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87 都市科学研究 第4号 2012 <一般研究論文> 地区まちづくりを支えるリーダーシップに関する都市レジーム論からの一考察 ――新宿区西早稲田地区を事例として―― A study on collective leadership in community regeneration from urban regime analysis: A case study in Waseda area 長野 1) Motoki NAGANO 1) 本研究は地区まちづくりにおけるガバナンスのリーダーシップの担い手とその機能について、都市政治の分析枠 組みである「都市レジーム論」を援用し、東京都早稲田地区の事例より分析を行うものである。分析より、地区ま ちづくりにおける多元的な協働関係へ安定性を付与するリーダー(群)は特定の政策志向性を持った組織リーダー や活動的メンバーによりセクターを越えて構成される比較的安定的でインフォーマルな協力関係である「コミュニ ティ・レジーム」として析出される。「レジーム」は、その社会的立場を利用して、自己の政策目的実現の機会を 求めるプログラム志向の「政策企業家」的アクターに対し、地域社会としての「承認」や地域に対する社会的「意 味づけ」を与えることで、コミットメントを引き出し、政治学における規範的新制度論でいうところの「適切さの 論理」をアクターと地域社会の間で調整し、活動主体の環境を整える。また、社会的資源の保有主体への媒介や、 地域外からの資源動員の受け皿となることで資源動員・確保を支援する。更にはこれらアクター間の結合も可能に することで新たな活動や組織の創出を促す。そして、参加主体間で相互了解できる領域を拡大させ、多主体間での 社会的期待や展望の一体性を構築し、目標やアジェンダの方向性を規定してゆく。これらにより、「コミュニティ・ レジーム」は地区まちづくりのガバナンスの安定化と課題解決力をもたらすのである。 キーワード : 地区まちづくり、ガバナンス、リーダーシップ、アーバン・レジーム、コミュニティ・レジーム Abstract This paper explores governance and leadership in community regeneration as determined by urban regime analysis. A case study in the Waseda area of Tokyo found collective leadership occurring in collaborative community regeneration programs led by community-based shopping street business leaders. Waseda was found to have a relatively stable and informal leadership structure, composed of multi-sector organization leaders and active members. In this sense, we can say it is a “community regime”. According to urban regime theory, community regime leaders as governing actors set the agenda and purpose of regeneration programs. Through their social status and networks, they also mobilize resources from not only the local intra- community, but also from outside the community or nationwide. Even though their allocation of resources and legitimization of community stakeholders rests on their social standing, regime leaders give selective incentives and opportunities to issue- oriented, ‘policy entrepreneur’ actors to help them realize their aims. Moreover, through the regime members’ social and cultural standing, these leadership activities adjust the ‘logic of appropriateness’ (advocated by normative institutionalism, one strand of new institutionalism in political science) between the motivations or visions of program-oriented actors and the interests of community residents. To solve community issues and push each regeneration program forward, these actors play a critical role, and partnerships between them are keys to community activities. These partnerships seem to be made among actors who share norms and values for a specific purpose, autonomous partnership-building would be difficult were they to holed different views or knowing little of each other’s view. In these situations, regime leaders use their influence to assist these partnering actors with the activities set for them. In this way, the community regime reduces the transaction costs between program-oriented actors and acts as an enabler for them. The community regime makes community governance work and gives the members stability. Making partnerships through community regimes is an important factor to consider when developing community regeneration strategies. Key Words : Community regeneration, Governance, Leadership, Urban regime, Community regime 1) 首都大学東京大学院都市環境科学研究科都市システム科学域 Department of Urban System Science, Graduate School of Urban Environmental Science, Tokyo Metropolitan University

地区まちづくりを支えるリーダーシップに関する都 …87 都市科学研究 第4号 2012 <一般研究論文> 地区まちづくりを支えるリーダーシップに関する都市レジーム論からの一考察

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都市科学研究 第4号 2012 <一般研究論文>

地区まちづくりを支えるリーダーシップに関する都市レジーム論からの一考察

――新宿区西早稲田地区を事例として――

A study on collective leadership in community regeneration from urban regime analysis: A case study in Waseda area

長野 基 1)

Motoki NAGANO1)

要  約

 本研究は地区まちづくりにおけるガバナンスのリーダーシップの担い手とその機能について、都市政治の分析枠

組みである「都市レジーム論」を援用し、東京都早稲田地区の事例より分析を行うものである。分析より、地区ま

ちづくりにおける多元的な協働関係へ安定性を付与するリーダー(群)は特定の政策志向性を持った組織リーダー

や活動的メンバーによりセクターを越えて構成される比較的安定的でインフォーマルな協力関係である「コミュニ

ティ・レジーム」として析出される。「レジーム」は、その社会的立場を利用して、自己の政策目的実現の機会を

求めるプログラム志向の「政策企業家」的アクターに対し、地域社会としての「承認」や地域に対する社会的「意

味づけ」を与えることで、コミットメントを引き出し、政治学における規範的新制度論でいうところの「適切さの

論理」をアクターと地域社会の間で調整し、活動主体の環境を整える。また、社会的資源の保有主体への媒介や、

地域外からの資源動員の受け皿となることで資源動員・確保を支援する。更にはこれらアクター間の結合も可能に

することで新たな活動や組織の創出を促す。そして、参加主体間で相互了解できる領域を拡大させ、多主体間での

社会的期待や展望の一体性を構築し、目標やアジェンダの方向性を規定してゆく。これらにより、「コミュニティ・

レジーム」は地区まちづくりのガバナンスの安定化と課題解決力をもたらすのである。

キーワード : 地区まちづくり、ガバナンス、リーダーシップ、アーバン・レジーム、コミュニティ・レジーム

Abstract This paper explores governance and leadership in community regeneration as determined by urban regime analysis. A case study in the Waseda area of Tokyo found collective leadership occurring in collaborative community regeneration programs led by community-based shopping street business leaders. Waseda was found to have a relatively stable and informal leadership structure, composed of multi-sector organization leaders and active members. In this sense, we can say it is a “community regime”. According to urban regime theory, community regime leaders as governing actors set the agenda and purpose of regeneration programs. Through their social status and networks, they also mobilize resources from not only the local intra- community, but also from outside the community or nationwide. Even though their allocation of resources and legitimization of community stakeholders rests on their social standing, regime leaders give selective incentives and opportunities to issue-oriented, ‘policy entrepreneur’ actors to help them realize their aims. Moreover, through the regime members’ social and cultural standing, these leadership activities adjust the ‘logic of appropriateness’ (advocated by normative institutionalism, one strand of new institutionalism in political science) between the motivations or visions of program-oriented actors and the interests of community residents. To solve community issues and push each regeneration program forward, these actors play a critical role, and partnerships between them are keys to community activities. These partnerships seem to be made among actors who share norms and values for a specific purpose, autonomous partnership-building would be difficult were they to holed different views or knowing little of each other’s view. In these situations, regime leaders use their influence to assist these partnering actors with the activities set for them. In this way, the community regime reduces the transaction costs between program-oriented actors and acts as an enabler for them. The community regime makes community governance work and gives the members stability. Making partnerships through community regimes is an important factor to consider when developing community regeneration strategies.Key Words : Community regeneration, Governance, Leadership, Urban regime, Community regime

1) 首都大学東京大学院都市環境科学研究科都市システム科学域 Department of Urban System Science, Graduate School of Urban Environmental Science, Tokyo Metropolitan University

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都市科学研究 第4号 201288

1. 研究の背景と目的

地域コミュニティの活性化を目指すまちづくり活動

には、各主体がそれぞれの立場から役割を果たすと同時

に、多主体間で連携を構築し、一定の意図の下で協調的

な秩序を形成する必要がある。これは社会運営・制御の

あり様としてのガバナンスの課題でもある。

まちづくり活動の組織化にあたっては、主体間での

資源の動員と交換・結合の拡大、対応する課題に応じた

適切な主体の選択と秩序化、そして調整・安定化を担う

リーダーシップの機能が重要である(長野 2009)。地域

内資源の(再)発見・新結合と同時に地域外からの資源

動員(投資)が活動の潜在力と制約も提供するからだ。

 では、概ね住区レベルを単位とする地区まちづくり

活動を動かしてゆくリーダーシップはどのようにして

分析し、説明され得るのか。既往研究ではリーダー個

人や個々の団体に着目するミクロレベルのものが多

い。リーダーによるリーダーシップの様態や、リーダー

シップを発揮する団体の機能・能力への研究などであ

る(Henton et al.1997=1997、Hula, Jackson&Orr1997、

Fredericksen&London2000、松尾ほか 2005)。

そこで、本研究では既往研究とは異なるメゾレベル

に着目し、都市政治の分析枠組みの一つである「都市レ

ジーム論」を援用し、「地位に基づくアプローチ」「声価

によるアプローチ」「争点領域に基づくアプローチ」(秋

元 1971)のリーダーシップ分析手法を複合させて行う

事例研究を通じて、ガバナンスの観点から地区まちづく

り活動のリーダーシップを考察する。

2. ガバナンスにおけるリーダーシップ

の機能

地区まちづくりにおけるガバナンスが機能するため

の媒介物あるいは担保は、法的権限(政府)や価格(市

場)ではない。原理的には自発的参加を基調とするため、

「人々の間の相互了解」として存在する一種の社会関係

としての「社会的パワー」に依存することとなる。その

存在は特定の行動あるいは行動を行なう主体そのものへ

の「規制」「抑圧」そして「励まし」(盛山 2000)を担う。

ここで、自発的参加に基づくということは、参加主

体間で広義の合意形成が不可欠となる。特に中心となっ

て活動を担う活動家レベルでは、社会的ビジョンや目標

像を共有化が図られることが必須である。また、潜在的

な活動主体から如何にコミットメントを引き出すかも、

活動の推進には不可欠となろう。つまり、「励まし」と

いう機能が非常に重要となるのである。

これらの点を踏まえると、地区まちづくりのガバナ

ンスに参加する主体間の関係を安定化し、課題解決へ実

効的に機能させてゆくには、保有する「社会的パワー」

を基にして、参加者の信念体系(例:社会や地域はこう

なってほしい。そのために自分やこうしてみたい)や社

会的期待(例:こういうことを相手にやってほしい)を

理解し、働きかけ、各主体間で相互了解できる領域を拡

大させ、多主体間での社会的展望の一体性を構築してゆ

く調整機能を担う主体の行動が重要と推論される。

その上で、社会的主体と資源の結合をより強く促すた

めには、人々を励まし、活性化させることでコミットメ

ントを引き出し、参加・動員を拡大させること、そして

実体的・物質的な誘因の設定により動員・協力を獲得す

ることも必要となろう。ここでの誘因には何らかのポジ

ティブな褒賞を供与する場合とネガティブな制裁を与え

る場合が考えられる(Olson1965=1983、Salisbury1969、

Hechter1987=2003、Kooiman2003)。

以上から地区まちづくりのガバナンスの安定化を促

すリーダーシップは、「社会的パワー」を持つ主体によっ

て担われ、まちづくり活動により追求される目標やア

ジェンダに方向付けを与え、コミットメントを形成させ、

社会的資源の動員・確保、配分を通じて具体的な社会的

成果を可能にしてゆく機能と整理される。

3. 都市レジーム論の背景

地域におけるリーダーシップ分析では、その担い手

となるエリートの凝集性(多元性)が第 1 の研究課題

であった。1950 ~ 60 年代における地域権力構造(CPS)

論争ではコミュニティにおける「社会成層のパターン」

が「権力のパターン」の主要な決定要因だとする「成層

理論」(Polsby1963=1981)とそれへの多元主義者からの

反論から構成されていた。

「成層理論」の中心となった F. ハンター(Hunt-

er1953=1998)はアトランタ市での研究から、政策決定に

おける「流動型委員会構造」と名づけたリーダーの集合

体を析出した。ここでは特定の政策争点が形成されると、

各機関・団体のトップリーダーが公式・非公式の場を問

わず緊密な接触を繰り返すことでインフォーマルな「流

動型委員会」を形成し、そこで主要な決定が行われると

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89地区まちづくりを支えるリーダーシップに関する都市レジーム論からの一考察

定式化した。これに対して R. ダール(Dahl1961=1988)

に代表される多元主義者は政策争点領域ごとでのリー

ダーシップの多元性を主張した。

 第 2 にエリートが行使する影響力やその行使の様態

も重要な研究課題であった。CPS 論争はその後の研究

に大きな影響を与えたが、その一つが「非決定」概念

(Bachrach&Baratz1962=2005)等、リーダーが発揮する「パ

ワー」研究の進展(Lukes1974=1995)である。また、「集

合的行為問題」の視角からもリーダーシップ研究が進ん

だ。例えば、E. オストロム(Ostrom1990)は「コモンズ」

を制御する制度・ルール選択においてリーダーが持つス

キルや資源が重要な変数だとした。

 こうした論点を踏まえ、都市政治分析で 90 年代以

降、関心を集めているのが、ポリティカルエコノミー

論とネオ・プルーラリスト論を背景に登場してきた

「都市レジーム」論である(Stone1993、Dowding2001、

Harding2009)。 同 論 は S. エ ル キ ン(Elkin1987) の

米国ダラス市研究を嚆矢として、国際都市間比較研究

へ応用されている(Dowding et al.1999、 Davis2001、

DiGaetano&Klemanski1999)。

 「都市レジーム」論へは「古典的な地域権力論争の争

点から今日の複雑性と不確実性の条件の下で、どのよう

にしてアクターが共有する目的を達成するために如何に

自分たちのリソースを複合するか、そのためのリーダー

シップと戦略に焦点を移行させた」(Stoker2000)と理

論研究上の評価が与えられ(Stoker1995,1998,2000)、

ボランタリーセクターを主要なアクターとするセクター

間協力構築の実践的研究から支持(Miller1999)もある。

一方で、セクター間協働形成のリーダーシップを説明す

る理論としては「楽観主義」(Sulllivan&Skelcher2002)

という批判も与えられている。以下では「都市レジーム」

論の展開で中心を担ってきた C. ストーンの研究への検

討を行う。

4. 都市レジームとソーシャルプロダク

ションモデル

ストーンの理論は「システミック・パワー(Systemic

Power)」と「先占パワー(Preemptive Power)」の2つ

の基本的概念に基づく。まず、目的達成のために資源を

他者から調達しなければならない政府公職者は、社会的

資源の配置が階層化された社会経済的システムでは物質

的・組織的・文化的資源をより多くを保有する上層階層

に有利な決定をとらざるを得ない。このような地域の社

会経済システムの特徴が政府公職者の決定を通じて一定

の集団に有利に変換されるバイアスが「システミック・

パワー」である(Stone1989,2001)。

 一方、「先占パワー」とは「戦略的な地位を保持し、

活用する能力から派生するリーダーシップとしてのパ

ワー」(Stone1988)を指す。社会的な変容に直面して

いる都市が危機を乗り越えてゆくには都市全体としての

政策設定機能が必要になる。しかし、それは地方政府の

みでは出来ない。この必要性を満たすために各資源の次

元で有利な地位を得ている主体によるインフォーマル

な「統治連合(governing coalition)」が政府・民間を

架橋して発展する。これが政策設定、政策イニシアティ

ブ、資源動員等を担う(Stone1988)。そして、「統治連合」

が一旦形成されると他の「連合」が形成されるのを抑制

するのである(Harding2009)。

このような「統治連合」により生み出される「政策」

の内容はメンバー構成と同時に「連合」を維持するため

の理由により決まる。そのメンバーの内容は、社会的、

政治的、経済的条件によって決まる。具体的には地域の

人口構成、ビジネス界の参加の有無と一体化の程度、ビ

ジネス以外の団体の参加度、そして「統治連合」の“可

視性”である(Stone1988)。

 以上の理論展開から生み出されたのが「都市レジーム」

概念である。「都市レジーム」とは、「政策目的によって

動機付けられたセクターを越えた参加主体による一定の

特徴的なアジェンダを持った比較的安定的でインフォー

マルな協力関係」である。ここでは、中核となる主体

が、政策目的の枠組みを決め、一定の特徴的なアジェン

ダが認識されると、政策目的が関与・行動の動機付けと

なり、その関与・行動が資源の動員を生む。こうして政

策目的のために資源を獲得できる主体とアジェンダが結

び付けられ、動員された資源が問題解決能力を提供する

(Stone1993,2001)。

 次に「都市レジーム」での政策のために必要な資源を

集結させ、活用する能力の構築に対して提起された概念

が「ソーシャルプロダクションモデル」である。セク

ターを越えてのインフォーマルな協働関係の構築は集

合的行為問題の解決の1つである。この解決には物質

的・非物資的双方の「選別的誘因」と「各アクターの自

己目的追求の機会」の保障が考えられる。結果志向のア

クターは自らの特定の目的を追求するために設定したア

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都市科学研究 第4号 201290

ジェンダを、状況にあわせて再設定し、目的を充足しよ

うとするか、目的達成のために十分な資源を持つグルー

プに引き寄せられ、協力を得ようとする。この時、「レ

ジーム」は保有・動員可能な資源の大きさから、「選別

的誘因」と「各主体の自己目的追求の機会」を増進させ

る能力を保持し、問題解決志向のアクターを引き付ける

(Stone1989,1993)。ただし、こうした広い意味でのイン

センティブ設定に加えて、「レジーム」として掲げる政

策目的自体もアクターの結集を図る上では重要となる

(Mossberger2009)。それは「目的がアイデアとパワーを

結びつける」からであり、そのため、各アクターの関心

が移行しないように保護してゆくことが必要となるので

ある(Stone2005)。

よって、「統治連合」である「都市レジーム」のリーダー

シップ機能とは「選別的誘因」と「各主体の自己目的追

求の機会」増進を組み合わせ、かつ、「政策」の方向性(目

的)を調整することで、各アクターが追求するアジェン

ダと社会的問題解決のための全体アジェンダを調整し、

目的達成への推進力を図る事となる。

 最後に都市レジーム論への主な批判は「レジーム」の

内容(構成アクター・官民セクターを越えた協力の様

態・遂行される政策アジェンダ)への説明モデルに修

正を図るべきだとするものだ。ビジネスセクターや市

民の政策への参加度、国際レベルを含めた経済市場的

環境からの影響、国際機関・中央政府からの権限・資

源配分関係等の影響などが加えられるべき変数だと指

摘されている。また、ここでの中央政府等からの資源

配分の問題は「レジーム」が向かう課題解決に対して

必要な外部資源動員と参加者への誘因設定への説明が

不十分だという批判にも繋がる(Kantor et al.1997、

Sites1997、DiGaetano&Klemanski1999、Dowding2001、

Davis2001,2002,2003)。

これら批判に対してストーンも「都市レジーム」の

内容・活動には国際・中央政府機関レベルからの経済的

資源・法的権限配分等が環境要因として影響を与えると

した。解決すべき社会的争点に対応した各資源を持つメ

ンバーにより「レジーム」が構成されることが重要で

あり、社会的課題解決の在り様の視点から「レジーム」

の活動・影響力を考察することが必要だと論じている

(Stone2004)。

5. 日本における都市レジーム分析

日本において、ストーンが提起する都市レジーム論

からの代表的研究は中澤(2005)による新潟県柏崎市・

旧巻町における原発を巡る住民投票を中心とした地域政

治の分析である。中澤(2005:35)では「レジーム」の

構成要素として、①得票率などで測定される政策を遂行

してゆくときの「正当性」と「資源動員力」からなる「地

方政府の能力」、②町長・行政管理職・議員等の公職者

からなる権力を行使する地方政府の「統治者」と、政府

に所属する一員ではないが政府に影響力を行使する人々

たる「有力者」とで構成される「統治連合の構成」、③

パトロン・クライアント関係や経済的便益の供給を媒介

にした関係など、その時点での「レジーム」を支配する

「ゲームのルール」である「関係性」を設定する。そして、

柏崎市では原発立地推進が選択され、巻町では住民投票

から原発拒否へ進んだ原因を「レジーム」の形成・移行

の成功と失敗の観点から説明したのであった。

こうした中澤の研究は地域政治研究に一定の影響を

与えており、たとえば、箕輪(2009ab)は中澤が整理す

るレジームの構成3要素に立脚して新潟県加茂市の市政

分析を実施している。また、光本(2007)も、中澤よっ

て整理されたレジーム論を踏まえ、「ナラティブ・アプ

ローチ」を基盤とした「自治運営のレジーム」概念を唱

え、湯布院町と田川町の地域政治分析を行っている。

このように日本でも都市レジーム論からの研究蓄積

は一定程度ある。しかし、地区まちづくり活動へ応用し

た研究は管見の限り、ほとんどないのである。

6. 事例分析

(1)事例地区としての早稲田地区

 東京都新宿区早稲田地区には早稲田大学という大規模

組織が存在するが、この点を除けば拠点となる集客施設

はない「ごく普通の」住商工混在地域である。にもかか

わらず、早稲田地区は多分野における「まちづくり活

動」を知られる存在となった。例えば、2001 年には「東

京都環境賞知事表彰」(東京都環境局)と「平成 13 年度

総務賞防災まちづくり大賞」(総務省消防庁)、2002 年

には「平成 14 年防災功労者内閣総理大臣表彰」(国土交

通省)が贈られている。これらの表彰では共通して「地

元商店街、学生、NPO などが一体となった活動において」

という点が表彰理由に挙げられている。様々な主体が多

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91地区まちづくりを支えるリーダーシップに関する都市レジーム論からの一考察

分野の具体的な目標に対して連携を図って成果を挙げて

いると認識されている。以下、参与観察を基に早稲田地

区のまちづくり活動の分析を行う(注(1))。

(2)1990 年代初頭まで早稲田地区

1990 年代以降のまちづくり活動の中核を担う早稲田

地区の商店街組織は 1982 年に個別商店会を横断する早

稲田大学周辺商店連合会を立ち上げる。これは早稲田大

学における弁当販売など、営業に関し対大学交渉窓口の

一本化を要請されたことによるところが大きい。この延

長線上で、90 年代に入り、桜井一郎氏(早稲田大学周

辺商店街連合会事務局長・当時)が主導して「(有 ) 早

稲田 WAVE」が立ち上げる。この会社は「まちづくり会社」

を標榜したものであるが、当初の目的は清掃業務等、大

学発注業務を獲得するためであった(注(2))。

 バブル経済期には新宿区による再開発事業へ早稲田大

学が関与したこと(注(3))を契機に早大総務部主導で

桜井氏らの商店街店主らはアメリカのキャンパスタウン

(注(4))へ視察を行った。結果として、この視察は今

後の活動を進めるための手本やビジョンを地域の関係者

に提供し、後のまちづくり活動への刺激となった。

(3)1990 年代半ば以降の活動の展開

あいさつ 早稲田地球感謝祭 2005 開催に当たって

 1996 年、環境をテーマに「エコサマーフェステ

ィバル」を開催。

 その後、「地球感謝祭」へと大きく育ち、10 回

目を数えることができました。

 地域コミュニティ、安心安全、福祉教育、高齢

者支援等、さまざまな分野を早稲田からメッセー

ジを発信してまいりました。

 1995 年阪神淡路大震災、以降の災害が発生して

おります。今年のテーマは「防災」。もう一度地

域防災を考え向上を目指したいと思います。

早稲田大学周辺商店連合会会長 清水恒夫

出所:早稲田地球感謝祭 2005 パンフレットより

 上記は 2005 年に開かれた早稲田地区の地域イベント

「地球感謝祭 2005」パンフレットの冒頭に記載された早

稲田大学周辺商店連合会会長・清水恒夫氏(当時)のあ

いさつ文である。では、90 年代半ば以降、どのように

これら多分野にわたる活動は展開されてきたのだろう

か。

①環境活動

早稲田地区でのセクター横断的な地区まちづくり活

動は 1994 年 11 月の「早稲田ゴミゼロ」地域実験から開

始された。この時は単発的なものであったが、早稲田大

学出身者が経営する民間の環境シンクタンクが協力し実

施された。その後、1996 年 7 月、地元7商店会の1つ

である早稲田商店会の会長で、地元で食品スーパーを経

営していた安井潤一郎氏(後の衆議院議員)は学生が帰

省し、商店街利用者が減少する夏場の商店会活性化対策

として早稲田大学の施設を利用したイベントを企画しよ

うとした。この時期は東京都が事業系ゴミの有料化(1996

年 12 月より)を実施しようとしていた時期であった。

商店会にとってはゴミ減量に取り組む事がコスト削減と

なる状況となっていた。そこで 96 年 8 月に安井氏を実

行委員長に商店街活性化、事業系ごみ有料化対策、そし

てまちのイメージアップを目的に「環境との共生」をテー

マにした「エコサマーフェスティバルイン早稲田」(以下、

エコサマーと略記)が早稲田大学を会場に実施されるこ

ととなった。ここでは、早稲田大学や新宿区環境関係部

局(リサイクル推進課、環境保全課)に加え、環境系を

中心とした各種企業、環境団体が参加していた。このイ

ベントに対して、安井氏は「行政参加」(早稲田いのち

のまちづくり実行委員会編 1998)という表現を用いて

いるが、地域側が政策課題解決の条件と場を設定し、そ

れをゴミ減量という政策課題を抱えている行政担当者に

課題解決への場として提供するものだったのである。新

宿区環境部局環境保全課課長・楠見恵子氏(当時)は「行

政もやりたいことがハッキリしていたし、まち場の方も

やりたいことがハッキリしていた。それが合致していた

から上手く行った。それに、行政に実験場を提供もして

くれている」(注(5))という評価を与えている。

 8 月のイベントを契機に同商店会ではリサイクル活動

にも取り組む事になり、96 年 9 月に「早稲田リサイク

ル・システム研究会」を立ち上げ、寄本勝美早稲田大学

教授(当時・元日本廃棄物学会会長)を委員長とした。

同年 11 月には「早稲田ごみゼロ平常時実験」を行う事

になり、各種環境機器メーカーが商品展示の機会として

参加した。この活動の延長に 99 年 8 月には商店会員が

所有する空き倉庫を活用し、安井氏と知り合った環境ベ

ンチャー機器メーカーが開発した空き缶・ペットボトル

回収機器を設置した「エコステーション 1号館」を開設

した。これはマスメディアを通じて反響を呼び(注(6))、

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都市科学研究 第4号 201292

修学旅行生が社会科見学に訪れるまでになった。そして、

テントに空き缶・ペットボトル回収機器を設置した同 2

号館を、2000年8月には空き店舗を活用した「エコステー

ション 3号館」が開設された。同 3号館には生ゴミ処理

機と発泡スチロール減容機が設置され、環境活動を担う

と共に各種地域イベント会場としても利用されることに

なった。

このエコステーション 3 号館開設に当っては「平成 12

年度先進商店街等活性化事業」補助金(東京都・経済産

業省)が活用された。一連の環境活動を通じて安井氏が

知り合った経済産業省リサイクル政策部門のキャリア官

僚から補助メニューの存在が提示されて、獲得への態勢

づくりが始まった。そして、早稲田大学内の研究所が実

施・調査事務局を受託することで実現したのであった。

この補助事業の中で、東京都の担当者との見解の相

違を発生した時、安井氏は従来から選挙を支援してきた

都議会公明党の議員に目的達成ための支援を要請(注

(7))し、又、地元選出の都議全員を集めて、都担当者

による局長ヒアリングの席に同席させようとする行動も

行った。

 こうした一連の活動の中で、中心的なイベントとなっ

たエコサマーはその後、「地球感謝祭」として商店街二

世世代に当たる当時 30 歳代の商店主を実行委員として

継続して開催されることとなる。この間、早稲田大学周

辺商店連合会会長の清水恒夫氏は商店会会員のまとめ役

として機能すると共に大学や町会関係者との「顔つなぎ

役」という調整作業を担った。

以上のような環境活動が行なわれるには、会場提供

等の資源提供を行なう早稲田大学との関係構築が不可欠

であるが、これは早稲田大学から設備管理を担当する管

理課が活動に深く参画することで可能となった。具体的

には早大管理課長であった A氏がその趣旨に賛同し、自

らの立場を利用して早大側における調整や説得を引き受

け、活動を支援すると同時に、地域に対して、時には手

厳しい批判者として、時には良き助言者としての役割を

担った。A 氏の行動は地域側と早大側との協力関係に不

可欠なものとして機能してきた。

また、活動を開始した直後から大きな推進力を持ち

えたことも特徴といえる。これには 1996 年当時東京西

清掃事務所長であった木谷正道氏の力によるところが大

きい。木谷氏は第1回、第 2回のエコサマーの実質的「プ

ロデューサー」であり、自ら知合いの行政職員に声をか

け協力を求め、早稲田で活動する団体や企業に呼びかけ

るなどを行った。こうした活動は安井氏自身が「はっき

り言って初めの2年は行政と企業の知恵。昨年夏の3回

目の時、“もういいかげん、自分たちで何か考えてこい”っ

て号令がかかり、7つの商店会がアイディアを持ち寄っ

た」(注(8))とし、当時、東京都職員であり木谷氏の

呼びかけにこたえて参加していた吉川富夫氏(現県立広

島大学経営学部経営学科教授)は「我々“外人部隊”が

主体だった」が表現するほどである(注(9))。

木谷氏がこれだけ深く早稲田地区に関与するように

なったのは担当者としてゴミ有料化を抱え、モデル地区

となるエリアを探していたと言う。政策目標実現の場と

なることに可能性を見出したことが大きい(注(10))。

そして、木谷氏は東京西清掃事務所から異動になった後

も個人の資格でエコサマー・地球感謝祭に参加するなど、

関与を続けたのであった。

②安心安全への活動

 環境を切り口にした活動は夏のエコサマー・地球感謝

祭での救急救命技能講習会やシンポジウムの実施(注

(11))に加え、地元小学校・PTA と学生グループとの共

同実施による「地域防災キャンプ」の実施などへも広が

りを見せた。この契機となったのは環境活動において「プ

ロデューサー」として活動した木谷氏の働きかけである。

阪神大震災の直後だったこともあり「まちのためには防

災も重要だ」と安井氏に働きかけ、その重要性を認識さ

せたのである。これはエコサマーにおいて阪神大震災被

災者である神戸市長田区の商店会会長を招聘したシンポ

ジウム開催へと結実する。

地元小学校・PTA と学生グループとによる「地域防災

キャンプ」は早稲田地区にある鶴巻小学校と戸塚第 1小

学校で実施された。鶴巻小学校では教員とPTAにより「防

災キャンプ」が行なわれていた。鶴巻小学校教員が「子

ども達がまちに出て、できれば課外授業として早稲田大

学のキャンパスを使って活動をしたい」と早稲田大学の

まちづくり学生グループである「まっちワークグループ

早稲田」へ協力を要請したことに始まる。

この「防災キャンプ」を専門家として支援したのが

当時東京大学地震研究所研究員であった B氏である。エ

コサマー等での活動から B氏は自らの専門である地域防

災のモデル事業を行なえる可能性を感じて早稲田地区の

活動へ参画するようになったのである(注(12))。

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93地区まちづくりを支えるリーダーシップに関する都市レジーム論からの一考察

一方、戸塚第 1 小学校については、地元商店会街組

織からの要請により開始という形をとった。「防災キャ

ンプ」活動の実働を担うのは「まっちワークグループ早

稲田」のメンバーであり、それを B氏は専門家として指

導的役割を担うという構図になっていた。そして、子息

も自らも通学したことから PTA メンバーでもあった安井

氏は地元商店会会長という立場で連合商店会長の清水氏

とも連携し、新宿区等の関係行政機関へ要望書を提出し、

滞りなく実施されるように支援を行なったのであった。

③福祉教育活動

この分野の活動は安井氏と乙武洋匡氏(当時早稲田

大学政治経済学部学生)の出会いを通じて大きく進んだ。

その内容は早稲田地区の活動を社会的に認知させた乙武

氏の『五体不満足』(乙武 1998)に詳述されている。安

井氏は乙武氏に対し、「君にしか出来ないことがあるの

だからやってみなさい」と乙武氏がやろうとすることの

意義を認め、大いに奨励したのであった。しかし、その

背景には環境活動での「プロデューサー」であった木谷

氏が安井氏に「まちは環境だけでは語れない。福祉も重

要だ」と認識させたことも重要な要素であった(注(13))。

具体的な活動としては小学生を対象にした「車椅子

体験会」や車椅子に乗って地域を見て回る「車椅子探検

隊」などが実施された。そして、「車椅子探検隊」は「地

域防災キャンプ」とあわせ、現在では早稲田大学のまち

づくり学生グループである「まっちワークグループ早稲

田」により定常的に実施されるようになった。

④地域通貨の展開

2000 年度からは早稲田地区に在所するだけで具体的

な関係性がなかった開発 NGO(シャプラニール)と新規

開設したデイケアセンターが PR のために夏のイベント

に参加するようになった。そして 2004 年度からは早稲

田・高田馬場環地区境通貨「アトム通貨」が始まる。

「アトム通貨」は 2004 - 2005 年度「アトム通貨」実

行委員会事務局長の松田卓也氏(当時早稲田大学平山郁

夫記念ボランティアセンター(WAVOC)契約社員)の発

意によるものである。2003 年度より環境通貨実現の構

想を持っていた松田氏は構想実現のフィールドを探して

いた。WAVOC へ着任すると WAVOC 自体への働きかけと同

時に「環境通貨」の企画書を持って、各組織をまわった。

結果、松田氏が「まちの活動が基盤にあって、その上に

『アトム通貨』が出来た。それぞれの立場のキーパーソ

ンが実行委員に入ってくれた」(注(14))と述べるよう

に NGO(シャプラニール、ピースボート)・高田馬場西

商店街振興組合・早稲田大学周辺商店連合会・WAVOC に

よる実行委員会の成立と新宿区戸塚出張所の協力を得る

ことに成功した。

このような活動が可能となったのは松田氏の発意・

活動なくしては存在しなかったものであるが(注(15))、

商店街リーダーの安井氏や清水氏らがその意義と認め、

協力をしたことも指摘できる。安井氏は準備会合の席上

で初めての取り組みのために戸惑う商店街関係者に対し

て「今まで商店街でやったことがある『お買い物券』と

同じだと考えればいいのだ」と説得し、協力を引き出し

た。清水氏は商店街組織代表者という立場からの調整役

を担うと同時に自分が経営する店舗も「アトム通貨」事

業に参加している。

そして、「アトム通貨」内では様々な関係主体による

合同事業が実施された。例えば、間伐材を利用した「割

り箸」で「アトム通貨」PR を行う企画は早稲田大学の

学生環境グループ「環境ロドリゲス」と大学生協連が母

体となった設立した環境 NGO「樹恩ネットワーク」が提

携して実現した。この企画自体は松田氏や商店街関係者

が仲介したものではなく、環境保護活動を通じて既に

あった「付き合い」を通じて実現したものであった。

⑤高齢者支援活動

 早稲田地区で高齢者福祉が意識されるようになったの

は地域そのものの高齢化の進展に加え、早稲田大学教員

スタッフが開設していた社会人向け講座に参加していた

人々により「団塊の世代の社会人学習サークル」が立ち

上がった事が挙げられる。偶々、この講座が高齢化社会

をテーマにしていたため、ここには高齢者系 NGO・財団

スタッフやコンサルタントも参加しており、彼らが音頭

を取る形で「社会人サークル交流祭」が企画されること

となった。地域でイベントが開催されることは地元商店

街にとっても経済効果があるため、地元商店街組織側は

桜井氏や清水氏を中心に協力することとなった。

 この動きの中で国際高齢者年(1999 年)に合わせて

早大教員、高齢者 NGO 等により「第 1回エイジングメッ

セ」が開催されることとなった。ここでは商店街組織側

のまとめ役を 90 年代初頭に「(有)早稲田 WAVE」を設

立するなど、商店街組織のリーダーとして活動してきた

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都市科学研究 第4号 201294

桜井一郎氏が担うこととなった。そして「エイジングメッ

セ」は 2000 年度からはエコサマーと合体して地球感謝

祭として実施されてゆく。

このようなイベントにより啓発は行ったが、具体的

に地域における高齢者福祉サービスに対して、商店街組

織として何を取り組むべきかが次の課題となっていた。

商店街組織内には様々な考え方が存在していた。第 1は

経済的活性化としての宅配事業実施である。第 2は地域

セーフティネット構築への貢献である。これらを達成す

る手段として、地域住民への昔ながらの「御用聞き」や

外出サポートによる来街者増が期待された。そして事業

展開を考えるため、桜井氏は早稲田大学スタッフの協力

を依頼し、商店会会員向け意向調査や町会組織である早

稲田早栄会会長の C氏の承認・協力による町会を経由し

た住民向け意向調査を実施した。

 これらの活動に対し、新宿区社会福祉協議会より提携

の申し出があった。新宿社協では介護保険開始により従

来行政サービスで高齢単身者向けの訪問サービスと配食

サービスが廃止・再編成されるのを受けて、区委託事業

として地域ボランティアによる高齢単身者向け「地域見

守り員」事業を開始し、そこでの地域サービスの協力相

手を探していた。特に訪問を受ける側の高齢者には簡単

な宅配サービスを「見守り相談員」に依頼するケースが

ある事や、近隣住民よりもある程度「距離感」のある学

生や商店主の方が高齢者にとっての精神的負担が少ない

等のメリットから、早稲田地区で行われようとしている

事は良い連携相手だと考えたのであった(注(15))。

 以上の状況の中で、実現可能な取り組みを探るべく、

桜井氏が主導して中小企業診断士や早稲田大学内の専門

家の協力も得て高齢者同士が憩いの場作りをする実験事

業が行われる事となった。具体的には町会長である C氏

の仲介により地域老人会会員を招いての商店街の休日店

舗を活用した高齢者向け給食サービスの実施である。こ

れは新宿社協の施策課題と合致することでもあった。

7. 考察

(1)「コミュニティ・レジーム」の存在

早稲田地区でのまちづくり活動は商店街リーダーで

ある安井氏、桜井氏、そして清水氏を中核に町会組織、

大学等のセクターを越えた組織のリーダー、中心メン

バーがインフォーマルだが、比較的安定した関係を形成

していた。1990 年代中期から 2000 年代半ばにかけて、

中核となるこれらリーダーが唱導するアジェンダに沿う

形で各セクターからの参加主体により複数の領域で活動

が推進された。「都市レジーム」論の内容と照らし合わ

せると、このようなリーダー群・中核メンバーの様態は

コミュニティレベルでの「レジーム」、すなわち「コミュ

ニティ・レジーム」と呼ぶことができよう。

早稲田地区のリーダー達は地域内だけではなく地域

外からであっても自己の政策目的実現の機会を求める

「政策企業家」的主体に対して、「それは楽しいし、みん

なも喜ぶだろう」あるいは「それは社会の流れの中で、

早稲田地域にも必要なことだろう」として「承認」を与

え、同時に地域に対する社会的「意味づけ」を与えていた。

こうしたリーダーシップ行使を政治学における新制度論

研究の出発点となった規範的制度論(Peters2005=2007)

から整理すれば、自己の政策目的を追求する「政策企業

家」的主体に対して、社会的文脈からの「適切さの論理」

(March&Olsen1989=1994,1995) を地域コミュニティの住

民・ステークホルダーとの間で調整していると言うこと

が出来るのではないだろうか。

次に、早稲田地区でのまちづくり活動の展開の中で、

いわゆる「人柄」として語られるリーダー個人が持つ属

人的要素としての「魅力」が支えていることは否定する

ことはできない。しかし、リーダーたちによって設定さ

れた目標・アジェンダの社会的意義、すなわち「正当性」

が参加者・アクターを引き付けたことも事例分析の結果、

明確に認められる。「説得し、魅力を感じさせる吸引的

な手段で相手に影響力を与える」という意味での広義の

「ソフトパワー」(Nye2008 = 2008,2011 = 2011)の行使

といえる。加えて「コミュニティ・レジーム」を構築す

るリーダー達はその社会的立場を利用して、政策目的実

現のために必要な資源(資金・知識・技術など)の保有

主体への「橋渡し」(媒介)を行っていた。これは「都

市レジーム」論における「選別的誘因」と「各主体の自

己目的追求の機会」の提供に相当するものといえよう。

以上から、観察された早稲田地区のリーダーたちに

よるリーダーシップ行使の様態は、「承認」や「意味づ

け」の営為を通じて、「ソフトパワー」に基づきコミッ

トメントを引き出し、参加主体間での社会への展望、他

者への期待の調整を行ない、更には資源の仲介・補充を

通じたインセンティブ設定と課題解決力の拡充を果たす

中で、まちづくりのガバナンスの安定化を促していたと

整理できる。

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95地区まちづくりを支えるリーダーシップに関する都市レジーム論からの一考察

(2)「コミュニティ・レジーム」の動態性

「コミュニティ・レジーム」はインフォーマルな存在

のため、本質的に不可視性を持つ。しかし、早稲田地区

では一定の可視性を持ちえていた。それはリーダー達の

積極的なメディア利用により、メディアを通じて広報さ

れ、「誰がリーダーか」という情報が社会的に知られる

ようになったからと考えられる。メディア側に情報の選

択権があるため、偶然性に依存する面があるが、少なく

とも意図的なメディア利用が図られていた。

「コミュニティ・レジーム」が一定の可視性を持つこ

とは「コミュニティ・レジーム」を構成する主体への接

触が比較的低いコストで可能となることを意味した。つ

まり、「コミュニティ・レジーム」を利用して、「自分の

やりたいことをやろう」とする「政策企業家」的主体が

レジームを構成するリーダーに接触しやすくなり、そう

した「政策企業家」的主体が集まりやすい条件を生む。

結果として、「正のスパイラル」状に主体の参入が行われ、

各種の活動が発生していた。

この中にあって、「コミュニティ・レジーム」のメン

バーは常に「承認」機能者としてだけ活動するとは限ら

なかった。環境や高齢者福祉の領域で見たように「政策

企業家」的役割を担うことがある。活動の場面によって、

行動規範が「承認」機能者から「政策企業家」的主体へ

変化するのである。

(3)協働関係構築の促進

「コミュニティ・レジーム」は特定の活動プログラム

実現を目指す「政策企業家」的主体同士や新規に参入す

る彼らと地域内外で各種の資源を持つ組織等との間を取

り持ち、一定の合意を形成し、合同実施等を目的に資源

を提供し合う「結合」(協働関係)の創出を促していた。「コ

ミュニティ・レジーム」が媒介することで「政策企業家」

的主体間や、彼らと資源保有主体間のトランスアクショ

ンコストを低下させることが可能となったが故に実現し

たと言える。

ただし、「コミュニティ・レジーム」を媒介しない「政

策企業家」的主体同士の直接的な「結合」も確認された。

こうした「結合」には、社会的課題解決に対する共通す

る価値観に基づく結合の場合(「アトム通貨」の取り組

みでみられた環境系 NPO 同士の結合など)と、「コミュ

ニティ・レジーム」を経由しての相互の接触経験の蓄積

があり、その蓄積により相互了解が容易になっていると

いう条件を利用しての結合があった。これらの場合でも、

「コミュニティ・レジーム」による「承認機能」が働く

ことで地域に受け入れられ、自らが設定した目的を果た

すことが出来たのであった。

8. 結語

 本研究では地区まちづくりにおけるガバナンスの調整

メカニズムを担うリーダーシップの担い手とその機能に

ついて分析を行なった。主たる知見は地区まちづくにお

けるガバナンスの機能をメゾレベルで説明するには、各

主体の活動を支援し、かつ多元的な協働関係へ安定性を

付与するリーダーシップを発揮するリーダー(群)を分

析に組み込む必要があり、こうしたリーダーシップ・調

整メカニズムは「コミュニティ・レジーム」として析出

される。この「コミュニティ・レジーム」は地域コミュ

ニティでセクターを越えて特定の政策志向性を持った組

織リーダー・中核メンバーにより構成される比較的安定

的でインフォーマルな協力関係である。

「コミュニティ・レジーム」は構成メンバーの社会的

立場を利用して、自己の政策目的実現の機会を求める「政

策企業家」的主体に対して、地域社会としての「承認」

や地域に対する「意味づけ」を与えることで、活動主体

の環境を整える。また、政策目的実現のために社会的資

源の保有主体への「橋渡し」を行うことで、社会的資源

を動員・確保を支援し、具体的な成果を可能にしてゆく。

これは「コミュニティ・レジーム」が構成主体の社会的

地位・権能を基に地域外からも資源動員をする「窓口」

ともなることを意味する。この機能は「コミュニティ・

レジーム」の可視性が高いほど、容易に発揮できる。

そして、「承認」や「意味づけ」を通じて特定の政策

課題追求を目指す主体の活動を確認し、評価し、他主体

との協力関係を安定化させる。これによりガバナンスへ

参加する各主体間で相互了解できる領域を拡大させ、多

主体間での社会的期待や展望の一体性を構築し、追求さ

れる目標やアジェンダの方向性を規定してゆく。

地区まちづくり活動が進むうえで具体的な事業を推

進するのは自ら望む社会的価値達成のために連携関係構

築を目指し、具体の活動を推進する「政策企業家」的主

体だ。しかし、彼らだけで安定的な連携関係が構築でき

るかは不確実である。利害関係が複雑化し、「政策企業家」

的主体間で深い相互作用と信頼関係が確保できない場合

が存在する。そのような場合には「政策企業家」的主体

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都市科学研究 第4号 201296

の活動を支援し、かつ多元的な連携関係の安定性を付与

するリーダーシップを持つ主体の存在が必要となる。つ

まり、「コミュニティ・レジーム」が持つ調整機能・リー

ダーシップを活用し、「コミュニティ・レジーム」を経

由する形で「政策企業家」的主体間の結合(協働関係構

築)を図ることが地区まちづくりのガバナンスの組織化

にとって重要な戦略となる。

こうした組織化の過程にあって「コミュニティ・レ

ジーム」のメンバーは常に承認機能者としてだけ活動す

るとは限らず、「政策企業家」側の役割を担うこともある。

特定の活動主体がもつ機能や行動規範は必ずしも固定的

に存在しているのではないということには留意を要しよ

う。

9. 残された課題

本研究は特定の事例地区においてまちづくり活動が

創出され、継続してゆく過程を焦点としているが、長期

的にまちづくり活動が推進されてゆく上で避けることが

出来ないリーダーシップの継承・交代については十分に

検討できてはいない。また、複数事例間比較による理論

枠組みの修正も今後の課題である。

【謝辞】

本研究を進めるに当たり、研究の場を与えてくださ

り、また、様々にご協力を頂いた東京都早稲田地区の皆

様に厚く御礼申し上げます。そして、研究上のご指導を

賜った故・寄本勝美先生(早稲田大学政治経済学術院教

授)、早田宰先生(早稲田大学社会科学学術院教授)に

心より御礼申し上げる次第です。

【補注】

(1) 本章での事例分析の記述は長野(2002)の内容にそ

の後の動向を踏まえ、加筆・修正したものである。

(2)(有)早稲田 WAVE は大学業務への参入は失敗したが、

その後、地域活性化の企画商品として「早稲田地ビール」

を企画・販売することとなった。

(3) 新宿区西早稲田地区市街地再開発事業(1995 年工事

完了)へ早稲田大学は株主として参加していた。

(4) 1989 年には UCLA、UC バークレー、南カリフォルニ

ア大学、1991 年にはハーバード、ニューヨーク、ジョー

ジタウン大学へ視察を行っている。

(5) 新宿区役所にてのインタビュー(2001 年 2 月 20 日)

への回答に基づく。

(6) 一般的に見られるように安井氏も何らかの形で取材

に訪れたメディア関係者には定期的イベントなどの情報

をリリースしていた。安井氏は筆者に度々、「早大出身

者で大学を悪く言うやつはいるが、まちのことを悪く言

う奴はいない」と述べている。

(7) 筆者も都議会公明党議会事務室まで同行している。

(2000 年 7 月 11 日)

(8) 毎日新聞 1999 年 7 月 23 日

(9) 吉川富夫氏へのヒアリング(1999 年7月 15 日)に

基づく

(10) これらの活動に付いては朝日新聞(1999 年 12 月

12 日)で紹介されている。

(11) 朝日新聞朝刊<社説> 「防災の日──走り続ける

こと」(1999 年9月1日)参照

(12) これは B 氏本人が筆者へ繰り返し述べたことであ

る。

(13) この記述はエコサマー開始当初、ただ一人の学生

スタッフとして関与し、その後も継続して参加していた

伊藤正浩氏へのヒアリング(2006 年 2 月 15 日)による

ところが大きい。

(14) 松田卓也氏へのヒアリング(2005 年 9 月 30 日)

に基づく。

(15) WAVOC が組織決定として松田氏の人件費とオフィ

ス提供という金銭的・空間的資源の投入があったことも

否定すべきではない。

(16) この記述は新宿区社会福祉協議会担当者へのイン

タビュー(2000 年 11 月 27 日)に基づく。

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