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日本ブランド発信事業 南米・チリ・ペルーにて日本のファッションブランド『BANSAN』発信 派遣実施期間:8月16日~27日 2016年9月 BANSAN : 伴真由子 <目的> ペルー・チリのファッション業界人へのアプローチと、発信。 BANSANを通じて、日本の文化、ファッションに興味を持って頂き、国際交流の促進、 ビジネスへと繋げる。 ペルーでは、アルパカの糸によって、今後のブランドへのアイテムに繋げられるか打診。 チリでは、日本のファッションブランドがビジネスチャンスになれるかどうか、現地調査 とショップバイヤーへの商談。 将来的な目標として、日本の商品の消費・流通が拡大し、海外ビジネス展開に繋げられる ような方法を模索。 <出張報告> 8月16日:移動 8月17日:ペルー(リマ・貿易観光促進庁:PROMERU講堂) 講演会・プレスとのインタビュー 約120名の方に集まって頂き、『BANSANを通してみる日本のファッション』について話 しました。 ラストにはモデル5名による簡単な形式のショーも行い、質疑応答では数々の質問がきま した。WEBでも生配信中だったので、そこからも質問が来たりと、日本についてみなさ ん興味津々でした。 グローカル通信第92号

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日本ブランド発信事業 南米・チリ・ペルーにて日本のファッションブランド『BANSAN』発信

派遣実施期間:8月16日~27日 2016年9月

BANSAN : 伴真由子 <目的> ペルー・チリのファッション業界人へのアプローチと、発信。 BANSANを通じて、日本の文化、ファッションに興味を持って頂き、国際交流の促進、ビジネスへと繋げる。 ペルーでは、アルパカの糸によって、今後のブランドへのアイテムに繋げられるか打診。 チリでは、日本のファッションブランドがビジネスチャンスになれるかどうか、現地調査とショップバイヤーへの商談。 将来的な目標として、日本の商品の消費・流通が拡大し、海外ビジネス展開に繋げられるような方法を模索。 !!<出張報告> 8月16日:移動 8月17日:ペルー(リマ・貿易観光促進庁:PROMERU講堂) 講演会・プレスとのインタビュー !約120名の方に集まって頂き、『BANSANを通してみる日本のファッション』について話しました。 ラストにはモデル5名による簡単な形式のショーも行い、質疑応答では数々の質問がきました。WEBでも生配信中だったので、そこからも質問が来たりと、日本についてみなさん興味津々でした。

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                          *ショーの様子 8月18日:ペルー アレキパでの繊維産業見学 首都リマより、飛行機で移動すること約2時間。 標高3000Mの街、アレキパでは『アルパカ糸』の産業が盛んです。

はじめに、アルパカの糸について、どのようにして糸になるのかを見学しました。 標高5000M地点に生息するアルパカを年に1度の毛刈りで、毛を取ります。 そこから、糸になるまでの果てしない道のりを知りました。 (選別、ゴミを取り除き、何度も何度も撚りをかけ、染色、巻き直し…)

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午後は、アルパカの糸でニットを作っている現地の、婦人ニット協会へ行き、中国産に苦戦している現状と、どうしたらもっと販売出来るかという意見交換を行いました。 日本の中小工場の様な悩みは遠くのペルーでも、どこも同じなんだと思い、私なりにアドバイスをしました。 !8月19日:ペルー ワークショプ1回目・大使公邸レセプション 『Nina Design』ファッションスクールの皆さんとワークショップを行いました。 日本の和服の歴史を説明した後に、実物の着物と帯を見て頂き、その後、古着の着物地を使用した、『飾り襟』を作ってもらいます。 古い着物地をとても美しいと、喜んでくれています。 一体、どんな襟ができるのか。 日本と、ペルーの感覚をミックスしたワークショップです。 !!!!!!!!!!!!!!!!午後は、大使公邸でレセプションを開催しました。 実際に、手に取れる様にまた試着もできるようなディスプレイにしたので、洋服を手に取ったり、試着する方も沢山いらっしゃいました。

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8月20日:ペルー 紡糸工場見学・『ガマラ』地区見学・ワークショップ2回目 リマ市内の大きな紡糸工場へ。丁度糸が最盛期の時に案内してもらいました。 うどんの用に太くて柔らかいアルパカの糸が、様々な機会にかけられて、どんどん細く、しっかりとした糸になるまでを見学しました。

アレキパでアルパカの毛の仕分けをしていた女性に想いをはせながら、自分が持っている、そしてこれから沢山作るであろう沢山のBANSANのセーターのことも考えた時間でした。きっと、ニットをデザインする時にこの長い道のりと、人の手を思い出すんだろうと。!『ガマラ』と呼ばれるその地区は、ファッションと言うよりも洋服のカオスなそして小さな製作工場でした。 エレベーターの止まった10階建てのビルの中には畳6畳程のスペースで、ベルトループだけを作る店、ひたすらアイロンだけかける店…と、ひとつの店の持つ仕事はたった一つなのに、1階から10階迄の各店に頼めば、一着の洋服ができてしまうと言うのです。 まさにそれは、謎の空間。 汚れた床の上に、大量に積み上げられた服。服にまみれた、床の汚れた、アイロンの傍らお弁当を食べながら、ひたすらに従業員が洋服を作りあげるカオスな製作空間でした。 そして、これもしっかりと洋服なんだと。       その他にも、ローカルな民芸屋さんを見学。現地の色の組み合わせに脱帽です。

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ワークショップ2回目は、近年の日本のファッションの流行を解説。 『ギャル』や『ロリータファッション』の説明になると、皆さん笑顔でうなずきます。広く、日本の近年のファッションが伝わっているんだと感じます。 飾り襟も完成!『インカの歴史と日本の歴史を組み合わせた』『アマゾンの風景』をイメージしたコンセプトなど、その発想元は流石ぺルーです。

!!8月21日:移動 !8月22日:チリ 展示準備・展示開催・オープニングパーティ

                            *展示会の様子 !グローカル通信第92号

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午前中に、アンドレス・ベジョ大学ギャラリーで展示の準備を行い、午後のオープニングパーティーに備えました。 ペルーとの街の違い、文化の違い、学校の生徒の服装の違いに驚きます。 プリント柄、ジャカードニットに大きな反応をもらいました。 その合間を縫って、日本貿易振興機構(ジェトロ)へ行き、チリの関税や、税金、消費者の動向について伺いました。 チリ人が年間で洋服を購入する枚数は15枚。南アメリカ大陸では1番多い数字ですが、その金額は合計1万5千円。一枚あたり、三千円の洋服という計算になります。 いかに、ファストファッションが主流か、そしてブランドというブランドは、誰もが知ってるハイブランドしか出回っていないのが現状でした。 日本のファッションブランドは、まだ介入していない、そして、とても課題の多いチリ市場だと感じます。 !!8月23日:チリ ワークショップ1回目・チリの文化についての美術館見学・ 若手デザイナーの発信地『ドラッグストア』見学 ペルーと同じ内容のワークショップですが、そのものつくりの違いをじっくりと感じる事

ができました。 その場で考える事の多かったペルーの生徒とは違い、みんなぐんぐん進めて行きます。

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午後は、美術館へ行きました。 !文字を持たない民族、マプチェ族。 全てを語り次ぎ、後世に伝えてきた民族です。チリの首都、サンティアゴにより約1000キロ南部にいる民族なのですが、その装身具は圧巻でした。すでに、装身具は国の内外での取引は禁止され、売買できません。 しかし、もともとマプチェの人々の現在の状況では、金銭面で、あまり恵まれず、首都サンティアゴに来ては、お手伝いさんの様な仕事につくのが殆どです。 時には、お金に困って、代々受け継がれてきた大切な装身具を、質屋に入れてしまうことも。豊かさとは一体何か、考えさせられた大変貴重な時間でした。 !!

その後、若手デザイナーの発信地『ドラッグストア』を見学しました。 チリで、ファッションにお金をかける人たちはまだまだ少なく、そんな中でも物を作り続けている若いデザイナー達は、4組ごとに、お店を借りてそこで洋服を販売しています。当然、そこで販売する価格は値段を下げ通常お店に卸す価格とは分けて、『現実的に売れる値段』をつけていました。ショップの家賃を4分割し、売れる価格で(つまり通常の小売店価格とは分けて)販売し、お店をまわしています。 その、難しいチリのマーケットにむける切実な姿勢と、日本のブランドには無い、デザイナー同士で協力し合う運営方法は新鮮でした。 !8月24日:チリ セレクトショップ訪問・ワークショップ2回目・講演会 チリでの高級ブティックが立ち並ぶセレクトショップへ訪問し、日本のファッションブランドのチリ市場へのマーケットの参加、BANSAN売り込み、意見交換をバイヤーと行いました。 チリでの現状としては、セレクトショップは買い取りはせず、全て委託販売に加え、その場所代(ハンガーラック代)もブランド側が負担する方式になっていました。 これは、ブランドにとっては大きな負担です。また、各ショップバイヤーが言う事は、決まって『チリはようやく、デザインの高い洋服を買う人が増えて来た。私たちが、消費者を育てている段階だ。』と。 !

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ワークショップ2回目、飾り襟が完成しました。 !帯の裏側を使用し、糸をほどきながら洋服にしてしまう方もいて、その発想はとても面白いものばかりでした。 !全体を通すと、どちらかというと、『襟』そのものの形は変えない、生地が面白いから、そのままがいいという人が多かったです。

!講演会は、キャンパスの図書室を使用して行いました。 生徒さんがモデルとなり、実際に洋服を着て登場するシーンでは、沢山写真撮影して頂きました。 陶器の焼き物の解説に沢山興味を持って頂きました。 チリでは自国でのものつくりはあまり行われず、近隣のペルーで作った方が、安くて良いものができると、皆さん口を揃えて言います。そんな中で、この瀬戸焼きアクセサリーの行程は、なんて気が遠くなる手間のひまかかった作業だといった印象になったと思います。!8月25日:チリ ラグデザイナーLuz氏アトリエ訪問・ 日本人デザイナー箱崎氏と、その縫製現場へ訪問                   <Luz氏デザインの作品の素晴らしさに、感激>

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Luz氏には、私の作品、刺し子柄のショール柄をとても気に入って下さり、今後チリの文化『マプチェ』に関するミニコレクションを夫のいるフランスで開催してはどうかと、提案頂きました。今後、このプロジェクトをしっかりと花開く様に、進めていこうと思います。 !!!!午後は、日本人デザイナー箱崎氏と、その縫製現場へ訪問しました。 箱崎氏がチリで自身のブランドを販売しているショップへ行き、店長と意見交換。お店の運営方法等を御聞きしました。 その後、箱崎氏が依頼している縫製現場へと案内して頂きました。

とても小さな事務所にも関わらず、彼女の縫製技術の高さに感激しました。 自分の仕事に誇りを持ち、洋服を作り続けています。 !8月26日:移動 8月27日:帰国 !!!! !

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!!~まとめ~ ペルー: もともと、前職の会社では、ペルーの洋服を輸入し販売していたのでペルーの物作り、民芸品には親しみがあり、これをつくっているペルーの国の人はどんな人たちだろうと興味深かったので、実際に国を訪問することができ、大変勉強になりました。 普段、私がニット製品を作る際には、既に巻きになった状態でしか糸を見る事ができません。それはほとんどのデザイナーがそうだと思います。 ですので、今回アルパカ糸の生産背景や、紡糸工場を見学させてもらった経験は、今後、BANSANとしてニット製品を作る際に大きく影響してくると思います。とても素晴らしい経験でした。ペルーの物作りの暖かさと、文化に触れた時間でした。 そして、逆に日本の文化を多くの方に伝えることができたと思っています。 本当に、皆さん日本が好きで、生徒さんの多くは、『日本に行きたい、東京のファッションを見たい』と、言っています。日本の東京コレクションに出ている様なファッションブランド自体はまだ、全く浸透していないのが現状ですが、わかりやすい原宿系ファッションから、若者に浸透していました。今後、もっと日本のファッションブランド、そしてBANSANを浸透させる為に、インターネット・SNSでの発信を強化していくことが重要だと感じました。 !チリ: 実際にお店を訪問したり、百貨店を回ったり、まずはマーケットの現状を知るところからスタートし、いかにこの短期間で実りのある成果を出すかが大きな課題でした。 百貨店のマーケット自体も、日本の百貨店とは大きく異なり、どちらかといえば、大型ショッピングモールの様な形態です。 こまごまとした小さなブランドの商品は無く、大きな卸売りブランドが一ブースどーんと構えています。今回は残念ながら、百貨店の方との商談が急遽キャンセルになってしまい、百貨店での販売方法を伺う事はできなかったのですが、それでも、ここに出展する為には規模自体がかなり大きな形態を必要とするんだとわかりました。 人口が3000万人、縦に長いチリでは、気候が北と南で全く異なるため、ファッションも難しいと、セレクトショップのバイヤーは言います。 今後、チリのマーケットに向けての発信方法として、より日本の技術の高さそして、繊細な技法を用いたアイテムを強化していき、少しでも魅力ある洋服を発信することだと思っています。 !実際に自分の目で見て、言葉を交わした世界は、私にとってそしてこれからのBANSANにとって素晴らしい経験になりました。 この経験はしっかりと今後の活動として、芽を出していきたいと思います。 また、Luz氏との、プロジェクトもしっかりと進めていきます。

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【参考リンク】 ・外務省「日本ブランド発信事業」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/pds/page22_001100.html !・BANSANブランドページ http://bansan.tokyo

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