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日本のフロン対策(日本語版) 8.6Co2トンの削減~ AUDIO VISUAL フロン誕生からおよそ80年オゾン層保護と地球温暖化対策を両立させた日本。 それは、フロン対策において世界をリードする国となり、 フロンの大幅な削減を成功させたのです。 ■アバン フロンは、経済や社会の発展、国民生活の向上に大きく貢献して きました。 例えば、エアコン、冷蔵庫などに使われる冷媒電気・機械製品の部品等の洗浄剤建物等の断熱材や製品梱包の緩衝材の製造に使われる発泡剤エアゾールの噴射剤等に使用されてきました。 その出荷量は、世界全体でおよそ年間100万トンと 人類にとって無くてはならない存在となっていたのです。 そんな中、地球に環境影響を与えるフロンに対して、 日本は積極的にオゾン層を破壊しない物質への転換、 さらには地球温暖化に影響の小さい物質への 転換を進めてきました。 経済活動を維持しつつ、フロンの大幅な排出削減を進めてきた 優れた技術とその取り組みが、日本にはあるのです。 ■タイトル 1

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日本のフロン対策(日本語版)~8.6億Co2トンの削減~

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フロン誕生からおよそ80年…

オゾン層保護と地球温暖化対策を両立させた日本。

それは、フロン対策において世界をリードする国となり、

フロンの大幅な削減を成功させたのです。

■アバン

フロンは、経済や社会の発展、国民生活の向上に大きく貢献してきました。

例えば、エアコン、冷蔵庫などに使われる冷媒…

電気・機械製品の部品等の洗浄剤…

建物等の断熱材や製品梱包の緩衝材の製造に使われる発泡剤…

エアゾールの噴射剤等に使用されてきました。

その出荷量は、世界全体でおよそ年間100万トンと

人類にとって無くてはならない存在となっていたのです。

そんな中、地球に環境影響を与えるフロンに対して、

日本は積極的にオゾン層を破壊しない物質への転換、

さらには地球温暖化に影響の小さい物質への

転換を進めてきました。

経済活動を維持しつつ、フロンの大幅な排出削減を進めてきた

優れた技術とその取り組みが、日本にはあるのです。

■タイトル

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日本のフロン対策(日本語版)~8.6億Co2トンの削減~

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■オゾン層破壊と地球温暖化<タイトル>

MC「はじめまして、木村倫子です。

オゾン層保護と地球温暖化対策を両立させてきた

“日本のフロン対策技術”。

今回は、その対策と世界をリードする多くの技術について

みなさんと一緒に勉強したいと思います。

それでは、私の頼もしい先生を紹介しましょう。先生~!」

先生「みなさん、倫子さん、こんにちは。」

MC「早速ですが先生、フロンにはCFC,HCFC,HFCがあって、

私たちの生活を便利で快適にしてきたけど、

地球に2つの環境影響を与えていたんですよね。」

先生「そうです。その1つは、CFC・HCFCによる

オゾン層破壊です。これらは特定フロンと呼ばれています。

オゾン層破壊に対して行われた対策は知っていますよね。」

MC「「はい!1987年、モントリオール議定書で、

国際的に特定フロンなどのオゾン層破壊物質の生産や、

輸出入の規制がスタートし決められました。」

先生「そうです。もう一つの影響が、地球温暖化ですね。

オゾン層の保護を目的として規制対象となった

CFC、HCFCは、実は温室効果が高いのですが、

モントリオール議定書で規制されたことで

結果的に地球温暖化防止に大きく貢献したことになりました。

■オゾン層破壊と地球温暖化

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一方、これらの物質は既に規制されたため、

京都議定書の対象になりませんでしたが、オゾン層を

破壊しないHFC、つまり代替フロンも温室効果が高く、

これは京都議定書の対象になりましたね。」

MC「1997年、京都議定書の採択により、

CO2等温室効果ガスの排出削減目標が定められ、

代替フロン等3ガスとしては、HFCの他にも

PFC,SF6が、京都議定書での削減対象になりました。

ということは、温暖化対策は、

京都議定書とモントリオール議定書の2つの議定書で

考えなければなりませんね。」

先生「その通り。特に、日本においては特定フロンから

代替フロンやノンフロンへの転換を、国際約束を上回るペースで

実施するとともに、代替フロン等の排出抑制についても

同時に進めてきました。

排出抑制の取り組みは、日本の温室効果ガス削減の

取り組み全体においても、とても優良な分野なのですよ。

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■日本による8.6億CO2トンの削減<タイトル>

■日本による8.6億CO2トンの削減

MC「世界全体の年間出荷量は、およそ100万トンと

ありましたが、今の日本はどれくらいなのですか?」

先生「特定フロンの規制を始めてから約20年たった今、CFC

HCFC・HFCといったフロン全体の出荷量は当時の約18万

トンから約4万トンと、約80%減の大幅削減に成功しました。

MC「約80%!その日本の出荷量ベースだと、

オゾン層保護や、地球温暖化への効果はどれくらいなのですか?」

先生「そうした効果は、フロンの持つオゾン層破壊係数・ODP、

地球温暖化係数・GWPをより小さなものへ転換してきたことが

大きな効果を上げています。フロン全体の削減、つまりノンフロ

ン化と併せてその効果をみると、89年比で、ODP・オゾン層

破壊係数ベースでは99・4%の削減。GWP・地球温暖化係数

ベースでは約93%の削減、これは二酸化炭素に換算すると

約8・6億トンであり、出荷量そのものの削減ですから、

将来に渡って排出を削減したことになります。

先生「ところで、京都議定書の基準年1990年の日本の温室効

果ガス排出量が12億6千百万トンですから、削減義務である

6%は0・76億トンになります。約8・6億トン削減の効果は、

その10倍を超える実に大きなものですが、その多くは京都議定

書の削減対象となっていないフロンによるものなのです。

MC「地球温暖化の対策は、京都議定書だけでなく、モントリオー

ル議定書で進められたフロンの転換の効果が大きいんですね。

それにしても、8.6億トン!そんなにあるんですか!

日本のフロン対策が、地球温暖化対策にこんなにも大きな貢献を

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■国民・産業・政府の協力<タイトル>

■国民・産業・政府の協力

MC「オゾン層破壊防止と地球温暖化対策の努力を両立させ、

フロンの大幅削減に成功した日本。先生、効果的な削減には、

優れた多くの技術や施策があると思いますが、施策にはどのよう

なものがあるのですか?

日本はなぜそんなに効果的なフロン対策ができたんでしょう?」

先生「まず始めに、オゾン層保護の時代から述べましょう。

JICOPや産洗協などの様々な組織の取組みも大きな貢献をし

ています。

MC「JICOPと産洗協・・・。」

先生JICOPは、“オゾン層・気候保護産業協議会”といって、

特定フロンの生産・輸入の規制が開始されたのを踏まえて、

当時の通産省の指導により、産業界38団体が呼応し、

1989年6月に設立されました。

産業界における推進活動のセンター、また、政府と産業界の

パイプ役を担っている協議会で、ピーク時には、65もの団体が

参加しました。

また、産洗協・日本産業洗浄協議会は、産業洗浄に関する情報

収集、調査、普及などを主な業務として、異業種の関連企業と

団体が集結しオゾン層保護のために1994年4月に

設立された協議会です。現在も地球環境保護および産業界の

発展に寄与するために活動しています。」

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他にも、フロン回収推進を目的として設立された

INFREP(インフレップ)・フロン回収推進産業協議会という

連携組織があり、業務用冷凍空調機器に関連した

フロン類排出抑制対策に関する啓発・啓蒙活動を行っています。

フロン回収推進産業協議会の活動内容を尐し紹介します。

業務用冷凍空調分野の機器を扱う関係者は機器の所有者、

機器メンテナンス業者、建設・設備業者及び冷媒回収業者、

更に地域の団体や自治体など広範囲に亘っています。

そこで関係者のネットワークを作り、フロン回収を適切かつ

効率的に推進していく活動をしています。

同時に、会員メンバーと連携しフロン回収・破壊法に即した

行程管理票の提供や、

回収が必要なことを示すシールを機器に貼ってフロン回収を

確実にする活動、

フロン回収に関わる説明会等を実施しています。

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MC「温暖化対策については?」

先生「温暖化対策については主に3つの柱があります。」

MC「産業界による自主行動計画がありますよね。」

先生「そうです。一つ目は産業界の自主行動計画に基づく取り組

みですね。二つ目は、代替物質の開発等や開発されたノンフロン

製品の利用の促進。三つ目が、フロン回収に係わる取り組みです。

一つ目の、産業界の自主行動計画は、8分野22団体で策定して

います。ここには、総排出量等の目標を挙げるとともに、その実

現のための取り組み、すなわち漏洩防止のための管理の徹底、

除害設備の導入、代替物質・技術の開発・導入等が取り上げられ

ています。

MC「産業界の自主行動計画の進行状況は、毎年、政府の産業構造

審議会においてフォローアップが行われているんですよね。」

先生「この産業構造審議会の情報は公開されていて、国民の目か

らもチェック&レビューが行われ、業界は自主行動計画を着実に

実施しています。目標が達成されればそれで終わりでは

ありません。さらに努力すべく計画を見直します。

すでに多くの団体で、計画目標の引き上げを行っています。

MC「政府と産業界・国民が協力して、大幅な削減を実現している

んですね。」

先生「柱の二つ目、代替物質の開発等及び代替製品の利用の

促進では、民間企業によるたゆまぬ努力があります。

政府も“NEDO・技術開発機構”や“産業技術総合研究所”などを

通じてノンフロン機器、省エネルギー技術等の共同開発を

行うなど、技術開発を強力にバックアップしています。

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MC「民間企業によるたゆまぬ努力と、日本の技術開発が大きな

ポイントなんですね。先生、3つ目の、フロン回収に係わる取り

組みについては、確か法律がありましたね?」

先生「日本では、フロンの回収を法律に基づいてしっかりと

進めています。業務用冷凍空調機にはフロン回収・破壊法、

家庭電気製品には家電リサイクル法、カーエアコンには

自動車リサイクル法という法律になりますね。

家庭用エアコンや冷蔵庫、そしてカーエアコンはリサイクル

制度の中でフロン回収がきちんと行われる仕組みです。

実は、法律ができる以前から、政府と民間の協調の下で

フロンの回収は行われていました。このときに培われた

しくみや回収の拠点が法律の制度にも活かされているのです。

以上、これら3つの日本特有の取り組みがフロン対策の進展に

大きく貢献しているのです。

MC「優れた技術だけではなく、国全体が力を合わせて

取組んでいる。だからこそ、国際約束を上回るペースで

実施できたり、大幅な削減ができたり、ここまで

進展できたのですね。」

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■日本の技術<タイトル>

■日本の技術

MC「先生!日本の効果的なフロン削減には、

優れた多くの技術や施策があると思いますが、

世界をリードする優れた技術やノンフロン化への取り組みは

何ですか?教えて下さい!」

先生「このグラフが、京都議定書対象物質の代替フロン等

3ガス排出量の推移です。」

MC「この8分野は、自主行動計画の8分野22団体と同じですね」

先生「そうです。特に大幅な削減をしたのは、HFC等製造、

洗浄剤・溶剤、絶縁ガス機器分野です。まず始めにその3つから

見ていきましょう。

始めに、HFC等製造について見ていきましょう。

エアコンの冷媒の他、鍋やフライパン、防水剤等に使われている

フッ素樹脂の原料に使用される、HCFC22があります。

そのHCFC22の製造に伴い、HFC23が副生します。

これは、温室効果がCO2の11,700倍と極めて高いのです。

日本では、HFC23を破壊し、再利用する技術を開発しました。

HCFC22製造時に副生するHFC23を分離し、高温で分解

します。

分解後のフッ素は貴重な原料ですので、フロン原料として、

再利用。リサイクルされたフッ素はサッカースタジアムのドーム

部分など多岐に亘るフッ素系材料に利用されています。

このような破壊装置の設置、副生成率の低減、プロセスマネジメ

ントで、大幅な温室効果ガスの排出削減を実現しました。自主行

動計画にあることを着実に実施し、効果をあげているのです。

この技術は京都議定書の京都メカニズムの一つ、

CDM・クリーン開発メカニズムとしても活用されています。

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MC「すでに国際的な取り組みに発展しているんですね~。」

先生「次は機械部品の洗浄です。モントリオール議定書の時代か

ら、フロン使用量の大幅削減に貢献しました。日本には、

環境によいだけではなく、経済的にもコストダウンにつながる

世界でもトップレベルの洗浄技術があるのです。」

MC「民間企業にとってコストダウンは大きな魅力ですね。モント

リオール議定書によると、CFC等洗浄剤は、先進国では95年に全

廃されていますが、途上国での全廃は2010年なんですよね。」

先生「そうです。かつての20年前の日本では、安全で便利でし

たが、オゾン層を破壊するフロンのCFC-113や塩素系溶剤

である1,1,1-トリクロロエタンを、プリント基板の洗浄、

精密部品の洗浄で大量に使用していました。代替洗浄技術の一つ

として、真空炭化水素系溶剤洗浄機があります。

洗浄工程を密閉することで、洗浄剤を外に漏洩せず洗浄剤使用量

を五分の一に減らすことができます。フロン等を使用しない技術

として、ほとんどの用途で、水系、準水系、炭化水素系洗浄等へ

転換しましたが、乾燥時間・乾燥シミ・ランニングコスト・

温暖化問題・VOC問題といった様々な問題がありました。

それらの問題をクリアしたのが、こちらの機械なのです。

世界に類がない技術で、海外からも見学しに来ています。

MC「日本の洗浄分野では、フロンからノンフロン化までの

様々な段階を経験しているので、途上国の技術支援が出来るん

ですね。」

先生「続いて、電気絶縁ガスです。国の面積が狭い日本では、

エスエフシックスSF6は地下変電所の建設を可能にするなど、

電気の供給に必要不可欠なものとなっています。

発電所や変電所では、遮断器などの電気機器に絶縁性、

電流遮断性、安全性に優れているSF6を充填させ絶縁ガスとし

て使用しています。

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日本のフロン対策(日本語版)~8.6億Co2トンの削減~

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先生「SF6はオゾン層の破壊には寄与しませんが、GWP値が

23900と温室効果が高いガスです。

これらの機器は、高い技術を駆使した密閉式なので、

充填されているSF6は、漏洩することはほとんどありません。

また、機器の作業を行う際などには、ガス回収装置でSF6を

回収し、大気中へ放出しない取組がなされています。

日本では、機器の点検・廃棄時等の事前ガス回収で、排出量を削

減しました。

MC「日本の変電所ではSF6を有効活用しつつ、地球温暖化に

影響を与えない技術が進んでいるんですね。

温室効果の高いSF6ガスは他にも使用されているのですか?」

先生「マグネシウム鋳造時のカバーガスですね。

マグネシウムは、自動車や携帯電話等の部品に使われており、

実用金属中最も軽量な金属材料であることから、

地球温暖化対策や省エネルギー対策に有効な素材のひとつと

されています。温暖化対策として、SF6の使用量そのものを

削減したり、SF6の代替としてノンフロンガスを開発しました。

地球温暖化の影響を大幅に削減できるノンフロンガスのひとつに、

日本には、1234zeがあります。

SF6に代わってこのガスが普及した場合、約600万CO2

トンの削減効果が見込まれています。

この工場では、世界最大級鋳造機を所有していますが、2007

年にNEDOで検証されたノンフロンガス・1234zeに

全面切り替えをしました。

今は、自動車のオイルパンやオートバイのカバー等を

製造しています。

1234zeは、代替ガスとして使用されている亜硫酸ガス・

SO2よりも、安全性が高く、設備の腐食も防げ、高品質の製品

を鋳造できます。

希釈ガスとして、窒素を利用することができ、さらに温室効果

ガス削減に努めていることも特徴ですね。

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先生「また、液晶テレビの液晶などを作る時には、京都議定書で

削減の対象となっている温室効果ガスのPFCを使用するの

ですが、液晶工場では、PFCガス除害装置を設置しPFCの

排出を抑えています。

液晶は主に日本、韓国、台湾で生産されています。つまり、

PFCは欧米では排出量が尐ないものです。日本が主導国となり、

韓国や台湾を含む世界的なPFC排出削減を行われています。

ちなみに、韓国や台湾は京都議定書の義務を負っていませんね。

次は、発泡プラスチック。天井や壁、床などに使われている

断熱材や、製品の梱包、土木工事など、

様々な場面、製品で使用されています。

断熱材は、建物の冷暖房効果を高めることでエアコンの

大幅な省エネにつながっています。

断熱材には、押出発泡ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、

フェノールフォーム、高発泡ポリエチレンフォーム等があります。

フロンは断熱材の発泡剤として使用されていましたが、

工場で製造するボードやパネル製品や成型品では

ノンフロン化がほぼ完了し、温室効果ガスの削減に

大きく寄与しました。

主に建物の断熱材などに使われる押出発泡ポリスチレンフォーム、フェノールフォームは2005年に100%ノンフロン化を達成.

また、柔軟性を活かして、給湯管やダクトなど、配管カバーの

断熱材としても使われる高発泡ポリエチレンフォームや

建築材料以外にも広い用途で利用される

硬質ウレタンフォームでもノンフロン化が進んでいます。

家庭用冷蔵庫に使用される断熱材は、すでにノンフロン化されています。

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89年比の出荷量ベースだと、CO2削減量約1.8億CO2トン、また、フロンガスの使用量では、CO2換算の削減比では95%もの削減になります。

現在では、これまで安全面や性能面でノンフロン化が難しかった現場吹きつけのウレタンフォームでも、炭酸ガスや水を用いたノンフロン発泡品が実用化され、普及が進められています。

ノンフロン品の普及のため、JISによる

ノンフロン断熱材の規格の策定、公共工事の標準仕様書や、

政府の率先行動を推進する「グリーン購入法」などで

ノンフロン断熱材を採用し、普及を進めています。

マンションの建築現場です。ここでは、水を用いたノンフロン

発泡品を使っています。化学反応により発生する二酸化炭素で

発泡しているのです。

発泡にフロンを使用していた既存の設備をそのまま適用できるの

が特徴です。ほかにガス状の二酸化炭素を利用する方式も

あります。また、日本では、冬場のマイナスの気温でも現場発泡

が行える高い技術力があるのです。

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Mc「冷蔵庫の断熱材にはフロンが使用されなくなったと

言っていましたね。」

先生「家庭用冷蔵庫は断熱材だけでなく、冷媒も含めたノンフロ

ン化をいち早く短期間で達成しました。同時に、ある年の最高性

能を何年か後の達成すべき目標として設定する日本独自の

“トップランナー方式”による省エネ化を実施しています。

日本では冷媒フロンの替わりにイソブタンを使用。可燃性ガスの

イソブタンは、漏れると発火する危険性があるため、安全性を

確保するための様々な工夫を行ってきました。

従来溶接していた冷却器の配管は、イソブタンの漏洩を防ぐため

繋ぎ目を無くしました。更に、1枚のガラス管に入れていた霜取

りヒーターを二重のガラス管の中に入れることによって、表面温

度をイソブタンの発火点より低く抑え発火を防ぐなど、高い技術

力を駆使しノンフロン化に成功したのです。

他の冷凍空調機器では、コンビニにおけるショーケースでも、

二酸化炭素を冷媒としたノンフロン製品が実用化されており、

また、自動販売機にも、ノンフロン・省エネ機があります。

これらのノンフロン機器は、まだ一部が実用化されたばかりで

その普及はこれからですが、国の補助を用い、ノンフロンの

施設や設備の技術開発や導入等の促進がされています。

MC「冷蔵庫やエアコンを含めフロンが使われている機器は、

法律でフロンを回収する義務があるんですよね。」

先生「フロンが大気に放出しないように、法律で回収が定められ

ているんだね。」

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先生「家電を廃棄する際は、消費者が家電小売店に運搬を依頼し、

家電小売店から指定引き取り場所で集積され、リサイクル工場に

運ばれます。

リサイクル工場では、素材の分類を行うと共に家庭用エアコン、

冷蔵庫の冷媒フロンの回収を行っています。

また、冷蔵庫を破砕する際には、断熱材のウレタンからもフロン

を回収しています。

このリサイクル工場では、回収ボンベの重量を常時パソコンに

記録し、異変が生じた際は、自動的に警報を出し回収装置を

停止するという「冷媒フロン回収量測定システム」を作り、

フロンを確実に回収しています。

回収したフロンが充填されたボンベを安置しておく保管庫には

フロンのセンサーが備えられ、厳重な管理が行われています。

ビルの空調、食品のショーケースや業務用の冷凍・冷蔵庫、

冷凍倉庫などの業務用冷凍空調機器については

フロン回収・破壊法に基づいてフロンの回収を行っています。

フロン回収・破壊法では、行程管理票という書面でフロンの引き渡しを管理する制度が新たに導入され、

この書面はINFREP(インフレップ)が制作、提供しています。

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建物の解体やリフォームなどで業務用冷凍空調機器を

廃棄する場合、

工事を請け負った建設業者は、フロンを含む機器を確認し、建物の所有者に対して書面で説明します。

建物の所有者はフロンの回収を建設業者に委託します。

建設業者は回収業者に書面を交付し、フロンの回収を依頼します。

依頼を受けた回収業者はフロン回収後、引き取り証明書を所有者に交付します。

このように、業務用冷凍空調機器のフロン引渡しの管理を徹底し、

回収を確実に行っているのです。

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日本のフロン対策(日本語版)~8.6億Co2トンの削減~

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MC「先生、車のエアコンに使われている冷媒も、回収すること

が義務付けられていますね。」

カーエアコンについても、自動車リサイクル法に基づいて

クルマが廃棄されるときにはフロンが回収され、

更に様々な部品や材料もリサイクルされているのです。

このような制度により、日本のフロン回収量は年々増加し、

大気への放出を抑制しているのです。

また、冷媒量の削減と気密化による漏れ量

低減で排出量を削減しています。

カーエアコンの製造過程では、部品の繋ぎ目からフロンが漏れな

いようにする為、炉中ろう付を行っています。

ろう付は600度の熱でろう剤を溶かし、0.1mm以下の

わずかな隙間を埋めることができる最先端の技術です。

ろう付後は、ヘリウムによる漏れ検査を実施。結合部のOリング

などの装着は、視覚装置により組み付け位置を検出し、ロボット

が組み付けていきます。

また、高性能化、小規模化に伴い、使用する冷媒量も減尐しています。

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日本のフロン対策(日本語版)~8.6億Co2トンの削減~

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先生「燃料電池自動車では二酸化炭素冷媒を用いたヒートポンプ

カーエアコンも実現しており、日本は開発でも世界のトップに立

っているのです。」

MC「すご~い!先生、他には?」

先生「ダストブロワーや、殺虫剤や室内消臭剤、工業用の潤滑剤

など様々な種類があるエアゾール製品は、現在ではダストブロワ

ーや医療用噴霧器、その他の特殊用途を除いてすべてノンフロン

化。89年比の出荷量ベースだと、削減量が約7300万CO2

トンになります。

代替物質として、LPG・ジメチルエーテルなどを

使用しています。

ダストブロワーについては、ジメチルエーテルなどの可燃性ガス

の利用は、細心の注意が必要です。

より温室効果の低いガスの利用や、二酸化炭素、機械式のブロワー

なども活用しながら、排出量の削減を進めています。

MC「オゾン層保護からはじまったフロンの規制から約20年、日本

がフロン関連の温室効果ガスを約8.6億CO2-トンも削減して

きた理由がよく分かりました。

世界に誇る日本の技術は、品質の高いものを作れたり、コストダ

ウンにつながったり、環境だけでなく、経済的にも貢献する技術

なのですね。 」

先生「これらの事例以外にも様々な対策を行い大幅削減に成功し

ているんですよ。今回紹介できなかった技術や内容を載せたパン

フレットもあるので、そちらも参照し、お問い合わせ下さいね。」

MC「温室効果ガスの排出削減を進めながら、経済成長を維持・

向上することが可能な日本の技術を世界に広め、

環境と経済の両立を地球規模で実現していきましょう! 」

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