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36───第34実践研究助成 研究課題 小学校における「言語力」を育成するためのモ ジュール教材の開発 副題 ~デジタルコンテンツの開発とICTの利活用を通して~ 学校名 船橋市立海神南小学校 所在地 273-0024 千葉県船橋市海神町南1-1510 学級数 19 児童・生徒数 647職員数/会員数 38学校長 順子 研究代表者 順子 ホームページ アドレス http://www.kainan-e.funabashi.ed.jp/ 1.はじめに 本校は、船橋市の国語科の研究指定校である。平成211120日には公開研究会を予定している。本校では、『自分 の言葉で考え、自分の思いや考えを表現できる子どもの育 成』を研究主題として、「国語力の向上」と「言語力の育 成」を目指している。 新学習指導要領では、小学校では、「日常生活に必要な基 礎的な国語の能力を身に付けることができるよう、次のよう な改善を図る」としてその具体的な内容が(ア)~(ケ)に 示された。(学習指導要領解説国語編参照) 本校では、国語科の指導を45分を1単位とする授業と15のモジュール学習の時間とに分けて行っている。特に、15のモジュール学習では、105時間分の指導計画を作成し、国 語科の年間計画と関連付け、基礎基本の指導に取り組んでい る。本稿は、モジュール学習の時間に、1~6年のすべての 学年においてICTを活用した15分の授業を展開するために、 学校独自のデジタルコンテンツを開発した研究についてまと めた。 尚、公開研究会では、本研究で開発したデジタルコンテン ツを活用したモジュール学習についても公開する予定である。 2.研究の目的 昨今、日本の子供たちのPISA型読解力の成績が振るわず、 言語力の育成や国語力の育成が叫ばれている。このような社 会の要請や児童の実態を鑑み、国語科では言語の教育として の立場から実社会や実生活で必要な言語能力、各教科の学習 の基本となる言語能力、さらに伝統的な言語文化に親しむ態 度を育成することが求められている。 本校でも、授業研究を通して、話すこと・聞くこと、書く こと、読むことの指導法や教材開発を行ってきた。そのなか で、自らの課題を探求するためには、基礎的・基本的知識や 技能を習得し、それを活用できる力が必要であることがわか った。 そこで、平成20年度の時間割は、朝の15分(週3日)をモ ジュール学習とし、国語の基礎基本の授業として重点的に扱 いたいと考えた。そのためには1年~6年までの教材を学校 独自で作成し、それを活用するための指導方法を開発してい かなければならない。 本研究では、子どもたちに基礎基本の力をつけさせるため の教材や指導法の開発を行い、そのなかでデジタルコンテン ツやICTを活用した15分のモジュール学習を年間を通して実 施できるカリキュラムを開発することを目的とする。 3.研究の方法 (1)モジュール学習(105時間)の年間計画を作成する。 (2)新学習指導要領に基づき各領域や伝統的な言語文化と 国語の特質に関する指導事項における内容からICTを活 用することによって効果が得られる教材を選択する。 (3)ICTの活用方法(教材提示の仕方)について考える。 (4)デジタルコンテンツを開発する。 (5)開発したデジタルコンテンツをモジュール学習で活用 し、修正を加える。 (6)モジュール学習での成果と課題を明らかにする。 実践研究助成 小学校

小学校における「言語力」を育成するためのモ ジュール教材の開発 · 言語力の育成や国語力の育成が叫ばれている。このような社 会の要請や児童の実態を鑑み、国語科では言語の教育として

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36───第34回 実践研究助成

研究課題

小学校における「言語力」を育成するためのモジュール教材の開発

副題

~デジタルコンテンツの開発とICTの利活用を通して~

学校名 船橋市立海神南小学校

所在地 〒273-0024

千葉県船橋市海神町南1-1510

学級数 19

児童・生徒数 647名

職員数/会員数 38名

学校長 盛 順子

研究代表者 盛 順子

ホームページ アドレス http://www.kainan-e.funabashi.ed.jp/

1.はじめに

本校は、船橋市の国語科の研究指定校である。平成21年

11月20日には公開研究会を予定している。本校では、『自分

の言葉で考え、自分の思いや考えを表現できる子どもの育

成』を研究主題として、「国語力の向上」と「言語力の育

成」を目指している。

新学習指導要領では、小学校では、「日常生活に必要な基

礎的な国語の能力を身に付けることができるよう、次のよう

な改善を図る」としてその具体的な内容が(ア)~(ケ)に

示された。(学習指導要領解説国語編参照)

本校では、国語科の指導を45分を1単位とする授業と15分

のモジュール学習の時間とに分けて行っている。特に、15分

のモジュール学習では、105時間分の指導計画を作成し、国

語科の年間計画と関連付け、基礎基本の指導に取り組んでい

る。本稿は、モジュール学習の時間に、1~6年のすべての

学年においてICTを活用した15分の授業を展開するために、

学校独自のデジタルコンテンツを開発した研究についてまと

めた。

尚、公開研究会では、本研究で開発したデジタルコンテン

ツを活用したモジュール学習についても公開する予定である。

2.研究の目的

昨今、日本の子供たちのPISA型読解力の成績が振るわず、

言語力の育成や国語力の育成が叫ばれている。このような社

会の要請や児童の実態を鑑み、国語科では言語の教育として

の立場から実社会や実生活で必要な言語能力、各教科の学習

の基本となる言語能力、さらに伝統的な言語文化に親しむ態

度を育成することが求められている。

本校でも、授業研究を通して、話すこと・聞くこと、書く

こと、読むことの指導法や教材開発を行ってきた。そのなか

で、自らの課題を探求するためには、基礎的・基本的知識や

技能を習得し、それを活用できる力が必要であることがわか

った。

そこで、平成20年度の時間割は、朝の15分(週3日)をモ

ジュール学習とし、国語の基礎基本の授業として重点的に扱

いたいと考えた。そのためには1年~6年までの教材を学校

独自で作成し、それを活用するための指導方法を開発してい

かなければならない。

本研究では、子どもたちに基礎基本の力をつけさせるため

の教材や指導法の開発を行い、そのなかでデジタルコンテン

ツやICTを活用した15分のモジュール学習を年間を通して実

施できるカリキュラムを開発することを目的とする。

3.研究の方法

(1)モジュール学習(105時間)の年間計画を作成する。

(2)新学習指導要領に基づき各領域や伝統的な言語文化と

国語の特質に関する指導事項における内容からICTを活

用することによって効果が得られる教材を選択する。

(3)ICTの活用方法(教材提示の仕方)について考える。

(4)デジタルコンテンツを開発する。

(5)開発したデジタルコンテンツをモジュール学習で活用

し、修正を加える。

(6)モジュール学習での成果と課題を明らかにする。

実践研究助成

小学校

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第34回 実践研究助成───37

小学校

(7)次年度開発できそうなデジタルコンテンツについての

計画を立案する。

4.研究の内容と経過

各学年で開発したデジタルコンテンツについて

【第1学年】

漢字クイズ(たし算・

ひき算編)

児童にコンテンツを

作成させ、画像をパワ

ーポイントに取り込み

クイズ形式で提示する。

・児童が作成した漢字

クイズをデジタルコ

ンテンツとしてパワ

ーポイントを使って

提示することで、楽

しく漢字学習ができ

た。

・漢字が苦手な児童で

もICTを活用して提

示することでつくりや形から出題された漢字は覚えること

ができた。

・児童自身がコンテンツを作成することにより、漢字の読み

書きの学習に留まらず、思考力や言語力の育成を図ること

ができた。

・各学年でも応用できる。

【第2学年】

早口ことばと漢字の広場

・早口ことばについては、フラッシュカードの方式をとり、

教材が提示されると同時にはっきり大きな声で発音発声が

できるようにした。

・画と書きじゅんは、計算の答えとなる画数の漢字を見つけ

る問題である(右画像)。提示の仕方は、「水」から「草」

までを一つずつゆっく

り出すことによって、

一つ一つの文字の画数

を確かめられるように

した。

・かん字の組み立ては、

共通する文字を空欄に

入れてそれぞれの漢字

を完成させるという問

題である。ここでの提

示の順序は、まず空欄

部分を提示し、次に

「寸」「交」をゆっく

りと提示しながら考え

る時間を取り、「木」

「山」「田」「糸」のヒントを出していくというものである。

・ゲーム感覚で漢字の組み立てや書き順を身につけることが

できた。

【第3学年】

みんなで おぼえよう いろはかるた ~犬棒フラッシュ~

・児童が作成した「いぬぼうかるた」をデジタルコンテンツ

化しフラッシュカード形式で提示することで、いぬぼうか

るたを覚え暗唱で

きるようにした。

・新学習指導要領の

〔言語文化と国語

の特質に関する事

項〕の指導内容を

受けて作成した。

コンテンツを、子

どもが作成するこ

とで、古語や昔の風俗、習慣、行事等を知り、単なるかる

たの暗唱に留まらず、ことわざに興味を持ったり、七五調

のリズムに慣れたりすることができた。

・語彙が増え、言語力の育成につながった。

【第4学年】

新出漢字フラッシュカード200字

・児童が作成し

た掲示用カー

ドをPCに画

像として取り

込み、フラッ

シュカードと

して提示した。

・読み、熟語等

楽しく友達と

ゲーム感覚で

競い合いながら漢字学習に取り組むことができた。

・児童自ら答え方のルールを考えたり、見せる速さを変えた

りすることで、ワンパターンにならないように工夫した。

【第5学年】

みんなで覚えよう名著の冒頭~古典編~

・「枕草子」「平家物語」「方丈記」「徒然草」など古典の冒頭

を何枚かのスライドに分けて提示しながら、暗唱した。

・新学習指導要における「言語文化としての古典に親しむ態

度を育成する指導については、易しい古文や漢詩・漢文に

ついて音読や暗唱を重視する。」を受けて作成した。

Page 3: 小学校における「言語力」を育成するためのモ ジュール教材の開発 · 言語力の育成や国語力の育成が叫ばれている。このような社 会の要請や児童の実態を鑑み、国語科では言語の教育として

38───第34回 実践研究助成

・ICTを活用することにより、古典の冒頭部分を暗唱しよう

という意欲が高まった。

・古典の暗唱は、リズムやテンポのよさを実感し、伝統的な

言語文化に触れ古典のもつ美しさを感覚的に味わわせるこ

とができた。

・近代以降の文学についてもその冒頭部分を暗唱させるため

のコンテンツ「~近代文学編~」を今後作成していく。

【第6学年】

漢文にチャレンジ

・新学習指導の「漢文は読んで楽しいものであること、自分

を豊かにするものであることを実感させるようにする」を

受けて作成した。

・白文を提示するが、ICTの特性を生かし、漢字の色がカラ

オケのように読みの順序にしたがい変化していくようにし

た。

・繰り返し音読することで、暗唱できるようになり、色の変

化を追って読むことで、中学校での返り点の学習へとつな

がるようにした。

・新学習指導の「解説の内容を基に、昔の人々の生活や文化

など、古典の背景をできる限り易しく理解させ、昔の人の

ものの見方や感じ方に関心をもたせたり、現代人のものの

見方や感じ方と比べたりして、古典への興味・関心を深め

るようにすることが重要である。」を受け、音読後に一つ

一つ解説が出るようにした。尚、著作権に触れないように

するため市販のものを使わず、絵を含めてコンテンツに使

われるパーツはすべて自作したものである。

5.研究の成果と今後の課題

(1)「言語力」の育成のためのモジュール教材及び開発

と授業でのICTの活用による成果

・自分の言葉で考えることができる知識や語彙が身に付いた。

・日本語のよさや美しさ、またその特徴に気付き、言葉への

興味関心を持つことができた。

・表現したり、理解したりするために必要な基礎基本の力を

身に付けることができた。

・言葉を手がかりに、想像したり、思考したりしながら正確

に言葉を理解する力が身に付いた。

(2) 今後の課題

・言語を通して相手、目的、意図、多様な場面や状況などに

応じて表現したり理解したりする力を身に付けていく。

・互いの立場や考えを尊重しながら、言語を通して、表現し

理解しあえる力を育てていく。

・自分の思いや考えを自分の言葉で表現することができるよ

うにしていく。

・デジタルコンテンツを開発し、ICTの活用を通してわかる

授業を展開する。

6.おわりに

本年度、パナソニック教育財団の研究助成をいただき、

ICT環境が充実し、研究の推進を図ることができた。また上

記のような成果をあげることができた。今後は、さらに児童

の言語力育成のためにデジタルコンテンツの開発に励み、わ

かる授業を展開していきたい。

【公開研究会のお知らせ】

解説の部分は、クイズ形式を取り入れるこ

とで、背景を想像できるようにした。これ

は、語彙について思考することで、言語力

の育成につながるものと考えた。

日 時 平成 21 年 11 月 20 日(金) 午後より

場 所 船橋市立海神南小学校 047(433)2177

内 容 モジュール学習(15 分)と国語科の

授業(45 分)を公開

領 域 全学年3領域(18 教材)の授業を全学級

で展開