4
1.日本の地価の推移 わが国の地価データで最も代表的な指標は,国土交通 省が毎年公表している「地価公示」であるといえる。地 価公示は,地価公示法(昭和44年法律第49号)の制定に ともない,昭和45年から公表されている。したがって, 法が施行される昭和45年以前のデータは整備されていな い。つまり,わが国は,公的な地価データは約45年間の 歴史しかもっていないといえる。 ここでは,戦後のわが国の地価の変動を概観するため に,公的な指標以外で最も古くから整備されている地価 の指標として,一般財団法人 日本不動産研究所の「市 街地価格指数」を用いる。「市街地価格指数」は昭和11 年9月から旧日本勧業銀行が宅地価格を調査していたも のを,昭和34年3月から当研究所が承継し,調査を実施 しているもので,戦前からの地価データを有している。 「市街地価格指数」は,全国主要223市で選定された宅地 の調査地点について,当研究所の不動産鑑定士等が年2 回価格調査を行っている。ここでは,「市街地価格指数」 のデータ(図1)を用いて,わが国の戦後の地価変動を 概観する。 「市街地価格指数」によれば,わが国の戦後の地価動 向のなかで,上昇局面を迎えたのは次の4回であるとい える。 1960年代初頭の高度経済成長期における地価高騰。戦 後の好景気を背景に工業地の需要が増大したことによ る地価の上昇。 1970年代初めの「日本列島改造論」による開発ブーム や過剰流動性を背景に,土地の実需のみならず投機的 需要の拡大による地価の上昇。 1980年代後半から1990年代初頭にかけてのいわゆる 「土地バブル」による商業地から始まった地価の上昇。 第4の地価上昇はに比較すると小さな上昇では あったが,2000年代初頭の不動産の証券化をきっかけ としたミニバブル的な地価の上昇。 わが国の戦後の地価の変動は,それぞれの時代の経済 情勢を反映させて特徴的な上昇あるいは下落する局面が ある。最近では,2020年東京オリンピック・パラリンピ ックの招致決定に象徴されるような一部の経済情勢が回 復していることを理由として,再び地価が上昇する傾向 にある。 2.平成26年地価公示にみる地価の上昇地点 わが国の公的な地価の指標の代表である「地価公示」 のデータ *1 を用いて,最近の地価の動向を概観する。 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 31 336 341 346 351 356 361 3338313 318 323 326 3(%) 商業地 住宅地 工業地 1図1 全国市街地価格指数 地図にみる現代世界 地価にみる日本の今 一般財団法人 日本不動産研究所 企画部 伊藤 裕幸 (不動産鑑定士) 3

地価にみる日本の今 - 帝国書院...落を示している。三大都市圏では,住宅地が0.5%の上昇, 商業地では1.6%の上昇を示している。つまり,三大都

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Page 1: 地価にみる日本の今 - 帝国書院...落を示している。三大都市圏では,住宅地が0.5%の上昇, 商業地では1.6%の上昇を示している。つまり,三大都

1.日本の地価の推移

 わが国の地価データで最も代表的な指標は,国土交通

省が毎年公表している「地価公示」であるといえる。地

価公示は,地価公示法(昭和44年法律第49号)の制定に

ともない,昭和45年から公表されている。したがって,

法が施行される昭和45年以前のデータは整備されていな

い。つまり,わが国は,公的な地価データは約45年間の

歴史しかもっていないといえる。

 ここでは,戦後のわが国の地価の変動を概観するため

に,公的な指標以外で最も古くから整備されている地価

の指標として,一般財団法人 日本不動産研究所の「市

街地価格指数」を用いる。「市街地価格指数」は昭和11

年9月から旧日本勧業銀行が宅地価格を調査していたも

のを,昭和34年3月から当研究所が承継し,調査を実施

しているもので,戦前からの地価データを有している。

「市街地価格指数」は,全国主要223市で選定された宅地

の調査地点について,当研究所の不動産鑑定士等が年2

回価格調査を行っている。ここでは,「市街地価格指数」

のデータ(図1)を用いて,わが国の戦後の地価変動を

概観する。

 「市街地価格指数」によれば,わが国の戦後の地価動

向のなかで,上昇局面を迎えたのは次の4回であるとい

える。

❶1960年代初頭の高度経済成長期における地価高騰。戦

後の好景気を背景に工業地の需要が増大したことによ

る地価の上昇。

❷1970年代初めの「日本列島改造論」による開発ブーム

や過剰流動性を背景に,土地の実需のみならず投機的

需要の拡大による地価の上昇。

❸1980年代後半から1990年代初頭にかけてのいわゆる

「土地バブル」による商業地から始まった地価の上昇。

❹第4の地価上昇は❶〜❸に比較すると小さな上昇では

あったが,2000年代初頭の不動産の証券化をきっかけ

としたミニバブル的な地価の上昇。

 わが国の戦後の地価の変動は,それぞれの時代の経済

情勢を反映させて特徴的な上昇あるいは下落する局面が

ある。最近では,2020年東京オリンピック・パラリンピ

ックの招致決定に象徴されるような一部の経済情勢が回

復していることを理由として,再び地価が上昇する傾向

にある。

2.平成26年地価公示にみる地価の上昇地点

 わが国の公的な地価の指標の代表である「地価公示」

のデータ*1を用いて,最近の地価の動向を概観する。

前年同期比

-20

-10

0

10

20

30

40

50

60

昭和31年3月

  36年3月

  41年3月

  46年3月

  51年3月

  56年3月

  61年3月

平成3年3月

  8年3月

  13年3月

  18年3月

  23年3月

  26年3月

(%)

商業地

住宅地

工業地

東京オリンピック

第1次石油危機

バブル崩壊

図1 全国市街地価格指数

地図にみる現代世界

   地価にみる日本の今

一般財団法人 日本不動産研究所 企画部 伊藤 裕幸(不動産鑑定士)

3

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(1)地価公示とは

 地価公示は,国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1回

標準地の正常な価格を公示し,一般の土地の取引価格に

対して指標を与えるとともに,公共事業用地の取得価格

算定の規準とされ,また,国土利用計画法にもとづく土

地取引の規制における土地価格算定の規準とされる等に

より,適正な地価の形成に寄与することを目的としてい

る。最も直近の地価公示は,平成26年1月1日時点のも

のである。平成27年1月1日時点の調査結果については,

3月下旬を待たなければ公表されない。したがって,こ

こでは平成26年地価公示の調査結果を用いる。平成26年

地価公示は,市街化区域18,267地点,市街化調整区域

1,268地点,その他の都市計画区域3,825地点,都市計画

区域外の公示区域20地点の合計23,380地点の標準地を選

定し,地価公示法第2条にもとづいて,土地鑑定委員会

が,2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め,その結

果を審査し,必要な調整を行って,当該標準地の1㎡あ

たりの正常な価格を判定している。

 平成26年地価公示の1年間の変動率は表1のとおりで

ある。

 全国平均で住宅地は0.6%の下落,商業地は0.5%の下

落を示している。三大都市圏では,住宅地が0.5%の上昇,

商業地では1.6%の上昇を示している。つまり,三大都

市圏のような都市部では,住宅地,商業地ともに上昇に

転換しつつあり,一方の地方圏の住宅地,商業地はいま

だに下落傾向にある。このように,現在のわが国の地価

の変動は,都市部と地方で2極化がみられる傾向にある。

(2)開発による地価の上昇を示した地点

 平成26年地価公示の調査結果のなかで,とくに「開発」

によって地価の上昇を示している地点について,特徴的

な地点をあげると次の六つの地点が該当する。

(3)交通アクセスの向上による地価の上昇を示した地点

 平成26年地価公示の調査結果のなかで,とくに「交通

アクセスの向上」によって地価の上昇を示している地点

について,特徴的な地点をあげると次の五つの地点が該

当する。

①東京都中央区 (中央-3)

勝どき駅から200mの地点。2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック会場至近の立地としてマンション素地等の需要が高まり,地価の上昇の動きがみられる。■平成26年1月1日時点の地価は954,000円/㎡(1年間で10.9%上昇)

②千葉県木更津市 (木更津-26)

アクアラインの開発効果や大型商業施設の進出による生活利便性の向上に加え,地域の熟成に伴い区画整理地内の住宅地需要が高まり,地価の上昇の動きがみられる。■平成26年1月1日時点の地価は24,500円/㎡(1年間で5.2%上昇)

③神奈川県川崎市 幸区(幸5-2)

川崎駅西口周辺の再開発事業として東芝のオフィスビルが平成25年10月に開業し,ラゾーナ川崎プラザの店舗入れ替えや改装などにより,集客数が増え,商業地の需要が高まり,地価の上昇の動きがみられる。■平成26年1月1日時点の地価は942,000円/㎡(1年間で11.5%上昇)

④愛知県名古屋市 中村区(名古屋 中村5-1)

地下鉄名古屋駅80mの地点。名古屋駅東口の「名駅エリア」は,ハイグレードビルが建ち並び,今後も名古屋駅周辺の再開発の進捗等,同地区のオフィスエリアとしてのさらなる発展が期待されることから,需要が高まり,地価の上昇につながっている。■ 平 成 26 年 1 月 1 日 時 点 の 地 価 は5,560,000円/㎡(1年間で10.1%上昇)

⑤大阪府大阪市北 区(大阪北5-28)

大阪駅に近接する地点。大阪駅周辺では,平成25年4月にグランフロント大阪が開業したほか,複数の大手百貨店で増床,建て替え,リニューアル等の計画が進んでおり,地域の商業収益向上の期待感が増している。■ 平 成 26 年 1 月 1 日 時 点 の 地 価 は9,150,000円/㎡(1年間で8.0%上昇)

⑥広島県広島市東 区(広島東5-1)

広島駅600mの地点。広島駅北口の再開発事業の一部が竣工し,さらに平成27年度以降高精度放射線医療センター,大規模商業施設等の進出が決定され,地域の商業性向上の期待感が増している。■平成26年1月1日時点の地価は343,000円/㎡(1年間で9.2%上昇)

①宮城県仙台市太 白区(太白-14)

平成27年開業予定の仙台市営地下鉄東西線の新駅「八木山動物公園」駅の開業に伴い,利便性の向上から,住宅地の需要が高まり,地価の上昇がみられる。■平成26年1月1日時点の地価は78,000円/㎡(1年間で11.4%上昇)

②千葉県市川市 (市川9-1)

平成29年度東京外環自動車道(千葉県区間,松戸市小山〜市川市高谷間)開通に向け整備が進んでおり,物流施設の需要が堅調となっている。■平成 26 年1月1日時点の地価は118,000円/㎡(1年間で7.3%上昇)

③東京都新宿区 (新宿5-24)

新宿3丁目駅至近の地点。平成25年3月に東急東横線と東京メトロ副都心線が相互乗り入れし直通運転になったことから,「新宿3丁目」駅の乗降客が急増,百貨店を核とした商業施設の商圏が一段と拡大し,新規ブランド店舗出店の動きがみられる。■ 平 成 26 年 1 月 1 日 時 点 の 地 価 は19,900,000円/㎡(1年間で9.9%上昇)

表1 平成26年地価公示の1年間の変動率

住宅地 商業地 工業地

平成25年 変動率

平成26年 平成25年 変動率

平成26年 平成25年 変動率

平成26年

変動率 地点数 変動率 地点数 変動率 地点数

東京圏 △ 0.7 0.7 4,201 △ 0.5 1.7 1,410 △ 0.5 0.6 191

大阪圏 △ 0.9 △ 0.1 2,154 △ 0.5 1.4 626 △ 1.7 △ 0.5 165

名古屋圏 0.0 1.1 1,097 △ 0.3 1.8 423 △ 1.1 △ 0.6 87

三大都市圏平均 △ 0.6 0.5 7,452 △ 0.5 1.6 2,459 △ 1.1 0.0 443

地方平均 △ 2.5 △ 1.5 8,829 △ 3.3 △ 2.1 3,374 △ 3.2 △ 2.2 460

全国平均 △ 1.6 △ 0.6 16,281 △ 2.1 △ 0.5 5,833 △ 2.2 △ 1.1 903

4

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(4)観光・リゾート需要等による地価の上昇を示した地点

 平成26年地価公示の調査結果のなかで,とくに「観光・

リゾート需要等」によって地価の上昇を示している地点

について,特徴的な地点をあげると次の二つの地点が該

当する。

3.地価が下落している地点

 これまで,平成26年地価公示のデータを用いて,わが

国の地価動向のうち,「開発」や「交通アクセスの向上」,

あるいは「観光・リゾート需要等」による地価の上昇を

示した地点をみた。しかし,前記2で述べたとおり地価

は2極化傾向にあり,とくに地方圏ではいまだに下落傾

向にある地域が多い。

 ここでは,地価の下落が特徴的な地域として高松市を

例にあげる。高松市の中心商業地の「中央通り」には,

地価公示の標準地(高松5-1 :高松市磨屋町)が存し,

大手生命・損保ビル等が建ち並ぶ四国随一の事務所街を

形成している。図2をみてほしい。地価は,バブル期の

平成3年頃に1㎡あたり580万円の最高値を示した。し

かし,これをピークとして高松市の地価は下落を続け,

平成18年には1㎡あたり54万円になった。つまり,ピー

ク時の10分の1の価値となってしまったのである。その

後,平成20年には,他の中核都市との相対的割安感や中

心部商店街の再開発の影響で,1㎡あたり57万円と一時

的に上昇傾向を示したが,リーマン・ショックによる景

気の低迷により,不動産投資ファンド等が撤退し,需要

は再び弱含みとなった。その結果,地価は再び下落傾向

に転じ,年々下がり続け,平成26年には1㎡あたり39万

円(1年間で−4.4%の下落)となった。

 つまり,平成26年の地価はピーク時の地価の6.7%の

価格水準まで下落した。言いかえれば,約93%の資産価

値が失われたといえる。原因としては,バブル期に地価

が異常なほど急上昇し,その反動で下落したものとみら

れる。しかも,昭和63年に瀬戸大橋が開通し,その翌年

には高松空港が開港したが,このインフラ整備が移動時

間の短縮を生み,バブル崩壊後,企業の支社・支店が他

県へ流出し,瀬戸内海の連絡船時代に高松が築いた支店

経済都市の拠点性が薄れてしまったことが原因の一つと

して考えられる。

 このように,都心部の一部の地価の上昇を除いては,

地方都市ではバブル崩壊以降,人口減少などの背景から,

慢性的な地価下落を続けている地域が多い。

 現時点でも依然として,高松市の地価は下落を続けて

①京都府京都市東 山区(東山5-7)

京阪本線,祇園四条駅300mの地点。国内外からの観光客の増加に伴い,ホテル稼働率は上昇し,集客数も増したことで,店舗の新規出店の需要が高まり,地価の上昇がみられる。

(祇園地区の一等地)■平成26年1月1日時点の地価は920,000円/㎡(1年間で6.4%上昇)

②三重県伊勢市 (伊勢5-3)

伊勢神宮(内宮)の鳥居前町であり,参拝客を顧客として商勢は著しく,遷宮以降も新社殿への安定した参拝客が期待できるため,商業地の需要が高まり,地価の上昇がみられる。■平成26年1月1日時点の地価は250,000円/㎡(1年間で8.7%上昇)

④東京都練馬区 (練馬-55)

小竹向原駅140mの地点。東京メトロ副都心線,東急東横線が相互に乗り入れ,三つの鉄道路線が利用可能。最寄り駅の「小竹向原」駅は急行停車駅(副都心線)で,平成25年3月に東横線が乗り入れたことで,一段と住宅地の需要が増加,地価の上昇がみられる。■平成26年1月1日時点の地価は436,000円/㎡(1年間で7.4%上昇)

⑤石川県金沢市 (金沢5-13)

金沢駅から320mの地点。平成27年春に予定される北陸新幹線開業(長野駅〜金沢駅)を見据えて商業地への需要は堅調となっている。■平成26年1月1日時点の地価は293,000円/㎡(1年間で11.4%上昇)

-40

-20

0

20

40

60

80

100

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000(千円)

公示価格

変動率

(%)

平成2

平成3

平成4

平成5

平成6

平成7

平成8

平成9

平成10

平成11

平成12

平成13

平成14

平成15

平成16

平成17

平成18

平成19

平成20

平成21

平成22

平成23

平成24

平成25

平成26(年)

地価公示(高松5-1)

公示価格 変動率

※平成18年選定替え

図2 平成26年地価公示のデータ(高松市)

5

Page 4: 地価にみる日本の今 - 帝国書院...落を示している。三大都市圏では,住宅地が0.5%の上昇, 商業地では1.6%の上昇を示している。つまり,三大都

いる。しかし,アベノミクスによる景気浮揚策によって

高松市の地価の下落幅も縮小し始め,下落に歯止めがか

かりつつあるのも事実である。

4.現在の地価の動向

 これまで,平成26年地価公示のデータをベースにわが

国の地価動向を概観してきた。しかし,平成26年地価公

示は平成26年1月1日時点の価格を示しているものであ

り,最も直近の地価の動向を示しているとは言いがたい。

そこで,毎月1日時点の全国の地価の動向を公表してい

る一般財団法人 日本不動産研究所「全国地価動向マッ

プ」のデータ*2を用いて,現在の地価の動向を概観する。

 平成26年10月1日時点の各都道府県の全国の地価の動

向は図3,4のとおりである。エリアごとに「上昇」,「横

ばい」,「下落」の3種類の矢印に分類して地価の動向を

表示している。

 エリアごとの地価動向は,四国エリアを除いて,住宅

地,商業地ともに全国的におおむね上昇傾向にある。

 しかし,各県ごとに細かくみると,地価動向は一様に

上昇しているわけではないことがよくわかる。例えば,

中国エリアにおいても,住宅地の地価動向は図5のとお

り,広島県では「上昇」傾向を示しているが,岡山県で

は「横ばい」になり,山陰の鳥取県,島根県,そして山

口県では依然として「下落」している傾向にある。

 このように,直近の時点において,同じエリアにおい

ても各県によって地価の2極化が鮮明になっていること

がわかる。

5.まとめ

 これまで,各種の地価データを用いて地価動向をみた

が,地域による地価の2極化が深刻化していることがわ

かった。このような地価の2極化が発生する理由には,

人口減少や地域経済の衰退などさまざまなことが考えら

れる。共通していえることは,開発等による活性化策や,

にぎわいを取り戻す施策がなければ,地価の下落を食い

止めることはできないのが現実である。地価が上昇する

ことは必ずしもよいことばかりではない。地価の上昇に

伴い固定資産税等の負担が増える可能性もある。しかし,

地域の活力を測る指標としては,土地の需要が少なくて

地価が下落し続けるよりも,地域が活性化し土地の需要

が増大し,その結果として地価が上昇することは,地域

としては歓迎すべきことかもしれない。

 人口急減・超高齢化というわが国が直面する大きな課

題に対し政府が一体となって取り組み,各地域がそれぞ

れの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生できる

よう,「まち・ひと・しごと創生法案」が,平成26年11月,

可決・成立した。

 こういった政策によって,地域が活性化し,にぎわい

を取り戻すことによって地価の2極化が解消されること

に期待したい。

*1今回採用した地価公示のデータは,国土交通省のホームページの「土地総合情報ライブラリー」で公表されており,誰でもダウンロードすることが可能である(http://tochi.mlit.go.jp/kakaku/chikakouji-kakaku)。

*2「全国地価動向マップ」は一般財団法人 日本不動産研究所のホームページで公表されており,誰でも無料で閲覧することができる

 (http://www.reinet.or.jp/?page_id=366)。

0 400km200

北海道北海道

東北東北

関東関東

北陸北陸

中部中部近畿近畿

中国中国

四国四国九州・沖縄九州・沖縄

上昇上昇

[平成26年10月1日現在][平成26年10月1日現在]

下降下降横ばい横ばい

上昇上昇

[平成26年10月1日現在][平成26年10月1日現在]

下降下降横ばい横ばい

岡山県岡山県

広島県広島県

0 100km

島根県島根県

鳥取県鳥取県

山口県山口県

北海道北海道

東北東北

関東関東

上昇上昇

[平成26年10月1日現在][平成26年10月1日現在]

下降下降

北陸北陸

中部中部近畿近畿

中国中国

四国四国九州・沖縄九州・沖縄

横ばい横ばい

0 400km200

図3 住宅地の地価情報

図5 中国地方の住宅地の地価情報

図4 商業地の地価情報

※エリアの区分けは,一般財団法人 日本不動産研究所「全国地価動向マップ」による。

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