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龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 新春号 Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 1 - 平成 31 年新春号(Vol.74) Shinnenn Omedeto_USA 水銀のように弾ける(P3) How Low Do You Need to Go? Little Miss Princess (P5) 学ぶ稽古、身に付ける稽古(P6) Australia Chitokai (P7) 無駄な力を抜き… ● 剣を振る 力まないことと… ● 昇段(P10) 謹賀新年 新年明けましておめでとうございます。 御代替りの本年は「己亥(つちのと・い)」です。 戌年でたわわに実った果実が種子となり、エネルギ ーを蓄えて次の世代へと向かう準備をする意味の 年といわれます。 また、「亥」が猪(いのしし)のイメージから、精神 の面では「猪突猛進=勇気と冒険」、そして食の文 化からは猪の肉には万病予防の効能があると信じ られ、そこから医と関連する「無病息災」の言の葉 が引き出せます。…ということは、猪鍋に舌鼓を打 ちながら日本酒で一杯の機会を持たなければ…… と思いますがどうでしょうか? され的を射たように思い今後も継続です。 次の映像ですが、これは宗運道場の福田さんが毎 回稽古の様子を撮ってくれている映像が起点となっ ています。編集を思いたった理由は、熊本から離れ た地域で稽古に励んでいる人達に今の私の空手を見 てもらい、そこから日々の練習の参考になる動きを 拾い、同時に“共に修業しているんだ”、という一体 感を持ってもらえれば……という願望からです。 映像の編集は大変ですが、リアルな稽古映像を通し て自分の空手の欠点や反省点が見て取れ、そこから 次への課題が浮かび上がってくる楽しさがありま す。それは又、これまでの文章を書きながら考え工 夫する空手に、見て思考する空手が加わったという ことです。 「十二神将」は先述した変手十二支の実体化を進め るための肉付けとなる要素です。というのは、千歳 翁が遺した変手十二支を、失伝したとされる沖縄湖 城流の型・十二支を参考に再編しようと考えていた のですが、どうしてもその型に違和感を持ち別の角 度から攻め込まなければいけないと考えたのです。 そこで、古流ジ「十二神将」は先述した変手十二支 の実体化を進めるための肉付けとなる要素です。と いうのは、千歳翁が遺した変手十二支を、失伝した とされる沖縄湖城流の型・十二支を参考に再編しよ うと考えていたのですが、どうしてもその型に違和 感を持ち別の角度から攻め込まなければいけないと 考えたのです。そこで、古流ジオンに登場する四天 王(仏教を守護する四つの神で、東方の持国天、南 方の増長天、西方の広目天、北方の多聞天)に応援 視覚と映像 さて今年のテーマですが「視覚と映像」そして副 題として薬師如来を守護する「十二神将のリサー チ」としました。これには、昨秋、眼科医で飛蚊症 と診断されこと、そして昨年目指していた“変手十 二支の実体化”が思うようにまとまらず、構想の域 に留まってしまった背景があります。 そこで先ず飛蚊症ですが、軽減する自己療法とし て考えたのが、以前から行っているサンゲイジング (太陽を凝視する)にプラスして、ウオーキングの 際に目の遠近と左右への視野の広がりで言ってみ れば視覚(視角)を意識する方法です。これは三人 稽古での目の前後左右と身体の運動操作にもつな がり、結果として飛蚊症の減少とともに視力が回復

(P10) 謹賀新年 - BIGLOBEryuseisouun/ryushu74_2019new year.pdf力まないことと… 昇段(P10) 謹賀新年 新年明けましておめでとうございます。 御代替りの本年は「己亥(つちのと・い)」です。戌年でたわわに実った果実が種子となり、エネルギ

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  • 龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 年 新春号

    Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 1 -

    平成 31 年新春号(Vol.74)

    ● Shinnenn Omedeto_USA

    ● 水銀のように弾ける(P3)

    ● How Low Do You Need to Go?

    ● Little Miss Princess (P5)

    ● 学ぶ稽古、身に付ける稽古(P6)

    ● Australia Chitokai (P7) ● 無駄な力を抜き… ● 剣を振る

    ● 力まないことと… ● 昇段(P10)

    謹賀新年

    新年明けましておめでとうございます。

    御代替りの本年は「己亥(つちのと・い)」です。

    戌年でたわわに実った果実が種子となり、エネルギ

    ーを蓄えて次の世代へと向かう準備をする意味の

    年といわれます。

    また、「亥」が猪(いのしし)のイメージから、精神

    の面では「猪突猛進=勇気と冒険」、そして食の文

    化からは猪の肉には万病予防の効能があると信じ

    られ、そこから医と関連する「無病息災」の言の葉

    が引き出せます。…ということは、猪鍋に舌鼓を打

    ちながら日本酒で一杯の機会を持たなければ……

    と思いますがどうでしょうか?

    され的を射たように思い今後も継続です。

    次の映像ですが、これは宗運道場の福田さんが毎

    回稽古の様子を撮ってくれている映像が起点となっ

    ています。編集を思いたった理由は、熊本から離れ

    た地域で稽古に励んでいる人達に今の私の空手を見

    てもらい、そこから日々の練習の参考になる動きを

    拾い、同時に“共に修業しているんだ”、という一体

    感を持ってもらえれば……という願望からです。

    映像の編集は大変ですが、リアルな稽古映像を通し

    て自分の空手の欠点や反省点が見て取れ、そこから

    次への課題が浮かび上がってくる楽しさがありま

    す。それは又、これまでの文章を書きながら考え工

    夫する空手に、見て思考する空手が加わったという

    ことです。

    「十二神将」は先述した変手十二支の実体化を進め

    るための肉付けとなる要素です。というのは、千歳

    翁が遺した変手十二支を、失伝したとされる沖縄湖

    城流の型・十二支を参考に再編しようと考えていた

    のですが、どうしてもその型に違和感を持ち別の角

    度から攻め込まなければいけないと考えたのです。

    そこで、古流ジ「十二神将」は先述した変手十二支

    の実体化を進めるための肉付けとなる要素です。と

    いうのは、千歳翁が遺した変手十二支を、失伝した

    とされる沖縄湖城流の型・十二支を参考に再編しよ

    うと考えていたのですが、どうしてもその型に違和

    感を持ち別の角度から攻め込まなければいけないと

    考えたのです。そこで、古流ジオンに登場する四天

    王(仏教を守護する四つの神で、東方の持国天、南

    方の増長天、西方の広目天、北方の多聞天)に応援

    視覚と映像

    さて今年のテーマですが「視覚と映像」そして副

    題として薬師如来を守護する「十二神将のリサー

    チ」としました。これには、昨秋、眼科医で飛蚊症

    と診断されこと、そして昨年目指していた“変手十

    二支の実体化”が思うようにまとまらず、構想の域

    に留まってしまった背景があります。

    そこで先ず飛蚊症ですが、軽減する自己療法とし

    て考えたのが、以前から行っているサンゲイジング

    (太陽を凝視する)にプラスして、ウオーキングの

    際に目の遠近と左右への視野の広がりで言ってみ

    れば視覚(視角)を意識する方法です。これは三人

    稽古での目の前後左右と身体の運動操作にもつな

    がり、結果として飛蚊症の減少とともに視力が回復

  • 龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 年 新春号

    Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 2 -

    -北方の多聞天-

    を頼み、“十二”に関連する

    ものはないか?と探してい

    たところ「十二神将」にた

    どりついたというわけなの

    です。まだ詳しいことは書

    けませんが、新しい視点か

    らの形と変手を創作し、次

    代に継承していける筋道を

    作っていければと考えてい

    ます。

    「八風にも動じず、たじろがず、天空の月のような

    不動心を持て。八風とは、「利・誉・称・楽・衰・毀・

    譏・苦」の風を指す。愚かな我々は、四順を愛欲し、

    四違を忌避しようとするために煩悩に侵される。

    ● 四順とは、人が求める四つの欲への戒め

    利(うるおい)- 目先の利欲にとらわれる姿

    誉(ほまれ)- 名聞名利にとらわれ、我を忘れた姿

    称(たたえ)- 賞賛されて増上漫になり、自分を見

    失うことをいう

    楽(たのしみ)- 享楽に負けてしまった姿

    ●四違とは、人が避ける四つの負の要素への戒め

    衰(おとろえ)- 老衰や生活に破れた姿

    毀(やぶれ)- 他人に批判されて自己の信念を変え

    てしまう姿

    譏(そしり)-他人からそしられ、自分を見失うこと

    をいう

    苦(くるしみ)- 人生の苦境に負けてしまった姿

    この詩は、人生を月と松に喩えて、どんなことに

    も動じない確固たる信念、どんな困難に遭遇しても

    挫けない強い意志が大切だと教えます。

    国際情勢が刻々と変化し激動が予想される御代替

    わりの年ですが、「常に武士道精神を忘れず」の心意

    気を持ち、しっかりと地に足をつけて修業に励んで

    いきましょう。

    今年の書き初めは、

    「八風吹不動天辺月 雪壓難摧澗底松

    寒山詩 己亥正月」

    “八風吹けども動ぜず、天辺の月 雪壓(お)せど

    も摧(くだ)け難し、澗底(かんてい)の松”

    としました。その意味は;

    ① 風が吹くと地上の草木はすぐにざわざわと揺

    れ騒ぐ。天空の雲も風に煽られ形を変えて流れ去

    る。だが天上の月だけはどんな風が吹こうと動ずる

    ことなく、何処吹く風とばかり無心にして輝く。ま

    た、雪が降り積もれば、多くの草木はしおれたり、

    おしつぶされてしまうが、谷あいの厳しい環境の中

    で生え育った松は大雪にもびくともせず緑あざや

    かにして、また無心に松声を吟じている。

    ②「八風吹けども 動ぜず 天辺の月」

    Shinnen omedetou gozaimasu.

    新年おめでとうございます。

    "As the Holiday Season is upon us, we find ourselves

    reflecting on the past years and on those who have

    helped to shape our school in a most significant way.

    We value our relationship with you and look forward to

    working with you in the New Year to come. We're

    looking forward to rebuilding and starting anew for the

    upcoming 2019 New Year...

    We wish you a very happy Holiday Season and a New

    Year filled with peace and prosperity." ~

    Ryusei Karate Dõ, USA Roland Figgs

  • 龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 年 新春号

    Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 3 -

    水銀のように弾ける

    宗運道場 境 一美

    柄骨(かいがらぼね)とも呼ばれています。それは

    鳥の羽の様な働きをし、胸郭後部の上端の左右に付

    いていて打撃には無くてはならない骨です。発電所

    (下丹田)より送電された運動エネルギー量を減少

    中国武術における力の発し方の技術に「発勁」と

    言う言葉が有りますが、発と勁で「激しく力を発す

    る」と云う意味で、発生させた勁(運動量)をそれ

    ぞれの対象物の接触面まで導き作用(爆発)させる

    事です。その発勁の三要素は、1.力の発生、2.接

    触面まで導く、3.作用(爆発)と云われ、身体の「骨」

    を上手に使用目的応じて組み合わせて筋道を確保し

    筋肉で動かす。このより効果的な打撃を与える技術

    は、空手にも共通した課題の一つと言えるでしょう。

    この様な事を楊式

    太極拳では「力は骨よ

    り発し、勁は筋より発

    する」と唱えています

    が、太気拳創始者の澤

    井健一氏は、勁を水銀

    に例えて「水銀の様な

    物が竹ずつを通って、

    節を突き破って出る

    水銀が竹筒の節を瞬時に貫き通す

    さま。肩甲骨の操作で伝達打撃

    させる事なく変電所(上丹田)へ導き、狙い定めた

    場所への作用(打撃)を司る非常に大切な骨です。

    その骨を肩甲骨と云います。

    打撃作用の凄さ

    直接打撃の極真会では、「パンチは鉄の拳」「鎧の

    ような肉体」をモットーに日夜稽古に励みます。

    その打撃の主となる逆突きは、ボクシングスタイル

    に良く似ているかなと思います。右での逆突き、肩

    ように」と打拳の勁道を説明されておられます。

    話が横道にそれますが、子供の頃、水銀体温計を

    落として壊してしまい水銀が粒状になって飛び跳ね

    拡散し、指で取ろうとしたのですが何処かに行って

    消えてしまい、水銀に弄ばれたのを覚えています。

    又、上記の事は今から 30年程前読んだ本の一部でサ

    ラッと流してしまい自分は理解して身に付けている

    と自負していました。しかしながら十年ほど前、「三

    腰」の操作を坂本先生から紐解かれ、改めてそれら

    の関連性について問い直し未熟で浅はかだったその

    頃の自分を振り返ると恥ずかしい思いがします。

    澤井氏についてですが、彼は形意拳の王向済老師

    に師事され、後に現「極真館」の盧山初雄氏そして

    副館長の廣重毅氏とも繫がりがあり、お二人には「立

    禅」を基本にした太気拳の指導をされました。

    尚、廣重先生は長年龍精空手道の顧問しておりま

    したが、昨年 4月 18日 70才にてご逝去されました。

    ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

    貝柄骨

    腕の骨と胴体をつなぐ逆三角形の大きな骨、俗に貝

    入れは申し分なく肩甲骨は背骨から離れ打撃が充

    分に伝わりリーチが長く伸び間合いが詰まって見

    えます。これは、右後ろ足の踵を上げ、左足が軸と

    なり左回転し胴体を正面に向けないと打撃が困難

    で腰折れ状態に成りかねません(反撃を受けやすい

    体勢ともいえます)。一方龍精では、前正中線を軸

    に上半身は左気味に肩入れをし、下半身は三腰(振

    り腰)で右後ろに引き弾きます。

    競技空手・極真会の前屈立ち

    (※腰痛を起こしやすい)

    龍精の前屈立; 骨盤の三腰と

    肩甲骨の三羽を基本とし膝は

    軽く曲げる

    肩入れ不十分

    以前、「千唐流」の組手試合に参加した時の話です。

  • 龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 年 新春号

    Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 4 -

    私は出会い頭に上段(顔面)カウンターを喰らって

    その場に沈み込み、無残な格好を見せることになっ

    たのです。ですが、打撃した相手は肩を負傷(亜脱

    臼)し病院にて治療を余儀なくする事態になりまし

    た。原因は、打撃の際に肩の入れ方が不十分だった

    のではないかと推測しています。

    肩上がりの打突では鋭い打撃力の発揮は困難です。

    今私は、鳥が羽ばたいて舞い上がるさまを思い浮か

    べ、上半身も「eight-figure」に操作し、肩甲骨を

    右左に開閉する感じで全ての手技に用いる事が理想

    ではないかと思い、上体の身体操作の考察をしてい

    る所です。

    How Low Do You Need to Go?

    In karate we spend a lot of time working on our stances. Practicing them

    strengthens our legs, sure, but that's not their main point.

    The stances are designed so we can lower our weight into a rooted posture, enabling us to execute strong

    blows, blocks, throws and joint locks. But the equation many people make is: low stance = power. So the

    lower stance, the more power, right?

    - Gichin Funakoshi -

    Certainly, that seems to be the belief held

    in a style like Shotokan karate, marked by

    its deep stances. See, for example, the

    picture of Gigo Funakoshi, son of style

    founder Gichin Funakoshi. Under Gigo

    Funakoshi's technical direction, Shotokan

    moved from its old Okinawan roots to a

    modern Japanese version based on

    knowledge of body mechanics. He led he

    charge to adopting lower stances.

    So many Shotokan stylists would view the

    son's stances as better or more progressive

    than the father's.

    - Gigo Funakoshi -

    In Chito-Ryu karate, we use the higher karate stances taught by O-Sensei, himself a traditional Okinawan

    martial artist. To some practitioners, the higher stances exchange the deep-rooted strength of the lower

    ones for greater mobility and speed.

    But do you really need to give up one for the other? In a word, no.

    Some Chinese martial arts use a progressive approach to stance development. Beginners start low, to get

    the feeling for proper rooting. As they become more proficient, they can stand higher while still keep a

    strong root.

  • 龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 年 新春号

    Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 5 -

    A strong root is achieved through an internal drop. A tai chi master I have trained with likens this to a

    building imploding. In a normal explosion, the building shrapnel flies out. But if the structure is brought

    down through implosion, it falls in on itself.

    So an internal drop has this feeling of your structure loosening and falling inwards. How is this

    accomplished? Well, that's the million-dollar question. Suffice it to say that it's a fundamental skill that

    takes a lot of painful practice.

    Tai chi and qigong have specific standing practices for internal development. While these may involve the

    circulation of energy (ki or qi), many are also designed to make you release the tension in your body (both

    the tension you are aware of and holding tension you are not), so your weight drops into the floor without

    impediment.

    Squatting to lower your weight might have some benefit, but the tension in the legs makes your weight

    float, so the root isn't as strong as it could be. By releasing your body tension properly, your weight drops

    into the ground, whether or not your stance is low.

    Unfortunately, Gigo Funakoshi died young, at age 39, from tuberculosis. If he had lived longer, his

    investigations into stances might have led him to understand the technique of his father, who could stand

    high but still be strong, well into his old age.

    —Peter Giffen Barrie Ryusei Karate

    Little Miss Princess

    On July 14 2018, my daughter Daphne competed in the Ontario Miss Mid West Pageant as part of her

    past year Hanover ambassador commitments. She competed against 12 girls and after making the top 5

    she went on to win the title, Ontario Little Miss Princess 2018-19. Part of her duties, will be to help

    the Queen fundraise for Grey- Bruce United Way. This is a charity that helps provide for the

    underprivileged families in our area. She also will have numerous functions to attend; these events will

    promote the learning of agriculture in our area and will also improve her public speaking skills.

    Matt Mannerow, Ryusei Karate-Do Canada

  • 龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 年 新春号

    Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 6 -

    学ぶ稽古、身に付ける稽古

    越谷道場 山内 博

    自分のスキルを上げる試みをしているのだなと理解

    しました。

    振り返って空手を見てみると、流派を問わず、空

    手の主流の稽古は、指導者もしくは、先輩による号

    令稽古ではないでしょうか?

    個人的な考えですが、龍精の空手(坂本先生)の

    稽古に参加するようになって、それ以前にやってい

    た他流派、その後の千唐流の号令稽古を思い返して

    みると、底辺の底上げには、意味があるけれど、仮

    にそのまま、やる内容だけ変え号令稽古を続けると、

    目的意識が無くても号令に乗っかっていれば、時間

    と体力を使い、稽古にさえできれば、何となくやっ

    た気分になる…といった物だったと思います。

    私は、かなり前から、号令稽古に疑問をもち、号

    令(…回数)では無く、時間で稽古を切るようにしてき

    ました。

    他人の号令に従ってただ動くのでは無く、形に(動

    作)に対する疑問点を引き出し、そしてそれに対する

    答えを仮定し反復練習…、そしてまた、疑問と…、

    いくらでもやるべき事が広がっていきます。

    一見、遠回りのようですが、そうした繰り返しを

    して、初めて空手が身に付くと思っています。

    私の中では先生の講習会及び稽古は「学びの稽古」

    もしくは「体感の稽古」、自分でやる稽古は「身に付

    ける稽古」と思っています。

    この両輪が、私にとっての空手の稽古なのです。

    最近、稽古について考えることがありました。

    私の職場に新しく入ってきた人の中にプロの総

    合格闘家がいます。

    年齢は38歳。年間3~4試合をこなし、日本の

    総合格闘家の中では、実力的に中堅どころです。

    ただそのレベルでは、ファイトマネーだけでは生活

    出来ず、タクシードライバーから転職して来たそう

    です。

    いつまで、プロ格闘家としてやっていくのか?

    と、質問すると

    「出来るまで、やり続けます。」との事。実際、転職

    して練習時間が確保できた今、「前よりも、強くな

    っている」と言っていました。

    話しを練習の内容に踏み込むと、プロの集まるジ

    ムに行き、個々で、サンドバッグ・ミット打ちをや

    る人、打撃のスパーリングをする人、関節技・寝技

    のスパーリングをする人、総合格闘技のスパーリン

    グをする人など、そして最後に心拍数を上げるトレ

    ーニングをして自分を追い込むのだそうです。

    要は、プロ格闘家は、自分の長所、短所を踏まえ

    目的意識をもって、個々に相手を変え、練習し、

    赤鬼の築いた九十九段の話:昔むかしの話です。この田染の里に毛むくじゃらの赤鬼がやってきて人間の食べるというのです。それを聞いた熊野の権現さまは、何か良い方法はないかと考えました。そして、一夜のうちに百の石段をこしらえたら許

    してやろうと約束したのです。権現様は、とうていできるはずがないと思っていたのですが、なんと赤鬼はひょいひょいと石を

    担いであっという間に五十段をこしらえました。その早いこと早いこと、みるみるうちに九十九段築いたのでした。驚いた権現

    様は、百段目の石を担いだ赤鬼の足が山かげに見えたとき、「コケコッコー」と鶏の鳴き声をまねしたのです。赤鬼は「負けたー」

    と最後の石を担いだまま逃げ出していったそうです。

  • 龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 年 新春号

    Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 7 -

    Australia Chitokai New Years Message

    Australian Chitokai has experienced a busy year in martial arts. In summer, I

    travelled to Ube with my group and we enjoyed training with our sister city karate

    group. They are Shito-Ryu and we trained with Kawabata Sensei. Students enjoyed

    meeting and forming friendships with Japanese students. It was interesting for

    these students to practice the kata of Shito-Ryu and so learn that martial arts has many faces. The

    Shito-Ryu students enjoy learning what we like to call Olympic karate, and so their kumite and kata

    follow the WKF road. Students learned the kata Nipaipo, Matsumura Bassai, Unsu and also Suparinpei.

    The highlight, however, was to enjoy a workshop with Sakamoto sensei, where he worked very hard to

    explain the basics of traditional karate and to show the deep alternative to the Olympic path. I think that it

    was challenging for him to try to explain in very simple terms the deep concepts that he has spent his life

    researching, but all students agreed that he workshop was the highlight of their trip to Japan, as very few

    had met Sakamoto sensei before and had only heard about his technique.

    Trip to Kumamoto

    Following the Ube trip, I travelled to Kumamoto to train with sensei. I had forgotten about the heat of

    Kumamoto in July, and I was very sad to see the extensive damage that the earthquake had caused to the

    city, and especially to the wonderful Kumamoto castle.

    Training was held in very hot conditions, but my student Ashley Mackellar and I enjoyed having personal

    time with sensei. He is a great teacher and although my Japanese is very poor it is lucky that his English is

    good. I watched his body movements closely. My object was to try to understand the methods he used to

    develop his unique technique and to try then to develop a plan to allow my students to begin to journey

    down this path. Unfortunately, I could not fully understand enough to make a training plan. Ashley and I

    found a very nice public park near the Suizenji garden and we trained late into every night, sometimes

    with well- meaning advice from locals, before seeking a local Izakaya for food and something cold to

    drink. It was wonderful to immerse ourselves in training, and also to enjoy the kindness and friendship of

    sensei and Sakai sensei and the other students of sensei’s small but dedicated group.

    I was very fortunate to be invited to test for my next dan level. After the test Sakamoto sensei said, “now

    watch” and he demonstrated Hoen kata, inviting me then to commence learning this beautiful kata of the

    firebird. And so the journey in koryu kata continues.

    Australian Ryusei Chitokai

    Ryusei Chitokai in Australia is very healthy. At our recent dan grading in December, over 70 black belts

    took part, to witness the new students challenging their Shodan grades and also Nidan. At our dan

    gradings, all active black belts participater, to demonstrate their kata, pre-test elements towards their next

    grading and also to challenge 20 bouts of kumite. This is very popular, as we have built a culture where all

    students strive to keep their skills sharp and to keep moving forward, constantly testing to improve their

    technique.

    Happy New Year

    On behalf of Australia Ryusei Chitokai I would like to wish everyone a very healthy and happy 2019.

    We look forward to meeting and training with the Ryusei karate family in the future,

    __Brian Hayes

  • 龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 年 新春号

    Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 8 -

    無駄な力を抜き

    必要な筋力を得る

    四段師範代 甲斐 隆

    力を抜く

    続いて力の抜きについて述べます。

    多くの人に緊張の自覚がしやすいのは肩の力だと思

    います。肩の言葉を用いた熟語として「肩身が狭い」

    「肩肘張る」「肩を怒らす」等があります。

    人間にとって一番のストレスの発生は人との関わり

    人間が生きていく上で必要な力はいっぱいありま

    す。

    けれども、人間にとって最も必要な力といえば…、

    それは筋力ではないかと考えます。

    筋力が衰えれば人間生活を営む事が出来ません。

    筋肉は加齢とともに減少します。とくに著しく減少

    するのが、歩くために必要な足腰の筋肉量です。

    例えば 20 歳と 80 歳の足の筋肉量を比較してみる

    と、約 70%に減少するという研究データが報告さ

    れています。

    人間の筋肉は使わないと衰えるので使うことによ

    り、90 歳迄は筋力を鍛えれば維持出来るとNHK

    の放送の中でもありました。

    と言われております。その関わりの中で力を抜く技

    術、脱力が出来れば身体はとても楽に成るとの考え

    方ができます。

    それは、筋力を増やすのではなく無駄な力を抜くこ

    との発想ともいえます。

    モノや情報に溢れ誰もが多くの無駄を抱え過ぎで身

    動きがとれない、そこで無駄な力を手放せば、身体

    の動きだけではなく人生そのものも身軽になるので

    はないかと考えます。

    股関節や膝の抜き

    次に股関節や膝の抜きです。

    股関節を抜く場合は膝を軸に、膝を抜く場合には股

    関節を軸に抜くとのとらえ方です。

    足の構造

    人間の骨の数は 200 本あります。脛から下の骨は片

    足が 28 個、両足で 56 個。脛より下の部分は胴より

    ずっと小さく、太ももより細くなっています。

    それに拘わらず骨の数は全体の4分の1を占め、足

    は小さな骨と筋肉が複雑に組み合わさって作られ

    ています。

    「立っているときや歩いているときにバランスを保

    つ」「地面を蹴って身体を移動させる力を発揮する」

    人間の足は進化し非常に繊細なつくりとなった様

    です。

    股関節に重心が乗っている場合は膝が自由に動きや

    すい、膝に重心が乗っている場合は股関節が動きや

    すいという事です。身体は関節に重心が乗っている

    時は安定しますが、全身の関節に力が入っていると

    動きが制約され力の伝達にも向きません。

    武術やスポーツ等の中でも我々の唐手は、相手との

    力が拮抗した時に、股関節

    や膝を抜いた状態で相手を

    いなし、あるいは重心の移

    動で体重の乗った強い突き

    や蹴りが出せます。

    これらも動かしたり抜いた

    りすることを意識しながら

    筋力を鍛え、古流の持つ

    奥深いところに少しでも

    人間の足首は他の動物と比べてとても柔軟に動か

    す事が出来ます。

    踵と足首の骨のスムーズな動きを取り戻す為には

    その柔らかさを維持し足の背屈や底屈、踵と脛の連

    動の内返しや外返しが出来ます。

    近づけるよう稽古して行きたいと思います。

  • 龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 年 新春号

    Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 9 -

    剣を振る

    宗運道場 福田 脩

    と思いますが、それは手の親指と人差し指の付け根

    部分、そして手刀の部分である小指球で決まるよう

    に感じます。

    それを意識して棒術の稽古の時に試してみたのです

    が、いつもの棒で振る感じとはまた違った切れ味の

    出る棒の振りが出来るようになってきました。

    剣道でも、いきなり竹刀で稽古するのではなく、ま

    ずは木刀で稽古して手の内を工夫し、それから竹刀

    の稽古にうつるのが本来の稽古のやり方なのだと聞

    いていますが、それと同じ効果が棒術の振りに出た

    のかもしれません。

    中山範士は千歳先生の唐手演武を見て「唐手は素手

    による剣術である」と言われたと云います。

    私はその言葉に引っかかって剣の稽古を始めました

    が、最近、唐手の稽古には剣術も必要なのかもしれ

    ない、と思うようになってきました。

    それともう一つ、最近注目しているのが踵の大切さ

    です。足の骨図を見てみると分かりますが、足も結

    構複雑な骨が組み合わさってできています。そして

    その踵の部分がひっついて固まってしまうと、腰も

    固まってしまうようなのです。腰の基本操作をする

    時に足の親指を噛ませますが、その締めにより踵が

    僅かに浮いて踵の骨の部分が自由になることによ

    り、腰も自由に動かせるのではないかと思います。

    また、肩こりが酷い人を治すのに、踵をまず斜め下

    方へひっぱり、ひっぱったと同時に少し内側に力を

    かけることにより、踵の骨の位置を正しい位置にも

    どし治療するという方法がありますが、これも実践

    してやってみています。

    剣の事についても身体の事についても、勉強しなけ

    ればならない事は山積みなのですが、これからも

    一歩ずつ「力必達」でやっていこうと思います。

    最近、稽古の中に剣を振る事を加えてやってみてい

    ます。

    といっても、実際に剣術を習ったわけではないの

    で、空手の腰の操作で抜刀納刀稽古をやってみるだ

    けなのですが・・・。しかしこれがなかなか・・で、

    腰の操作が上手く繋がらないと剣を抜く途中で動

    作が止まってしまったりするので腰の操作の稽古

    にはもってこいなのです。また、剣を振るとなると

    全身を上手く使わないと振る事ができないので、そ

    こも見逃せないポイントになります。

    剣の刃筋を安定させるように振るとなると、足の親

    指からもってきて腰の中央の下丹田に繋ぎ、そして

    胴体の中央の中丹田、胸の中央の上丹田へと繋ぎ、

    脇を通って小指球から母指球と指尖球につないで

    斬らなければ剣は上手く振れないようです。

    でもこれは、よく考えてみると唐手のコーサを用い

    ての突きと全く同じなのです。

    剣術の場合、受けも斬る。突きも斬る。

    つまり 受けと突きを融合すると斬ることにまと

    まる?のではないのか?

    これも古流形が受け手と攻撃手が融合している事

    と重なります。

    剣を振る時に、特に手の内を色々と試行錯誤しなが

    ら稽古していくと、振った時に気持ちの良い音が出

    る時があります。

    おそらくはその時、一番刃筋が綺麗に通った時だ

    力まないことと反復練習の重要性

    宗運道場付き 加地 龍太

    だということです。

    立った状態での投げ技の打ち込み稽古の際、意識的

    に最初は脱力していて動き、技をかける一瞬だけ力

    を篭めると綺麗に相手を投げられるということを経

    験したことでそれは確信に変わりました。

    この脱力状態からスタートして技をかける一瞬だけ

    力を篭めると効く、という事実は打撃技でもまった

    く同じことを私は競技空手の稽古のときに経験して

    いるので、武術の打投極の技の根本は同じなのだと

    考える根拠を掴んだような気分になりました。

    しかし、稽古場での動かず抵抗しない相手に技を

    近頃、極技と投げ技の実践稽古のために近所の柔道

    の団体に参加して一週間に一度稽古しております。

    その稽古の際に指導者の方から「君は技を出すとき

    に初めから力み過ぎている。」とよく指摘されます。

    そのときに気付いたのが、それは、初めから筋肉を

    緊張状態にしていると相手にもそれが伝わり、技が

    来ることを事前に察知され、結果躱されてしまうの

  • 龍 手(龍精空手道季刊誌) 平成 31 年 新春号

    Ryushu (Ryusei Karate-Do) 2019 New Year time Vol.74 - 10 -

    かけるのと、実戦で技を

    かけるのでは勝手が異な

    ります。

    動いて攻撃してくる相手

    を前にして力まずに脱力

    していられる精神状態

    は、それなりの実戦経験

    を積まなければ体得不可

    能と思われます。

    また、個人的に仕事にし

    ている施術そして道具を

    使ったやり方も、基本的

    クライアント側との信頼関係の構築などの土台作り

    がしっかり出来ていないとパフォーマンスが落ちる

    のと同じように、武術的な技術に関しても、基本的

    な身体操作の反復練習による慣れなどの土台が無け

    れば、打投極のいかなる技にしても実戦の試合で使

    うことはまず不可能です。

    基本的な身体操作の反復練習を続けていると、それ

    が自信に繋がっていき、自らを信ずることが出来る

    ようになると自然と柔らかさが出て来るようです。

    自信がないと気負うようになり、気負うと無駄に緊

    張して体が固くなって動きが悪くなります。

    靖國神社奉納演武大会での演武では、日々の自主稽

    古を反復してやったことによって、本番でも無駄に

    気負うことなく、下手なりに堂々と演武することが

    出来たように思っています。

    私はお会いしたことはありませんが、先代の千歳先

    生の「力必達」の教えに基づき、言語学習と武道そ

    して仕事を続けて行きたいと思っております。

    には、力まずに体を使うことが良し、とされている

    ので、そちらでも極力筋肉を無駄に緊張させないよ

    うに意識的にやっています。しかしながら、これが

    非常に難しいのです。

    筋肉が無駄に緊張状態になっていると氣の流通が

    遮断されて経絡の補シャをやる上での障壁となっ

    てしまいます。

    昇段(平成 31 年度 新春期)/Dan Grading (2019 New Year time)

    【弐段 Ni dan】 【初段 Sho dan】

    Daniel Casey

    ダニエル ケースイ

    Australia

    Kieran Parkinson

    キアーリン パーキンソン

    Australia

    Nikkita Nichol;s

    ニキータ ニコール エス

    Australia

    Jack Stokes

    ジャック ストークス

    Australia

    Tahlia Stone

    タリア ストーン

    Australia

    David Jarman

    デイヴィッド ジャーマン

    Australia

    【初段 Sho dan】 Junior Shodan

    Georgia Dearlove

    Jonah Haines

    Alex Irvine

    Nat Peel-Sasaromya

    Kate Wright

    ケイト ライト

    Australia

    Rhianon Ross

    リアノン ロス

    Australia

    Medeline Leask

    メドライン リースク

    Australia

    Carly Collier

    カーリー コリアー

    Australia

    Elise Fellowes

    エリース フェロース

    Australia

    龍精空手道季刊誌

    龍手/Ryushu

    http://www.ryusei-karate.com/ 忍

    http://www.ryusei-karate.com/