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スペシャルインタビュー シェリ ル・ク ロ ウ 女性の からだ 情報誌 もっと 知ろう 2007 年・秋 FREE PiNK www.runforthecure.org

PiNK Fall 2007

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PiNK Fall 2007

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Page 1: PiNK Fall 2007

スペシャルインタビュー

シェリル・クロウ

PINK

女 性 のか ら だ情 報 誌

もっと知ろう

2 0 0 7 年・秋 FREE

PiNK

2007 fallVolum

e 1 / Issue 1 季

刊誌

www.runforthecure.org

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Page 3: PiNK Fall 2007

Contents34

2007年 秋

BODY WISE 栄養と運動

10 がん治療中に効果的に体重を減らす・増やすために

16 なぜ歩き、走り、自転車に乗り、ボートを漕ぐの? がん診断前・診断後のエクササイズの大切さ

SPIRIT HOUSE 心の声を聞く

24 癒しの食べ物

28 ブラがいっぱい! イースタンショアアートセンターより勇気と希望と愛を込めて

34スペシャルインタビュー / シェリル・クロウ

感 謝 と 祈 り

16

24

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発行人 : Vickie Paradise Green

編集 : デイビッド 梅田

監修 : 中山 比登志

    難波 清

翻訳 : 株式会社アスカコーポレーション

制作 : パラダイム

www.paradigm.co.jp

[email protected]

クリエイティブ・ディレクター : Richard Grehan

アート・ディレクター : 増子 由紀

広告マネージャー : Robert Heldt

広告セールス : Alex Lake, Sarah J. Park

寄稿者 : Kari Bohlke, ScD; Daniella Chace, MS; Dayna Deuter;

Juliana Hansen, MD; Mia James; Maureen Keane, MS; Amy

Lang, MD; Jenny Maxon, RN; Diana Price; Nancy Raia;

Louanne Roark

発行元 : NPO法人Run for the Cure® Foundationwww.runforthecure.org

事務局長 : 原 万紀子

〒150 - 0047東京都渋谷区神山町18 - 6神山アンバサダー108Tel:03 - 3466 - 4798 Fax:03 - 3466 - 4799E-mail:[email protected]

免責事項:PiNKに掲載される情報は、医療提供者による個別のアドバイスに替わるものではありません。PiNKに掲載される見解はあくまでも著者の見解であり、必ずしもスポンサー、諮問委員会、発行者の見解を反映するものではありません。PiNK

に掲載される情報を、医療提供者のみが提供可能な専門的アドバイスと捉えないでください。本誌に掲載される情報が確実に正確な情報であるよう、入念な注意を払っていますが、情報の継続的な容認性に関して、もしくは、不注意に起因するか否かを問わず、あらゆるミス、脱落、不正確な点に関して、もしくは、それらに起因するいかなる結果に関しても、著者、NPO法人Run for the Cure® Foundation、およびその代理人に責任はなく、一切の法的責任を負いません。PiNKの諮問委員会は、コラムを提供し、その他編集上のサポートも行いますが、本誌に掲載される見解については一切の責任を負いません。

Women & Cancer Executive Editor: CHARLES H. WEAVER, MD / Medical Editor: JULIANA HANSEN, MD / Managing Editor: DIANA PRICE / Associate Editor: MIA JAMES / Copy Editor: ELIZABETH VON RADICS

Volume 1 / Issue 1 季刊誌

THE WAR ROOM ニュースで見る治療の進歩と薬

42 判定は下された ― 検診は命を救う

50 予後がさらに改善 早期乳がん治療の進歩

56 完治を目指して団結した若い女性たち

60 環境エストロゲン

66 希望よ再び 形成外科医から見た乳房再建術

71 がんを乗り越えた患者の話 わが子のため、バランスのため

72 最前線では今 超微細手術で女性に胸躍る新たな選択肢

SUPPORTIVE CARE がん治療を乗り越えるための方法

78 Look Good . . . Feel Better® 一番必要な時に女性の自信を後押し

80 うつ病とがん

FIND YOUR WAY 医療制度の謎を解く

88 医者に聞いてみよう

92 RESOURCES

Contents

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PiNK創刊号へようこそ。

PiNKは、乳がんの啓発や診断、そして治療の選択肢などのコンテンツをタイムリーにお届けする新しい情

報誌です。乳がん経験者(サバイバー)はもちろん、介護者、家族、支援者、そして友人達みなさんに是非と

も読んでいただきたいと思います。創刊号に掲載されている最新の興味深い記事に、きっと勇気づけられる

と確信しています。

今回お届けするシェリル・クロウの体験談“最終的にスーパースターの心に平和をもたらした”は、読者の皆

様に感動をもたらすことでしょう。シェリル・クロウの乳がん公表は、世界中の見出しとなり、彼女の乳がん

早期発見は、多くの女性たちに検診の重要性を今一度呼びかけるきっかけとなりました。

皆様は、10年前に乳がんと診断された方かもしれませんし、つい10時間前に診断された方かもしれませ

ん。また、乳がんの家族や友人を支えている方かもしれません。あなたの身近な人が乳がんに直面している

かもしれないのです。現実は、信じられないほど多くの女性達が乳がんに影響を受けているという事実で

す。一旦影響を受ければその後の人生は変わります。女性達がそのような知らせに直面した時変わるよう

に、私たちも変化する必要性が高まるのです。

日本においても、もっと多くの乳がんに関する情報、啓発が必要です。気軽に話し合えたり、アイデアを交換

できる場を持つべきです。PiNKはそうした願いをかなえるために、女性たちに情報を提供するメディアに

なるのが目的です。PiNKに掲載されている経験談やトピック、それらの記事を、乳がんに直面している人は

もちろん、予防や健康に興味のある人すべての女性に読んでいただきたいと思います。

沈黙を破りましょう。まず声をあげ、乳がんとは何かを女性たちに呼びかけ、皆が持つ同じような悩みに、応

えていきたいと思います。悟りと賢明さに満ちた個人の体験談に基づき、確実で新しい情報提供にひたむ

きに取り組みたいと考えています。希望と勇気あふれるコミュニティ作りが私たちのゴールです。

是非ともお友達や家族の方に本誌をお渡しください。PiNKには、たくさんの情報と希望が詰まっています。

そしてどうか、読者の皆様のご意見をお聞かせください。

PiNKを通し、乳がんに直面している多くの人たちが勇気と希望を与えられれば幸いです。

Vickie Paradise Greenヴィッキー・パラダイス・グリーン

理事長NPO法人 Run for the Cure® Foundation

発行人のご挨拶

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Page 8: PiNK Fall 2007

BO

DY W

ISE

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がん治療中に効果的に体重を

減らす・増やすために

なぜ歩き、走り、自転車に乗り、

ボートを漕ぐの?

がん診断前・がん診断後のエクササイズの

大切さ

BO

DY W

ISE

栄 養 と 運 動

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がん治療中に効果的に

体重を減らす・増やすために

以下は、Maureen Keane, MSおよびDaniella Chace, MS著『What to Eat if You Have Cancer: Healing Foods That Boost Your Immune System

(がんになったら何を食べる?―免疫系を高めるヒーリングフード)』(McGraw-Hill、2006年)からの抜粋です。

10 PiNK • fall 2007

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up

健康なからだを作る栄養豊富なスナックをお探しなら、ナッツ類やシード類が選択肢として優れています。がんとの闘いや心臓の健康に役立つ油脂類、さらにはたんぱく質を豊富に含んでいるからです。しかし、ここでも注意が必要です。ナッツ類やシード類を含むスナックなら何でも良いという訳ではありません。味付けされたもの、油が添加されたもの、揚げた物、塩が添加されたものは避けてください。また、ヨーグルトやチョコレートでコーティングされたナッツ類は、少量にしましょう。

ホールナッツとシード1人前は軽く一握りです。シリアル、野菜、サラダの上に、シードや砕いたナッツを振りかけます。少量のドライフルーツと混ぜ、スナックや軽食として食べます。キャセロール料理のトッピングとしてサクサク感を楽しみましょう。

ナッツバターとシーズ(種子類)ペースト1人前は大さじ3杯です。ナッツバターの例としては、練りゴマ(タヒニ)、ヘーゼル

ナッツペースト、ピーナツバターなどがあります。ナッツバターを作る際には、塩味の付いていないナッツをミキサーやフードプロセッサー、フードグラインダーにかけます。次に、 ハチミツなどの甘味や、シナモン、ナツメグなどのスパイスを加えます。滑らかになれば出来上がりです。

風味付けしたナッツバター1人前は大さじ3杯です。甘味の付いていないナッツにニンニク、タマネギ、コショウ、その他のスパイスを加えて作ります。ナッツバターを菜種油、アマニ油、オリーブオイルで溶き、サラダのドレッシングとして使います。また、少量の豆乳と混ぜ、ソースや野菜用のディップソースとしても使えます。

ナッツミルク市販のナッツミルク(ココナッツミルク、アーモンドミルク、へーゼルナッツミルクなど)は健康食品店や一部の食料品店で購入することができます。ナッツミルクの作り方は簡単です。一握りのナッツに、濾過した水1カップを加え、ミキサーにかけるだけです。全体がミルク色になったら出来上がりです。裏ごしして繊維を取り除き、冷蔵庫で保存します。ハチミツや糖蜜で甘みをつけ、フルーツジュース、ドライフルーツ、軟らかい果物、ヨーグルト、豆乳などを加えて混ぜ、カロリー豊富なシェイクを作ることができます。冷蔵庫で4~5日保存できます。

ナッツ類やシード類を取り入れる際のヒント

体重を増やすために

 低体重の場合、おそらく引き締まった筋肉組織や蓄えられた脂肪は少なく、ビタミンA、鉄分、カルシウムといった必須ビタミンおよびミネラルが不足しているでしょう。低体重のために、がん治療に耐えることが難しい患者もいます。適正な体重のからだと比較して、蓄えが少ないためです。また、低体重の人では、食べられないときに必要となるエネルギーの蓄えがない場合などに問題が生じます。 低体重は、生まれつき代謝が高い場合や食物

摂取とエネルギー消費を厳格に管理した結果として生じることがあります。また、吸収不良や栄養不良の徴候とも考えられます。体重の増加や維持が難しいのであれば、医師に相談し、治療が必要な医学的要因があるかどうかを確認することが大事です。たとえば、甲状腺疾患か吸収異常を引き起こす疾患(セリアック病など)がある場合には、がん治療を始める前に、これらの疾患を治療することになるでしょう。 がん治療の準備期間は、カロリーを制限する時期ではありません(1日1,200カロリー未満)。このようなカロリー制限下では、治療に向けてか

らだの準備を整えるための栄養素を全て摂取することはできません。準備期間中、治療を受ける際に免疫系の燃料となる栄養を蓄える必要があります。 しかし、カロリーを求めてただ食べればよいという訳ではありません。揚げ物やお菓子を食べれば確かに体重は増えますが、これは必要な種類の栄養ではありません。ジャンクフードを食べても、栄養を蓄えたり引き締まった筋肉組織を形成するには役立ちません。注目すべきは、食べ物の栄養価なのです。

健康な体重を維持し、からだに必要な栄養素を含む良質の食べ物を選ぶことは、時に難しい課題です。しかし、がん治療に向けた準備を進めているのなら、今こそか

らだに必要な栄養に注目すべきでしょう。なぜなら健康な体重の維持は、回復や治療成功の一助となる可能性があるからです。

低体重では、がん治療のストレスに耐えられないかもしれません。このことを心に留めておきましょう。一方、過体重ではがんの再発率が高くなる可能性も明らかにあります。ですから、目標が治療中に体重を減らすことであれ、増やすことであれ、からだの役に立たない食べ物は排除しつつ、がんを治すために必要な栄養を摂るよう心がけましょう。

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治療前や治療中に体重が減ってしまったら

 正常体重から5%減った場合、重大な変化と見なします。正常体重から10%減ったら危険信号です。15%の体重低下では疲労や抑うつ、食欲不

振が生じ、からだの治癒力が低下する可能性もあります。 がん治療の結果として体重が大きく減ってしまった場合

は、担当医に脂肪摂取量を増やしましょう。これは、脂肪や他の脂質が濃縮されたエネルギー源である

ためです。炭水化物とたんぱく質の熱量は共に1グラムあたり4カロリーですが、脂肪は

1グラムあたり9カロリーと、他のエネルギー源の2倍以上にもなります。また、

脂肪は容易にからだに蓄積され、食べられないときのバックアップエネルギー源となります。 担当医に脂肪摂取量を増やすよう勧められた場合には、オメガ3脂肪酸または一価不飽和脂肪酸を多く含む食品(菜種油やオリーブオイルなど)を積極的に摂りましょう。またココナッツミルクもよいでしょう。ココナッツミルクに含まれる脂肪酸は中鎖中性脂肪を豊富に含み、さほど分解されず容易に吸収されるからです。一価不飽和脂肪酸を豊富に含む

食品はカロリー摂取量を増やすだけでなく、転移の予防や免疫系

の強化にも役立ちます。

 放射線療法と化学療法によって腸が一時的に障害を受け、脂肪を分解す

る力が低下することがあります。このような場合には、排便の回数と量が増え、便の色

は薄くなります。治療によって胆汁を産生する力が影響を受けることもあり、これによっても脂肪は吸

収されにくくなってしまいます。治療によって膵酵素が低下することもあります。このように吸収不良になった場合、食事に消化酵素のサプリメントを加えるべきか、医師に相談すると良いでしょう。

体重を増やすためのヒントと食べ物の選択

 治療に向けた健康なからだ作りを目指すなら、さまざまな栄養を豊富に含む食べ物を選びましょう。カロリーばかりが高く、栄養に欠ける食べ物は避けてください。 健康的に体重を増やすために、スムージー※を取り入れるのもいいでしょう。シンプルなフルーツのスムージーでも、その栄養価を高める材料はたくさんあります。たとえば、アマニ油、プロテインパウダー(大豆、米、乳清)、繊維質を増やすためのアマニ粉、ナッツバターなどがその一部です。 ナッツ類やシード類、さらにさまざまな栄養素が詰まったスムージーを選ぶとともに、食習慣を少し変えて、毎日の生活の中で食事が楽しい時間であるように工夫するのも良いでしょう。たとえば、しっかりした食事を1日2~3回摂るのではなく、1日5~6回軽い食事を摂るようにします。推奨量の野菜を全て摂ることができない場合は、一部をジュースにしてみましょう。舌触りが良く、見た目も美味しそうな食べ物を選んだり、食事が楽しくなるように、友人や家族と一緒に、テーブルで明るい雰囲気を作るのもいいでしょう。このように日常をほんの少し変えてみることで、食事が一段と楽しいものとなり、必要な栄養が摂れるようになるのです。

※ヨーグルト、牛乳、豆乳などに野菜や果物などを加え、ミキサーにかけた飲み物

        

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以 下 のレシピ は Daniella Chace 著『More Smoothies for Life (スムージーを生活に取り入れよう)』(Random House、2007 年)からの引用です。おいしく作るコツは、料理用ミキサーやフードプロセッサーに材料を全て入れ、滑らかになるまですりつぶすことです。冷やしていただきましょう。

<ピーナッツバターカップ>

オーガニックミルク 1 カップ氷 1 カップ脱脂粉乳または

プロテインパウダー 1/4 カップオーガニックアマニ油 大さじ 1ココアパウダー 大さじ 2ピーナッツバターまたは

アーモンドバター 大さじ 2ローストした小麦胚芽 大さじ 1

オーガニックミルク(またはライスミルク、アーモンドミルク、オーツミルク、豆乳など)を使います。乳清も溶けやすく、クリーミーになりますから、スムージーに適しています。からだから金属や環境化学物質を取り除くのに役立つ、グルタチオンなどのデトックス(解毒)成分も含んでいます。乳製品にアレルギーや過敏症がある場合は、代わりに大豆、米またはエンドウ豆のプロテインなどを試してください。

<チャイクリームフラッペ>

チャイ 1 カップミルク 1 カップ氷 1/2 カップ脱脂粉乳 1/4 カップハチミツ 大さじ 1

脱脂粉乳を加えることで、よりクリーミーになり、たんぱく質も増えます。脱脂粉乳大さじ 1 杯には、1 グラム以上の代謝されやすいたんぱく質が含まれています。

<キノアのタブーリサラダ(4 人分)>

生のパセリ、ミント、レモン汁など、爽やかな香りが特徴の、人気のレバノン料理です。キノアは手早く調理できて消化もよく、繊維とたんぱく質を豊富に含んでいます。そして何より美味しいのです。

調理済みキノア 1 カップねぎ(みじん切り) 1 本パセリ(みじん切り) 1¼ カップ生のミント(みじん切り) 1/2 カップレモンジュース 大さじ 1エクストラバージンオリーブオイル 大さじ 1クミン 大さじ 1白こしょう 適宜

パッケージの説明に従ってキノアの下ごしらえをします。(下ごしらえはわずか数分で出来上がります。)材料を全て合わせて冷やします。

<白豆のサラダ(4 人分)>

白豆(水煮缶の水を捨てて洗う) 1 缶生イタリアンパセリ(みじん切り) 1 カップ生トマト(粗みじん切り) 2 個赤タマネギ(みじん切り) 1/2 個レモン汁 1/2 個分バルサミコ酢 大さじ 2海塩 大さじ 1/4エクストラバージンオリーブオイル 大さじ 1

すべての材料を混ぜて、そのまま、またはお好みで冷やしていただきます。

rec ipes

体 重 を 増 や す 体 重 を 減 ら す

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Page 14: PiNK Fall 2007

down減量とがん治療

 がん患者にとって減量は予防策として、また回復を促す上で有益な場合があります。過体重が(特にホルモン関連のがんにおいて)がん再発率を高める可能性を示唆する証拠が得られているからです。また、過体重の乳がん患者では、減量が治癒プロセスを促進する可能性があります。

適切な減量目標を定める

 言うまでもないことですが、減量は「言うは易く行うは難し」。減量をうまく進めるために、現実的な目標を設定しましょう。まずは10%という、あまり高くない目標から始めることです。たとえば体重が200ポンド(約90kg)なら、まず10%の20ポンド(約9kg)を目標にします。次の10%は18ポンド(約8kg)です。最初の10%を達成できたら、多くの疾患を発症するリスクが大幅に減少します。必ずしも「理想」体重を目標とする必要はありません。「理想」体重は低すぎる場合が多いからです。適度の減量は維持し易いですし、厳しくて達成しにくい減量目標で得られる効果と、同程度の効果が得られるのです。

減量のために何を食べる?

 ホールフードダイエットをまだ始めていないのなら、これは絶好のチャンスです。「ホールフード」とは、ほとんど加工されておらず、添加物や保存料を含まない食べ物を指します。たとえば、ホールフードダイエットに基づいて食品を選択するなら、精白パンや精白パスタではなく、全粒の穀物や豆を選ぶことになります。 ホールフードダイエットを始めると、食品に含まれる豊富な繊維質によって満腹感が得られ、代謝が促進されて、体重が減ることがよくあります。ホールフードを摂る以外にも、食事の量や食べ物の質に注意しましょう。やせるより健康になることを目指すのなら、あまりに早く結果が得られて驚くことでしょう。

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Page 15: PiNK Fall 2007

体重管理のための食事量制限

 体重管理では食事量が重要な鍵となります。米国では多すぎる食事量が肥満の主要原因になっていますから、日本でも食事量を監視することが体重管理に役立つでしょう。以下は食事量制限のヒントです。

計量カップと計量スプーンを買いましょう。最初の1カ月間は、食べる物をすべ• て計量してください。これにより、食事量を把握できるようになります。

ほとんどのレストランでは2人前以上の量が出されます。注文した料理の半分を• その場で食べ、残りは持ち帰って翌日の昼食か夕食に食べましょう。

大皿に盛って取り分けることはやめましょう。食べ物をすべてテーブルに並べて• 各自が好きなだけ皿に取るのではなく、大人の場合は1人前ずつ台所で盛りつけて運び、おかわりはなしにします。

子供には食べたい量を自分で決めさせましょう。大人は子供のエネルギー所要• 量を多めに見積もってしまいがちで、食べ物を与えすぎることがあります。残さず食べるよう子供に強要することは、食べ過ぎを強要しているようなものです。

1枚の皿を4分割しましょう。4分の1は高たんぱく質の食べ物、もう4分の1は• 全粒のでんぷんまたはでんぷん質の野菜、そして残りの4分の2は野菜にします。1日の食事のうち1回以上で、野菜の半分をサラダや生野菜の前菜などの生野菜にします。

デザートには果物を選びましょう。• 食べ物の下に皿が見えるようにしましょう。山盛りになった食べ物が好きなら、• 小さめのサラダ皿に替えましょう。

ディナーをいただくときは、低カロリーのスープから始めましょう。これで空腹• 感が和らぎますから、残りの食事は少なくてすみます。

 がん治療中の体重管理は必ずしも厄介ではありません。からだが何を必要としているのかに耳を傾けてみましょう。ライフスタイルをきちんとしたものに変えることで、体重の維持や減量、増量といった目標を達成することができます。また、このようなライフスタイルは全般的な健康状態をサポートし、回 復を助 けてくれるでしょう。

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なぜ歩き、走り、自転車に乗り、ボートを漕ぐの?がん 診 断 前・診 断 後 のエクササイズ の 大 切さ

Kari Bohlke, ScD

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定期的なエクササイズによって心疾患のリスクが低下することはご存知でしょう。でも、がんに対する重要なメリットがあることはご存知ないかもしれません。エクササイズによって、ある種の一般的ながんを発症するリスクが低下する可能性があるのです。がんと診断された後、エクササイズが治療中・治療後の気分改善に役立つこともあるでしょう。がん生存者で積極的に運動している人からは、健康状態の改善、疲労の軽減、活力の増加、QO L(生活の質)の向上、憂鬱・不安の軽減が報告されています。がん予防に関心がある方、最近がんと診断されたり、治療中、あるいは治療後の皆さんに、定期的なエクササイズのメリットをご紹介しましょう。

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エクササイズとがん予防

 米国で最も診断されることが多いがんは、結腸がんと乳がんですが、エクササイズによっていずれのリスクも大きく低下するようです。結腸がんと乳がんの発症リスクは、それぞれ40~50%、30~40%低下します。その他のがんにおいても、発症するリスクはエクササイズによって低下すると思われますが、それらを検討した試験ではあまり一貫性のある結果は得られていません。 体重がどうであれ、身体を動かすことで女性は健康上の大きな利益を享受できます。もちろん、エクササイズと健康な体重が組み合わされば最高の成果が得られるのです。12万人の女性看護師を対象とした試験では、やせていて積極的に運動している女性において、その他の女性に比べてがんや心血管疾患による死亡が少ないことが報告されました。 エクササイズに関するガイドラインでは 、心 疾 患 や が ん などのリスクを低減するためには、1日30分以上の適 度 な 運 動 を 週 5 日以上、または1日20分以 上 の 激しい 運 動 を週3回以上行うことを推奨しています。適度な運動としては、平地での速歩とサイクリングがあります。激しい運動には、上り坂でのサイクリングやウォーキング、またはジョギングなどがあります。「適度な運動」と「激しい運動」に関する詳細は、米国疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の運動に関するウェブサイト(www.cdc.gov/nccdphp/dnpa/physical/index.htm)をご覧下さい。

がん治療中のエクササイズ

 がん治療を受けている間、エクササイズにエネルギーを費やすことは難しいかもしれません。ただ、(適当なレベルの)運動を定期的に行うことで、一般症状が軽減し、気分が良くなります。このことで、家族と触れ合ったり仕事を継続するといった大切な活動が容易になるかもしれません。 がん治療中のエクササイズがもたらす重要なメリットとして、疲労の軽減があります。疲労は、

がん治療中に患者が最も頻繁に経験するとても厄介な症状の1つです。集中治療を受ける患者でさえ、エクササイズは疲労の管理に役立ちます。たとえば、高用量化学療法と幹細胞移植を受けている入院患者を対象とした試験では、ベッドにいる間もサイクリングマシンを使っていた患者は、入院期間中の疲労は増大しませんでした。対照的に、入院中に運動していなかった患者では、疲労が著しく増大したのです。 外来患者の疲労に関する試験によっても、エクササイズのメリットが示されました。化学療法や放射線療法を受けている乳がん患者を対象とした試験では、定期的なウォーキングプログラムに参加している女性は、疲労や精神的苦痛を感じることが少ないことが明らかになっています。 がん治療中にエクササイズプログラムを続けるためには、必要に応じてプログラムを変更する

ことや周囲のサポートを求めることが大切です。エクササイズ試験に登録された多発性骨髄腫患者は、化学療法の直後には休養をとったりエクササイズを休んだりすることがあったと報告しています。一方、エクササイズによってスタミナを維持できるという理由で、休まないようにしていたという患者もいます。エクササイズを継続した患者に、家族、友人、医療提供者の支えや励ましも、重要なモチベーションとなりました。

がん治療後のエクササイズ

 治療が終了した後も、エクササイズは疲労の軽減や全般的なQOLの改善において、引き続き重要な役割を果たします。さらにエクササイズは、ボディイメージや体重増加、その他の健康上の問題にまつわる不安への対処にも役立ちます。また、生存期間の延長に寄与する可能性もあります。

 I期からIII期の女性乳がん患者、約3,000例を対象とした試験では、運動と生存期間の関係が検討されました。週に1時間以上ウォーキングしている女性では、運動量がより少ない女性と比較して死亡リスクが低くなっていました。週3~5時間のウォーキングと同等の運動をしている女性では最大のメリットが認められましたが、このレベル以上の運動を行っても、より大きなメリットが得られることはないようでした。 一番の関心事は生存期間かもしれませんが、生活の質(QOL)も大切です。がん治療後の身体的変化に順応している最中なら、エクササイズによってボディイメージが改善し、性的感覚を維持・回復できるかもしれません。乳がん治療を受けた女性を対象とした、body esteem(身体の尊重)と気分に関する試験では、積極的に運動していた女性は、比較的運動しなかった女性に比

べて、性的魅力を感じることが多くありました。また、活動的な女性は、憂鬱や困惑、疲労を報告することも少なかったのです。 さらにエクササイズは、一 部のがんの治 療後に見られる体重増加に対処する上でも助けとなります 。乳 がん 生存者を診断後最高3年

に渡り追跡調査した試験では、63%の人の体重が、また74%の人の体脂肪が増加していました。肥満は、乳がん再発率を高め、生存期間を短縮することと関連づけられていることから、エクササイズは生存者の健康な体重を達成し維持することに役立ち、また、乳がんやその他のがんの転帰(治療後の経過や結果)によい効果をもたらすでしょう。 さらに、すでに心疾患や糖尿病、骨粗しょう症などの慢性疾患を持っている方もいれば、加齢に伴いこれらの疾患を発症する危険性がある方もいるでしょう。一般的に、エクササイズはこのような疾患リスクを低下させます。がん生存者におけるエクササイズと他の慢性疾患との関係を検討した試験はほとんどありませんが、がん生存者も同様に恩恵に浴することができると思われます。

「エクササイズによって、ある種の一般的な

がんを発症するリスクが

低下する可能性があります。」

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Page 19: PiNK Fall 2007

ウェイトトレーニングは乳がん生存者でリンパ水腫を起こす?

リンパ水腫とは、リンパ液がたまり、腕がむくむことを指します。これは、初期乳がんのために腋窩リンパ節を摘出した患者によく見られます。リンパ節を広くに摘出

(腋窩リンパ節切除)した場合、少数のリンパ節を摘出(センチネルリンパ節生検)した場合と比較して、リンパ水腫が生じやすくなります。

上半身の運動をすると、リンパ水腫を発症する、あるいは悪化するリスクが高まるのではないかという懸念があります。そのため乳がん生存者には、重いものを持たないように、その他の上半身の運動をしないようにと助言されることがあります。しかし、このような助言には、ほとんど根拠はありません。

腋窩リンパ節切除を受けた乳がん生存者45人を対象に、ウェイトトレーニングとリンパ水腫との関連を検討する試験が実施されました。被験者の半数はウェイトトレーニングプログラムに参加し、半数は参加しませんでした。ウェイトトレーニングプログラムに参加した被験者は、6カ月に渡り週2回のトレーニングを行いました。このプログラムでは、腕、背中、胸部、臀部および脚のエクササイズが行われました。上半身のエクササイズでは、当初ウェイトを使用しないか、またはリストウェイトが使われたのみでしたが、リンパ水腫が発症しない限り、ウェイトは徐々に増やされました。

6カ月間に渡るウェイトトレーニングプログラムに参加したいずれの女性にも、腕まわりに顕著な変化が2センチ以上は認められませんでした。

リンパ水腫の発症または悪化頻度は、ウェイトトレーニングプログラムに参加した女性と参加しない女性とでは同等でした。

同試験を実施した研究者らは、乳がん生存者は上半身のウェイトトレーニングをしないようにという現行の勧告を再評価する必要があると結論づけています。ウェイトトレーニングは様々な健康上の利益をもたらします。さらに本試験の結果はウェイトトレーニングでは、乳がん生存者におけるリンパ水腫リスクは高まらないことを示唆しています。

エクササイズプログラムを考えている乳がん生存者は、最も安全で効果的なアプローチについて医師に相談しましょう。

「体重がどうであれ、身体を動かすことで女性は健康上の大きな利益を享受できます。」

19fall 2007 • PiNK

Page 20: PiNK Fall 2007

さあ、今日からはじめてみよう

 エクササイズプログラムを始める前に、必ず医師に相談しましょう。適切なプログラムを選ぶにあたっては、年齢、運動歴、がんの種類、病期、治療の種類、その他疾患の有無を検討します。 エクササイズプログラムでは、心肺系の有酸素運動、筋力トレーニング、柔軟体操などを組み合わせます。有酸素運動を行うことで、心肺が効率的に機能するようになります。これにはウォーキング、サイクリング、水泳などがあげられます。エクササイズとがんに関する大半の研究は、有酸素運動に着目したものですが、筋力トレーニングのメリットを示す証拠も得られています。 ウェイトトレーニング、筋力強化運動などの筋力トレーニングは、骨強度の維持にも役立ちます。筋力トレーニングは、治療中や治療後に閉経期にあった女性や、前立腺がんのホルモン療法を受けた男性など、骨粗しょう症のリスクが増大しているがん生存者に特に大きなメリットがあると思われます。ストレッチやヨガといった柔軟体操も、可動域を広げ傷害のリスクを低減できることから、同様に有益です。 エクササイズプログラムを計画する際に、その方法は人それぞれという点に留意しましょう。グループで運動した方がエクササイズプログラムをうまく行える人もいれば、パーソナルトレーナーについた方が良い人もいます。1人きりで運動を楽しむ人もいます。治療中も定期的なエクササイズプログラムを継続できる人もいれば、できない人もいます。自分に適したエクササイズを行いましょう。

生活の中でのちょっとしたアドバイス

エレベータやエスカレータの代わりに、階段を使いま• しょう。目的地から遠い場所に車を停めましょう。• 数ブロック先のバス停から乗り降りしましょう。• 子供やペットと遊びましょう。• テレビを見ながらエクササイズしましょう―サイク• リングマシンに乗ったり、ストレッチをしたり、ハンドウェイトを使ったりしましょう。コーヒーブレイクではなくフィットネスブレイクをとり• ましょう。車やオフィスでは、履き心地の良い靴を履きましょう。•

20 PiNK • fall 2007

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将来の見通し

 エクササイズとがんについては、未解決の問題も残されています。がん生存者を対象とした試験は、主に乳がんの女性患者を中心としてきました。他の種類のがんを患う女性におけるエクササイズの効果を評価することも優先課題でしょう。 さらに、がんの経過を通して、エクササイ

ズが担う役割を検討することも重要です。たとえば、がん治療前にエクササイズを行うことで、身体が治療に耐えられるようになるかもしれません。また、進行がんの女性では、エクササイズが症状緩和やQOLの改善に一役買うとも考えられます。ただし、これらの疑問に取り組んだ試験はほとんどありません。 最後に、がん生存者に最適なエクササイズの種類、強度、回数についても不確かな

点が残っています。今後も新しい情報が得られるでしょうが、これまでに得られた証拠から、適度なエクササイズは、自身が望む生活を送る上で助けになることが示唆されています。 がんという診断は、自分自身にも身近な人にも、人生をみなおし、新しい生活を選択するきっかけとなります。一歩ずつ進んで下さい。まずは医師に相談してみましょう。

特定の疾患を併発しているがん生存者は、エクササイズプログラムを始めるにあたり、特別な注意を払う必要があります。このような注意のいくつかが、米国がん学会2003年度報告書「Nutrition and Physical Activity During and After Cancer Treatment:

An American Cancer Society Guide for Informed Choices(がん治療中・治療後の栄養と運動:インフォームドチョイスのための米国がん学会ガイド)」に述べられています。

重度の貧血がある場合は、貧血が改善するまでエクササイズプログラムを始めて• はいけません。*治療中に強い疲労を感じたら、1日10分程度のストレッチにとどめます。• 免疫系が弱っているのであれば、白血球数が改善するまで、公共のジムは避けてく• ださい。骨髄移植を受けている場合、移植後1年間は公共のジムは避けてください。放射線療法を受けている間は、照射を受けた皮膚を塩素にさらさないでください•

(プールには入らない)。神経障害のために弱っていたり、バランスが悪くなったりしている場合は、屋外で• のウォーキングよりもサイクリングマシンの方が適当でしょう。

(*注:貧血や疲労が見られる場合は、いずれにも治療法がありますから、まずは医師に相談して下さい。)

「ストレッチやヨガといった柔軟体操も、可動域を広げ傷害のリスクを軽減することができます。」

注 意!

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SPIRIT H

OU

SE

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癒しの食べ物

ブラがいっぱい!

SPIRIT H

OU

SE

心 の 声 を 聞 く

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食 べ 物

食 べ 物 が 、あるがん生 還 者とその 家 族 に届けた友 情と人 生 の 教 訓Mia James

癒 し の

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  レ ベ ッ カ ・ ゴ ニ ウ ィッ チ( R e b e c c a Goniwich)は、米国マサチューセッツ州サドベリーに住む46歳、3児の母。食欲をそそる温かいラザニア、リガトーニ、リゾットが盛られた大皿からイタリア家庭料理特有の香りがキッチンへ漂ったとき、彼女は幼少時代の日曜日の朝にタイムスリップしました。当時、レベッカが目を覚ますと、家の中は母親が作るスパゲティソースの匂いで満ちていたのです。この思い出は貴重な癒しをもたらしました。、母親はもうこの世にいないながら、両側乳がんの診断と治療という人生の中で最も不確かな時期に直面していたレベッカにとってはことさら、子供のころに感じていた安心感を思い出させてくれるものだったからです。 最高の癒しの食べ物―それは、お祝い事や休

日、そして愛情という幸せな思い出を呼び起こす材料、組み合わせ、味付け、香り、そして盛り付けです。時に食事は平凡な日課を取り戻させ、目の前の困難に負けることなく、普通の生活が続くことを私たちに確信させてくれます。調理中も食事中も、食べ物は家族や友人を1つにする役割も果たします。これは、病気によって孤独を感じているときには特に重要です。そして、レベッカが言うように、多くの人にとって食事は愛情なのです。ですから困難なとき、たとえばがんの診断が下されたときなど、食事はすばやく、支援と交友とを運ぶ手段となります。さらに、がんから生還したレベッカが気付いたように、健康的な食事は長期にわたる健康的な暮らしの中心なのです。 レベッカのがんの経験は、定期的なマンモグラ

フィで片方の乳房に腫瘍が発見されたときから始まりました。もう片方の乳房のしこりは、マンモグラフィ上には現れませんでしたが、かかりつけの医師によって発見されました(レベッカはこの診断時の経験から、女性が自己検診からマンモグラフィまですべての検診を受けるべきだと主張しています)。腫瘍摘除術ではすべてのがん組織を取り除くことができなかったため、レベッカは両側乳房切除術を受けました。この根治手術が一連の合併症の発端となりました。手術時に挿入された組織拡張器が重度の感染を引き起こしたのです。感染は激しい痛みをもたらし、さらに6度にわたる入院を余儀なくされました。化学療法もレベッカにとって相当つらいものでした。体重が10ポンド(約4.5kg)落ち、それまでは背中ま

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であった髪が抜け落ちました。毎回投与後には体力が非常に弱ってしまい、4日間病院で点滴を受けて過ごさなければなりませんでした。 がんと診断された親はしばしば、母親または父親としての役割と、治療によって課せられる時間やエネルギー面の負担との微妙なバランスについて語ります。レベッカにとってこの課題は困難なものでした。2番目の子供である息子は重度の自閉症で、最善の環境下でさえ大変と思うほどのケアが必要です。レベッカの夫が家族のニーズの多くに対応することになりました。レベッカは夫が彼女を支援し、彼女の仕事を順調にこなしていると誇らしい気持ちで認めていましたが、彼女と家族に助けが必要であることは明らかでした。家庭料理にかける時間とエネルギーが十分でなかったことから、友人や家族は自然と、ゴニウィッチ家に食事を作って届けることで一家を支援するようになったのです。 ロスタ・ヘルピング・ハンズ(Lotsa Helping Hands、www.lotsahelpinghands.com)はボランティアを統括し、必要とする人々に食事の準備と配達を行う団体です。同団体の助けを借りて、ゴニウィッチ家は、自分たちが必要とする食事について、また特別な好みも含め情報をウェブサイトに掲示しました。ボランティアはリストを見て、特定の日付と食事を申し出るのです。レベッカが言うとおり、同プログラムによって「何かできることはありませんか」と声をかける

すべての人が、本当に必要とされる場面で貢献できるようになったのです。 反響は絶大でした。友人がすぐさまレベッカのボランティア名簿に名を連ね、子供の昔の先生や、まったく見知らぬ人までが登録されました。関わったすべての人の寛大さは素晴らしいものでした―メイン料理に前菜、ワイン、さらには花までもが添えられていることもありました。また、地元の有名なレストランから食事が運ばれてくることもありました。

「私のお気に入りは、どなたかが届けてくださったローストビーフディナーです。マッシュポテトとグレイビー、野菜、そしてパンが添えられていました」とレベッカは思い起こし、感謝とともにこう付け加えました。「誰かにあげてしまうのはもったいないくらい、とても手が込んだお料理でした。」ボランティアはレベッカがイタリア料理を好むことにも気を配り、少女時代を思い出させる香りに溢れたパスタ料理を届けてくれることもしばしばでした。昔ながらの定番料理の新しい調理法を学ぶこともありました。「 主 人と私は 、リガトー

ニを作る方法が一体いくつあるのかと、とても興味を持ちました」とレベッカは言います。 退廃的な気持ちで食事をとっていた時期、友人たちが運んでくれる食事はお腹を満たすだけでなく、はるかに多くのものをもたらしてくれることにレベッカは気付きました。大皿料理、キャセロール料理、ピクニックバスケットの一つ一つ

が、それまでに味わったことのない連帯感と一体感を運んでくれたので

す。「私たち一家に食事を準備してくれることを通じて発展した

友人のコミュニティは、おどdろくほど素晴らしいものでした」とレ

ベッカは語ります。レベッカは、このような支援が彼女の回復に果たし

た役割を次のように説明しています。「がんを敵として、新旧の友人みんながそれを撃退するのを助けてくれました。食べ物が破壊兵器の役目を果たしたかのようでした。」 レベッカは、がんそのものが孤独な経験になり得る一方で、がんと診断される以前から、自閉

症のわが子を世話する上である程度の孤独を感じていたと言います。息子にか

なりの時間を割く必要があったため、彼女の社会は大部分が特

殊教育コミュニティへの

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参加で成り立っていたとレベッカは語ります。これによって確かに充 足 感は得られましたが、レベッカは自 分 が 住 んで いるもっと大きなコミュニティから疎外されているように感じることもありました。しかし、がんと診 断された後はそうではありませんでした。絶え間なく続く食事のボランティアが、瞬く間に家族同様の仲間となりました。レベッカは今、「私の治癒の多大な部分」は食事と交友のおかげで得られたと考えています。食べ物を通して、自分が愛され、必要とされていると感じ、また本当の一体感を味わったのだとレベッカは述べています。

「一生を通じて、あれほど愛されている、大切に思われている、理解されていると感じたことはありません。」 レベッカが健康を取り戻した今も、食事や善意、治療期間を通して彼女と家族を支えた友人たちのコミュニティ―旧友も新しい友人も―は、彼らの生活の重要な部分を占めています。レベッカと夫、そして子供たちは、調理してもらったレシピのいくつかを家族の新たなお気に入り料理に取り入れています。また一家は、友人たちがテイクアウト料理を注文してくれたレストランを直接開拓するのを楽しんでいます。 ゴニウィッチ家に食事を提供することを通じて発展したネットワークは、レベッカが適切ながん

検診を受けるよう他の女性たちに促す活動のきっかけにもなりました。レベッカ自身が診

断のとき、「私はこの経験から何を学ぶべきなのだろう。その情報にどう対応しなければならないのだろう」と自問自答した経験から、このような活動は実際に有り難いものです。このような活動の一環として、レベッカはロスタ・ヘルピング・ハンズのウェブサイトの掲示板に月1回投稿しています。自身の経験を率直に綴ったこの記録によって、マンモグラフィと乳房自己検診の重要性が理解されることをレベッカは期待しています。「両方の乳房を失ったことを恥ずかしいと思ったこともありました。でも堂々と、すべてを話そうと決めたのです。私がきっかけとなり誰かの命が救われることを願っています。これが、家族と私を助けてくれた人たちに対する私の恩返しなのです。」 レベッカは、がんの経験によって人生がどのように変化したかを考えたとき、学んだ重要な教訓

の1つは自分の健康に気を配ることの大切さ

だと語っています。栄養面のサポートとし て も 精 神 面のサポートとしても、食べ物がこの意識の中心にあるとレベッカは言います。健康的に生活し食事するこ

とへのこだわりは、レベッカと彼女の家

族にとって、乳がんからの回復だけにとどま

らず、長期的なメリットをもたらすでしょう。レベッカ

の家系は心疾患に苦しんでいるため(両親とも心疾患で亡くなり

ました)、健康的な食事と賢明なライフスタイルは特に重要です。家族歴を考えれば、

「がんを発症したことによって、別の面で私は命を救われたのかもしれません。あの長い月日の間ずっと私に届けられていたすべての健康的な食べ物のおかげで、コレステロールを120ポイントも下げることができました」とレベッカは語ります。さらに、「子供たちのために、もっと良いお手本にならなければならないと思いました」と彼女は付け加えます。 2005年12月、レベッカは組織拡張器の除去と、乳房再建術を受けました。髪も再び伸びてきました。1970年代、ファラ・フォーセットのヘアスタイルを真似たいと望んでいたとおり、今は巻き髪になっています。そして今、レベッカは子供たちをあちこちへ送り迎えする合間にキッチンで一休みしながら、ほえる犬にシッと言ってからこう言うのです。「これまでになくいい気分!」

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ブ ラ が い っ ぱ い !イース タン シ ョア ア ー ト セ ン タ ー より 勇 気 と 希 望 と 愛 を 込 め てNancy Raia

職員の顔は青白く、いつもは明るい職員室が重苦しい雰囲気に包まれていました。とても美術の授業を予定通りできる日で

はないと私は直感。他の教師に、生徒たちがこのことを知っているのかと尋ねたところ、知っている生徒も知らない生徒もいるけれど、いつかはみんなで話し合うことになるでしょう、と。私が週に1度美術を教えているボールドウィン郡オルターナティブスクール(Baldwin County Alternative School)に勤めるすばらしいカウンセラー、スーザンハレル(Susan Harrell)、その彼女がIII期乳がんと診断されたことを告げられました。 私の知っているスーザンなら、率直にこのことを打ち明けるだろうと判断し、私も彼女と同じように行動したのです。 私は生徒たちに、スーザンが休んでいる理由―医師の診察を受け、治療方法について話し合っているということ―を伝えました。生徒か

らはたくさんの質問が挙がりましたが、私には、「それを作品で表現しましょう」と言うこと以外、言葉がみつかりません。私は生徒たちに、ピンク、白、黒を使った単色画を描いてもらいました。スーザンが戻ってきたときの健康的な顔を思い浮かべられるよう、「ハレルのピンク色の顔」を描きました。生徒の一部は、2005年8月に米国南東部を襲った大型のハリケーン、カトリーナの被災者で、以前、私と一緒に「カトリーナの青い顔」を描いたことがありました。そのときは絵のなかで、青色を使って悲しみを表現しました。ピンク色の顔を描くのは、自然な流れであったようです。そして、乳がんとの闘いという旅に出たスーザンを元気付けるために応援メッセージを付け加えました。その日の授業後、私のもう1つの職場であるイースタンショアアートセンター

(Eastern Shore Art Center)に、生徒たちの作品をいくつか展示したところ、作品を見た人たちから驚くほどの反響があったのです。

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それがすべての始まりでした

 生徒たちの作品が巻き起こした信じがたいほどの反響に応えて、私たちは「In Support of... the B.R.A. Show (応援します…ブラの展覧会)」と題する展覧会を開くことにしました。この展覧会は、乳がんに罹ったすべての人―現在治療中の

人も、長期生存者も、そして記憶に残る友人たちも―を支援し、賞賛するものでした。 展覧会は良い方向に進み始めました。私たちはテーマを設定し、それぞれの芸術家に作品のなかにブラ(ブラジャー)を組み込み、展覧会の目的に対する支持を表明してもらうよう依頼したのです。ガルフコーストがんセンター(Gulf Coast Cancer Centers)が展覧会のスポンサーに名乗りをあげ、収益は米国がん協会(American Cancer Society)へ贈られることになりました。また、ある生還者のグループが、共同作品の制作に参加してくれることになりました。 この大型作品の制作に協力してくれた女性グループは、展覧会が具体化してゆくなかで、私たちの想いを刺激する力となりました。夜を徹しての制作活動は、情報を交換し、互いを励まし合い、恐れを表明し、希望を見出す場となっていました。私はスーザンをこのグループに紹介し、スーザンが「私は生還者たちに囲まれている!」と実感し、リラックスする姿を見守りました。 共同作品の1つ―飾りにブラがついている麻でできた色鮮やかなキルト―に、制作過程

で女性たちが愛情を持って結束し、助け合いながら口にしていた言葉を、付け加えました。すばらしいグループであった彼女たちは、経験と、生還者としての驚くべき精神と将来への希望を重ね合わせて表現し、1つの芸術作品を創りあげたのです。

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「 In Support of... the B.R.A. Show」は 、芸 術 が 癒 しをもたらす 力とな ることを 申し 分 なく示 す 例 で す 。今 回 の 展 覧 会 に 協 力し 、そ の 内 面 の 美 しさを 垣 間 見 せ てくれ た生 還 者 の み な さん に 感 謝 してい ます 。たった 今 、これ を 書 き 終 え たとき 、誰 か が 会 場 から 立 ち 去 りな が らこう 言 ってい ました 。

「 あ あ 、本 当 に 感 動 的 だった ― いち ば ん 素 晴 らしかった の は 、あ ん な にもたくさん の 生 還 者 が 参 加 してい たことだ わ 」。そう 、そ れこそ が 癒 しな の で す!

締め切り前から届き始めた作品

 地元のフラワーデザイナーであるアンニックス(Anne Nix)が電話をかけてきて、不安そうに自分の作品を見てほしいと私に依頼がありました。アンはブラを細かく切って、それでフラワーアレンジメントを作ったのです。地元のおっぱい仲間(Bosom Buddies)プログラムに参加する誰もがアンのことを知っています。長期生存者として、アンは乳癌と診断された女性の相談に数多く乗っているのです。今度は、アンが自分自身を表現する番でした。 生還者のジョイスシールズ(Joyce Shields)と夫のトム(Tom)は、一緒に展覧会に出品したいと考えていました。ジョイスは、自身のリレーフォーライフ(Relay for Life―チームを組んでがんと闘うイベント)での経験を表した大きなコラージュと、がんとの闘いの途中で感じた悲しみや孤独を表現した数枚の絵画を制作しました。トムは、夫が妻の肩に腕を回し、2人が仲睦まじく頭を寄せ合っている姿を描き、彼女の側にいるという決意を表現しました。 ステフフィルポット(Steph Philpot)は、片方の乳房はあるけれど、もう片方は水色の涙を流しているブラの美しい水彩画を出品しました。ステフの体験談はこうです。「私にとって乳がんはとても精神的なものでした。外見上の傷跡は毎日

鏡に映るけれど、目には見えない、心でしか感じることができない内面的な傷があるのです。この作品を制作することで、その内面的な傷が癒されました」。 ジョアンウェルボーン(JoAnn Wel lborn)は、枝からぶらさがった鮮やかな黄色のブラカップに巣の一部が入っていて、小鳥がその上に楽しそうに座っているという、流木でできた奇抜な巣箱を出品してくれました。作品タイトルは、

「When the Boobs Move Out, the Birds Move In(おっぱいが引っ越したら小鳥が入居します)」。ジョアン自身が化学療法と放射線治療を乗り越えた経験を持ちます。乳房切除術を受けた女性たち、それでもなお、わずかなユーモアを見出していこうとする女性たちに、ジョアンはこの作品を捧げました。  地 元の彫 刻 家ジェームズフード( J a m e s Hood)は恥ずかしそうに、片方の乳房しかない見事な女性の胸像を持ち込みました。展覧会のために作品を創りたかったけれども、誰かの気分を害するようなことはしたくなかったとジェームズは言いました。制作中のこの作品の写真を生還者たちに見せたところ、美しい作品だと受け止められました。そのうちの1人が、傷跡が必要だとジェームズに言いました。「どういうものなのか、わからないのです」と彼が答えると、その女性は自分の傷跡を見せたのです。ジェームズは作

品に傷跡を付け加え、克服から15年が経過した親愛なる友人ノーマ(Norma)にその作品を捧げました。 誰もが自分の経験を共有し、支援を表明できることを喜び、地域の人たちも積極的に参加しました。子供たちはおばあちゃんと一緒に作品作りに取り組みました。ある10歳の少女は、たんすのなかからブラを引っ張り出している女の子の鉛筆画を描きました。説明にはこうありました―「ブラ、ブラ、ブラはどこにでもあるけれど、乳がんはどこにもない、ない、ない」。アラバマ州作家協会

(Alabama Writer’s Forum)に所属する地元の作家たちは、ブラと乳がんに関するエッセイや物語を発表して協力してくれました。 そして、今回の活動の発端となったスーザンハレルは、8つの作品を出品しました。いくつかは彼女のお気に入りのイメージである大きな黄色い凧を表したものでした。彼女が放射線治療で不安になっていたとき、親切な看護師がビーチで大きな黄色い凧を揚げているところを想像してごらんなさいと教えてくれました。その時から、黄色い凧は回復と希望の象徴となったのです。私の手を借りながらスーザンは、美しい自画像も描きました。そのなかで彼女は蝶になっていました。最後に顔にピンク色を差しながら、スーザンは「これが健康な女性の顔ね」と言いました。

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「社会の問題は人口の数だけある」と言われています。女性の生き方が多様化して

いる今、乳がんも大きな1つの社会問題だと私たちは考えます。それは、日本では

あまりにもたくさんの人たちが、乳がん早期発見の重要性を知らされず罹患し死

亡しているからです。現在日本では23人が乳がんであると診断されています。残念

な事に、そのうちに1/3が死亡するという悲しい事態に陥っています。なぜなら

ば、乳がんの発見時期が早期でないと言う事が1つの大きな原因です。早期発見で

あれば、90%以上は治癒するとされる乳がん。救える命はまだまだあると私たち

は信じています。

私たちは、日本の乳がんの現状をみて1日でも早く、皆さんに乳がんに関する様々

な情報を提供したい、と考えました。しかし、乳がんと聞くだけで「怖い」と感じる

人も少なくないのではないでしょうか。そこで乳がんのシンボルマークでもあるピ

ンクリボンから、PiN

K

という名前を情報誌につけることとし、幅広い年代の方に

手に取って頂けるようデザインに様々な工夫をしています。

PiN

K

の記事の多くは医療従事者によって執筆された情報ですが、家族や地域の

支援について、サバイバーの体験談なども含まれています。米国と日本の法律の違

いや食生活、また日常の生活環境の違いから、私たち日本人とは少し違った目線

から物事をとらえているものもありますが、同じ女性として人間として乳がんと

ともに生きる事、克服する事、早期発見を啓発する事は、米国であれ日本であれ、

同じなのではないかと思っています。私たちの願いは、乳がんとの孤独な闘いへの

決別、ありとあらゆる乳がんに関する情報の提供、そして皆さんに乳がん早期発

見の重要性に気づいて頂く事です。私たちは心をこめて、PiN

K

をつくり、皆様にお

届けしたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

大阪生まれ、大阪育ち。大学卒業後、1998年から2000年までアフリカのジンバブエ共和国にて、青少年教育のボランティアを経験する。ボランティアを通じて、挫折や無力感を感じながらも社会貢献活動の重要性と、面白さに築きNPOやNGOのマネージメントに興味を持つ。その後、東京のテンプル大学でNPO/NGOマネージメントコースにてノウハウを学び、ファンデーションに就職する。

ファンデーションからのメッセージ

事務局長 原 万紀子Makiko Hara

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シェリル ・クロウインタビュー

Diana Price

感謝と祈り

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シェリル・クロウの 物 静 かで 穏やかな 声 に、

私 の 警 戒 心 は 少し解けました。

何と言ってもシェリルはロックスター 。

彼 女 は 電 話 に向 かって大 声で 歌い出すのか 、

それともその力 強い 存 在 感で 圧 倒するのか ―

私 は 緊 張していました。

けれどもシェリルの 穏やかな 印 象と

静 かな 思いやりの 雰 囲 気 は

私を落ち着 かせてくれました。

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シェリルは単に、ツアーのスケジュールに少し疲れているだけなのかもしれないと思いました。というのも、私が彼女を捕まえたのは、4カ月目を迎えた「ワイルドフラワー」ツ

アー中のめったにない休日だったからです。でもわずか数分の会話で、本当の訳が分かりました。それは格別深刻な話でした。シェリルの穏やかでゆったりとした、思慮に溢れた受け答えには、最近、生きることの意味に直面した経験が現れていました。音楽の世界でグラミー賞を9回も受賞し、3,000万枚以上ものアルバムを売上げたシェリルの歌声は力強く、美しいけれど、私の耳に届く彼女の声は思慮深く穏やかでした。南部らしい、軽く弾むような調子の受け答えに垣間見えるのは、ここ数カ月、自分自身をかつてないほど深く知るまでに追い込まれ、試され、自身の強さと価値を理解することで平穏を見出した女性でした。 ともあれ彼女は自分の境遇に感謝しています。シェリル(44歳)は、2006年2月、定期乳房撮影を受 け、その 後 の針 生 検の結 果 、左の乳房に浸潤性の腺管がんがあると診断されたのです。シェリルは腫瘍摘出手術と7週間にわたる放射線治療を受けました。 インタビューの随所でシェリルは、健康と幸せに、そして家族や友人の支えに対する感謝の気持ちを述べています。彼女の経験について尋ねた質問への答えにも、「とても幸運だと感じています」、

「自分がとても、とてもラッキーだと分かっています」、「有り難い事でした」という言葉が溢れています。 シェリルの話は実際に(表面的には)運とタイミングが良かったようです。乳房撮影で疑わしい結果が出た直後、彼女は放射線科医から6カ月後の再検査を指示されました。しかし、生検を受けるようにという担当産婦人科医の勧めに従ったおかげで、I期のがんをかなり早期に発見できたのです。ただ、もう少し詳しく話すなら、乳房組織が密で固いため自己検診が難しいという理由で、シェリルは35歳以降、定期的に乳房撮影を受けています。さらに、彼女は長年にわたって乳がん患者擁護者として活動しています。つまり、現実は良好な予防策と検診、そしておそらく若干の幸運だったのです。 早期発見であったとはいえ、乳がんと診断された衝撃は軽いものではありませんでした。健康と体力に常に気を配り、本人曰く、「無敵そう」なシェリルにとって、現実に左乳房に浸潤性のがんがあるという告知は、この上ない衝撃でした。 結束の固い家族と頻繁に連絡をとっているシェリルは、ミズー

リ州ケネットの自宅にいる両親にすぐさま電話しました。「両親の電話対応は立派でした。『いいわね、みんなで何とかしましょう。午前中にそちらに行くから』と両親は言いました」とシェリルは話します。2人の姉、カレンとキャシー、弟のスティーブも最終的にはロサンゼルスの彼女の家に来て、治療中の彼女を交替で支えました。シェリルの母は、美味しいスープをはじめ、すばらしいオーガニック料理を作りました。「治療中、親密な家族だからこそ提供できる無条件のケアを受けること、さりげなく支えてもらうことは、とても有意義なことでした」とシェリルは言います。 この経験を経て家族の絆がさらに強くなったのも明らかです。

「時間は(このような出来事の間は)なんだか止まっているようです。そんな時間によって、人は内向的に考えるようになり、また、人生を評価しようという心境になります。私たちは家族としてこれまで以上に近づき、とても親密な一団になりました」と、シェリルは

言います。 腫瘍摘出手術後の7週間にわたる放射線治療の間、シェリルにとって家族の支えは欠くことのできないものでした。体力がかなり高いレベルであったこと、そしておおむね 健 康であったこと

から、シェリルは、治療による身体の疲れやそれに伴う精神的落ち込みは予期していませんでした。

「私はこのように活動的な人間ですから、治療終盤は厳しいものでした。というのは、ただ疲れて、うたた寝しているというだけで、うつ状態にいるように(疲れて)思ってしまうからです。」 とはいえ最終的に、疲労の影響というシェリルの経験は、乳がん克服という道程においてセルフケアの面で彼女が学んだ多くの教訓の1つとなりました。最終的に、「私は降参しました。そして、それが自分を大切にする方法だと感じました。つまり、私はうたた寝する必要がある、また、家をきれいにし、みんなに家に帰ってもらう必要があると考えたのです」と話します。自分自身の声、そして、自分が必要としている価値に耳を傾けることを学んだのは、彼女にとって自分の生命との関わり方における決定的な変化でした。 休息と癒しの時間を持つことによって自分の身体と心を大切にしようという、意識的なこの決意は、シェリルが回復する上で極めて重要な転機でした。がんと診断され、治療を受けるのは、初めて自分に強いたことだと彼女は述べています。

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人 生で出 会うすべての 人々と同 様 に

自分 が 大 切だということ、

そして、自分自身を大 切 にしなければ 、

私 の中の 最 善 のものを他 の 誰 にも与えることは

絶 対 にできないということに気 付いたのです。

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 がんと診断されて以降、シェリルは、乳がんを克服した女性たちがその体験を話し合うのを聞く機会を持ってきました。そこで彼女は、女性たち(セルフケアと栄養管理の不足が診断につながるという考えに皆縛られています)がそのライフステージを問わず同じことを言うのを耳にしました。「私が話した、乳がん治療を経験した女性のほとんどが、乳房の形而上学的な側面について似たような話をします。つま

り、乳房が滋養を象徴する場所であるという話です。私たちはこの世に生まれ、乳房から栄養を受けます。私たちは生命を生み出します。乳房で子供たちを育てます。私たちは本能的に世話をする人であり、周りの人々の世話をし、そして、最期を迎えます。人生ではそれが真実だということを私は確信しています。」 シェリルは今、自分の価値を認め、自分を大切にすることが優先事項になっていると言います。「私は今、自分を大切にすることを強く意識しています。何かが正しくないと感じるときには『ノー』と言うことを、(それは私にとってなじみのない意識なのですが)私は日々守ろうとしています。人生で出会うすべての人々と同様に自分が大切だということ、そして、自分自身を大切にしなければ、私の中の最善のものを他の誰にも与えることは絶対にできないということに気付いたのです。」 放射線治療の間、シェリルがセルフケアとしてこだわったことは、日々の瞑想と日記でした。彼女は長年にわたり、1日2回の瞑想を行っており、治療中には瞑想が彼女の集中力の持続を大いに助けました。「自分が有名人で、みんなが自分のために祈ってくれ、自分にエネルギーを送ってくれると、何となくそのエネルギーを感じると私は思います。私は本当に感情的に疲れましたが、瞑想に助けられ、集中し続けることができました。」 シェリルは、瞑想が身体的集中の持続を助けるように、プライベートな生

活で不安に対処するときは、日記が精神的安定に役立つことを発見しました。「私は本当に、あまりしゃべりたいと思いませんでした。だから日記は、感じていることを表現するのに適した方法でした。」がんと診断される前なら、シェリルは、経験から湧き上がる感情を克服しようとギターやピアノに頼り、常に感情のはけ口であった曲作りに引き込まれたかもしれません。しかし彼女は治療中、そういう事から離れると意図的に決断したのです。「放射線治療を受けている間に私がやったことの1つは、ギターやピアノに走り、曲を書くということではありませんでした。というのは、そういったことは私が誰であるか―私の表面的な個性やエゴ、仕事―とのつながりがあまりにも強いと感じたからです。自分を評価するには、元気になれる場所に自分を置くことは無駄だと思いました。そして、座り込んで、自分がどう感じているかを日記に書くことの方が、ずっと神聖で安心できると思いました。そうすることで私は、がんと正面切って向き合うことができたのです。」 シェリルが治療中と回復期に行ったこれらの私的で静かな習慣は、歌手

としての生活の大半と同じように彼女のがん体験が世間に知られてしまう前に、それを自ら告白することにも役立ったと彼女は言います。ツアーを再開

できた今、ファンと交流したり、がんの経験を伝えたりする中で、彼女は自分に向けられた世間の反響に明らかに心を動かされています。 がんを克服した人たちとの交流について話すうちに、シェリルの声には畏敬の念が込められてきました。明らかにシェリルは、彼女に近づいて、自分たちの経験を伝えようとする女性たち―「増えて行く仲間」とシェリルは呼んでいます―に出会うことの衝撃を強く感じています。がんの診断を乗り越えてか

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ら、ツアーで経験することは大きく変わったと彼女は言います。 「治療から帰ってきたとき、私は、自分の活動について、まったく違う感じ方をしました。騒ぎ過ぎたり、能天気になったりしませんでした。私は観客からの大きな愛情を感じました。以前は愛情がなかったとは思いませんが、戻ってきたときには、より強く愛情を感じたのです。私はかなり多数の人に、放射線治療を経験すると、極めて寛容になると言われました。そして私はどれほどの支えを受けたのか、はっきり気付きました。」 シェリルが、早期発見という幸運、優れた治療を提供してくれた人々といった点で、がんを克服した人たちの中では自分が恵まれた境遇にいると感じたことも明らかです。彼女は治療中、がんの治療とそれに関連する保険の問題に伴う費用について知ったことで、保険なしに、または、保険制度について助言してくれる擁護者なしに、がんの診断に直面する女性たちのことを深く考えるようになりました。「私にとってそれは本当に気がかりなことでした」と彼女は言います。 がんの診断を受け、治 療 を受 けている間にシェリルが 詳しく知るようになった医療制度について話していると、乳がん患者にとって、現在の研究と現在受診可能な治療について希望の光が多数あることに、彼女が胸躍らせていることが分かります。「遺伝子治療の進歩について、毎日、何らかの報告があるでしょう。がんやその他の疾病に関して言えば、どんな小さな進歩も賞賛に値すると私は強く思います」とシェリルは言います。現在進行中の研究に関する話をまとめる際にシェリルは、「これは私たちが闘わなければならない戦争だと思います」と言いました。彼女の声には決意の程をうかがわせる響きがありました。 自身のことを話し始めた今、シェリルの固い決意は乳がんの擁護に関わり続けるという約束にも明確に表れています。シェリルは今後も、早期発見と検診が重要だというメッセージを広く発信するつもりです。そして、彼女を担当したRachel Bellar栄養士と協力して、彼女にとって非常に有益だった栄養と病気予防に関する情報の発信を計画しています。 2月に知り合った女性仲間と同様に、シェリルは今、かつてのものとまったく異なる、がん克服後の一変した人生の現実、「新しい普通」を生きています。彼女は、がんを経験したことで、朝食に何を

食べるべきか(Bellarは食物繊維の多いシリアルを勧めています)といったささいな選択と、最も重視するのは誰か(これまで以上に今は自分自身)といった重要な選択について理解しました。そして彼女は、がん治療の道程で学んだこの教訓を心の最前列に据えて、前進しています。 人生のこの新しい章に最も期待することは何ですかと尋ねると、シェリルは躊躇し、考え込む様子で深呼吸しました。そして彼女はこう答えました。「私の人生は本当に大きく広がったように感じます。がんと診断される前、私の人生には多くのマイナス要素がありました。そして、がんを経験して以降、私の人生は本当に広がって行ったと感じています。私は自分に対して批判的ではありません。私はとても強く、健康で、パワーに満ちていると感じます。たとえもし私が二度と働かなくても、二度と歌を作らなくても、私にとって最高の仕事は目の前にあるような気がします。私は良い境遇にいます。私はただ、やらねばならないと感じることをやり続けようと思っています。

それが 、がんの 経験、あるいは環境、曲作り、人との関わりや人生が導いてくれるあらゆる事柄について語ることであってもです。」 とてもはっきりしているのは、シェリルの人 生がシェリルをどこに導こうとも、彼女が新しい世界、つまり、感謝と祈りによって活力を得るがん克服者

の仲間に入ったようだということです。彼女の感謝の対象は簡単に挙げることができます―今現在の彼女の人生、彼女のがんを早期発見した医療関係者、彼女が(家族、友人、担当の医療チームから)受けた愛情とケア、そして、変化を起こすために彼女に与えられた機会です。 シェリルの祈りはより漠然としていますが、うわべだけのものではありません。それは、彼女の思慮深い受け答えの中、電話を通して伝わってくる心遣いの中に感じられます。友人と家族に対してだけでなく、がんと闘っている間、惜しみなく彼女を支え続けたすべてのファンと多くの仲間に対して彼女が明らかに感じている愛情の中にあるのでます。彼女のスピリチュアルな習慣の中、そして、私たちが彼女を知るようになった音楽の中に表れています。そして今、音楽を伝え続け、自分のことを話し続け、自分を大切にし続けながら、シェリルは、新しい確実な方法で自分が本当は誰なのかを私たちにもう一度伝えているのです。

がんを経 験して以 降 、私 の 人 生 は 本 当に

広 がって行ったと感じています。

私 は自分 に対して批 判 的ではありません。

私 はとても強く、健 康で 、

パワー に満ちていると感じます。

39fall 2007 • PiNK

Page 40: PiNK Fall 2007

THE W

AR

RO

OM

ラン・フォー・ザ・キュアファンデーションは、全国において乳がんの早期発見啓発/教育活動を実施している、特定非営利活動法人です。ファンデーションは、マンモグラフィ機器の寄贈、技師の教育研修また、マンモグラフィ検診料金の助成等を主な活動としています。

マンモグラフィ機器の寄贈ファンデーションは現在に至るまで、計4台のマンモグラフィ機器(GE横川メディカル社製Paforma)を千葉と大阪に寄贈致しました。

医療法人社団千葉県勤労者医療協会 健生クリニック/医療法人社団雅厚生会 千葉新都市/ラーバンクリニック/糸氏医院、大阪府下医療機関(選定中) マンモグラフィ検診料金助成プログラムファンデーションは、マンモグラフィ機器を寄贈した各医療機関において、500名のマンモグラフィ検診の提供を行っています。2007年6月現在の検査結果は下記の通りです。マンモグラフィ検診の助成に関するお知らせについては、地域広報誌への掲載、地域掲示板・薬局へのポスター掲載などを行い、特に企業検診等を受診する機会のない女性たちに提供しています。検診を受診した約60%の女性が初めてマンモグラフィ検診を受診すると、アンケートに回答しており、マンモグラフィ検診が一般的に普及していないことを物語っています。

医療法人社団千葉県勤労者医療協会 健生クリニック 検診受診者数:514名 はじめて:296名 前年度受診: 90名 以前に受診した事がある: 123名異常なし:424名 所見あるも正常扱い:31名 経過観察:5名 要精密検査: 54名*精密検査の結果乳がんと診断された方は0名

医療法人社団雅厚生会 千葉新都市ラーバンクリニック検診受診者数:96名(途中経過報告)はじめて:85名 前年度受診:11名 以前に受診した事がある:0名異常なし:88名 所見あるも正常扱い:0名 経過観察:3名 要精密検査: 5名*精密検査の結果乳がんと診断された方は0名

ファンデーションは、趣旨を同じくする法人に積極的に助成金の提供を行っていきたいと考えています。助成金に関するご質問はこちらまでご連絡下さい。

NPO法人Run for the Cure® Foundation〒150 - 0047 東京都渋谷区神山町18 - 6 神山アンバサダー108号Tel:03 - 3466 - 4798 / Fax:03 - 3466 - 4799E-mail:[email protected]担当者:事務局長 原

教育啓発活動助成プログラム ファンデーションは、NPO法人乳房健康研究会の乳がん教育啓発セミナーに助成金を提供しました。セミナーには、企業内・自治体の保健師達約100名が参加し、専門家から乳がんに関する様々な情報を取得し、それぞれの職場において乳がん検診の啓発活動を行う重要性を再認識してもらう機会をつくりました。日本ではあまり販売されていない、自己検診方法を紹介するDVDとブレストモデル(胸のモデル)を50セット提供しています。

 また、聖路加看護大学の乳がんについて研究を行っているチームとともに、助産師が積極的に乳がん啓発活動を行うことができるよう、2000部のパンフレットを作成し、助産等で配布しました。母親たちが乳がん自己検診法について学べるよう、自己検診方法を紹介するDVDとブレストモデル(胸のモデル)も2セット提供しています。また、乳がんについて母親たちにわかりやすく説明できるよう、原寸大のブレストモデルを提供しました。

ラン・フォー・ザ・キュアファンデーションの基金について

40 PiNK • fall 2007

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ニ ュ ー ス で 見 る 治 療 の 進 歩 と 薬THE W

AR

RO

OM

検診は命を救う

予後がさらに改善

完治を目指して団結した若い女性たち

環境エストロゲン

希望よ再び

最前線では今

41fall 2007 • PiNK

Page 42: PiNK Fall 2007

検 診 は 生 命 を 救 うJenny Maxon, RN

判 定 は 下 さ れ た

乳 がん検 診 が 生 命を救うという考え方を直 感 的 に正しいと思 われるでしょう。

しかし、医 学 界 にこれを納 得させるのに

十 分 な 長 期 的 デ ータが明らかになったのは 、

つい 最 近 のことなのです。

42 PiNK • fall 2007

Page 43: PiNK Fall 2007

Jenny Maxon, RN

43fall 2007 • PiNK

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44 PiNK • fall 2007

Page 45: PiNK Fall 2007

米国だけでも、毎年20万人以上の女

性が乳がんと診断されています。が

んが乳房から離れた部位に転移する前に、

早期に発見して治療を受ければ、治癒率は

高い水準にとどまります。しかし、がんが進

行、転移すると、長期生存率は著しく低下

します。ですから、マンモグラフィ(乳房のX

線検査)などの検診手段を用いた早期の発

見によって、乳がんと診断される女性の生

存が最終的に改善されることは、至極当然

なのです。

 現在、マンモグラフィやその他の検診法

は日常的に利用されているものの、そのよ

うな検診手段の多くが役立つかどうかに

ついて、専門家の見解は常に分かれていま

す。乳がん検診に否定的な立場を取る人の

中には、たとえばマンモグラフィが生存に

メリットをもたらすことが証明されていな

い状況では、検診によって過剰診断が起こ

り、不必要な生検や手術が増加すると考え

る人がいるのです。さらに過剰診断は、患

者の不安や医療費、さらには患者、医療提

供者、医療機関の時間的負担を増大させる

との指摘もありました。

 検診によって実際に乳がんによる死亡

率が低下することを医学界に納得させるの

に十分な長期的データが集まり、発表され

るようになったのはここ数年のことです。最

近まで、このようなデータには、検診で乳が

んが発見された女性と発見されなかった

女性の生存率の差を識別できるほど十分

な期間の追跡調査が含まれていませんで

した。けれども今や判定は下されたようで

す。マンモグラフィ検診は乳がんと診断さ

れる女性の生命を救うのです。

 それでもいくつかの疑問が残ります。乳

がんを発症するリスクが高いと思われる女

性には、どのような検診を行うべきでしょう

か。比較的若い女性あるいは乳房組織が

高密度な女性では特に、どのようなマンモ

グラフィが最も確実なのでしょうか。高齢

女性はどれくらいの頻度で検診を受けるべ

きでしょうか。

 これらの疑問や乳がんを取り巻くその他

の疑問に答えを見出すため、現在いくつか

の試験が進められています。適切な検診と

早期発見によって、最終的には、乳がんの

大部分が早期に発見、治療され、すべての

女性にとって治癒可能な病気となることが

期待されます。

 現時点で最も重要なポイントは、女性は

40歳を迎えたら、マンモグラフィを年1回

受けることが一般に推奨されているという

ことです。乳がんの家族歴がある患者、ま

たは遺伝的に乳がんにかかりやすい患者

は、早めに検診を開始することを医師に相

談する必要があります。

女性は乳房自己検診を月に1回以上、できれば毎月同じ時期に実施することが推奨されます。

45fall 2007 • PiNK

Page 46: PiNK Fall 2007

最 新 の 結 果:検 診 マ ン モ グ ラ フ ィ

  マンモグラフィ検診について評価を行った、最近終了した研究や試験の結果をいくつかご紹介しましょう。 米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は先頃、治療と検診がそれぞれ乳がん死亡率の低下にどの程度寄与しているのかを推定する目的で、米国内の7つのグループに研究助成を行いました。同研究には、ダナファーバーがん研究所(Dana Farber Cancer Institute)、エラスムス大学(Erasmus University)、ジョージタウン大学(Georgetown University)、MDアンダーソンがんセンター(MD Anderson Cancer Center)、ロチェスター大学(University of Rochester)、スタンフォード大学(Stanford University)、ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin at Madison)の研究者が参加しました。各グループが、同一のデータ群を用いてそれぞれに統計モデルを作成しました。 推定値にばらつきが見られたものの、7つのグループすべてが同じ結論に達しました。つまり、米国で1975~2000年の間に見られた乳がん死亡率の低下は、検診と治療の効果が組み合わさった結果であるという結論です。死亡率低下のどの程度までがマンモグラフィ検診によるものなのかについては、推定値が28%から65%までとさまざまでした

(中央値は46%)。 デンマークでは1991年に、 マンモグラフィ検診を受けた女性と受けなかった女性を比較する臨床試験が実施されました。同試験では、マンモグラフィ検診プログラムに参加したコペンハーゲン在住の女性と、検診プログラムを実施しなかった他地域の女性が比較されました。プログラム実施期間中の乳がん死亡率は、検診プログラムのない地域の女性と比べて、検診プログラムに参加した女性では37%低いという結果が得られました。

乳房自己検診

 乳がんを克服して6年が経過したスーザン・B(Susan B)は、乳房自己検診の効果を固く信じています。乳房に違和感を覚えたスーザンは、医師の診察を受けました。医師は何の異常も触知されないと言い、マンモグラフィの結果にも異常はありませんでした。数カ月後、自己検診で違和感を確信し、再度診察を受けました。けれども、何も触知されず、マンモグラフィの結果にも異常はありませんでした。

3度目の受診で、スーザンはマンモグラフィと一緒に超音波検査を受けました。超音波検査で放射線科医が異常な腫瘤を発見し、良性ではなさそうだとスーザンに告げたのです。その後の

生検の結果は陰性でしたが、さらに切除した腫瘤の生検を行ったところ、ついに診断が下されました。がんだったのです。がんは既にわきの下のリンパ節7箇所に転移していたことを、彼女は後になって知りました。 スーザンや、彼女と同じような経験をした女性たちは、「乳房自己検診の重要性はいくら強調しても足りません。自分の身体のことは誰よりも自分がよく知っているのです」と言います。彼女は、自分ががんから生還したという事実は自身の直感と粘り強さのおかげだと考えています。自己検診を入念に行っていなかったらどのような結末を迎えていたか―考えたくもないとスーザンは言います。 乳房自己検診と乳がん女性の長期的な転帰に関するデータは多くありません。ただ、自分自

身の身体を知っておくことが、あらゆる方法の中で最善の検診方法かもしれないことを、スーザンをはじめとする女性たちは実証しています。

女性は乳房自己検診を月に1回以上(ホルモンレベルや月経周期が乳房の感触に影響を及ぼす可能性があるため、できれば毎月同じ時期に)実施することが望ましいとされています。スーザ

ンのように何か違和感を覚えたら、医師の診察を受けましょう。自分の身体のことは誰よりも自分がよく知っているということを忘れないでください。 マンモグラフィや自己検診とともに、20~30代の女性は3年に1回、40歳以上の女性は毎年、医療従事者による乳房とわきの下の視触診を受けることが望ましいです。

46 PiNK • fall 2007

Always with you since 1892…

ゴトウフローリストは最高品質の花をより美しく、

そして様々な形でご提案しております。

常に変化する美しい花の空間へ皆様をご案内致します。

W W W . G O T O H A N A T E N . C O . J P

営業時間のご案内

月曜日~土曜日 10 : 0 0 ̃ 2 0 : 0 0日曜日・祝日 1 2 : 0 0 ̃ 2 0 : 0 0東京都港区六本木5 - 1- 3ゴトウビルディング1st

Page 47: PiNK Fall 2007

Always with you since 1892…

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超 音 波 検 査

マンモグラフィまたは乳房検査で異常所見が見られた患者は、超音波検査を受けるよう指示されることがあります。超音波検査は、超音波を内部組織に反射させて、モニター上に画像を描き出すという検査です。超音波検査は、単独では検診法として利用されませんが、他の検診手段と併用してさらなる情報を得るために用いられることがあります。

磁 気 共 鳴 画 像

磁気共鳴画像(MRI)を用いた乳がんの発見については、まだ臨床試験で評価が行われている段階です。これまでの研究では、乳がん発症の遺伝的リスクが高い女性には、マンモグラフィよりMRI検診が有効である可能性が示唆されています。MRIでは、磁石と電波、そしてコンピュータを使って、体内の特定部位の一連の詳細な画像を描き出します。MRIの結果は、がん腫瘤と瘢痕組織の識別に役立つこともあります。

そ の 他 の 検 診 検 査

デ ジ タル マ ン モ グ ラフィ

デジタルマンモグラフィでは、マンモグラフィ画像のコントラストの度合いを操作し、比較的高密度の組織がある乳房部分のコントラストを高めることができます(通常のフィルムマンモグラフィでは、高密度組織中の異常腫瘤の発見に限界があります)。デジタルマンモグラフィは未だ臨床試験段階にありますが、先頃行われた試験では、デジタルマンモグラフィはフィルムマンモグラフィと比較して、乳房組織が高密度の女性と50歳以下の女性において、正診率を15%向上させることが示されました。

超 音 波 検 査 に つ い て

マンモグラフィでは乳腺も腫瘤も白い影として映し出され

ます。そのため、発達した乳腺(高密度乳腺という)の中に

微妙な腫瘤の影を見つけるのは困難なことがあります。逆

に超音波検査では、乳腺は白っぽく映り、腫瘤は黒っぽく

映ります。そのため、小さな腫瘤でも簡単に認識すること

ができます。日本人の乳房は、欧米白人に比べ脂肪が少な

く、殆どの部分が乳腺で占められています。そのため、日本

では、マンモグラフィだけでなく超音波検査を検診に導入

する方向の検討がなされ、地域や職域によってはすでに超

音波検査も検診に導入されているのが現状です。

M R I に つ い て

欧米では日本に比べ、MRIやCTなどの先端医療機器の人

口当たりの設置台数が大幅に少ないため、検査費用が日

本比べ数倍高いのが実情です。比較的手軽で安価にMRI

が使え、さらに乳がんの患者に対しては保険が使えること

もあり、10年ほど前から日本の乳腺外科医は乳がんと診

断され手術が予定された患者に対し、積極的にMRIを活

用するようになりました。その結果、MRIは乳がんの画像

診断器機の中で、最も正確に病理組織像に近い情報を提

供してくれる診断装置として高く評価されるようになりま

した。日本では現在、ほとんどの乳がん患者に対し、手術

前にMRI検査が実施され、乳房温存手術の適応決定や手

術のデザインなどに活用されています。

48 PiNK • fall 2007

Page 49: PiNK Fall 2007

高 リ ス ク 患 者

 乳がん症例の大半は、既知の遺伝的変異によって発生するものではありません。そのため、ほとんどの女性にとって遺伝子検査はメリットがありません。しかし、研究者は2つの乳がん感受性遺伝子(BRCA1とBRCA2)を同定しました。BRCA1またはBRCA2遺伝子を受け継いだ女性では、乳がん発症の生涯リスクが大幅に上昇します。乳がん発症の生涯リスク推定値は、一般集団で12%であるのに対し、BRCA1またはBRCA2に変異がある女性では50~85%に跳ね上がります。 BRCA1またはBRCA2変異がある患者には、利用可能な選択肢がいくつかあります。このような高リスク患者は、マンモグラフィまたはMRI、あるいはその両方による頻繁な検診を、若いうちに始めるとよいでしょう。 カナダで先頃、BRCA1およびBRCA2変異のある女性を対象に、さまざまな検診法による乳がんの発見率を比較する臨床試験が実施されました。同試験の対象となったのは、1997~2003年にマンモグラフィ、超音波検査、MRI、臨床乳房検査によって検診を受けた女性236人でした。試験期間中、22例の乳がんが発見されました。MRIではこれらのがんの77%が発見されたのに対し、マンモグラフィでの発見率は36%、超音波検査での発見率は33%にとどまりました。臨床乳房検査では、9.1%しか発見されませんでした。4つの検査法すべてを併用した場合の乳がんの発見率は95%でした。 BRCA1またはBRCA2変異がある患者は、早急に、検診について医師に相談する必要がありま

す。リスクが高い女性は、生涯にわたる乳がん発症リスクを大きく低下させるために、乳房または卵巣あるいは双方の予防的切除を受ける決断を下す場合もあります。過激な方法と思われるかもしれませんが、このような外科的介入によって、女性の乳がん発症リスクは大きく低下し、最終的にはリスクが高いことに関する不安を軽減することができるのです。卵巣はエストロゲンなどの女性ホルモンを産生します。エストロゲンは乳がん細胞の増殖を促す可能性があるため、卵巣を外科的に切除することによって、BRCA1またはBRCA2変異のある閉経前女性の乳がん発症リスクは約50%低下します。 先頃、欧米の13研究機関が、データ解析に基づき、BRCA1またはBRCA2変異のある女性666人の全生存率と原病生存率を評価しました。卵巣の外科的切除術(予防的両側卵管卵巣摘除術、BPSO)を受けた女性と受けなかった女性の間で、全生存率と原病生存率が比較されました。手術を受けなかった女性と比べて、BPSOを受けた女性では、全生存率が高く、乳がんによる死亡のリスクが(統計学的に)有意に低下していました。 さらに、メイヨークリニック(Mayo Clinic)では先頃、乳がんの家族歴が強いため予防的両側乳房切除術(予防的に両側の乳房を外科的切除する手術)を受けることを決断した女性の満足度を評価する研究が実施されました。患者の70%が自身の決断に満足しており、ほとんどの女性が、情緒的安定性、ストレスレベル、自己評価、性的関係、女性であるという感覚にほとんど変化がない、あるいは良好な改善が見られると回答しています。

最 重 要 ポ イ ント乳 が ん 検 診 を 受 け ま しょう

 乳がんはもはや死刑宣告ではなく、早期に発見し、治療すれば治癒の可能性が高い病気です。マンモグラフィ、乳房自己検診、視触診による乳がん検診は、現時点で、この病気による死亡リスクを最小限に抑える最善の防御策なのです。 乳がんによる死亡率は着実に低下しつつあります。この傾向を維持できるかどうかは、一人一人の女性がきちんと検診を受けるかどうかにかかっています。40歳以上の人は、医師にマンモグラフィの受診について相談しましょう。乳がん発症のリスクが高い人は、医師とのコミュニケーションを保ち、頻繁に検診を受け、最適な検診方法やスケジュールを評価するための臨床試験に参加しましょう。 毎月1回の乳房自己検診を行うことも、乳がん検診計画の重要な要素です。自分の身体は誰よりも自分がよく知っています。スーザン・Bをはじめとする生還者から学んだ教訓が、このような検診は生命を救う可能性があることを教えてくれます。

「乳がんはもはや死刑宣告ではなく、

早期に発見し治療すれば

治癒の可能性が高い病気なのです。」

難波 清(なんば きよし)

ブレストピア・ヘルスケア・グループ 代表

乳がんの啓発から検診、治療までの一貫した医療サー

ビスの提供、乳腺疾患患者のための理想的な診療シ

ステム作りをライフワークとしている。平成 16 年か

ら FUS(MR ガイド下集束超音波手術)による乳が

ん治療をスタートさせ、イーク丸の内(東京 丸の内)

での乳腺科外来診療も行っている。(日本乳癌学会

認定乳腺専門医 日本外科学会専門医 マンモグラ

フィ読影認定医)

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予 後 が さら に 改 善

早 期 乳 が ん 治 療 の 進 歩

乳がん検診が生命を救うという考え方を直感的に正しいと思われるでしょう。

しかし、医学界にこれを納得させるのに十分な長期的データが明らかになったのは、

つい最近のことなのです。

Jenny Maxon, RN

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Page 52: PiNK Fall 2007

誰でも乳がんと診断さ

れればショックです。

けれども、早期乳がんなら、

がんが早い段階で発見さ

れ、治療の効果が最も高

いうちに診断が下された

のだから安心してくださ

い。また、最近では早期

乳がんの治療法が進歩

し、転帰(治療後の経過

や結果)も大幅に改善して

います。

 早期乳がんとは、乳房に

限られているがん、または腋

窩(脇の下)リンパ節を越えて

広がっていないがんを指します。

こうしたがんには、非浸潤性乳管がん

(DCIS)やI期がん、II期がんのほか、

一部のIIIA期がんも含まれます。

 通常、早期乳がんの一次治療では、

乳腺腫瘤摘出+放射線療法、あるいは

乳腺切除を実施します。これらの治療

は、乳房やその周辺部位のがんなら治

療できますが、他の部位に広がったが

んは治療できないため、局所療法と考

えられます。化学療法、ホルモン療法、

標的療法など、全身に広がったがんを

治療する全身療法が補助療法として

行われる場合もあります(術後療法)。

 全身療法が必要かどうかや、いず

れの全身療法が最も適切かは、腫瘍

の大きさや、がんが近くのリンパ節に

広がっているかどうか、ホルモン受容

体の状態、HER2状態など、多数の要

素によって異なります。最近、早期乳

がん治療の進歩により、より効果の高

い、個人に合った全身療法が可能にな

りました。具体的には特殊な性質を持

つがん細胞を(特異的に)攻撃する標

的療法や、より効果の高いホルモン療

法・化学療法、がん再発のリスクを予

測する検査の開発などです。

早期乳がん患者では、ドキソルビシンなどの

アントラサイクリン系薬剤を含む化学療法によって、

がんの再発率が低下し、

生存率が改善することが示されています。

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 HER2と標的療法の効果

 乳がんの20~30%では、HER2として知られるたんぱく質が過剰発現しています。このたんぱく質が過剰発現すると、がん細胞の増殖が加速し、乳がんの予後(病気の経過や結末に対する見通し)が悪化します。幸い、HER2陽性細胞を特異的に標的とするハーセプチンが開発され、HER2陽性乳がん患者の予後が改善しています。 ハーセプチン®(トラスツズマブ)は、HER2陽性細胞を認識し、これに結合する薬剤です。ハーセプチンは、細胞の増殖を低下させ、細胞の死滅を増加させる作用があると考えられています。ハーセプチンの評価はまず、転移性乳がん患者で行われました。化学療法とハーセプチンの併用により、化学療法のみを行った患者に比べ、がんの進行が遅れ、生存率が改善しました。 さらに最近では、早期乳がん患者においてもハーセプチンは良好な成績をあげています。補助療法としてのハーセプチン®の有効性を確認するというHERA試験では、補助化学療法終了後に、HER2陽性早期乳がん患者を経過観察、1年間のハーセプチン投与、2年間のハーセプチン投与の3群のいずれかに割り付けました。2006年米国臨床腫瘍学会で発表された結果によると、ハーセプチン投与を1年間受けた患者は、経過観察群の患者に比べ、死亡リスク、局所再発リスク、遠隔再発リスクが低かったとのことです。ハーセプチン投与を2年間受けた患者については、まだ結果が出ていません。 別の2件の臨床試験の統合解析では、早期乳がん患者における補助化学療法中のハーセプチンの使用について検討されました。ハーセプチンを投与しなかった患者に比べ、ハーセプチンを投与した患者では、再発リスクが52%、死亡リスクが33%低下しました。 HER2陽性乳がん治療が良好な成績をあげていることを受けて、現在、HER2検査は乳がんの精密検査の1つとして日常的に実施されています。

 タモキシフェンを超える: アロマターゼ阻害薬で 閉経後患者の転帰が改善

  乳がんの大 半はエストロゲン受 容 体 陽 性(ER陽性)です。これはすなわち、女性ホルモンであるエストロゲンに刺激されてがんが増殖することを意味します。ER陽性乳がんからエストロゲンをなくせば、がんの増殖を遅らせることができます。 長年にわたり、乳がんのホルモン療法で主役を演じてきたのはタモキシフェンでした。タモキシフェンはエストロゲン受容体を遮断することによって作用します。しかし、最近、ER陽性閉経後乳がんの治療では、タモキシフェン単剤より、アロマターゼ阻害薬として知られる薬剤の方が優れた成績をあげています。 閉経前女性ではエストロゲンは主に卵巣で生成されます。閉経して卵巣のホルモン生成が激減しても、依然として卵巣以外の組織である程度のエストロゲンが生成さます。この過程では、副腎によって生成されたアンドロゲンがエストロゲンに変換されます。この変換にはアロマターゼと呼ばれる酵素が必要となります。アロマターゼ阻害薬はアロマターゼの働きを阻害し、アンドロゲンからエストロゲンへの変換を抑制します。これにより、閉経後患者のエストロゲン量が低下するのです。 アロマターゼ阻害薬は閉経後乳がんの治療にどのように使用するのが最もよいかを検討している研究者が、いくつかの可能性を考え出しました。たとえば、タモキシフェン投与が終了してからホルモン療法の延長としてアロマターゼ阻害薬を使用する、短期間(2~3年)のタモキシフェン投与の後アロマターゼ阻害薬に切り替える、最初のホルモン療法としてタモキシフェンではなくアロマターゼ阻害薬を使用する、などです。このうちどれが最もよい方法かはまだ明らかではないものの、いずれもタモキシフェン単剤よりよい成績をあげているようです。これまで認められている主なメリットは、がんの再発リスク低下です。 アロマターゼ阻害薬は、がんの再発リスクが低下するだけでなく、タモキシフェンに比べ副作用が少ないようです。タモキシ

フェンの使用では、子宮がんや血栓の発現リスクが増加することが懸念されています。アロマターゼ阻害薬の副作用は、骨密度の低下、骨折の増加などです。 現在市販されているアロマターゼ阻害薬には、アリミデックス®(アナストロゾール)、アロマシン®(エキセメスタン)、フェマーラ®(レトロゾール)などがあります。

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タキサンによって化学療法の転帰が改善

 早期乳がん患者では、ドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬剤を含む化学療法によって、がんの再発率が低下し、生存率が改善することが示されています。さらに最近では、こうした化学療法にタキサンを加えることにより、リンパ節陽性乳がん患者の無病生存率や総生存率がさらに改善しています。 タキサンは化学療法剤の一種で、タキソテール®

(ドセタキセル)、タキソール®(パクリタキセル)、アブラキサン®(アルブミン結合パクリタキセル)などがあります。早期乳がんの治療では、タキサンは通常、ドキソルビシンやシクロホスファミドと併用されます。 タキソテールまたはタキソールを含む化学療法によって、リンパ節陽性早期乳がん患者の生存率が改善することが示されています。アブラキサン

(パクリタキセルの新しい剤形)は、転移性乳がん患者を対象とした試験で、タキソールより優れた成績をあげており、現在、早期乳がん患者を対象とした試験が進められています。 こうした試験を含む数々の試験の結果に基づき、現在、リンパ節陽性早期乳がん患者には、タキサンを含む化学療法を使用することが多くなっています。

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物語は終わっていない

 最近の早期乳がん治療の進歩を受けて、より効果の高い治療法が提供され、また、その治療の恩恵に最も浴することのできる患者に治療対象を絞ることができるようになりました。HER2陽性乳がん患者では、ハーセプチン

(および現在研究が進められているその他の標的療法)によってがん再発のリスクが低下し、生存率が改善します。閉経後のホルモン受容体陽性乳がん患者では、治療過程のどこかでアロマターゼ阻害薬を使用することによって、タモキシフェン単剤より高い効果が得られると思われます。また、化学療法の対象となる患者では、タキサンを含む化学療法によって転帰が改

善します。リンパ節陰性・ホルモン受容体陽性乳がん患者では、再発のリスクを推定することによって予後の情報が得られ、治療選択の指標になると考えられます。 ここでご紹介した治療の進歩は、物語の終わりを告げるわけではありません。すべての早期乳がん患者がこうした進歩の恩恵を受けられるわけではありません。また、がん再発のリスクが全くなくなったわけでもありません。しかし、こうした進歩は、早期乳がん患者の多くに転帰の改善をもたらすとともに、さらなる前進に向けた道標ともなることでしょう。

再発リスクに備えて:治療選択に影響を及ぼす検査

 リンパ節陰性乳がん患者では、化学療法が必要かどうかは、治療のリスクとベネフィットの双方を考慮して決定しなければなりません。化学療法の重要な目的の1つは、がん再発リスクを抑えることです。したがって、再発リスクを個々に評価することによって、患者とその医師は治療を選択しやすくなります。 遺伝子発現プロファイリング分野における研究により、再発リスクや治療に対して予測される反応がわかりやすくなりました。遺伝子発現プロファイリングでは、腫瘍細胞で活性を示す遺伝子のパターンを探索します。これまでの研究により、乳がんなど一部のがんで、遺伝子発現によって予後や治療に対して起こりそうな反応に関する情報が得られる可能性が示唆されています。

 Oncotype DX™として知られる遺伝子発現検査では、乳がん再発のリスクを推定し、また、化学療法の効果についても情報が得られます。この検査では21の遺伝子を調査し、10年間にがんが再発するリスクを予測します。検査では、Recurrence Score™に基づいて、患者を再発リスクが「高い」、「中程度」、「低い」のいずれかに分類します。Recurrence Scoreは0~100まであり、スコアが高いほど再発のリスクが高くなります。 タモキシフェンのみを投与した患者、タモキシフェンと化学療法を併用した患者を含む、リンパ節陰性・エストロゲン受容体陽性乳がん患者651例を対象とする試験で、Recurrence Scoreと化学療法に対する反応の相関性が示されました。Recurrence Scoreが低い(がんが再発するリスクが低いと予測される)患者では、化学療法を加えてもあまり意味はありませんでした。Recurrence Scoreが高い(がんが再発するリスクが高いと予測される)患者では、化学療法

を加えることによって、遠隔再発のリスクが著しく低下しました。 化学療法を決定する指標としてのOncotype D X の 使 用 に つ い てさら に 検 討 す る た め 、TAILORx試験として知られる試験に、米国およびカナダの10,000例を超える乳がん患者が登録される予定です。試験では、Recurrence S c o r eに基づいて患 者を治 療 群に割り付けます。すなわち、Recurrence Scoreが高い

(>25)患者には化学療法+ホルモン療法による補助療法を、低い(<11)患者にはホルモン療法のみによる補助療法を行います。一方、中程度

(11~25)の患者については、ホルモン療法のみによる補助療法か化学療法+ホルモン療法による補助療法のいずれかに無作為に割り付けます。この試験の焦点は、再発のリスクが中程度の患者でのOncotype DX検査の役割です。こうした患者での化学療法のベネフィットはまだ明らかになっていません。

 ハーセプチンの成功を礎に、現在進行がん患者を対象にいくつかの新たな標的療法について研究が進められています。いずれは早期乳がん患者においてその有効性が実証されることでしょう。タイカーブ®(ラパチニブ)は、HER2だけでなく、上皮成長因子受容体(EGFR、HER1としても知られる)として知られる関連たんぱく質も標的とします。転移性乳がん患者では、化学療法剤ゼローダ®

(カペシタビン)の投与にタイカーブを加えることによって、ハーセプチンに反応しなくなった患者でがんの進行を遅らせることができました。早期乳がん治療にタイカーブを使用する研究の計画が進められています。

 アバスチン®(ベバシズマブ)は、進行性乳がん患者で有望な成績をあげている標的療法剤です。アバスチンは血管内皮増殖因子

(VEGF)と呼ばれるたんぱく質を標的とします。VEGFは新しい血管の形成に関与します。アバスチンはVEGF活性を抑制することによって、がん細胞への血流量を変え、その増殖を遅らせるのです。再発性または転移性乳がん患者において、アバスチンと化学療法剤タキソール®(パクリタキセル)の併用によって、タキソールの単独投与に比べ、がんの進行が有意に遅れました。早期乳がん患者におけるアバスチンの使用については、現在試験が進められています。

今最前線では…

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「乳がんになるには若すぎるという診断はありません。

現在の担当医が心配ならば、

解決してくれる医師を探しましょう」

Young Survival Coalition

(YSC)CEOであるミッシェル・プリジピスズニー(M

ichele Przypyszny

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ヤング・サバイバル・コアリション(Young Survival Coalition:YSC)は、

乳がんにかかった若い女性に訴えます。

完治を目指して団結した若い女性たち

Diana Price

ラシヤ・ワシントン - 27 歳(Rashiya Washington)法科学生で YSC のメンバー2度にわたり乳がんから生還

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 自分の乳房の健康状態をしっかりと把握し、自身のウェルビーイング(身体的、精神的および社会的に良好な状態)のために何をすべきか、そのために必要な手段を若い女性に提供する―これは、乳がんにかかった若い女性特有の懸念や問題に取り組む唯一の国際的な非営利団体、YSCが掲げる目標の1つです。 YSCは、1998年にニューヨーク在住の3人の若い女性によって設立されました。彼女らはいずれも若くして乳がんという診断に直面したとき、必要なリソースや支援を見つけることができませんでした。YSCには、より大きな中核的使命があります。それは、乳がんを患う世界中の若い女性に関連する問題に影響力を持つ主要団体となり、これら若い女性すべての生命の質と量を改善することです。 このような使命を果たすべく、YSCのスタッフ

とボランティアは、若い女性特有のニーズを考慮して作成されたプログラムを通して、インターネットで、直接会って、または印刷物を通じて毎日活動しています。今日では、「ウェブサイトが一番利用されているサービスです。何千もの若い女性、その家族、友人、医療専門家が毎月サイトを訪れます。同サイトでは、実用的で分かりやすい情報を得ることができます。若い女性を対象とした研究試験について学び、どのようにすれば参加できるかを知ることができます。また、地域で開催されるイベントや教育プログラムを見つけることもできます。何よりも重要なのは、つながり合い、必要な支えを見出すことができることです」とプリジピスズニー氏は述べています。 最近、ウェブサイトで特に活気があるのは掲示板です。平均100人の女性が参加して、気になる様々な話題について新しい会話を始めていま

す。YSCの共同創立者の1人であり、会長を務めるロベルタ・レビー・シュワルツ(Roberta Levy Schwartz)氏は、その人気について次のように語っています。「女性たちは、情報、希望、不安、さらには自分の写真すら共有しています。何よりも、乳がんという旅路のあらゆる段階で互いを支え合います。つながりができた結果、生涯にわたる友情が生まれるのです。」 乳がんの診断を受けた後は、自分が1人ぼっちではないことを知ることがとても大切なのだとレビー・シュワルツ氏は言います。「若い女性が診断を受けた場合、同じ診断や特有の不安を持つ同年齢の人を誰も知らないかもしれません。手術や治療が身体に及ぼす影響、めまいがするほど頻繁な通院、診断が自分のキャリア、家庭生活(子供も含めて)、ライフスタイル、ボディイメージ、妊娠出産、将来に与える影響にまつわる不安に加え

乳 が ん の 診 断 を 受 け た 若 い 女 性 に は 、      1 人 ぼ っ ち で は な い こ と を 知 っ て 欲 し い

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て、孤独感に打ちのめされるかもしれません。」  つ な がりに 対 する 要 望 にさらに 応 えるべく、YSCは無料のEメールリソースであるRe-sourceLinkを立ち上げました。ResourceLinkは、毎月何百人もの女性から寄せられる、リソース、臨床試験・研究、機関やサービスの紹介、同様の診断を受けた若い女性へのリンクに関する問い合わせに、個別の回答を提供しています。「乳がんの診断を受けた若い女性には、1人ぼっちではないことを知って欲しいです。11,000人以上の若い女性、友人、家族、医療専門家からなるYSCコミュニティーが、情報、支援、希望を提供します」とYSC役員のジーニン・サラモン(Jeannine Salamone)氏は述べています。 そして、YSCに居場所を見つけた若い女性たちが、YSCの輪を広げようとしています。YSCのウェブサイトに行けば、YSCで支えを見つけ、自

分の経験を他の人にも伝えたいと思っている多くの若い女性の話を読むことができます。仲間の中で自分の居場所を見つけた若い女性は、「ひとたびYSCを見つけ、自分が1人ぼっちでないことを知ると、心強さを感じます―乳がんの診断を受けたことを人に言うのをためらわず、これまで正当に扱われていなかった人たちに顔と声を貸すことができることを誇りに思うのです」とプリジピスズニー氏は言います。 「彼女らは互いを支え合い、目標達成に向け支援することを惜しみません。彼女らとYSCのつながりが絶えることはありません。乳がんを再発するリスクが常にあることを理解しつつ、若い女性として、これから先もっと長く生きることを望んでいるからです。彼女らは、経験を忘れるのではなく、経験によって自身を形成します。若い女性の乳がん発生率を下げるためにできることは

何でもしたいと考え、他の人が自分の経験から学ぶことができるようにします。彼女らは、自分の娘が母親と同じような―ただ1つ、乳がんを除くすべての点で―大人になれる世界にしたいと願っているのです。」 このように強く、力を与えられた若い女性たちが団結し、YSCのリソースが彼女らを後押しすることで、乳がんにかかった若い女性と彼女らを愛する人々の前途に明るい光が差しています。

ヤング・サバイバル・コアリションに関する詳しい情報 は、www.youngsurvival.org をご 覧 いた だくか、(877)YSC-1011 にお電話いただくか、あるいは [email protected] まで E メールをお送り下さい。

乳 が ん の 診 断 を 受 け た 若 い 女 性 に は 、      1 人 ぼ っ ち で は な い こ と を 知 っ て 欲 し い

若い女性と乳がんに関する事実出典:ヤング・サバイバル・コアリション(YSC)

40 歳以下の女性11,100人以上が、今年乳がんの診断を受け、ほぼ1,100人が死亡する。

30 ~ 40 歳の女性 229人に 1 人が今後 10 年以内に乳がんの診断を受ける。乳がんは 15 ~ 54 歳の若年女性のがんによる死因第1 位。

米国では、40 歳以下の女性 250,000人以上が乳がんと共に生きている。

40歳以下の女性に有効な乳がんの検査手段はない。

若い女性のがんは一般的に進行が早いため、閉経後のがん患者と比較して、

生存率が低い。

乳がんにかかった若い女性は、診断後の妊娠や早期閉経といった、同患者集団に特有の妊娠出産に関連する多くの問題に苦しむ。

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環境エストロゲン

私たちは体内で、エストロゲンのように作用する化学物質を取り込んでいるかもしれません。このような物質は乳がんのリスクにどのような影響を及ぼすのでしょう。 Dayna Deuter

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 最も重大な環境因子を特定する作業が進められていますが、先進国における乳がん発症率の上昇は、人工化学物質への曝露が乳がん発症に関与している可能性を示唆しています。 1970年代から1990年代にかけて、世界の乳がん発症率は30~40%上昇しました。発症率は先 進 国で最も高く、発 展 途 上 国と比較して4倍もの高さになっています。先進国と発展途上国の環境因子を比較する綿密な評価はまだ完了していません。ただし、1970年代以降、人工化学物質の生産が急増していることから、より多くの化学物質への曝露が乳がん罹患率上昇の一因になっている可能性が示唆されています。

 もちろん、化学物質の生産増加と乳がんの増加を直接結びつけることはできませんが、米国疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:

CDC)による研究では、人体に多くの化学物質が存在することが明らかになっています。これは、いわゆる体内負荷量の評価によって確認されました。同評価では、血液、尿、体脂肪、あるいは母乳を分析することで、人体中の化学物質存在量、すなわち負荷

量を測定します。このような研究を基に、化学物質と乳がんの関連性が検討されています。

 これらの研究から、いくつかの疑問が浮上してきます。ヒト組織に存在するどの化学物質ががんの高リスクと関連するのか、また、それらの物質はどこに源を発するのか。

乳がんの発症には、女性の体内のさまざまな

因子が関与しています。一方、環境中の因子

も同様に関与していることが分かってきまし

た。研究によって(他にも要因はありますが)

親から受け継いだ遺伝子が乳がんの発症リ

スクに寄与し得ることが明らかになるにつれ

て、体内の危険因子に照準が絞られつつあり

ます。さまざまな環境因子が及ぼす影響の評

価が進められていますが、乳がんを引き起こ

す化学物質や産物の特定を目的とする研究か

ら、がんのリスクというパズルに、環境がどの

ように組み込まれるかを解明するための手が

かりが得られました。

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薬箱の中ホルモンと乳がん

 環境物質と乳がんの関係には不明な部分が多いものの、ホルモンの一種であるエストロゲンと乳がんの関連性についてはかなり解明が進んでいます。 長期にわたるエストロゲンへの曝露が乳がんのリスクを増大させることは、医学界で広く認められています。このことは、内因性エストロゲン(体内で自然に生成)にも外因性エストロゲン(医薬品として投与)にも当てはまります。天然エストロゲンへの曝露の増加は、早期の初潮、閉経遅延、高齢での初産または未経産、未授乳によって生じる場合があります。乳がんを引き起こす可能性のある環境因子の話になると、ホルモン補充療法(HRT)と避妊を含む医薬品に注目が集まります。 2件の大規模試験によって、ホルモン補充療法が乳がんのリスクを増大させることを示す、数十年に渡る研究が裏付けられました。HRTに関するウィメンズ・ヘルス・イニシアチブ(Women’s Health Initiative:WHI)は、HRTを定期的に受けている女性では乳がんを発症する可能性が26%高い(心疾患、脳卒中、血栓のリスクも増大する)ことが明らかになった時点で打ち切られました。試験を途中で中止した42%の女性を考慮し、実際にHRTを受けた女性の数に基づいてデータを再解析すると、同リスクはさらに増大し、49%にまで達することが分かりました。 2003年に発表された、英国で実施されたミリオン・ウィメン・スタ

エストロゲンは卵巣と副腎で生成される、必要不可欠な女性ホルモンです。エストロゲンは、思春期における女性生殖器官の発達、成人期における妊娠に対する乳房と子宮の準備、心血管および骨の健康の維持といった、多くの重要な機能を担います。エストロゲンがなければ、女性の身体は妊娠を維持することができず、また、心疾患や骨粗鬆症にかかりやすくなります。

エストロゲンは、一部のがんの増殖を引き起こすこともあります。乳房、子宮、他の女性生殖器官は、エストロゲンに曝露されると増殖が刺激される細胞で構成されています。これら細胞の表面にはエストロゲン受容体があります。血液中を循環しているエストロゲンは、これらの受容体に結合し、増殖に関連する細胞内の活性を高めます。エストロゲン受容体を持つ細胞ががん性になると、エストロゲンへの曝露によってがんの増殖が促進されます。エストロゲン受容体を持つがん細胞は、エストロゲン受容体陽性(ER陽性)がんと呼ばれます。

エストロゲンとがん

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ディー(Million Women Study:MWS)の結果は、WHIで報告されたHRTと乳がんの関連性をさらに裏付けるものでした。MWSでは、全種類の閉経後HRTの使用が乳がんのリスクを有意に増大させること、さらに、リスクが最も高いのは、エストロゲンとプロゲスチンの併用療法を受けた女性であることが報告されました。研究者らは、エストロゲンとプロゲスチンのHRTを10年間受けた女性では、エストロゲン単独のHRTを受けた女性と比較して、乳がんを発症する可能性が約4倍高いと推定しました。 さらに、過去に経口避妊薬を使用し、後にHRTを受けた女性では、いずれも使用したことがない、あるいはいずれか一方のみを使用したことがある女性と比較して、リスクがさらに増大します。 これら一連の研究から、内因性ホルモンとホルモン様に作用する外因性物質はいずれも、乳がんなどのホルモン関連がんのリスクを増大させることが明らかになりました。米国毒性プログラム

(National Toxicology Program)は、HRTと経口避妊薬に使われるステロイド性エストロゲンの双方を既知のヒト発がん物質としてリストに挙げています。

環境でエストロゲン様に作用する化学物質外因性エストロゲンとがんの関連

 乳がんのリスクに寄与する可能性のある環境因子には、エストロゲンまたはエストロゲン様に作用する環境中の化学物質(外因性エストロゲン)への曝露があります。研究では、これらの化学物質が体内でエストロゲン様に作用することが示されています。エストロゲンへの曝露増加が乳がんの原因となり得ることは十分に立証されていることから、これらエストロゲン様化合物への曝露が乳がんのリスクを増大させる可能性が示唆されてきました。私たちは、環境中の外因性エストロゲンと乳がんリスクの関連が、がんと環境を描くパズルの重要なピースであることを学びつつあります。 外因性エストロゲンは、大半の人が曝露される低濃度でダメージを引き起こすほど活性が高いとは、広く認められていません。曝露がわずかの場合、外因性エストロゲンの活性は、体内で生成されるエストロゲンと比較して非常に弱いものです。しかし、外因性エストロゲンは累積的に作用するようです(すなわち、わずかな曝露が

積み重なる可能性があります)。また、体内で生成されるエストロゲンと共に付加的に作用すると考えられます。 これら2つの重要な発見から、外因性エストロゲンへのわずかな曝露でさえ、健康に影響を及ぼす可能性が示唆されます。 実際、特定の外因性エストロゲンへの曝露が、がん発症リスクを増大させ得ることを示す確固たる証拠があります。その例として、合成エストロゲンであるジエチルスチルベストロール(DES)があります。DESは1941年から1971年にかけて流産防止薬として処方されていました。しかし、ホルモンの影響を受けやすいがんの発症率を上昇させることが明らかになったことを受けて、使用が禁止されました。妊娠中にDESの投与を受けた女性の娘では、子宮内でDESに曝露されなかった人と比較して、まれな膣がんの発症率が高く、乳がんを発症するリスクも2倍に増大することが分かりました。

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外因性エストロゲンは私たちを取り巻く環境のどこにある?プラスチックの中 数種類のプラスチック添加物は、乳がん細胞の増殖を引き起こすことが明らかになっています。1991年、タフツ大学(Tafts University)の研究者は、培地にエストロゲンを添加していないにもかかわらず、ポリスチレン製の試験管から溶出した化学物質により、乳がん細胞の増殖が引き起こされたことを発見しました。その後の研究から、溶出した物質はプラスチックに一般的に用いられる添加物、p-ノニルフェノールであることが明らかになりました。 体内で外因性エストロゲンとして作用し、乳がん細胞の増殖を促す可能性があることが確認された他のプラスチック添加物として、ビスフェノールA(BPA)とフタル酸類があります。これらの物質はいずれも、プラスチック製食品包材を含む消費者製品に幅広く使用されています。

化粧ポーチの中

 パラベンは、シャンプー、コンディショナー、日焼け止め、デオドラント、化粧品などのパーソナルケア製品に広く使われている化学防腐剤です。乳がんの原因特定に注力する主要な全国組織である乳がん基金(Breast Caner Fund)によると、2000年以降に発表された研究試験結果では、さまざまな種類のパラベン(メチル、エチル、プロピル、ベンゾイル、ベンジル)が動物中およびヒト組織中でエストロゲン様に作用し得ることが示されています。 また、パラベンは乳房組織に蓄積するようです。2004年に実施された試験では、女性20人中19人の乳がん腫瘍に、検出可 能な微 量のパラベンが5

種類確認されました。さらに、パラベンを含有することが多い制汗剤やデオドラントを早くから頻繁に使用することは、若年齢での乳がん診断と関連づけられています。 これらの小規模試験は、パラベンが乳がんの原因になること証明するものではありません。ただし、結果は重要です。なぜなら、これらの試験は、身体の代謝作用によって変化することなく、パラベンが未変化体のまま皮膚を通過して乳房組織に残留する可能性、さらには、曝露の増加が乳がん発症の危険因子である可能性を示しているからです。

冷蔵庫の中

 1950年代以降、米国およびカナダの牛肉、子牛肉、子羊肉業界は、動物を早く太らせるために、合成成長ホルモン(特にエストロゲン)を使用しています。エストロゲン様ホルモンのゼラノールは、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)による承認を受けた肥育促進剤です。 家畜業界ではホルモンが広く使用されているにもかかわらず、ホルモン投与を受けた動物に由来する食肉の安全性を巡る議論が未だ続いています。ホルモン投与支持派は、ホルモンを投与した牛肉中の残留ホルモン濃度は、人体内で自然に生成されるホルモンの濃度よりもかなり低いと主張します。さらに、合法的にホルモンを投与されたかどうかは問題にせず、卵の方が牛肉よりもエストラジオール(エストロゲンの一種)の1日摂取量を増加させると指摘します。一方、ホルモン

投与反対派は、エストロゲン濃度の高いホルモン投与食肉を摂取することは、エストロゲン曝露の正味量を

増加させるのに十分であるとしています。

  研 究 室での 研 究では 、ゼラノールと17βエストラジ

オール(ヒトによって生成される、最も活性が高いエストロゲン)は、いず

れもヒト乳房上皮細胞のがんを引き起こし、その効力は類似し

ていることが示されています。ゼラノールは、自然に生成されるエストロゲンと同等に有効であると考えられることから、デンマークの研究者は、牛肉製品からのゼラノール摂取は消費者に影響を及ぼし得ると結論付けました。さらに、オハイオ州立大学(Ohio State University)の科学者は、FDAによって安全であると承認された濃度の30分の1の濃度でさえ、ゼラノールに曝露されると乳がん細胞の増殖が有意に増加することを発見しました。

結論

 自然に生成されるホルモンは、体内で多くの重要な機能を担いますが、「良いものでも取り過ぎれば害となる」ということは本当です。エストロゲンと乳がんには、これが当てはまります。体内でエストロゲン様に作用する環境中の特定の化学物質に曝露されることで、適量から過多に傾くかもしれません。このような曝露が乳がんの発症に寄与し得ることを示す証拠はますます増えています。数少ない既知の外因性エストロゲンを避けることで、エストロゲンへの曝露が減り、自分自身を「適量」の範囲に保つことができるかもしれません。

環境対曝露違いを理解しましょう

 曝露とは、個人が特定の環境因子を経験した程度です。発がん性物質と呼ばれるがんの原因物質への曝露は、生涯にわたって蓄積し、乳がんを発症する可能性を高めます。たとえば、小児期に1度、思春期に1度、そして成人期に3度目の曝露を経験する可能性があります。 曝露の例としては、早期の初潮、思春期における放射線への曝露、成人期の閉経遅延などがあり、これらの結果として、エストロゲンへの曝露が増加します。これら曝露のそれぞれが、後年に乳がんを発症するリスクを増大させます。乳がんを引き起こすのが1回の曝露なのか複数回の曝露なのかは個人によって異なり、遺伝的な影響の受けやすさなど、その人が持っている他の要素に左右されます。加えて、同じ曝露を経験した人全員が乳がんを発症するわけではありません。

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外因性エストロゲンへの曝露を減らすために

日々できること

より安全なパーソナルケア製品を使いましょう。1つの方法としては、安全な健康美容製品の世界的生産に関する協定(Compact for the Global Production of Safe Health and Beauty Products)に署名した企業

(www.safecosmetics.orgをご覧ください)から製品を購入することです。同リストは、化粧品消費者を毒性化学物質から守り、製品の安全性について信頼できる企業を支援するために活動を展開している、米国を基盤とする健康・環境団体の連合である安全な化粧品キャンペーン(Campaign for Safe Cosmetics)によって作成されました。

電子レンジ加熱時に食品を覆う際は、ペーパータオルかパラフィン紙を使いましょう。

電子レンジで薄いプラスチック製の保存袋やレジ袋を絶対に使ってはいけません。

ホルモン投 与 牛肉を避けましょう。抗生物質やホルモンを与えられず、動物性副産物を含まないオーガニック認定を受けた飼料で育てられた動物から生産されるオーガニック肉を選びましょう。

「プラスチック容器で電子レンジ加熱してはいけません。

熱によってプラスチック中の添加物が食品中に溶け出す可能性があります。

代わりに、電子レンジ対応のガラスや陶器を選びましょう。」

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希 望 よ 再 び形 成 外 科 医 から見た乳 房 再 建 術

ジュリアナ・ハンセン(Juliana Hansen, MD)医師

私の患者の多く―新たに診断された人、

治療中の人、長期生存している人は

乳がんとうまく付き合っています。

がんを治療し、できることなら

完治することに勝る重要なことはなく、

そのためには副作用は耐えるに

値するということを、

誰もが頭では理解しています。

けれども、すべての患者が現実と

容易に向き合えるわけではありません。

重要な治療(外科手術、放射線治療など)の中には、

永久に乳房を変えてしまうものがあります。

乳房がなくなったり、

傷が残ったり、

小さくなったり、

形がいびつになったりすることがあるのです。

鏡に映る片方または両方の乳房を目にするとき、

新たな現実に直面することになるかもしれません。

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このような理由から、形成外科医として、このような厳しい時期に提供できるも

のがあることは名誉なことだと考えています。乳房再建は前向きな力と捉えられています。今日では、特に喜ばしいことに、患者に提供できる優れた選択肢が数多くあります。最良の知らせは、乳房切除術によって失ったものをただ受け入れるだけの日々は終わったということです。祖母の世代の多くの人は、根治的な乳房切除を受けた後の、変形し、やせ細った胸に耐えなければなりませんでした。一方、今日の乳がん患者は、皮膚温存術を受け、自分自身の組織を用いて直ちに再建を受けることができる可能性があります。これにより、患者は、水着を(お好みならビキニさえ)着る自信、どんな服を選んでも快適に着こなせる自信を持つことができます。

再建術に最も適しているのは誰?

 乳房切除術が必要な乳がん患者の大半が再建術の候補ですが、全員がその選択肢を利用できる訳ではありません。ただし、患者は再建に関する情報を求めるべきです。なぜなら、乳房切除を保険適応とする団体健康保険制度では、切除した乳房の再建、ならびに左右対称にするための反対側の乳房の手術も保険適応とすることが法律で義務づけられているからです。 この法律、すなわち1998年に批准された女性の健康とがんの権利法(Women’s Health and Cancer Rights Act)はきわめて重大でした。この重要な法律が制定されていなければ、保険適応になる乳房再建術は(たとえあったとしても)ごく少数だったでしょう。 ほとんどの大規模医療機関は、内科、外科、放射線腫瘍学科の他に遺伝相談や形成外科を含む包括的ケアを提供しています。たとえば私は、総合乳がん科(Comprehensive Breast Cancer Clinic)で多くの患者を診ます。同科では、患者は1回の予約ですべての

担当医師の診察を受けることができます。 乳房切除を受けた医療機関に再建外科医がいない場合、再建という選択肢は与えられない可能性が高いでしょう。1992年、乳房切除後に再建術を受けた米国人女性の割合はわずか30%でした。しかし、再建術が保険適応となり、形成外科医によって多数の新しい画期的な方法が開発されるに伴い、再建の施術数は過去15年で着実に増えています。 幸い、乳房再建はいつでも実施することができます。したがって、がん治療を受けた時点では選択肢として与えられなかった女性も、乳房再建に興味があれば、有資格外科医に相談することができます。

乳房再建術の種類

 乳房再建術には、大きく分けて2種類、すなわちインプラント再建と自家組織再建があります。インプラントは、乳房の輪郭を再現する人工の装置です。一方、「自家」とは自分自身の組織を指します。自家組織再建術では、身体のどこか別の部分から採取した組織を胸に移植し、乳房を作ります。この移植組織は皮弁(flap)と呼ばれています。再建術の中にはインプラントと皮弁を組み合わせるものもあります。 他の人から組織の提供を受けて乳房を作れるかどうかよく質問されます。短い答えは

「ノー」です。長めの答えは、「理論的には可能ですが、実施されていません」です。これは、他人の組織の移植を受けた場合、免疫抑制剤を生涯にわたり服用し続けなければならないためです。乳房のように生命に直接関わらない器官については、免疫抑制のリスクは認められません。

インプラント再建術

 インプラント再建術は、思われているほど単純ではありません。インプラントを用いて単

に空間を埋めるのではなく、ほとんどの場合、胸壁の筋肉の下に組織拡張器と呼ばれる一時的なインプラントを挿入するという方法をとります。筋肉の下は、インプラントを設置するのにより安全な面です。インプラントを皮膚の下に直接設置する場合と比較して、関連する合併症が少なくなります。筋肉は胸壁にしっかりと固定されているため、通常の大きさのインプラントをすぐに収容することができません。そのため、まず、少量の液体を入れた組織拡張器を筋肉の下に挿入します。組織拡張器は、細い針を用いて経皮的に(皮膚を通して)充填するよう設計されています。乳房切除後は皮膚が麻痺しているため、比較的痛みは感じません。手術後、拡張器を徐々に膨らまし、最終インプラントのための空間を作ります。空間ができたら2回目の手術を行い、組織拡張器を取り除き、永久インプラントを挿入します。 インプラントは、自然の乳房組織よりしっかりしており、大半の自然な乳房と比較して、ボリュームの配置が異なります。インプラント再建術を受ける女性の多くは、反対側の乳房にも手術を受けることで対称性を改善します。乳房が小さい場合、この手術は通常の豊胸術となります。乳房が大きい場合は、小さいインプラントを用いるか、あるいはインプラントを用いない乳房縮小または挙上術となります。 一般的にインプラント再建術は、時間がかからず簡単な手術です。入院が必要な場合でも、入院期間は短期間(一晩)です。最初のインプラントに問題があったとしても、代わりのインプラントが数限りなくあり、また、乳房を作るために、身体の別の部分を用いたり犠牲にしたりする必要がありません。短所としては、インプラントが予測できない長期的変化を起こし、時間の経過に伴い傷が付いたり、拘縮したりする可能性があります。これらが起こった場合には、傷の除去やインプラントの交換を行うことができます。また、インプラントは自然に漏れることがあるので、そのような場合には交換が必要です。 インプラントには、主に生理食塩水とシリコ

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ンの2種類があります。いずれも、より硬質のシリコンでできたシェル(外皮)に包まれていいます。シェルは柔軟かつ丈夫で、体内で不活性です。生理食塩水インプラントは、食塩水で満たされています。シリコンインプラントは、ジェル状のシリコンで満たされており、生理食塩水インプラントよりも柔らかくより自然な感触という長所があります。 シリコンインプラントと慢性疾患発症のリスクに関する多くの研究結果が発表されています。しかし、今までのところ、疾患とシリコンインプラントの使用を関連付ける明確な証拠はありません。1992年、米国食品医薬品局(Food and drug Administration:FDA)は、シリコンインプラントの使用中止要請を出しました。以降、米国におけるシリコンインプラントの使用は研究目的に制限されています。シリコンインプラントの使用については、現在FDA承認申請中です。(訳注:2006年11月17日、FDAはMentor社のシリコンジェル乳房インプラントを正式に認可しました。)生理食塩水インプラントは、制限なく使用されています。両タイプのインプラントを対象とした安全性試験が進められています。

自家組織再建術

 自家 組 織 再 建 術には多くの方 法がありますが、最も一般的な方法は腹直筋皮弁法

(TRAM flap)です。この方法では、下腹部の皮膚と脂肪を用いて乳房を作ります。標準的な方法でも、血液供給管として、片方または両方の腹直筋を使用します。新世代の自家組織再建術には、ごくわずかな筋肉を犠牲にする方法(遊離腹直筋皮弁:free TRAM flap)や、筋肉を犠牲にしない方法(深下腹壁動脈穿通枝皮弁:DIEP flap、浅下腹壁動脈皮弁:SIEA flap)があります。これらの方法は、はるかに洗練されていますが、技術的に難しく、時間がかかり、まだ一般的に実施されていません。広背筋(背中の筋肉)および背中の皮膚と脂肪も、臀部上部または下部と大腿部

の組織と同様に、用いることができます。 すべての自家組織再建術には共通する特徴があります。つまり、自家組織再建術は、インプラント再建術よりも大がかりな手術で、 長期の入院が必要となり、ドナー部位に大きな傷跡が残ります。また、インプラントとは異なり、合併症や生着不全(移植された組織が正しく機能しない)が起こった場合には、皮弁の供給に限りがあります。それにもかかわらず自家組織再建術が好まれるのは、見た目と感触が最も自然な乳房を作ることができる可能性があり、長期的な結果が予測可能で良好だからです。 乳房再建術の中には、自然な感触と健康な組織を得るために自家組織皮弁を用い、ボリュームを出すためにインプラントを併用するという方法もあります。この方法は主に、背中組織の皮弁(広背筋皮弁)を使用する際に用いられます。これは、背中から採取できる脂肪の量が、豊かな胸を作るには不十分であることが多いためです。

乳頭再建術

 現在のところ、ほとんどすべての乳房切除術では、乳房と一緒に乳頭と乳輪を取り除く必要があります。より多くの女性が、乳頭温存乳房切除を安全に受けられるようになることを期待しています。それまでは乳頭再建術が、自然な外見の乳房を作る最終段階となります。乳頭を形成するには、皮膚とその下の脂肪を持ち上げて折り返し、乳房のふくらみから突き出た円柱を作ります。しばしば小さな皮膚移植片を用いて不足部分を補い、乳輪の円形模様を作ります。最後の仕上げとして、コスメティックタトゥー(アートメイクとして知られる入れ墨)で適切な色を加えることができます。 多くの患者は、さらなる手術を受けることにためらいを感じるでしょうが、私は自分のすべての患者に乳頭・乳輪再建術を受けることを強く勧めます。すべての構成要素が元に戻る

と、再建された乳房に関する満足度と受容が向上します。鏡に映る自分を見たとき、乳頭がないと、胸は傷のある小山に見えます。乳頭があれば、乳房に見えます。

1998年に批准された女性の健康とがんの権利法

(Wom

en’s Health and C

ancer Rights A

ct

)はきわめて重大でした。

この重要な法律が制定されていなければ、

保険適応になる乳房再建術は(たとえあったとしても)

ごく少数だったであろうと確信しています。

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Page 70: PiNK Fall 2007

乳 房 再 建 術は、

がんの治 療 法ではありませんが 、

形 成 外 科 医 が 患 者に

与えることのできる贈り物です。

価値はありますか?

 多くの試験によって、乳房再建を選んだ女性は、結果に満足していることが示されています。乳房切除術の直後の再建(一期再建)および時間が経過してからの再建

(二期再建)はいずれも、乳房切除術を受けた女性の心理面に大きな利益をもたらすことが示されています。これらの利益には、再建を受けていない女性と比較してより良いボディイメージ、性的能力、社会的ウェルビーイング(良好な状態)の改善が挙げられます。異なる種類の再建に対する満足度については、一部の試験でばらつきが見られます。腹直筋皮弁乳房再建術を受けた女性は、インプラント再建術と比較して、乳房の見た目と感触に満足する傾向があります。

形状は機能に勝る

 形成外科医は、形状と機能の再建に関する教育を受けています。形状の再建では、見た目の欠陥がないように、取り除かれた部分を元に戻すことを目指します。機能の再建では、働くべきように働き、その利用に制限がないようにすることを目標とします。その良い例として、唇の再建により流涎(よだれ)がなくなること、親指の再建により握ったりつまんだりできるようになること、瘢痕拘縮の除去により関節の可動域が回復することなどがあります。 それでは、乳房再建術にできることを確認しておきましょう。形状の再建はイエスですが、機能の再建はノーです。最もうまく再建された乳房は、乳房のように見えます(理想的には、反対側の乳房と同じように)

が、母乳が出ることや体内のホルモン変化の影響を受けることはなく、乳頭は術前のように敏感ではありません。それでもなお、機能が欠如していようとも、形状の回復によって患者は、女性であることや正常であることの感覚、そして性的な感覚を取り戻すことができます。 乳房再建術は、がんの治療法ではありませんが、形成外科医が患者に与えることのできる贈り物であり、それを行う技術を持つことは名誉なことです。

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Page 71: PiNK Fall 2007

キャサリン・ジェンセン(K

ath

erin

e Jensen

)の場合、乳がん治療後の乳房再建

術を受ける決心がついたのは、彼女の胸に寄

り添う多くの赤ちゃんのことがあったから

です。「私は認定助産師ですが、赤ちゃんが私

の胸に寄り添う姿を思い浮かべると、しっく

りこなかったのです。私にとっては、服を着た

ときにどう見えるか、他人の目にどう映るか

ではなく、赤ちゃんがどう感じるか、私が赤

ちゃんを抱いてどう思うかが問題でした」と

キャサリンは言います。

 

2001年4月、米オレゴン州ポートラン

ド在住のキャサリンは、I IB期の浸潤性乳

管がんと診断されました。がん細胞を取り

除くため、キャサリンは2度にわる右乳房の

腫瘍摘除術を受けましたが、完全に除去す

ることはできませんでした。20個の陽性結

節のうち3個が残ったため、化学療法が始

まりました。

 「私の胸は小さく、2度の腫瘍摘除術の

後に3度目の手術を受ければ、乳房のほと

んど半分を取り去ることになります。5

月末(最初の摘出術後)、オレゴン健康科

学大学(O

regon Health and Science

University

)のジュリアナ・ハンセン(Juliana

Hansen

)医師と相談し、再建術を受けるこ

とにしました」とキャサリンは言います。

 

どのタイプの再建術を受けるかについて、

キャサリンは乳房を左右対称に戻す遊離腹

直筋皮弁法(free TR

AM

flap

)による手

術を選択しました(75ページ、TR

AM

flap

に関するハンセン医師の説明参照)。「自分

の胸に異物は欲しくないという思いがあり

ました。自分自身の組織を使いたかったので

す。自分の子供達に授乳した乳房を失うの

であれば、その代わりには、自分の体と言え

るものが欲しかったのです。生理食塩水を

埋め込むというのは、受け入れがたいことで

した。見た目は良いでしょうが、しっくりく

るとは思えず、自分自身の身体ではないで

しょう」と、決心した当時を振り返り、キャ

サリンは述べています。

 

キャサリンは、がんに侵されているのが右

乳房だけであったにもかかわらず、左右双方

の乳房の切除・再建術を選択しました。「心

から、左右対称の、バランスがとれた感じを

望んでいるのです。自分自身のことは良く分

かっています。鏡を覗き込んで、片方だけが再

建された乳房を見ても、それでいいとは思わ

なかったでしょう。(見た目は良くても)精神

的に、バランスがとれていないと感じたでしょ

う」とキャサリンは言います。

 

手術そのものを受ける時期が訪れたとき、

キャサリンは化学療法を受けている最中でし

た。その時点でも、「いたって簡単な手術だと

思いました」とキャサリンは言います。このよ

うにより複雑な再建術において標準的な、7

ユニットの輸血と12時間半もの時間を要した

にもかかわらずこう言うのです。手術では全

身麻酔に硬膜外鎮痛剤の投与を併用しても

らうことにしました。キャサリンはこれが回

復を助けたと考え、大きな違いを生む選択で

あったと思っています。「手術後に痛みという

ほどの痛みは感じませんでした。」

 

現在、キャサリンは再建術の経験を文字通

りの満足感と共に振り返ることができます。

身体的な結果に満足しています。自分自身に

とっても、(キャサリンにとって一番大切な)世

話をする赤ちゃんにとっても、感触、外見とも

に自然です。

 

再建術とがんの治療、回復との関わりにつ

いて、キャサリンは、ケアの連続性の一部(旅の

終着点に到達するために踏み出すべき一歩)

と考えています。「さらに3カ月を要する治療

があったので、私にとっては、再建術が終わり

ではありませんでしたが、手術を受けて喪失

感を味わったことはまったくありません。乳

房がないと意識したこともありません。(手

術では)生まれ持った乳房を胸に眠りに落ち

ました。麻酔から覚めたときにも、やはり生

まれ持った身体の一部から作られた乳房があ

りました。」

 キャサリン自身の長期にわたる医療分野で

の経歴もまた、こうした過程を経る間の支え

となりました。「自分がすでに医学界に携わ

り、医学用語や治療を理解していることが役

に立ちました。再建術は、単に次の一歩にすぎ

ませんでした」とキャサリンは言います。

 

再建術によってバランスを取り戻した

今、キャサリンは満足感を持って再建術を

振り返ります。当時は次の一歩であった手

術は現在、前進するための足掛かりとなっ

ているのです。

赤ちゃんのため、バランスのため左右対称な乳房を取り戻し、小さなクライアントを抱くための再建術

Diana Price

がんを乗り越えた患者の話

キャサリン・ジェンセン(Katherine Jensen)

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Page 72: PiNK Fall 2007

多くの女性にとって、がんという診断とそれに伴うすべての感情は、途方にくれるような経験です。そうしたさまざまな感情に加えて乳房切除となると、怖さはさらに増すでしょう。乳房を失えば不完全になる、外見が損なわれる、あるいは女性らしさを失うような気持ちになるかもしれません。しかし、このような経験に直面している女性は、乳房再建術を受けることが自分にとってプラスとなり、セルフイメージやセルフエスティームの回復に役立つ可能性があることを知るべきです。

今や乳房再建で女性を助けることができる刺激的な時代です。近年の進歩によって、5年前や10年前には不可能であった選択肢が生まれました。世界各地で、胸躍る最新の方法が次々と実践されています。現在、乳がんの診断という厳しい事態と向き合っている女性、がんの手術について苦渋の決断を下そうとしている女性は、こうした新たな方法の恩恵に浴することができます。

最前線では今

マイクロサージェリーで女性に胸躍る新たな選択肢

72 PiNK • fall 2007

Page 73: PiNK Fall 2007

再建術の最前線マイクロサージェリー

 マイクロサージェリーは手術用顕微鏡の下、拡大像と特殊なマイクロ器具を使って行われます。マイクロサージェリーによる乳房再建では、腹部、大腿部の内側、あるいはそれ以外の部位(ドナー部位)の組織を胸部に移植します。皮弁(flap)と呼ばれる組織片の血流を動脈で断ち、顕微鏡下でドナー部位に由来する静脈を、胸部の移植先の血管と吻合します。 マイクロサージェリーの登場により、乳房再建術は一変しました。マイクロサージェリーによる再建術では、痛みが少なく、回復時間が短く、ドナー部位が病的状態(ドナー部位の機能または外見の喪失)になる確立が低くなるという利点があります。従来の乳房再建術の多くでは、腹部または背部から1本以上の筋肉を採取する必要があり、その結果、強度の低下、腹部ヘルニアや隆起のリスク、あるいは背部に目立つ傷痕が生じました。マイクロサージェリーによる新しい方法の多くは、筋肉を犠牲にすることがありません。傷跡の位置や質に配慮しながら、柔らかで美的観点からも満足できる乳房を作ります。

マイクロサージェリーによる乳房再建の選択肢

 乳房再建に使われる遊離皮弁には、腹直筋 皮 弁( T R A M f l a p )、深 下 腹 壁 動 脈 穿通枝皮弁(DIEP f l ap)、浅下腹壁動脈皮弁(SIEA f l ap)、大腿薄筋皮弁(trans -verse upper graci l is)(TUG f lap)などがあります。これらの皮弁は患者自身の組織を使用することから、自家組織による再建と呼ばれます。これらの皮弁には、過去に受けた放射線や感染による影響を弱めることができる豊富な血流があり、他の種類の再建術が成功しなかった場合に選択されることが多い方法です。 遊離TRAM flapは、腹直筋の全部または一部を犠牲にします。その結果、腹壁ヘルニアや腹部の隆起が生じたり、あるいは腹部が弱くなったりする(腹筋運動ができなくなる)可能性があります。しかし、今では、まったく腹筋を必要としない新しい選択肢があります。多くの場合、大幅な痛みの軽減と回復時間の短縮がもたらされます。経験豊富なマイクロサージャンによってこれらの方法が実施される機会が増えています。

図 1:微小血管の吻合―マイクロサージェリーで皮弁の血管を胸部の血管につなぎ合わせる差し込み図:縫合される血管末端部の拡大図提供:Edward Buchel, MD

マイクロサージェリーで女性に胸躍る新たな選択肢

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Page 74: PiNK Fall 2007

DIEP flap

 DIEP f lap(深下腹壁動脈穿通枝皮弁)は、下腹部(TRAM f lapと同じ部位)の皮膚および皮下組織に血液を供給する血管の名称にちなんで名づけられました。ただし、DIEP flapに筋肉は含まれません。筋肉は、すべての運動神経と共に腹壁にそのまま残されます。 DIEP flapの特に優れた点は、ほとんど本物の乳房のように見え、乳房組織に近い柔らかさと感触があることです。胸部への新たな血流を活発にし、放射線の影響を弱めることから、放射線治療後の実施が推奨されます。再建された乳房は永続的です―柔らかく、問題がなく、生涯を共にできます。また、インプラントが持つ欠点の多くとは無縁です。腹部の傷跡はたいていの場合、下着や水着で完全に隠れます。ドナー部位を閉じれば、下腹部のたるみが取れて引き締まるという、思いがけないおまけが生じます。皮弁には筋肉が含まれないため、TRAM flapでは術後に生じる可能性がある腹部の弱化、ヘルニア、隆起といった潜在的な合併症を未然に回避できます。術後の痛みも、TRAM flapと比較して大幅に軽減されます。 DIEP f lapを実施できるのは、特別な訓練を受け、経験を積んだ再建分野のマイクロサージャンだけです。同手術は従来のTRAM

flapよりも時間がかかります。標準的な所用時間は、片側(左右いずれか一方)の場合で4~5時間、両側(左右両方)の場合で8~10時間です。この時間中、全身麻酔をかけることに安全上の問題はありません。多くの再建術で一般的な長さです。 マイクロサージェリーでは、低い確率(1~2%)で微小血管の吻合状態に問題が生じるリスクがあります。血管が機能を失いそうな場合(すなわち血液が凝固しそうな場合)は、吻合をやり直し、皮弁への血流を回復するための再手術が必要となるでしょう。入院期間は平均3~5日ですが、術後の痛みや回復速度によって異なります。DIEP flap後の回復時間は、移植による再建より長引きますが、TRAM flapよりかなり短くなります。通常、術後4~6週間は、ランニング、エアロビクス、5ポンド(約2.3kg)以上の物を持ち上げるなど、肉体的に激しい動きは避けます。ただし、ウォーキングや軽い運動は入院中から開始し、退院後も続けます。

SIEA flap

 SIEA flap(浅下腹壁動脈皮弁)はDIEP flapと全く同じ組織を含みますが、異なる血管系に基づきます。SIEA flapは、同皮弁に直接血液を供給する血管の名称にちなんで名付けられました。DIEP flapは深部の血流を

利用するのに対し、SIEA flapでは皮膚表面近くの血流と腹部の脂肪を使います。 手術中にはっきりと視認でき、微小血管の吻合に使えるSIEA血管を持つ人の割合は約30%にすぎません。これは手術を実施して初めて判定できることで、術前に検査することはできません。SIEA flapの長所には、手術時間の短縮、外科的切開の減少、術後の腹部不快感がほとんど、あるいはまったくないなどがあります。回復時間はDIEP flapより短い場合が多く、TRAMより大幅に短縮されます。SIEA flapの欠点は、この血管を持つ人が約30%しかいないこと、たとえ持っていても微小血管の吻合に十分な大きさではない可能性があるという点です。 腹部組織は他のドナー部位よりも優れているため、通常、DIEP flapまたはSIEA flapが第1選択肢となります。ただし、特定の症例ではこの組織が利用できません。その場合、大腿部の内側(TUG flap)など、腹部以外の身体部位に由来する遊離皮弁を使用します。これは、マイクロサージェリーによる乳房再建術で腹部組織が使用できない場合の第2選択肢として、急速に浮上しています。

TUG flap

  T U G f l a p( 大 腿 薄 筋 皮 弁 )( t r a n s -verse upper gracilis)は、大腿上部の内

図2:DIEP flap―下腹部の皮膚と脂肪組織を胸部に移植することで乳房を再建紫部分は使用せず処分内部の乳房血管に皮弁を吻合乳房切除した皮膚の窪みに再建された乳房提供:Rudy Buntic, MD

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Page 75: PiNK Fall 2007

側(大腿内側の引き締めと同じ部位)から採取します。十分な血流を確保するために、薄筋(大腿内側の筋肉)の一部または全部を採取しますが、採取後にこの筋肉が不足しないようにします。TUG f lapは、柔らかで均整の取れた乳房を再建でき、乳頭再建も直ちに実施できます。 TUG flapの長所として、再建した乳房の突起状態とボリューム感が非常に良好なこと、ドナー部位が病的状態にならないことがあります。また、付加的メリットとして、大腿内側が引き締まること、傷跡の位置と質が良好なことがあります。TUG flapによる乳房再建に適しているのは、自分自身の組織の使用を望み、上部大腿の内側に十分な組織があり、以前に腹部形成術(腹部の脂肪除去手術)や腹部から皮弁を採取したことのある女性などです。かなりやせている女性やよくスポーツをする女性(すなわち腹部のドナー組織が不十分な人)も、TUG flapに適しています。

その他のマイクロサージェリー選択肢

 マイクロサージェリーを伴うその他の選択肢には、S-GAP(上臀動脈穿通枝)、I-GAP

(下臀動脈穿通枝)などがあります。これらの皮弁では、臀部の皮膚と脂肪組織を使いま

す。使用できる組織の量はDIEP flap、SIEA flap、TUG flapより少なく、軟度の点ではより硬く筋張ります。手術中に体位を変える必要があり、皮弁の採取は技術的に難しく、また、微小血管の吻合に使用できる血管が短くなります。これらの皮弁ではドナー部位の外形異常が目立ちやすく、再建の選択肢としての優先順位は低くなります。

マイクロサージェリーに適しているのは誰?

 健康で身体的活動が活発な禁煙患者で、乳房の膨らみを形成するのに十分な腹部組織を有する患者が適しています。妊娠後に腹部の皮膚や脂肪がたるんだ女性は、腹部の引き締めという恩恵に浴することができます。さらに、再建前に乳房に放射線照射を受けた患者、術後に放射線照射が見込まれる患者もまた、マイクロサージェリーによる乳房再建に適しています。 喫煙者および糖尿病患者や血液凝固に問題がある患者は、マイクロサージェリーにあまり適していません。まれに、過去に受けた手術による腹部の傷跡の位置や数が、DIEP flapまたはSIEA flapでの血流の妨げとなる場合があります。このような場合には、しばしば大腿部内側など他の身体部位から遊離皮弁を採取します。

乳房再建の芸術的側面

 技術的側面に加え、乳房再建手術にはかなりの芸術的側面があります。乳房再建の目標は、除去後の胸の形状を、美しさ、対称性、存続性、最低限の可動性(身体機能が失われないこと)と共に再現することです。 乳頭と乳輪は、2度目の手術で乳房の膨らみ上に再建します。乳頭と乳輪の再建には皮膚と皮下脂肪を利用します。これらを持ち上げて折り返し、乳房のふくらみから突き出た円柱を形成し、乳頭を作ります。乳輪にはコスメティックタトゥー(アートメイクとして知られる入れ墨)で着色を施すかまたは植皮(皮膚移植)します。多くの場合、バランスをとるためもう一方の乳房にも手術を行い、再建された乳房と釣り合うようにします。具体的には、再建した乳房に合わるために、乳房縮小、挙上、時には移植などの処置を行います。 乳房再建は、一人一人に合わせた処置です。各患者の選択、希望、生体組織には大きな差があります。最適の再建術を選択するには、各女性の目的、身体の使い方、患者特有の状況を考慮します。

図 3:T U G f l a p( 大 腿 薄 筋 皮 弁 )(transverse upper gracilis)―大腿上部の内側から薄筋と共に組織を採取し、微小血管の吻合によって胸部に移植提供:Rudy Buntic, MD

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SUPPO

RTIV

E CA

RE

Page 77: PiNK Fall 2007

素敵に見えれば気分も爽快

うつ病とがん

が ん 治 療 を 乗 り 越 え る た め の 方 法

SUPPO

RTIV

E CA

RE

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Page 78: PiNK Fall 2007

Look Good ... Feel Better®

一 番 必 要 な 時 に 女 性 の 自 信 を 後 押 し

 女性ががんの治療を受けるとき、通常、何らかの容姿の変化に気付きます。化学療法によってしばしば起こる脱毛はその一例です。けれども、さまざまながん治療に際して生じる、顔面、肌、爪の変化には気付かないかもしれません。 全国規模のがんサポートプログラム(無料)、Look Good … Feel Better(LGFB)は、女性が経験する治療の影響について情報を提供し、変化への対処を支援するために創設されました。1989年、米国化粧品工業会(Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association)によって創設された同プログラムは、米国がん協会

(American Cancer Society)と米国美容術協会(National Cosmetology Association)との協力の下に提供されてきました。これら3つの団体は協力して、がんと共に生きる女性のQOL

(生活の質)改善に寄与しています。 ボランティアの美容専門家も参加しています。Look Good … Feel Betterを通して、脱毛や肌の変色、極度の乾燥といった、がん治療

が容姿に及ぼす影響をカモフラージュするための、化粧品、かつら、帽子などの使い方を実践的かつわかりやすい方法で説明します。プログラムの開始以降、LGFBは大幅に拡大し、年間およそ5万人という驚くべき数の女性の役に立っているのです。創設以来、同プログラムにより、50万人近くの女性が自信、尊厳、そして自己意識を取り戻してきました。 LGFBの美容師は特別な訓練を受けた美容専門家として、がんと向き合う女性を支援してきました。また、LGFBのボランティアの多くは、プログラムに参加したことで、患者と同じように自分も多くを得ることができると述べています。 多くの女性は、美容専門家による2時間の講習会を通してLook Good … Feel Betterを体験します。このような講習会は通常、がんセンターや地域の病院、米国がん協会の事務所で、グループ制で行われています。講習会では、参加した女性全員に、大手化粧品メーカーからメイク用品やスキンケア用品が無料で提供されます。

これらを使って講習を受け、自宅で使用します。美容院で個別講習を開くこともあります。また、講習会に参加できない女性には、自習用のビデオや小冊子を提供しています。ウェブサイト(www.lookgoodfeelbetter.org.)を介した支援も提供しています。 最終的に、Look Good … Feel Betterが着目しているのは、治療を受けている女性の容姿をどう見せるかではなく、むしろ内面でどのように感じさせるか、そしてその感情で、仕事、家族や友人、そして最も大切な治療といった世界と、いかに向き合えるようにするかということなのです。 ローアンヌ・ロアーク(Louanne Roark)氏は米国化粧品工業会およびLook Good … Feel Bet terプログラムの副会長です。現在治療中で、LGFBの講習会に参加をご希望される場合は、ウェブサイト(www.lookgoodfeelbetter.org)をご覧ください。

Louanne Roark, Vice PresidentCosmetic, Toiletry,

and Fragrance Association Foundation

このコーナーでは、スキンケアやメイクのテク

ニック、そしてがん治療中に患者が経験する可

能性のある、脱毛などの容姿にまつわる副作用

に対処するための方法について、実践的なアド

バイスを提供します。女性から寄せられた具体

的な不安や、Look Good ... Feel Betterの

経験豊富な専門家とボランティアからのアドバ

イスなどもご紹介します。

お化粧して、気分をよくしましょう

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Page 79: PiNK Fall 2007

h a i r

s k i n

makeup

ア ド バ イ ス

肌 治療中はおおむね肌が過敏になります。これは化学療法や放射線療法が皮膚の正常な再生を損なうためです。肌が以前より乾燥して質感が変わり、肌にひどく違和感を覚えることもあります。こうした変化に対応するために、通常のスキンケア習慣を少し変えて、シンプルで肌に優しい方法で行うとよいでしょう。具体的には、刺激の少ない石けんを使ってぬるま湯で洗顔し、水分補給のためにアルコール無添加のローションをつけ、医師の許可を受けたSPF 15+の乳液を塗ります。 化学療法や放射線療法により、脂性肌でさえ乾燥して粉が吹いたような状態になりやすいため、1日数回乳液をつけるようにしましょう。ただし、化学療法を受けている人は、ヒドロコルチゾンなどを含むホルモンクリームの使用は避けてください。治療部位あるいはその周辺にクリーム、ローション、メイク用品、石けん、日焼け止め、香水、デオドラントを使用する前には、医師に相談してください。

メイク たいていの女性はメイクに関して―長年やってきたわけですから―自分は上手だと思っているようです。女性は「お化粧をしたら」お出かけの準備が整うと、私達はごく若い頃から教えられてきました。がん患者はもう1歩踏み込んで、ドアを開ける前に勇ましい顔を作るのです。 がん治療を受けている女性が直面する問題には、目の下のクマ、顔色の悪さ、ステロイドによる吹き出物があります。そしてある患者が言うように、「髪が抜けますと言われる時に、眉毛やまつ毛も抜けると教えてもらえるとは限らない」のです。

(一部の例ですが)LGFBのボランティア美容師は、メイクのテクニックを教え、眉毛やまつ毛が抜け落ちた場合のアドバイスをしてくれます。

Look Good ... Feel Betterの依頼により、「自分の容姿」に関する調査が実施されました。その結果、容姿に関連する治療の副作用が、自分自身について女性がどう感じるか、また他人の目をどう感じているかに大きな影響を与えていることが明らかになりました。

主な調査結果をいくつか紹介しましょう。調査対象となった女性の過半数(69%)が、化• 学療法または放射線療法の際に、自分の容姿がやや変わった(37%)、あるいはとても変わった(32%)と回答。調査対象となった女性の大多数(83%)が、• 治療中の自分の容姿について、やや気になった

(33%)、あるいはとても気になった(50%)と回答。調査対象となった女性の半数近く(47%)が、• 治療中の容姿の変化によって、自分に対する友人の接し方がやや変わった(28%)、あるいは変わった(19%)と回答。調査対象となった女性の半数以下が、がん治• 療による容姿関連の副作用に対処するため、支援を求めていた。

出典

本調査は、2006 年 4 月 11 ~ 17 日に行われた 404 人

のオンラインインタビューに基づき、R. L. Repass &

Partners, Inc. により実施された。調査対象 適格者

は、過去 5 年以内にがん治療として化学療法または放

射線 療法を受けたことのある女性とし、Mindfield™

Online Panel Respondents を介して募集した。404

人のインタビューに基づき、95%信頼区間での全般的

許容誤差は± 4.9%であった。

髪 治療中に髪が抜けない女性もいますが、多くの女性は脱毛を経験します。起こり得るこの副作用に立ち向かうために、専門家は事前の策を講じることを推奨します。多くの美容師は、化学療法が始まる前に、長い髪を短めにカットするよう勧めています。髪が少なくなった時、ロングヘアよりショートヘアの方が、ボリューム感が出やすいのです。お気に入りの帽子やスカーフなど、使い心地の良い手持ちのアイテムを使って、少なくなった髪を隠してもよいでしょう。 脱毛は通常、治療による一時的な副作用だということを覚えておきましょう。

「治療が終わったら、前よりきれいに生えてきた」と言う人もいます。

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Kari Bohlke, ScD

う つ 病 と が んが ん を 乗 り 越 えて も 喜 べ な い と き

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マイケル・フィッシュ(Michael Fisch)、「Treatment of Depression in Cancer(がんにおけるうつ病の治療)」

(論文、Journal of the National Cancer Institute Monographs, 2004)

「 臨 床 家 は 憂 う つ 感 や 絶 望 感 を 、

が ん と 共 に 生 き る 上 で

必 然 の 成 り 行 き と は 捉 え な い 。」

― マイケル・フィッシュ(Michael Fisch)

81fall 2007 • PiNK

Page 82: PiNK Fall 2007

うつ病とは

 うつ病は、がんの診断にまつわる悲しみや将来への不安として片付けられるものではありません。うつ病は途方もない絶望感や、喜びを感じられない、普通の生活を送れないといった状況をもたらします。うつ病の原因は明らかではありませんが、遺伝的、心理学的、環境的因子の組み合わせが関与していると考えられます。 米国立精神衛生研究所(Nat iona l I ns t i tu te of Mental Health:NIMH)は、以下の症状のうち5つ以上が2週間以上にわたり毎日続き、日常の活動に支障を来たすようなら、うつ病の評価を受けるよう勧めています。

悲しく不安な、空しい気分の持続• 絶望感、悲壮感• 罪悪感、無気力、無力感• セックスを含め、以前は楽しいと感じた趣味活動への関•

 心と喜びの喪失気力の減退• 疲労感、「動きが鈍くなった」という感覚• 集中、記憶、決断の困難• 不眠、早朝に目が覚める、寝過ごす• 食欲または体重の変化• 死や自殺について考える、または自殺未遂• 落ち着かない、イライラする•

 がん患者におけるうつ病の推定発生頻度には大きなばらつきがありますが、うつ病は一般の人々と比較して、がん患者で多く発生するという点で専門家の意見は一致しています。がん患者はまた、関節リウマチ、糖尿病、心臓病、慢性肺疾患などの重い病気を抱える患者より、うつ病のリスクが高いと考えられます。

推定で25%のがん患者が、いずれかの段階でうつ病を

経験します。うつ病はQOL(生活の質)やがん治療に関

する決断、場合によっては生存に影響を及ぼす可能性が

あるにもかかわらず、しばしば未治療のまま放置されま

す。うつ病の治療を受けていないがん患者がこれほど多

いのはなぜでしょう。がん患者のうつ病に対する認識の

低さや治療の不足は、患者がうつ病について報告したが

らない、医師が最善の管理方法をよく分かっていない、

がんになればうつ病を発症するのが普通だという考えな

ど、いくつかの要因によるものと思われます。

「嫌らしく意地悪なお前はテーブルに足を投げ出してふんぞり返り、

私をこんな風に変えてしまう。自分から話のできない、

夜眠れないかと思うと1日中眠ってばかりの、

何も読めず、救いを求めるための約束も取り付けられない私に」

ニューヨーク州アップステート在住の、乳がんからの生還者、ローラは、48歳で非浸潤性乳管がんの診断を受けた後にうつ病を発症しました。予後(病気の経過や結末に対する見通し)は極めて良好でしたが、「あなたはがんです」という宣告を受け、過去に経験したことがないほど深く落ち込んだといいます。毎朝起きては泣き、何とか気持ちを立て直して仕事に出かけても、仕事を終えて職場を出たとたん、また涙があふれ出したそうです。

「車を運転して家に帰れるだろうかと思うこともありました」とローラは言います。週末には状態がさらに悪化しました。体重は減り、ほとんど誰とも会話をしませんでした。「以前には味わったことのない感覚でした。二度と戻りたくありません。とても孤独な時間でした」とローラは述べています。

ローラ

―ジェーン・ケニヨン(Ja

ne K

en

yon

)の詩、「H

avin

g It Ou

t with M

ela

nch

oly

(うつ病に決別を)」より

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Page 83: PiNK Fall 2007

「嫌らしく意地悪なお前はテーブルに足を投げ出してふんぞり返り、

私をこんな風に変えてしまう。自分から話のできない、

夜眠れないかと思うと1日中眠ってばかりの、

何も読めず、救いを求めるための約束も取り付けられない私に」

南カリフォルニア在住、31歳のタマラ(Tamara)は、約1

年にわたり乳腺嚢胞の精密検査を続けた後、彼女が言う

ところの「完全な虚脱状態」に陥りました。一連のマンモグ

ラフィー検査、超音波検査、生検、矛盾した病理検査結果

に「困惑の極み」だったそうです。「ジェットコースターに

乗った気分でした。毎回最悪の事態に備えるんです」とタマ

ラは語ります。結局タマラは、良性の乳房疾患の一種で、乳

がん発症リスクの高い異型乳管過形成と診断されました。

リスクを減らすためにタモキシフェン(ノルバデックス®)を

処方されましたが、2カ月後に別の医師により中止されまし

た。良性の乳房疾患の診断なら安堵できたのでしょうが、

現実は違いました。その代わりに、「何も変わりはしない。

人生とはこんなものだ」という実感が湧き、ショックを受け

たとタマラはいいます。今後も不確かな状態が続くと同時

に、がんのリスク増大が加わるのだと思いました。前年から

のストレス、これからもストレスが続くとの予感、タモキシ

フェン服用を開始し中止したことによるホルモンの変動―

これらすべてがタマラを悪循環に陥らせました。「そこから

抜け出したかった」とタマラは言います。

がん患者のうつ病を特定する

 がん患者のうつ病は、発症頻度が高いと同時に治療可能なものだとしたら、なぜそれほど見逃されるのでしょう。その理由には、患者、医師、そしてがんそのものの性質という因子の組み合わせが関与しているようです。 うつ病に見られる疲労感、睡眠不足、食欲の変化、体重の減少などの特徴は、多くのがん患者が経験する症状です。こうした症状は、がんそのもの、あるいはがん治療によって引き起こされると考えられます。このように、がんとうつ病に共通の症状があることから、両者をどう区別すべきかが課題となっています。ある研究者が指摘するように、「繰り返し生命の危険に瀕している場合、がん治療を受けている場合、あるいは疲労していたり痛みを経験していたりする場合、気分の変化を評価することは困難な場合が多い」のです。ただし、がんの経過では通常見られないうつ病の特徴(無力感や絶望感、喜びの喪失、自殺を考えるなど)があります。うつ病を発症しているがん患者を特定するには、これらの考えや感情が最も役に立つと思われます。 うつ病とがんという問題への対処は、がん患者を襲う他のさまざまな症状によってさらに複雑なものとなります。対処すべき健康上の問題の数を考えると、時にうつ病が見過ごされるのも無理はありません。さらに、治療の焦点は何か、すなわちうつ病が軽減すべき最重要課題なのか、あるいは痛みなどの他の症状がうまく管理されればうつ病の症状は解消されるのかを判断することが困難な場合もあります。理屈から言えば、このように症状を選ぶ必要はありませんが、症状が同時に生じた際に医師と患者が直面する課題を浮き彫りにしています。 また、うつ病は、患者からの訴えがないため認識されない場合もあります。患者がうつ病の診断を恥ずかしいと思ったり、がん治療に比べてうつ病の治療は二の次だと感じたりすることもあるでしょう。さらに、絶望感を覚えるなどと言ったら医師にどう思われるか、どんな治療をされるかと不安に思うこともあるかもしれません。このようにうつ病自体が、患者が救いを求めることを困難にする可能性があるのです。

 思慮を持って患者と話し合うことにより、医師はこうした障害の多くを克服することができるかもしれません。しかし、多くの医師は自身の障害に直面します。ローラの場合、「どの先生も私がひどく落ち込んでいるのに呆れた様子で、『うつ病ではないでしょう』と肩をすくめた」といいます。医師の反応にローラはさらに落ち込みましたが、彼女が直面していたのは、ごくありふれた問題だったのです。実際、がん専門医は皆、痛みに対処することには自信を持っていますが、抵抗なくうつ病の治療にあたれる医師は非常に少ないのです。 医師に対応してもらえなかったことはローラにとって大きな打撃でしたが、初診担当医にうつ病について相談するよう、兄が勧めてくれました。こうしてローラは勇気を奮い起こして診療室へ行き、

「抗うつ剤をください」と言えたのです。

タ マ ラ

体験談を聞かせてくれたタマラとローラに謝意を表します。お二人のご多幸をお祈りします。

タマラとローラにたどり着く助けとなったメッセージを掲載してくださった

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w.b

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stcan

cer.o

rg

にも感謝します。

謝辞

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Page 84: PiNK Fall 2007

どのような人にリスクがありますか?

 どのような人がうつ病を発症するかを予測することはできませんが、相対的にリスクの高い人はいるようです。うつ病の既往、アルコールや薬物の乱用歴、社会的支援の欠如などの要因は、一般の人々とがん患者の双方において、うつ病のリスクを増大させる可能性があります。興味深いことに、一般の人々では男性より女性の方がはるかにうつ病を発症しやすいのですが、がん患者における傾向はさまざまです。一部の研究者は、「女性と男性のがん患者には、うつ病を発症する同等の可能性がある」と報告しています。 痛みのような症状は、うつ病の可能性と強く密接に結びついています。依然として不明なのは、症状がうつ病を引き起こすのか、それともうつ病のせいで患者が症状の程度を強く感じるのかという点です。このような関係はいずれも作用する可能性があります。 さらに、がんの診断、治療、生存に際しては、うつ病や他の気分的落ち込みの原因となるような出来事が起こり得ます。疑わしい症状の発見、精密検査、診断、待機、変化、そして治療の終了といった出来事はいずれも、患者をとりわけ傷つきやすい状態にさせます。 患者あるいはがんの特徴の中には、うつ病の高リスク患者の特定に役立つものもあるでしょうが、ある研究者は、「疾患の部位や病期に関係なく、がんはうつ病の高発生率と関連する」と注意を促しています。

うつ病とがんの転帰

 うつ病は、普通の生活を営み、人生を楽しむ能力を損なうだけでなく、がんの転帰(治療後の経過や結果)、最も重要なことには生存に影響を及ぼす可能性があります。うつ病は生存に影響するか、またどのように影響を及ぼすかという問題を巡っては、現在も議論が続いています。うつ病と生存の関連については、いくつかの説明が考えられます。すなわち、うつ病は免疫系または神経内分泌系に影響を与えることによって生存に直接作用する、うつ病によってがんの診察や治療への姿勢が変化することでがんの予後(病気の経過や結末に対す

る見通し)が悪化する、うつ病は単により重度な疾患への指標である、などです。 少数の試験により、うつ病が実際に最適な治療を受ける妨げになることが示唆されています。乳がん患者を対象とした試験により、抑うつ状態の女性はそうでない女性よ

り、「決定的」と考えられる治療を受け、化学療法を受け入れる可能性が低いと報告されています。 うつ病と生存の関係について現在行われている議論では、最も重要なポイント、すなわち抑うつ状態にある人々は普通の生活を送ることができず、QOLも低いという点を曖昧にすべきではありません。それによってがんの転帰が改善するか否かにかかわりなく、うつ病がもたらす苦しみを治療するのは当然です。仮にうつ病の治療が最終的にがんの転帰を改善すると証明されれば、それは患者と医師にとって、うつ病を特定し治療する新たな動機付けとなることでしょう。

治療

 一般の人々におけるうつ病治療の標準的方法には、心理療法と抗うつ剤の投与などがあります。がん患者におけるこれら治療法の有効性に関する情報は限られていますが、その効果が一般の人々とがん患者では異なることを示唆するものはほとんどありません。 うつ病の治療が効いているとわかるまでには時間がかかります。最初の治療が奏効しない、あるいは容認し難い副作用を引き起こす場合は、治療の種類や用量を変える必要があるかもしれません。幸い新しい抗うつ剤の多くは、以前のものより副作用が少なくなっています。これらの薬剤には、プロザック®(フルオキセチン)、ゾロフト®(セルトラリン)、パキシル®(パロキセチン)、レクサプロ®(エスシタロプラム)などの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSIR)、シンバルタ®

(デュロキセチン)、エフェクソール®(ベンラファキシン)などのセロトニン、ノルエピネフリンの双方に作用する薬剤、ウェルブトリン®(ブプロピオン)などの他の薬剤があります。 適切な治療期間は、うつ病治療のもう1つの重要な側面です。たとえば、抗うつ剤を服用している患者については、最低でも4~9カ月の使用が推奨されます。

―エゼキール・J

・エマニュエル(E

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l J. Em

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(うつ病、安楽死、終末期ケアの改善)」

 (論説、Jo

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05

「それは深くて暗い、重苦しい時間だった。」

―乳がんからの生還者ローラ(L

au

ra

)、ニューヨーク州アップステート在住

84 PiNK • fall 2007

Page 85: PiNK Fall 2007

うつ病に関する詳しい情報は、NIMH のうつ病情報のページ(www.nimh.nih.gov/healthinformation/depressionmenu.cfm)をご覧ください。

 患者がうつ病治療の補助療法あるいは代替療法を考えている場合、それらの方法について、安全であるか、がん治療の妨げとならないかを確認するために医師と相談すべきです。たとえば、セントジョンズワートはうつ病に対するハーブ療法として注目を集めていますが、ある種の抗がん剤の作用を妨げます。さらに、セントジョンズワートの有効性は未だ明らかになっていません。 ローラは初診担当医に抗うつ剤の処方を直接依頼することができましたが、当初は気が進まなかったといいます。あまりにも気分がすぐれず、気分が良くなる方法など想像することもできず、また副作用のことも気がかりでした。医師は、副作用が最も少なく、即効性があると思われる薬剤を選んでくれました。1~2週間で、ローラの気分は快方に向かいました。まだうつ病の影響は残っていますが、どん底にあった時にできるとは想像すらしなかったことが、今はできるようになったと語っています。 タマラとその夫は、病状が入院を要するほど重いと判断しました。タマラは48時間入院し、別の抗うつ剤に替え、さらに外来で治療を受けました。タマラは回復し、現在、がんではないという事実にようやく喜びを見出せるようになりました。

終末期のうつ病

 終末期のうつ病は、何よりも大きな課題を提起しているかもしれません。うつ病は不可避であるという考えは、死を迎えようとしている患者では一層強くなり得ます。短い命しか残されていない患者には、治療が奏効する時間も残りわずかです。しかし、たとえ人生の終わりが近づいている患者でも、うつ病を容認する必要はありません。この時期の患者は回復への望みは捨てているかもしれませんが、家族に見守られながら苦痛のない死を迎えることで、人生の幕を下ろしたいという希望を持っているかもしれません。うつ病を突き止め治療することは、患者がこの時期の希望を認識し、達成する助けとなるかもしれません。 終末期のうつ病の最も困った側面の1つは、うつ病が、早く死を迎えたいという願望の増大や安楽死の希望に

結びつくことです。これに対応すべく、米国立衛生研究所(National Institute of Health:NIH)のある研究者が、うつ病を「6番目のバイタルサイン」とすることを推奨しています。近年、がんの痛みに対する認識と治療は劇的に進歩しましたが、うつ病の領域におけるこうした進歩は遅れをとっています。

 うつ病の治療は、死を迎えようとしている各患者のニーズに応じて個別化する必要があるでしょう。患者に残された命はあと数週間という状況で、効き目が現れるのに数週間かかる従来の抗うつ剤を使うことに意味はないのです。緩和ケアにおいては、メチルフェニデートなどの精神刺激薬がうつ病の症状を速やかに軽減することが明らかになっています。

支援を求める

 米国立精神衛生研究所(NIMH)は、うつ病を発症したがん患者のために、次のようなメッセージを発しています。「うつ病は治療が可能な脳の病気だということを忘れないでください。がんを含む他のどんな病気にかかっていても、うつ病は治療することができます。自分が抑うつ状態にあるかもしれないと思ったら、そういう人を知っていたら、希望を失くさないでください。うつ病に対する支援を求めてください。」 自分がうつ病かもしれないと思ったら、医師、看護師、ソーシャルワーカー、家族や友人などと相談し、自分が必要としている支援が見つかるまで対話を続けてください。がんの診断、治療、生存という課題に、うつ病の苦しみを追加する必要はないのです。

「差し迫った死のために抑うつ状態となっている人には、

治療の排除ではなく、積極的な治療が必要なはずである」

「私はありふれた安らぎに圧倒される」

―ジェーン・ケニヨンの詩、「H

avin

g It Ou

t with M

ela

nch

oly

」より

「Having It Out with Melancholy」 は、2005 年、

エステート・オブ・ジェーン・ケニヨン(Estate of

Jane Kenyon)が版権を取得。ミネソタ州セントポー

ルのグレーウルフ出版(Graywolf Press)の許可を

得て詩集より転載

85fall 2007 • PiNK

Page 86: PiNK Fall 2007

FIND

YOU

R W

AY

健康の最先端を目指して

Page 87: PiNK Fall 2007

医師に聞いてみよう

Resources

医 療 制 度 の 謎 を 解 く

FIND

YOU

R W

AY

87fall 2007 • PiNK

健康の最先端を目指して

Page 88: PiNK Fall 2007

質問: 乳がんになるのではないかと心配です。 どうしたらリスクが高いとわかるでしょうか。

リスクにどう対処すればよいのでしょう。

回答:周囲を見回すたびに、知人の誰かしらが乳がんと診断されているように思えます。多くの女性

が、自分が乳がんと診断されるのも時間の問題だと感じています。もしあなたがそんな風に感じているなら、まずは自分のリスクを正確に評価し、そのリスクが大きくても小さくても、何らかの手を打つことができることを理解しましょう。 危険因子を持たない平均的な米国人女性の、生涯にわたる乳がんのリスクは11~12%です。乳がんの家族歴、特に一等親血縁者(母親、姉妹、娘)における乳がん歴は、複数の血縁者が乳がんに罹患していたり、50歳未満で診断を受けていたりする場合は、リスクを20%以上に上昇させると考えられます。BRCA1あるいはBRCA2(乳がん感受性遺伝子)の突然変異の保因者であることがわかっている女性では、生涯にわたる乳がんのリスクが87%にも達します。 確認されている他の危険因子には、乳房のある種の前がん状態の診断歴、早い年齢での初潮(12歳未満)や遅い閉経(55歳以上)などの長い月経歴、未経産や30歳以降の満期妊娠、ホルモン補充療法の実施、年齢60歳以上などがあります。

回答:女性は誰でも18歳になったら、乳房の自己

検診を月1回行うべきです。検診の方法は、産婦人科、かかりつけの医師、乳がん協会から派遣された信頼できるボランティアから教わることができます。シャワーの際に石けんやボディーローションをつけた手で行うのがよいでしょう(皮膚表面の抵抗が減ります)。また、年に1度、かかりつけの医師や婦人科医などによる検査を受けます。 年1回のマンモグラフィは、依然として乳がんを早期発見するための主要な手段です。がんの疑いのある部位をより

正確に診断するため、あるいは嚢胞を評価するために、超音波検査を利用することもできます。 最近では、発見された乳がんを評価するための重要な手段として、磁気共鳴画像(MRI)が用いられるようになっています。しかしMRIは費用がかかるため、現時点では一般を対象とした検診に適切な手段ではありません。また、MRIは非常に感度が高い方法ではありますが、比較的非特異的であるため、実際には良性のものも多数検出します。その結果、不要な生検が行われることになります。

質問: 乳がんリスクが高い女性は どのような検診を受ければよいでしょう。

聞 いてみよう医師 に

Amy Lang, MD

88 PiNK • fall 2007

Page 89: PiNK Fall 2007

※ここで紹介されている質問と回答は、アメリカでのリサーチに基づいたものです。

■外因性エストロゲン

 外因性(外部からの)エストロゲンを使っ療法の乳がんへの関与ほど、医学界で盛んに議論されているテーマはありません。多くの専門家が、ホルモン補充療法は乳がんのリスクを同療法開始前の2.5倍に増大させることを認めていますが、リスクはプロゲステロン(黄体ホルモン)、あるいはエストロゲンの単独使用によるものか、あるいは併用によるものかはまだわかっていません。最近では、天然ホルモン、すなわち

(植物に由来する)植物性エストロゲンが安全であると言われていますが、さらに多くの試験が完了するまで、乳がんリスクの高い女性に対して外因性エストロゲンおよびプロゲステロンを推奨することはできません。 同様に経口避妊薬も議論の的となっています。高用量ピルに関する過去の試験では、乳がんのリスク増大が明らかになりましたが、最近の試験では低用量ピルの安全性が示唆されています。試験で確実な結果が得られるまで、乳がんリスクが高い女性には、経口避妊薬の使用を避けることが勧められます。

■ライフスタイルの変化

 アルコールの摂取は乳がんのリスクを増大させます。複数の試験により、1日2杯以上のアルコール飲料は乳がんのリスクを最高40%増大させることが示されています。また、米国の女性看護師を対象とした健康調査研究(Nurse’s Health Study:NHS)では、1日1/2杯のアルコール飲料によってリスクが30%増大する可能性が示されています。葉酸が乳房組織に対するアルコールのリスクを中和する可能性を示唆する証拠があります。NHSから、1日600マイクログラムの葉酸は、毎日1杯以上のアルコール飲料を摂取する女性で保護効果を発揮する可能性が示されています。

 何らかの食品が乳がんリスクを低下させるとの証拠はありませんが、体格指数の低い女性は乳がんのリスクが低く、赤身の肉や高脂肪乳製品の多量摂取が乳がんのリスク増大と関連することが確認されています。したがって、高リスクの女性は、新鮮な果物や野菜(特にブロッコリー、カリフラワー、ラディッシュ、ベリー類、柑橘類、色の濃い葉物野菜)を豊富に含む食事を摂ることが推奨されます。農薬への曝露を低減するために、できる限り有機果物や有機野菜を買うことも望ましい選択です。また、「ホルモン不使用」、すなわち遺伝子組み換えウシ成長ホルモンやインスリン様成長ホルモンIを使用していない肉や乳製品を食べるよう心がけてください。いずれも乳がんのリスク増大への関与が疑われています。 長年にわたり、エクササイズには乳がんに対する保護効果があると考えられています。また、新たに実施された複数の試験によって、適度なエクササイズ(週に4時間以上)でも乳がん再発を減少させ、患者の生存を改善することが示されています。有酸素運動(ウォーキング、サイクリング)と筋力トレーニング(ウェイトトレーニング、レジスタンス運動、腹筋)を組み合わせたエクササイズがよいでしょう。

■化学的予防

 1998年以前には、乳がんリスクの高い女性に選択肢はほとんどありませんでした。その後NSABP P-1試験結果が発表され、高リスクの原因が何であれ、経口の抗エストロゲン薬であるタモキシフェン(ノルバデックス®)がこれらの女性における乳がん発生率を約50%低減することが明らかになりました。(年齢60歳以上が唯一の危険因子である女性にも有効です。)以降、薬物療法によるリスク低減において、タモキシフェンは主役を演じています。 2006年には、高リスク女性において乳がんを減少させることが証明された、第二の薬剤

が開発されました。骨粗鬆症治療薬エビスタ®(ラロキシフェン)とタモキシフェンを比較するSTAR試験において、エビスタ®は高リスク女性の乳がん発症を、タモキシフェンと同様に50%低減することが明らかとなりました。いずれの薬剤も、ほてりや膣乾燥のリスクを増大させ、わずかながら血栓と脳卒中のリスクも伴いますが、エビスタ群のほうが静脈血栓の事例は少数でした。ごくまれにタモキシフェンは子宮がんを引き起こす可能性がありますが、エビスタの子宮への影響は、あったとしても、ごくわずかのようです。

■手術の役割

 最後に、BRCA遺伝子突然変異、あるいは非常に強い乳がん・卵巣がんの家族歴のため、乳がんリスクが非常に高い女性は、リスクをできる限り少なくするために、化学的予防よりもさらに一歩踏み込むことを希望する場合があります。こうした女性に対して、予防のための両乳房の除去(予防的両側乳房切除術)は、乳がん発症リスクを90%低下させることができます。同様に、予防のための卵巣の除去(卵巣摘出)は卵巣がん発症のリスクを96%低下させ、BRCA遺伝子突然変異のある女性における乳がんの発症を50%減少させます。 これらの思い切った選択肢については、遺伝カウンセラー、腫瘍外科医、婦人科腫瘍医、腫瘍内科医、形成外科医と相談の上で行うのが最善の策でしょう。 女性がどのように、なぜ乳がんを発症するかに影響する因子が解明されるにつれて、乳がん予防に役立つ知識も増えてきました。もはや女性は手をこまねいて乳がんのリスクを受け入れる必要はありません。リスクに関する不安がある場合は、自分のリスクが実際はどのようなものかについて知識の豊富な医師に相談し、自分自身を守る最良のプランを立ててください。

回答: 乳がん発症のリスクが高い場合、リスク低減に役立ついくつかの選択肢があります。どの方法が適切かを知るために、各選択肢について医師に相談しましょう。

質問: どうすれば乳がんのリスクを低減できますか。

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Page 90: PiNK Fall 2007

購入希望の方は、商品名、購入点数、お名前住所などの必要事項を、メールまたはファックスでお送り下さい。E-mail:[email protected] Fax:03 - 3466 - 4799 / 「プロダクト係」まで

ラン・フォー・ザ・キュアファンデーションでは、さまざまなオリジナル商品などを販売しています。

ピンクリボン ピアス¥2,500

RFTC 帽子¥1,500

RFTC携帯ストラップ¥700

ピンクリボン チャーム(ゴールドとシルバーの2点セット)

¥2,300

ピンクバンド¥300

ピンクリボン ピンバッチ(ゴールド/シルバー)

¥1,500

90 PiNK • fall 2007

Page 91: PiNK Fall 2007

ラン・フォー・ザ・キュアファンデーションは、Run for the Cure®/Walk for LifeイベントのオリジナルT-シャツに、ニューバランスジャパンの協賛をうけています。

ピンクリボン ペンダント

(ゴールド/シルバー)

¥2,500

RFTCオリジナル T-シャツ

¥1,000

RFTCピンバッチ¥400

2005年RFTC T-シャツ

2006年RFTC T-シャツ

2006年ゴルフトーナメント T-シャツ

91fall 2007 • PiNK

Page 92: PiNK Fall 2007

このコーナーでは、様々な情報提供をできるよう、徐々に充実させていきたいと考えています。検診料金、受診可能な検査の種類などを掲載する予定です。皆さんの医療機関での経験談等もどしどしお寄せ下さい!

東 京 都聖母病院

〒161-8521 東京都新宿区中落合2-5-1電話:03-3951-1111http://www.seibokai.or.jp/

日本赤十字医療センター〒150-8935 東京都渋谷区広尾4-1-22 電話:03-3400-1311http://www.med.jrc.or.jp/

聖路加国際病院〒104-8560 東京都中央区明石町9-1電話:03-3541-5151http://www.luke.or.jp/

東京衛生病院〒167-0032 東京都杉並区天沼3-17-3電話:03-3392-6151http://www.tokyoeisei.com/

医療法人社団ブレストピア・ヘルスケア丸の内・女性のための統合ヘルスクリニック[イーク丸の内]

〒100-6403 東京都千代田区丸の内2-7-3東京ビル TOKIA3F電話:0120-190-828http://www.ihc.or.jp/index.html

※医療機関によって予約等必要な場合がありますので、事前に連絡をされることをお薦めします。

千 葉 県健生クリニック

〒262-0032 千葉市花見川区幕張町4-524-2電話:043-276-1851http://www.min-iren-c.or.jp/kensei/kensei_1.html

千葉新都市ラーバンクリニック〒270-1337 千葉県印西市草深138電話:0476-40-7711http://www.chibashintoshi.or.jp/

大 阪 府糸氏クリニック

〒559-0016 大阪市住之江区西加賀屋1-1-6電話:06-6681-2772http://www.myclinic.ne.jp/itoujiclinic/pc/index.html

宮 崎 県ブレストピアなんば病院

〒880-0000 宮崎市丸山2-112-1電話:0985-32-7170http://www.breastopia.or.jp/

病 院検 査

体 験 談診療料金

R E S O U R C E Sリ ソ ース

NPO法人Run for the Cure® Foundation〒150 - 0047 東京都渋谷区神山町18 - 6 神山アンバサダー108号Tel:03 - 3466 - 4798 / Fax:03 - 3466 - 4799E-mail:[email protected]担当者:事務局長 原

ご意見・ご感想はこちらまで

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Be AwareBe AwareThe 2007 Run for the Cure®/Walk for Life is a fun 5K/10K run or 5K walk around the Imperial Palace. You can organize a team of colleagues, friends or family—even encourage your employees to take part and increase their donations through matching funds. Please see below for more ways to help.

Register Now! www.runforthecure.org

第4回 2007 Run for the Cure® / Walk for Life  皇居周回を5or10Kランニング、5Kウオーキングするチャリティイベントです。参加費はマンモグラフィ機器の購入、乳がん検診料金の助成など、ファンデーションの活動のために役立てられます。オンラインにて参加者受付中! www.runforthecure.org

2007 Run for the Cure®/ Walk for Life

Date: October 20, 2007 (Saturday)

ピエロやフェイスペインティング、DJ Kay Nakayamaも参加して会場を盛り上げてくれます!屋台村のフードもあります!抽選会は、アメリカン航空よりアメリカ4都市ペア1組航空券、ニューバランスのシューズなどなどステキな賞品盛りだくさんです!■抽選券販売:1枚250円 2枚500円 5枚1000円 10枚2000円*抽選券の販売によって得た全ての売上げは、ファンデーション(NPO)の活動支援・助成に役立てます。

日時: 2007年10月20日(土)

Time: 9:30 a.m. – 2:00 p.m.*The run will take place, rain or shine.

Opening & Closing ceremonies: Hibiya City (near Hibiya Park and the Imperial Hotel)

Course: Around the Imperial Palace

Register Online: www.runforthecure.org

Participation Fee*: Adults, JPY5,000; 6-12 year olds, JPY2,500; 5 year olds and under, Free.* (includes T-shirt, Pink silicone wristband,

bottled water)

時間: 9:30 - 14:00時頃*荒天中止

受付場所: 日比谷シティ

コース: 皇居周回

参加者受付: www.runforthecure.org

参加費: 大人 5,000円、 12歳以下 2,500円,      5歳以下 無料

Organized by the 2007 Run for the Cure®/Walk for Life Committee

2007ランフォーザキュア/ウオークフォーライフスポンサー 

Sponsored by

Partner: GE Yokogawa Medical, Merrill Lynch, Northwest Airlines, Paradigm, The Westin Tokyo, U Goto Florist Platinum: Ecotech, Hilton Hotels, New Balance, O’Melveny & Myers LLPGold: Aflac, American Airlines, Bristol-Myers Squibb, Conrad Tokyo, COVA JAPAN, Ken Corporation, Mami Art, Maybelline New York, Morgan Stanley, Moriya International Ltd., Orient Corporation, Pluczenik Japan, Quintessentially Japan, Sin Den, SlowingDownAging.com, United Airlines, Viacom International JapanPatron: Pam Noda-Personal and Professional Relationship Coaching, Sumitomo 3MFriend: A•CORE, Adobe Systems, J.P. Morgan, Mitsubishi UFJ Merrill Lynch PB, Mitsubishi Estate Co., LTD., MICHAEL PAGE INTERNATIONAL, Pacific Islands Club Saipan

There will be international food and drink stalls, along with various events. Raffle offering fabulous prizes (American Airlines tickets and New Balance goods, to name just a few); a face-painting stall; a clown and DJ Kay Nakayama will be performing. Be sure to come, participate in a great cause and join in the fun!

October is Breast Cancer Awareness Month

•Leaflet_c1.indd 1 9/10/07 1:12:21 PM

Page 95: PiNK Fall 2007

Be AwareBe AwareThe 2007 Run for the Cure®/Walk for Life is a fun 5K/10K run or 5K walk around the Imperial Palace. You can organize a team of colleagues, friends or family—even encourage your employees to take part and increase their donations through matching funds. Please see below for more ways to help.

Register Now! www.runforthecure.org

第4回 2007 Run for the Cure® / Walk for Life  皇居周回を5or10Kランニング、5Kウオーキングするチャリティイベントです。参加費はマンモグラフィ機器の購入、乳がん検診料金の助成など、ファンデーションの活動のために役立てられます。オンラインにて参加者受付中! www.runforthecure.org

2007 Run for the Cure®/ Walk for Life

Date: October 20, 2007 (Saturday)

ピエロやフェイスペインティング、DJ Kay Nakayamaも参加して会場を盛り上げてくれます!屋台村のフードもあります!抽選会は、アメリカン航空よりアメリカ4都市ペア1組航空券、ニューバランスのシューズなどなどステキな賞品盛りだくさんです!■抽選券販売:1枚250円 2枚500円 5枚1000円 10枚2000円*抽選券の販売によって得た全ての売上げは、ファンデーション(NPO)の活動支援・助成に役立てます。

日時: 2007年10月20日(土)

Time: 9:30 a.m. – 2:00 p.m.*The run will take place, rain or shine.

Opening & Closing ceremonies: Hibiya City (near Hibiya Park and the Imperial Hotel)

Course: Around the Imperial Palace

Register Online: www.runforthecure.org

Participation Fee*: Adults, JPY5,000; 6-12 year olds, JPY2,500; 5 year olds and under, Free.* (includes T-shirt, Pink silicone wristband,

bottled water)

時間: 9:30 - 14:00時頃*荒天中止

受付場所: 日比谷シティ

コース: 皇居周回

参加者受付: www.runforthecure.org

参加費: 大人 5,000円、 12歳以下 2,500円,      5歳以下 無料

Organized by the 2007 Run for the Cure®/Walk for Life Committee

2007ランフォーザキュア/ウオークフォーライフスポンサー 

Sponsored by

Partner: GE Yokogawa Medical, Merrill Lynch, Northwest Airlines, Paradigm, The Westin Tokyo, U Goto Florist Platinum: Ecotech, Hilton Hotels, New Balance, O’Melveny & Myers LLPGold: Aflac, American Airlines, Bristol-Myers Squibb, Conrad Tokyo, COVA JAPAN, Ken Corporation, Mami Art, Maybelline New York, Morgan Stanley, Moriya International Ltd., Orient Corporation, Pluczenik Japan, Quintessentially Japan, Sin Den, SlowingDownAging.com, United Airlines, Viacom International JapanPatron: Pam Noda-Personal and Professional Relationship Coaching, Sumitomo 3MFriend: A•CORE, Adobe Systems, J.P. Morgan, Mitsubishi UFJ Merrill Lynch PB, Mitsubishi Estate Co., LTD., MICHAEL PAGE INTERNATIONAL, Pacific Islands Club Saipan

There will be international food and drink stalls, along with various events. Raffle offering fabulous prizes (American Airlines tickets and New Balance goods, to name just a few); a face-painting stall; a clown and DJ Kay Nakayama will be performing. Be sure to come, participate in a great cause and join in the fun!

October is Breast Cancer Awareness Month

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