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教育事例⑧~反転授業~ ~対面授業と事前・事後の学習内容を どう効率的に設計できるかが大切~ 効果的な反転授業とは -Flipped Classroom- 反転授業とは? 反転授業(Flipped Classroom) では、限られた授業時間内で学 習目標を達成しやすくするため に、まず事前に学生自身が予習 をして、疑問点の精査や必要な 知識をインプットする機会を設定 します。反転授業は、事前学習 によって基礎的な知識を備えた状 態にすることで予め学習内容に関 する理解を深め、その後の対面 授業では、インプットされた知識 をベースにグループワークやディ ベート等を行い、学習効果を高 めることをねらったものです。 反転授業と言っても、ただ単に 授業形態としての対面授業と事 前・事後学習を反転させるだけ でよいわけではありません。反転 授業では、より明確な学習目標 の設定が大切になります。なぜ なら、確実な学習効果を生む授 業設計にするためには、事前学 習と事後学習において何を修得 するべきなのか、対面授業を深 い学びの場とするために必要な 学習方略(グループワーク、ディ ベート、Think‐Pair‐Share 等) は何であるのかを綿密かつ一貫 性のあるものとなるように考え、 再構成する必要があるからです。 反転授業のための効果的な方略 事前・事後学習を効果的なも のとする方略として、「eラーニ ング」が活用できます。動画入り のコンテンツを視聴させたり、資 料を事前に読解させたりすること で、疑問点を精査し、分からな いことを解決した上で、対面授業 に臨みます。愛媛大学では、事前・ 事後学習や自学自習を効果的に するために、Moodle(学習支援 システムのひとつ)上に、掲示板、 資料提示、ディスカッション、テ スト、課題提出、アンケート等の 機能を備えており、さまざまな授 業設計に対応することが可能です。 事前・事後学習を含めた授業 構成全体をどう設計し、どのツー ルを用いるのか、対面授業で主 眼を置くべき学習目標が何であ るのかを明確にすることが、反 転授業が成り立つ重要なポイン トとなります。また、設計した事 前・事後学習に学生が自発的に 取り組むためには、その授業構 成に学習者への動機付け方略を 加味して設計することが大切な のです。 時間の有効活用 学習能力には個別性があり、 一定の学習内容を理解するため に必要な時間は学習者によって 異なるといわれています(キャロ ルの時間モデル)。授業中の限ら れた時間では理解ができない学 生も、反転授業を導入し、自宅 で自分に合った時間をかけて学 べば、理解も進み、対面授業で のタスクに取り組むための予備知 識をもった状態で参加することが できます。つまり、心に余裕をもっ て、より円滑に演習等に参加する ことができます。授業で、教員が 説明に要していた時間を、学生 が考える時間にあてることができ るのです。 講義を視聴する学生 「教員が 説明する時間 「教員が 説明する時間」を グループワーク・討論 従来授業 反転授業 ©2014 Masaki Nakamichi 疑問点の精査 自主学習 (学生が考える時間) 知識の伝達・疑問点の解決 発展・探求 演習・応用・実践 レポート・課題など (学生が考える時間) 「学生が 考える時間 「学生が 考える時間」に Moodleのディスカッション画面 テキスト・資料の読解、 講義・e ラーニングなど (教員が説明する時間) 外国語授業で単語や発音 等を事前学習でおさえ、対面 授業で実践の場を設定する。 公式や方程式を事前学習で 理解し、対面授業で応用問題 に取り組む。 操作や作業の手順等を 事前に学習し、対面授業で 実践する(実習・演習等)。 事例を設定し、それに対する 考えを事前にまとめ、対面 授業で発表や討論をする。 事前・事後学習では、どのような メディアを選ぶのか等、その方略も 重要なポイントとなります。 最終課題の ブラッシュ・アップと 次回授業への発展・応用 最終課題の ブラッシュアップと 次回授業への発展・応用 反転授業を用いた授業の例 知識の伝達・疑問点の解決 演習・応用・実践 ディスカッション・ 発表など (学生が考える時間) 講義 (教員が説明する時間) 講義 (教員が説明する時間) Flipped 反転 ディスカッション・ 発表などで理解を深める (学生が考える時間) ディスカッション・ 発表などで理解を深める (学生が考える時間) 1 2 3 4

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教育事例⑧~反転授業~

~対面授業と事前・事後の学習内容を        どう効率的に設計できるかが大切~

効果的な反転授業とは-Flipped Classroom-

反転授業とは? 反転授業(Flipped Classroom)では、限られた授業時間内で学習目標を達成しやすくするために、まず事前に学生自身が予習をして、疑問点の精査や必要な知識をインプットする機会を設定します。反転授業は、事前学習によって基礎的な知識を備えた状態にすることで予め学習内容に関する理解を深め、その後の対面授業では、インプットされた知識をベースにグループワークやディベート等を行い、学習効果を高めることをねらったものです。

 反転授業と言っても、ただ単に授業形態としての対面授業と事前・事後学習を反転させるだけでよいわけではありません。反転

授業では、より明確な学習目標の設定が大切になります。なぜなら、確実な学習効果を生む授業設計にするためには、事前学習と事後学習において何を修得するべきなのか、対面授業を深い学びの場とするために必要な学習方略(グループワーク、ディベート、Think‐Pair‐Share 等)は何であるのかを綿密かつ一貫性のあるものとなるように考え、再構成する必要があるからです。

反転授業のための効果的な方略 事前・事後学習を効果的なものとする方略として、「eラーニング」が活用できます。動画入りのコンテンツを視聴させたり、資料を事前に読解させたりすることで、疑問点を精査し、分からないことを解決した上で、対面授業に臨みます。愛媛大学では、事前・事後学習や自学自習を効果的にするために、Moodle(学習支援システムのひとつ)上に、掲示板、資料提示、ディスカッション、テスト、課題提出、アンケート等の

機能を備えており、さまざまな授業設計に対応することが可能です。

 事前・事後学習を含めた授業構成全体をどう設計し、どのツールを用いるのか、対面授業で主眼を置くべき学習目標が何であるのかを明確にすることが、反転授業が成り立つ重要なポイントとなります。また、設計した事前・事後学習に学生が自発的に取り組むためには、その授業構成に学習者への動機付け方略を加味して設計することが大切なのです。

時間の有効活用 学習能力には個別性があり、一定の学習内容を理解するために必要な時間は学習者によって異なるといわれています(キャロルの時間モデル)。授業中の限られた時間では理解ができない学生も、反転授業を導入し、自宅で自分に合った時間をかけて学べば、理解も進み、対面授業でのタスクに取り組むための予備知識をもった状態で参加することができます。つまり、心に余裕をもって、より円滑に演習等に参加する

ことができます。授業で、教員が説明に要していた時間を、学生が考える時間にあてることができるのです。

講義を視聴する学生

「教員が 説明する時間」を「教員が 説明する時間」を

グループワーク・討論

従来授業 反転授業

事前学習

事後学習

©2014 Masaki Nakamichi

疑問点の精査

自主学習(学生が考える時間)

知識の伝達・疑問点の解決

発展・探求演習・応用・実践

レポート・課題など(学生が考える時間)

「学生が 考える時間」に「学生が 考える時間」に

Moodleのディスカッション画面

テキスト・資料の読解、講義・eラーニングなど(教員が説明する時間)

外国語授業で単語や発音等を事前学習でおさえ、対面授業で実践の場を設定する。

公式や方程式を事前学習で理解し、対面授業で応用問題に取り組む。

操作や作業の手順等を事前に学習し、対面授業で実践する(実習・演習等)。

事例を設定し、それに対する考えを事前にまとめ、対面授業で発表や討論をする。

事前・事後学習では、どのようなメディアを選ぶのか等、その方略も重要なポイントとなります。

最終課題のブラッシュ・アップと

次回授業への発展・応用

最終課題のブラッシュアップと

次回授業への発展・応用

反転授業を用いた授業の例

授業

知識の伝達・疑問点の解決 演習・応用・実践

ディスカッション・発表など(学生が考える時間)講義

(教員が説明する時間)講義

(教員が説明する時間)

Flipped

反転ディスカッション・

発表などで理解を深める(学生が考える時間)

ディスカッション・発表などで理解を深める(学生が考える時間)

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