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令和元年 5 29 安細担当 1 【健康心理学・行動変容モデルに基づく保健指導・活動】 (教科書 P. 8794健康行動理論ヘルスプロモーション、健康教育や介入プログラムならびに行動変容を効果的に進めるた めには健康行動理論に基づく必要がある。 ⇒健康行動理論は行動変容プログラムを系統的に立案する上でガイドの役割をするものと 考えてよい。 健康心理学健康の維持と増進、疾病の予防等についての原因と対応への心理学的解明ないし健康教育 やヘルスケアシステム、健康政策等に対する心理学からの貢献を目指す学問(日本健康心 理学会 HP による) 健康行動信念・期待・動機・価値・認識などの認知的要素、情緒的・感情的な状態や素質などの人 格的特性、さらに健康の維持・回復・向上に関連する行動パターン・活動・習慣のことで ある(Gochman, 19821997)。 (例) 予防的健康行動自分自身を健康と考えている個人が、症状がない段階で病気の予防 や早期発見を目的として行うあらゆる行動。 病気関連行動(病者行動) 自分が罹病していることを認識している個人が、健康状態 を明らかにし、適切な治療法を見いだすために行う行動 病者役割行動自分が罹病していることを認識している個人が、その治癒目的に行う 行動 【代表的な健康行動モデル】 ①KAP モデル 知識(Knowledge)が好ましい健康問題に対する態度(Attitude)をつくり、それが好ま しい保健行動や習慣(Practice)を形成するというモデル。

令和元年 月 日 安細担当 · 2019. 5. 25. · 令和元年5月29日 安細担当 4 ④プリシード・プロシード・モデル:ヘルスプロモーションの概念に基づき、社会心理学

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【健康心理学・行動変容モデルに基づく保健指導・活動】 (教科書 P. 87〜94) 健康行動理論: ヘルスプロモーション、健康教育や介入プログラムならびに行動変容を効果的に進めるた

めには健康行動理論に基づく必要がある。

⇒健康行動理論は行動変容プログラムを系統的に立案する上でガイドの役割をするものと

考えてよい。

健康心理学: 健康の維持と増進、疾病の予防等についての原因と対応への心理学的解明ないし健康教育

やヘルスケアシステム、健康政策等に対する心理学からの貢献を目指す学問(日本健康心

理学会 HPによる) 健康行動: 信念・期待・動機・価値・認識などの認知的要素、情緒的・感情的な状態や素質などの人

格的特性、さらに健康の維持・回復・向上に関連する行動パターン・活動・習慣のことで

ある(Gochman, 1982、1997)。 (例)

予防的健康行動:自分自身を健康と考えている個人が、症状がない段階で病気の予防

や早期発見を目的として行うあらゆる行動。 病気関連行動(病者行動):自分が罹病していることを認識している個人が、健康状態

を明らかにし、適切な治療法を見いだすために行う行動 病者役割行動:自分が罹病していることを認識している個人が、その治癒目的に行う

行動 【代表的な健康行動モデル】 ①KAP モデル

知識(Knowledge)が好ましい健康問題に対する態度(Attitude)をつくり、それが好ましい保健行動や習慣(Practice)を形成するというモデル。

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【図 9−3】

②保健(健康)信念モデル(ヘルスビリーフ・モデル、health belief model): 【開発の背景】米国の多くに国民が疾患のスクリーニングプログラムにあまり参加しない

状況があり、ミシガン大学の Rosenstockらが報告したモデル。 (例) 思春期の若者に多くみられるが自分は事故や病気には無縁だと感じ、あえて危険な行動を

とることがある。そうした危険行動(性行動など)に関わる要因を理解するのに HBM が役立つ。その他、がん検診や予防接種などもよく当てはまると考えられている。 ※基になった社会心理学の理論:刺激—反応理論と認知理論 Heath Belief Modelでは、以下のことを認識している場合に行動を起こす可能性が高いとされる。 ①罹患可能感:ある病気に罹る可能性がある

②深刻感:その病気に罹ると深刻な結果を招く恐れがある ③自己効力感:自分にもできる行動によって、病気に罹る可能性や深刻さを軽減できる可

能性がある ④利益感:その行動を起こすことによって利益が得られる ⑤障害感:行動を妨げるほど強くない

⑥行動のきっかけ:行動の引き金になりうるような内的あるいは外的要因

⇒内的要因:脅威感を増大させるような症状の出現

⇒外的要因:メディアの報道、医療機関を受診した際の医師からの勧め、友人の罹患)

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【図 9−4】

③トランスセオレティカル・モデル(行動変容ステージモデル):ステージ概念を導入した

点が特徴で、それぞれにあった働きかけが必要とする考え方(プロセス理論)

(例)患者の行動ステージに適した禁煙や運動に対する介入(intervention)をデザインするようなケースに役立つ。

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④プリシード・プロシード・モデル:ヘルスプロモーションの概念に基づき、社会心理学

の Greenらによって開発されたモデル。

【図 9−5】

1)プリシード:教育・環境の診断と評価のための前提・強化・実現要因、ニーズア セスメントの段階 第 1 段階:社会診断;社会やコミュニティについてのアセスメントの段階で、介入し

ようとするコミュニティを理解するために行われる。 第 2 段階:疫学診断;疾患・行動・環境の状況に関するアセスメントの段階で、介入

の優先順位を決める。 第 3段階:行動・環境診断;第 2段階で抽出された健康問題に関わる行動要因・環境要因を明らかにする。 第 4段階:教育・組織診断;行動決定要因のマルチレベルでのアセスメントを行う。

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【準備因子】行動変容の促進ないし阻害要因となる個人や集団の知識、態度、信念、価値

観、認識 【強化因子】行動変容したことによって他者から得られる報酬やフィードバック 【実現因子】望ましい行動や環境の変容を促進するスキルや資源、もしくはそれを阻害す

る要因 第 5 段階:運営・政策診断;プログラムの実施・継続に必要な資源、組織的要因、施

策・政策についてのアセスメントと介入の開発を行う。 2)プロシード: 第 6段階:実施;第 1段階から第 5段階で集められたデータを用いて介入プログラムの実施に必要な関係者のトレーニング、資材の作成、資源の準備等を行う。 第 7 段階:プロセス(経過)評価;当初の計画を基に介入プログラムがどの程度実際

に実行されたかが評価される。 第 8 段階:インパクト(影響)評価;準備要因、強化要因、実現要因、行動要因、環

境要因における変化が測定される。 第 9 段階:アウトカム(結果)評価;健康や QOL の指標に対する介入プログラムの効果が評価される。

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【健康教育の変遷】

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【禁煙支援・指導】(教科書 P. 164〜169) 禁煙介入の実際 最初に、すべての患者に喫煙状況を質問し、喫煙者には禁煙のための介入に進み、禁煙準備ができ

ていない者には禁煙の動機づけ支援を行う。

【図 5−1】

※禁煙支援:5A

Ask:質問 すべての患者に喫煙しているかどうか毎回質問する

Advise:助言 禁煙が必要であることを喫煙者に助言する

Assess:評価 禁煙への準備状況を評価する

Assist:支援 禁煙実行の支援や禁煙専門・電話相談外来を紹介する

Arrange:調整 フォローアップのための調整や禁煙専門・電話相談外来の紹介を行う

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※禁煙外来での禁煙治療の保険給付の適用条件:

1)1 ヶ月以内に禁煙しようと考えている

2)ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS:TobaccoDependenceScreener)が 5 点以上

3)禁煙治療の受診が文書で同意している

4)35 歳以上は Brinkman 指数(喫煙年数×喫煙本数)が 200 以上

禁煙治療は、初回診察のあと、2,4,8,12 週後の 4 回行い、医療用医薬品の禁煙補助薬が用い

られる。

禁煙補助薬の種類(教科書 P.169 参照)

副作用として、むかつき、喉の刺激、皮膚のかぶれ、かゆみ等がみられる場合がある。

※動機づけ支援:5R

Relevance:関連 禁煙することが個人にとって何と最も関連しているかを質問する

Risks:リスク 上記の関連内容に対する喫煙のリスクを知っているかを質問する

Rewards:褒美 上記の関連内容に対する禁煙の褒美・恩恵が何であるかを質問する

Roadblocks:障壁 禁煙の障壁になっているmのはなんであるかを質問する

Repetition:反復 禁煙の準備状況を再び質問する

※非喫煙患者への支援:5AとMAD-TEA

Ask:質問 非喫煙患者すべてに受動喫煙の有無を質問する

Advise:助言 受動喫煙の害を教育して避けるように助言する

Assess:評価 受動喫煙を避けたい意思があるか評価する

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Assist:支援 受動喫煙を避けるための支援をする。 ・Meet friends at smoke-free spaces ・Ask to smoke outside

・Declare to be smoke-free ・Talk about risks of second-hand smoke ・Encourage to stop smoking

・Advocate laws or regulations

Arrange:調整 約 1週間後にフォローアップし、再度必要な支援を行う