な健康とウェルビーイングに関する問題に対処する継続的なケアを提供しています。また、これらの際立ったプログラムから、包括的がんセンターとコミュニティレベルの双方でがん生還者を支援しているLAFの姿が浮き彫りになります。包括的がんセンターであるハッチンソン・センターのプログラムは、リブストロング・サバイバーシップ・センター・オブ・エクセレンス・ネットワークのメンバーです。一方、LIFEはLAFコミュニティ助成金を受けています。

このような施設が提供するケアを求める生還者の声は、ますます大きくなっています。米国医学研究所(Institute of Medicine:IOM)の2006年度報告書では、がん生還者特有の問題にスポットが当てられました。IOM報告書は、満たされないことが多いがん生還者のニーズに注意を払うことを求め、効果的なサバイバーシッププランの鍵となる要素を概説しました。IOMガイドラインは、各患者について、受けたケアと疾患特性の詳細な記録、そして文書化されたフォローアッププランを作成することを提案しました。同プランには、

56 PiNK • spring 2008

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新規がんおよび再発に対して推奨される検診、生じうる治療の長期的影響、人間関係、性的機能および仕事に対する影響、そして保険、雇用、財政面への潜在的影響を盛り込む必要があります。さらに、プランに含まれる要素としては、予防になる可能性があるライフスタイルや栄養面での選択肢に関するアドバイス、がん生還者特有のニーズに対応できるフォローアップ医療提供者の紹介などがあるでしょう。IOMによると、包括的サバイバーシッププランには、有用なリソースとその利用方法に関する情報が含まれます。

IOMガイドラインは、生還者の継続的なニーズを明確に反映しています。リブストロング・サバイバーシップ・センター・オブ・エクセレンス・ネットワークのミッショ

ンも同様です。LAFのウェブサイト(www.laf.org)によると、同ネットワークは、「がんサバイバーシップ分野における進展を大きく推し進めるべく、主要施設の専門知識、経験、独創性、生産性」を利用しようと懸命に努力しています。センター・オブ・エクセレンス助成金とコミュニティ助成金をそれぞれ獲得した、ハッチンソン・センターのサバイバーシッププログラムとENHのLIFEプログラムによる、がん生還者の長期ケアに対する取り組みは、サバイバーシップの専門家によって高く評価されています。両プログラムは、主要がんセンター(フレッド・ハッチンソンがん研究センター)とコミュニティにおける(LIFE)効果的なサバイバーシッププログラムの手本となっています。

ハッチンソン・センターのサバイバーシッププログラムには、

骨髄移植および幹細胞移植レシピエントに対する

長期フォローアップケア、さらには小児がん、前立腺がん、

乳がん、子宮がんの生還者を対象としたプログラムがあります。

フレッド・ハッチンソンがん研究センターのサバイバーシッププログラムで、がん生還者の治療後の長期ケアに対する取り組みを率いるのは、ディレクタを務めるデブラ・フリ ードマン 医 師(Debra Friedman, MD)です。「がんセンターとして、患者が生涯にわたり自身をケアすることを支援することが私たちの責務です」と、フリードマン医師は言います。

新規診断時に受けたケアと同じ質のケアをがん生還者にも拡大するという目標を掲げるハッチンソン・センターのサバイバーシッププログラムには、骨髄移植および幹細胞移植レシピエントに対する長期フォローアップケア、さらには小児がん、前立腺がん、乳がん、子宮がんの生還者を対象としたプログラムがあります。フリードマン医師は、従来療法による治療を受けた一般的な腫瘍の生還者に対するプログラムの立案も統括しています。すべてのプログラムは、シアトル・キャンサー・ケア・アライアン ス(Seattle Cancer Care Alliance)の外来部門をベースに運営されています。3つの卓越した施設(ハッチンソン・センタ ー、 ワシントン 大 学[University of Washington]、こども病院・地域医療センター[Children’ s Hospital and Re-

gional Medical Center])による協力の下、シアトル・キャンサー・ケア・アライアンスは、サバイバーシップケアにおいて飛躍的な進歩を遂げる態勢を整えています。

LAF助成金を受けて、ハッチンソン・センターのサバイバーシッププログラムの主要なイニシアチブが強化されます。これには、これまで十分なケアを受けられなかったコミュニティへのケア拡大が含まれます。この目的を達成するべく、シアトルの外でハッチンソン・センターの3つの付属施設設立が進められています。これは、スラム地区の、英語を母国語としない、アラスカ先住民およびアメリカ先住民に質の高いケアを提供することを目的としています。これらの地域を選んだ理由として、多様な集団と(アラスカの場合は)主要な医療機関から物理的に離れた場所に住む人々にケアを提供するためですと、フリードマン医師は説明します。

フレッド・ハッチンソンがん研究センター サバイバーシッププログラム

57spring 2008 • PiNK

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プログラムの対象範囲が広く、人口統計学的に多様なことに加えて、プログラムに利益をもたらす新しい研究イニシアチブとの

「融合」が楽しみですとフリードマン医師は言います。「LAFネットワークの一員として、生還者の生活向上を図るべく、他のセンターと協力することができます。」

ワシントン州リンデン在住の、25歳のホジキンリンパ腫生還者であるメリッサ・バンルー(Melissa Vanloo)は、ハッチンソン・センターのサバイバーシッププログラムに参加しています。同プログラム参加者にとって一番の利点として、メリッサは心の安寧を挙げています。幼い2人の子供を抱える忙しい母親であるメリッサは、サバイバーシッププランのおかげで、心配事を脇に置いて家族に集中できることに感謝しています。

「彼らがそこにいてくれること、そして多くの有用なリソースを持っていることで安心で

きます」とメリッサは言います。また、ハッチンソン・センターの医療

提供者について、「薬剤に関する知識が豊富で、副作用と再発に関して何が予測

されるかを知っています」と述べています。メリッ

サ は、 年1回 の フォローアップが専門家の鋭い視線の下で

実施されていることを確信しています。

メリッサはまた、 ホ ジ キ ン

病とその治 療のために、彼女の身体が、がんに

かかったことのない25歳の人の身体とは大きく異なることを認識しています。そのため、栄養指導は特に貴重

でした。「私の身体の変化に適切に対応する栄養ガイドラインがあっ

たおかげで、がん治療薬によって消耗した部分を築き直す助けになる特定の栄養素について学ぶことができました」と、メリッサは言います。

ワシントン州ポートタウンゼンド在住のメアリー・

ティーティエン(Mary Tietjen)も、ハッチンソン・センターのプログラム参加者です。かつてマーケティング担当重役を務めた59歳のメアリーは、1998年にIIA期乳がんの診断を受け、乳房切除、化学内分泌療法、放射線照射、ノルバデックス®(タモキシフェン)を含む治療を経験しました。メアリーは同プログラムについて、「私にとって一番大きなメリットは、いつも前向きな姿勢でいられることです」と語ります。彼女のサバイバーシッププランは、「今から10年後に、心身ともに確実に健康になること」に重点を置いたもので、医学的サポートと栄養指導を受け、さらにはサバイバーシップケアにおける最新の進歩と研究について常に情報を得るというものでした。たとえば、生還者を対象とした臨床試験に関心を寄せていたことから、メアリーは子宮がんの早期発見に関する臨床試験に参加することになりました。現在は、タモキシフェン投与後のアロマシン®(エキセメスタン)の有効性を評価する臨床試験に参加しています。

メリッサやメアリーのような生還者に対し、ハッチンソン・センターのサバイバーシッププログラムは、積極的ながん治療からプライマリケアおよび家庭でのケアへと移行する過程を支援しています。もし支援がなければ、生還者はうまく移行することができないとフリードマン医師は言います。徹底的な検診と健康状態の評価、個別化されたサバイバーシッププラン(コピーが腫瘍内科医とプライマリケア医に提供されます)は、両医療部門の垣根を越えた、包括的な情報共有を実現することで、腫瘍医とプライマリケア提供者間の溝を埋めることを目的としています。

腫瘍内科医は、がんとがん治療の長期的効果に関する専門知識を持っていますが、急性期患者をケアする必要性が高いため、生還者のケアに当たる機会はほとんどありません。一方、プライマリケア医は、がんが全般的な健康に与える影響について理解を深めれば、より良いケアを提供することができるでしょう。切れ目のないケアを実現するために、医療記録の入念な検討、年1回の包括的な健康診断の実施、そして必要に応じて専門家や検査への紹介が行われま

58 PiNK • spring 2008

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す。さらに、サバイバープランでは、積極的ながん治療の終了後に、生還者が孤独を感じないよう気を配っています。すなわち、

サバイバーシップケアでは、参加者に「いつも話を聞いてくれる人、自分の話をさせてくれる人」を提供しているのです。

「私にとって一番大きなメリットは、

いつも前向きな姿勢でいられることです」

ハッチンソン・センターのプログラムとコミュニティベースの同付属施設によって、主要ながんセンターが個々のコミュニティにケアを拡大し得ることが示されていますが、多くのコミュニティセンターも、サバイバーシッププログラムを立案しています。フリードマン医師がサバイバーシップセンターのLAFネットワークに参加することの利点について述べたように、主要施設とコミュニティセンターが情報共有の機会を持つことがサバイバーシップケア発展の鍵を握っているのです。

イリノイ州ENHのサバイバーシッププログラム、LIFEの創設者でありディレクタを務めるキャロル・ローゼンバーグ医師(Carol Rosenberg, MD, FACP)にとって、このようなコラボレーションは「エビデンスに基づく芯のある草の根」コミュニティサービスとなります。言い換えるなら、LIFEはプログラムの対象となるコミュニティ固有のニーズを満たすよう設計されていますが、それと同時に最新の研究と足並みをそろえています。その結果が、ローゼンバーグ医師が「コミュニティによる、コミュニティのための」と称する、革新的な、個別化されたケアなのです。2006年、LIFEはLAFより交付された27のコミュニティプログラム助成金の1つを受け、LAFのサバイバーシップセンター・ネットワークに加入しました。

シカゴ地域における初のサバイバーシッププログラムであったLIFEは、2006年の開始当初、乳がんに焦点を当てていました。2年目には、あらゆるがんの生還者へと支

援を拡大する予定です。LIFEは、IOMサバイバーケアガイドラインに沿った、切れ目のないがん治療における明確な段階としてのサバイバーシップケアの確立を目指しています。ハッチンソン・センターのプログラムと同様に、LIFEは、最初の治療と治療後のケアの架け橋を作り出します。LIFEは、集中的な治療を終了した後の生還者と、プライマリケア医、地元の支援ネットワーク、リソースとをつなぎます。このような支援がなければ、ローゼンバーグ医師が言うように、生還者は「医療のエスコートなしに」進むことになってしまうのです。

このように、LIFEは生還者のガイド役を務めるのです。LIFEは、サバイバーシップを専門とする看護師、キャロル・マルツ

(Carole Martz, RN, MS, AOCN)の個別訪問で始まります。個別訪問で得られた情報と関連する病歴の調査を合わせ、生還者の診断および治療計画、継続的モニタリングのガイドライン、予防的アドバイス、適切なリソース(受胎能や遺伝子に関連するものなど)の記録を作成します。これは、患者が「力を与えられたと感じる」情報の組み合わせです、とマルツ看護師は言います。マルツ看護師は、このような訪問のタイミングも非常に重要だ

エヴァンストン・ノースウェスタン・ヘルスケア(ENH)のリビング・イン・ザ・フューチャー(LIFE)

ハッチンソン・センターのサバイバーシッププログラムについて詳しくはwww.fhcrc.org/patient/support/survivorshipをご覧下さい。

59spring 2008 • PiNK

Page 60: PiNK Spring 2008

と言います。生還者が次の医療段階について不安を感じ、教育を受けることを切望しており、将来の健康を確実なものにすることに積極的である時、「教育可能な瞬間を最大限に利用する」ことができるのです。

ローゼンバーグ医師によると、ENHのプログラムは、作成された記録を電子化することで、生還者と医療提供者間の情報共有の効率向上を図り、サバイバーシップケアに一大革命をもたらしました。マルツ看護師も、ENHの電子システムにより、初回面談前に患者の治療および医療に関する情報を得ることができるため、サバイバーケアの計画が最初の段階からスムーズに進むと言います。同分野では、LIFEは大規模施設の一歩先を行きます。大規模施設は

LIFEのテンプレートを参考に独自の電子記録を作成しています。

LIFEはまた、がん生還者に共通する問題を扱うセミナーを定期的に開くことで、コミュニティ支援の拡大を図っています。「Survivorship

101 Seminar(サバイバーシップ101セミナー)」と題するシリーズは、「スライバーシップ:サバイバー

シップをナビゲート―LIFEのためのロードマップ」で始まりま

す。第1回セミナーでは、サバイバーシップの主要な側面とともに、コミュニティベースのサバイバーリソースの利用方法を紹介します。続くセミナーでは、生還者が持つ

さまざまな懸念に焦点を当てます(「が

んを克服するための食 事 ―が

んから遠ざかる」、「がん後の自尊心と性的親密さ」など)。サバイバーシップに関するさらなる情報は、www.enf.org/lifeで閲覧することができます。サイトを訪れた人は最新のサバイバーニュースを読み、オンラインリソースを見つけることができます。

セミナーと標 準プログラムに加えて、LIFEは、各生還者が抱える課題は、診断時の年齢、がんの種類と重症度、治療の種類と強度、財政状況、フォローアップケアの利用可能性、雇用および教育関連の問題によって決定されることを常に念頭に置いています。このような問題のひとつひとつが、がん治療から将来の生活への移行を支援するための個別プランをLIFEチームが作成する際に、強く影響してきます。LIFEに見られる人的な質の高さは、各メンバーやスタッフが、本人または家族の経験を通してがんサバイバーシップとつながりがあるからだとローゼンバーグ医師は説明します。ローゼンバーグ医師自身、若年成人のがん生還者の親であることから、プログラムに対する個人的な関心とその発展に対する誇りが高まっています。

49歳のがん生還者、ヘレン・ハケット(Helen Hackett)はLIFEプログラムによる支援と教育の機会を大いに享受しています。これらなしに治療後のケアを切り抜けることは想像できません。「LIFEプログラムができる前、生還者は一体どうしていたのだろう」―どのようにLIFEを利用しているか、LIFEから何を学んでいるかを説明しながら、フィットネスインストラクターを務めるヘレンは言います。マンモグラフィ検査で乳がんが診断され、乳腺腫瘤摘出、化学療法、放射線治療などの治療を受けた後、ヘレンはマルツ看護師と面会しました。病歴を確認後、栄養とエクササイズについて話し合いました。ヘレンはセミナーに出席するほか、がんに関する最新ニュースやがん生還者としての彼女のニーズに対

エヴァンストン・ノースウェスタン・ヘルスケア(ENH)のリビング・イン・ザ・フューチャー(LIFE)について詳しくはwww.enh.org/l ifeをご覧下さい。

60 PiNK • spring 2008

Page 61: PiNK Spring 2008

生 還 者 に 朗 報2007年4月、ランス・アームストロング基金(LAF)は、がんサバイバーシップ研究プロジェクト、睾丸がんの基礎・臨床研究、米国各地のコミュニティを中心としたがんサバイバーシップイニシアチブを支援するために、410万ドルを助成金として交付したと発表しました。

LAFが最近助成金を交付した中には、がんサバイバーシッププログラムを運営する、コミュニティベースの非営利団体に対する5件の助成金(計244,400ドル)があります。これは昨秋交付された、およそ100万ドルのコミュニティプログラム助成金を補足するものです。コミュニティ助成金には、疲労、体重増加、がん再発率を低下させるための介入プロジェクト(アイオワ州シーダーラピッズ、マーシーメディカルセンター[Mercy Medical Center])、乳がん生還者に、特有のニーズと健康問題に対処するためのケアパッケージを提供するプロジェクト(ペンシルバニア乳がん連合[Pennsylvania Breast Cancer Coalition])など、女性に共通の問題に取り組むプログラムが含まれます。

「LAFは、助成プログラムを通して、がんに罹った人々のQOL(生活の質)向上を図ることに焦点を当てています」と、LAFの助成担当ディレクタを務めるスザンヌ・コー(Suzanne Kho)は述べています。「私たちは、がん生還者ががんに伴う困難と変化に立ち向かうことを支援している全国の地域団体および施設研究者を支援できることを光栄に思います。」

LAFより資金提供を受けた他のがんサバイバーシップ研究調査では、アフリカ系米国人の頭頸部がん生還者のQOL、がん生還者における慢性疼痛、前立腺がん生還者の糖尿病予防、および診断・治療後の生還者の就労意思が検討される予定です。

LAFはその創設以来、研究助成金として1870万ドル以上、また、コミュニティベースの非営利団体への助成金として480万ドル以上を提供しています。

LAF助成金について詳しくはwww.livestrong.orgをご覧下さい。

応できるプライマリケア医を見つけるといったトピックについて、ローゼンバーグ医師とマルツ看護師に相談しています。

フィットネスインストラクターであるヘレンは、LIFEの栄養、ライフスタイル、エクササイズデータを特に重宝しています。プラスの変化が再発リスクを低減する可能性を知っていることで安心感を得られるとヘレンは言います。また、「がんの再発を抑制できないのなら、リスクを減らす可能性のある選択肢を選ぶことが慰めになります」と説明します。LIFEセミナーで紹介されたこれらの選択肢の例として、赤身の肉とアルコールの摂取を制限すること、エクササイズを行うこと、健康的な体重を維持することなどがあります。

これらのアドバイスや盛りだくさんの

LIFEカリキュラムでは、メッセージが力を与えてくれるとヘレンは言います。これは、教育目標の基となっているとローゼンバーグ医師が言う、「知識は力なり」というテーマに沿っています。サバイバーシップに対するこのような積極的なアプローチによって、LIFEは、がん後の長く健康な生活への道筋を先導しようとしています。なぜなら、

「がん治療が終わったときが終わりではない」からと、LIFEの創設者であり、ディレクタを務めるローゼンバーグ医師は力説します。そして、ローゼンバーグ医師は、がん診断を乗り越えて、長く、豊かで、健康な生活を送ることができる生還者の数が増え続けることを確信しています。

61spring 2008 • PiNK

Page 62: PiNK Spring 2008

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62 PiNK • spring 2008

Page 63: PiNK Spring 2008

SUPPO

RTIV

E CA

RE

一部の漢方薬が化学療法に伴う

悪心の軽減に有効

が ん 治 療 を 乗 り 越 え る た め の 方 法

63spring 2008 • PiNK

Page 64: PiNK Spring 2008

先頃A

nnals of Oncology

(腫瘍学紀要)に掲載された論文におい

て、漢方医が処方する漢方薬による治療が、化学療法に伴う悪心を

有意に軽減する可能性が示唆されました。

漢方薬はがん患者の間で非常に一般的に使われています。漢方薬は

しばしば、化学療法などの治療に伴う副作用を軽減する目的で用い

られます。ただし、漢方薬には統一された規制がないため、研究者が

漢方薬の潜在的なベネフィット(利益)とリスクを特定することは困

難です。

香港(中国)およびバーミンガム大学(英国)の研究者らは、先頃、化

学療法を受けた早期乳がんまたは結腸がんの患者120例を対象に、

漢方薬の潜在的効果を評価するための臨床試験を実施しました。

患者は、3人の漢方医のいずれかに割り付けられました。漢方医が

患者のニーズを評価した後、一方の患者群には個々の特性に応じて

漢方薬が処方されました。もう一方の患者群にはプラセボ(有効成

分を含まない偽薬)が投与されました。患者の毒性に対する効果

は、N

ational Cancer Institute C

omm

on Toxicity C

riteria

Version 2

(NC

I-CT

C V

ersion 2.0

)に基づいて評価されました。

血球濃度の低値を含む副作用には、両群間に差は認められません

でした。

グレード2(軽度から中等度)の悪心発生率は、漢方薬群では

14.6%

であったのに対し、プラセボ群では

35.7%でした。

漢方薬は、特に漢方医の治療を受けた人において、「悪心を軽減す

る?」可能性があると結論付けられました。しかし、??が統一され

ていないため、おそらく、これらの結果を確認するさらなる試験が必

要でしょう。がんの治療を受ける人は、服用しているサプリメントや

漢方薬があれば、すべて医師に報告することが推奨されます。

一部の漢方薬が化学療法に伴う悪心(おしん、むかつきの意)の軽減に有効

参考文献Mok T, Yeo W, Johnson P, et al. A double-blind placebo-controlled randomized study of Chinese herbal medicine as complementary therapy for reduction of chemotherapy-induced toxicity. Annals of Oncology. 2007;18(4):768-74.

64 PiNK • spring 2008

Page 65: PiNK Spring 2008

PiNK 誌へのご協力のお願い乳がん情報誌PiNK は、乳がんへの意識、診断・治療の向上に貢献することを目的とした

フリーマガジンです。しかし、広告主の皆様のご協力無くしては成り立ちません。私どもの趣

旨にご賛同頂き、本誌を通じて貢献いただけるご企業さまがありましたら、是非下記までご

連絡をお待ち申し上げます。

日本の乳がん死亡率は増加傾向にあります。乳房の健康に関する情報、また注意が不十

分なため、乳がんの発見が遅れているのは事実です。日本では、平均して55分毎に1人の

女性が乳がんで亡くなっています。今年乳がんと診断される女性の3人に1人が死亡する確

率です。しかし、早期に発見し治療を行なえば、乳がんの告知は死を意味するものでなく、

とても高い確率で完治する病となります。

マンモグラフィによる乳がん検診、自己検診、そして医師による視触診が、現段階におい

てこの病による死亡率を最低限におさえる最善策と言えるでしょう。日本では、定期的にマ

ンモグラフィ検診を受診している人は約3%にとどまっているのが現状です。長年の検診結果

により、科学的にも乳がん検診が命を救うということが示されています。もはや女性達は定

期的な乳がん検診なくして、自分の命を守る事はできないのです。

また、私どもはPiNK 誌の配布拠点の拡大に向け努力しています。皆様のご企業、学校な

どでご協力をいただけるようでしたら、どうかご連絡ください。

PiNK 定期購読のお願いフリーマガジンPiNK の定期購読をご希望の方は、下記までお問い合わせください。なお、

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〒150 - 0047 東京都渋谷区神山町18 - 6 神山アンバサダー108号

tel:03 - 3466 - 4798 fax:03 - 3466 - 4799

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65spring 2008 • PiNK

Page 66: PiNK Spring 2008

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Page 67: PiNK Spring 2008

医師に聞いてみよう

Resources

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Page 68: PiNK Spring 2008

質問: 私は乳がんです。 放射線療法が必要でしょうか?

回答:乳がんの治療では、しばしば外科手術、化学内分泌療法、放射線療法を組み合わせる必要があります。手術が乳腺腫瘤摘出術の場合は、放射線療法が必要となる可能性が非常に高いです。乳房切除術では、放射線療法が必要な場合もあれば、不要な場合もあります。乳房切除術後の放射線療法の必要性は、腫瘍の大き

さ、リンパ節にがんがあるかどうかなど、複数の要素よって決まります。

回答:放射線療法は、高エネルギーX線を用いてがん細胞を死滅させるものです。通常

のX線とまったく同じように作用しますが、照射線量が高いという点が異なります。これにより、細胞のDNAを破壊します。正常で健康な細胞は自己修復できますが、がん細胞は再生できず、死滅します。

質問:放射線療法とはどのようなものですか?どのように作用するのですか?

聞 いてみよう医師 に

Amy Lang, MD

乳 がんと放 射 線 療 法 について知っておくべきことは 何?

放 射 線 療 法 は 、 乳 がん 治 療 の 重 要 な 部 分 です。実 際 の 放 射 線 治 療 は 短 時 間 で 痛 みはありません 。治 療 を 通して医 療 専 門 家 チ ームがあなたを 支 援します。外 部 放 射 線 治 療 中にあなた自身が 放 射 能 を 帯 びることはなく、周 囲 の 人 に悪 影 響 を 及 ぼ すこともありません 。最も一 般 的 な 副 作 用 は 、 疲 労 感 および 皮 膚 の 変 化 ないし不 快 感 です。医 師 が 提 供 する軟 膏 を 使 用することが 大 切 です。

68 PiNK • spring 2008

Page 69: PiNK Spring 2008

※ここで紹介されている質問と回答は、アメリカでのリサーチに基づいたものです。

質問:どのような放射線療法がありますか?回答:最も一般的な種類は外部照射と呼ばれるものです。大部分の乳がんでは、外部から乳房全体に放射線を照射してから、腫瘍があった場所にだけ数回追加照射します(ブースト照射と呼ばれます)。外部照射は、リニアアクセレレータと呼ばれる装置を用いて行います。放射線は乳房全体(あるいは乳房切除術の場合は胸壁)と、場合によっては胸周囲のリンパ節に照射されます。放射線は目に見えず、感触もありません。治療は通常週5日(月曜日から金曜日まで)を5~6週間にわたり行います。各セッションの照射線量を高くしてより短期間で治療を行うこともできます。これは小分割照射と呼ばれます。 乳房全体を治療するのではなく、部分乳房照射(partial breast irradiation:PBI)が用いられる場合もあります。小線源療法(brachytherapy)とも呼ばれるこの方法では、外部照射と内部照射の双方を用います。乳房小線源療法にはいくつかの方法があります。ケアの基準とは考えられていませんが、患者の中にはPBIの候補者がいるかもしれません。現在、全乳房放射線照射とPBIを比較する全米規模の臨床試験が進められています。あなたの担当医がこの臨床試験への登録を勧めるかもしれません。

質問:放射線療法チームはどのように構成されますか?回答:放射線治療には多くの人が関わります。放射線腫瘍医(放射線によるがんの治療を専門とする医師)がチームを率います。放射線腫瘍科の看護師は、治療全般についてあなたをサポートしてくれます。放射線技師は、医師の監督下でリニアアクセレレータを用いて日々の治療を実際に行います。医学物理士と線量検査士は、裏方として働き、医師の処方に基づいて放射線照射計画を作成します。他の医療専門家が参加する場合もあります。

質問:治療はどのように進められるのですか?回答:治療にはいくつかの段階があります。■放射線腫瘍医による診察腫瘍外科医または腫瘍内科医が、放射線腫瘍医を紹介することになるでしょう。放射線腫瘍医は、乳がんの治療において放射線照射が担う役割について説明します。放射線療法に関するあなたの疑問を放射線腫瘍医にぶつけましょう。初回診察時には治療中あなたをサポートする看護師にも会えるでしょう。■シミュレーション次の診 察では、プランニングセッション、すなわちシミュレーションを行います。シミュレーション中、あなたは診察台の上で実際の治療中にとるのと全く同じ姿勢をとります。通常は、仰向けに寝て片方の腕(患部の乳房と同じ側の腕)を頭の上に上げる姿勢です。各治療の際、確実に同じ姿勢になるよう器具に横たわることもあります。シミュレーションの終わりに、インクで数個の点を書かれたり(タトゥーと呼ばれます)、カラーマーカーで皮膚に一時的な線が描かれたりします。これらは、治療の際に、正しい姿勢をとることを確実にするための印です。うつ伏せに寝て治療を受ける場合もあるでしょう。どのような姿勢をとるかは、乳房の大きさなど、複数の要素に基づいて決められます。■治療計画シミュレーションが 終 わると、放 射 線腫瘍医、物理士、線量検査士が、シミュレーションで得られた情報を基に治療計画を立案します。放射線腫瘍医が正確な照射線量と部位を示した処方箋を作成し、これに基づき物理士と線量検査士が計画を立案します。放射線腫瘍医は同計画を監督します。■初日シミュレーション後の次の診察では、撮影のみを行います。治療を受ける時と全く同じ姿勢で治療台の上に横たわります。放射線照射は実際には行われず、技師が確認用の写真を撮影します。これは、治療する領域が、医師の意図した領

域と正確に一致することを確認するためのものです。最初の放射線照射を行う前に、医師がこの写真を承認します。■毎日の治療放射線照射治療時、あなたは治療台の上に横たわり、放射線技師が正確な位置を決めます。その後、放射線技師は部屋を出て、あなたは放射線照射を受けます。治療中はじっとしていることが重要です。治療は短時間で終了し、痛みはありません。技師はモニターであなたを観察しています。もしあなたが呼べば、あなたの声を聞くことができます。■週1回の状態確認治療中は週1回、医師と看護師に会います。医師と看護師は、治療を行っている領域(乳房または胸壁、そして一部の例ではリンパ節領域)を確認し、あなたの状態を観察します。もちろん、より頻繁に看護師や医師に会う必要がある場合は、そうすることもできます。■週1回の撮影週1回、治療領域の写真を撮影します。これは、初日に撮影したものと同じ種類の写真で、治療を行っている領域が医師の意図した領域と正確に一致することを確 認するためのものです。治 療の継続にあたっては、医師が毎週これらの写真を承認する必要があります。

質 問:放 射 線 治 療の副 作用は何ですか?回答:放射線治療には2種類の副作用があります。治療中に生じる副作用(急性副作用)と放射線療法終了後に生じる副作用(遅発性副作用)です。急性副作用は非常に一般的で、疲労感、皮膚の変化などがあります。遅発性副作用は治療が終了してから何週間後、何カ月後 、あるいは何 年 後かにさえ生じる可能性があります。遅発性副作用は非常にまれで、治療を受けた乳房、胸壁、リンパ節領域周辺器官の問題を含むことがあります。治療を開始する前に、医師はこれらすべての副作用について説明します。

放 射 線 療 法 は 、 乳 がん 治 療 の 重 要 な 部 分 です。実 際 の 放 射 線 治 療 は 短 時 間 で 痛 みはありません 。治 療 を 通して医 療 専 門 家 チ ームがあなたを 支 援します。外 部 放 射 線 治 療 中にあなた自身が 放 射 能 を 帯 びることはなく、周 囲 の 人 に悪 影 響 を 及 ぼ すこともありません 。最も一 般 的 な 副 作 用 は 、 疲 労 感 および 皮 膚 の 変 化 ないし不 快 感 です。医 師 が 提 供 する軟 膏 を 使 用することが 大 切 です。

69spring 2008 • PiNK

Page 70: PiNK Spring 2008

このコーナーでは、様々な情報提供ができるよう徐々に充実させていきたいと考えています。検診料金、受診可能な検査の種類などを掲載する予定です。皆さんの医療機関での経験談等もどしどしお寄せ下さい。

東 京 都聖母病院

〒161-8521 東京都新宿区中落合2-5-1電話:03-3951-1111http://www.seibokai.or.jp/

日本赤十字医療センター〒150-8935 東京都渋谷区広尾4-1-22 電話:03-3400-1311http://www.med.jrc.or.jp/

聖路加国際病院〒104-8560 東京都中央区明石町9-1電話:03-3541-5151http://www.luke.or.jp/

東京衛生病院〒167-0032 東京都杉並区天沼3-17-3電話:03-3392-6151http://www.tokyoeisei.com/

医療法人社団ブレストピア・ヘルスケア丸の内・女性のための統合ヘルスクリニック[イーク丸の内]

〒100-6403 東京都千代田区丸の内2-7-3東京ビル TOKIA3F電話:0120-190-828http://www.ihc.or.jp/index.html

※医療機関によって予約等必要な場合がありますので、事前に連絡をされることをお薦めします。

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大 阪 府糸氏クリニック

〒559-0016 大阪市住之江区西加賀屋1-1-6電話:06-6681-2772http://www.myclinic.ne.jp/itoujiclinic/pc/index.html

医療法人 純幸会 豊中渡辺病院〒561-0858 大阪府豊中市服部西町3-1-8電話:06-6864-230http://www.watanabe-hp.or.jp/hospital/

宮 崎 県ブレストピアなんば病院

〒880-0000 宮崎市丸山2-112-1電話:0985-32-7170http://www.breastopia.or.jp/

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