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- 1 - 「軽量クッション材の開発」 評価用資料 平成20年11月10日 経済産業省製造産業局繊維課 帝人ファイバー株式会社 第1回繊維分野におけるエネルギー使用 合理化技術開発補助金プロジェクト 事後評価検討会 資料6-4

「軽量クッション材の開発」 評価用資料...レート(PTT)繊維が衣料用ストレッチ素材として開発されおり、PT T素材を用いて硬さの改善、耐久性向上の可能性を探索する。PTTはP

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「軽量クッション材の開発」

評価用資料

平成20年11月10日

経済産業省製造産業局繊維課

帝人ファイバー株式会社

第1回繊維分野におけるエネルギー使用

合理化技術開発補助金プロジェクト

事後評価検討会

資料6-4

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目 次

1.事業の目的・政策的位置付け…………………………………………………3

1-1 事業の目的………………………………………………………………3

1-2 国の関与の必要性………………………………………………………4

1-3 政策的位置付け…………………………………………………………5

2.研究開発目標……………………………………………………………………6

2-1 研究開発目標……………………………………………………………6

2-1-1 全体の目標設定…………………………………………………6

2-1-2 個別要素技術の目標設定………………………………………6

3.成果、目標の達成度…………………………………………………………10

3-1 成果……………………………………………………………………10

3-1-1 全体成果

3-1-2 個別要素技術成果

3-1-3 特許出願状況等

3-2 目標の達成度…………………………………………………………17

4.事業化、波及効果……………………………………………………………20

4-1 事業化の見通し………………………………………………………20

4-2 波及効果………………………………………………………………21

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等……………………23

5-1 研究開発計画…………………………………………………………23

5-2 研究開発実施者の実施体制・運営…………………………………23

5-3 資金配分………………………………………………………………24

5-4 費用対効果……………………………………………………………24

5-5 変化への対応…………………………………………………………25

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1. 事業の目的・政策的位置付け

1-1 事業目的

平成17年に発効した京都議定書では、日本は二酸化炭素等の温室効果ガス

の排出量を2008年から2012年までの期間中に1990年比で 6%削減す

る義務を負っており、その実施には省エネルギー技術が必要不可欠である。

運輸部門では、エネルギー源を化石原料に求める比率が高く、ハイブリッド

車やアイドリングストップ車による燃費向上、更には電車・バスなどの公共交

通手段へのモーダルシフトの推進の他、安全性を確保した上での輸送手段軽量

化も省エネルギーを推進する上で重要な要素であり、各構成部材の見直し・軽

量化が検討されているところである。自動車や電車の内装材として繊維が広く

使用されていることから、本事業では、繊維材料の立場から新たな軽量化技術

の開発・提案を開発することとした。

自動車の天井材、フロアーには繊維素材が使用されているが、自動車シート

や電車シートを構成するクッション材には発泡ポリウレタンが広く用いられて

いる。この部材は内に発泡による空隙を保有しており、ある程度の軽量化は図

られているが、本事業では、更なる軽量化のため、ポリエステル繊維素材を用

い、繊維間及び繊維内に形成される空隙の形状を適正化する「軽量クッション

材の開発」を行うこととした。

ポリエステル繊維からなるクッション材は既にベッドクッション等で一部実

用化されているが、ポリウレタン対比クッション性に劣り(硬い)、また使用に

よるヘタリが大きい(寿命が短い)という欠点を有している。車両シート用途

では、求められている耐久性を実現するために非常に硬いクッション材となっ

ており、電車シート用として極わずかな採用に止まっていた。

これらの欠点を克服するため、次の技術手段を検討した。

a)主体繊維

汎用素材としてポリエチレンテレフタレート(PET)中空繊維が用い

られて来たが、近年PETより弾性回復の良いポリトリメチレンテレフタ

レート(PTT)繊維が衣料用ストレッチ素材として開発されおり、PT

T素材を用いて硬さの改善、耐久性向上の可能性を探索する。PTTはP

ET対比ガラス転移点が低く、高温下の耐久性が懸念されるので、PET

対比ガラス転移点の高い耐熱繊維の利用も検討する。

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b)バインダー繊維

ポリエステル繊維クッション材は、構造を固定・保持するためのバイン

ダー繊維と、適切な空隙を確保し構造に膨らみを持たせる主体繊維とから

成っている。バインダー繊維としては弾性ポリエステル樹脂を用いたもの

が開発され、従来の非弾性ポリエステル樹脂を用いたものよりヘタリが少

ない(耐久性が高い)ことが確認されているので、この技術をベースとし

て検討を進める。

c)クッション材構造

従来のクッション材は、受圧面に繊維が概略平行状態で存在する構造と

なっている。体圧分散のためには、繊維が受圧面に垂直な構造が有利と考

えられ、クッション材に適した新たな繊維配列を検討する。

以上の要素技術開発に基づき、繊維製造からクッション材製造に至る一連の技

術を商業生産可能なレベルに高めることを目指した。

なお、従来の材料であるポリウレタンは化石原料を出発点としており、サステ

ィナビリティの観点からマテリアル、ケミカルリサイクル技術の検討も進んで

いるが、主たる技術はサーマルリサイクルであるが、今回研究開発を行ったポ

リエステル素材に関しては近年、使用済みのPETボトルあるいはポリエステ

ル繊維製品をケミカルリサイクルし、原料であるジメチルテレフタレート(D

MT)あるいはテレフタル酸(PTA)に還元し再使用する技術が開発・実用

化されていることから本事業の成果としてポリエステル繊維素材から成るクッ

ション材が車輌シート用途で実用化されれば、使用後のシートをリサイクルし

再使用することは可能となる。

1-2 国の関与の必要性

エネルギー効率の一層の向上には、技術革新とその成果の普及を促していく

必要があり、官民一体となり中長期的に取り組むことが不可欠となっている。

本研究開発は、自動車に使用されているクッション材の軽量化を図ること

によって、現在、課題となっている運輸部門の省エネルギーに貢献しようとす

るものであり、国民や社会のニーズに合致し、急性が高いものであるが、ポリ

エステル繊維クッションが商業化され20年以上を経過し、未だ一部のベッド

マットにしか使用されていない現状を勘案すると、これを座席シートまで拡大

するという目標はハードルが高く、民間の市場原理に基づいた開発では、その

達成可否に不確定さを含んでおり、その実施には、多額の開発費用を要し民間

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単独ではリスクが大きく困難であることから、国の支援が必要不可欠である。

1-3 政策的位置付け

「エネルギー基本計画」(2007 年 3 月閣議決定)、「新・国家エネルギー戦略」

(2006 年 5 月)、「第3期科学技術基本計画」(2006 年 3 月閣議決定)、「経済成

長戦略大綱」(2006 年 7月財政・経済一体改革会議)、「京都議定書目標達成計画」

(2005 年 4 月閣議決定)において、推進すべき技術開発としてエネルギーに係

る分野が示されている。

本研究開発は、これらに基づき、エネルギーの安定供給の確保、二酸化炭素の

排出削減を図ることによる地球温暖化の抑制に貢献することを目的として、経

済産業省において取りまとめた「省エネルギー研究開発プログラム」に位置付

けられる「エネルギー使用合理化繊維関連次世代技術開発」のテーマの1つと

して実施されたものである(※ 平成 20年4月に経済産業省の研究開発プログ

ラムが再編され、現在「エネルギーイノベーションプログラム」の「1-Ⅰ.

総合エネルギー効率の向上/超燃焼システム技術」に位置付けられている)。

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2. 研究開発目標

2-1 研究開発目標

本研究開発は、「現在、ウレタンを用いて製造されているクッション材を、よ

り軽くリサイクルが可能なポリエステル系繊維から製造する技術を開発する」

ものである。

2-1-1 全体の目標設定

研究開発に当たっては、繊維製造からクッション材製造に至る一連の技術を商

業生産可能なレベルに高めることを目標とし、クッション材の耐久性並びに座

り心地(柔らかさ)をウレタンクッション材と同等のものとするため、以下の

具体的目標を設定して行った。

表1.全体目標

目標・指標 設定理由・根拠等

8万回圧縮歪み 2~3% ウレタン製品約2%

ポリエステル(従来技術) 8%

WET歪み 20%以下 ウレタン製品6~20%

ポリエステル(従来技術) 29

50%圧縮応力 50Kg/Φ200以下 ウレタン製品20~50Kg/Φ200%

ポリエステル(従来技術) 68Kg/Φ

200

2-1-2 個別要素技術の目標設定

上記の研究開発目標を達成するため、個別要素技術として以下の2項目を設定

した。

1)クッション材の原料となる新規原綿の開発

バインダー繊維と主体繊維の双方について検討

2)クッション成型技術の開発

従来技術とは異なる新規原綿積層技術を中心に開発

なお、表中のPETはポリエチレンテレフタレート、PTTはポリトリメチレ

ンテレフタレート、PBTはポリブチレンテレフタレートを指す。

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1) クッション材の原料となる新規原綿の開発

目標は、クッション材の8万回圧縮歪みの改善であり、特に鞘ポリマーが弾性

ポリエステル樹脂であるバインダー繊維の芯ポリマーのPTT樹脂化、主体繊

維への弾性回復率の高いPTT樹脂、ガラス転移点の高い耐熱樹脂の開発が、

クッション性能向上に必要である。

表2-1.クッション材の原料となる新規原綿開発目標

要素技術 目標・指標 設定理由・根拠等

①主体繊維のポリマ

ー種の検討

目標:8万回圧縮歪みの改

・ 汎用素材ポリエチレン

テレフタレート(PE

T)中空繊維から、PE

Tより弾性回復の良い

ポリトリメチレンテレ

フタレート(PTT)繊

維を用いて硬さの改善、

耐久性向上の評価を実

・ またPTTはPET対

比ガラス転移点が低く、

高温下の耐久性向上を

狙いPET対比ガラス

転移点の高い耐熱繊維

の効果も評価

従来のPETから、Tgが

低く、弾性回復率の良いP

TTやTgの高い剛性耐

熱といった新規ポリマー

が必要。

②バインダー繊維の

ポリマー種の検討

目標:8万回圧縮歪みの改

・ バインダー繊維の芯ポ

リマーの改良による改

善効果を検討

・ 芯ポリマーを従来のP

ET樹脂やPBT樹脂

から弾性回復率の良い

PTT樹脂に変更した

従来のPET樹脂やPB

T樹脂の性能を超える、さ

らに弾性回復率の良いP

TT樹脂が必要。

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バインダー繊維を開発

し、耐ヘタリ性の評価を

実施

③操業生産技術の検

新規ポリマーからなる原綿

を安定生産するための操業

生産技術を確立する。

・ PTT繊維はポリマー

特性上、溶融すると、ア

クロレインガスが発生

するため、ガス除去技術

の開発を検討

・ またPTT樹脂は配向

結晶が不十分な状態(紡

糸のみ実施した中間製

品段階)では繊維が室温

30℃以上で繊維収縮

が発生するため、その対

策技術の開発を検討

・ さらに耐熱樹脂はPE

T樹脂対比、溶融粘度が

高く、高温紡糸技術開発

を検討

操業生産技術確立には、

ガス対策、収縮対策、高温

紡糸技術の確立 等が非常

に重要

2) クッション成型技術の開発

目標は、クッション材の耐久性と座り心地(柔らかさ)をウレタン並みとする

ことであり、繊維が受圧面に垂直に配列した構造をとるストルート加工は、従

来の受圧面に対し繊維が概略平行状態で存在する従来の加工よりも体圧分散性

に有利なクッション材が得られると考えられた。

また、車両用シートに使用されるクッション材は複数の曲面からなる3次元構

造であることが求められており、ウレタンと同等の耐久性を有する均一な3次

元構造体の加工技術を検討することは、車輌シート用途での実用化を目指す上

で重要である。

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表2-2.クッション成型技術の開発目標

要素技術 目標・指標 設定理由・根拠等

①ストルート加工

技術の検討

目標:ウレタン並みの耐久性

と座り心地のクッション材の

開発を検討

・ 従来の受圧面に対し繊維

が概略平行状態で存在す

るクッション材よりも8

万回圧縮歪が改善された

(目標2~3%)クッショ

ン材を開発する

・ 従来の受圧面に対し繊維

が概略平行状態で存在す

るクッション材よりも体

圧分散性が改善されたク

ッション材を開発する

繊維が受圧面に垂直に配

列した構造をとるストル

ート加工は、従来の受圧面

に対し繊維が概略平行状

態で存在する従来の加工

よりも、その構造的特徴か

ら体圧分散性に有利なク

ッション材が得られると

考えられる

②成型加工技術の

検討

目標:複数の曲面からなる3

次元構造クッション材の成型

技術を検討

・ 車輌用シート用途を想定

した複雑な形状の成型加

工技術に関し、乾熱加熱方

式、湿熱加熱方式について

比較検討する。

・ 8万回圧縮歪が2~3%

となるクッション材の均

一な成型加工を検討

車両用シートに使用される

クッション材は複数の曲面

からなる3次元構造である

ことが求められており、ウ

レタンと同等の耐久性を有

する均一な3次元構造体の

加工技術を検討すること

は、車輌シート用途での実

用化を目指す上で重要

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3. 成果、目標の達成度

3-1 成果

3-1-1 全体成果

本事業による技術開発の結果、ウレタン並の座り心地(柔らかさ)を持つポリ

エステル繊維クッション材を実現した。

「8万回圧縮歪み」及び「WET歪み」については、目標に達せず、耐久性に

関しては未だウレタンを完全に超えるものでないが、従来の繊維クッション材

対比大幅に性能が向上しており、電車シート更には自動車シートの用途に展開

を試みることができるものが得られた。

3年間の補助事業成果を以下に纏める。

表3.全体成果 <クッション材としての性能>

目標品質項

目 単位

ウレタン

製品 従来技術

PTT

タテ構造体

耐熱繊維

利用

8万回圧縮

歪み % 約2 8 5 5

WET歪み % 6~20 29 29 25

50%圧縮

応力

Kg/φ

200 20~50 68

50以下

可能

50以下

可能

ストルート加工で得られる繊維が受圧面に垂直に配列した構造とPTT樹脂

を芯に使用した弾性ポリエステル樹脂バインダー繊維、PTT樹脂を使用した

主体繊維の組み合わせでウレタン並の座り心地(柔らかさ)を実現した。クッ

ション材としての耐久性(8万回圧縮歪み)も向上したがウレタンには届いて

いない。耐久性のもう一つの指標であるWET歪はガラス転移点の高い耐熱ポ

リマーを主体繊維に利用すると改善の方向にあることを確認した。

3-1-2 個別要素技術成果

(1) クッション材の原料となる新規原綿の開発

① 主体繊維ポリマー種の検討

汎用素材ポリエチレンテレフタレート(PET)中空繊維から、P

ETより弾性回復の良いポリトリメチレンテレフタレート(PTT)

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繊維の開発。またPTTはPET対比ガラス転移点が低く、高温下の

耐久性向上を狙いPET対比ガラス転移点の高い耐熱繊維の開発を

実施した。実験機でPTT繊維の繊維化自体は可能であったが、操業

生産化において種々の検討を実施し、技術確立に到達した。詳細効果

は、③操業生産化を参照。また、耐熱繊維の繊維化は、ポリマー特性

から、高温紡糸が必要であり、PET繊維とは異なる工程特性を克服

する必要性があり、現時点では、実験機での繊維化まで達成した。そ

れぞれの繊維について従来の受圧面に対し繊維が概略平行状態で存

在する構造体でクッション材としての評価を行い、PTT繊維及び耐

熱繊維ともに主体繊維に使用することでPET繊維を主体繊維に使

用したクッション材よりも耐久性が向上し且つ柔らかくなることを

確認した。

表3-1-1.主体繊維ポリマー種の検討

目標品質項

目 単位

ウレタン

製品 従来技術

PET

繊維

PTT

繊維

耐熱

繊維

8万回圧縮

歪み % 約2 8 8 7 5

WET歪み % 6~20 29 31~35 28~33 25

50%圧縮

応力

Kg/φ

200

20~

50 68

260~

360

150~

230

50以下可

② バインダー繊維ポリマー種の検討

バインダー繊維の開発は、鞘ポリマーとして弾性ポリエステル樹脂

を用いたものが開発され、従来の非弾性ポリエステル樹脂を用いたも

のよりヘタリが少ない(耐久性が高い)ことが確認されているので、

この技術をベースとして検討を進めた。特に芯ポリマーについて注目

し、従来ポリマーであるポリエチレンテレフタレート(PET)やポ

リブチレンテレフタレート(PBT)樹脂から、弾性回復の良いポリ

トリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂へ変更したバインダー繊

維を開発した。PTT樹脂への芯ポリマー変更で、最適生産条件範囲

は変化したため、種々基礎検討を実施し、ポリマーの溶融条件や冷却

条件を適正化することで、安定して製綿化できることを確立した。こ

の改良したバインダー繊維を用い、クッション材用構造体を作成し、

特性評価を実施した。その結果、従来の構造体よりも圧縮歪特性(耐

久性)が良く、且つ柔らかいクッション材となることを確認した。(表

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3-1-2.バインダー繊維ポリマー種の検討参照)

表3-1-2.バインダー繊維ポリマー種の検討

目標品質項

目 単位

ウレタン

製品

PET弾性

バインダー

PBT弾性

バインダー

PTT弾性

バインダー

8万回圧縮

歪み % 約2 7 5 5

WET歪み % 6~20 28~33 29~33 31~32

50%圧縮

応力

Kg/φ

200 20~50

150~

230

110~

150

80~

160

③ 操業生産技術の検討

PTT繊維と耐熱繊維を基礎評価し良好な結果を得たが、特に、立

体捲縮を有するPTT主体繊維がクッション材性能向上に有用であ

ることが市場での少量評価で判明した。そこで電車シート用途で本

格評価するため、PTT繊維の操業生産技術を検討した。

PTT繊維はPET繊維と性質が異なり、従来とは異なる紡糸温度、

及び原糸保管条件を採用する必要があった。特に30℃以上の温度

下で中間製品(紡糸工程のみ実施した状態)の繊維が保管中に収縮

してしまい、次工程で所定の条件で延伸できない異常が顕在化した。

そのため紡糸オイル温度ダウン、中間製品の保管場所と延伸処理室

の室温ダウンの対策工事を実施し、中間製品の繊維収縮を防止する

技術を確立した。

また、紡糸中にアクロレインなどのVOCが発生する問題が基礎検

討の段階から有り、対策案を検討した。高温の紡糸工程での発生ガ

スを吸引し、これを燃焼処理する方式を確立し、環境・安全対策を

確実に実施した。

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(2) クッション成型技術の開発

① ストルート加工技術の検討

繊維が受圧面に垂直に配列した構造をとるストルート加工により、

PET繊維と非弾性ポリエステル樹脂バインダー繊維、PET繊維と

弾性ポリエステルバインダー繊維のそれぞれの組み合わせで構造体を

作成し、クッション材用途への適合性を検討した。その結果、従来技

術と同様にストルート加工技術も圧縮に対する耐久性を得るためには

弾性ポリエステル樹脂バインダー繊維が必須であることが確認された。

また、この弾性ポリエステル樹脂バインダー繊維を使用した構造体

は、従来技術と弾性ポリエステル樹脂バインダー繊維の組み合わせで

得られる構造体よりも、その構造的特徴により圧縮応力曲線および体

圧分散性が、ウレタンに類似した性状を示すことが確認された。

以上のことから、ストルート加工技術はクッション材用途への適合

性があると判断し、引き続きクッション材の原料となる新規原綿の開

発で検討したPTT繊維を用いたストルート加工技術によるクッショ

ン材の開発を行った。

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PTT繊維を使用したストルート加工技術で得られた構造体は、P

TT繊維の特性によりPET繊維のものよりも柔らかく、座り心地が

改善したが、圧縮耐久性については、PTT繊維を使用した従来加工

の構造体とほぼ同等の性能となることを確認した。これに対しさらに

PTT弾性ポリエステル樹脂バインダー繊維を使用することで、耐久

性の向上が認められた。

よって、ストルート加工技術によるクッション材は、圧縮応力曲線

が従来技術よりもウレタンに類似しており、体圧分散性が向上するこ

とで座り心地が改善されたものとなる。そして耐久性の向上について

は、ストルート加工技術よりも使用する繊維の種類の効果が大きいこ

とを確認した。

このように、PTT繊維とストルート加工技術の組み合わせにより、

従来技術のクッション材よりも座り心地(柔らかさ)と耐久性が向上

したクッション材の開発に至った。

また、車輌用クッション材としては、吸音性能を有することが付加

価値として認められることから、ストルート加工技術の吸音性能への

効果についてあわせて評価検討を行った。その結果、ワディングとし

図3-1-1.構造比較

<ストルート> <従来技術>

(N)

ストルート加工

0      1 2 3 4 5                  変位(mm)

600

200

400

従来技術

ウレタン

荷重ー変位曲線

初期の立ち上がりが大きくゆっくり回復する

(N)

ストルート加工

0      1 2 3 4 5                  変位(mm)

600

200

400

従来技術

ウレタン

荷重ー変位曲線

初期の立ち上がりが大きくゆっくり回復する

図3-1-2. 圧縮応力曲線比

図3-1-3. 体圧分散性比較

<ストルート>

<ウレタン> <従来技術>

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て使用されているウレタンよりも吸音性能が優れること、また布帛と

の複合化により吸音性能がさらに向上すること認められた。このよう

に開発したクッション材は吸音効果という付加価値を有している。

表3-1-5.ストルート加工技術検討

目標品質項

目 単位

ウレタン

製品 従来技術

PTT

繊維

PTT繊維+

ストルート加

8万回圧縮

歪み % 約2 8 7 5

WET歪み % 6~20 29 28~33 29

50%圧縮

応力

Kg/φ

200 20~50 68

150~

230 50以下可能

② 成型加工技術

従来、構造体の成型は乾熱加熱方式で検討してきたが、成型物の表

面と内部で熱の伝わり方に差が発生し、均一な熱処理ができずに圧縮

耐久性を得るためには表面が硬化してしまい、座り心地が悪くなると

いう問題が確認された。そこで湿熱加熱方式での成型について検討を

行った。その結果、表面から内部まで均一に熱が伝わることで成型後

の表面の柔らかさを保ちつつ、同時に圧縮耐久性が得られる(8万回

圧縮歪が6%)となることを確認し、成型技術を確立した。

また、成型技術の検討の中で、従来技術の構造体よりもストルート

加工技術による構造体は、その構造的特徴により成型性に優れるとい

うことが確認された。

図3-1-4.クッション材の吸音性

ワディング用クッション材の吸音性

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

周波数 Hz

吸音

開発品

ウレタン

布帛貼り合せ品の吸音性

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

周波数 Hz

吸音

開発品+トリコット ウレタン+トリコット

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3-1-3 特許出願状況等

表4. 論文、投稿、発表、特許リスト

日本繊維機械学会主催「講演会―いま話題の合繊技術」 H19.8.23

高機能ポリエステル繊維クッション材「エルク/ ELK 」の

開発

日刊工業新聞社主催 「不織布セミナーー不織布の商品開発を

探る」

H20.3.11

V-Lap不織布の商品開発について

公開 NO.特開 2006-326168 審査請求中

クッション体および該クッション体を用いた座席シート

並びにこれらの製造方法

公開 NO.特開 2007-098013 審査請求中

車輌の座席シート用構造体

公開 NO.特開 2007-308831 審査請求中

繊維クッション材およびその製造方法

公開 NO.特開 2007-268098 審査請求中

クッション体の製造方法および座席シートの製造方法

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3-2 目標の達成度

3-2-1 全体目標の達成度

目標・指標 成果 達成度

8万回圧縮歪み 2~3% 5%(PTT タテ構造体)

5%(耐熱繊維利用)

未達成

WET歪み 20%以下 29%(PTT タテ構造体)

25%(耐熱繊維利用)

未達成

50%圧縮応力 50Kg/Φ200 以

50kg以下可能(PTTタテ構造体)

50kg以下可能(耐熱繊維利用)

達成

3-2-2 個別目標の達成度

表5.目標に対する成果・達成度の一覧表

要素技術 目標・指標 成果 達成度

1)クッション材の原料となる新規原綿の開発

①主体繊維

のポリマー

種の検討

目標:8万回圧縮歪みの改

・ 汎用素材ポリエチレン

テレフタレート(PE

T)中空繊維から、P

ETより弾性回復の良

いポリトリメチレンテ

レフタレート(PTT)

繊維を用いて硬さの改

善、耐久性向上の評価

を実施

・ またPTTはPET対

比ガラス転移点が低

く、高温下の耐久性向

上を狙いPET対比ガ

ラス転移点の高い耐熱

繊維の効果も評価。

50%圧縮応力=50

kg/φ200以下、8万回圧

縮歪=5%となるPT

T繊維を開発。

さらに、WET歪=2

5%となる構造体用耐

熱繊維を開発。

一部達成

( 50% 圧

縮応力は

達成した

が、8万

回圧縮歪

みとWE

T歪みが

未達)

②バインダ

ー繊維のポ

目標:8万回圧縮歪みの改

50%圧縮応力=50

kg/φ200以下、8万回圧

一部達成

(50%圧

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リマー種の

検討

・ バインダー繊維の芯ポ

リマーの改良による改

善効果を検討。芯ポリ

マーを従来のPET樹

脂やPBT樹脂から弾

性回復率の良いPTT

樹脂に変更したバイン

ダー繊維を開発し、耐

ヘタリ性の評価を実

施。

縮歪=5%となるPT

T樹脂弾性バインダー

繊維を開発。

縮応力は

達成した

が、8万

回圧縮歪

みとWE

T歪みが

未達)

③操業生産

技術の検討

新規ポリマーからなる原

綿を安定生産するための

操業生産技術を確立する。

・ PTT繊維はポリマー

特性上、溶融すると、

アクロレインガスが発

生するため、ガス除去

技術の開発を検討

・ またPTT樹脂は配向

結晶が不十分な状態

(紡糸のみ実施した中

間製品段階)では繊維

が室温30℃以上で繊

維収縮が発生するた

め、その対策技術の開

発を検討。

・ さらに耐熱

樹脂はPET樹脂対比、溶

融粘度が高く、高温紡糸技

術開発を検討

PTT繊維について、操

業可能レベルの安定生

産技術を確立した。

達成

2)クッション成型技術の開発

①ストルー 目標:ウレタン並みの耐久 ウレタンに類似したク 一部達成

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ト加工技術

の検討

性と座り心地のクッショ

ン材の開発を検討。

・ 従来の受圧面に対し繊

維が概略平行状態で存

在するクッション材よ

りも8万回圧縮歪が改

善された(目標2~

3%)クッション材を

開発する。

・ 従来の受圧面に対し繊

維が概略平行状態で存

在するクッション材よ

りも体圧分散性が改善

されたクッション材を

開発する。

ッション性と体圧分散

性を有するクッション

材の加工技術を確立し

た。

またPTT繊維との組

み合わせにより、8万回

圧縮歪が5%まで改善

したクッション材を開

発した。

また開発したクッショ

ン材は吸音性能も有す

る。

(8万回

圧縮歪が

未達)

②成型加工

技術の検討

目標:複数の曲面からなる

3次元構造クッション材

の成型技術を検討。

・ 車輌用シート用途を想

定した複雑な形状の成

型加工技術に関し、乾

熱加熱方式、湿熱加熱

方式について比較検討

する。

・ 8万回圧縮歪が2~

3%となるクッション

材の均一な成型加工を

検討。

湿熱加工方式によって、

均一に加工されること

で柔らかさを損なうこ

となく、8 万回圧縮歪が

改善される(6%)こと

を確認し技術を確立。商

用座席による評価にお

いても、性能向上を確

認。

一部達成

(8万回

圧縮歪が

未達)

注)「達成度」の欄には、達成、一部達成、未達成、を選択して記述。

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4.事業化、波及効果

4-1 事業化の見通し

1) 事業化に向けての実証試験

本研究開発成果をもとに、研究開発実施者(帝人ファイバー株式会社)

において事業化検討を行い、実用化に向けて実車テスト用シートクッシ

ョン材を作成し、長期テストとして新型電車の座席シート背として搭載

している。

今後、本事業の最終成果である繊維素材と繊維配列との組み合わせ技

術を用い、平成 20年度中には上記新型電車の背につき改良版を提案し、

平成 21年度に投入する予定である。

2) 事業化に向けての準備

研究開発実施者において、以下のとおり事業化準備が進められている。

① ポリエステルエラストマーの商業生産設備(平成 18年 4月)

② ポリトリメチレンテレフタレート短繊維の商業生産設備(平成 18年

11月)

③ 繊維縦配列構造体の商業生産設備(平成 19年 11月)

3) 本格的事業化

平成 20年度より逐次実施する。

① 電車シート背 平成 21年

② 電車シート座 平成 22年目標

③ 自動車シート背→ 座 平成 24年目標

④ 使用済みシート回収、ケミカルリサイクル

表4-1-1.事業規模と導入見通し

区分 20年 21年 22 年 23年 24年 備考

電車 数量

(トン)

試験搭

載中

5.2 10.4 20.8 41.6

金額

(千円)

- 18,750 37,500 75,000 150,000

自動車 数量

(トン)

- - - - 144

金額

(千円)

144,000

シート回収

ケミカルリサイクル

本格的には、5

年以上使用品

に対応

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4-2 波及効果

本事業におい開発された軽量クッション材の導入が期待される分野

および省エネ効果は表4-2-1の通りである。

表4-2-1.導入期待分野と省エネ効果

区分 座席数

(トン/年)

原油換算

(kl/年)

備考

電車 41.6 82.4 表4-2-2より算出、原油換算

で 2.06l/年・席で換算

自動車 144 231.4 車 1台あたり 1.72kg軽量化(背)、

一般に車は 100kg 軽量化で 1km/l

の燃費改良。国土交通省資料よ

り 、 日 本 の 平 均 実 走 燃 費 は

9.7km/l、走行距離は 8.7 千 km/

年の条件で、1 台あたり、本クッ

ション材使用で 1.6l/年の原油が

低減できる。

トラック 78.5 63.2 トラック生産台数:157 万台/年で 5%

を想定、背のみで 2個/台とする。

上記条件を一部使用

バス 7.0 98.6 バス生産台数:14万台/年で 5%を

想定、背のみで 35個/台とする。

上記条件を一部使用。

飛行機 12.5 21.9 札幌/東京間 900kmを B777で飛行

する場合、0.09km/l の燃費、1機

247 ト ンとした場合、背のみで

0.3kg/個X500個/機で 150kg/機の

軽量。札幌/東京間は 100便/日(往

復)あり、よって、約 600l/日の

削減、このうちの 10%の便を本ク

ッションで使用

合計 282 497.5

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表4-2-2.電車シートでのエネルギー削減効果

また、個別要素技術の検討、開発で得られた成果については、以下の

ような展開が期待される。

1) 耐熱繊維

実用化されている耐熱繊維は捲縮を有さない長繊維であるが、本研究

開発にて短繊維としても生産可能であることを見極めたので、クッショ

ン材以外の用途、特に従来のPETでは耐熱性が不足し使用されて来な

かった用途への適用を今後検討する。

2) ストルート加工技術

クッション材の付加価値として吸音性能を検討した過程において、ス

トルート加工技術で得られる構造体は、従来の不織布吸音材と同様に使

用する繊維の繊維経が細いほど吸音性能が得られることを確認した。さ

らに、得られた吸音材はその構造的特徴により、厚みの経時変化(ヘタ

リ)が少なく、且つ、吸音材として軽量化が可能となるものであること

を見極めた。今後、吸音材用途として、各産業分野への展開を検討する。

PU ELK

204t 204t

0.79t 0.55t

乗車人重量 2.6t 2.6t

走行距離

消費電力 6800 6792

年間 2040000 2037639

消費電力削減量 2361

394249

原油換算 90.7

1千両(167×6両)では(kw/年)

kl/年

300km

kw/日

300日とする

kw/年

電車

車体重量:34t/両×6両

座席重量:44席/両×6両

2640kg

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5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等

5-1 研究開発計画

表6.研究開発計画

開発項目

平成17年度 平成18年度 平成19年度

1.原綿開発

(1)ポリマー検討

(2)原綿生産技術

(3)操業化決定

2.クッション成型

技術

(1)縦配向技術

(2)成型技術

(3)操業化決定

3.市場評価

(1)電車

(2)自動車

技術を商業生産可能なレベルに高めることを目標とし、研究開発計画の中に、

電車・自動車を想定した市場評価を組み込んだ。

上記計画どおり、研究開発を実施した。

5-2 研究開発実施者の実施体制・運営

本研究開発は、公募による選定審査手続きを経て、帝人ファイバー株式会社

が経済産業省からの補助金(補助率2/3)を受けて実施した。帝人ファイバ

ー株式会社は、研究開発の速度アップのため、松山での原綿開発と大阪でのク

ッション構造体開発とを並行して推進する体制とし、研究開発を統括するため

のプロジェクトリーダーを設置した。

プロジェクトリーダー(繊維技術開発グループ 短繊維技術グループ長)

<繊維開発:松山>

短繊維技術研究員 1名、 補助職 2名

<クッション構造体開発:大阪>

加工技術グループ 研究員 2名、 補助職 1名

PTT,耐熱繊維 決定

確立

試験機導入 確立

確立

評 価 見 極

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5-3 資金配分

研究開発期間中の資金配分は下表の通りとした(補助率2/3)。

表5-1.資金配分 (単位:百万円)

年度 平成 17 18 19 合計

原綿開発 4.0 2.7 0.8 7.5

クッション構造体開発 15.8 19.4 6.7 41.9

合計 19.8 22.1 7.5 49.4

(うち補助金額 33.0 百万円)

5-4 費用対効果

本研究開発は、3年間にわたり 49.4 百万円(うち補助金額 33.0 百万円)の

予算で実施した。

本事業に要した総費用に対して、軽量化によるエネルギー削減効果(原油、

金額換算)を表5-4-1にまとめた。これによると平成24年度には研究開

発費を上回る省エネルギー効果が得られる見込みである。

表5-4-1.費用対効果 軽量化によるエネルギー削減効果

区分 20年 21年 22年 23年 24年 備考

電車 軽量クッ

ション材

市場シェ

ア(トン)

試験搭

載中

5.2 10.4 20.8 41.6

原油換算

(kl/年)

- 10.3 20.6 41.2 82.4

金額

(千円/年)

- 1,545 3,090 6,180 12,360 ガソリンとしての金

額(150円/l、2008

年 10 月全国平均

値)

自動

軽量クッ

ション材

市場シェ

ア(トン)

- - - - 144

原油換算

(kl/年)

- - - - 231.4

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金額

(千円/年)

- - - - 34,710 ガソリンとしての金

額(150円/l、2008

年 10 月全国平均

値)

累計(千円) - 1,545 4,635 10,815 57,885 5 年後に研究開発

費を上回る。

5-5 変化への対応

平成 17年度、研究開発をスタートした直後に新型電車の情報を入手した。新

型電車座席での早期評価は、本開発の大きなポイントであると認識し、開発途

上ではあるが、サンプルを提供し、約 1年の少量評価の後本格的な採用の予定

である。