38
213 日本のテレビ番組の国際性 ICFP 川竹和夫・杉山明子/ 計画・開発 原由美子 要 約 目 次 ICFP(国際コミュニケーション・フロー研究プロジェクト)は,NHK放送文化研究所の協力のも とに,1980年以来,約10年ごとに“テレビ番組国際フロー”の調査を行なってきた。本稿はその第3 回目の調査(2001 02年)の結果を,過去2回の調査結果と時系列比較しながら分析したもので,結 果は,次の諸点に要約できる。 ①テレビ番組の輸出入では,輸入が3回の調査を通して“全放送番組の約5%”と,同じ水準を保っ ているのに対して,輸出は毎回増加し,輸出入バランスは大幅輸出超過である。 ②日本からのテレビ番組のOUT- GOINGでは,輸出がアニメを中心に(約60 %)急増,アジアでは, ドラマ・バラエティー番組も市場を確保している。しかし,衛星による海外向け直接テレビ放送は, NHK系2チャンネルのみで,日本からの情報発信は進んでいない。 ③日本へのテレビ番組のIN- COMINGでは,輸入番組の比率が低いこと,輸入番組は映画・ドラマ中 心で,その制作国はほとんどアメリカであること(約80%)など,大きな変化はみられない。また, 日本制作番組の中の外国要素をみると,対象時間帯の番組の約7%が外国関連で,その多くは“外 国・外国人を紹介するもの(約70%)”であった。 ④ニュース・ワイドショーの外国要素の内容分析を行ったところ,事件・事故・犯罪・紛争の報道が 多くを占め,対象国・地域にとってネガティブ・イメージのものが多かった。 ⑤テレビCMの外国要素について分析したところ,全体として,外国度は増加の傾向を示していた。 今回の調査では,IN- COMINGの対象チャンネルを,地上波・アナログ全国ネットワークとしたが, 今後,衛星放送の普及,デジタル化に伴う番組変化,専門チャンネルの増加などに対応して,調査対 象チャンネル・方法を根本的に見直すことが必要と考えている。 はじめに ………………………………………………214 Ⅰ 日本のテレビ番組の国際フロー・バランス 216 Ⅱ 日本からの輸出海外提供海外発信 (OUT-GOING)…………………………………217 1. テレビ番組の輸出の状況 2. テレビ番組の海外提供 3. テレビ番組の直接発信 4. 外国との共同制作 5. 日本テレビ番組への評価および各国・地域 での日本イメージ a 台湾 s 韓国 d 中国 f アメリカ g イギリス Ⅲ 日本への輸入番組および日本制作 番組の中の外国要素(IN-COMING) ………234 1. テレビ輸入番組の状況 2. 日本制作番組の中の外国要素 3. ニュース・ワイドショーの中の外国要素 4. テレビCMの中の外国要素 結び ………………………………………………………247

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│213

日本のテレビ番組の国際性

● ICFP川竹和夫・杉山明子/●計画・開発原由美子

要 約

目 次

ICFP(国際コミュニケーション・フロー研究プロジェクト)は,NHK放送文化研究所の協力のもとに,1980年以来,約10年ごとに“テレビ番組国際フロー”の調査を行なってきた。本稿はその第3回目の調査(2001~02年)の結果を,過去2回の調査結果と時系列比較しながら分析したもので,結果は,次の諸点に要約できる。①テレビ番組の輸出入では,輸入が3回の調査を通して“全放送番組の約5%”と,同じ水準を保っているのに対して,輸出は毎回増加し,輸出入バランスは大幅輸出超過である。

②日本からのテレビ番組のOUT-GOINGでは,輸出がアニメを中心に(約60%)急増,アジアでは,ドラマ・バラエティー番組も市場を確保している。しかし,衛星による海外向け直接テレビ放送は,NHK系2チャンネルのみで,日本からの情報発信は進んでいない。

③日本へのテレビ番組のIN-COMINGでは,輸入番組の比率が低いこと,輸入番組は映画・ドラマ中心で,その制作国はほとんどアメリカであること(約80%)など,大きな変化はみられない。また,日本制作番組の中の外国要素をみると,対象時間帯の番組の約7%が外国関連で,その多くは“外国・外国人を紹介するもの(約70%)”であった。

④ニュース・ワイドショーの外国要素の内容分析を行ったところ,事件・事故・犯罪・紛争の報道が多くを占め,対象国・地域にとってネガティブ・イメージのものが多かった。

⑤テレビCMの外国要素について分析したところ,全体として,外国度は増加の傾向を示していた。今回の調査では,IN-COMINGの対象チャンネルを,地上波・アナログ全国ネットワークとしたが,

今後,衛星放送の普及,デジタル化に伴う番組変化,専門チャンネルの増加などに対応して,調査対象チャンネル・方法を根本的に見直すことが必要と考えている。

はじめに ………………………………………………214

Ⅰ 日本のテレビ番組の国際フロー・バランス…216

Ⅱ 日本からの輸出,海外提供,海外発信(OUT-GOING)…………………………………217

1. テレビ番組の輸出の状況2. テレビ番組の海外提供3. テレビ番組の直接発信4. 外国との共同制作5. 日本テレビ番組への評価および各国・地域での日本イメージ

a台湾 s韓国 d中国 fアメリカgイギリス

Ⅲ 日本への輸入番組および日本制作

番組の中の外国要素(IN-COMING)………234

1. テレビ輸入番組の状況2. 日本制作番組の中の外国要素3. ニュース・ワイドショーの中の外国要素4. テレビCMの中の外国要素

結び………………………………………………………247

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214

はじめに

日本を中心とするテレビ番組国際フローの変遷

最初に,テレビ放送開始50年に関連して,

“日本のテレビ番組の国際フロー(主として輸

出入)”の初期の変遷を概観してみたい。

日本のテレビ初期は,映画会社の番組提供

協力が得られなかったこと(映画5社協定),

テレビ局の制作能力が不足していたことなど

の理由から,アメリカ制作の番組(特にドラ

マ・シリーズ)の輸入に依存する時代が長く

続く。アメリカのテレビドラマシリーズが各

局のプライムタイムの主要部分を占めるよう

になったのは,1956年からで,ピーク時の

されていた(61

年=44本 62年=34本 63年=43本 64年=45

本)。

こうしたテレビ番組のアメリカ支配は,テ

レビ後進国だけでなく,ヨーロッパ,カナダ,

オーストラリアなどの国々でも同様で,その

状況はJ.タンストールの『Media Are Ameri-

can』(1974)などに詳述されている。

日本のテレビ編成がアメリカ依存から脱却

するのは,1970年代に入ってからで,70年代

後半には,アメリカ製のシリーズドラマは姿

を消し,ミニシリーズ(『ルーツ』『将軍』など)

が,夜の遅い時間帯に放送されるだけになる。

それらの番組も視聴率はさほど高くない。

そのころ,フィンランド・タンペレ大学の

T.ヴァリスらが,グローバル規模の「テレビ

番組のフロー調査」を実施しているが(『国際

的テレビ番組構造と番組流通の研究(1974)』),

この報告書では,“日本のテレビ番組輸入は

で,世界で4番目に輸

入の少ない国”と位置付けている(テレビ輸

入の少ない国=1.中国 2.アメリカ 3.

ソ連 4.日本)。

このT.ヴァリスらの調査で,日本のテレビ

番組の海外向け輸出については,“日本では,

最近,その文化・テクノロジーを海外に紹介

することに重点をおき,その媒体としてテレ

ビ番組に力点を置いているが,言語障壁の問

題があって,あまり海外で受け入れられてい

ない”と解説している。

当時,NHK経営企画室が発表した資料(村

山貞也作成)では,“1972年度のテレビ番組

の輸出は で,大部分が,発展途上国

に提供されるドキュメンタリー・フィルム

か,教育放送用のセグメントフィルムである”

と述べている。つまり,1970年代はじめころ

の日本のテレビ番組は,輸出入とも微量であ

って,縮小均衡型だったといえる。

そのころ,ユネスコなどを中心に情報の国

際フローについての議論がさかんで,後に『マ

スメディア宣言』(1978)に集約されるように,

“欧米のメディア経由で伝えられる国際情報

の偏り”が問題になっていた。日本でも,ニ

ュース情報の国際的な流れのアンバランスが

問題とされていた。テレビ報道研究会(代

表・大森幸男)が1980年11月に行った『テレ

ビニュース8カ国比較調査』の結果では,日

本のテレビ局(NHK・TBS)が報道した“ア

メリカ関係のニュース”が全外国関係ニュー

スの約30%であったのに対して,同じ期間に

アメリカCBSが報道した“日本関係のニュー

ス”は1%に過ぎなかった。

ユネスコで情報の国際フローを検討してい

たマクブライド委員会のメンバーだった永井

道雄はこうした状況を称して“情報の徹底受

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信方式”と呼んだ(1983)。

“日本の外国報道の主要部分は「アメリカ」

であって,アジアはじめ他の発展途上地域の

ニュースは,事件・事故・災害・戦争などに

限定され,それらの国のイメージをネガティ

ブなものにしている”という指摘は近年に至

るまで,しばしばなされている。

ITFPからICFPへ

こうした問題,特に“テレビ番組やニュー

ス情報の国際フローが,各国の社会・文化に

与える影響”に着目したのが,1972年に誕生

した国際コミュニケーション研究組織である

IIC(International Institute of Communi-

cations=世界放送通信機構・本部ロンドン)

で,その研究プロジェクトのリーダーのA・

ブリッグス(オックスフォード大学・ウース

ターカレッジ学長)が“テレビ番組の国際的

な流れを,各地域ごとに調査して,グローバ

ルなマップにまとめる”という構想を打ち出

し,その組織をITFP(International Tele-

vision Flow Project)と名付けた(1978)。

この呼びかけに呼応して国際調査に参画し

たのが,ヨーロッパ(8カ国対象),ラテンア

メリカ(2カ国対象),カナダ,それに日本の

各チームであった。各チームは,それぞれ,

ケンブリッジ大学のG・チャップマンらの開

発したテレビ番組分析手法による輸入番組内

容調査の実施について検討を開始したが,そ

の多くは計画段階で挫折し,結局,日本だけ

が,『テレビ番組輸出入調査』(1980・81年)

を実施し,その結果をIIC総会(ヘルシンキ・

1982)に報告した。

それが,ITFP-JAPANの第1回調査で,調

査は,その後約10年間隔で,1992・93年と,

2001・02年に実施される。今回の研究報告は,

この第3回調査の結果を,第1・第2回の調

査結果との比較でまとめたものである。

なお,ITFPの名称は,2000年から,

と改めた。国際情報フローでは,依然

テレビ番組・ニュースが重要な位置を占めて

いるが,他のメディア,特にインターネット

経由の情報の比重が増大しつつある。名称変

更はこうした変化に対応したものである。1)

日本を中心とするテレビ番組国際フロー調査の狙い

日本でのテレビ番組フロー調査は,IICか

らの要請のほかに,日本独自の関心・要請に

基づいて企画された。

まず輸入番組について,日本のテレビ番組

の中で,外国製番組の占める割合が少ないこ

とは予想されたが,その他“国産番組で外国

を扱ったもの”“テレビニュースで扱われる外

国素材”さらに“CMの中の外国要素”などが

かなりの割合を占めていることから,こうし

た要素をトータルでとらえて“日本のテレビ

番組の外国度”を全体として測定しようと考

えた。

またテレビ番組の輸出に関しては,国・地

域別,番組種類別の実績を調査すると同時に,

外国での“日本製テレビ番組の評価と,その

文化的影響”についても,主要地域について

追跡調査を行うこととした。

第1回調査の報告(『テレビの中の外国文化』

1983所載)では,●日本のテレビ番組は,輸入番組の比率の低

さにもかかわらず,全体で見ると,外国文化

(特にアメリカ)の影響を強く受けている。●輸出番組の量は,アニメ中心に増加の方向

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│215

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216

にあるが,その暴力性への批判があり,ま

た全体として日本文化・社会に関する情報

発信は少なく,そのための努力もあまり見

られない。●こうした状況から考えて,日本のテレビ番

組フローは,必ずしも理想的なバランス配

分のものでないと判断された。

などと結論づけているが,第2回,第3回の

調査を経て,それがどう変容したか,本稿の

研究報告で明らかにする。

ICFP調査の概要

今回のICFP調査では,日本のテレビ番組の

国際フローを,OUT-GOINGとIN-COMING

の両面について2002年の状況を中心に調査し

た。● OUT-GOINGは,「日本制作のテレビ番組

の輸出」「海外提供」「衛星による直接発信」

「外国との共同制作」の各側面について,実

績と海外での評価を調査した。海外での調

査は,主要国ごとに共同研究者を委嘱した。● IN-COMINGは,「外国制作のテレビ番組

の輸入」「日本制作のテレビ番組の中の外国

要素」「ニュース・ワイドショーの中の外国

要素」「CMの中の外国要素」について調

査・分析した。

調査各項目の対象番組,対象時期,調査手

法については,各項目ごとに詳述する。

最初に,日本のテレビ番組の国際フローの

うち,主要な部分を占める“テレビ番組の輸

出入”のバランス状況から見てゆくことにす

る(表1)。

前述のように,テレビ初期には,番組編成

の主要部分を主としてアメリカからの輸入番

組(シリーズ・ドラマ)が占めていたが,

1970年代後半から,番組輸入は大幅に減少し,

恒常的に全編成時間の5%以下になる。その

頃の日本の番組輸出は年間2,200時間であっ

た(1972)。

それが,ICFP(当時ITFP)の第1回調査

(1980年)では,アニメを中心に(56%),輸

出が急増し,72年の約2倍・4,585時間であっ

た。同時期の輸入は2,332時間(全放送時間の

4.9%)であったから,バランスは2:1の輸

出超過ということになる。

第2回調査(1992~93年)では,輸出は前

回同様アニメ中心(58%)で22,324時間と激

増,一方輸入は,2,843時間(全放送時間の5.2

%)と横這いであったため,バランスは8:

Ⅰ 日本のテレビ番組の国際フロー・バランス

表 1 日本のテレビ番組の輸出入バランス

輸 入(比率) 輸 出

1980年 1月~12月

1992年4月 ~1993年3月

2001年 1月~12月

2,332時間(4.9%)

1 :

2,843時間(5.2%)

1

3,036時間(4.9%)

1

4,585時間

2

22,324時間

8

42,600時間

14

注: この表で,輸入は放送時間量(地上波東京キー局合計),輸出は輸出番組時間(契約)×国・地域数(複数放送局の場合複数カウント)で,“実際に放送したかどうか”をフォローしたものではない。( )内は全放送時間に対する比率である。また,金額は一部を除いて不明なので,正確な意味での「輸出入バランス」ではないが,一応の目安として掲載した。

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1と大幅な輸出超過になった。

今回の調査結果では,この輸出超過の傾向

がさらに顕著になっている。輸出は依然,ア

ニメ(59%)が多いが,ドラマ・バラエティ

ーも合わせて36%を超え,42,600時間と増加

した。これに対して,輸入番組は,3,036時

間(4.9%)と第1回,第2回調査結果と比率

ではほぼ同水準であったため,バランスは

14:1とさらに差が拡大した。

今回の調査結果の詳細は次章以下に詳述す

る。

1. テレビ番組の輸出の状況

2001年1月~12月(一部2001年4月~2002

年3月)の1年間に輸出契約の成立したテレ

ビ番組について,テレビ局(東京・大阪の地

上波キー局),プロダクション,映画会社,

商社(代理店),番組海外提供機関の実績を

各個に調査し,その結果を集計した。調査項

目は,「番組名」「番組種別」「番組数(タイト

ル別)」「時間量」「相手国(地域)」「使用チャ

ンネル(地上波・衛星放送・CATV・インタ

ーネット放送)」である。

なお,調査結果は,ICFP(前回まではITFP)

が過去に行った調査(1980年,1992年)との

経年比較を行った。なお,“海外向けの番組

無償提供”も輸出に含めてカウントした。

①輸出番組は大幅増加

2001年1年間に輸出(または海外提供)契

約の成立したテレビ番組は表2のとおり,● 時間量(番組数×本数×放送時間×国ごと

の放送局数)=約42,600時間であった。●番組数(タイトル数)=1,675番組(シリーズ番

組は全体で1番組とカウント)

過去2回の調査と比較すると,表2のとお

り,番組数,時間量とも大幅に増加している。

②地域別では,約半分がアジア向け

地域別では,番組数・時間量とも,アジア

地域がほぼ全体の半数を占めた。前回調査に

比べて,時間量では,アジア向けが大幅増,

ヨーロッパ・北米・中南米・アフリカもそれ

ぞれ若干増加しているが,中東向けは減少し

ている(番組数はほぼ同数)。(表3)

③国・地域別(香港は地域としてカウント)で

は,番組数・時間量ともに,1位は台湾,2

位はアメリカである。

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│217

Ⅱ 日本からの輸出 海外提供海外発信(OUT-GOING)

表 2 輸出番組トータル

調 査 時 期 時 間 量 番 組 数

1980年

1992年4月~93年3月

2001年

約04,600時間

約22,300時間

約42,600時間

1,433番組

1,675番組

表 3 輸出番組の地域別集計(2001年)

ア ジ ア

時 間

19,600

46.1

11,900

27.9

3,200

7.6

3,000

7.1

300

0.7

1,300

3.0

800

2.0

2,400

5.6

ヨーロッパ 北   米 中 南 米 オセアニア 中   東 ア フ リ カ そ の 他 *

*その他=「全世界対象」など,地域を特定しないもの。

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218

輸出対象国・地域上位20(番組数)は表4

のとおりである。アニメ・ドラマなどのシリ

ーズは,各シリーズを1本とカウントした。

④テレビ輸出を,番組カテゴリー別に見ると,

前2回の調査と同じく,時間量では,アニ

メが約60%を占める。

しかし,番組数で見ると,ドキュメンタリ

ー(577番組)がもっとも多く,アニメ(531番

組)を凌ぐ。その他,アジア諸国中心に,ドラ

マ・バラエティー番組が,急増している(表5)。

2. テレビ番組の海外提供

前記「輸出番組調査結果」の中には,『

(81番組)』『

(84番組)』それに『

(34番組)』

が含まれている。その内訳はつぎのとおりで

国・地域名 番組数 時間(順位) 備        考 前回順位

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

台湾

アメリカ

韓国

香港

シンガポール

フランス

中国(香港除く)

タイ

スペイン

イタリア

ラオス

マレーシア

インドネシア

フィリピン

ナイジェリア

ポルトガル

イギリス

ドイツ

ロシア

ブラジル

カナダ

194

169

169

91

87

79

79

72

67

66

65

63

54

52

46

45

43

42

36

35

25

3,948

2,883

 1,832

1,428

1,476

 1,068

 783

1,433

 772

 1,088

 473

 899

1,234

1,110

 177

 630

 802

867

 563

 287

 282

(1)

(2)

(6)

(5)

(3)

(10)

(14)

(4)

(15)

(9)

(17)

(11)

(7)

(8)

(21)

(16)

(13)

(12)

(18)

(19)

(20)

ドラマ・バラエティー増加傾向

日本系テレビ局除くと殆どアニメ

70%はアニメ

ドラマ・バラエティー増加傾向 

ドラマが45%占める

66%アニメ

国際交流基金による提供含む

アニメ・ドラマ・バラエティー

76%アニメ

76%アニメ

文化無償協力のドキュメンタリー中心

ドラマが51%,他はアニメ

75%アニメ

アニメ・報道番組

文化無償協力のドキュメンタリー中心

79%アニメ

バラエティー急増,他はアニメ

アニメ・バラエティー

ドキュメンタリー・ドラマ。アニメはゼロ

80%日系局向けドキュメンタリー

75%アニメ

(6)

(1)

(5)

(3)

(4)

(2)

(8)

(9)

(7)

表 4 輸出対象国・地域(上位20)

表 5 カテゴリー別輸出番組数および輸出量

《番組数》

調 査 年

2001 531(31%) 312(19%) 141(8%) 577(35%) 108(7%)

2001

1992

1980

59%

58%

56%

23%

15%

23%

13%

15%

1%

3%

5%

12%

3%

7%

8%

ア ニ メ ドラマ・映画 バラエティー ドキュメンタリー そ の 他

調 査 年 ア ニ メ ドラマ・映画 バラエティー ドキュメンタリー そ の 他

《時間量》

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ある。

◎政府文化無償協力(NHKインターナショナ

ル・JAMCO)は,ラオス・ナイジェリア2

国に対して実施。

ラオス=ドキュメンタリー・教育番組 52

番組(128時間)

ナイジェリア=ドキュメンタリー・教育番

組 29番組(124時間)

◎国際交流基金による番組提供(NHKインタ

ーナショナル)では,次の22カ国に対して,

ドキュメンタリー,ドラマ,教育番組など

84番組(455時間)が送られた。

アジア=モンゴル・中国・アゼルバイジャ

ン・カンボジア・ベトナム・ブー

タン・カザフスタン・スリランカ・

フィリピン・東チモール

中南米=ジャマイカ・ボリビア・パナマ・

ブラジル

アフリカ=ガーナ・エリトリア・エジプ

ト・マダガスカル

ロシア・東欧=ロシア・ハンガリー

中東=シリア

その他=マルタ

ドラマでは,NHKの連続ドラマ『すずらん

(各15分×156本)』が,モンゴル・中国・カ

ザフスタン・ジャマイカ・ボリビア・パナマ・

エジプト・シリアに,『おしん(15分×96本)』

がエリトリアに提供されている。

NHKテレビ小説『おしん』の海外提供・輸

出は,1984年アメリカ日系テレビ局3局が最

初で,翌1985年,国際交流基金の番組提供事

業で中国に提供されて国際的に評判になり,

その後,各国への提供・輸出が相次ぎ,2002

年末までに59カ国(63放送機関)で放送され

て,いずれも高視聴率をあげた。

しかし『おしん』を放送した局は,アメリ

カ・カナダの日系テレビ局を除いて,ほとん

どが発展途上国で,西欧ではベルギー(VRT)

のみである。

なお,放送に関する発展途上国援助に関し

ては,多年“日本はODA資金による放送局や

中継施設の建設や,JICAなどによる放送番

組制作・技術の研修への援助を行なうが,テ

レビ番組提供はほとんど行なわず,その部分

では,ドイツのTRANSTEL(国営の途上国

向け放送援助機関)がもっぱら業績をあげて

いる”といわれてきたが,1990年代後半にな

ってから,上記のようなテレビ番組海外提供

が増加,トータルでは,“日本からの提供”が

もっとも多くなっている。

3. テレビ番組の直接発信

衛星による海外向けテレビ放送は,NHK

の『NHKワールド(無料)』と,『NHKワール

ドプレミアム(有料・スクランブル)』の日本

語放送(一部英語)放送が中心で,民放系は

2002年度まで日本テレビが,“アメリカ・東

アジア向けの衛星放送(「NNN24」「ズームイ

ン・スーパー」=月・金)”とプロ野球中継を

実施していたが,回線使用料金値上げに伴っ

て2003年度から中止し,プロ野球シーズン中

の“巨人戦中継”のみとなった。

フジテレビは,海外向け番組提供・販売量

は多いが,直接発信は現在行なっていない。

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│219

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220

NHKの海外向けテレビ放送の状況は図1

のとおりである。

4. 外国との共同制作

日本と外国とのテレビ番組共同制作に関し

ては,1980年のICFP(当時はITFP)の第1

回調査のころは,NHK・民放とも積極的で

ドキュメンタリー中心に,ドラマ,アニメな

どの分野でも共同制作がさかんに行なわれて

いる。

*『シルクロード(日・中)』『COSMOS(日・米・英・独)』『第3の波(日・米・加)』『ルーブル美術館(日・仏)』『世界同時不況(日・米・独)』『アジアの文化遺産(ABU加盟6カ国)』『アニメ・太陽

注:PAS 8,9,10は中継に使用する衛星

図 1 NHKの海外向け直接発信(2003年12月)

アジア太平洋地域

アメリカ西海岸

南北アメリカ

各国衛星放送局 CATVへ配信

米JNG(TVジャパン)

民放番組販売 特定番組の提供

オーストラリア(Television Oceania)

アメリカ(サンフランシスコTV, Fuji Telecast, Asahi Homecast,  WNVC, Newsworld)

ヨーロッパJSTV     (JSTV)

(7時間分NHK買い上げ,  スクランブル外す)

TVジャパン

アジア     100局   (うち台湾 65局)太平洋地域   10局中東アフリカ   3局中南米     21局

NAPA宇宙局 PAS 10

NHKワールドTV(無料)

NHKワールドプレミアム(有料)

PAS 8

PAS 9

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の子エステバン(日・ルクセンブルグ)』などがある。そのほとんどは“日本提案のもの”である。

しかし今回の調査の時期(2001~02年)に

は,NHK,民放とも共同制作にはあまり積極

的に取り組んだ形跡は見られない。主要放送

局へのヒアリングを行なった結果によるもの

なので,地方局の詳細は把握できないが,日

韓共同制作ドラマ『フレンズ(MBC-TBS)』

『ソナギ~雨上がりの殺意(MBC-フジテレ

ビ)』と,ドキュメンタリー『あなたは幸せに

暮らしていますか日韓サラリーマン報告

(MBC-フジテレビ)』,それに日韓それぞれ

で制作,両国で放送したドキュメンタリー

『風の吹く伝統の色彩(韓国KBS)』『未来への

教室シリーズ(日本NHK)』が主要作品で,

その他,地方民放で韓国,アメリカとの間で

“共同制作”“イベントの共同主催”“ニュース

交換”が継続的に行なわれている程度のよう

である。

なお,NHKマルチメディア局の資料によ

ると,NHKで2001年4月から02年3月の間

に外国との共同制作が成立したものは31タイ

トルで,そのうち28本は海外からの提案であ

った。また,24本が外国で制作し,NHKが

その費用を提供するもので,NHK制作は7

本であった。

*上記共同制作の対象国=アメリカ(8)イギリス(2)ドイツ(4)フランス(4)イタリア(2)ベルギー(2)スイス(1)チェコ(1)イラン(1)マレーシア(1)ニュージーランド(1)オーストラリア(1)中国(1)韓国(1)台湾(1)

5. 日本テレビ番組への評価および各

国・地域での日本イメージ

◆アニメ市場の拡大と,地域別特性の変化

3回の調査を通じて,

である。アニメが時

間量でカウントして,輸出総量の60%近くを

占めているという状況は20年間変わっていな

い。このことは,テレビ番組輸出全体が増大

するのに比例して,アニメ番組の輸出量が増

えていることを意味する。

という推算もある(日本動画協会による)。

アニメの輸出と同時に,人気アニメのビデ

オ番組,キャラクターグッズ,アニメ雑誌・

本の売上も急増している。金額は公表されな

いので不明だが,JETRO(日本貿易振興会)

の試算では,

に達したと見込

まれている。

日本製アニメ番組が好評なのは,各国での

調査結果を総合すると,“描画技術とくに色

彩が素晴らしい”“ストーリー,場面設定が面

白い”“テンポが速い”“キャラクターの個性

に惹かれる”などによるもので,アメリカは

じめヨーロッパ各国の多くの大学に“アニメ

研究会”ができていて,それが日本アニメ人

気を一層煽る作用をしている。

かつては,日本製アニメは“暴力的である”

という理由でアメリカ,ヨーロッパ各国で批

判の対象となっていたが(『グレンダイザ-』

『アルバトール』『ボルテス5』など),最近は,

そうした批判はあまり聞かれない。その理由

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│221

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222

は,

ためと思われる。

なお,アメリカでは,アニメの20%近くが

リメイクの対象になっている。「子どもテレビ

法」に基づいて“銃器”“血”“裸体”“悪い言葉”

がカットされるのは当然だが,その他,“キ

ャラクターの風貌がアメリカ向きでない”と

いう理由から,人物そのものの顔を変えてし

まう例もある(『セーラームーン』など)。

韓国でも,日本アニメのリメイクが頻繁に

行なわれている。暴力シーン,せりふのカッ

トだけでなく,“純日本的な場面や服装(和

服・下駄など)”はほとんど,無国籍風にリメ

イクされている(『ドラえもん』など)。裸の

シーンでは,リメイクで下着をつけさせる(『ク

レヨンしんちゃん』など)。

輸出されるアニメの種類は,地域によって

かなり異なっていた。その第1のものは,

“オリエント・フィーチュア(アジア的特性)の

ものは,ヨーロッパには売れない”というも

のであった。その傾向は現在も残ってはいる

が,最近では,例えば『ドラゴンボール』『ド

ラえもん』『クレヨンしんちゃん』など,

一方,今もアジア中心に限定されているの

は,『忍者はっとりくん』『一休さん』『ちびま

る子ちゃん』などのギャグ・アニメ。『ひかる

の碁』は台湾・香港・韓国だけである。

全世界各地域に輸出されて,「ジャパニメ

ーション」の名声を作り上げてきたのは,主

として,

で,いわゆる「ギャグ・ア

ニメ」や「名作アニメ」「スポーツ根性もの」

は地域が限定される。

*全世界共通に輸出されるものとしては『ポケモン』『デジモン』『ドラゴンボール』『セーラームーン』『聖闘士聖矢』『遊戯王』などがある(2002年)。

◆バラエティー番組もアジア中心に増加。フォーマット・ディールも。

ヨーロッパ向けの輸出は,アニメ中心だが,

アジアでは,ドラマ・バラエティー番組の増

加が目立っている。特に台湾では,日本で人

気のあったバラエティー番組はほとんど,ど

こかのチャンネルで放送している(詳細後記)。

クイズ・バラエティー番組では,フォーマ

ット・ディール(番組の形式,演出のみ販売,

出演者や会話内容などは現地で作り上げる)

によって,輸出増を助長している点が目立っ

ている。

*アメリカCBSテレビが,日本のTBSから,『わくわく動物ランド』のフォーマットを買い,動物の生態場面のみを使って,アメリカ人出演者によるクイズ番組“Animal Crack Ups”として放送したのが最初の成功例(1988)。

*台湾では,バラエティー番組『風雲たけし城』のフォーマット,セット一式を買い,台湾人出演者によって放送した例がある(1994)。

*今回の調査の中で,フォーマット・ディールによるものとしては次のようなものがあった。『いきなり黄金伝説』=アメリカ・トルコ,『世界はSHOW by・ショーバイ』=イタリア・トルコ,『ウンナンの炎のチャレンジャー』=ドイツ・スイス,など。

◆ドラマ,ドキュメンタリー番組の市場

ドラマ番組の輸出先は,もっぱらアジア,

それにアメリカ(主として日系チャンネル)

で,台湾,香港,シンガポールに集中的に輸

出されている。かつては,若者向けのいわゆ

るトレンディー・ドラマが中心だったが,最

近は,対象が各年齢層に広がり,時代劇,ホ

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ームドラマ,サスペンスの輸出も多い。

なお,韓国では,多年,日本制作のテレビ

ドラマの放送を禁止していたが,「日本大衆

文化開放」の最終段階の措置として,2004年

1月,日本制作ドラマのCATV・衛星放送で

の放送を解禁にした。これがきっかけで,韓

国へのドラマ輸出は急速に増えることが予想

されている。

ドキュメンタリーは,商業ベースでは韓国

向け(主としてNHK制作)が最も多い。その

他では,NHKインターナショナルとJAMCO

を通じて発展途上国に贈られる番組の70%を

ドキュメンタリーが占めている。輸出番組の

うち,番組本数では,ドキュメンタリーが最

も多いが,単発ものが多く,時間量では,全

体の3%に過ぎない。

以下に,日本テレビ番組の輸出先・主要国

での評価,ならびにテレビを通じる各国での

日本イメージの状況を紹介する。

(1)台湾

26のチャンネルで常時日本製番組を放送:

アニメ・ドラマ・バラエティー:日本文化・

社会紹介番組も

◆日本からの

である(金額では米国)。◆台湾では,地上波テレビ5局,衛星放送が,

総合編成12局,番組カテゴリー別(主として

CATV向け)のチャンネルが,『ニュース専

門』=7局,『娯楽・音楽』=8局,『洋画専

門』=8局,『子供番組・宗教』=6局,『映

画(国産中心)専門』=4局あり,その他さ

らに,日本製番組の放送を専門に行うチャン

ネルが4局ある。

◆上記54チャンネル中,

。カテゴリー別では,日本

製番組を放送していないのはニュースチャン

ネルだけである。◆台湾で放送されている日本製テレビ番組を

番組種別ごとにみると,アニメ(一部実写含

む)が圧倒的に多く,2002年9月現在でみて

(表6)。

日本製アニメは,ギャグアニメ・ロボッ

ト・SF・メルヘン・スポーツなど各種のタ

イプを網羅しており,他の地域では敬遠され

る“純日本的なもの”例えば『ちびまる子ちゃ

ん』『忍者ハットリくん』なども歓迎され,ま

た『ひかるの碁』も高視聴率を上げている。◆最近の特徴では,バラエティー番組が急増

している点があげられる。特に人気があるの

は『学校へ行こう』『地球まるかじり』『愛の貧

乏大作戦』など。◆日本製の

である。●全年齢層=『渡る世間は鬼ばかり』『イマ

ジン』『GTO』など●中高年層=『暴れん坊将軍』『遠山の金さ

ん』など

その他,若者向けの,いわゆるトレンディ

ードラマ『ロングバケーション』『東京ラブス

トーリー』『ラブジェネレーション』なども繰

り返し放送されている。◆テレビCMでは,日本の商品のCMが25%

ぐらいを占める。“オニギリ・ライススナッ

ク”“ラーメン・ヌードル”“コスメティック”

“おもちゃ”など。他のアジア諸国では,日本

商品のCMに日本人・日本の風景をほとんど

使わないが,

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│223

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局    名 日本製番組(種別・時間) 主 な 番 組

台視(TTV) アニメ1週間=30分×12本 犬夜叉,デジモン・アドベンチャー,など

中国視(CTV) アニメ1週間=30分×14本 モンスター・ファーム,ポケモン,など

民視(FTV)

衛視中文台

超視

日本プロ野球・土日のみ(1300)

アニメ1週間=30分×63本

ドラマ・バラエティー・アニメ(週23本)

日本プロ野球・パ・リーグ

忍たま乱太郎,一休さん,デジモン・アドベンチャー,ドラゴンボール,ちびまる子ちゃん,など

八大綜合台アニメ月―金=毎日5本,土日=11本(30分×47)

ドラえもん,クレヨンしんちゃん,ひかるの碁,など

黄金娯楽台音楽番組・バラエティー・月-金=午前2-3本,土日=各8本

TOKIO(メントレG)・kinki kids

V6-VIVA V6,など

AXN動作台アニメ月―金=毎日30分×10-13本,日=30分×2

スラムダンク,ギャラクシーエンジェル,中華一番,今そこにいる僕,など

中得電影台 アニメ水木土日に1-2本 三国志,カムイの剣,超銀河伝説,など

ルパン3世,るろうに剣心,学校の怪談,など

八大劇TV アニメ毎日3-4(週23本) 爆転シュートベイブレード,など

緯来綜合台 アニメ1日=1-2(週11本) 魔法騎士レイアース,など

東風衛視 ボウリング(録画) ゴールデンボウル

三立都會台 アニメ(週56本) 遊戯王デュエルモンスターズ,メダロット,など

MUCH TV ドラマ一日1-3本 好述雙物語,など

ETJACKY CHNNEL アニメ一日3本 ムカムカパラダイス,など

華視(CTS) アニメ1週間=30分×14本ドラえもん,中華一番,遊戯王デュエルモンスターズ,ひかるの碁,など

表6 台湾:チャンネル別の日本製番組の放送状況─太字は高視聴率番組─

衛星放送(総合編成)

衛星放送(娯楽・音楽)

衛星放送(洋画専門)

(2003年5月)

地上波テレビ(5局中公共テレビ=公視を除く4局で日本番組を放送)

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。◆また,台湾のテレビ番組には

。JET日本台の

『北海道アワー(北海道テレビ提供)』『発見広

島(中国放送提供)』,国輿電視の『日本印象の

旅』『九州探検』など。北海道テレビによると,

この『北海道アワー』が始まってから(97年),

台湾からの団体旅行,特に雪見ツアーが急カ

ーブで増えたとのことである。◆台湾では,1980年代末ごろから起こったい

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│225

東森電影台 月―金アニメ(週10本) ガオガイガー,など

衛視電視台 水木金(各1本) ウルトラセブン,アンパンマン,など

通頻道 幼児向けアニメ(週41本) コメットさん,アンパンマン,ののちゃん,など

東森幼幼台 幼児向けアニメ(週140本)楽しいムーミン一家,しましまとらのしまじろう,やんちゃるもんちゃ

緯来電影台 日月火水の深夜(各1本) 伊賀忍法帖,狙われた学園,化石の荒野,など

衛星放送(子供・宗教専門)

衛星放送(映画(国産中心)専門)

NHKワールドTV(亜州衛星頻道)

国際放送総合編成(日英)

緯来日本台ドラマ・バラエティー中心総合編成(6時―2時=20時間)

成田離婚,お見合い結婚,利家とまつ,どっちの料理ショー,ウッチャンナンチャンのウリナリ,ロンドンブーツ大作戦,など

JET日本台ドラマ・バラエティー・日本の地方紹介など総合編成(19時間)

遠山金四郎,学校へ行こう,愛の貧乏大作戦,欽ちゃんの仮装コンテスト,北海道アワー,発見広島,など

国輿衛視バラエティー中心+ドラマ,日本の地方紹介など(20時間)

なんでも鑑定団,恋の片道切符,ペット大集合,クイズところ変われば,科捜研の女,日本印象の旅,九州探検,北海道自由行

全日通Z頻道 プロレス,他に釣り番組(18時間) 全日本プロレス,女子・男子プロレス

NHK BS1・2 衛星スピルオーバー 日本国内放送番組

衛星放送(日本番組専門チャンネル=東洋頻道)

局   名 日本製番組(種別・時間) 主 な 番 組

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わゆる などの,若

者中心の“日本ブーム”が,最近では中高年

層にも広がってきて,それが日本製テレビ番

組のマーケット性を不動のものにしている。◆日本製以外では,2001年ごろから,韓国製の

ドラマ・音楽番組の輸入が少しずつ増えてき

ている。“韓流”(韓国からの輸入の増加)と

も呼ばれていて,近い将来,台湾市場で日本・

韓国の競争が起きるであろうことを予測させ

る。

(2)韓国日韓共同制作で日本イメージ改善:輸入はアニメ,NHKドキュメンタリー

◆韓国では,1998年から2001年までの大衆文

化開放政策に伴い,若者たちの日本語・日本

文化への関心が高まり,高校で第2外国語と

して日本語を採用するところが急増した。

2002年2月15・16日,韓国では初めて,日

韓共同制作(日本のTBSと韓国のMBC)の

ドラマ『フレンズ』が放送され(視聴率15%),

社会的に大きな反響を呼んだ。このドラマの

主演女優は深田恭子で,その巧みな韓国語で

人気を集めた。MBCはまた,同年11月15日,

フジテレビとの共同制作ドラマ『ソナギ(雨

上がりの殺意)』を放送した。このドラマは,

日韓両国の風物を巧みに織り込んださわやか

なもので,これも話題になった。

2002年は日韓共同主催のワールドカップが

あり,そのことも加わって

。◆最近は韓国のテレビでの日本人タレントの

活躍もめざましい。『フレンズ』の主役の深田

恭子や米倉涼子のほか,韓国名「ユミン」で知

られる笛木優子の人気が高い。彼女はKBS・

MBC・SBSのテレビドラマに次々と出演,CM

でも人気第1位である。“純粋アミン”という

ファンクラブには1万人以上の会員がいる。

このほか,在日韓国人のグループ「SUGAR」

や,もと日本在住のSESのメンバー「シュー

(SHOO)」などの歌手も著名である。また,全

南大学教授の日本人・水野俊平は,流暢な全

羅道の方言を駆使してバラエティショー番組

に頻繁に出演している。◆韓国の放送政策を担当する文化観光部は,

2001年から,今後のテレビ・コンテンツの制

作・流通に関して“デジタル放送,衛星放送

の拡充のため番組制作を活性化する”“アジア

市場中心に積極的な輸出振興策をとる”など

の政策を進めているが,その結果,2002年度

の輸出は大幅に増加した(約2,620万ドル,前

年比52%増)。一方,輸入は約2,510万ドルで,

前年比23%増であったが,輸出増のほうが大

きかったため,

輸出先は,中国,台湾,香港で50%を占め

ており,番組種別では,アニメ・ドラマ・音

楽が90%である。中国,台湾では,こうした

韓国番組の進出を“韓流”と呼んでいる。◆輸入番組は,アメリカからのドラマ,映画

が全体の62%を占め,その他では日本からの

アニメ,ドキュメンタリーが中心という従来

のパターンはあまり変っていない。◆日本からの輸入は,今回のICFP調査では,

。主な

ものは次のとおり。

◎アニメ…『クレヨンしんちゃん』『遊戯王

デュエルモンスターズ』『ハム太郎』『めぞ

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ん一刻』『ドラえもん』など30シリーズ。暴

力場面や,裸のシーンや,純日本的なもの,

例えば,和服,下駄などは,リメイクまた

はカットされる。

◎ドキュメンタリー…輸入番組のほとんど

がNHK番組である。『ボルネオ熱帯雨林』

『北極熊』『現代マハラジャ伝』『英国王室』

『赤ちゃん,この素晴らしき生命』『天才ザ

ル・カンジくん』など30番組。

その他,スポーツ(主としてゴルフ)録画

番組が買われているが,他のアジア諸国で人

気の“日本製バラエティー番組”はほとんど

売れていない。

日本製のドラマ番組と同様,

。◆韓国では,最近インターネットや携帯電話

の使用が日常化し,これに伴って,インター

ネットを通じる番組サービスが進んでいる。

公共放送KBSの場合,ホームページ(www.

kbs.co.kr)で,①ナマ放送(ON-AIR)②もう

一度見る(VOD)③もう一度聞く(AOD)な

どのプログラムを無料で提供している。

ICFPの調査では,2001年に

(分析:李 錬)

(3)中国ゴールデンアワーの外国製ドラマ・映画放送禁止:ドラマ・バラエティーなどに多い日本模倣

◆中国では,従来,海外からの衛星放送受信

を制限し,特に“海外番組を録画して放送す

ること”を厳しく規制しているが,それに加

えて2001年から,中国ラジオテレビ総局が,

「テレビドラマ輸入に関する規定」を設けて,

をとった。

国産のドラマ・映画を奨励するためのバック

アップ措置で,これによって,中国の外国ド

ラマ・映画の輸入は大きく減った。

2003年1月現在で,CCTV-6や,北京BTV-

4など映画・ドラマ系チャンネルは,輸入番

組が全体の約10%まで減少した。◆そして,かつての“香港・台湾ドラマブー

ム”“日本の青春ドラマブーム”は去って,

“本土ドラマ(国産)ブーム”の時代に入った

といわれている。

輸入番組では,アメリカ映画が約50%を占

めているが,2000年に入ってから人気が出て

来た“韓国製のドラマ”は,まだ結構視聴率

が高く,輸入量は日本製ドラマを上回ってい

る。日本製では,最近,CCTV-6で,『寅さ

んシリーズ』が放送されて人気を呼んだ。

中国の国産ドラマの主なジャンルは時代劇

と刑事ものだが,若者向けのシリーズドラマ

の多くが,

である

ことが話題を呼んでいる。その例として次の

ようなものがある(いずれも1999年制作)。

(例)『将愛情併行到底』…『あすなろ白書』

『東京ラブストーリー』

『夏日恋語録』…『ロングバケーション』

『恋愛故事』…『ラブジェネレーション』

(それぞれイミテーション)◆最近は,中国制作のクイズ・バラエティー

番組も多く放送されているが,これも日本の

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│227

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番組を真似たものがほとんどである。その典

型的な例が,北京放送局の『八方食 』とい

う料理番組で,日本の『料理の鉄人』と構成

が全く同じである。

バラエティー番組では,日本・韓国の企業

がスポンサーになっていて,企業名がそのま

ま番組名になっているものも散見される。

(例)『東芝動物園』(スポンサー=東芝),

『三性智力車』(スポンサー=韓国・三星)◆音楽番組でも,国産番組奨励策をとってい

る。CCTVの娯楽チャンネルでゴールデンア

ワーに放送されている『同一首歌(同じメロ

ディ)』は,中国の流行歌や民族音楽で構成さ

れていて全国的に視聴率をあげているが,

。StarTV傘下のポピ

ュラー音楽専門チャンネルのChannel Vは,

“日本・韓国の音楽事情を紹介する番組”も放

送している。

最近では,こうした番組の熱狂的ファンが,

「哈日族」,「哈韓族」(日本・韓国音楽ファン)

と呼ばれるようになった。◆中国ラジオテレビ総局は,2002年から,“17

時から19時を子ども番組時間帯”と定めた。

である。『ドラえもん』『コナン』

『Kitty』『巨人の星』『スラムダンク』などに人

気が集まっており,キャラクターグッズも飛

ぶように売れている。

これまで中国制作のドラマで“日本人が登

場する場合”はほとんど軍人や役人で,悪役

ときまっていたが,2001年制作の

。これは,中国に

おける日本人イメージが,最近少しずつ好転

しつつある状況を反映するものといえる。

また,テレビCMでは,日本企業のCMで

“中国人タレント(特に女優)を起用したもの”

が増えている。「キャノン」「トヨタ」「P&G」

「エプソン」などで,中国では,好感を持って

受け取られ,広告効果もよいといわれている。

(分析:王 冰 翻訳:賈 珊)

(4)アメリカ爆発的アニメ人気:テレビ経由の日本イメージのステレオタイプ:日系チャンネルも盛況

◆アメリカ向けの日本製番組の輸出は,本数・

時間量では台湾に次いで世界2位だが,番組

販売価格が高いため,金額ベースでは断然ト

ップであると推定される。

対米輸出の大部分はアニメだが,JETRO

(日本貿易振興会)によると,日本製アニメの

市場規模は(テレビ番組,映画,ビデオ,キャ

ラクターグッズ合わせて)2002年1年で,43億

600万ドル(約5,200億円)に達したといわれる。◆ICFPの1980年調査の時点では,日本アニ

メは,その暴力性の故に敬遠され,名作物語

などの「ソフトアニメーション」がCATVで

放送される程度であったが,1990年代,特に

『ポケモン』以後,人気が急上昇している。

最近アメリカで見られている日本製『アニ

メ番組』について,2003年1月現在で調査し

たところ42作品(シリーズ)が放送されていた。

FOXネットワーク(FOXFAM)や,CATVのカ

ートゥーン・ネットワーク(TOON),WPIX,

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WNYW,INTLなどのチャンネルで,子ども

を中心に確実に視聴者を確保している。

2000年までは,

に人気が集中していたが,最近では,対

象年齢層の幅の広い

や ,それに

などに人気が移りつつある。こ

れと平行して,日本制作の劇場映画アニメ,

『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』などのブ

ームが加わって

という図式が定着してきた。

特に大学のキャンパスでは,日本のアニメ

研究がさかんで,「コーネル・日本アニメ研

究会」「ミシガン大学日本アニメ映画研究会」

「コネチカット大学アニメ研究会」など,ほと

んどの大学にアニメ研究グループがあり,

“日本アニメ上映会”が頻繁に行われている。

特に熱心なファンは,翻訳でなく,日本語の

オリジナルを楽しんでいるものも多い。

かつては,日本アニメの暴力性が批判の対

象となり,“日本アニメ放送反対運動”が行わ

れた時期もあったが,最近は,リメイクによ

って,暴力場面や,せりふをカットするので,

そうした批判はほとんど聞かれない。◆アニメ番組の他で,アメリカでよく見られて

いる日本製テレビ番組は『料理の鉄人(IRON

SHEF)』(フードチャンネルで放送)である。“ニ

ューヨーク在住の成人30人を対象に行ったア

ンケート(2002年8月)”の結果,26人がこの番

組を見ており“エキゾティック・ジャパン”の典

型として興味を示した。アメリカでは多勢が,

“日本の家庭では,この『料理の鉄人』に出て

くるように,創作料理を作り,食事の度ごと

に,料理を少しずつ綺麗に皿に取り分けて食

事を楽しんでいる”とイメージしているらし

い。日本文化に対するポジティブ評価である。

(表7)

◆一方,

ICFPが1999年に行った「外国のメディア

の伝える日本イメージ」調査の際に,ホフス

トラ大学準教授のスーザン・J・ドラッカー

が,その報告の中で,「アメリカ制作のテレビ

番組で,“日本を素材とするもの”は少ない。

アメリカにおける“メディアの中の日本イメ

ージの調査”は困難を極めた」と述べている

が,今回の調査でも,その状況に変わりはな

い。アメリカのテレビ番組で,“日本・日本

人がメインの役割を果たしているもの”は皆

無であった。

たまに日本人が登場するときは“日本人特

有の”といういわくつきのコメントがついて

いることが多い。最近の数少ない例を拾うと

次のようなものがあった。

2002年後半にFOXネットワークで放送され

たシリーズドラマ(コメディ)『アンデクレア

(Undeclared)』で,日本人女性(工藤夕貴)が,

電子辞書を使いながらアメリカ人学生と会話

をしていた。アメリカ人学生の間では,“会

話学校の日本人生徒や大学の日本人留学生は,

いつも電子辞書を持ち歩き,分からないこと

があると,すぐに辞書で調べる”というのが

日本人特有のパターンとして認識されている。

毎年ニューヨークで行われる「ホットドッ

グ大食い選手権」には必ず日本人選手が出場

し,ここ2,3年優勝をさらっている。これ

がローカルテレビで放送されて,話題をさら

う。アメリカ人にとっては,“あんな小柄な

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│229

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日本人が,50本のホットドッグを一気に平ら

げる”というのが驚異らしい。

おまけに,このインタビューは,茶室ふう

の小さなタタミの部屋で行われ,アメリカ人

の持つ“日本ステレオタイプ”を端的に示し

ていた。

また,FOXネットワークの『男と野獣(Man

vs Beast)』というバラエティー特番でホット

ドッグ大食い大会の優勝者の日本人(小林尊)

が登場した。

アメリカのネットワークあるいは,ニュー

スチャンネルで扱われる“日本関連ニュース”

については,日本のテレビが毎日のようにア

メリカのニュースを伝えているのに比べると,

その割合はきわめて低いと思われる。

今回の調査で,“アメリカのテレビニュー

スで伝えられた最近の日本関連ニュースで記

憶に残っているもの”を尋ねたところ,次の

3本(いずれもABCワールドニュース・トゥ

ナイト=ピーター・ジェニングス)があげら

れたに過ぎない。

「小泉首相の靖国神社参拝」「天皇,前立腺

ガンの手術」「携帯電話にのめりこむ高校生」

アンケート調査の結果,日本関連のコマー

シャルでは,ほとんどが,日本車の名前(三

菱・ホンダ・トヨタ・日産)をあげた。日本

車のCMは,どれも“日本製であることを明

確にしていない”のが特徴だが,アメリカの

視聴者は,日本車に対して,概して“肯定的

なイメージ”を持っていて,日本・日本人が

登場しなくても車の特徴から判別できるよう

である。

その他,日本人らしい人物や風景がCMに

登場する場合,大抵“他のアジア(中国・韓

国など)と明確に区別できない”ことが多い。◆アメリカのテレビの特徴の一つに,“マイ

ノリティ向けのチャンネルの多いこと”があ

げられるが,

を編成しているチャンネルがいくつ

かある。全米をカバーしているのは,NHK

の海外向け衛星放送『NHKワールド(無料)』

と,『NHKワールドプレミアムの衛星放送

(有料)』の一部と民放から購入した番組とで

編成する衛星放送『TVジャパン(JNG)』とで

ある。いずれも日本語放送(一部英語字幕)

が中心で,英語ニュース(NHKワールド)も

組まれている。

=NHKの総合テレビの

ニュースと番組(ドキュメンタリー,実用番

組<健康・料理など>)の再放送と,『日本列

島ふるさと発』『東京マーケット情報』などの

海外向け番組で編成している。

=NHKワールドプレミアムのニュー

ス・連続ドラマ,日本の民放から購入するド

ラマ,バラエティー番組などで編成している。

しかし,NHKワールド,TVジャパンとも

視聴者はそれほど多くない。むしろ,日本語

放送といえば,CATVの中に“日本語番組”の

枠を持っている4つのテレビ番組供給会社の

知名度が高い。ニューヨークの場合,

で,ニュース(NHK)と娯

楽番組(民放)が中心で,アメリカ人にも固

定視聴者がいる。

*人気番組の例 『食いしん坊万歳』『笑っていいとも』『ビューティフルライフ』『ドラマ愛を下さい』『所さんの目がテン』『ペット百科』など

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◆ハワイでは,日本のテレビ番組放送の歴史

のあるKIKU TVがドラマ・アニメを中心に

週間12本の日本製番組を放送(字幕つき)し

ているが,2002年9月現在で『Pretty Girls』

(18%)『Making it through』(17%)『利家とま

つ』(13%)『Kikaida』(12%)『ハグレ刑事』

(10%)など,かなりの視聴率をあげている。

日本経済の最盛期には,日本に

関するマスコミの報道は,ほとんど経済に関

するもので,アメリカ経済への脅威,あるい

は日本企業の対米進出などを基調にしていた

が,バブル崩壊以後,この種の報道は少なく

なり,いわゆるジャパン・バッシングは完全

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│231

表 7 アメリカ(ニューヨーク)で放送されている日本製のテレビ番組一覧(2002年10月)

番組ジャンル 番 組 名 放送チャンネル 放 送 時 刻

料理番組Iron Chef料理の鉄人

FOOD(Cable)Prime Time

7-7:30(Sunday)

ア ニ メPokemon

ポケットモンスターWB 11

Afternoon4-4:30(M-Fri)Morning

10-10:30(Sat)

ア ニ メYu-Gi-Oh!遊戯王

WB 11

Afternoon3:30-4(M-Fri)Morning

10:30-11(Sat)

ア ニ メDragon-Z

ドラゴンボールZCARTOON(Cable)

Prime Time6-6:30(M-Fri)

ア ニ メDigimon

デジタルモンスターFOX 5

Morning9:30-10, 10:30-11

(Sat)

ア ニ メDragon

ドラゴンボール47

(スパニッシュチャンネル)

Morning7-7:30,8:30-9

(Sun)

ア ニ メBeybladeベイブレード

Family(Cable)Morning

7-7:30,9-9:30(Sat, Sun)

特  撮PowerRangersパワーレンジャー

Family(Cable)Morning

10-11:30(Sun)8-8:30(Mon-Fri)

ア ニ メMedabotsメダボット

Family(Cable)Morning8:30-9

(Mon-Fri)

ア ニ メ

HamutaroハムタロウZoidsゾイドG-Gandamジー・ガンダム

CARTOON(Cable)

Morning7-

Afternoon4-

(Weekday)

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232

に姿を消した。

全体として,メディア経由の日本・日本人

のイメージは,前述の“日本=アニメ”とい

った表面的なものにとどまっているようであ

る。ひところ,話題になった,日本人ミュー

ジシャンたち(喜多郎・ヒロコ・久保田利

伸・宇多田ヒカルなど)や,オノヨーコ,引

田天功などもテレビには登場しない。

アメリカで活躍する日本人で話題になるの

は,野球選手ぐらいだろう。アンケート調査

の結果で,ほとんどのアメリカ人が知ってい

た日本人はシアトル・マリナーズのイチロー

選手であった。ニューヨークのテレビでは,

マリナーズの試合はあまり放送されないにも

かかわらず,各種のメディア経由で,イチロ

ーが喧伝され,人気の対象になっている。

イチローに続いて人気の的になりつつある

のが,日本の巨人軍からニューヨーク・ヤン

キースに移籍してきた松井選手である。松井

が2003年1月14日にニューヨークでお披露目

の記者会見を行ったときには,各チャンネル

(ABC・ESPN・FOX・NY1など)のニュー

ス番組で,その模様が繰り返し放送された。

(分析:高木美保)

(5)イギリス

日本製番組の大部分はアニメ:バラエティー・ドキュメンタリーの中の日本はネガティブなステレオタイプ

◆イギリスで放送されている「日本製テレビ

番組」はアニメがほとんどである(2000年下

半期現在)。アニメでも,地上波テレビでは,

民放ITV1の子ども向け時間帯(Citv)で『Card-

captors(カードキャプターさくら)』が放送さ

れているだけ,日本アニメはほとんどが衛星

放送・ケーブルテレビ(アメリカ系)で放送

されている。Foxkids,CNX(Cartoon Net-

work X),Nickelodeon,Sci-Fiなどで,アメ

リカ英語に吹き替え,暴力シーンや粗暴なナ

レーションはカットされている(『Dragon

Ball Z』など)。

1)Escaflowne(天空のエスカフローネ) 2)

Sailor Moon(セーラー・ムーン) 3)Shinzo

(マシュランボー)4)Digimon SeriesⅢ(デ

ジモン)5)Hamtaro(ハム太郎)

また,2002年のクリスマス商戦の目玉商品

は『Bayblade(ベイブレード)』のキャラクタ

ーグッズであった。◆バラエティー番組では,『Takeshi’s Castle

(風雲たけし城)』が話題を呼んだ。イギリス

では,ビートたけしが映画監督・俳優として

知られており,それがコメディアンとして出

演していることに興味をそそられたようであ

る。◆イギリス制作のバラエティー番組,ドキュ

メンタリー番組で,日本・日本人を取り扱っ

たものがいくつかある。

『Ban z a i』:ケーブルのE 4,地上波

Channel4で放送している“日本式”賭け番

組。Mr. Shake-hands Manという有名人に

ひたすら握手を求める“日本人”インタビ

ュアーが登場。番組では“日本古来の...”と

いうような言葉が頻繁に出てくるが“日本”

は,しばしば中国,香港と混同されている。

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『Ah-so Graham Norton』:アイルランド

出身の人気コメディアン・G.ノートンの日

本滞在記。日本のポルノサイト,ラブホテ

ル,プリクラ,鈴木その子などなど。

『Tarrant On TV』:著名な司会者・クリ

ス・タラントが世界各国の面白テレビ番組

を紹介する。かつてのクライブ・ジェーム

ズ・ショーをひきついだもの。日本の番組

が頻繁に出てくるが,そのほとんどがナン

センスものである。

『Correspondent : Hikikomori』:BBCの

東京特派員が,日本人の“ひきこもり現象”

について,独特の社会現象としてレポート。

イギリス人には理解しにくい問題らしい。

『Mondo Macabro』:日活ロマンポルノ

についてのドキュメンタリー。映画紹介と

監督,俳優へのインタビュー。

『Tokyo Bound : Bondage Mistress Of

Tokyo』:東京のSMクラブなどを取材。

“アンダーグラウンド・セックスシーンと

バー・ホステス”の紹介と銘打っている。

『The Beckham’s World Cup Charity

Party』:サッカーのD.ベッカム邸で,ワー

ルドカップ直前に行われた“日本式チャリ

ティ・パーティ”のもよう。顔を白塗りに

したゲイシャふうのウェイトレスなどが出

てくる。

『Frank Skinner : Kimonos For Goal-

posts』:人気コメディアンのフランク・ス

キナーが,ワールドカップを前に,日本・

韓国を訪れて,“両国で本当にサッカーが

理解されているか”を探る。日本では蹴鞠

を試みたりする。韓国は犬を食べる国のイ

メージ。

イギリスの日本関連番組は,ほとんどが,

このような風刺的な偏ったイメージのものだ

が,なかには,日本の現代文化を紹介するま

じめなドキュメンタリーもある。その例。

『Japanorama』:テレビ司会者・コメデ

ィアンで映画評論家でもあるジョナサン・

ロスが日本のアニメや映画,ゲーム,アー

ト,音楽,などを紹介する。30分の6回シ

リーズで,日本のサブカルチャーを的確に

捉えたものとして,在英日本人の間でも好

評だった。◆ドラマでは,BBCが1985年に放送した

『TENKO(点呼)』がUK Dramaというケーブ

ルチャンネルで,しばしば放送されている。

第2次大戦中,シンガポールの捕虜収容所で,

日本の軍人がイギリス女性を虐待するミニシ

リーズ。日本が極端にネガティブに描かれて

いる。◆テレビCMで日本が頻繁に登場するのが,

オーストラリア産のビール「Foster」である。

内容は,サイバー日本に住む独身日本人男性

が,お手伝いロボットを購入,出掛けるとき

に「掃除しろ」と命令するが,帰ってみると,

ロボットは,ビールを飲みながら掃除機と電

子レンジと戯れている,というもの。

その他では,Eurosports(スポーツチャン

ネル)で,日本の大相撲を場所ごとにダイジ

ェスト放送しているぐらいで,日本製番組,

日本を扱った番組は全体として,それほど多

くない。要するに,

といえそうである。

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│233

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234

ブライアン・モーランが,“British Images

of Japan(1999)”の中で,「イギリスの若者は,

日本が優れた製品を作ることは知っている

が,それを作っている人たちについては何も

知らない。一方,年配者は戦争中に日本人が

行ったことを許そうとしない」といっている

が,そうした状況はまだ続いているようであ

る。 (分析担当:櫻井 芳)

1. テレビ輸入番組の状況

◆今回の調査では,地上波・アナログテレビ

の東京キー局(NHK・民放合わせて7チャン

ネル)の2002年の6ヶ月(3・4・7・8・

10・11月)に放送された全番組を対象に『輸

入番組』の分析を行った。

*2002年6月には日韓共催の「ワールドカップ・サッカー」が行なわれ,特別編成が多かったため,この時期を避けてサンプル月を選んだ。

◆同期間の『輸入番組』について,「チャンネ

ル」「曜日」「放送時刻」「番組名」「番組の長さ」

「番組種別」「内容の概要」「制作国」「制作年」

を分類した。

*内容分析は,各局編成資料,テレビガイド,新聞解説欄,インターネット番組解説などによった。

◆分析結果はICFP(以前はITFP)が過去に行

なった調査(1993年,1980年)との経年比較

を行った。輸入番組実績をカウントする場合

は,時間量を2倍して年換算を行なった。

①輸入番組は3回の調査を通じて,全番組の

5%前後で安定している。

日本のテレビ番組(地上波アナログ,全国

ネットワーク)の中に占める外国制作の番組

(共同制作番組で主に外国で制作したものを

含む)は,年間に換算して3,120番組,3,036

時間,全放送時間の4.9%であった。

これは,表8に示すように,時間量は増加

しているが,全放送時間量が毎回増えている

ため,その比率は,ほとんど変わらず,この

20年間,5%前後で安定しているといえる。

②局別では,「テレビ東京」が輸入番組が多い。

チャンネル別に輸入番組の比率を見ると,

表9のとおり,

であった。これは同局

が,午後と深夜の時間帯に外国映画・ドラマ

を定常的に編成していることによるものであ

る。次いでNHK教育テレビが5.5%,その他

のチャンネルは3~4%台で大差がない。

③輸入番組はほとんどアメリカ制作である。

輸入番組のうち,制作国が不明のものが33

%あったが,これを除いて制作国別の比率を

見ると,

。2位は

Ⅲ日本への輸入番組および日本制作番組の中の外国要素(IN-COMING)

表 8 輸入番組放送本数・放送時間量・全放送時間に占める比率

2002年 1993年 1980年

分析した月2002年3・4・7・8・10・11月

1993年7月~12月

1980年10月~1981年9月

輸入番組本数(年換算)

3,120本 2,656本 2,631本

輸入番組総時間量(年換算)

3,036時間 2,843時間 2,332時間

全放送時間に占める輸入番組の率

4.9% 5.2% 4.9%

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イギリス制作で,この順位・番組数は,過去

2回の調査でもほぼ同様であった(表10)。

なお,2カ国以上の共同制作番組が32時間

(全体の2.6%)あるが,“米英”“米伊”など,

アメリカとの組み合わせがほとんどであった。

④番組種別では,映画・ドラマだが減少傾向。

スポーツ中継増加。

番組種別でみると,映画とドラマを合わせ

て,時間量で64.7%,番組本数で49.4%と多

いが,1993年と比べると,両者ともかなり減

少している。衛星放送の普及が進むにつれて

映画・ドラマ番組が専門チャンネルに移行し

て行く傾向を示すものといえる。ドキュメン

タリーも番組本数で11.8%と1993年の半分で

ある。

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│235

表 9 チャンネル別の輸入番組比率(2002年)

チャンネル全時間量に占める

輸入番組の比率

時間量での

構成比率

番組数での

構成比率

NHK総合 3.3% 9.6% 15.2%

NHK教育 5.5% 16.0% 34.6%

日本テレビ 4.3% 12.6% 7.6%

TBS 4.1% 12.0% 8.3%

フジテレビ 3.8% 11.2% 9.6%

テレビ朝日 3.8% 11.0% 6.2%

テレビ東京 9.5% 27.6% 18.3%

全局 4.9% 100.0% 100.0%

100%(年換算)= 3,036時間 3,120番組

表 10 輸入番組の制作国・地域別比率(制作国の判明した番組のみ)

2002年 1993年 1980年

国・地域名(番組数順位) 時間量で 番組数で 番組数で 番組数で

1.アメリカ 79.6% 82.6% 72.8% 74.9%

2.イギリス 6.3% 5.4% 9.3% 7.9%

3.イタリア 2.8% 1.9% 2.4% 2.6%

4.台湾 0.1% 1.4% ── ──

5.韓国 2.0% 1.2% ── ──

6.フランス 1.3% 1.1% 4.1% 2.0%

7.香港 1.2% 0.8% 1.1% ──

8.オーストラリア 0.7% 0.7% 1.5% ──

9.ドイツ 0.7% 0.6% 1.1% 1.4%

10.スペイン 0.4% 0.5% ── ──

表 11 輸入番組の番組種別ごとの比率

2002年 1993年

番組種別 時間量で 番組数で 番組数で

映画 47.3% 23.8% 35.0%

ドラマ 17.4% 25.6% 30.4%

ドキュメンタリー 6.2% 11.8% 23.8%

報道 0.6% 1.2% ──

スポーツ中継(録画含む) 15.8% 9.7% 0.2%

アニメ・人形劇 6.5% 18.8% 6.6%

音楽 5.1% 7.0% ──

バラエティー 0.7% 1.3% ──

その他 0.6% 0.6% 4.1%

100%(年換算)= 3,036時間 3,120番組 2,656番組

注:──は調査時,上位10カ国に入っていなかった。

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236

前回調査に比べて増加しているのは,スポ

ーツ中継で,野球,サッカーなど日本人選手

の活躍する試合の中継が大部分である。

その他,アニメ(18.8%),音楽(7.0%)も

増えている(表11)。

なお,1980年調査では,映画,ドラマ合わ

せて輸入番組(時間量)の85%を占め,その

85%は“アメリカ制作”であった。

2. 日本制作番組の中の外国要素

◆今回の調査では,輸入番組以外の日本制作

番組で,“外国・外国人をテーマとしたもの”

“ロケ地が外国であるもの”など,外国要素を

中心とした番組,あるいは番組の中のセグメ

ント(部分)を取り出して内容分析した。

*「外国要素」を判定する場合,その範囲を狭義に限定した。除外したものの例は,次のようなものである。“外国音楽が使われているもの(その紹介を目的とするものは該当)”“日本社会に定着している外国(料理,服装,調度品,その他外国製品など)”“日本に定住して活躍している外人タレント,スポーツ選手など(特定個人の外国関連の話題は該当)”

分析対象としたのは,輸入番組の場合と同

様,地上波・アナログテレビの東京キー局

(NHK・民放合わせて7チャンネル),サン

プル番組は,≪2002年10月21日(月)~27日

(日)の6時~24時(18時間)に放送されたも

の(総時間=52,920分)≫である。

なお,「輸入番組(スポーツ中継を含む)」

「ニュース・ワイドショー」「CM」は別途分析,

「外国語講座番組」「番組予告」「気象番組」は

除外した。結果の概要は次のとおりである。◆全体状況

①“外国要素”中心の番組・セグメントの割

合は6.6%

外国要素を含む番組は,番組数で177本(番

組全体が外国要素のものが83本,外国要素の

セグメントを含む番組は94本・286セグメン

ト)で,

*“番組全体が外国要素”の番組の主要部分は,定時枠番組(クイズ・バラエティー,ドキュメンタリー)で,サンプル週間に次の10番組が編成されていた。「世界まる見え!テレビ特捜部(NTV)」「地球ふしぎ大自然(NHK総合)」「ザ・世界仰天ニュース(NTV)」「世界痛快伝説!運命のダダダダ-ン(テレ朝)」「ドキュメント地球時間(NHK教育)」「アジアの教室(NHK教育)」「素敵な宇宙船地球号(テレ朝)」「世界ふしぎ発見(TBS)」「世界ウルルン滞在記(TBS)」「世界の車窓から(テレ朝・帯番組=1番組7本)」

第2回調査(1993年11月)の結果を,今回

と同様の条件で換算すると,外国要素中心の

番組・セグメントは対象時間量の約9%であ

ったから,今回は若干の減少になる。

②外国要素中心の番組・セグメントは,週末,

夜間が最も多い。

表12,表13に示したように,外国要素中心

の番組・セグメントは週末,特に土曜日に多

く,時間帯では夜間が最も多い。

③番組カテゴリー別に見ると,娯楽(クイ

ズ・バラエティーなど)が最も多い。(43%)

ドキュメンタリー(33%),報道(12%)が

これに次ぐ。他のカテゴリーは,いずれも

3%以下と少ない(表14)。

*「ニュース・ワイドショー」を対象外としたにもかかわらず,「報道」が,かなりの割合を占めているのは,『ブロードキャスター(TBS)』のように,バラエティー番組だが,“ワイドショーの内容紹介にかなりの時間を当てている”例があるためである。

④“番組の制作・構成をどこで行ったか”に

ついては,“日本と外国の両方で構成”が

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57%を占めた。その他では“日本で構成”が

25%,“外国で構成”は19%であった。

⑤番組の中で,“外国・外国人をどのように

取り上げているか”という点では「外国・外国

人の紹介を“外国で行ったもの”」が約5割に

上った。その内訳は,日本人の取材(26.0%)

と外国人によるもの(23.2%)であった(表15)。

次いで「外国で起こった事件等をテーマとす

るもの」が合わせて33.9%,「日本における外

国・外国人の紹介」18.7%,「外国での日本・

日本人の紹介」12.1%,「日本と外国との関係」

7.5%で,「国際的イベントを扱ったもの」は

日本・外国合わせて2.4%と少なかった。

⑥外国関連番組の対象となった国は,アメリ

カが29.9%と最も多かった。

ヨーロッパ諸国と中国,北朝鮮,韓国など

がこれに続く。北朝鮮が多いのは,サンプル

ウィークが『北朝鮮拉致日本人帰国』の1週

間後であって,それがバラエティー番組など

で取り上げられたことによるものである。第

2回調査(1993年11月)でも,同様の調査を

行っているが,対象国の傾向はよく似ている

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│237

表 12 曜日別

曜日別 数 時間(分) 数 時間(分) 合計時間 平均時間

月曜日 10 184 32 217 401 9.5

火曜日 15 271 24 125 396 10.2

水曜日 9 94 17 171 265 10.2

木曜日 6 48 26 184 232 7.3

金曜日 8 158 30 205 363 9.6

土曜日 20 579 47 478 1,057 15.8

日曜日 18 486 24 286 772 18.4

総計 86 1,820 200 1,666 3,486 12.2

番 組 全 体 セグメント

表 13 時間帯別

時間帯別番組+セグメント

時間量(分)

平均時間量・分

6-8 34 289 8.5

9-11 32 439 13.7

12-14 68 806 11.9

15-17 33 334 10.1

18-20 41 662 16.1

21-24 78 956 12.3

計 286 3,486 12.2

表 14 番組カテゴリー別

カ テ ゴ リ ー 分数 比率

ドキュメンタリー 1,165 33%

報道 420 12%

スポーツ&イベント 20 1%

アニメ 122 3%

児童 28 1%

音楽 102 3%

娯楽(クイズ・バラエティーなど) 1,509 43%

教育 91 1%

その他 69 2%

計 3,486 100%

表 15 外国・外国人の取り上げ方

取り上げ方の種類 分数 率

全体 3,486 100%

外国で,外国・外国人を紹介するもの

外国人が 809 23.2%

日本人が 907 26.0%

日本で,外国・外国人を紹介するもの 651 18.7%

外国で,日本・日本人を紹介するもの 421 12.1%

外国で起こった事件等をテーマにするもの

外国人が取材 296 8.5%

日本人が外国で取材 373 10.7%

日本での解説など 516 14.8%

日本と外国との関係を取り上げたもの 263 7.5%

国際的イベント(国際会議など)

外国で 59 1.7%

日本で 25 0.7%

その他 394 11.3%

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238

(表16)。

なお,第1回調査(1981年11月)でも同様

の調査を行っている。分析方法が違うので,

単純比較はできないが,対象国の順位は次の

とおりで,上位は今回調査とほぼ同じである。

1)アメリカ 2)イギリス 3)中国

4)イタリア 5)フランス 6)西ドイツ

7)カナダ  8)イラン

◆外国関連番組の外国・外国人の描写の仕方

外国関連番組について

(複数コーダーによる)。

全体として「好意度」では,

が60%,“どちらともいえない”が

36%で,“非好意的”はわずか3.7%であった。

また「普通度」では,

が52%,“どちらともいえない”が23%,

“特殊な状況”は25%であった。外国にとっ

てネガティブな描かれ方は極めて少ないとい

える。

上位10カ国の好意度・普通度

外国関連番組に登場する頻度の多い10カ国

を対象にその国に対する描き方の「好意度」

「普通度」を見ると以下のようであった。

「好意度」は,表17のとおり。

表 16 外国関連番組の対象国

国   名 分数 率

1 アメリカ 1,041 29.9%

2 フランス 576 16.5%

国   名 率

1 アメリカ 46.6%

2 イギリス 19.8%

3 中国 313 9.0% 3 フランス 12.2%

4 イギリス 302 8.7% 4 中国 11.9%

5 イタリア 301 8.6% 5 ロシア 7.9%

6 北朝鮮 299 8.6% 6 ドイツ 7.1%

7 ドイツ 130 3.7% 7 イタリア 5.5%

8 オーストラリア 121 3.5% 8 オーストラリア 5.1%

9 韓国 118 3.4% 9 ポーランド 4.3%

10 スイス 106 3.0% 10 スウェーデン 4.3%

2002年 1993年

表 17 外国関連番組の「好意度」(外国関連上位10カ国)(%)(2002年)

国   名 好 意 的 どちらともいえない 非好意的

アメリカ 69.2% 21.5% 9.3%

フランス 69.1% 30.9% 0.0%

中国 55.9% 44.1% 0.0%

イギリス 45.7% 43.4% 10.9%

イタリア 91.0% 9.0% 0.0%

北朝鮮 4.3% 83.6% 12.0%

ドイツ 80.8% 19.2% 0.0%

オーストラリア 39.7% 60.3% 0.0%

韓国 63.6% 36.4% 0.0%

スイス 76.4% 23.6% 0.0%

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。番組内容が,主としてその

国の文化,社会,芸術に関連するものであっ

たためと思われる。アメリカ,イギリスは,

好意度は高いが“非好意的”も1割近くある。

これは,番組内容が多岐にわたっている場合

には,その中にネガティブな情報も含まれる

結果になることを意味する。

“非好意的”が最も多いのは北朝鮮だが,こ

れは,前述のとおり,“日本人拉致問題の報

道がバラエティー番組で取り上げられた”結

果である。

「普通度」を国別に見ると,「特殊な状況を

描いたもの」が北朝鮮で73.9%と高く,アメ

リカも42.7%であった。いずれも,バラエテ

ィー番組などで,事件,事故,戦争などの報

道が取り上げられた結果である(表18)。

カテゴリー別好意度・普通度

「好意度」を番組カテゴリー別に見ると,

“好意的に描いたもの”は,「教育」(96%)「音

楽」(76%)「娯楽」(66%)などに多く,“非好

意的なもの”は,「報道」に多かったが,約

10%で,どのカテゴリーも非好意度はあまり

高くない(表19)。

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│239

表 18 外国関連番組の国別「普通度」(外国関連上位10カ国)(%)(2002年)

国   名 普通の状況 どちらともいえない 特殊な状況

アメリカ 38.9% 18.4% 42.7%

フランス 75.2% 18.8% 6.1%

中国 69.0% 19.5% 11.5%

イギリス 54.0% 12.6% 33.4%

イタリア 81.4% 14.0% 4.7%

北朝鮮 20.4% 5.7% 73.9%

ドイツ 70.0% 16.2% 13.8%

オーストラリア 82.6% 0.0% 17.4%

韓国 22.0% 77.1% 0.8%

スイス 91.5%   8.5% 0.0%

表 19 外国関連番組のカテゴリー別「好意度」(%)(2002年)

カテゴリー 好 意 的 どちらともいえない 非好意的

ドキュメンタリー 70.0% 24.9% 5.2%

報道 29.8% 60.5% 9.8%

スポーツ・イベント 65.0% 35.0% 0.0%

アニメ 0.0% 100.0% 0.0%

児童 100.0% 0.0% 0.0%

音楽 75.5% 24.5% 0.0%

娯楽 65.7% 32.5% 1.8%

教育 96.1% 0.0% 3.9%

その他 4.3% 95.7% 0.0%

全体 60.4% 35.9% 3.7%

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240

「普通度」を同じくカテゴリー別に見ると,

“特殊な状況を描いたもの”が,「報道」と「児

童」(ともに約54%)で高くなっているが,

「報道」の場合は,バラエティー番組内のセグ

メントで,『北朝鮮拉致事件』が報道された結

果であり,「児童」の場合は,“架空の世界”

を描いた番組であったためである(表20)。

以上の分析結果が示すように,テレビの一

般番組は,多くの場合,外国・外国人を比較

的“好意的”に,また,その国を“特殊な状況

としてでなく”描いているため,結果として,

外国・外国人のポジティブ・イメージ形成に

役立っているといえるが,“番組で取り上げ

られる外国が,アメリカ,ヨーロッパに偏し

ていること”,“テレビ報道では,外国描写の

好意度・普通度が低くなること(次章に詳述)”

などを考え合わせると,その効果を過大に評

価することはできない。

3. ニュース・ワイドショーの中の外国要素

東京キー局のテレビ報道番組(ニュース・

ワイドショー)が,外国関連事象をどう扱っ

ているかを,一般番組の分析に用いた同じサ

ンプルウィーク(2002年10月第3週)につい

て分析した。期間が短かったため,報道番組

の特性上,ニュースアイテムが特定ジャンル

に偏り,データの統計的処理には多くの問題

が残された。因みに,このサンプルウィーク

は『北朝鮮拉致被害者の帰国』から1週間後

であり,週間を通してその関連のニュースが,

NHK・民放のニュース・ワイドショー放送

時間の1割近く,海外関連報道の6割弱を占

めた。

従って,データ処理に当たっては,この

『北朝鮮拉致報道』を除く報道についても別途

分析した。その結果得られた“テレビの外国

関連報道の傾向”を,過去の調査結果と比較

して列記すると次のとおりである。◆対象としたテレビ報道番組は,次の2種に

分類した。

『二ュース』=従来の“マスコミの議題設定機

能”に対応する番組。速報性・啓蒙性中心。

ストレートニュース番組・夜のキャスター・

ニュースなど。

『ワイドショー』=ヒューマン・インタレスト

に合わせてエンターテイメント化した情報番

組(民放の場合は,ニュース・時事解説・芸

能関連ゴシップなど広範にわたる。NHKは

ニュース,プラス地方の話題,ミニドキュメ

表 20 外国関連番組のカテゴリー別「普通度」(%)(2002年)

カテゴリー 普通の状況 どちらともいえない 特殊な状況

ドキュメンタリー 46.1% 29.7% 24.2%

報道 37.9% 8.1% 54.0%

スポーツ・イベント 20.0% 30.0% 50.0%

アニメ 68.0% 9.8% 22.1%

児童 46.4% 0.0% 53.6%

音楽 100.0% 0.0% 0.0%

娯楽 57.7% 22.1% 20.2%

教育 96.1% 3.9% 0.0%

その他 4.3% 95.7% 0.0%

全体 52.2% 22.9% 24.8%

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ントなどで構成するもの)。

また,『討論番組』,『ニュース解説』は対象

としなかった。

『放送研究と調査(2003/7)』掲載の論文

「テレビ編成の50年」では,最近のテレビ編

成の特性を“ナマ番組”“ワイド化”“報道情報

番組の増加”としているが,今回のサンプル

ウィークでは,そのことを如実に示している。

表21のとおり,1週間で『ニュース』が4,931

分,『ワイドショー』が9,383分,合計14,314

分で,6時~24時の放送時間の32%を占めて

いる。これは,1982年より22%多く,1992年

より11%多い。

そして,このナマ・ワイド時間の増加が,

重大ニュース,外国関連ニュースに関して,

フレキシブルな編集を可能にし,その報道量

を増加させる要因となっている。

しかし,それが同時に,“メディア・スク

ラム”などといわれる過剰取材の素地ともな

っている。

特にテレビ東京を除く

,そ

れが,大事件の集中大量報道につながってい

る(サンプルウィークの場合『北朝鮮拉致事

件関連報道』『モスクワ劇場占拠事件』『アメ

リカ連続射殺事件』があり,この3事件だけ

で,週間の外国関連ニュースの7割以上を占

めている)(表22)。

とそれに関連す

るハードニュース(外交,政治など)であっ

て,ソフトニュース(社会一般,文化芸術,

風物・話題,行事など)は極めて少ない。

外国関連ニュース(件数)をカテゴリー別

に見ると,1)外交(901件) 2)事件(犯罪

含む)(822件) 3)軍事(441件) 4)政治

(148件)であった。これらの項目は時間量で

見ると全体の約80%である。北朝鮮拉致事件

を除いたものについて見ても,その割合はほ

とんど変らない。

ソフトニュースは,スポーツ(124件=外

国での野球・サッカーの日本人選手の活躍が

ほとんど),文化・芸術(84件=国際映画

祭・世界の書籍展・日本人芸術家の海外での

活躍・ハリーポッターの本発売好評などそれ

ぞれ重複放送)が目立った程度で,各チャン

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│241

表 22 外国関連ニュース時間(統計=4,690分)(2002年)

ニ ュ ー ス 国 名 長さ(%)

北朝鮮拉致事件関連 北朝鮮 2,759分(58.8%)

モスクワ劇場占拠事件 ロシア 355分( 7.6%)

アメリカ連続射殺事件 アメリカ 247分( 5.3%)

表 21 テレビニュース・ワイドショー放送時間(1週間)(2002年)

局  名 ニュース(分) ワイドショー(分) 計(分) 全放送時間比(%)

NHK 1,297 1,029 2,326 30.8%

日本テレビ 922 1,950 2,872 38.0%

TBS 722 1,279 2,001 26.5%

フジテレビ 850 1,325 2,175 28.1%

テレビ朝日 466 3,600 4,066 53.8%

テレビ東京 674 200 874 11.6%

全体 4,931 9,383 14,314 31.6%

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242

ネルとも報道量は僅かである。

その結果,外国関連ニュースのかなりの部

分が,

(表23)。

対象国のうち,“ポジティブ・イメージ”の

ニュースが多かったのは,イギリス,イタリ

ア,オランダ,フランス,香港,スペイン,

および,“猟銃連続射殺事件を除くアメリカ

関連ニュース”で,その他の国は,“ネガティ

ブ”か,“どちらともいえない”とイメージさ

れている。

サンプルウィーク中の外国報道時間量を対

象地域別に見ると表24のとおりである。なお,

地域別のニュース情報の偏りは,ICFPの過

去の調査でも,明らかにされている。サンプ

ルは,NHK・TBSのニュースだが,表25の

ように,“情報のアメリカ偏向”が指摘されて

いる。

映像ニュースのソースとしては,NHK・

民放とも,複数の外国通信社,多くの外国テ

レビ局と日常的に契約している。また,大事

件報道では特派員の現地からのレポートの頻

度が高くなっている(表26)。関連国数・件数

はマルチカウントであって,“通信社・テレ

ビ局素材”と“特派員レポート”はかなりの部

分が重複している。また特派員レポート以外

に日本のテレビ局が映像自主取材している例

はほとんどない。

なお,外国関連のニュースの多くが,北朝

鮮拉致事件のように“日本国内の取材”のみ

表 23 外国関連報道が対象国をどうイメージさせるか

ネガティブイメージ どちらともいえない ポジティブイメージ

48.8% 46.0% 5.3%

表 24 報道対象になった外国(2002年)

国/地域名 時間量(分・%) 主 な ニ ュ ー ス

北朝鮮 3,265(57.6%) 日本人拉致事件,核開発問題

アメリカ 1,158(20.4%) 連続猟銃射殺事件,その他経済・社会・スポーツなど

ロシア 418( 7.3%) モスクワ劇場占拠事件

韓国 236( 4.2%) 北朝鮮関連,APEC会議

中国 58( 1.0%) 米中首脳会談,APEC会議

ヨーロッパ 249( 4.3%) 政治・外交・文化・スポーツ多岐にわたる

中東 93( 1.6%) イスラエル爆弾テロ,イラクのデモ

アジア(上記外) 81( 1.4%) ミンダナオ,バリ島のテロ事件,NHKPD事故死

アフリカ 11( 0.2%) 西ナイル熱など

オセアニア 10( 0.2%) 豪・フィリピン,テロ防止協定など

中南米 11( 0.2%) メキシコAPEC会議,チリでのアニ-タなど

国際機関 65( 1.1%) 国連でイラク決議で論争

不明 20( 0.4%)

表 25 テレビニュース報道量・地域別(1980年・1990年の調査結果)

局名・調査期間 アメリカ 西  欧 ソ連・東欧 アジア その他

1980/11 NHK TBS 7日間 30% 16% 12% 15% 27%

1990/5・6 同上  2月間 30% 17% 5% 26% 22%

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で構成されている。◆なお,NHKの場合,次のような外国通信

社・放送機関とテレビ素材入手のための契約

または協定を交わしている。

外国通信社=APTN,ロイターTV

放送連合=アジアビジョン,ユーロビジ

ョン

放送機関(ライセンス契約)=アメリカ

(ABC,CNN)イギリス(BBC,ITN)

イタリア(RAI) ロシア(RTR) 中国

(中央CCTV,上海SMC,広東GDTV)

フィリピン(SBS-CBN) 香港(ATV)

放送機関(協力協定,ニュース素材交換

覚書)=46カ国・63放送機関

このようなテレビ素材確保のための体制

は,民放各局でも(テレビ東京を除いて),

ほぼ同様である。

民放の場合,既述のとおり,ワイドショー

中心に,報道・情報放送の時間枠が大幅に増

加しているが,取材体制がそれに対応できて

いないため,新聞・雑誌記事の紹介によるニ

ュース報道の件数が多くなっている。NHK

とテレビ東京を除く民放各局の『ワイドショ

ー』では,大事件・災害などがない場合,平

均して放送時間の約20%が,新聞・雑誌記事

に依存しているが,外国関連ニュースでも,

“新聞記事(日本の新聞の伝える海外関連ニュ

ース)を読む”形のニュースが散見されるよ

うになって来た。

今回の調査のサンプルウィークの例では,

NTV・TBS・フジテレビ・テレビ朝日4局

で,123件(外国関連報道の9%)の外国関連

ニュースが,新聞記事紹介の形で伝えられた。

4. テレビCMの中の外国要素

テレビCMに関しては,2002年5月20~26

日(19時~24時)に放送されたCM素材・

1,474本について,“外国要素の分析”を行い,

過去の調査(1993年6月調査=4,010本)の

結果と比較した(分析:萩原 滋)。

結果の概要は次のとおり。

広告主の業種・商品分類…表27のとおり,

『食品・飲料』(23.9%)がもっとも多く,以下

『化粧品・洗剤』(13.0%)『薬品』(12.1%)『サ

ービス・娯楽』(8 .1%)『金融・保険業』

(7.0%)と続く。

前回に比べ,増加しているのは『化粧品・

洗剤』『薬品』『金融・保険業』で,減少してい

るのは,『食品・飲料』『電気機器』『家庭用

品・機器』である。

広告主…『日本企業/国産品』が87.8%,

『外資系/輸入品』が12.2%で,前回に比べ

『外資系/輸入品』のCMが若干増加している。

中心的キャラクター…『有名人(タレント・

スポーツ選手など)の登場するもの』が40.8

%でもっとも多く,『一般人』(38.9%)『商品

そのもの』(9 .2%)『架空の人間・擬人化』

(6.0%)などであった。(前回データなし)

登場人物の性別…『男』(31 .9%)『女』

(32.8%)『男女両方』(21.0%)『該当せず』

(14.4%)で,前回よりも男の比率が高くなっ

ている。

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│243

表 26 海外での映像素材

関連国 件  数

外国通信社・テレビ局素材 44 899(66.1%)

特派員の現地レポート 19 291(21.4%)

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244

登場人物の年齢…『若者・青年』(34.5%)

『中年・おとな』(32.4%)『複合』(13.6%)で,

『幼児・子ども』『老人』は少ない。この比率

も前回とほとんど変らない。

状況設定…『室内』(51.3%)と多く,『屋外』

(28.6%)『自然環境』(6.6%)であった。(前回

データなし)

外国要素としては,①外国人②外国風景③

画面文字④音声/ナレーション⑤BGMとし

ての外国語の使用,の5項目について分析し

た。

①外国人の登場するCM

『外国人の登場するもの』は17.7%

(中心的役割=12 .1%,周辺的役割のみ=

5.6%)で,前回とほぼ同じである(表28)。

CMに登場する外国人を職業・立場などに

ついて分類すると,『一般人』が71.9%と多い

のは前回と変らないが,有名人では,『スポー

ツ選手』が10.0%と,前回よりかなり増えて

いる(表29)。

外国人を人種別にみると,『白人』優位

(63.8%)は変らないが,『東洋人/中東・中

南米人』(11.9%)や,『多人種の複合』(17.3%)

の起用が前回より多くなっている(表30)。

CMに登場する外国人が“日本語を話すか

否か”では,『話さない』が,80.4%と多いが,

日本在住の外人タレントを起用することが多

くなったせいで,『流暢な日本語を話す』が増

加している(8.5%)(表31)。

CMに外国人が登場する場合,同一画面に

日本人が登場する場合は稀だが(25.8%),両

者登場の場合,その関係は『対等』がほとん

どで,『外国人優位』のケースは少ない(2.7%)

(表32)。

表 27 CM広告主の業種・商品分類

業種・商品2002年5月 1993年6月

本数 % 本数 %

基礎材 21 1.4% 93 2.3%

食品・飲料 353 23.9% 1,002 25.0%

薬品 178 12.1% 300 7.5%

化粧品・洗剤 191 13.0% 402 10.0%

衣料・身の回り品 37 2.5% 115 2.9%

出版 72 4.9% 156 3.9%

一般産業機器 2 0.1% 44 1.1%

精密・事務機器 58 3.9% 150 3.7%

電気機器 74 5.0% 274 6.8%

輸送機器 84 5.7% 210 5.2%

家庭用品・機器 93 6.3% 325 8.1%

住宅・建材 35 2.4% 166 4.1%

卸売・百貨店 21 1.4% 99 2.5%

金融・保険業 103 7.0% 182 4.5%

サービス・娯楽 120 8.1% 370 9.2%

その他 32 2.2% 122 3.0%

合計 1,474 100.0% 4,010 100.0%

表 28 外国人の登場するCM

外 国 人 2002年5月 1993年6月

外国人が中心的役割 12.1% 11.8%

外国人が周辺的役割 5.6% 3.2%

外国人登場せず 82.4% 85.1%

表 29 CMに登場する外国人の職業・立場

職業・立場 2002年5月 1993年6月

俳優/歌手/音楽家 13.1% 16.2%

スポーツ選手 10.0% 4.8%

その他有名人 3.8% 5.8%

一般人 71.9% 72.1%

複合 1.2% 1.0%

表 30 CMに登場する人物の人種

人   種 2002年5月 1993年6月

白人 63.8% 78.0%

黒人 3.1% 3.2%

東洋人/中東・中南米人 11.9% 9.3%

その他 3.8% 1.2%

複合 17.3% 8.3%

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②外国の風景を使ったCM

『外国の風景の使用』の率は,前回13.3%,

今回14.0%とほとんど変らない。

外国風景の対象地域では,

地域の特定できるものでは,欧米が25.3%,

アジアが10.7%であった(表33)。

対象地域を人口密度から見ると,『都市/

都会』(33.0%)『僻地・自然環境』(17.5%)

『田舎・田園風景』(15 .5%)『リゾート』

(13.1%)で,前回とほぼ同じである。

③外国語(文字)を使ったCM

で,前回(57.9%)よりかなり増

えている(表34)。

『社名,商品名をアルファベットで表記し

たもの』は(48.0%),前回とあまり変らない

が,『それ以外の外国文字』(26.7%)は大幅増

である。

“Shift the future”(日産)や,“For a

beautiful human Life”(カネボウ)“Inspire the

Next”(日立)のように,英語フレーズをCM

の最後に挿入することが慣習化しているとい

う側面もある。

④外国語(音声/ナレーション)を使ったCM

外国語の入ったナレーションは,『日本語

中心』(23.9%)『外国語中心』(3.4%)など,

前回よりもかなり増えている(表35)。

⑤外国語(BGM)を使ったCM

BGMでは,『外国人による外国語の歌』

(10.9%)など,若干増加の傾向があるが,全

体の約90%は“外国語BGMなし”であった。

テレビCMで,外国人・外国風景・外国文

字・外国ナレーション・外国BGMを含むも

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│245

表 33 CMの対象地域

対 象 地 域 2002年5月 1993年6月

北アメリカ 11.7% 19.5%

ヨーロッパ 13.6% 21.4%

アジア 10.7% 8.1%

その他 2.9% 16.0%

外国だが地域不明 61.2% 35.0%

表 32 外国人と日本人の関係

日本人との関係 2002年5月 1993年6月

日本人が優位 7.7% 8.2%

対等 15.4% 10.0%

外国人が優位 2.7% 1.8%

なし 74.2% 80.0%

表 31 CMの外国人が日本語を話すか

日本語の程度 2002年5月 1993年6月

流暢な日本語 8.5% 2.0%

奇妙な日本語 5.8% 6.8%

日本語の吹き替え 5.4% 6.5%

日本語を話さない 80.4% 84.6%

表 34 CMの中の外国語表記(文字)

外国語(文字) 2002年5月 1993年6月

商品・社名の表示のみ 48.0% 45.0%

それ以外の外国語表記 26.7% 12.9%

外国語なし 25.2% 42.0%

表 35 CMの中の外国語音声

外国語(音声) 2002年5月 1993年6月

外国語中心 3.4% 2.3%

日本語中心 23.9% 14.8%

外国語なし 72.7% 82.9%

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246

のをそれぞれの項目について,業種ごとにク

ロス集計した(表36)。

その結果,

。外国度

の低い業種は,『薬品』『住宅・建材』『一般産

業機器』である。この傾向は前回の調査とほ

ぼ同様であった。『輸送機器』の外国度が高い

のは“天候・自然・非公開性などの条件から

外国ロケが多くなるため”で,『衣料品・身の

回り品』の場合,当然ながら,商品イメージ

が欧米タイプのものが多いことに起因する。

調査では,CMのコンセプトを表37のよう

に分類した(該当複数カウント)。

サンプル全体(1,474本)では,『商品説明』

(56.8%)が最も多かったが,その他では,

『意外性/話題づくり』(26.0%)『ボディーコ

ンシャス健康/ダイエット』(24.6%)『お笑

い/ユーモア/ナンセンス』(20.4%)などが

目立った。

。その他

『恐怖喚起/闘い/闘争』などの要素の含まれ

るものが,『外国度』の上昇とともに多くなっ

ている傾向もみられる(主に,ゲームや映画

などのCM)。

表 36 業種別の外国度(2002年)

外国人 外国風景 外国(文字) 外国(音声) 外国(BGM)

業種 周辺的 中心的外 国らしい

外国風景

商品社名

それ以外

日本語主

外国語主

日本人が

外国人が

基礎材 4.8 9.5 9.5 4.8 85.7 9.5 42.9 0.0 4.8 9.5 95.2 2.14

食品・飲料 6.2 9.6 9.3 4.8 54.1 15.6 18.4 4.0 1.7 12.5 73.4 1.83

薬品 1.7 6.2 3.9 1.1 40.4 9.0 11.2 0.0 0.6 1.1 56.2 0.93

化粧品・洗剤 4.2 11.0 11.5 0.5 61.3 18.8 27.7 0.5 3.1 10.5 83.3 1.91

衣料・身の回り品 5.4 35.1 27.0 5.4 45.9 45.9 27.0 16.2 0.0 13.5 97.3 3.38

出版 2.8 11.1 9.7 4.2 34.7 48.6 26.4 4.2 1.4 12.5 83.3 2.36

一般産業機器 0.0 0.0 0.0 0.0 50.0 0.0 0.0 0.0 0.0 50.0 50.0 1.50

精密・事務機器 8.6 17.2 10.3 1.7 36.2 46.6 24.1 0.0 1.7 17.2 87.9 2.47

電気機器 13.8 8.1 1.4 1.4 52.7 43.2 18.9 1.4 2.7 12.2 98.6 2.22

輸送機器 9.5 27.4 38.1 7.1 26.2 70.2 42.9 11.9 2.4 31.0 97.6 4.14

家庭用品・機器 6.5 14.0 10.8 1.1 53.8 37.6 33.3 2.2 0.0 3.2 94.6 2.20

住宅・建材 2.9 5.7 0.0 8.6 40.0 25.7 25.7 2.9 2.9 11.4 82.9 1.80

卸売・百貨店 4.8 19.0 9.5 4.8 28.6 47.6 38.1 0.0 0.0 0.0 81.0 2.24

金融・保険業 5.8 7.8 10.7 2.9 41.7 24.3 20.4 1.9 2.9 13.6 70.9 1.83

サービス・娯楽 5.0 15.0 5.0 9.2 47.5 25.8 31.7 5.0 2.5 7.5 82.5 2.17

その他 3.1 15.6 6.3 6.3 46.9 15.6 18.8 12.5 0.0 6.3 65.6 1.88

注:外国関連5項目ごとに,外国度大(2)・外国度小(1)・外国度(0)でカウントした。『外国度』はそれを単純加算した値。『外国CM』は5項目のどれかを含むものの比率。

外国CM

外国度

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ICFPでは,1980年にもCM調査を実施し

ているが,その当時と前回調査(1993年),

今回(2002年)を通して見ると,

。中でも“外国語(主としてアルファベッ

ト文字)が画面に表示される割合が大幅に増

加している”。外国要素の対象地域では,『欧

米イメージ』への依存度が高いが,過去の調

査時点よりも,『アジア・中東・中南米イメ

ージ』の利用率が少しずつ高まってきている

ように思われる。なお,『外国・外国人イメ

ージ』を実写ではなく,CGなどによって構成

するケースが増えているため,映されている

地域,人種などを特定しにくいケースが多く

なっている。

結び

今回の『テレビ番組国際フロー調査』では,

輸入(および番組中の外国要素)に関しては,

“地上波・アナログテレビ(全国ネットワー

ク)”を対象として,内容分析した。これは,

過去2回の調査と,対象チャンネル,番組分

類,分析方法を共通にするためだが,調査時

点の視聴者のテレビ視聴実態(視聴量)から

みて,地上波・アナログテレビに一応の代表

性があると判断した結果でもある。

しかし,衛星放送の普及が進行し,とくに

スポーツ中継(アメリカ大リーグなど)でか

なりの視聴率をあげ,映画・ドラマ番組では,

地上波からBS・CSの専門チャンネルへの移

行が進んでいることを考えると,今後の調査

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│247

表 37 各種CMコンセプトの使用率(外国CMと非外国CM,外国度による違い)

全体(N=1,474)

9.9

8.4

9.2

56.8

26.0

24.6

5.8

7.1

2.2

20.4

7.1

2.7

4.7

9.2

5.8

3.6

0.8

5.2

7.9

9.2

9.2

57.4

23.0

24.6

4.3

5.9

0.7

25.6

2.0

4.3

1.6

3.3

2.0

1.6

1.0

3.0

10.4

8.2

9.2

56.6

26.8

24.6

6.2

7.4

2.7

19.0

8.5

2.3

5.5

10.7

2.5

4.1

0.8

5.7

7.9

9.2

9.2

57.4

23.0

24.6

4.3

5.9

0.7

25.6

2.0

4.3

1.6

3.3

2.0

1.6

1.0

3.0

13.9

10.8

10.8

62.3

21.7

30.4

5.0

5.2

1.4

23.6

3.3

2.6

3.3

5.2

3.3

4.2

1.4

5.0

7.6

7.6

7.6

57.2

28.5

22.9

5.4

7.8

1.9

17.7

7.1

1.7

6.0

10.8

1.9

2.4

0.6

6.3

9.9

5.3

9.6

47.2

31.6

18.4

9.2

9.9

5.7

14.2

18.4

2.8

7.8

18.8

2.1

6.7

0.0

6.0

**

+

***

**

**

+

***

***

***

***

***

**

**

***

**

***

+

非外国CM(N=305)

外国CM(N=1,169)

外国度

無(N=305) 低(N=424) 中(N=463) 高(N=282)

可愛らしさ(子どもやペット,愛玩物など)

家族愛(あたたかさ)/親子の情愛

癒し/ほのぼの/季節の風物詩

商品の機能説明*

意外性/話題づくり

ボディーコンシャス/健康/ダイエット*

克己(試練/苦労を乗り越える)/被虐性

友情/同士の絆

恐怖喚起/闘い/闘争

お笑い/ユーモア/ナンセンス*

豊かな生活/高級感/ゴージャス/ハイソサエティー

ノスタルジー(郷愁/古き良き時代/若かりし日々の回想)

ファンタジー(近未来/この世ならざるもの)

アーティスティック/芸術性/審美的

道徳的教訓/マナー/モラル

環境への配慮/自然/地球に優しい

ペーソス(哀しみ/哀愁/人生のはかなさ)

ロマンティック/恋愛/異性間の情愛

CMの外国度は5つの外国要素の使用度(0~2)を単純に加算して尺度を構成し,それを「0」「1」「2-3」「4-10」の4カテゴリーに分割したものである。外国CMは,外国要素を一つでも含むもの,非外国CMは,外国要素を一つも含まないもの。アステリスク(*p<.05; **p<.01; ***p<.001)はχ(カイ)二乗検定で,外国CMと非外国CMの間,また外国度によって有意差が生じたことを表す。

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248

では,対象チャンネルを根本的に見直すこと

が必要だと考えている。

*2002年11月時点で,衛星放送で輸入番組または,外国からの中継・直接放送を組んでいる比率は次のとおりであった。・NHK/BS1 64%(ニュース・スポーツ中心。ニュース発信国は12カ国)

・NHK/BS2 32%(映画・ドラマ・ドキュメンタリー。米欧各国)―NHK衛星放送契約世帯=約1180万(2003年11月)―・WOWOW 75%(映画中心。このうちアメリカ制作=80%)―契約世帯=約250万(2003年11月)―・CS・デジタルのSKY PerfecTV ! は,テレビ285チャンネルのうち,主として外国番組で構成するもの=34(ニュース・映画・音楽・スポーツなど)外国語放送=10であった。―契約数合計=約350万(2003年11月)―*2003年10月に行われた米大リーグ・ワールドシリーズの中継(NHK・BS1)では,午前中の放送にもかかわらず,視聴率(関東・世帯)は4.3%~5.3%であった(ビデオリサーチ)。*かつて“外国制作のテレビ番組に対する日本人の態度に関する調査”(1993~1995)を実施した萩原滋は,その報告の中で「外国から輸入される番組では,特定の層をターゲットとするものが増えており,その種の番組への需要はかなりあるので,外国制作の番組の輸入が減ることはないと思われる」と述べている。

また,テレビ放送の全面デジタル化に関し

ても,デジタル先進国イギリスの「デジタル

TV・アクションプラン」が示唆するように,

デジタル化に伴って“テレビ放送内容”“視聴

者のテレビへのアクセスのしかた”が大きく

変わることが予想され,番組分類,視聴行動

などの分析方法を新たに開発する必要が生じ

るものと思われる。

これまでのICFPの調査の結果では,テレ

ビのニュース・情報に関して,“日本は国際

情報の受信国であり,情報対象国,情報ソー

スはアメリカ,ヨーロッパに偏している”こ

とが指摘されてきた。この傾向は現在もあま

り変ってはいないが,輸入情報の発信源に関

しては,最近大きな変化が見られる。従来の

「映像通信社」よりも,ニュース専門局(CNN,

FOXなど)のウエイトが増大し,その他,発

展途上国テレビ局からのニュース提供も多く

なった。イラク戦争では,カタールの『アル

ジャジーラ』,アラブ首長国連邦の『アルアラ

ビーヤ』などの提供するニュース映像が頻繁

に登場した。テレビ情報の発信源の多様化に

伴って国際情報の偏りは,若干修正されつつ

あるが,“情報の一方向性”の問題は基本的に

は改善されていない。

日本からのテレビ情報の直接発信は,『NH

KワールドTV』『NHKワールド・プレミアム』

が主として日本語で,海外向けに放送してい

るだけで,民放はほとんど撤退してしまった。

情報の国際フローの是正をテーマに掲げた

ユネスコのバックアップで,NHK主導で出

来上がったアジア各国のテレビ局のニュース

交換ネットワーク『アジアビジョン(本部マ

レーシア・RTM)』も国際報道のツールとし

てはほとんど機能していない。

国際情報のフローの不均衡の問題は,日本

のテレビ界が,今後アジアで主導的に取り組

んで行くべき重要なテーマとして残されてい

る。

その他,2002年ごろから,テレビ局,通信

社,新聞社などが,それぞれニュースサイト

を設けて,最新ニュースを映像を交えてリア

ルタイムで報道するようになってきた。アメ

リカでは“イラク戦争に関する情報をインタ

ーネットから得ている人が17%(テレビは

87%)に達した”という報告もある(AURA・

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159から引用)。ICFPの調査では,日本では

インターネットにニュース情報源を求める人

の割合はまだ低いが,近い将来に日本でも情

報入手メディアとしてのインターネットのウ

ェイトが高まることが予想されるので,国際

情報フローの問題を考えるに当たっては,こ

のことも計算に入れる必要があるだろう。

次に日本からのテレビ輸出だが,今回の調

査では,輸出量の算定に当たって,対象を,

“「地上波テレビ」「CATV」「衛星放送」および

「インターネット放送(韓国のみ)」で放送され

るもの”とした。日本への輸入番組の対象メ

ディアが「地上波テレビ」のみであるのに対

して,輸出対象国の場合対象範囲を広げたの

は,海外各国のテレビ視聴実態(日本製テレ

ビ番組が衛星放送・CATV用に売れる国で

は,それぞれの視聴比率が高いこと。韓国で

インターネット放送の普及が進んでいるこ

と。などの事情)にあわせたもので,輸出入

バランスを算定する場合,算定根拠の相違が

問題になることは否めないが,過去の調査と

同様の条件とするため,あえて修正を加えな

かった。

日本からのテレビ番組輸出では,本文中に

詳述したように『アニメ』が大半を占め,ビ

デオやキャラクターグッズ,本などを合わせ

て“ジャパニメーション”が国際市場をリー

ドしている。同時に,かっての暴力性,低俗

性への批判はあまり聞かれなくなって,日本

アニメが大衆文化として国際的に認知される

ようになった。しかし,日本の社会・文化の

理解に役立つ種類のテレビ番組(ドラマ,ド

キュメンタリーなど)は,ニュースの発信と

同様,欧米先進諸国への輸出は極めて少量で,

多くの場合,それぞれの国で制作するテレビ

番組が“日本紹介の役割”を果たしていて,

それが今も“日本イメージのステレオタイプ”

のもとになっていることが,今回の調査の結

果からも読み取れる。

ICFPでは,これまで,輸出入調査の間隙

を縫って“テレビを通じる相手国イメージ”

の調査研究を続けてきたが,情報フローの実

態と,それによって形成されるイメージの状

況との相関については未だ明快な回答を得て

いない。

しかし,メディアを通じる外国イメージに

関しては,“外国に関するテレビ報道の場合,

事件・事故・戦争などのニュースが,大きな

割合を占めていて,それが対象国のイメージ

をネガティブにしている”のに対して,その

他のドキュメンタリーや娯楽番組では,“外

国の社会,文化に関するものが多く,外国へ

のイメージを好意的にするケースが多い”こ

とが調査結果から読み取れる。日本における

テレビ国際フローの一つの側面である。

以上,本稿で取り上げた調査結果を通じて

得られた問題点を列記してみたが,こうした

問題の解決の手がかりとなる資料を提供する

ためにも,今後テレビ情報の国際フローの研

究調査が継続的に進められることが必要であ

ると痛感している。

注:

1)ITFP-JAPANは,1979年,当時のNHK総合放送文化研究所・放送世論調査所の協力のもとに,両研究所の川竹和夫,佐田一彦,杉山明子,村瀬真文らが中心となって結成された。ITFPは,その後2000年にICFPと改名した。

現在の主なメンバーは,執筆者の他,李 善,伊藤恭子,櫻井武,賈珊,萩原滋,前田隆子,渡辺光一である。

日本のテレビ番組の国際性

NHK放送文化研究所年報2004│249

Page 38: 日本のテレビ番組の国際性 - NHKオンライン · │213 日本のテレビ番組の国際性 icfp川竹和夫・杉山明子/ 計画・開発原由美子 要 約 目

250

今回のICFP調査は,NHK放送文化研究所との共同研究として, 放送文化基金の助成を得て行われた。本研究のうち,各国評価,CM分析について

は,以下の方々からの調査報告を引用した。中国:王冰(中国北京広播学院市場信息研究所

長)韓国:李錬(鮮文大学校新聞放送学科教授)アメリカ:高木美保(マスコミ研究・アメリカ

在住)イギリス:櫻井芳(ジャーナリスト・イギリス

在住)CM:萩原滋(慶應義塾大学メディア・コミュニ

ケーション研究所教授)

参考・引用文献

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