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「プロセスに着目した医療事故分析手法 POAM静岡大学 情報学部 行動情報学科 講師 梶原 千里 2019124厚生労働省東北厚生局 令和元年度医療安全ワークショップ

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「プロセスに着目した医療事故分析手法 POAM」

静岡大学 情報学部

行動情報学科 講師

梶原 千里

2019年12月4日厚生労働省東北厚生局令和元年度医療安全ワークショップ

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講義内容

業務のやり方に着目した事故分析手法

– POAM(ポーム)とは

– 演習,発表

– まとめ

対策案を立案する観点

– エラープルーフ化

©QMS-H研究会 2

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©QMS-H研究会

事故分析手法 POAMProcess Oriented Analysis Methodプロセスに着目した分析手法

配布資料

(資料1) 説明スライド(本資料)

(資料3) 演習事例 (3事例)

(資料4) 分析シート(個人用,グループ用)

(資料5) 分析例

(資料2) 観点リスト

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そもそも,インシデントとは?

事故,ミス,エラー ・・・

予定と実際のずれ,計画と実行の差異

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(間違ったことのみを記入)

□注射する予定が□その他(           )予定が

(チェックして選択) □実施した□実施しなかった□その他(            )

与薬時間時間帯 に

与薬時間時間帯 に

量(単位)(      )

量(単位)(      )

薬剤名を

薬剤名を

実施すべきこと 間違ったこと

患者名氏に

患者名氏に

実際には

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プロセス指向の分析

仕事のやり方や仕組みを変える

ミスしないような方法,ミスしても事故にならない方法

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たとえば・・・

薬剤Aを与薬する予定が,薬剤Bを与薬した

対策は・・・

注意不足だから,今後気を付けましょう

指示書が見にくかったから,フォーマットを変えよう

情報伝達する方法がなかったから,決めよう

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POAM分析の流れ

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Step1 : 事故状況の把握

Step2 : 要因分析

Step3 : 対策立案

(1-1) モデル図の作成

(1-2) 最初にエラーのあった箇所の特定

(1-3) 当事者のエラーの内容の把握

(1-4) 事故関係者のエラーの内容の把握

(2-1) 標準プロセスの把握

(2-2) 観点リストを活用した,要因の特定

(3-1) プロセス改善策の立案(エラープルーフ)

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事例説明

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日勤Ns 準夜Ns

内 服 薬

「用量」が書かれず

カード

薬袋

2錠をセット

転記

×確認できず

×確認せず与薬内容

・患者名・薬剤名・投与時間・用量

1錠を投与

患者A氏

A氏に炭酸カルシウムを2錠与薬する予定が,1錠投与した.・夕食直前に日勤Nsが当事者(準夜Ns)に薬のセットが終了したと報告・食前薬は与薬内容の伝達にカードを使用

・日勤Nsはカードへ用量の転記を忘れてしまった

・当事者はカードで用量の確認ができず,薬袋の情報も確認しなかった

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与薬業務のモデル

与薬業務は,情報・モノ・実施の3段階で行われる

事故が起こる = いずれかの段階でミスをしている

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関連手順STEP1:事故状況の把握(1-1) モデル図の作成

Ns

・ 医師の指示の認識・ 申し送り内容の認識・ 検査,観察結果の認識

情報

・ 薬剤の混注・ 薬剤の準備・ 器具の準備

モノ・準備

・ 与薬の実施・ 器具の設定,セット・ 投与中の状態確認

作業・実施

正しい情報 正しい実施

正しい準備

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事例適用例

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情報③正しい情報源:カード②正しい情報A氏に炭酸カルシウムを2錠与薬する

⑩-2誤った情報源:⑩ 誤った情報

モノ・準備④正しい準備 ⑨誤った準備

準備された 準備された炭酸カルシウム 炭酸カルシウム2錠 1錠

作業・実施⑤正しい実施

A氏に2錠,投与する

⑧誤った実施A氏に1錠,投与した

情報③正しい情報源:カード,薬袋②正しい情報A氏に炭酸カルシウムを夕食前に2錠与薬する

⑩-2誤った情報源:⑩ 誤った情報

モノ・準備④正しい準備 ⑨誤った準備

準備された 準備された炭酸カルシウム 炭酸カルシウム2錠 1錠

作業・実施⑤正しい実施

A氏に2錠,投与する

⑧誤った実施A氏に1錠,投与した

モノ・準備④正しい準備 ⑨誤った準備

準備された 準備された炭酸カルシウム 炭酸カルシウム2錠 1錠

作業・実施⑤正しい実施

A氏に2錠,投与する

⑧誤った実施A氏に1錠,投与した①

×

××

⑥正しい⑦行わない⑫誤った

×

Ns(準夜)

A氏に炭酸カルシウムを2錠与薬する予定が,1錠投与した.・夕食直前に日勤Nsが当事者(準夜Ns)に薬のセットが終了したと報告・食前薬は与薬内容の伝達にカードを使用

・日勤Nsはカードへ用量の転記を忘れてしまった

・当事者はカードで用量の確認ができず,薬袋の情報も確認しなかった

関連手順STEP1:事故状況の把握(1-1) モデル図の作成

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モデル図作成の目的

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関連手順STEP1:事故状況の把握(1-1) モデル図の作成

□ 事故状況を整理し,把握を容易にする

□ コミュニケーションツールとなる

□ 与薬業務全体を振り返ることで,プロセスと捉える

= プロセス指向の実践

モデル図を正しく書くことは目的ではない

・ 考えを紙上に書き表して,「ああでもないこうでもない」と議論する

・ すべきだったこと(正しい情報・モノ・実施)と実際に行ったこと(誤った情報・モノ・実施)を書いて比較する

・ まずは最終的に患者に間違った与薬をした看護師のモデル図を書く

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事例適用例

©QMS-H研究会

情報③正しい情報源:カード②正しい情報A氏に炭酸カルシウムを2錠与薬する

⑩-2誤った情報源:⑩ 誤った情報

準備④正しい準備 ⑨誤った準備

準備された 準備された炭酸カルシウム 炭酸カルシウム2錠 1錠

実施⑤正しい実施

A氏に2錠,投与する

⑧誤った実施A氏に1錠,投与した

情報③正しい情報源:カード,薬袋②正しい情報A氏に炭酸カルシウムを夕食前に2錠与薬する

⑩-2誤った情報源:⑩ 誤った情報

準備④正しい準備 ⑨誤った準備

準備された 準備された炭酸カルシウム 炭酸カルシウム2錠 1錠

実施⑤正しい実施

A氏に2錠,投与する

⑧誤った実施A氏に1錠,投与した

モノ・準備④正しい準備 ⑨誤った準備

準備された 準備された炭酸カルシウム 炭酸カルシウム2錠 1錠

作業・実施⑤正しい実施

A氏に2錠,投与する

⑧誤った実施A氏に1錠,投与した①

×

××

最初にエラーがあった箇所⇒ 情報 ・ モノ,準備 ・ 作業,実施

⑥正しい⑦行わない⑫誤った

×

Ns(準夜)

A氏に炭酸カルシウムを2錠与薬する予定が,1錠投与した.・夕食直前に日勤Nsが当事者(準夜Ns)に薬のセットが終了したと報告・食前薬は与薬内容の伝達にカードを使用

・日勤Nsはカードへ用量の転記を忘れてしまった

・当事者はカードで用量の確認ができず,薬袋の情報も確認しなかった

関連手順STEP1:事故状況の把握(1-2) エラーのあった箇所特定

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事例適用例

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関連手順STEP1:事故状況の把握(1-3)(1-4) エラーの内容把握

□ Step1-3 エラーの内容

「情報」の段階でどのようなエラーがあったのか?

⇒薬袋に書かれた情報の確認を抜かした

用量は1錠だと思い込んだ

□ Step1-4 事故関係者のエラーの把握

業務に関わっている他のNsがミスをしたか?

⇒日勤Ns:カードへの転記で,用量を転記し忘れた.

A氏に炭酸カルシウムを2錠与薬する予定が,1錠投与した.・夕食直前に日勤Nsが当事者(準夜Ns)に薬のセットが終了したと報告・食前薬は与薬内容の伝達にカードを使用

・日勤Nsはカードへ用量の転記を忘れてしまった

・当事者はカードで用量の確認ができず,薬袋の情報も確認しなかった

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標準的なプロセスの調査

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関連手順STEP2:要因分析(2-1) 標準プロセスの把握

□ (1-3),(1-4)で把握したエラーに関する業務の標準を書く

□ 標準が改善活動のベースとなる

標準的なプロセスが存在した

標準を作成する

観点リストを用いて,プロセスの問題を見つけ,改善する

いいえ

はい

□ 標準が存在しない場合は,標準化が対策になる

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事例適用例

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関連手順STEP2:要因分析(2-1) 標準プロセスの把握

Step1で把握したエラーが発生した箇所で,本来はどのように作業すべきだったか?手順はどうなっているか?

当事者:与薬するときはカードと薬袋で

患者名,薬剤名,用量,時間を確認して行う.

日勤Ns:食前薬の指示を受けるときは,カードを作り,患者名,薬剤名,用量,時間を書き込む.

A氏に炭酸カルシウムを2錠与薬する予定が,1錠投与した.・夕食直前に日勤Nsが当事者(準夜Ns)に薬のセットが終了したと報告・食前薬は与薬内容の伝達にカードを使用

・日勤Nsはカードへ用量の転記を忘れてしまった

・当事者はカードで用量の確認ができず,薬袋の情報も確認しなかった

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事例適用例

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関連手順STEP2:要因分析(2-2) 事故の要因の特定

A氏に炭酸カルシウムを2錠与薬する予定が,1錠投与した.・夕食直前に日勤Nsが当事者(準夜Ns)に薬のセットが終了したと報告・食前薬は与薬内容の伝達にカードを使用

・日勤Nsはカードへ用量の転記を忘れてしまった

・当事者はカードで用量の確認ができず,薬袋の情報も確認しなかった

複数の情報源があり,情報が散在してしまう・転記ミスが生まれる

・ 情報のエラーのため,【情報】,【共通】の質問に回答

□ 観点リストを用いて,エラーの要因を特定する

・ なぜ,用量を正しく認識できなかったのか?

例:「伝達する情報源は何があったか?」

食前薬はカードを用いることになっていたため,情報源として,カード,薬袋,処方箋の3種類が存在した

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事例適用例

©QMS-H研究会

関連手順STEP3:対策立案(3-1) プロセス改善策の立案

A氏に炭酸カルシウムを2錠与薬する予定が,1錠投与した.・夕食直前に日勤Nsが当事者(準夜Ns)に薬のセットが終了したと報告・食前薬は与薬内容の伝達にカードを使用

・日勤Nsはカードへ用量の転記を忘れてしまった

・当事者はカードで用量の確認ができず,薬袋の情報も確認しなかった

立案した対策の例

① カードの使用をやめ,薬袋だけで確認するようにする

② 薬袋を透明にし,中身が見えるようにする

(転記によるミスを減少させる)

(渡し忘れがあったときに気付きやすいように)

プロセスに着目した対策を

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注意事項

©QMS-H研究会

□ 要因特定,対策立案は自由な発想で

・ 分析ツールを参考にしつつ,ツールとは関係ない視点も可

・ 現実的な対策に縛られない

□ モデル図の作成に執着しない

・ モデル図は状況整理が目的

□ 分析の流れを意識する

・ 着目したエラーの箇所に対する分析をする

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演習について

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□ 最初に決めていただきたいこと

- リーダー(1名),書記(1名),発表者(1名)

□ グループで事例を分析

- 配布した分析シートを埋めてください

- 書記の方を中心に,提出用のシートにも書き込んでください

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よくある質問

©QMS-H研究会

Q.モデル図はこれで合っていますか?

A.モデル図に正解はありません.重要なのは,どのような事故だったか振り返ることです.

Q.空欄があっても良いですか?

A.構いません.埋められる部分を埋めて下さい.

Q.複数の看護師が関わっていてモデル図が書けません.

A.まずは最終的に患者に与薬を実施した人を中心にして下さい.深く分析する場合は,他の人のモデル図も書くと良いです.

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発表

どんなモデル図を描いたか?

どの段階のエラーか?他の人のエラーはあったか?やりにくい点は何か?– (エラーを引き起こした要因は何か?)対策案は何か?

©QMS-H研究会 20

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POAMのまとめ

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POAMの適用範囲

インシデントの種類

– プロセス型 ・・・ 手順が存在する

– 非プロセス型 ・・・ 手順が存在しない

プロセス,非プロセスによって分析方法は異なる

POAMはプロセスに着目した事故分析手法

– プロセス型の事故には適用可能

©QMS-H研究会 22

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分析手法の位置づけ

©QMS-H研究会

分析時間

要因の網羅性

短長

POAM

その他の手法

・SHELモデル

・RCA

非常に重大な

事故に活用

・十分に事故分析ができていない現状

・医療従事者は事故分析に関する専門知識は少なく,多忙のため時間をかけられない

視点を絞って効率的に分析する

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「要因を見つける」以外の事故分析のねらい

インシデントレポートを提出する目的がわかる

– インシデントが起こった要因を分析し,事故を減らす

– 単に集計するだけではない

インシデントレポートに記入すべき内容がわかる

– 予定と実際の差異

– 情報認識,モノの準備,与薬実施それぞれの段階

– なぜインシデントを起こしてしまったのか

他部門への働きかけができる

– 自部門に留まらない対策

©QMS-H研究会 24

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対策立案の観点

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エラープルーフ化

エラープルーフ化とは

– 人間のミスの発生率を下げるための作業方法に関する工夫

日常で用いられているエラープルーフの例

©QMS-H研究会

朝 昼 夕 眠前

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エラープルーフ化の原理

©QMS-H研究会 27

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エラープルーフ化の原理

エラープルーフ化の5つの原理

©QMS-H研究会

説明 対策例

作業や不要なモノをなくす ・不要な情報源をなくし,転記しなくてすむようにする

ミスをおかしやすい作業を作業者が行わなくてすむようにする

・バーコードシステムを用いて患者,薬剤を識別する・人工呼吸器のスイッチを入れると,自動的に加湿器の スイッチが入るように連動させる

共通化・集中化 変化や相違を少なくする・同一名称で複数の成分量・容量の製剤を複数採用 している場合,その数を減らす

個別化・特別化 変化や相違を鮮明にする・危険薬にマーキングし,目立つようにする・アレルギー患者に別の色のリストバンドをつける

適合化見やすくする,憶えやすくするなど,人間の能力にあったように動作の対象を変更する

・処方箋で使う文字や形を読みやすいものにする

ミスを検出し処置する・入力値がおかしい場合にエラーメッセージを出す・工具の置き場を指定しておくことで,ある工具が なくなったときにすぐに発見できるようにする

ミスの影響を緩和するための作業や緩衝物を組み込む

・ベッド横に緩衝マットを敷いておく

容易化

作業ミスが起こらないようにする

ミスの影響を

小さくする

エラープルーフ化の原理

排除

代替化

異常検出

影響緩和

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排除

©QMS-H研究会 29

排除:作業や注意を不要にする

手渡し

記入する

確認・調整する

・・・

危 険

作業の排除

危険の排除

作業,目的 エラープルーフ化の具体的方法

例: 追加の薬剤を混ぜ忘れた事前に混ぜ合わせ

た薬剤を使用

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代替化

©QMS-H研究会 30

代替化:人が作業しなくてもよいようにする

覚える

知覚・判断

移動する・文字を書く

自動化

見える化

作業 エラープルーフ化の具体的方法

例:

一時的に変更した点滴の量を戻すのを忘れた

ポケットタイマーを携帯する

転記を間違えたプリンターでラベルを

印刷して貼る

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容易化:

©QMS-H研究会 31

容易化: 作業をやさしくして,エラーをしにくくする

覚える

知覚・判断

移動する・文字を書く

集中化・共通化

個別化・特別化

適合化

作業 エラープルーフ化の具体的方法

例:

同じカートリッジに入った濃度の異なる薬剤を取り間違えた

高濃度のカートリッジに明るいオレンジ色のテープを貼っておく

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医療界への適用例

©QMS-H研究会 32

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医療界への適用例

付箋の利用(代替化)

– 追加薬を入れるチェンバーに「流量アップ中」と

記した付箋を張ることにより,一時的な流量変更をしていることを明示する.チェンバーが空になり(追加薬がすべて投与され),流量をもとに戻したあとで付箋を剥がす.

– 作業は一つ増える

– 記憶の必要がなくなる

©QMS-H研究会 33

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参考文献

[1] 佐野雅隆,棟近雅彦,金子雅明,“業務プロセスに着目した与薬事故分析手法の提案”,「品質」,Vol.39,No.2,pp.98-106,(2009年)[2] 監修:飯塚悦功,棟近雅彦,水流聡子,「組織で保証する医療の質QMS-アプローチ」,学研メディカル秀潤社,(2015年)

©QMS-H研究会 34

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ご清聴どうもありがとうございました