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1 はじめに
Youtubeで動画を見ていると、必ずマインクラフト(以降「マイクラ」と表記)の動画を見かける。これは
私の視聴傾向に基づいているだけかもしれないが、実際に Youtubeで「minecraft」と検索をかけると約
147,000,000件もの動画がヒットする。「マインクラフト」で検索した場合でも約2,320,000件ヒットすることか
ら、世界だけではなく日本でも絶大な人気を誇っていることがわかる。累計売上本数も、公式の発表で
一億本以上とあり、これは全世界の歴代ゲームソフトの中で第二位の本数である。
私もマイクラのプレイヤーの一人であり、その魅力に惹かれた一人である。しかし、マイクラにはゲーム
クリアという明確なゴールはなく、プレイスタイルや目的などはプレイヤーに委ねられている。また、素材
収拾や建築などがメインコンテンツであるため、他のゲームに比べれば地味という印象を受ける。ここで
感じたのは、「どうしてこんなゲームが大ヒットしたのか」という疑問である。マイクラを調べていくうちに、ヒ
ットするゲームの法則がわかるかもしれない、疑問が解けるに違いないと考えた。
元々インディーズゲームであったマイクラがなぜこれほどの大ヒットに至ったのか?なぜ売上を伸ばし
続けているのか?これらの疑問に対し、仮説と検証を行いマイクラヒットの理由を探りたいと思う。
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2 マインクラフトとは
まずはマイクラについて、どのようなゲームなのかを説明し、その人気を、販売実績をもとに証明する。
Ⅰ どんなゲームか
概要
開発元はスウェーデンの「Mojang」。その後「マイクロソフト」が買収し、開発したチーム・スタッフはその
ままに、現在もアップデートが行われている。提供されている媒体は、「PC版」「xboxや ps4などのコンソ
ール版」「スマホやタブレット向けの Pocket Edition版(以降「PE版」と表記)」がある。
1m×1m×1mの立方体のブロックで構成されており、プレイヤーはブロックを設置・破壊することができ
る。このゲームの特徴として、Crafting と呼ばれる要素があり、アイテムやブロックを組み合わせ、新たな
アイテムやブロックを製作することができる。また、敵対MOB(moving objectの略)や、満腹度・体力が
存在していることから、サバイバルゲームとしての側面を持つ。ただし、難易度によって敵対 MOBがで
なくなったり、死ななくなることから、プレイヤーのプレイスタイル次第でどのようなゲームになるか変わる。
日々アップデートが行われているが、一度製品版を購入すれば、追加で支払うことなく、永久にプレイ
することができる。
MODの存在
これは PC版のみの要素であるが、MOD(Modification)といわれる改造データをゲームに導入するこ
とによって、アイテムやキャラクターを追加したり、グラフィックを変えることができるようになる。マイクラの
MODを集めた「CURSE」というサイトでは、5792個という多くのMODがダウンロードでき、そのほとんど
が有志によって作成されたもので、無料で利用することができる。
アップデートやMODの存在により、他のゲームとは異なり、そのプレイスタイルから世界観まで、自分
好みにすることができる。
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Ⅱ 人気の実態
【図表1:マイクラの全世界累計売上数、及び各地域の割合】
これは2016年6月に、Mojang公式 HPにて公開されたもので、全世界で累計販売本数が一億本を突
破したことを示しており、この売上数は歴代のゲームソフトで世界二位にあたる大ヒットである。また、図
表1にはマイクラの媒体を主に三種類(PC版・コンソール版・PE版)に分け、その割合を各地域ごとに表
している。国単位での売上に関する統計はなかったが、マイクラはスウェーデン発であり、口コミによって
広まったインディーズゲームだったことを考えると、売上本数の多くが欧州であることが予想される。
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【図表2:リリース後の販売数(PC版・PE版)】
これはマイクラがリリースされてから2014年8月までの販売数をグラフにしたものである。これにはコンソ
ール版が含まれていないが、図表からわかるように販売数が衰えていないことが見て取れる。これはマ
イクラが「アーリーアクセス」と呼ばれるリリース方法をとっていることもあるのだが、これについては後ほど
触れていく。
ゲームソフトは販売直後が最も売り上げが高く、その後減っていくのが一般的である。それと相反する
このグラフの伸びは、マイクラにしかないヒットする特徴があるのではないか。
また図表2では2014年時点で、スマホ・タブレット向けである「マイクラ PE版」が「マイクラ PC版」より販
売数が上であることが見て取れる。これは世界的にスマートフォンが普及したことが関係していると思わ
れる。そして、図表1でアジア地域が唯一 PE版の割合が半数以上であることから、マイクラの持続的ヒッ
トにはアジア地域が大きく関与していると考えられる。
マイクラが世界で人気であるということがわかったところで、これ以降はその人気のワケを仮説と検証で
探っていく。また、先ほどアジア地域が持続的ヒットに関与しているといったが、アジア地域でくくると検
証が難しくなるため、日本国内のみに焦点を当てようと思う。
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3 仮説と検証 Ⅰ プレイスタイルの自由度 仮説1 マイクラはいわゆる「オープンワールド」と呼ばれるゲームの一つである。「オープンワールド」とは、「舞
台となる広大な世界を自由に動き回り探索・攻略することができる」ゲームであり、特にマイクラはその傾
向が顕著である。このことから、オープンワールドと呼ばれるジャンルがマイクラヒットの理由の一つでは
ないか、という仮説をたてた。
「オープンワールド」の定義については、日本での意味が曖昧であるため、先述の通り「舞台となる広
大な世界を自由に動き回り探索・攻略することができるゲーム」とする。
検証1
仮説を検証するにあたって、PS3・PS4のソフトの売り上げをみていく。なお、スマホやタブレット向け
のアプリランキングは、基本無料のゲームが大半を占めており、オープンワールドと呼ばれるゲームが皆
無だったため、除外する。
【図表3:日本国内の PS3ソフト売上】
順位 タイトル 累計販売本数 発売日
1位 ファイナルファンタジーXⅢ 1905979 2009年12月17日
2位 ファイナルファンタジーXⅢ-2 917412 2011年12月15日
3位 バイオハザード6 837727 2012年10月4日
4位 ワンピース 海賊無双 828132 2012年3月1日
5位 グランドセフトオート V 729533 2013年10月10日
6位 メタルギアソリッド4 706461 2008年6月12日
7位 テイルズオブエクシリア 670182 2011年9月8日
8位 グランツーリスモ5 600860 2010年11月25日
9位 龍が如く5 583549 2012年12月6日
10位 龍が如く4 557771 2010年3月18日
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【図表4:日本国内の PS4ソフト売上】
順位 タイトル 累計販売本数 発売日
1位 ファイナルファンタジーXV 913127 2016年11月29日
2位 メタルギアソリッド V 436347 2015年9月2日
3位 KNACK 393745 2014年2月22日
4位 コールオブデューティブラックオプスⅢ 365302 2015年11月6日
5位 ペルソナ5 362909 2016年9月15日
6位 DARK SOULS Ⅲ 330161 2016年3月24日
7位 龍が如く6 328155 2016年12月8日
8位 ドラゴンクエストヒーローズ 321526 2015年2月26日
9位 ドラゴンクエストヒーローズⅡ 272807 2016年5月27日
10位 バトルフィールド1 245117 2016年10月21日
図表3と図表4はそれぞれ PS3・PS4の売上のランキングであり、赤色はオープンワールドに該当するゲ
ームである。PS3に比べ、PS4の方が上位にオープンワールドがランクインしていることから、仮説1は正
しいようだ。
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Ⅱ 様々な媒体 仮説2
マイクラは PC版・コンソール版・PE版と、様々な媒体でプレイすることができる。また、マイクラの実況
動画や配信などは他のゲームに比べ圧倒的に数が多いために、マイクラを知る機会が多いと考えられ
る。このハードや媒体を選ばない柔軟さがマイクラの人気の理由ではないか、という仮説をたてた。
検証2
仮説を検証するにあたって、株式会社コロプラが運営する「スマートアンサー」によるアンケートを利用
する。なおこのデータは、日本国内の男女合わせて25301人を対象としたアンケートである。
【図表5:マイクラの認知率とプレイ経験】
図表5はマイクラの認知率とプレイ経験を示したものだが、若い10代~20代、特に男性が「遊んだことが
ある」と回答している。また、「知っているが遊んだことはない」と回答した割合は、10代男性を除き「遊ん
だことがある」よりも多いことがわかる。
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【図表6:マイクラのプレイ動画を見たことがあるか】
図表6はマイクラのプレイ動画や実況動画を見たことがある割合を示しているが、図表5と同様に10代
~20代の若者、特に男性の割合が高いことがわかる。
【図表7:マイクラのプレイ動画を見たことある人のプレイ経験】
図表7はマイクラのプレイ動画を見た人に中で、プレイ経験はどの程度あるのか示したものだが、男女
ともに割合が全体的に高いのが見て取れる。このことから、マイクラの動画を見たことがあることと、プレイ
経験は相関関係にあるといえる。
図表5~7を踏まえて、10代~20代の若者がマイクラの主な購入層であることがわかった。次にハードの
面から、マイクラ人気を探る。
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【図表8:マイクラを遊んだことのある機種(20代以上)】
図表8は、20代以上の男女がマイクラを遊んだ機種の割合を示している。コンソール版が少なく、圧倒
的に多いのは PC版と PE版である。また、PC版の割合のほうが高いことから、図表1・図表2で示したマ
イクラの持続的ヒットとはあまり関係がないようだ。
【図表9:マイクラを遊んだことのある機種(10代限定)】
図表9は、10代の男女がマイクラを遊んだ機種の割合を示している。20代以上と同様にコンソール版
が少ないが、明らかに PE版の割合が高いことが見て取れる。ここで図表10を見てもらいたい。
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【図表10:青少年のインターネットの利用内容】
※「いずれかの機器」とは「スマートフォン」を含む調査した機器のいずれかを利用していると回答した青
少年の集計
図表10は内閣府が青少年(小学生~高校生)を対象に、インターネットの利用内容を調査したものだ
が、全体の傾向として「動画視聴」「ゲーム」を頻繁に利用していることが見て取れる。
図表9と図表10を踏まえて、10代の若者は PC版よりも PE版をプレイする傾向があり、その潜在的プレ
イヤー、つまりマイクラをプレイしたことがない若者も PE版を購入する可能性が高いことがわかった。
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検証の結果、マイクラの主なプレイヤー層は10代~20代の若者であり、その若者は PC版よりスマホタ
ブレット向けの PE版をプレイしていることが分かった。PC版だけではなく PE版も存在するマイクラの柔
軟性が、人気の理由であるという仮説2は正しかった。
4 結論 仮説1・仮説2により、「マインクラフト」がヒットし続ける理由は、以下の二点だということがわかった。
① プレイスタイルが自由な「オープンワールド」というジャンルが人気であり、その特徴を活かしたゲー
ムシステム作りに成功したから。
② 様々な媒体に展開することで、潜在的ニーズを生み出し、持続的なヒットにつながったため。
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5 おわりに マインクラフトというゲームの魅力は、語りつくせないものがあり、論理的に説明するには難しかったと
反省しています。また、資料を集める際に、海外のサイトばかりで資料自体も少なく苦労したことが、三
年次にグループ発表した「Youtube Red」に似ており、同じ轍を踏むとは恥ずかしい限りです。しかし、マ
イクラの実況動画を見ていても PC版ばかりで、販売数的には PE版のほうが売れているというのは驚き
ました。どこでもゲームができる気軽さという点に着目すればよかったと、今更ながら感じています。おそ
らくこの卒業論文は先生に「なにがおもしろいの?」どころか「なにもおもしろくない」といわれるくらい論
理展開もあやふやですが、大学生らしい卒業論文という機会を与えてくださったこと、ゼミに入れてくだ
さったこと、感謝しています。
6 参考文献 内閣府 青少年のインターネット利用環境実態調査
http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/net-jittai_list.html
Mojang 累計販売数一億本突破
https://mojang.com/2016/06/weve-sold-minecraft-many-many-times-look/
Wikipedia ”マインクラフト”
https://ja.wikipedia.org/wiki/Minecraft
スマートアンサー マインクラフトに関する調査結果
http://smartanswer.colopl-research.jp/reports/d68b8c85-27a0-499f-9845-3672b9256548
PS3ソフト累計売上
https://matome.naver.jp/odai/2133803262257048101
PS4ソフト累計売上
https://matome.naver.jp/odai/2145252368119374701
マインクラフトがついに全世界売上一億本突破/GIGAZINE
http://gigazine.net/news/20160603-minecraft-sales/
マイクロソフトがMojangを買収/GIGAZINE
http://gigazine.net/news/20140916-microsoft-acquired-minecraft/
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