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経済産業省 産業技術環境局 御中 P112570-01 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国 際経済調査事業委託費(気候変動をめぐる投資・金融 の動向を踏まえた企業活動に関する調査事業及び普 及活動) 報告書 2020 3

令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国 …経済産業省 産業技術環境局 P御中 112570-01 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国

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経済産業省 産業技術環境局 御中 P112570-01

令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国

際経済調査事業委託費(気候変動をめぐる投資・金融

の動向を踏まえた企業活動に関する調査事業及び普

及活動) 報告書

2020年 3月

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はじめに

2015 年 12 月のパリ協定妥結や気候変動問題の顕在化などにより、非財務情報と言われる

ESG 情報の中でも特に E(環境)、気候変動に関するリスク・機会に関する情報開示を求め

る動きが高まっている。2015 年 12 月に G20 財務大臣・中央銀行総裁からの要請で立ち上が

った民間主導のタスクフォース(TCFD: Task Force on Climate-related Financial Disclosures)で

は、企業の気候変動リスク・機会に関する任意の情報開示フレームワークの検討がなされ、

2017 年 6 月に最終提言が公表された。TCFD に賛同する企業・機関数は全世界で 1,114 機関

となっており、内、日本は 252 機関と世界一位である(2020 年 3 月 26 日時点)。

昨年度、経済産業省では、「グリーンファイナンスと企業の情報開示の在り方に関する

『TCFD 研究会』」(以下、「TCFD 研究会」という)を開催し、事業会社の財務部門や経営企

画部門の担当役員と国内外の投資家等による「対話」を通じて TCFD 提言に沿った情報開

示の在り方を議論した。さらに 2018 年 12 月には、これらの議論を踏まえ、事業会社が TCFD

提言に沿った情報開示を行うに当たっての解説や参考となる事例の紹介と、業種ごとに事

業会社の取組が表れる「視点」の提供を目的とした「気候関連財務情報開示に関するガイダ

ンス(TCFD ガイダンス)」を公表した。

このような動きを受け、日本企業の気候変動に対する認識は変化しつつあり、気候変動を

ビジネスチャンスととらえて経営戦略に組み込むとともに、TCFD の趣旨に賛同の意を表明

することで、新たなビジネスチャンスを獲得しようとする日本企業の動きがみられている。

この動きをさらに加速化させ、日本企業の強みを国際的にアピールすることで、新たな資金

調達につなげることが重要であるが、日本企業が実際に TCFD に沿った開示を行うに当た

っては、議論が十分に行われていない点も多く、具体的な開示に踏み切れていない企業も多

い。また、投資家にとっても、企業のどのような開示を評価すべきか、理解を深めることが

必要である。

上記認識のもと、本事業では、中長期的に日本企業の価値を高め、国際的な競争力を向上

させていくために、産業界と金融機関の対話の場を設け、気候変動をめぐる投資・金融に関

する国内外の最新動向や各国における情報開示の実態を踏まえながら、企業の具体的な情

報開示について検討を実施した。さらに、TCFD 提言に基づく開示情報を活用する投資家が

情報を読み解く際の視点を提示し、グリーン投資の促進につなげることを目指し「グリーン

投資の促進に向けた気候関連情報活用ガイダンス(グリーン投資ガイダンス)」を作成し、

2019 年 10 月開催の TCFD サミットにおいて公表した。

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- 目 次 -

1. 気候変動をめぐる投資・金融の動きにかかる国内外の動向調査 ..................................... 1

1.1 TCFD への対応状況調査(全体動向の把握) ............................................................ 1

1.2 TCFD への対応状況調査(各種ガイダンス等の整備状況) ...................................... 8

1.3 TCFD への対応状況調査(企業の TCFD 報告書) .................................................. 27

1.4 制度文書 .................................................................................................................... 29

1.5 情報開示に向けた課題及び方策の検討 ..................................................................... 41

1.6 ヒアリングの実施 ...................................................................................................... 42

2. TCFD コンソーシアムの運営 ........................................................................................... 43

2.1 TCFD コンソーシアム設立総会の開催 ..................................................................... 43

2.2 ワーキング・グループの開催 ................................................................................... 45

2.3 企画委員会の開催 ...................................................................................................... 46

2.4 小ワーキング・グループの開催 ................................................................................ 47

2.5 アンケートの実施 ...................................................................................................... 48

2.6 ウェブサイトの運営 .................................................................................................. 50

2.7 グリーン投資ガイダンスの策定・公表 ..................................................................... 54

添付資料 1. TCFD コンソーシアム設立趣意書 .................................................................. 58

添付資料 2. TCFD コンソーシアム規約............................................................................. 59

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- 図目次 -

図 1-1 各国の TCFD 賛同機関数(2020 年 3 月 26 日時点) ............................................ 1

図 1-2 TCFD 賛同上位 3 か国の賛同機関数の推移(2020 年 3 月 26 日時点) ............. 2

図 1-3 企業の情報開示の推移 ............................................................................................... 3

図 1-4 主な銀行の TCFD 賛同・非賛同の状況 ................................................................... 5

図 1-5 設問「TCFD 提言に沿って報告しているか」に対する業種別回答の分布......... 7

図 1-6 TCFD 提言の各項目への対応に要する時間のアンケート結果 ............................ 8

図 1-7 IACPM 加盟企業が用いているか、用いることを計画している気候シナリオ .. 9

図 1-8 TCFD 提言の各項目と、CDSB フレームワーク、SASB スタンダードの整合性

............................................................................................................................................ 11

図 1-9 投資ファンドのポートフォリオに対するタクソノミー適合比率の算出方法 .. 35

図 2-1 TCFD コンソーシアム設立総会 フォトセッション .......................................... 44

図 2-2 TCFD コンソーシアム設立総会 会場 .................................................................. 44

図 2-3 TCFD ガイダンス改訂への要望 .............................................................................. 48

図 2-4 金融機関とのエンゲージメントの回数 ................................................................. 49

図 2-5 気候変動関連情報の利用にあたり金融機関が参照する情報 .............................. 49

図 2-6 TCFD コンソーシアム ウェブサイト 構成図 .................................................. 50

図 2-7 TCFD コンソーシアム ウェブサイト トップページ(1) .......................... 52

図 2-8 TCFD コンソーシアム ウェブサイト トップページ(2) .......................... 53

図 2-9 グリーン投資ガイダンスと既存フレームワークとの関連 .................................. 55

図 2-10 グリーン投資ガイダンス概要(1) ................................................................... 55

図 2-11 グリーン投資ガイダンス概要(2) .................................................................... 56

図 2-12 グリーン投資ガイダンス概要(3) ................................................................... 56

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- 表目次 -

表 1-1 銀行によるシナリオ分析事例 ................................................................................... 5

表 1-2 Global Sustainable Investment Alliance による TCFD 提言に関する調査の概要 ... 6

表 1-3 PRA が期待する金融機関における気候変動の財務リスクへの対応 ................. 10

表 1-4 TCFD Good Practice Handbook において、好事例として取り上げられた企業報

告書と評価された点の概要 ............................................................................................. 13

表 1-5 ENEL 社の再エネに関する取組方針の開示事例 .................................................. 16

表 1-6 化学業界に対するガイダンスに記載されているサステナブル製品の事例 ...... 16

表 1-7 WBCSD ガイダンスに記載されている投資家の視点の事例 .............................. 17

表 1-8 金融機関の TCFD 提言の実施に関する取り組み事例 ......................................... 18

表 1-9 情報開示側と活用側が留意すべき課題 ................................................................. 19

表 1-10 TCFD 提言の実施に関する記載の例 .................................................................... 20

表 1-11 TCFD 提言の実施に当たっての ILN メンバー機関のコメント ........................ 21

表 1-12 中央銀行に対する SRI 導入に関するアプローチ ............................................... 23

表 1-13 本書で紹介されている各国中央銀行の SRI に関する取り組み事例................ 24

表 1-14 情報開示にあたり企業が自らに問いかけるべき点として紹介されている項目

の例 .................................................................................................................................... 25

表 1-15 記載されている投資家と事業会社の見解例 ....................................................... 26

表 1-16 TCFD 提言の実施にあたりシティバンク銀行が実施した取り組み ................ 27

表 1-17 ANZ 銀行のポートフォリオにおける各部門の EAD 及び投資適格性比率 .... 28

表 1-18 EU のサステナブルファイナンス検討経緯 ......................................................... 30

表 1-19 Climate Transition Benchmark(CTB)と Paris-aligned Benchmark(PAB)の対比

............................................................................................................................................ 31

表 1-20 タクソノミー報告書技術補遺において、サステナブルであるとみなされる経

済活動・製品の閾値の概要 ............................................................................................. 33

表 1-21 TCFD 提言と NFRD 指令に基づく開示推奨項目との対比 ................................ 36

表 1-22 ニュージーランド環境省が示した気候関連財務情報の視点 ............................ 39

表 1-23 ヒアリングの対象機関 ........................................................................................... 42

表 1-24 TCFD コンソーシアムのイベントに招聘したゲストスピーカー .................... 42

表 2-1 ワーキング・グループの議事概要 ......................................................................... 45

表 2-2 企画委員会の議事概要 ............................................................................................. 46

表 2-3 ラウンドテーブルの概要 ......................................................................................... 47

表 2-4 アンケートの構成 ..................................................................................................... 48

表 2-5 TCFD コンソーシアム ウェブサイト概要 .......................................................... 51

表 2-6 グリーン投資ガイダンスの概要 ............................................................................. 54

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1. 気候変動をめぐる投資・金融の動きにかかる国内外の動向調査

1.1 TCFD への対応状況調査(全体動向の把握)

1.1.1 TCFD 賛同数の推移

TCFD への賛同数は世界全体で 1,114 機関まで増加している(2020 年 3 月 26 日時点)。特

に日本では、2019 年 5 月の TCFD コンソーシアム設立等が大きな要因となり、賛同数が 252

機関(同上)で世界最多となっている(図 1-1)。

また、TCFD 提言公表以降の TCFD 賛同数上位 3 か国の賛同数の推移を以下に示す(図

1-2)。

図 1-1 各国の TCFD 賛同機関数(2020 年 3 月 26 日時点)

出所)TCFD 公式ホームページの情報をもとに三菱総合研究所作成

各国のTCFD賛同機関数(2020年3⽉26⽇時点)

65105 104

33 27 38 27 18

147

16353 44

27 22 10 5 11

123

252

167 154

66 51 5033 32

309

0

50

100

150

200

250

300

350

TCFD賛同機関数(2019年9月17日時点)

その他機関

非金融

金融

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図 1-2 TCFD 賛同上位 3 か国の賛同機関数の推移(2020 年 3 月 26 日時点)

出所)TCFD 公式ホームページの情報をもとに三菱総合研究所作成

1.1.2 TCFD への対応状況に関する文献の概要

国内外の企業・投資家における TCFD への対応状況について把握するため、下記の文献

について調査した。

(1) TCFD 2019 Status Report(2019 年 6 月)

(2) BCS Consulting, Task Force on Climate-related Financial Disclosures (TCFD)

Recommendations: Global Progress Report for the Banking Sector(2019 年 10 月)

(3) Global Sustainable Investment Alliance, Sustainable Investor Poll on TCFD Implementation

(2019 年 12 月)

上記文献の概要について以下に示す。

TCFD 2019 Status Report(2019 年 6 月)

TCFD は 2019 年 6 月に、前年に続き 2 回目となる状況報告書 TCFD 2019 Status Report 1を

発表した。これは複数セクター/地域の大企業 1,100 社以上につき、3 年分の報告書レビュー

を、AI 及び外部情報をもとに実施したものであり、下記を結論として提示している。

▪ 2016 年以降、気候関連財務情報の開示は質量ともに向上しているが、投資家にとっ

てはまだ不十分である。

▪ 気候関連問題が企業に与えうる財務的影響について、情報利用者が財務上の決定を

行うために必要な情報が不足している。

▪ シナリオ分析を実施している企業の多くが、自社戦略のレジリエンスに関する情報

1 https://www.fsb-tcfd.org/publications/tcfd-2019-status-report/よりダウンロード可能(閲覧日:2019 年 6 月 25

日)

上位3か国の賛同機関数の推移(2020年3⽉26⽇時点)

201

0

50

100

150

200

250

300

6月 7月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月

2017年 2018年 2019年 2020年

イギリス アメリカ 日本

TCFD研究会を設置

(2018年8月)

18172

2744

60

252

164

TCFDガイダンス策定

(2018年12月)

TCFDイベント開催

(2019年2月)

TCFDコンソーシアム設立総会

(2019年5月)

167

154

TCFD最終報告書公表

(2017年6月)

TCFDサミット開催

(2019年10月)

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を開示していない。これは多くの企業戦略形成プロセスにどのようにシナリオを取

込むかについて検討途上であることを示唆している。

▪ 気候関連問題を主題に据えるためには、複数部署、特にリスク管理及び財務担当部署

の関与が必要である。

TCFD 提言に沿った情報開示について以下に示す(図 1-3)。TCFD 提言の各項目について

開示を行っている企業の比率は増えているが、項目間で差があり、特に「戦略のレジリエン

ス」及び「全体的なリスク管理への統合」については開示を行っていない企業が多い。

図 1-3 企業の情報開示の推移

出所)TCFD 2019 Status Report(https://www.fsb-tcfd.org/wp-content/uploads/2019/06/2019-TCFD-Status-

Report-FINAL-053119.pdf、閲覧日:2020 年年 6 月 25 日)

以上をもとに TCFD Status Report では、下記を奨励している。

▪ もともと気候関連問題に携わってきた企業における TCFD 提言の実施において進展の

兆しはあるが、事態の緊急性を考えると、気候関連情報開示を行っている企業数は十分

でない。より多くの企業(特に重要な気候関連リスクのある企業)が TCFD 提言を報告

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枠組として使用すること。

▪ 自社事業及び戦略への気候変動の影響評価を始めたばかりの企業や、気候関連問題が

重要ではない企業については、ガバナンスとリスク管理慣行に関する情報開示を行う

こと。

▪ 投資家及び開示情報の利用者に対し、意思決定に最も有用な特定の情報について、企業

に働きかけること。

また、TCFD は今後のステップとして下記を挙げている。

▪ 2017 年報告書付属書である補助ガイダンスの項目についてのクラリフィケーション。

▪ 気候関連シナリオの導入・実施方法に関するプロセス・ガイダンスの作成。

▪ ビジネスに関連性のある使いやすい気候関連シナリオの特定。

BCS Consulting, Task Force on Climate-related Financial Disclosures (TCFD)

Recommendations: Global Progress Report for the Banking Sector(2019 年 10 月)

BCS Consulting は、2019 年 10 月に発表した報告書” Task Force on Climate-related

Financial Disclosures (TCFD) Recommendations: Global Progress Report for the Banking Sector”2

において、銀行の TCFD 対応状況について、これら銀行の開示資料を元に概観している。主

な結果について以下に示す。

▪ 世界の保有資産残高の 40%に相当する 76 行が TCFD に賛同し、うち世界の保有資産残

高の 24%に相当する 39 行が開示を始めている。TCFD 提言への対応をリードしている

地域は、地域保有資産残高の 85%に相当する 31 行が賛同している欧州であるとされて

いる。

➢ アジア地域で賛同している銀行は 15 行で、地域の保有資産残高の 31%に留まって

いるが、その中で日本は保有資産残高の 92%に相当する 10 行が賛同、3 行が開示

段階にある。

➢ 世界の保有資産残高上位 75 行のうち TCFD に賛同していない銀行は 28 行。上位

行には中国の銀行が多い3。

▪ 開示が最も進んでいるのは自社排出量(Scope 1&2、適切な場合は Scope 3 排出量)で

あり、全体の 64%の銀行が何らかの開示を行っている。反対に最も遅れているのが自ら

の事業、戦略が与える影響の評価であり、何らかの開示を行っている銀行は全体の 10%

に留まっている。

▪ 将来において焦点を当てるべきとして挙げられたテーマで最も多かったものはリスク

の特定・評価プロセス及び組織に対する影響シナリオであった。

本文献に示されている銀行の TCFD 賛同、非賛同の状況を次に示す(図 1-4)。

2 https://www.bcsconsulting.com/blog/tcfd-framework-global-progress-report-for-the-banking-sector/(閲覧日:

2020 年 3 月 26 日))

3 中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行等。これについて Financial Times 紙が記事にしている

(https://www.ft.com/content/0eec5a1e-ee99-11e9-ad1e-4367d8281195、閲覧日:2020 年 3 月 26 日)

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図 1-4 主な銀行の TCFD 賛同・非賛同の状況

注)本文献刊行時点で未賛同であった大手金融機関として Wells Fargo(米)、Unicredit(イタリア)が挙

げられるが、2019 年末に TCFD 賛同を表明している。

出所)BCS Consulting, 2019, Task Force on Climate-related Financial Disclosures (TCFD) Recommendations:

Global Progress Report for the Banking Sector(http://www.bcsconsulting.com/wp-

content/uploads/2015/07/TCFD-Recommendations-Global-Progress-Report-for-the-Banking-Sector-1.pdf、

閲覧日:2020 年 1 月 7 日)より作成。

また、同報告書はシナリオ分析に関する取り組みが最も遅れているとしたうえで、シナリ

オ分析が進んでいる銀行として以下を例示している(表 1-1)。

表 1-1 銀行によるシナリオ分析事例

機関名 取り組みの概要

Lloyds Banking

Group

▪ BAU と低炭素シナリオについて、リスクと機会を特定。

Deutsche Bank ▪ IEA の New Policies Scenario 及び Sustainable Development Scenario を用いて石油、

ガス、電力分野について検討。

Societe

Generale

▪ 2 Degrees Investing Initiative (2DII)が開発した手法に基づき、低炭素へ向けたポート

フォリオと現状の乖離について検討。

出所)BCS Consulting, 2019, Task Force on Climate-related Financial Disclosures (TCFD) Recommendations:

Global Progress Report for the Banking Sector(http://www.bcsconsulting.com/wp-

content/uploads/2015/07/TCFD-Recommendations-Global-Progress-Report-for-the-Banking-Sector-1.pdf、

閲覧日:2020 年 1 月 7 日)より作成

0500

10001500200025003000350040004500

総資産(

10億ドル)

TCFD賛同 TCFD未賛同

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6

Global Sustainable Investment Alliance, Sustainable Investor Poll on TCFD

Implementation(2019 年 12 月)4

Global Sustainable Investment Alliance(GSIA)は、欧米及び日本のサステナブル投資に

関する団体の連合体であり、日本からは日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が会員と

なっている。GSIA は世界の ESG 投資の状況を定期的にモニタリングしており、Global

Sustainable Investment Review を隔年で発行していることで知られている。GSIA は 2019 年

12 月に、TCFD 提言の実施に関する状況をとりまとめた本書を発表した。これは 2019 年 10

月に GSIA 会員機関が行った金融機関に対するオンライン調査に基づくものであり、サンプ

ル数は 272(うち日本は 49)となっている。これらに対する回答は金融機関の業種別(アセ

ットオーナー、アセットマネージャー、サービスプロバイダー、ファイナンシャルアドバイ

ザー5、その他)及び地域別(豪州及びアジア、カナダ、欧州、日本、英国、米国)に示され

ている。

質問内容と回答の概要は以下の通り(表 1-2)。

表 1-2 Global Sustainable Investment Alliance による TCFD 提言に関する調査の概要

質問 回答

1 上場企業の開示にどれほど満足してい

るか。

▪ 開示内容に満足していないと回答した金融機関が、

満足していると回答した金融機関を上回った。

2 市場は気候リスクを一貫した形で正確

に企業・部門の価値に反映しているか

▪ 全機関の 87%が、反映していないと回答した。

3 TCFD 開示を投資分析に盛り込んだか ▪ 全機関の 60%が、既に盛り込んでいるか 2020 年末

までに行うと回答した。

4 TCFD 提言はどれほど役に立つか ▪ 全機関の 93%が役に立つと回答した。

5 TCFD 提言に沿って報告しているか ▪ 全機関の 35%が、既に行っているか 2020 年末まで

に行うと回答した。

6 TCFD 提言は温度抑制を 2℃以下とす

るのに役立つと思うか。

▪ 全機関の 67%が、役立つと回答した。

出所)Global Sustainable Investment Alliance, Sustainable Investor Poll on TCFD Implementation より作成。設問

は 3~5 段階で回答されているが、いくつかの選択肢を統合して概要を示した。

以上を見ると、TCFD 提言が有用であり、気候変動緩和に役に立つとする意見が多いもの

の、市場は気候リスクを織り込んでいないとする意見は現状で圧倒的に多く、透明性の確保

による市場効率化という TCFD の目標の達成にはまだ課題があることを示している6。また

設問 3 と 5 を比べると、TCFD 提言に沿って開示している金融機関の比率は TCFD 提言に基

づく開示情報を利用している金融機関の比率に比べて低いが、アセットオーナー、アセット

マネージャーに限定すると約半数が TCFD 提言に添って報告しているか、2020 年末までに

4 http://www.gsi-alliance.org/members-resources/sustainable-investor-poll-on-tcfd-implementation/よりダウンロー

ド可能(閲覧日:2020 年 1 月 7 日))

5 投資顧問、助言会社を指すと思われる。

6 “Increasing transparency makes markets more efficient, and economies more stable and resilient.” —Michael R.

Bloomberg, Chair(TCFD ウェブサイト(https://www.fsb-tcfd.org/about/ 閲覧日:2020 年 1 月 7 日)

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行う方針である(図 1-5)。

図 1-5 設問「TCFD 提言に沿って報告しているか」に対する業種別回答の分布

出所)Global Sustainable Investment Alliance, Sustainable Investor Poll on TCFD Implementation

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1.2 TCFD への対応状況調査(各種ガイダンス等の整備状況)

近年、気候変動関連の情報開示及び利用に関して様々なガイダンスが作成・公表されてい

る。これは 2019 年に入って一層顕著である。これらガイダンスについて把握することは、

将来的に「TCFD ガイダンス」「グリーン投資ガイダンス」が改訂される場合においての反

映のために必要である。本章では、近年数多く発表されている TCFD に関連した多くのガ

イダンス類のうち代表的なものを抽出し、概要について記載する。

1.2.1 Climate Change: Managing a New Financial Risk(Oliver Wyman / IACPM, 2018年)7

International Association of Credit Portfolio Managers(国際信用ポートフォリオマネジャー協

会:IACPM)は金融機関からなる団体であり、信用リスクに関する意見交換、知見の拡充を

目的としている。IACPM は気候リスクも調査対象の一つとしており、経営コンサルティン

グ会社 Oliver Wyman と共同で 2018 年に本書を作成した。本書の作成にあたり、IACPM メ

ンバー40 社が参加しており、本書はこれら企業に対して TCFD 提言に関する調査を実施し

た結果をとりまとめたものである。調査に参加した企業の半数以上が TCFD 提言を完全に

実施する意向を示しており、実施する意向なしと回答した企業は 6 社にとどまっている。ま

た、調査結果より、TCFD 提言の導入は多くの企業においてガバナンスにおいてまず行われ、

その他の項目の実施にはより時間と労力を要するとしている(図 1-6)。

図 1-6 TCFD 提言の各項目への対応に要する時間のアンケート結果

出所)Oliver Wyman / IACPM, 2019, Climate Change: Managing a New Financial Risk

本書における IACPM 加盟企業に対する調査の例として、シナリオ分析に用いる(あるい

は計画している)シナリオについての集計結果を以下に示す(図 1-7)。

7 http://iacpm.org/research/climate-risk/よりダウンロード可能(閲覧日:2020 年 3 月 26 日)

Page 17: 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国 …経済産業省 産業技術環境局 P御中 112570-01 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国

9

図 1-7 IACPM 加盟企業が用いているか、用いることを計画している気候シナリオ

出所)IACPM / Oliver Wyman, 2019. Climate Change: Managing a New Financial Risk

(http://iacpm.org/research/climate-risk/、閲覧日:2020 年 1 月 7 日)より作成

本書の主な結論として、①銀行は気候リスクをレピュテーションリスクだけではなく財務

リスクとして扱うべき点、及び②銀行は気候関連の検討を財務リスク管理に統合させるべ

き点、という 2 点が挙げられている。その上で、今後銀行が TCFD 提言を実践していく上で

必要な事項として、①経営陣によるビジョンの設定、②投融資対象の気候リスクに応じた検

討の優先順位の設定、③シナリオ分析等に関する内部・外部専門家の活用を挙げている。

1.2.2 Network for Greening the Financial System: First comprehensive report: A call for

action: Climate change as a source of financial risk(2019 年 4 月)8

Network for Greening the Financial System(NGFS)は各国中央銀行及び監督省庁からなるネ

ットワークであり、現在 34 機関、オブザーバー5 機関が参加している。議長はオランダ銀

行の Elderson 氏、事務局はフランス銀行であり、日本からは金融庁と日本銀行が参加して

いる。NGFS は本書において、中央銀行、政策決定者等に対して気候変動リスクへの対応と

して下記 6 つの提言を行っている。

1. 気候変動リスクを金融安定化モニタリング、監督に含める。

➢ 金融システムに対する気候変動リスクの評価

➢ 監督業務における気候変動リスクの統合

2. 中央銀行のポートフォリオ管理にサステナビリティ要素を含める。

3. データのギャップを埋める。

4. 意識と知的容量を高め、技術的支援と知見共有を推進する。

5. 頑健で国際的に整合の取れた気候・環境関連の情報開示

6. 経済活動のタクソノミーの推進

ここで提言 5、6 は中央銀行や監督省庁の所掌業務には含まれないが、提言の中で、NGFS

8 https://www.banque-france.fr/sites/default/files/media/2019/04/17/ngfs_first_comprehensive_report_-

_17042019_0.pdf(閲覧日:2020 年 3 月 26 日)

0

2

4

6

8

10

企業

2℃シナリオ 2℃以下シナリオ その他、不明

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10

はネットワークとして TCFD 提言を支持するとしている。NGFS は、タクソノミーは金融機

関によるリスク特定、アセットごとのリスクの相違に関する理解、及びパリ協定に整合した

投資に資するとしており、またその要件として「グリーンウォッシュ」を防ぎ、グリーンな

投資やリスク分析を推進するに十分な程度に十全で詳細であるべきとしている。本書では

また、グリーンボンドに関するタクソノミー(中国)や EU での検討について紹介している

が、特定のタクソノミーや統一したタクソノミーの支持は打ち出していない。

1.2.3 Bank of England Prudential Regulation Authority: Enhancing banks’ and insurers’

approaches to managing the financial risks from climate change(2019 年 4 月)9

Prudential Regulation Authority(PRA:健全性規制機構)は英国の中央銀行である Bank of

England の下で、金融機関の健全性に関するチェックを行う機関である。

PRA は 2018 年に保険会社と銀行に対し、気候変動のリスクについての情報開示に関する

コンサルテーションペーパーを発表しているが、2019 年に公表した本書は気候変動リスク

に関して、保険会社、再保険会社等に対して企業ガバナンスにおける検討体制の確立、及び

リスクの特定・モニタリング・管理・報告を要請するものとなっている。その過程で、金融

機関に対して適切な場合にシナリオ分析の実施を推奨している。

PRA はこのような取り組みの一環で、TCFD 等のフレームワークの活用についても検討

することを期待している。その中で、金融機関に対して気候変動がもたらす財務リスクへの

対応が期待されている。対応のあり方に関する記載内容は以下のとおり(表 1-3)。

表 1-3 PRA が期待する金融機関における気候変動の財務リスクへの対応

項目 PRA が期待する項目の例

ガバナンス ▪ 長期的な財務上の懸念及び現在の判断が長期的な財務リスクに与える影響。

▪ 短期的及び長期的なストレステスト・シナリオテスト。

▪ 気候変動の財務リスクが発現する時期・経路の不確実性。

▪ 主要なリスク要因や外部環境がバランスシートに与える感度の勘案。

リスク管理 ▪ 既存のリスク管理フレームワークに基づく財務リスクへの対応。

➢ リスクの特定・判断:シナリオ分析の特定及び過去のデータの分析に留ま

らない検討。

➢ リスクのモニタリング:各種の定性的・定量的なツールや指標の活用、指

標の適時のアップデート。

➢ リスク管理及び低減:重要と判断された気候変動に関するリスク要因につ

いて、それらの低減のための妥当な計画や政策の整備。

シナリオ分析 ▪ シナリオ分析の適切な実施。低炭素社会への転換へ向けた多様な道筋及び転換

が生じない場合等の多様な結果に鑑み、短期的及び長期的な評価。

▪ シナリオ分析の、財務リスクに対する影響を理解するための活用。

開示 ▪ 多くの地域で開示が義務化されるようになる可能性の増大への対応。

出所)Bank of England Prudential Regulation Authority: Enhancing banks’ and insurers’ approaches to managing

the financial risks from climate change(https://www.bankofengland.co.uk/prudential-

regulation/publication/2018/enhancing-banks-and-insurers-approaches-to-managing-the-financial-risks-from-

climate-change、閲覧日:2020 年 1 月 7 日)より作成

9 https://www.bankofengland.co.uk/prudential-regulation/publication/2018/enhancing-banks-and-insurers-

approaches-to-managing-the-financial-risks-from-climate-change(閲覧日:2020 年 1 月 7 日)

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11

1.2.4 気候変動開示基準委員会(CDSB)、米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)、

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)実務ガイド(2019 年 5 月)10

CDSB は英国、SASB は米国に本拠を置き、企業の情報開示、報告に関するフレームワー

クやスタンダードを策定している。2019 年 5 月に両者は共同で、CDSB、SASB のフレーム

ワークや基準を通じ、企業が TCFD に基づく開示の質を向上させるためのガイダンスを発

表した。

本ガイドでは CDSB フレームワークの要件及び SASB スタンダードの指標とガイダンス

と TCFD 提言の 4 項目(11 小項目)を照合し、それらは整合していることを示している(図

1-8)。さらに仮想的な石油企業、農産物企業、自動車企業を想定し、TCFD の各項目に関す

る情報開示の例を紹介するとともに、それらの開示において参照すべき CDSB フレームワ

ークと SASB スタンダードの項目を紹介している。

図 1-8 TCFD 提言の各項目と、CDSB フレームワーク、SASB スタンダードの整合性

出所)気候変動開示基準委員会(CDSB)、米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)、気候関連財

務情報開示タスクフォース(TCFD)実務ガイド

また、CDSB の「2017 年プラクティカルアクション TCFD チェックリスト」に従い、以

下のステップを示している。

1. 取締役会と経営チームの支持を確かなものにする。

2. 委員会による監督体制の確立:気候変動を主要なガバナンスプロセスに組み入れ、監査

およびリスク委員会を通じて取締役会レベルで監督する体制を構築する。

3. 持続可能性、ガバナンス、財務、コンプライアンスのそれぞれの担当者を集め、各自の

役割について合意を形成する。

10 https://www.cdsb.net/sites/default/files/sasb_cdsb-tcfd-implementation-guide_japanese.pdf(和訳)(閲覧日:

2020 年 3 月 26 日)

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12

4. 気候リスクの財務的影響と、気候リスクと売上高・支出・資産・負債・金融資本との関

連を明らかにする。

5. 事業を少なくとも 2 つのシナリオに照らして評価する。

6. 既存の企業レベルのリスク管理プロセスと、その他のリスク管理プロセスを、気候リス

クを考慮したものに適応させる。

7. 投資家が気候関連財務リスクおよび機会に関して、どのような情報を知る必要がある

のか、関与する投資家からフィードバックを募る。

8. 気候関連財務情報を収集し、報告するのに役立てるために、既に使用している可能性の

ある、CDP 質問書・CDSB フレームワーク・SASB スタンダードなどのツールに着目す

る。

9. 気候関連財務情報において、財務・経営・ガバナンスに関する情報を開示する場合と同

じ品質保証とコンプライアンス・アプローチを使用することを計画する。

10. 報告する情報は、すぐに報告すると決めていない場合でも、裏付けが取れるものとして

準備する。

11. 年次報告書の既存の構成を見て、リスクに関する議論、経営者による財務・経営成績の

分析(MD&A)、ガバナンスの各セクションに TCFD 提言を取り込むにはどうすればよ

いのかを考える。

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13

1.2.5 気候変動開示基準委員会(CDSB)、米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)、

TCFD Good Practice Handbook(2019 年 9 月)11

本ハンドブックは 2018年に発表されたG20 に本拠を置く企業のアニュアルレポート等よ

り、TCFD 提言内容の実施について好例と考えられる事例を抜粋している。好事例として取

り上げられた企業報告書と評価された点の概要について以下に示す(表 1-4)。

表 1-4 TCFD Good Practice Handbook において、好事例として取り上げられた企業報告書

と評価された点の概要

項目 企業 評価された点の例

ガバナンス Barrick Gold

(カナダ・鉱業)

Royal Bank of Canada(カナダ、銀

行)

Galp(ポルトガル、石油・ガス)

Eni(イタリア、石油・ガス)

Total(フランス、石油・ガス)

Cemex(メキシコ、セメント)

取締役会及び関連する委員会の機能について記載。

気候変動が企業のリスク管理プロセスに盛り込まれ

ることを記載。

気候変動に関する取り組みが経営層の目標や役員報

酬に反映されていることを記載。

戦略 Kellogg(米国、食品)

Tata Motors(インド、自動車)

Danone(フランス、食品)

EDF(フランス、電力)

Commonwealth of Australia(豪州、

銀行)

Unilever(英・蘭、食品)

Wipro(インド、IT)

短期・中期・長期のタイムフレームを明記。

物理リスクと移行リスクの双方について記載。

消費者の選好の変化、競合他社の影響について記

載。

リスクと機会の双方について記載。

企業の資産、バリューチェーンにどのように影響を

与えるかについて記載。

脱炭素転換の金融業にとっての機会について記載

気候変動の影響把握について検討する段階を記載。

また将来影響を予測する手法について記載。

複数のシナリオ(2℃、4℃)について検討した上

で、現状の戦略・ビジネスモデルが強靭であること

を記載。

気候変動が土地等の資産価値に与える影響について

記載。

所在地ごとにリスクを記載。

リスク管理 Lloyds Banking Group(英、金融)

Eni(イタリア、石油・ガス)

Royal Bank of Canada(カナダ、銀

行)

HSBC(英、金融)

富士通(日本、IT)

短期・中期・長期のタイムフレームを明記。

統合リスク管理モデルの開発・採択について記載。

発生の可能性、リスクの水準についてマトリックス

で表示。

リスクに対する制御可能性について「リスク・ピラ

ミッド」で図示。

将来的なリスク管理の開示の方向性について記載。

リスク管理の体制、役割について図示。

指標と目標 Danone(フランス、食品)

China Telecom(中国、通信)

BASF(ドイツ、化学)

気候関連指標と役員報酬との関連について記載。

温室効果ガス排出量算定手法について記載。

排出量について総量及び原単位で記載。排出源、エ

11 https://www.cdsb.net/sites/default/files/sasb_cdsb-tcfd-implementation-guide_japanese.pdf(和訳)(閲覧日:

2020 年 3 月 26 日)

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14

項目 企業 評価された点の例

Gold Fields(南ア、鉱業)

Total(フランス、石油・ガス)

Eni(イタリア、石油・ガス)

ネルギーミックスについても記載。

GHG 種類について記載。

Scope 1~3 について別個に記載。

業種ごとの排出量について記載。

過去複数年の排出量について記載。

目標及び進捗の度合い、及び具体的な対策について

記載。

排出量だけでなく、脱炭素向け R&D、関連特許

数、再エネ等の関連する指標についても記載。

出所)SASB、CDSB, 2019, TCFD Good Practice Handbook(https://www.cdsb.net/sites/default/files/sasb_cdsb-tcfd-

implementation-guide_japanese.pdf、閲覧日:2020 年 1 月 7 日)より作成

以上に示したように G20 各国の主要企業の情報開示事例に対して評価を行った上で、

CDSB と SASB は、情報開示のあり方として下記に留意することが必要であると述べてい

る。

▪ 開示される情報が相互に関連すること。

▪ 企業活動が気候変動に与える影響ではなく、気候変動が企業活動に与える影響につい

て開示すること。

▪ 取締役会と経営層のそれぞれの役割を明確に示すこと。

▪ 個々のリスクと機会は「戦略」に関連する情報として開示し、リスクを特定・管理する

プロセスを「リスク管理」に関連する情報として開示すること。

▪ 非財務情報と財務情報を適切に連携させること。

▪ 気候変動の影響に関するマテリアリティについて明確に示すこと。

▪ 戦略のレジリエンスについて検討すること。

▪ TCFD 提言のすべての項目における開示を目指すべきであること。

▪ Scope1 及び Scope2 排出量以外の指標に関する比較可能性が限定的であり、開示情報の

有用性を損なうこと。

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15

1.2.6 WBCSD による業種別ガイダンス(2019 年 7 月)12

持続可能な開発のための世界経済人会議(World Business Council For Sustainable

Development:WBCSD)は事業会社からなる Preparer Forum を業種別に組成している。

現在、石油・ガス、電力、化学、建設、自動車、食料品・農業・林産品の 6 つの業界に関

するフォーラムが設立されており、2018 年には石油・ガス業界に関して、2019 年には電力

業界と化学業界に関して業種別ガイダンスが発表された。これら 3 つのガイダンスについ

て以下に述べる。

石油・ガス業界に対するガイダンス13

石油・ガス業界に対するガイダンス(Climate-related financial disclosure by oil and gas

companies: implementing the TCFD recommendations)は Eni(イタリア)、Equinor(ノルウェ

ー)、Shell(蘭・英)、Total(フランス)が協力して作成されている。後述する電力業界及び

化学業界に対するガイダンスより 1 年前に策定されており、構成は若干異なる。具体的には

TCFD 提言の各項目に関する企業の情報開示の事例に先立ち、TCFD 対応に関する全般的な

記載を設けている。今後は指標の標準化による比較可能性の向上、リスクに対するレジリエ

ンスや機会への対応を示す必要があると結論している。

電力業界に対するガイダンス14

電力業界に対するガイダンス(TCFD Electric Utilities Preparer Forum:Disclosure in a time of

transition: Climate related financial disclosure and the opportunity for the electric utilities sector)は、

CLP 中電(香港)、EDF(フランス)、EDP(ポルトガル)、EnBW(ドイツ)、ENEL(イタリ

ア)、Iberdrola(スペイン)の各電力会社が協力している。本書は電力業界の特質を踏まえ、

TCFD に基づく情報開示のあり方について解説を行い、協力している電力会社各社の報告書

より該当部分の抜粋、Preparer Forum としてのコメントに加え、企業のレジリエンスに関す

る情報開示を求めるといった、情報活用側の見解等も随所に記載されている。シナリオ分析

に関しては、メンバー企業は 1.5℃~2℃と併せて 3~4℃シナリオについても検討している

と記載されている。シナリオには IEA の NPS、SDS や IPCC の RCP8.5、4.5、2.6 等の公開

されているものを用いており、インプットとして再エネ等への投資、電化及び電力需要の変

化、EV の浸透、暖房の電化等の最終消費形態の変化、送配電網の課題、カーボンプライシ

ング、エネルギー効率基準の厳格化、デマンドレスポンス、技術革新(蓄電、CCUS 等)に

ついて検討していると記載されている。

本書では、電力業界の情報開示は進んでいるとした上で、財務影響(投資、買収、ダイベ

12 https://www.wbcsd.org/Programs/Redefining-Value/External-Disclosure/TCFD/Resources(閲覧日:2020 年 3

月 26 日)

13 https://docs.wbcsd.org/2018/07/Climate_related_financial_disclosure_by_oil_and_gas_companies.pdf(閲覧日:

2020 年 3 月 26 日)

14 https://docs.wbcsd.org/2019/07/WBCSD_TCFD_Electric_Utilities_Preparer_Forum.pdf(閲覧日:2020 年 3 月

26 日)

Page 24: 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国 …経済産業省 産業技術環境局 P御中 112570-01 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国

16

ストメント)に関する記載の充実、戦略と活動の整合性向上、開示情報の根拠及び範囲の明

確化、表記・参照方法の明確化に関して改善が可能とし、併せて比較可能性、バランス、未

来志向の情報、ダイアローグについて検討すべきとしている。

シナリオ分析に関して、将来的な再エネ等に関する取組の増大を挙げている企業が多く、

再エネ比率の増加と収益増を両立させる見込みを示している企業もある。一例を以下に示

す(表 1-5)。

表 1-5 ENEL 社の再エネに関する取組方針の開示事例

項目 2015 年 2018 年 2021 年

再エネ比率 41% 46% 55%

キャッシュ創出(10 億ユーロ) 1.8 2.5 4.4

一株当たり配当(ユーロ) 0.16 0.28 0.36

出所)WBCSD, 2019, TCFD Electric Utilities Preparer Forum:Disclosure in a time of transition: Climate related

financial disclosure and the opportunity for the electric utilities sector より作成。

化学業界に対するガイダンス15

化学業界に対するガイダンス(TCFD Chemical Sector Preparer Forum:Climate related

financial disclosure by chemical sector companies: Implementing the TCFD recommendations)は、

AkzoNobel(オランダ:現 Nouryon)、BASF(ドイツ)、DSM(オランダ)、Solvay(ベルギ

ー)、住友化学(日本)が協力している。電力業界に対するガイダンス同様、本書では Preparer

Forum としてのコメントや情報活用側の見解が記載されている。本書では化学業界につい

て、大規模な温室効果ガス排出源ではあるが、同時に PV や住宅断熱などの低炭素化へ向け

た解決策を提供する等、機会も豊富に存在するとし、シナリオ分析及びサステナブル製品の

開発がもたらす財務影響が今後の情報開示の改善における課題であるとしている。

同ガイダンスにおいて紹介されているサステナブル製品に関する記載内容について以下

に示す(表 1-6)。

表 1-6 化学業界に対するガイダンスに記載されているサステナブル製品の事例

企業名 記載内容

AkzoNobel 同社 Eco-Premium Solutions の収益に対する比率。

BASF 持続可能な開発に大きく貢献する製品(Accelerator Products)の目標

及び達成度合い。

DSM Brighter Living 製品の売上に占める比率。

住友化学 サステナブル製品”Sumika Sustainable Solutions”の売上の推移。

出所)WBCSD, 2019, TCFD Chemical Sector Preparer Forum:Disclosure in a time of transition: Climate related

financial disclosure and the opportunity for the electric utilities sector より作成。

15 https://docs.wbcsd.org/2019/07/WBCSD_TCFD_Chemical_Sector_Preparer_Forum.pdf(閲覧日:2020 年 3 月

26 日)

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17

WBCSD のガイダンスの特徴として、投資家の観点が随所に”user perspectives”として記載

されていることが挙げられる。この一例を以下に示す(表 1-7)。

表 1-7 WBCSD ガイダンスに記載されている投資家の視点の事例

TCFD 提言の

各項目

業界 記載の概要

戦略 石油・ガス ▪ 例えば上流/下流、地域別、部門別等、情報が分割されているほど投資家

にとって有用となる。

化学 ▪ サステナブル製品等、機会に関する開示、とりわけそれらの基準、目的、

影響についての説明、収入や利益に占めるそれらの割合に関する情報は

有用である。

電力 ▪ 特定したリスクや機会の影響について説明したものが有用である。

▪ 物理リスクとして、アセットの地理的分布、水資源、現状での極端事象

への対応、気候変動の需要への影響等について投資家は関心がある。

シナリオ分

石油・ガス ▪ シナリオは現状の知識・見解に基づき、IEA 等の第三者によるよく知ら

れたシナリオを用いていると最も有用となる。

電力 ▪ 1.5~2℃シナリオを含む各種シナリオにおけるレジリエンスを検討して

いるような情報は有用である。

▪ 低炭素化への転換に伴う多様化、イノベーション、柔軟性、ビジネスモ

デルの適応が、戦略的な展望とビジネスモデルのレジリエンスに関する

評価対象となる。

▪ 外部要因への適応や、ダイベストメント及びリストラクチャリングに関

してレガシーアセットの管理も把握の対象となる。

▪ 契約の期間や PPA の性質等も有用な情報である。

指標と目標 石油・ガス ▪ 投資家は、資金がどのような使途であるか、及び投資に関する意思決定

がパリ協定の示唆する将来像と整合しているかを知りたいと考える。電

源別の発電電力量や、再エネに特化した投資等の情報が求められる。

電力 ▪ 下記について投資家は関心を示す。

➢ 現状のビジネスモデル及び価値創造(低炭素電源の比率、異なる部

門の収益構造等)

➢ 将来のビジネスモデルを示す資金的指標(低炭素への転換のための

R&D を含む資金計画等)

➢ 地理的な情報(地域別の気候変動政策との整合性、物理リスク等)

➢ 低炭素目標のパリ協定との整合性、ダイベストメントや企業合併の

影響等

化学 ▪ Scope 3 排出に関する開示は有用

▪ 過去の報告書との比較可能性が保たれていることが望ましい。

出所)WBCSD, 2018, Climate-related financial disclosure by oil and gas companies: implementing the TCFD

recommendations 、WBCSD, 2019, TCFD Electric Utilities Preparer Forum:Disclosure in a time of

transition: Climate related financial disclosure and the opportunity for the electric utilities sector 、WBCSD,

2019, TCFD Chemical Sector Preparer Forum:Disclosure in a time of transition: Climate related financial

disclosure and the opportunity for the electric utilities sector より作成。

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18

1.2.7 International Institute of Finance, Climate-related Financial Disclosures: Examples

of Leading Practices in TCFD Reporting by Financial Firms(2019 年 8 月)16

International Institute of Finance(IIF)は、70 か国の約 450 の金融機関からなる団体であり、

金融機関のリスク管理、健全な業界慣行の浸透の推進とともに、金融業界を代表して世界規

模での制度設計に関して提言を行う機関である。本書は IIF において設立された Sustainable

Finance Working Group(議長:HSBC 銀行の Global Head of Sustainable Finance である Daniel

Klier 氏)により作成されたものであり、金融機関による TCFD 提言の実施状況についてと

りまとめたものである。具体的には TCFD 提言の各項目について、TCFD 最終報告書及び金

融部門への補助的ガイダンスを引用し、併せて金融機関による実施内容について簡潔に記

載している。

本書で紹介されている金融機関の TCFD 提言の実施に関する取り組み事例について、以

下に抜粋して示す(表 1-8)。

表 1-8 金融機関の TCFD 提言の実施に関する取り組み事例

項目 金融機関 概要

戦略 HSBC ▪ 2018 年の報告において、2025 年までにサステナブルファイナンスとし

て 1,000 億ドルを供給することを記載(報告書作成時において 285 億

ドルを既に供与)。

戦略 Swiss Re ▪ アニュアルレポートにおいて、移行リスク、物理リスク、機会及び保

険・再保険への影響について明確、包括的かつ比較可能な方法で記載。

リスク管理 Barclays ▪ 2018 年 ESG レポートで、マテリアリティマトリックスを作成し、気

候変動リスクを他の ESG リスクと比較して開示している。

PIMCO ▪ 同社のアナリスト、ポートフォリオマネジャーは 2017 年には 4,000 以

上の電話、対面での対話を行ったと記載している。

指標と目標 AXA,

Aviva

Societe

Generale

▪ CarbonDelta 社の Portfolio Warm-ing Potential Analysis を用い、自らのポ

ートフォリオがどの温度シナリオと整合しているかを検討し、開示し

ている。

UBS ▪ 温暖化関連資産(Carbon-related assets:電力とエネルギー部門)と、ア

セットに占める比率(Proportion of total net credit exposure)について提

供。

UBS

Aviva

AXA、

Swiss Re

▪ 自らの排出量に加え、ポートフォリオ全体の加重平均原単位(WACI)

について部分的にではあるが算出している。

▪ AXA の場合、下記のようにアセットクラスによって異なる指標を用い

ている。

➢ エクイティ・社債:直接排出量/売上量

➢ 国債:排出量/GDP

➢ 不動産:排出量/床面積

出所)IIF, 2019, Climate-related Financial Disclosures: Examples of Leading Practices in TCFD Reporting by

Financial Firms より作成

16 https://www.iif.com/Publications/ID/3528/Climate-related-Financial-Disclosures-Examples-of-Leading-Practices-

in-TCFD-Reporting-by-Financial-Firms(閲覧日:2020 年 3 月 26 日)

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19

以上のような各金融機関の現状のレビューをもとに、本書では、情報開示側と活用側が留

意すべき課題についてとりまとめている。これについて以下に示す(表 1-9)。

表 1-9 情報開示側と活用側が留意すべき課題

項目 概要

比較可能性 ▪ 企業間・産業間でビジネスモデルや戦略は異なるため完全な標準化は不可能で

あり望ましくないが、TCFD 提言に対するアプローチの収斂のためにさらなる

努力を行うことが望ましい。

指標の収斂

▪ 用いる指標が多様であることは情報活用側にとって課題となる。

▪ 特に、アセットポートフォリオに関する指標(間接指標)について顕著である。

データ・手法上

の課題

▪ 気候関連リスクの特定・管理には多様なデータ、及びその処理が課題となる。

この問題への対処の第一歩は、データの必要性と現状のデータソースとの関連

を明確にすることであり、IIF も検討を行っている。

信頼性、透明性

及び重要な情報

▪ 開示された情報の背景等に関する透明性、及び活用において求められる情報が

企業秘密に属することがある。

義務化・標準化 ▪ 一部欧州諸国で進められている開示情報の義務化の是非に関する議論は今後と

も続くが、情報開示に関するアプローチがバラバラであったり相反したりする

ことはマイナスの影響を与える。

出所)IIF, 2019, Climate-related Financial Disclosures: Examples of Leading Practices in TCFD Reporting by

Financial Firms より作成

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20

1.2.8 Investor Leadership Network, TCFD Implementation Practical Insights and

Perspectives from Behind the Scenes for Institutional Investors(2019 年 9 月)17

Investor Leadership Network(ILN)は機関投資家の対話を行うためのプラットフォームで

あり、カリフォルニア州職員退職年金基金(Calpers)等の公的機関や、Allianz 等の大手民

間企業の双方を含む 12 機関がメンバーとなっている。

ILN は 2018 年に、同年の G7 議長国カナダの意向を受けて気候変動イニシアティブを立

ち上げた。本書はその成果であり、TCFD 提言の 4 項目について、機関投資家が留意すべき

点について記載している。ところどころにメンバー企業のコメントがコラム的に記載され

ている。

本書で特徴的な点として、エンゲージメントの重要性が強調されていることが挙げられ

る。

本書における TCFD 提言の実施に関する記載例を以下に示す(表 1-10)。

表 1-10 TCFD 提言の実施に関する記載の例

項目 概要

「ガバナンス」 ▪ 気候変動政策、コミットメント、ガイドラインは期待を明確化する一助となる。

▪ 分野横断的なチームの教育は、気候変動に対応する文化の醸成の鍵を握る。

「戦略」 ▪ 気候変動はマテリアルな財務リスクだが、ポートフォリオにも依存するが他の

在来のリスクが財務上大きい場合もある。

▪ エンゲージメントは時間を要するが、雇用者やコミュニティの座礁を回避しつ

つ低炭素経済への転換を加速する最も有効な方策である可能性がある(イタリ

アの保険会社 Generali のコメントとして掲載)。

「 シ ナ リ オ 分

析」

▪ どの気候シナリオが起こるかは、カーボンプライシング等の公共政策に依存し、

これらは本質的に予測不可能である。このため、複数のシナリオに対して準備

をする必要があり、リスクのプライシングを難しくする。

▪ シナリオ分析をよりよく理解するために他社と協働することが鍵を握る。これ

は新しい分野である。

▪ 投資家自らが信頼性の高いデータを入手することは困難であり、投資先企業自

身でシナリオ分析を行うことが最も相応しい。シナリオ分析が進展するにつれ、

投資家は企業独自の分析の結果を信頼することが出来るようになる。

「指標」 ▪ プロセスが不透明であることや、データが不完全であることにより作業を止め

てはいけない。測定は将来的に改善するものであり、今開始することが重要だ。

「目標」 ▪ 野心的かつ現実的であり、投資戦略と制約に沿った目標を策定すべき。それら

を将来的に引き上げることも可能である。

出所)ILN, 2019, TCFD Implementation Practical Insights and Perspectives from Behind the Scenes for Institutional

Investors より作成

本書で記載されている ILN メンバー機関のコメントの一例を以下に示す(表 1-11)。

17 https://www.investorleadershipnetwork.org/en/investor-leadership-network-advocates-for-stronger-climate-

change-disclosure/(閲覧日:2020 年 3 月 26 日)

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21

表 1-11 TCFD 提言の実施に当たっての ILN メンバー機関のコメント

機関 概要

Allianz ▪ とりわけエネルギー多消費産業(エネルギー、運輸、産業、素材)と

エンゲージメントを進めている。多くの企業は自らの、及びサプライ

チェーンを通じた排出実績について正確に把握しておらず、そのため

エンゲージメントを通じ、SBT 等の計測可能な目標を策定することが

重要である。

カリフォルニア州職員退

職年金基金(Calpers)

▪ 気候リスクの多様な側面を理解し、対処するため、企業や同じ立場の

投資家とエンゲージメントを行っている。

ケベック州投資信託銀行

(CDPQ)

▪ 投資マネージャーに対して排出削減戦略のエンゲージメントを行うこ

とは、彼らの財務インセンティブと連動させることにより活性化した。

オンタリオ州教員年金基

▪ シナリオ分析に際し、あえて分析チームに出す指示を最小限にした。

これにより、気候変動がどのような影響を及ぼし、どのような対策を

想定するか、自分で考えるようになる。

アルバータ州遺産貯蓄信

託基金(AIMCo)

▪ 株式ポートフォリオの排出量上位 10 社の合計排出量は一貫して全体

の 25%以上を示しているが、それら企業は管理しているアセットの 3%

に過ぎない。このことは、ポートフォリオ全体の排出量はターゲット

を定めたエンゲージメントにより削減可能であることを示唆してい

る。

PGGM(オランダの年金

基金)

▪ Climate Bond Initiative を通じて環境に負荷が大きい(brownish)企業に

対して転換のための計画の策定を促し、そのためにグリーンボンドを

発行している。

AVIVA ▪ 企業のリサーチに、気候リスク評価を組み入れており、MSCI ESG レ

ーティングやカーボンフットプリントのような情報を活用している。

▪ また投資対象企業の役員に対して、気候変動の影響について質問して

いる。

カナダ年金制度投資委員

会(CPPIB)

▪ 気候変動は、理事会承認の統合リスクフレームワークの構成要素であ

る。自社の投資専門家に対してリスク特定を要請し、彼ら自身がリス

クに対して責任を持つようにしている。

▪ リスク評価について、チェックボックスだけの評価にならないように

気を付けている。

NATIXIS(フランス) ▪ 我々の投資先を分析した結果、2.9℃シナリオと整合していることが判

明した。まだ 2℃シナリオに向けては不十分だが、4~5℃シナリオと

整合している主要な市場インデックスと比べて低炭素化によりよく整

合している。

出所)ILN, 2019, TCFD Implementation Practical Insights and Perspectives from Behind the Scenes for Institutional

Investors より作成

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22

1.2.9 Corporate Reporting Dialogue, Driving Alignment in Climate-related Reporting(2019

年 9 月)18

Corporate Reporting Dialogue は、2013 年に国際統合報告フレームワークを発行した

International Integrated Reporting Council(IIRC)によって設立されたプラットフォームであ

り、企業報告に関するフレームワークや基準の整合性を高め、情報開示及び活用の可能性を

高めることを目的としている。Corporate Reporting Dialogue への参加機関には CDP、CDSB、

SASB、ISO、GRI 等が含まれており、2019 年 9 月に、最初の成果として標記のレポートを

発表した。

本書では TCFD 提言が、CDP の質問リスト、GRI スタンダード、SASB スタンダード、

CDSB フレームワーク、IIRC フレームワークとどのように整合しているかについて検証を

行った結果が示されており、TCFD の 7 原則、4 項目に関する 11 の推奨開示事項について

よい整合を示していると結論されている。また、TCFD の”Implementing the Recommendations

of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures”19における、エネルギー、運輸、素材・

建築物、農業・食料・林業、金融業について作成された 50 の参考となる指標(illustrative

metrics)についても CDP、GRI、SASB のスタンダードとの比較を行った結果、70%につい

て顕著な相違はないと結論している。

以上を踏まえた今後の作業として、情報開示者、利用者等のステークホルダーの相互理解

を高めるため、フレームワークやスタンダードに用いられている用語や手法の共通点や関

係性を記載した「タクソノミー」20の策定、オンライン/インタラクティブなツールの開発、

意見交換のためのフォーラムが提案されており、このうち「タクソノミー」が最大の優先事

項とされている。

また、各フレームワークの改訂に際しての協働・統合化された取り組みが有効とされてい

る。ただし、単一のフレームワークの策定の可能性についても議論されたが、それぞれのフ

レームワークが別個の目的を有することに鑑み、そのような単一のフレームワークの作成

は困難という見解が主流となっている模様である。

18 https://corporatereportingdialogue.com/publication/driving-alignment-in-climate-related-reporting/(閲覧日:

2020 年 3 月 26 日)

19 https://www.fsb-tcfd.org/wp-content/uploads/2017/12/FINAL-TCFD-Annex-Amended-121517.pdf(閲覧日:

2020 年 3 月 26 日)

20 サステナブルな活動を規定する、いわゆる「EU タクソノミー」とは異なる意味で用いられていると思

われる。

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23

1.2.10 Network for Greening the Financial System: A Sustainable and Responsible

Investment Guide for Central Banks’ Portfolio Management(2019 年 10 月)21

Network for Greening the Financial System(NGFS)については 1.2.2 で紹介したように、各

国中央銀行及び監督省庁からなるネットワークである。NGFS は 2019 年 10 月、サステナブ

ルで責任を持つ投資(Sustainable and Responsible Investment: SRI)の導入を意図する中央銀

行に対するガイダンスを発表した。同書によれば、NGFS が調査した中央銀行 27 行のうち

25 行が何らかの形で SRI を導入しているが、SRI 導入のあり方は様々であり、単一のアプ

ローチではなくいくつかの選択肢について記載している。具体的には以下に示す通り(表

1-12)。

表 1-12 中央銀行に対する SRI 導入に関するアプローチ

項目 概要

Negative screening ▪ 基準を満たさない企業を投資対象のポートフォリオから外す。

➢ ただし、これを実施した場合、当該企業とのエンゲージメントの機会が

失われ、投資先の分散化に逆行するためにリスク-リターンプロファイル

に負の影響を与える。

➢ 多くの中央銀行が採用している。

Best-in-class ▪ 企業の ESG 上の特徴を他社と比較し、優れているものをポートフォリオに加

えるか、加重する。

➢ ある分野で最も優れた企業、最も改善度が高い企業を採用する、ユニバ

ースで優れた企業を採用する等、アプローチは多様。

➢ 導入は容易だが、ESG スコアのあり方に大きく影響を受ける。

➢ 政策ポートフォリオ以外で採用されている。

ESG Integration ▪ 財務上マテリアリティがあると考えらえる ESG 基準を投資分析に含める。

➢ 投資ユニバースを縮小する必要は必ずしもない。

➢ 継続した評価が必要。また企業の信用に ESG 基準がどのように影響す

るかについての分析はまだ初期段階。

Impact investing ▪ 社会貢献を行う企業への投資、またはインパクト投資ファンドやグリーンボ

ンド等、特定の目的を持った投資を実施する。

Voting and

engagement

▪ 議決権を行使し、企業行動を変革する。

➢ 主に株式での投資を行う投資家が講じていた手段であったが、融資を行

う金融機関にも浸透しつつある。

➢ 中央銀行の独立性の確保または利害関係の対立が課題。そのため、匿名

で、一定の距離をおいて実施される必要がある。

出所)NGFS, 2019, A Sustainable and Responsible Investment Guide for Central Banks’ Portfolio Management よ

り作成

また本書では、上述したような SRI に関する各国の中央銀行の取り組み事例について記

載している。これらのいくつかの事例について次に示す(表 1-13)。

21 https://www.ngfs.net/en/communique-de-presse/ngfs-publishes-sustainable-and-responsible-investment-guide-

central-banks-portfolio-management(閲覧日:2020 年 3 月 26 日)

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24

表 1-13 本書で紹介されている各国中央銀行の SRI に関する取り組み事例

機関 概要

Norges Bank

(ノルウェー)

・ 1,000 近くの企業と継続的なダイアローグを実施。一部の企業に対しては

議決権も行使。

・ 財務省により任命された独立委員会の推薦等に基づき投資対象からの除

外を行う。2018 年にはガバナンス及びサステナビリティリスクに関する

評価を根拠に 30 社、気候リスクを根拠に 15 社からダイベストメントを

実施。

Banca d’Italia

(イタリア)

・ カスタマイズされたベンチマークに基づき全てのイタリア企業に投資す

るが、ESG スコアに基づき重みづけを行う。このような ESG インテグレ

ーションにより、従来ポートフォリオと比べて GHG 排出及びエネルギ

ー消費のフットプリントはそれぞれ 23%及び 30%削減された。

Banque de France

(フランス)

・ 再エネ・サステナブルモビリティ等のグリーンインフラに関するファン

ドへのインパクト投資を実施(これまでに 1 億ユーロ)

Magyar Nemzeti Bank

(ハンガリー)

・ グリーンボンドのポートフォリオの設立を 2019 年に決定。当初のアロケ

ーションは少額となり、トラッキングエラーを最小限とするためにパッ

シブに近い運用を行う方針。

Swiss National Bank

(スイス)

・ 代行者(proxy voting agent)を通じた議決権行使を実施。SNB 自身の

proxy voting guidelines に沿った実施を要請。

De Nederlandsche Bank

(オランダ)

・ 独自の責任投資ポリシーを策定。外部コンサルタントの支援を受けて 85

名の候補から 2 名のアセットマネージャーを選出し、SRI 戦略を実行に

移す。

出所)NGFS, 2019, A Sustainable and Responsible Investment Guide for Central Banks’ Portfolio Management よ

り作成

なお 2019 年 6 月 18 日の Wall Street Journal において、気候変動政策への関与は中央銀行

の独立性を損なうものであるという趣旨の論説が掲載された22。これに対して、NGFS は気

候リスクへの対応は中央銀行の責務であると反論している23。

22 The Downsides of Central Bank Mission Creep(https://www.wsj.com/articles/the-downsides-of-central-bank-

mission-creep-11560858134(閲覧日:2020 年 1 月 7 日)

23 Climate Change: A Financial Risk for Banks(https://www.wsj.com/articles/climate-change-a-financial-risk-for-

banks-11563125833(閲覧日:2020 年 1 月 7 日)

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25

1.2.11 Financial Reporting Council, Climate-related corporate reporting: Where to next?

(2019 年 10 月)24

Financial Reporting Council(FRC:英国財務報告評議会)は、監査法人やコーポレートガ

バナンスに関する監督業務を行う機関である。FRC は企業の財務報告に関する対話の場と

して、2011 年に Financial Reporting Lab を立上げた。本書はこの Financial Reporting Lab によ

るもので、TCFD に沿った効果的な情報開示を行うことを支援するものであり、開示側(事

業会社)と利用側(金融機関)の双方の立場から記載していることが特徴的である。具体的

には、TCFD 提言の 4 項目について、投資家の期待と事業会社の視点を併記した上で、情報

開示にあたり企業が自らに問いかけるべき点を記載している。これらについて以下に示す

(表 1-14)。

表 1-14 情報開示にあたり企業が自らに問いかけるべき点として紹介されている項目の例

項目 投資家が事業会社に明らかにしてほしい点 企業が自らに問いかけるべき点

ガバナン

ス・

管理

▪ 経営層が気候変動についてどのよう

に検討・評価するか。

▪ 気候変動に関するガバナンスプロセ

スは独立して存在するのではなく、企

業のリスク管理プロセスや他の公共

政策への対応方針と整合しているべ

き点。

▪ 気候変動に対する経営層の見解、責

任、勘案する項目及び満足する基準は

何か、他の公共政策への対応方針との

整合性。

ビジネスモ

デル・戦略

▪ ビジネスモデルが気候変動によりど

のように影響を受けるか(存続できる

か、どう対応するか)。

▪ 気候変動に関する機会を活用するた

めにどのように変わらねばならない

か。

▪ 企業の将来像についてどのように考

えるか、リスクと機会についてどう把

握しているか、ビジネスモデルは 1.5℃

や 2℃シナリオにどのように対応する

か、グリーン製品の収益への反映。

リスク管理 ▪ 機会とリスクは何か。リスクの優先

度及び可能性・影響はどれくらい

か。

▪ どのようなシナリオがどのように企

業の存続に影響を与えるか。

▪ リスク把握の体制はどのようになっ

ているか。モニタリング、評価をど

のように行っているか。

▪ シナリオについて、どのように選んだ

か、十分に多様性がありチャレンジン

グか。

指標と目標 ▪ 影響や、戦略の効果はどのように測定

されるか。

▪ どのような情報が重要と考えるか、そ

れらはどのようにして抽出されたか、

どのように監督されているか、トレン

ドデータは提供されているか、推定値

の場合、計算方法は何か、達成度は役

員報酬に反映されているか。

注)なお本書では Governance and management、Business model and strategy、Risk management、Metrics and

targets の 4 項目となっている。

出所)Financial Reporting Council, 2019, Climate-related corporate reporting: Where to next?より作成

続いて、添付文書では、TCFD の 4 項目のそれぞれについて、情報開示に関する参考事例

を記載している。具体的には、約 20 社の事業会社の報告書から実際に抜粋し、どのような

24 https://www.frc.org.uk/getattachment/22ee8a43-e8ca-47be-944b-c394ecb3c5dd/Climate-Change-v9.pdf(閲覧

日:2020 年 3 月 26 日)

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26

点が参考になるかを付記している25。また、投資家と事業会社の見解を随所にコラム的に載

せており、投資家と事業会社の率直な意見について記載している。本書に記載されている投

資家と事業会社の見解の例としては、以下のようなものが示されている(表 1-15)。

表 1-15 記載されている投資家と事業会社の見解例

投資家 事業会社

▪ 事業会社には自分でシナリオ分析を行ってほ

しいが、何をしたかがアナリストにわからな

いのであれば意味がない。

▪ アセット毎に検討する必要がある。現状では、

企業全体を 1 つのアセットとして取り扱って

いることもあるが、それは間違いであり、ハ

イリスク事業とローリスク事業の双方がある

からといって中間的なリスクとなるわけでは

ない。

▪ 排出が少ない産業でも脆弱な地域との関連が

高いかもしれない。従って企業には気候変動

のリスクを検討し、リスク特定を行うことを

期待する。

▪ 不確実性があるため、開示される情報が事業

会社のビジネスとの関係が重要だ。

▪ 自分の観点を持てるような情報に期待する。

透明性が重要だ。

▪ 情報開示は反復するプロセスである。完璧で

ある必要はない。

▪ 重要性はわかるが、現状と戦略をどのように

調和させるか難しい。

▪ 最も難しいもの、そして最も興味深いものが

シナリオだ。

▪ 情報開示は、企業の計画を戦略評価へ統合す

るものであり、価値を追加するものであった。

出所)Financial Reporting Council, 2019, Climate-related corporate reporting: Where to next?より作成

25 気候変動リスクに関してアセットレベルで開示している、排出量について記載するのみならず、計算方

法及びその変更についても記載している点等について評価している。

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27

1.3 TCFD への対応状況調査(企業の TCFD 報告書)

TCFD 提言の発表に引き続き、いくつかの企業は TCFD 提言に沿った情報開示を「TCFD

報告書」の形で実施している。こうした開示の例を以下に示す。

1.3.1 Citibank, Finance for a Climate-Resilient Future(2018 年 11 月)26

シティバンク銀行はパリ協定を支持しており、トランプ政権によるパリ協定離脱声明後

も”We are still in”イニシアティブに参加している。本書はシティバンク銀行の気候変動に関

する実績と、TCFD 提言に示されている内容の実践について記載したものである。

シティバンク銀行が実施した内容は以下の通り(表 1-16)。

表 1-16 TCFD 提言の実施にあたりシティバンク銀行が実施した取り組み

項目 概要

シナリオ分析 ▪ 下記について実施。

➢ Nature Capital Finance Alliance 及び UNEP FI と共同し、乾燥ストレステス

トツールのパイロットテストに参加。

➢ 石油・ガス上流部門への影響分析による座礁資産の検討。具体的には下

記について実施。

移行シナリオの検討:REMIND(ポツダム研究所)、MESSAGE

(IIASA)を用いた分析。

ポートフォリオへのインパクト分析:

融資先レベルでの校正(キャリブレーション):当該産業の専門家

を用いた分析。

TCFD 提言の実施 ▪ ガバナンス:理事会による気候変動問題の監督及び役員クラスによる理事会

への報告書提出。

▪ 戦略:全社的な Sustainable Progress Strategy の策定、及び上述したようなシナ

リオ分析の実施。

▪ リスクと機会の管理:$100 Billion Environmental Finance Goal を通じた気候変

動対策投資(再エネ、省エネ、グリーンインフラ等)の推進、ESRM Policy を

通じた気候リスク評価(石炭、林業、石油・ガス、パーム油)。

▪ 指標と目標:Global Citizenship Report における Scope 1~3 排出量の開示等

(Scope 3 は従業員の出張)。

出所)Citibank, 2018, Finance for a Climate-Resilient Future より作成

26 https://www.citigroup.com/citi/sustainability/data/finance-for-a-climate-resilient-future.pdf?ieNocache=15(閲覧

日:2020 年 3 月 26 日)

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28

1.3.2 2019 Climate-Related Financial Disclosures(ANZ Bank 2019 年)27

ANZ Bank は豪州に本拠を置く銀行であり、気候変動に関しては気温上昇を 2℃以下に抑

えることにコミットしている。同社は情報開示に関しても報告書を発表し、自らの取り組み

について記載している。具体的には TCFD 提言の 4 項目について、これまでの取り組み、

2020-21 年の重点事項、2020 年以降のビジョンについて記載するとともに、ポートフォリオ

に占める影響を受ける産業別の比率を示している。

戦略としては、火災や洪水を含めたシナリオ分析、住宅ローンポートフォリオにおける気

候リスクの拡大(既に洪水リスクについては考慮)について記載している。同社は主要排出

部門(エネルギー、運輸、素材・建築物、農業・食品・林業)について合計 19 のサブカテ

ゴリーに区分し、それぞれのサブカテゴリーのデフォルト時エクスポージャー(EAD)につ

いて開示している。上記の部門への EAD は総額としては増大傾向にあるものの、大規模で

格付けが高く、気候変動対策に積極的な企業の比率を高めることで対象企業の投資適格比

率も向上していると記載している(表 1-17)。

表 1-17 ANZ 銀行のポートフォリオにおける各部門の EAD 及び投資適格性比率

2017 2018 2019

エネルギー 28.3

(79.6%)

28.7

(80.0%)

31.9

(81.5%)

運輸 15.5

(60.5%)

16.6

(63.7%)

18.8

(65.1%)

素材・建築物 85.8

(35.9%)

92.5

(40.9%)

100.3

(45.9%)

農業・食品・林業 41.8

(44.1%)

42.3

(48.0%)

43.6

(51.5%)

出所)ANZ Bank, 2019, 2019 Climate-Related Financial Disclosures。EAD は単位 10 億ドル

27 https://www.anz.com.au/about-us/sustainability-framework/environmental-sustainability/climate-change/(閲覧

日:2020 年 3 月 26 日)

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29

1.4 制度文書

1.4.1 EU の取組

サステナブルファイナンスに関する検討

EU は 2016 年 12 月に「サステナブルファイナンスに関するハイレベル専門家グループ」

(HLEG)を設立し、金融面からの脱炭素化の取り組みを本格化させた。HLEG は 2018 年 1

月に「サステナブルファイナンスに関する行動計画」28を発表した。これを受けて、欧州委

員会は 2018 年 5 月に以下の方針を策定した。

・ サステナブルな経済活動を規定する「タクソノミー」を含む、サステナブル投資促

進のためのフレームワークに関する規則の策定

・ サステナブル投資に関する情報開示についての EU 規則の策定(既存規則の改訂)、

・ ベンチマークに関する既存の EU 規則の策定

このような欧州委員会の活動を支援するために技術的専門家グループ(TEG)が組織され

た。TEG は 2019 年 1 月に気候関連開示に関する最終報告書、2019 年 6 月 18 日にタクソノ

ミー、グリーンボンド基準、ベンチマークについての報告書を発表した29。

このうちベンチマークについては 2019 年 9 月 30 日に最終報告書が発表され、タクソノ

ミーについてはパブコメの後、2020 年 3 月 9 日に TEG の最終報告書が公表された。検討経

緯は次に示す通り(表 1-18)。

28 最終報告書は、報告書本体と 3 種類の付属文書(1.グリーンボンドに関する非公式な補足文書、2.サス

テナブルファイナンスに関するコンサルテーションへの HLEG の貢献、3.サステナビリティ・タクソノミ

ーに関する非公式補足文書)及びサステナブルファイナンスに関するコンサルテーションへの HLEG の回

答で構成されている。(https://ec.europa.eu/info/publications/180131-sustainable-finance-report_en,閲覧日:

2020 年 2 月 10 日)

29 https://ec.europa.eu/info/publications/sustainable-finance-technical-expert-group_en から各文書に関連するリン

クが貼られている(タクソノミー最終報告書も同様)。(閲覧日:2020 年 2 月 10 日)。

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30

表 1-18 EU のサステナブルファイナンス検討経緯

2016 年 12 月 欧州委員会が「サステナブルファイナンスに関するハイレベル専門家

グループ(HLEG)設置し、検討を開始。

2017 年 8 月 HLEG が中間報告書を公表。

2018 年 1 月 HLEG が「サステナブルファイナンスに関する行動計画」を公表。

2018 年 3 月 欧州委員会が、「サステナブルファイナンスに関する行動計画」を採

択。

2018 年 5 月 欧州委員会がサステナブルファイナンスに関する法整備案を提案

2018 年 7 月 欧州委員会がサステナブルファイナンスに関する技術的専門家グル

ープ(TEG)を設置。

2018 年 12 月 TEG が進捗報告書を公表。

2019 年 1 月 TEG が気候関連開示に関する最終報告書を公表。

2019 年 6 月 TEG がタクソノミー、グリーンボンド基準、ベンチマークに関するレ

ポートを公表。

2019 年 6 月 欧州委員会が気候関連財務情報開示に関するガイドラインを公表。

2019 年 9 月 TEG がベンチマークに関する最終報告書を公表。

2020 年 3 月 TEG がタクソノミーに関する最終報告書を公表。

出所)欧州委員会ホームページ(https://ec.europa.eu/info/publications/sustainable-finance-technical-expert-

group_en、閲覧日:2020 年 3 月 27 日)より作成

1)ベンチマークに関する情報開示規則(規則 2019/2089)

標記規則は在来の規則 2016/101130を改訂し、低炭素化へ向けたベンチマークである

Climate Transition Benchmark(CTB)と Paris-aligned Benchmark(PAB)が維持すべき最低限

の基準を設けるものである。本規則策定の目的として、低炭素を標榜したインデックスの基

準の統合化を図ることで、市場の効率化を図り、「グリーンウォッシュ」を排して低炭素化

へ方向付けることが挙げられる。ベンチマークの管理者はこの規則に関し、2020 年 4 月 30

日までに遵守することが求められる。

2 つのベンチマークの概要は下記の通り。とりわけ Paris-aligned Benchmark については本規

則内での規定は少ないが、TEG の作業を勘案することとなっている。TEG は 2019 年 9 月に

ベンチマークに関する最終報告書31を発表したが、両者について以下のように記載している

(表 1-19)。

30 REGULATION (EU) 2016/1011 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 8 June 2016

on indices used as benchmarks in financial instruments and financial contracts or to measure the performance of

investment funds and amending Directives 2008/48/EC and 2014/17/EU and Regulation (EU) No 596/2014 31 EU Technical Expert Group on Sustainable Finance, Report on Benchmarks

(https://ec.europa.eu/info/files/190930-sustainable-finance-teg-final-report-climate-benchmarks-and-disclosures_en

閲覧日:2020 年 2 月 10 日)

Page 39: 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国 …経済産業省 産業技術環境局 P御中 112570-01 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国

31

表 1-19 Climate Transition Benchmark(CTB)と Paris-aligned Benchmark(PAB)の対比 Climate Transition Benchmark(CTB) Paris-aligned Benchmark(PAB)

最低目標(Scope 1~

3 排出量に関する原

単位削減率)32

・ 30%

・ 年間ベンチマーク低減率:7%

・ 50%

・ 年間ベンチマーク低減率:7%

Scope 3 フェーズイ

・ 4 年以内 ・ 同左

ベースラインで排除

する部門

・ Controversial weapons(クラスター

兵器、タイ人地雷等)

・ Social norms violators(UNGC、多国

籍企業に対する OECD ガイドライ

ン等)

・ 同左

ベンチマーク対象か

ら外す活動

・ なし(現状では低炭素社会への転

換に完全に不整合なアセット、企

業は存在しないとして、TEG は除

外について推奨していない)

・ 石炭、石油、天然ガスからの収益

がそれぞれ 1%、10%、50%以上を

占める企業

・ 発電原単位 100g-CO2/kWh 以上

の発電(CCSを装備していない全

ての火力発電が該当すると思わ

れる)

Green / Brown ratio33

(任意)

・ 同等以上 ・ 4 倍以上

出所)EU 規則 2019/2089 及び TEG, 2019, Final Report on EU Climate Benchmarks and Benchmark ESG

Disclosures34、 TEG, 2019, Handbook of Climate Transition Benchmarks, Paris-Aligned Benchmark and

Benchmarks’ ESG Disclosures35より作成

欧州委員会は今後、含まれるアセットの選定、加重、脱炭素経路(Climate Transition

Benchmark)の場合といった両ベンチマークの最低基準を設けることとしている。また、TEG

最終報告書作成時点でタクソノミーに関する検討は未了であるが、2)で述べる EU タクソ

ノミーとの連携を図ることについて記載している。

2)タクソノミーに関する動向

TEG に与えられたもう一つのマンデートである、サステナブルな経済活動を規定する「EU

タクソノミー」については、前述のように 2019 年 6 月に TEG の技術報告書が発表された。

TEG は引き続き 2019 年 9 月 16 日までフィードバック期間を設け、計 830 件 3,920 項目の

回答を受理した。TEG はこれらフィードバックを加味した最終案を 2020 年 3 月 9 日に発表

した。タクソノミー基準は、投資のスクリーニングを支援し、経済活動の環境パフォーマン

スが気候変動目標の達成に貢献しているかどうかを市場が判断することに資するとされて

32 現状、オフセットは推奨されていない。

33 Green:エネルギー転換に貢献する分野。Brown:化石燃料を用いる分野、とされているが、現状では

明確な定義はない。 34 https://ec.europa.eu/info/files/190930-sustainable-finance-teg-final-report-climate-benchmarks-and-disclosures_en

(閲覧日:2020 年 3 月 26 日)

35 https://ec.europa.eu/info/files/192020-sustainable-finance-teg-benchmarks-handbook_en(閲覧日:2020 年 3 月

26 日)

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32

いる36。

また 2019 年 12 月に、EU 理事会、欧州議会及び各国間の政治合意が成立した37。ここで

は、サステナブルな活動であるとされるためには、「緩和」「適応」「水資源・海洋資源の持

続的利用」「循環経済への転換」「公害防止と抑制」「生物多様性と生態系の保護と回復」の

6 項目のいずれかに大きく寄与し、かつ他の項目に大きな悪影響を与えないこと、及び人権

等に関する最低限のセーフガード(OECD 多国籍企業行動指針、ビジネスと人権に関する国

連指導原則)が遵守されることが原則となっている。また、タクソノミーについては、金融

商品の開示、及び非財務情報開示に関する指令(2014/95/EU:NFRD)の対象となる企業の

開示に用いられる方針である。

タクソノミー適格となる活動は下記の観点から抽出されている。

・ 自らの実績(own performance)により貢献する経済活動。例として建築物の改築、省エ

ネ製造プロセス、低炭素エネルギーの生産が挙げられている。

・ 製品・サービスの共有により貢献する経済活動(enabling activities)。例として低炭素製

品や部品の生産が挙げられている。

2020 年 3 月に公表された TEG のタクソノミー報告書技術補遺38において記載されている

サステナブルである経済活動や製品のリスト及び基準について、主要なものを以下に示す

(表 1-20)。素材の多くについて、タクソノミー適格と見なされる閾値は EU 排出量取引ス

キーム(EUETS)において産業部門に排出枠を付与するために策定された原単位「EUETS

ベンチマーク」39と共通の値となっている。EUETS ベンチマークは 2010 年に策定され、2013

年~2020 年(EUETS フェーズ 3)の期間に適用されているものであるが、タクソノミーに

関する 2019 年 6 月の TEG 報告書には 2019 年時点のものが用いられている。なお EUETS

は 2021 年~2030 年の「フェーズ 4」期間ではベンチマークは改訂(厳格化)される。

36 EU Technical Expert Group on Sustainble Finance, 2020, Taxonomy: Final report of the Technical Expert Group

on Sustainable Finance 37 https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2019/12/18/sustainable-finance-eu-reaches-political-

agreement-on-a-unified-eu-classification-system/ 38 EU Technical Expert Group on Sustainble Finance, 2020, Taxonomy Report: Technical Annexe 39 EUETS のベンチマークについては https://ec.europa.eu/clima/policies/ets/allowances/industrial_en(閲覧日:

2020 年 2 月 10 日)を参照。

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33

表 1-20 タクソノミー報告書技術補遺において、サステナブルであるとみなされる経済活

動・製品の閾値の概要

分野 閾値の概要

低炭素技術

の製造

▪ 下記について製造する産業

➢ 再エネ設備

➢ 低排出輸送技術、機器及び建物(後述)

セメント ▪ EU 排出量取引スキーム(EUETS)の CO2 原単位ベンチマークに従い、下記のよう

に設定。

➢ クリンカ:0.766tCO2e/t of clinker

➢ セメント:0.498 tCO2e/t of cement

アルミニウ

▪ 直接排出量が EU 排出量取引スキーム(EUETS)の CO2 原単位ベンチマークであ

る 1.514-CO2/t 以下であり、電解時の電力消費量が 15.29MWh/t 以下か CO2 原単位

100g-CO2/kWh 以下の電力を用いているかのいずれかを満たす。

鉄鋼 ▪ 高効率の製鉄及びスクラップ等からの再生.

➢ EU 排出量取引スキーム(EUETS)の CO2 原単位ベンチマークを上回る製鉄

プロセスで製造されたもの・

銑鉄:1.328t-CO2/t-製品

焼結鉱:0.171 t-CO2/t-製品

鋳造:0.325 t-CO2/t-製品

➢ スクラップ比率 90%以上の電炉

▪ 今後適用されるべき低炭素化へ向けた技術として、製鉄ガス回収及び CCS、直接還

元、水素還元等が挙げられている。

プラスチッ

クス

▪ 機械的なリサイクル、化学リサイクル、バイオマス・バイオ廃棄物等再生可能原料

に起因するもので、シングルユース消費財に用いられないかリサイクル起源のも

の。

発電 ▪ 全体:ライフサイクル CO2 原単位 100g-CO2/kWh40が閾値となる(2050 年へ向けて

5 年ごとに改訂が行われ、最終的にゼロとされる方針)。

➢ 太陽光、風力、海洋エネルギー、水力(出力密度 5W/m2 以上のもの41)につ

いては現状ではライフサイクル CO2 原単位の立証を免除(ただし将来的に求

める可能性あり)。

➢ ガス火力についても同様(CCS や混焼を行う場合、それらの活動もタクソノ

ミー適合である必要がある)。

➢ バイオマス:比較される化石燃料と比べて GHG 排出量を 80%以上42低減する

もの(2050 年までに 100%)

➢ 2050 年以降も続く活動については、ゼロエミッションに達することが技術的

に可能でなくてはならない。

送配電 ▪ 完全な脱炭素化への途上にある系統での送配電、及び CO2 原単位 100g-CO2/kWh

以下の電源からの直接送電

▪ EV 充電ステーション

▪ 再エネ導入を主目的とした機器、再エネの制御を目的とした機器(センサー、通信

機器)、消費者間の再エネ取引を可能にする機器)等

40 CCS なしでは化石燃料焚発電によって達成することは不可能と思われる(効率 100%の天然ガス発電を

想定すると、約 200g-CO2/kWh となる)。

41 出力に対して貯水池面積が広いと、発電量に対してダム水面から発生するメタンの排出量が高くなる可

能性を想定しているものと思われる。類似の規定がクリーン開発メカニズム(CDM)にも存在する。

42 2019 年 6 月版では 85%以上。

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34

分野 閾値の概要

蓄電・蓄熱 ▪ 現状では全てが適合可能。ただし揚水については水力に関する基準を満たす必要が

ある。

バイオガス ▪ EU 指令 2018/2001 に定める先進的なバイオ燃料及び土地利用影響度が低いバイオ

燃料、等。

ガス網 ▪ 水素及びその他の低炭素ガスの利用増加につながる投資、及び既存ガスパイプライ

ンの補修(ガス網延伸は対象外)。

地域冷暖房 ▪ 再エネ比率 50%以上 / 排熱 50%以上 / コージェネ熱 75%以上 / 左記合計 50%以

上のもの。

▪ 供給温度の提言、制御システムの高度化(IoT 等)。

電気 HP ▪ 冷媒の GWP が 675 以下43であり、EU エコデザイン指令の実施規則に示すエネルギ

ー効率基準を満たすもの。

ガスコージ

ェネ

▪ 電力と熱の CO2 原単位が合計で 100g-CO2/kWh を下回るもの。

CCS 等 ▪ CO2 直接吸収(direct air capture)。

▪ 閾値内での経済活動を可能にし、タクソノミーに適合する輸送・貯留施設に輸送さ

れることが立証できるもの。

➢ 輸送:漏洩率が 0.5%未満であるもの。

➢ 貯蔵:ISO 27914:2017 に適合する永久貯蔵施設。

交通機関 ▪ 貨物鉄道:直接排出量がゼロか、現状の規則の半分以下のもの。ただし化石燃料輸

送に特化したものは対象外。2025 年にレビューを実施。

▪ 公共交通:直接排出量がゼロか、直接排出量が 50g-CO2/km 以下のもの(ただし 2025

年以降は不適格)。

▪ その他:EV 充電、水素ステーション、自転車や徒歩に関するインフラの建設・運

営。

乗用車

商用車

▪ ZEV(水素:FCV、EV)。

▪ 直接排出量が 50g-CO2/km 以下のもの(ただし 2025 年以降は不適格)。

トラック ▪ ZEV(1g-CO2/kWh 未満のもの)

▪ リファレンスとなる車両と比べて CO2 排出原単位が 50%未満のもの。

▪ 適格なバイオ燃料を用いているもの(2025 年までにレビューを実施)。

▪ なお、化石燃料輸送に特化したものは対象外。

建築物 ▪ 新築:nearly zero-energy building’ (NZEB) requirements の基準に比べ、一次エネルギ

ー需要が 20%以上低い建築物。

▪ 改築:改築前と比べ一次エネルギー需要が 30%以上低下することが立証できるも

の等。

▪ ビルマネジメントシステムの設置、EU のエコデザイン基準に沿った高効率窓、ド

ア等

出所)EU Technical Expert Group on Sustainable Finance, 2020, Taxonomy Report: Technical Annex より作成

タクソノミーに関する TEG 報告書の最終版と 2019 年 6 月版を比べると、石炭及び原子

力に関する記載が削除され、またバイオマスエネルギー、蓄電・蓄熱、電気ヒートポンプの

冷媒に関する基準が変更されている。特に電気ヒートポンプの冷媒の GWP の閾値は 10 か

ら 675 となり、近年多くの空調機器で用いられている HFC-32(R-32)が適合することを意

味する。逆にコージェネレーションについては電力と熱で別個の原単位(100g-CO2/kWh 及

び 30g-CO2/kWh-th)であったのが合計で 100g-CO2/kWh となり、厳しくなっている。

43 2019 年 6 月版では 10 未満

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35

これら「緩和」と「適応」に関するタクソノミーについては 2021 年末までに運用に付さ

れる。さらに、残る 4 分野のタクソノミーについても、2021 年末までの策定、2022 年末ま

での運用が予定されている。なお 2019 年 6 月の TEG の報告書から 12 月の政治合意に至る

まで EU 加盟国間の交渉が行われ、特に原子力及びガスの位置づけについて紛糾したことが

伝えられている。

金融商品を販売する機関は、下記について開示を行う。

・ それぞれの金融商品について、構成要素となる投資先がどの程度タクソノミーを用い

ているか。

・ 投資はどのような環境目的に貢献するか

・ 投資先のうちタクソノミーに適合する事業の比率はどれくらいか。

金融商品におけるタクソノミー適合比率の算定手法を図示したものを以下に示す(図

1-9)。投資対象企業A~Cにおいて、タクソノミーに適合する事業が収益比で企業Aは12%、

企業 B は 8%、企業 C は 15%であり、それらを 30%、50%、20%の比率で組み合わせた投資

ファンドを組成したとすると、そのファンドのタクソノミー適合率は投資対象のタクソノ

ミー適合率の加重平均を取り、10.6%と算出される。

図 1-9 投資ファンドのポートフォリオに対するタクソノミー適合比率の算出方法

出所)EU Technical Expert Group on Sustainable Finance, 2020, Taxonomy: Final report of the Technical Expert

Group on Sustainable Finance

企業の気候関連情報開示

EU では 2014 年に非財務情報開示に関する指令(2014/95/EU:NFRD)が公表され、従業

員 500 名以上の法人に対して、環境保護をはじめ、人権、ダイバーシティ等特定の非財務情

報の開示を義務付けている。また、同指令の枠組みにおいて、2017 年には非財務情報ガイ

ドライン、2019 年 6 月には気候関連情報開示ガイドライン” Guidelines on non-financial

Page 44: 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国 …経済産業省 産業技術環境局 P御中 112570-01 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国

36

reporting: Supplement on reporting climate-related information”が発表されている44。

気候関連情報ガイドラインは 5 つの要素からなり、以下に示すように TCFD 提言の 4 項

目に対応している(表 1-21)。

表 1-21 TCFD 提言と NFRD 指令に基づく開示推奨項目との対比

NFRD 指令の各項目

TCFD 提言の各項目 ビジネス

モデル

政策及びデュ

ーデリジェン

スプロセス

成果 主要なリスク

とその管理

KPI

ガバナンス 取締役会による

監視体制 ●

経営者の役割 ●

戦略 気候関連のリス

ク及び機会 ●

ビジネス・戦略・

財務計画に及ぼ

す影響

組織の戦略のレ

ジリエンス ●

リスク管理 リスクを識別・評

価するプロセス ●

リスクを管理す

るプロセス ●

総合的リスク管

理への統合 ●

指標と目標 リスク及び機会

を評価する際に

用いる指標

GHG 排出量と、

その関連リスク ●

目標、及び目標に

対する実績 ●

出所)Guidelines on non-financial reporting: Supplement on reporting climate-related information

より作成

本ガイドラインは企業が 2020 年以降に公表する報告書に適用され、法的拘束力を持たな

いものとされている。

なお、2019 年 12 月に欧州委員会より公表されたグリーンディール政策において、サステ

ナブル投資の基盤強化のために、2020 年中に NFRD 改正に向けたレビューを実施すること

が盛り込まれている45。

44 Guidelines on non-financial reporting: Supplement on reporting climate-related information(https://eur-

lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52019XC0620(01)&from=EN(閲覧日:2020 年 3 月 27

日)

45 欧州委員会は現在、パブリックコメントを募集している(募集期間:2020 年 2 月 20 日から 5 月 14

日)(https://ec.europa.eu/info/business-economy-euro/company-reporting-and-auditing/company-reporting/non-

financial-reporting_en、閲覧日:2020 年 3 月 27 日)

Page 45: 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国 …経済産業省 産業技術環境局 P御中 112570-01 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国

37

1.4.2 各国の取組

EU において現在取り組まれているような企業の気候関連情報開示の義務化については、

いくつかの国で動きが見られる。義務化をはじめとした気候関連情報開示の政策動向につ

いて以下に示す。

英国

英国では 2022 年までに全ての上場企業及び大規模アセットオーナーが TCFD に沿った情

報開示を義務付けることを含め、政府主導のタスクフォースで検討が進められている46。

1.2.11 で述べた FRC の報告書” Climate-related corporate reporting: Where to next?”では、明示

的な報告義務はないものの、企業は環境影響やリスク等に関して情報を開示すべきである

としており47、また会社法(Companies Act)に基づき企業における主なリスクと不確実性に

ついて報告することが求められる可能性があること、また近年の改正によりその可能性が

高いことを示唆している。

フランス

フランスでは「エネルギー転換・緑の成長法」第 173 条48に基づき、気候関連に関する情

報開示が義務化されている。同条項はフランスの通貨・財務規則(code monétaire et financier)

533-22-1 項を改訂するものであり、内容は具体的には下記の通り49。

・ 上場企業:気候変動の財務リスク、その削減手段、自らの活動(生産・サービス)の気

候変動影響について開示

・ 銀行:ストレステスト(気候変動に限らない)

・ 機関投資家:ESG 基準の組み入れ、基準のメソドロジー(アセットマネージャーについ

ては、ESG 基準を組み入れたファンドの比率)、エネルギー・環境政策との整合

これらの開示内容について、TCFD 提言と連動させる試みが現在行われている50。

カナダ

カナダでは、政府(環境省及び財務省)によって 2018 年 4 月に設立された専門家パネル

Expert Panel on Sustainable Finance が 2019 年に最終報告書を提出した51。パネルは TCFD 提

46 英国政府、2019 年、Green Finance Strategy

(https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/820284/190716_

BEIS_Green_Finance_Strategy_Accessible_Final.pdf 閲覧日:2020 年 1 月 13 日))

47 Financial Reporting Council, 2019, Climate-related corporate reporting: Where to next?(1.2.11 参照)

48 LOI n° 2015-992 du 17 août 2015 relative à la transition énergétique pour la croissance verte

(https://www.legifrance.gouv.fr/eli/loi/2015/8/17/DEVX1413992L/jo#JORFARTI000031045547 閲覧日:2020

年 1 月 13 日)

49 PRI, UNEP FI, IGCC, 2016, French Energy Transition Law (https://www.unepfi.org/fileadmin/documents/PRI-

FrenchEnergyTransitionLaw.pdf (閲覧日:2020 年 1 月 13 日))

50 TCFD, 2019 Status Report(1.1.2(1) 参照)

51 Government of Canada, 2019, Final Report of the Expert Panel on Sustainable Finance, Mobilizing Finance for

Sustainable Growth (http://publications.gc.ca/collections/collection_2019/eccc/En4-350-2-2019-eng.pdf (閲覧

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38

言に沿った開示が進展していることを認識しつつも、時間的制約、データ、リスク評価及び

シナリオプランニングに関する知見の不足、小規模事業者にとってのコスト及び能力、財務

報告における将来予測的な記載に伴う法的リスクが障壁となっているとしている。上記に

基づきパネルは、TCFD 提言に沿った開示を行うか、行わない場合は気候変動リスクのマテ

リアリティを評価した上で気候変動に関連したビジネスへの影響がないことを説明す

る”comply or explain”について、段階的に導入するような取り組みを連邦政府が支援するこ

とを提唱している。

米国

米国では気候変動対策に積極的な野党民主党が 2019 年 7 月に The Climate Risk Disclosure

Act of 2019(H.R.362352及び S.207553)を下院及び上院に提出した。これは企業に対して、保

有する化石燃料関連資産、温室効果ガス総排出量、物理リスクと移行リスク及びそれらの評

価方法、リスクの削減手段、推計の前提条件等について開示することを求める内容となって

いる。シナリオの検討に際してはベースライン(物理リスクを考慮)、及び 1.5 度を十分に

下回るシナリオ54の検討が求められる。同様の法案提出は 2018 年にも行われているが、最

終的に廃案となっている(上院法案 S.3481)。なお現状では米国議会は、上院は共和党が過

半数だが下院は 2018 年の中間選挙で民主党が過半数を獲得している。

また、米国証券取引委員会(SEC)は、開示すべき情報の内容については依然として検討

が行われている現状に鑑み、開示義務化はコスト増につながるとして慎重な姿勢を取って

いる55。また、SEC のクレイトン議長は 2020 年 1 月 30 日の声明で、気候変動に関する情報

開示はマテリアリティの評価に根差したものであるべきとしている56。

ニュージーランド

ニュージーランドでは、気候情報の開示の問題は、政府から任命された有識者からなる生

産性委員会(Productivity Commission)において検討が行われた。

同委員会は 2018 年の報告書 Low-emissions Economy57において、低排出社会への転換へ向

けた情報不足の障壁を克服し、投資家が資産・機会を正しく評価できるようにするために、

日:2020 年 1 月 13 日)

52 https://www.congress.gov/bill/116th-congress/house-bill/3623(Sean Casten 議員起草 閲覧日:2020 年 1 月

15 日))

53 https://www.congress.gov/bill/116th-congress/senate-bill/2075(Elizabeth Warren 議員起草 閲覧日:2020 年

1 月 15 日))

54 well below 1.5 degrees scenario(パリ協定の規定は well below 2 degrees)。 55 “As we approach this or other disclosure topics, I am always cognizant that imposing specific bright-line

requirements can increase the costs associated with being a public company and yet not deliver the relevant and

material information that market participants are seeking”(米国証券取引委員会企業金融部 Hinman ディレクタ

ーのスピーチより抜粋:https://www.sec.gov/news/speech/hinman-applying-principles-based-approach-disclosure-

031519、閲覧日:2020 年 1 月 15 日)

56 https://www.sec.gov/news/public-statement/clayton-mda-2020-01-30(閲覧日:2020 年 2 月 10 日)

57 New Zealand Productivity Commission, 2018, Low-emissions economy: Final report

(https://www.productivity.govt.nz/assets/Documents/lowemissions/4e01d69a83/Productivity-Commission_Low-

emissions-economy_Final-Report_FINAL_2.pdf) (閲覧日:2020 年 1 月 20 日)

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39

TCFD 提言に賛同すること、及び気候関連財務情報の” comply-or-explain”に基づく開示義務

付けを提唱している58。これに基づき、環境省は開示の義務化について検討を実施し、2019

年 10 月に” Climate-related financial disclosures: discussion document”を発表し、上記の提案を

支持した上で論点をとりまとめ、意見を求めた。

現状の自主的アプローチと義務化のメリットはそれぞれ以下のようにまとめられている

(表 1-22)。

表 1-22 ニュージーランド環境省が示した気候関連財務情報の視点

自主的アプローチが望ましい論拠 開示の義務化が望ましい論拠

・ 企業が気候変動リスクを勘案する法的義

務があり、また市場、法制度上の圧力が

既に存在する。

・ 現状のアプローチはこれまで効果を示し

ていない。

・ 早期に自主的開示を行った事業者が不利

となる懸念が払拭される。

・ 単一のフレームワークに基づく義務化に

より、明確かつ比較可能な開示が可能と

なる。

・ 行動の遅い企業に対応を促すことが可能

となる。

出所)Ministry for the Environment & Ministry of Business, Innovation & Employment. 2019. Climate-related

financial disclosures – Understanding your business risks and opportunities related to climate change:

Discussion document より作成

引き続き同国政府は、気候変動計画の一環として開示義務化を検討することを 2019 年 10

月 31 日に提案した(意見提出が行われ、2019 年 12 月 13 日に締切られた。この過程で 11

月下旬に一連の公聴会が開催されている)59。今後ニュージーランド政府(環境省及び企業・

技術革新・雇用省)は提出意見のとりまとめを発表した上で、これらを反映した規則につい

て閣議決定を踏まえて行うこととされている。

オーストラリア

オーストラリアでは、企業・市場・金融サービスの規制当局であるオーストラリア証券・

投資委員会(ASIC)において気候情報開示に関する検討が行われている。ASIC は 2019 年

8 月に気候変動関連情報開示に関するガイドラインを改訂し、TCFD に沿った自主的な情報

開示を推奨している60。

58 “The Government should implement mandatory (on a comply or explain basis), principles-based, climate-related

financial disclosures by way of a standard under section 17(2)(iii) of the Financial Reporting Act 2013. These

disclosures should be audited and accessible to the general public. 59 ニュージーランド環境省ウェブサイト(https://www.mfe.govt.nz/consultations/climate-related-financial-

disclosures、閲覧日:2020 年 1 月 15 日)。この一環として、ニュージーランド環境省は各国の動向をもと

にしたディスカッションペーパーClimate-related Financial Disclosures: Understanding Your Business Risks and

Opportunites Related to Climate Change を発表している(閲覧日:2020 年 1 月 20 日)

(https://www.mfe.govt.nz/sites/default/files/media/Climate%20Change/Climate-related-financial-disclosures-

discussion-document.pdf)(閲覧日:2020 年 1 月 20 日)。 60 https://asic.gov.au/about-asic/news-centre/find-a-media-release/2019-releases/19-208mr-asic-updates-guidance-

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40

中国

中国では、環境保護省と証券取引委員会が共同で、環境情報開示の義務化へ向けて検討を

行っていることが伝えられている。2017 年には一部の環境負荷が大きい企業、2018 年には

全ての上場企業について”comply or explain”の原則に基づいた開示、2020 年には開示義務化、

というスケジュールが示された61。ただし、2019 年 12 月時点では施行する法規制が存在し

ないという情報もある62。

国際的イニシアティブ

責任投資原則(Principles for Responsible Investment)に賛同する機関投資家からなる団体

PRI は、PRI 署名機関に対する気候情報開示の義務化について、PRI が設定した気候関連指

標のうち、ガバナンス(SG01CC 及び SG07CC)及びシナリオ分析(SG13CC)に関連する

指標について、2020 年より PRI への報告を義務化する意向を発表した(ただし報告内容の

開示は任意とする方針である)63

1.4.3 ISO の取り組み

国際標準化機構(ISO)は 2018 年 11 月にサステナブルファイナンスに関する技術委員会

(ISO/TC322)を立ち上げ、2019 年 3 月より、タクソノミーを含むサステナブルファイナン

スに関する検討を行っている。

on-climate-change-related-disclosure/(閲覧日:2020 年 1 月 20 日) 61 CDP, CDSB, A Brief Introduction to Climate Disclosure in China

(https://www.cdsb.net/sites/default/files/ciff_policy_briefing_china.pdf)(閲覧日:2020 年 1 月 15 日) 62 https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-12-10/china-risks-missing-own-deadline-for-environmental-

disclosures(閲覧日:2020 年 1 月 15 日)

63 https://www.unpri.org/news-and-press/tcfd-based-reporting-to-become-mandatory-for-pri-signatories-in-

2020/4116.article(閲覧日:2020 年 1 月 13 日)

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41

1.5 情報開示に向けた課題及び方策の検討

TCFD 提言に対応した情報の開示及び利用には端緒がつけられたばかりであり、今後の進

展に待つところが多い。TCFD ステータスレポートが示すように、過去 1 年間の企業の報告

書は TCFD 提言への対応により整合性が向上し、内容面でも充実してきている。一方で、開

示内容の充実度は項目によりまちまちであり、特にシナリオ分析やリスク管理については

今後、更なる拡充が求められている。

1.2 章で見たように、近年、TCFD 提言に対応するために様々なガイダンスが作成されて

いる。特に、情報利用者のために作られたガイダンスや、情報利用者の視点で情報開示のあ

り方について記載されているガイダンスが発表されており、これらは情報開示のあり方に

ついて示唆を与える。最近のガイダンスを踏まえ、情報開示にあたり事業者が留意すべき点

として、以下のようなものが考えられる。

▪ 気候変動を主要なガバナンスプロセスに組み入れ、取締役会レベルで監督する。また、

財務、コンプライアンス等を含め社内各部署の担当者との合意形成を行う。

▪ 開示側及び利用側にとって、リスク低減、機会最大化のための方策検討に資するため、

可能な限り、主要なアセットや、地域、部門別に情報を開示する。

▪ 気候変動に関するガバナンス、リスク管理プロセスと全社的なプロセスを整合させ、全

社的なリスク管理の一環として気候変動対策を捉える。

▪ リスクと機会、指標と目標等、開示された結果の背景についても可能な限り開示する。

具体的にはマテリアリティの判断基準や手法、排出量やリスクの算定手法や前提条件、

シナリオの選定方法や前提、などである。

前述のように気候関連情報の開示及び利用のあり方は今後さらに充実する方向にあるが、

そのためには開示する事業会社と利用する投資家の間で、有益な開示のあり方に関して意

識が共有されることが望ましい。TCFD コンソーシアムのような開示側、利用側の双方が対

話を行う取組を通じて、そのような意識の共有が促進されることが期待される。

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42

1.6 ヒアリングの実施

本業務、特に「グリーン投資ガイダンス」検討の一環として、主に金融機関を対象として

投融資先の情報開示に関する検討状況及び自社における利用の現状、TCFD 提言及びグリー

ン投資ガイダンスへの意見、企業エンゲージメントの事例を主要なテーマとしてヒアリン

グを実施した。ヒアリング対象について以下に示す(表 1-23)。

表 1-23 ヒアリングの対象機関

回 対象機関

1 アセットマネージャー、銀行、各複数社

2 信託銀行

3 アセットマネージャー

4 アセットマネージャー

5 銀行

6 アセットマネージャー

7 アセットマネージャー

8 アセットマネージャー

9 アセットマネージャー

10 アセットマネージャー

注)いずれも 2019 年 8 月に実施

これら金融機関へのヒアリング結果より、グリーン投資ガイダンスにおいて記載すべき

事例を抽出した。対象とした多くの企業において、投融資対象企業の価値を高めるために積

極的な情報の開示及び対話を求める姿勢が見られた。また企業価値の向上には画一的な評

価基準だけではなく、企業の状況に応じ対話を通じた深い理解が必要という認識も見られ

た。これらを含め、ヒアリングの結果についてはグリーン投資ガイダンスに事例として反映

している。

なお、上記と併せ、下記の通りゲストスピーカーを TCFD コンソーシアムのイベントに

招聘した(表 1-24)。

表 1-24 TCFD コンソーシアムのイベントに招聘したゲストスピーカー

TCFD コンソーシアムのイベント 招聘者

企画委員会 シナリオ分析の専門家

情報活用ワーキング・グループ ESG 投資に関する専門家

情報開示ワーキング・グループ シナリオ分析を実施した企業(2

社)

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43

2. TCFD コンソーシアムの運営

TCFD 提言への対応に向けた機運の高まりを受け、日本企業が TCFD に基づき効果的に情

報開示を実施するため、産業界と金融機関による対話の場として TCFD コンソーシアムを

設立した。

2.1 TCFD コンソーシアム設立総会の開催

TCFD コンソーシアムの設立総会が、2019 年 5 月 27 日に開催された。設立総会には、コ

ンソーシアム加入機関から、経営トップ・役員 150 名をはじめ 405 名が参加した。 コンソ

ーシアム設立にあたり、TCFD に新たに賛同した 62 機関が紹介されるとともに、日本の

TCFD 賛同機関数が 162 機関となり、世界第 1 位となったことが発表された。

TCFD コンソーシアム設立総会の概要は下記の通り。

開催日時:2019 年 5 月 27 日(月)16:00~18:00

場所:赤坂インターシティコンファレンス the AIR

議事次第

【第1部】コンソーシアム設立総会

1. 開会挨拶

2. TCFD 賛同機関の発表

3. ご挨拶

4. フォトセッション

5. 基調講演

6. TCFD コンソーシアムの活動について

7. 閉会挨拶

【第2部】今後の活動計画について ※会員限り

1. 企画委員の紹介

2. TCFD コンソーシアムの今後の進め方について

フォトセッション及び会場の状況は次に示す通り(図 2-1 図 2-2)。

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44

図 2-1 TCFD コンソーシアム設立総会 フォトセッション

図 2-2 TCFD コンソーシアム設立総会 会場

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45

2.2 ワーキング・グループの開催

TCFD コンソーシアムの活動の一環として、TCFD 提言対応に関する会員企業の知見の向

上やガイダンス策定に向けた意見募集等を目的として、勉強会形式のワーキング・グループ

を開催した。概要は以下の通り(表 2-1)。

表 2-1 ワーキング・グループの議事概要

WG 名称 日時 概要 参加者

第 1 回情報活用

ワーキング・グ

ループ

2019 年

8 月 6 日

・ ESG に関する情報開示についての調査研究の紹

介(外部専門家より発表)

・ サステナブル金融商品の紹介(TCFD コンソー

シアム会員の金融機関より発表)

・ グリーン投資ガイダンス骨子案について

・ TCFD サミットについて

136 社

208 名

第 2 回情報活用

ワーキング・グ

ループ

2019 年

9 月 9 日

・ グリーン投資ガイダンス骨子案について

・ TCFD コンソーシアムの今後の進め方について

105 社

159 名

第 1 回情報開示

ワーキング・グ

ループ

2019 年

12 月 23 日

・ TCFD サミット結果概要について

・ 環境省「シナリオ分析支援事業」及びシナリオ

分析の事例紹介(参加 2 社より発表)

・ TCFD コンソーシアムの今後の運営及び TCFD

ガイダンス 2.0 策定に向けた活動

・ ラウンドテーブル、GIG Supporters について

141 社

209 名

第 2 回情報開示

ワーキング・グ

ループ

2020 年

3 月 19 日

・ ラウンドテーブルの結果について

・ TCFD ガイダンス 2.0 策定に向けた活動

・ GIG Supporters について

・ その他

-64

64 新型コロナウイルス対応のため対面での開催は行わず、オンライン開催とした。

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2.3 企画委員会の開催

TCFD コンソーシアムの運営のため、14 名からなる企画委員会を設立し、開催した。概要

は以下の通り(表 2-2)。

表 2-2 企画委員会の議事概要

回 日時 概要

第 1 回 2019 年

6 月 25 日

・ TCFD コンソーシアム会員企業に対するアンケートの分析結果に

ついて

・ TCFD 2019 Status Report について

・ コンソーシアムの今後の進め方について(コンソーシアム全体、

情報活用ワーキング・グループについて)

・ グリーン投資ガイダンスについて

第 2 回 2019 年

7 月 29 日

・ TCFD サミットについて

・ 企業におけるシナリオ分析について(外部専門家)

・ グリーン投資ガイダンスについて

・ コンソーシアムの今後の進め方について

第 3 回 2019 年

9 月 2 日

・ グリーン投資ガイダンスについて

・ コンソーシアムの今後の進め方について

第 4 回

(書面開催)

2019 年

10 月 1 日

・ グリーン投資ガイダンスについて

第 5 回 2019 年

12 月 4 日

・ TCFD サミット結果について

・ TCFD の現状について

・ コンソーシアムの今後の進め方について

第 6 回

(書面開催)

2020 年

3 月 4 日

・ TCFD ガイダンス 2.0 の方向性について

・ GIG Supporters の設置について

・ ラウンドテーブル開催報告

第 4 回の企画委員会は「グリーン投資ガイダンス」検討の最終段階にあたり、10 月 1 日

に書面で開催した。また、第 6 回の企画委員会についても当初は対面開催の予定であった

が、新型コロナウイルス対応のため書面開催に変更して実施した。

なおワーキング・グループや企画委員会の開催にあたっては、必要に応じ、企画委員や関

係省庁等にヒアリングを行い、準備を行った。

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47

2.4 小ワーキング・グループの開催

TCFD コンソーシアム会員企業が参加する小ワーキング・グループについて以下に示す。

小ワーキング・グループの名称を「ラウンドテーブル」として、下記のように実施した。

TCFD コンソーシアム会員企業に対して参加を募集し、申し込みのあった企業から、事

業会社、投資家の双方についてバランスを考慮し、かつ希望テーマを勘案した上で選出

した。

テーマとしては共通の関心事項について率直な議論につながる事項を選定した。テー

マは以下の通り。

➢ 参加企業の開示に関する全体的な印象

➢ 業界の特性を踏まえた、期待する開示内容

➢ TCFD 開示の今後

参加者間の議論の充実を図るため、参加者数は 10 名程度とした。また全体の時間を 90

分とおき、うち 60 分程度をディスカッションに充当した。

事業会社対投資家という図式を避け、また個社のエンゲージメントとはならないよう

留意した。

ラウンドテーブルの概要は以下の通り(表 2-3)。

表 2-3 ラウンドテーブルの概要

回 日時 参加企業の業種

1 2020 年

2 月 6 日

金融機関:アセットマネージャー2 社(日系、外資系各 1 社)

事業会社:メーカー3 社

2 2020 年

2 月 19 日

金融機関:アセットマネージャー、生命保険会社各 1 社

事業会社:非メーカー3 社

小ワーキング・グループについては、参加した金融機関、事業会社の双方から一定の評価

を得た。第 1 回の会合では、投資家から、TCFD 開示は ESG の中で最も注目されているた

め、記載を充実させるべきとの要望があった。第 2 回会合では、企業の開示を通じてどのよ

うなリスクを認識した上でどのように決断したかを投資家が知ることが重要であり、ESG

評価の基礎となることが示された。

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48

2.5 アンケートの実施

2019 年 6 月に、TCFD コンソーシアム会員企業に対してアンケートを実施した。アンケ

ートは金融機関、非金融機関に対して別個に実施し、それぞれ気候変動関連情報の開示及び

利用の状況及び意向について質問を行った。アンケートの概要は以下の通り。金融機関、非

金融機関に共通する質問事項と、別個の質問事項からなる(表 2-4)。

表 2-4 アンケートの構成

金融機関 非金融機関

TCFD に対応した情報開示の度合い 〇 〇

TCFD コンソーシアム参加の動機、期待 〇 〇

ガイダンスに関する要望 〇 〇

開示情報を入手する媒体 〇

気候関連情報を活用した投融資・金融商品の有無及び概要 〇

エンゲージメントにおいて重視する内容 〇

情報開示者に対する要望及び課題 〇

エンゲージメントにおける気候変動の重要性 〇

情報利用者に対する要望及び質問点 〇

回答結果として、シナリオ分析及び業種別の開示項目に関するガイダンスへの要望が多

いことがわかった(図 2-3)。

図 2-3 TCFD ガイダンス改訂への要望

出所)TCFD コンソーシアム アンケート

また金融機関とのエンゲージメントにおいて気候変動が話題となる回数は「年 5 回程度

以上」(最多)と「話題になることはない」まで広く分布している(図 2-4)。

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49

図 2-4 金融機関とのエンゲージメントの回数

出所)TCFD コンソーシアム アンケート

アンケートの一環として行われた、金融機関が利用する情報源について以下に示す。多く

の投資家はひとつの企業の評価に当たり複数の種類の報告書・資料を参照するよう取り組

んでいることがわかる(図 2-5)。

図 2-5 気候変動関連情報の利用にあたり金融機関が参照する情報

出所)TCFD コンソーシアム アンケート

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50

2.6 ウェブサイトの運営

TCFD コンソーシアムの運営及び活動に関する情報提供を目的として、TCFD コンソー

シアムのウェブサイトを 10 月に開設した65。全体の構成は以下の通り(図 2-6)。

なお、TCFD 賛同企業数、TCFD コンソーシアム会員企業数等の定期的な情報更新及び企

画委員会等の会議開催状況の情報提供、外部イベント開催の告知等について、計 10 回のウ

ェブサイトの更新を行い、都度、会員にメールにて告知した。

図 2-6 TCFD コンソーシアム ウェブサイト 構成図

ウェブサイト概要(表 2-5)及びトップページについて以下に示す(図 2-7 図 2-8)。

65 https://tcfd-consortium.jp/、https://tcfd-consortium.jp/en(英語)、https://tcfd-consortium.jp/login(会員企業)

(以上閲覧日:2020 年 3 月 23 日))

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51

表 2-5 TCFD コンソーシアム ウェブサイト概要

ページ 概要

ホーム ・ コンソーシアム設立の背景(設立趣意書リンク)

・ 入会案内(入会案内書へリンク)

・ 概要、主なニュース&イベント(個別ニュース、イベントへリンク)

・ 問い合わせ(メールアドレスへリンク)

TCFD とは ・ TCFD について概略的な説明

・ TCFD ウェブサイト及び最終報告書(英文、和文)へのリンク

・ 経済産業省「TCFD ガイダンス」へのリンク

・ 環境省「TCFD を活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機

会を織り込むシナリオ分析実践ガイド~」へのリンク

・ TCFD 賛同企業・機関に関するグラフ

・ TCFD への賛同の意義と効果

・ TCFD への賛同の方法(TCFD ウェブサイト賛同関連ページへのリン

ク)

会員一覧・GIG

Supporters ・ 会員機関一覧(定期的に更新)

・ GIG Supporters:グリーン投資ガイダンスを活用している、または今後

活用を予定している投資家からのコメントを掲載。

ニュース&イベント ・ 主なニュース&イベント(個別ニュース、イベントへリンク)

入会案内・お申込み ・ 問い合わせ先、TCFD コンソーシアム規約へのリンク

リンク集 ・ 経済産業省、環境省、金融庁(Twitter)の関連ページへのリンク

・ TCFD ウェブサイト、TCFD サミットウェブサイトへのリンク

英文ページ ・ About us(和文トップページ概略)

・ About TCFD(和文「TCFD とは」概略)

・ TCFD Consortium Membership List(会員企業英文名一覧)

・ Links(リンク集一覧)

・ GIG Supporters(上記参照)

会員ページ ・ 企画委員会の資料及び議事要旨

・ ワーキング・グループの資料及び議事要旨

・ 活動予定、実績、資料について記載

出所)TCFD コンソーシアム ウェブサイト(https://tcfd-consortium.jp/、閲覧日:2020 年 3 月 23 日)より

作成

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52

図 2-7 TCFD コンソーシアム ウェブサイト トップページ(1)

出所)TCFD コンソーシアム ウェブサイト(https://tcfd-consortium.jp/、閲覧日:2020 年 3 月 23 日)

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53

図 2-8 TCFD コンソーシアム ウェブサイト トップページ(2)

出所)TCFD コンソーシアムウェブサイト(https://tcfd-consortium.jp/、閲覧日:2020 年 3 月 23 日)

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54

2.7 グリーン投資ガイダンスの策定・公表

2019 年 10 月 8 日、TCFD コンソーシアムは「グリーン投資の促進に向けた気候関連情報

活用ガイダンス(グリーン投資ガイダンス)」(以下、「グリーン投資ガイダンス」)を公表し

た。本ガイダンスは、投資家等が TCFD 提言に基づく開示情報を読み解く際の視点につい

て解説を行っている。また、本ガイダンスを通じて投資家等の視点に対する企業側の理解が

深まることも期待される。本ガイダンスは TCFD サミット(2019 年 10 月 8 日開催)におい

て、TCFD コンソーシアムの伊藤会長より紹介された。なお本ガイダンスについては英文版

も作成し、同時に公表した。

グリーン投資ガイダンスについては TCFD コンソーシアム ホームページを参照された

い66。グリーン投資ガイダンスの概要は以下の通り(表 2-6)。

表 2-6 グリーン投資ガイダンスの概要

章 概要

第 1 章

(前文)

▪ 本ガイダンス策定の意義、位置付け等に加えて、基本的な考え方として、以下3つ

の観点から「環境と成長の好循環」の実現を目指すことを示している。

➢ 企業価値向上につながる建設的な対話(エンゲージメント)の促進

➢ 気候変動に関するリスクと機会の把握及び評価

➢ 脱炭素化に向けたイノベーションの促進と適切な資金循環の仕組みの構築

第 2 章

(構成)

▪ 本ガイダンスの構成について、「IIRC(国際統合報告フレームワーク)67」及び「価

値協創ガイダンス68」を参考に、TCFD 提言における開示推奨項目との比較を行う

形で整理した。

第 3 章

(各論)

▪ 第 2 章での整理に基づき、気候関連情報の活用にあたり重要な要素として「ガバナ

ンス」、「戦略とビジネスモデル」、「リスクと機会」、「成果と重要な成果指標(KPI)」

の 4 項目について解説を行っている。また、開示情報を活用した実際の投資行動へ

の反映事例や産業の実態に即した評価等の視点を交えた解説も示している。

出所)TCFD コンソーシアム ウェブサイト

(https://tcfd-consortium.jp/news_detail/19100802:閲覧日:2020 年 1 月 7 日)

表 2-6 で述べたように、グリーン投資ガイダンスは TCFD 提言に加え、これまでのフレ

ームワーク、とりわけ「IIRC(国際統合報告フレームワーク)」及び「価値協創ガイダンス」

を参考とした章構成となっている。グリーン投資ガイダンスとこれらのフレームワークと

の関係について以下に示す(図 2-9)。

66 https://tcfd-consortium.jp/news_detail/19100802 よりダウンロード可能。(閲覧日:2020 年 1 月 7 日)

67 https://integratedreporting.org/resource/international-ir-framework/より日本語版がダウンロード可能。(閲覧

日:2020 年 1 月 7 日)

68 https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/ESGguidance.html よりよりダウンロー

ド可能。(閲覧日:2020 年 1 月 7 日)

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55

図 2-9 グリーン投資ガイダンスと既存フレームワークとの関連

出所)グリーン投資の促進に向けた気候関連情報活用ガイダンス(グリーン投資ガイダンス)

次に、グリーン投資ガイダンスの概要について以下に示す(図 2-10 図 2-11 図 2-12)。

図 2-10 グリーン投資ガイダンス概要(1)

出所)TCFD コンソーシアム ウェブサイト(https://tcfd-

consortium.jp/pdf/news/19100801/overview_green_investment_guidance-j.pdf、閲覧日:2020 年 3 月 23

日)

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56

図 2-11 グリーン投資ガイダンス概要(2)

出所)TCFD コンソーシアム ウェブサイト(https://tcfd-

consortium.jp/pdf/news/19100801/overview_green_investment_guidance-j.pdf、閲覧日:2020 年 3 月 23 日)

図 2-12 グリーン投資ガイダンス概要(3)

出所)TCFD コンソーシアム ウェブサイト(https://tcfd-

consortium.jp/pdf/news/19100801/overview_green_investment_guidance-j.pdf、閲覧日:2020 年 3 月 23 日)

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57

添付資料

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58

添付資料1. TCFD コンソーシアム設立趣意書

設立趣意書

2015 年 12 月に採択されたパリ協定を受け、金融業界において気候変動が投融

資先の事業活動に与える影響を評価する動きが広まっています。特に長期的な

投資を行う機関投資家(年金基金、保険会社等)では、ESG 投資が急速に拡大し

ています。

このような中で、G20 財務大臣及び中央銀行総裁の意向を受け、金融安定理事

会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD; Task Force

on Climate-related Financial Disclosures)は 2017 年 6 月に最終報告書(以下「TCFD

提言」)を公表しました。また、経済産業省では、「気候関連財務情報開示に関す

るガイダンス(TCFD ガイダンス)」を 2018 年 12 月に公表するなど、我が国に

おいても TCFD 提言への対応に向けた機運が高まっています。

こうした動きは、環境問題への対応に積極的な企業に、世界中から資金が集ま

り、次なる成長へと繋がる「環境と成長の好循環」の実現にとって重要です。

そのため、TCFD 提言へ賛同する企業や金融機関等が一体となって取組を推進

し、企業の効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断

に繋げるための取組について議論する場として「TCFD コンソーシアム」を設立

します。

TCFD コンソーシアムを通じて、効果的な情報開示の在り方が活発に議論され

ることを期待するとともに、このような取組がグローバル市場においても評価

されるよう、国際的な議論への参加や情報発信にも積極的に取り組んでいきま

す。

一橋大学大学院経営管理研究科 特任教授、中央大学大学院戦略経営研究科 特任教授

伊藤 邦雄

一般社団法人日本経済団体連合会 会長 中西 宏明

一般社団法人全国銀行協会 会長 髙島 誠

三菱商事株式会社 代表取締役 社長 垣内 威彦

東京海上ホールディングス株式会社 取締役会長 隅 修三

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添付資料2. TCFD コンソーシアム規約

第1章 総則

(名称)

第1条 本コンソーシアムは「TCFDコンソーシアム(英文名:TCFD Consortium)(以下

「コンソーシアム」という。)」と称する。

(目的)

第2条 コンソーシアムは、TCFD(Task Force on Climate-related Financial

Disclosures)による提言(以下「TCFD提言」という。)に賛同する事業会社及び金融機

関等による対話を通じて、TCFD提言に基づく効率的で効果的な開示を促進し、その情報

が適切に評価され資金供給が促されるような「環境と成長の好循環」に貢献していくこ

とを目的とする。

(事業)

第3条 コンソーシアムは、前条の目的を達成するため、以下の事業を行うこととする。

一 TCFD提言に基づく情報開示の推進に係る事業

二 一により開示された情報の活用に係る事業

三 国内外の TCFDに関する情報の収集・発信、普及・啓発

四 その他コンソーシアムの目的を達成するために必要な事業

第2章 会員

(会員)

第4条 コンソーシアムは、コンソーシアムの目的及び事業に賛同する法人であって TCFD

提言に賛同する法人(外国親法人が賛同している日本法人を含む。)又はコンソーシアム

の会長がその活動に寄与すると認めた有識者等を会員とする。

(入会)

第5条 会員になろうとする者は、入会申込書を会長に提出し、その承認を得て会員にな

ることができる。

(会費)

第6条 コンソーシアムは、原則として会費を徴収しないものとする。但し、会費を徴収

する必要性が生じた場合には、その会費について、総会において検討を行うものとす

る。

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(退会)

第7条 会員は、会員の意思により任意に退会することができる。ただし、退会に際して

は、会長に届け出なければならない。

2 本規約を遵守しないとき又はコンソーシアムの名誉を棄損する行為があったとき若し

くは次の各号の一に該当すると認められるときは、当該会員を退会させることができ

る。

一 法人等(個人、法人又は団体をいう。)が、暴力団(暴力団員による不当な行為の防

止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第2号に規定する暴力団をいう。

以下同じ。)であるとき又は法人等の役員等(個人である場合はその者、法人である

場合は役員又は支店若しくは営業所(常時契約を締結する事務所をいう。)の代表

者、団体である場合は代表者、理事等、その他経営に実質的に関与している者をい

う。以下同じ。)が、暴力団員(同法第2条第6号に規定する暴力団員をいう。以下

同じ。)であるとき。

二 役員等が、自己、自社若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を

与える目的をもって、暴力団又は暴力団員を利用するなどしているとき。

三 役員等が、暴力団又は暴力団員に対して、資金等を供給し、又は便宜を供与するな

ど直接的あるいは積極的に暴力団の維持、運営に協力し、もしくは関与していると

き。

四 役員等が、暴力団又は暴力団員であることを知りながらこれと社会的に非難される

べき関係を有しているとき。

(オブザーバー)

第8条 コンソーシアムにオブザーバーを置く。

2 オブザーバーは、関係府省庁等の政府機関等で、その参加がコンソーシアムの活動に

有意義であると会長が認めた者とする。

3 オブザーバーは、コンソーシアムの活動に必要に応じて参加し、コンソーシアムの目

的達成のため助言と支援を行うことができるものとする。

第3章 役員

(役員)

第9条 コンソーシアムに役員として、会長1名、副会長若干名を置く。

2 会長は、コンソーシアムを代表し、会務を総括する。

3 副会長は、会長を補佐し、会長が不在の場合にはその会務を代行することができる。

ただし、本職の設置を必須としない。

(任期)

第10条 会長及び副会長の任期は原則として1年とする。但し、再任することができ

る。

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(報酬)

第11条 役員は無報酬とする。

第4章 組織

(総会)

第12条 コンソーシアムの最高機関として、総会を置く。

2 総会は、会員をもって構成し、年1回開催するほか、会長が必要と認めたときに開催

することとし、必要に応じて、書面又は電子メールによる開催とすることができる。

3 総会は、コンソーシアムの事業及び運営の基本的事項について審議し、決定する。

4 総会は、執行機関たる企画委員会の構成員として企画委員を選任する。

5 総会は、会員の過半数の出席(代理出席、委任状を含む。)をもって成立する。

6 総会の議事は、出席者(代理出席、委任状を含む。)の過半数の同意をもって決するも

のとし、可否同数のときは、議長の決するところによる。

7 総会は、会長が招集し、議長を務める。

(企画委員会)

第13条 コンソーシアムに執行機関として企画委員会を置く。

2 企画委員会は、総会において選任された企画委員により構成される。

3 企画委員会は、会長及び副会長を選任する。

4 企画委員の任期は原則として1年とする。但し、再任することができる。

5 企画委員会は、コンソーシアム全体の事業計画及び事業報告、予算及び決算、専門ワ

ーキング・グループの設置等コンソーシアムの運営に関する重要事項を審議し、決定す

る。

6 企画委員会は、会長又は会長が指名する企画委員が招集し、会長又は会長が指名する

企画委員が議長を務めることとし、必要に応じて、書面又は電子メールによる開催とす

ることができる。

7 企画委員会は、委員の過半数の出席(代理出席、委任状を含む。)をもって成立する。

8 企画委員会の議事は、出席企画委員の過半数をもって決するものとし、可否同数のと

きは、議長の決するところによる。

9 会長又は会長が指名する企画委員は、必要があると認めるときは、企画委員会に会員

及びオブザーバーの出席を求め、説明又は意見を聴くことができる。

(情報開示ワーキング・グループ)

第14条 TCFD提言に基づく情報開示の具体的な内容等について議論する情報開示ワーキ

ング・グループを設置する。

2 情報開示ワーキング・グループは、その活動の円滑な推進を図るため、方針の決定そ

の他について自ら規定を定めることができる。

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(情報活用ワーキング・グループ)

第15条 TCFD提言に基づき企業が開示した情報の活用に関する事項について議論する情

報活用ワーキング・グループを設置する。

2 情報活用ワーキング・グループは、その活動の円滑な推進を図るため、方針の決定そ

の他について自ら規定を定めることができる。

(専門ワーキング・グループ)

第16条 企画委員会の決定に基づきコンソーシアムにワーキング・グループを課題ごと

に設置することができる。

2 各ワーキング・グループは、その活動の円滑な推進を図るため、方針の決定その他に

ついて自ら規定を定めることができる。

(事務局)

第17条 コンソーシアムの庶務は、株式会社三菱総合研究所が行う。

第5章 補則

(規約の変更)

第18条 本規約は、総会の決議により改正することができる。

(解散)

第19条 コンソーシアムは、設立の日から3年以内に、解散を含めた今後の活動の方向

性について、議論し決定するものとする。

2 コンソーシアムは、総会の決議により解散することができる。

附 則

第1条 この規約は、コンソーシアムの設立の日から施行する。

第2条 コンソーシアムの設立時における当該規約は、コンソーシアム発足までに入会す

る全法人の承諾を以て、総会で決議されたものとみなす。

第3条 コンソーシアムの設立時における会長は、コンソーシアム発足までに入会する全

法人の承諾を以て決定する。

第4条 コンソーシアム設立時における企画委員は、会長が指名する。

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TCFDコンソーシアム規約に関する補足

(1)会員について【第4条】

①コンソーシアムの会員は、原則として TCFD提言に賛同した法人とします。

②ホールディングス等のグループ親会社が入会している場合、その傘下の企業が参加す

ることを妨げるものではありませんが、総会での議決権は、ホールディングスで 1票

とさせていただきます。

③TCFD提言に賛同しているグループ親会社が外国法人である場合は、その傘下の日本法

人は会員となることができることとします。

(2)入会等の手続きについて

①TCFD提言に賛同する法人は、コンソーシアムの会員になることができます。入会申

込書を TCFDコンソーシアム事務局に送付してください。【第5条】

②コンソーシアムの会費は原則として発生しません。会費の徴収が必要と判断される

場合には、総会での議論・決議を以て、決定します。【第6条】

③コンソーシアムを退会する場合は、退会申込書を事務局に送付してください。【第7

条】

(3)コンソーシアムの組織について

①コンソ―シアムの代表として、会長を置きます。会長の任期は原則 1年とし、再任

ができることとします。なお、必要に応じて副会長を置くこともできます。【第9条、

第10条】

②コンソーシアムは、総会、企画委員会、情報開示ワーキング・グループ、情報活用

ワーキング・グループからなるものとします。また、必要に応じて専門ワーキング・

グループは追加されるものとします。【第14条、第15条、第16条】

③総会は年1回程度開催され、企画委員の選任や一年間の活動報告等を行います。ま

た、運営の基本的事項について審議する必要がある場合には、その審議と決定を行い

ます。この場合、会員は各1票の議決権を持ち、過半数の賛成(委任を含む。)を以て

決定します。【第12条】

④企画委員会は、会長の選任と活動方針の決定等を行います。審議、決定の方法につ

いては総会と同じです。【第13条】

⑤情報開示ワーキング・グループ、情報活用ワーキング・グループの詳細について

は、第 1回企画委員会開催時に決定の上、会員に通知します。【第14条、第15条】

⑥会長及び副会長は、報酬を得ないこととします。【第11条】

(4)コンソーシアム立ち上げの流れについて

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①コンソーシアムの会員は、この規約を承諾した上で、コンソーシアムに入会しま

す。【附則第2条】

②この規約は、コンソーシアムの立ち上げの日から施行します。【附則第1条】

(5)コンソーシアムの解散について

コンソーシアムは、3年を目途にその役割や存続の有無を含め、活動の方針を決定す

るものとします。【第19条】

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頁 図表番号4 図1-3

8 図1-5

9 図1-6

12 図1-8

36 図1-9

タイトル企業の情報開示の推移

投資ファンドのポートフォリオに対するタクソノミー適合比率の算出方法

設問「TCFD提言に沿って報告しているか」に対する業種別回答の分布

TCFD提言の各項目への対応に要する時間のアンケート結果

TCFD提言の各項目と、CDSBフレームワーク、SASBスタンダードの整合性

二次利用未承諾リスト

委託事業名:令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(気候変動をめぐる投資・金融の動向を踏まえた企業活動に関する調査事業及び普及活動)

報告書の題名:令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業委託費(気候変動をめぐる投資・金融の動向を踏まえた企業活動に関する調査事業及び普及活動) 報告書

受注事業者名:株式会社三菱総合研究所

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令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調

査事業委託費(気候変動をめぐる投資・金融の動向を踏まえ

た企業活動に関する調査事業及び普及活動) 報告書

2020 年 3 月

株式会社 三菱総合研究所