55明電時報　通巻 355号　2017　No.2

1 ま え が き

2016年3月の北海道新幹線（新青森・新函館北斗間）の開業に合わせ，函館線のうち五稜郭・新函館北斗間を電化し，利便性や快適性の向上を図った。第1図に今回の電化工事区間を示す。この電化工事で，当社は五稜郭変電所の受電設備

及びき電用変電設備を製作・納入した。既設の五稜

郭変電所にき電用変圧器を1台増設し，2回線受電（常用・予備）とすることで，常用回線が停電した場合でも予備回線を使用して五稜郭・新函館北斗間のき電を確保した。本稿では，五稜郭変電所に納入した設備を紹介する。

2 設 備 構 成

五稜郭変電所は，66kV 2回線を北海道電力㈱から受電し，常用回線は30MVAのスコット変圧器で単相44kVを2回線に降圧し，予備回線は7.5MVA（平衡装置無し）の不等辺スコット変圧器で単相44kVを1回線に降圧している。単相44kVは，単巻変圧器を介して単相22kVに降圧して営業線車両にき電している。第2図に五稜郭変電所の主回路電線接続図を示す。

納入設備紹介

概　要

北海道旅客鉄道㈱五稜郭変電所納入変電設備

森戸啓介 Keisuke Morito

キーワード 交流き電用変電設備，き電制御，不等辺スコット変圧器

五稜郭変電所は北海道旅客鉄道㈱所有の函館線の変電所で，

函館線は函館駅から長万部駅・小樽駅・札幌駅を経由し，終点

の旭川駅を結ぶ約420kmの路線である。北海道新幹線の開業

に合わせ，五稜郭駅から新函館北斗駅間の利便性を向上するた

め電化工事を行った。

電化工事に伴い，当社は五稜郭変電所に受電設備・交流き電

設備・電鉄用配電盤を製作・納入した。受電用及びき電用遮断

器は乾燥空気絶縁のタンク形真空遮断器を採用し，環境負荷と

ライフサイクルコストの低減を図った。

五稜郭変電所全景

第1図 電化施工区間

電化施工区間を示す。五稜郭・新函館北斗間の電化工事を行った。

新函館北斗 仁山七飯大中山桔梗五稜郭函館 大沼

至長万部

既存電化区間 電化工事区間

56 明電時報　通巻 355号　2017　No.2

受電

2号（

北海

道電

力）

常用

系3φ

66k

V 5

0Hz

（89

R2）

3PDS

72kV

800A

（63

G1R

2）

BCT×

360

030

0/5A

40VA

BCT×

280

040

0 /5

A40

VA

K L

K L

K L

BCT×

360

030

0/5A

40VA

K L

K L

K L

12 ペー

パレ

スレ

コー

ダ

CTT（

50R2

/51R

2）

（51

D）CT

T（

50R2

/51R

2）

（51

GR2

）

TEL

Wh

Wh

Wh

Wh

VCT

TEL

VCT

LA 84kV

10kA

LA 84kV

10kA

RR

R

CC

C

（26

T2）

θ Ｐ

AF TFAF TF

AF （50

F13）

0～

5A/

1～

5VDC

4

MM

（44

F13）

（27

F13）

I ＞ Z ＜

U ＜

（50

F43）

（44

F43）

（27

F43）

I ＞ Z ＜

U ＜

TF

0～

5A/1

～5V

DC0

～5A

/1～

5VDC

0～

5A/

1～

5VDC

（44

F11）

（50

F11） PT

TPT

T

79F1

179

F15

48VF

11

8AF1

1

Z ＜

（44

F41）

（63

G1F1

1）P

（63

G2F1

1）P

P P

Z ＜

（50

F41）

I ＞

（44

F15）

Z ＜

（50

F15）

I ＞

U ＜

（27

F11）

U ＜

（27

F41）

PTT

U ＜

（27

F15）

PT 4400

0V/1

10V

PT 4400

0V/1

10V

PT 4400

0V/1

10V

（89

L11）

48kV

800A

（41

1L）

（89

L41）

48kV

800A

（44

1L）

GP

5kA

99F

BCT

500/

5A

（27

FZ）

PTT

CTT

PT 22kV

/110

V（

52FZ

）24

kV12

00A

12.5

kA（

401）

U ＜

木古

内方

面AFTF

函館

A地

区AF

TFEL

基地

AFTF

函館

B地

区TF

NW

NW

NW

（50

FZ）

＜ I

LA 28kV

10kA

LA 28kV

10kA

（89

FZL）

26kV

800A

（40

1ZL）

（89

FZ）

26kV

800A

（40

1Z）

（89

FT）

26kV

800A

（46

1）

BCT×

280

040

0/5A

40VA

LK

LK

W

M

MM

M

AT20

00kV

ALA 28

kV10

kA

LA 28kV

10kA

AT20

00kV

A

（89

L15）

48kV

800A

（41

5L）

PTT

PT 4400

0V/1

10V

100V

A1P

（89

L13）

48kV

800A

（41

3L）

PTT

PT 4400

0V/1

10V

100V

A1P

（89

L43）

48kV

800A

（44

3L）

WW

WW

W

（89

L42）

24kV

600A

（44

2L）

W

（52

F11）

72kV

1200

A12

.5kA

（41

1）

（89

F11）

48kV

800A

（41

1B）

BCT×

280

040

0 /5

A40

VA

48VF

41

8AF4

1

P

48VF

15

8AF1

5

（63

G1F4

1）

（63

G2F4

1）（

52F4

1）72

kV12

00A

12.5

kA（

441）

（89

F41）

48kV

800A

（44

1B）

※A

LL

KK

LL

KK

BCT×

280

040

0 /5

A40

VA（

63G1

F15）

P

48VF

Z

8AFZ

M8A

FT

（63

G1F

Z）

（52

F15）

72kV

1200

A12

.5kA

（41

5）

（89

F15）

48kV

800A

（41

5B）

LL

KK

79F1

3

P

48VF

13

8AF1

3

BCT×

280

040

0 /5

A40

VA

（63

G1F1

3）

（52

F13）

VCB

72kV

1200

A12

.5kA

電動

ばね

（41

3）

（89

F13）

48kV

800A

（41

3B）

P

48VF

43

8AF4

3

BCT×

280

040

0 /5

A40

VA

（63

G1F4

3）

※B

PT 4400

0/11

0V10

0VA

1P

BCT

500/

5A

LA 28kV

10kA

LA 28kV

10kA

AT20

00kV

ABCT

500/

5AG

P5k

A※

A（

50F2

）＜

I CTT

99F

PTT

（52

F43）

VCB

72kV

1200

A12

.5kA

電動

ばね

（44

3）

（89

F43）

48kV

800A

（44

3B）

LL

KK

LL

KK

I ＞

12

3

CTT

AA

AA

0～

5A/

1～

5VDC

ACT

TCT

TCT

TCT

T

BT2

（63

T2） CT

TCT

T

n a b cV

0V0u

u

BCT

800

400/

5A40

VA

BCT

800

400/

5A40

VA

L K

L K

（33

T2）

（63

T1）

P θBT

1（

26T1

）（33

T1）

UV

WU

MO

T

VW

F・Tr

3次

巻線

付1次

2次：

60kV

/44k

V×2

1次3次

：60

kV/6

.9kV

30M

VA2M

VA

I ＞

I ＞

（51

R1）

CTT

I ＞

（50

R1）

（51

GR1

）

（27

R1）

2

22

7

0～

150V

/1～

5VDC

FTr1

不等

辺ス

コット

7.5M

VA（

平衡

装置

なし

）PV

：F6

9 －F6

6－F6

3－R6

0SV

：44

kV（

31，1

1kV/

31，1

1kV）

油入

自冷

低騒

音：

60dB

以下

V

※B

I ＞ U ＜

（51

D）

LA 84kV

10kA

OT

6.6k

V/21

0 －10

5V

PTT

27R2

V 6

0～

150V

/1～

5VDC

BCT×

230

015

0/5A

25VA

KK

LL

I ＞

I ＞ I＞

I＞

34

56

7

P

48VR

2

8AR2

（63

G2R

1）P

（63

G1R

1）P

48VR

1

8AR1

（52

R2）

VCB

72kV

1200

A25

kA（

602）

RS

T

受電

1号（

北海

道電

力）

予備

系3φ

66k

V 5

0Hz

（89

R1）

3PDS

72kV

800A

（60

1L）

（52

R1）

VCB

72kV

1200

A25

kA電

動ば

ね（

601）

RS

T

MM

第2図

主回路電線接続図

主回路電線接続図を示す。北海道電力㈱から66kV常用・予備の2回線で受電し，常用系はスコット変圧器，予備系は不等辺スコット変圧器を採用している。

57明電時報　通巻 355号　2017　No.2

3 機 器 仕 様

3.1 受電用遮断器絶縁媒体に乾燥空気を用いた環境に優しいエコ

ロジータイプのタンク形真空遮断器（VCB）を納入した。SF6ガスレスのため地球温暖化防止に貢献するほか，ガス回収や遮断部保守が不要でライフサイクルコスト（LCC）が少ない。また，アルミ製タンクを採用することで塗装レス

とした。第3図に受電用遮断器を示す。機器の主な仕様は，以下のとおりである。⑴ 形式　　　　：VCB⑵ 絶縁媒体　　：乾燥空気⑶ 定格電圧　　：72kV⑷ 定格電流　　：1200A⑸ 定格遮断電流：25kA⑹ 操作方式　　：電動バネ

3.2 受電用避雷器第4図に受電用避雷器を示す。受電部は酸化亜

鉛形避雷器とした。機器の主な仕様は，以下のとおりである。⑴ 形式　　　　：酸化亜鉛形避雷器

⑵ 定格電圧　　：84kV⑶ 公称放電電流：10kA

3.3 き電用変圧器き電用変圧器は一般的に三相／二相変換を行う

スコット変圧器が用いられるが，五稜郭変電所に納入した予備回線のき電用変圧器は五稜郭・新函館北斗間にき電をするため，三相／一相変換を行う不等辺スコット変圧器とした。第5図にき電用変圧器を示す。機器の主な仕様は，以下のとおりである。

第3図 受電用遮断器

受電用遮断器の外観を示す。72kVエコ・タンク形VCBで脱SF6化を図っている。

第4図 受電用避雷器

受電用避雷器の外観を示す。酸化亜鉛型避雷器を採用した。

第5図 き電用変圧器

き電用変圧器の外観を示す。予備回線は五稜郭から新函館北斗間をき電し，片送りのため不等辺スコット変圧器を納入した。

58 明電時報　通巻 355号　2017　No.2

⑴ 形式　　　　：屋外油入自冷式⑵ 定格容量　　：7.5MVA（平衡装置無し）⑶ 定格の種類　：連続（300％ 2分間）⑷ 相数　　　　：3/1⑸ 定格一次電圧：F69－F66－F63－R60kA⑹ 定格二次電圧：44kV

3.4 き電用遮断器第6図にき電用遮断器を示す。受電遮断器と同様に72kVエコ・タンク形VCBを納入した。機器の主な仕様は，以下のとおりである。⑴ 形式　　　　：VCB⑵ 絶縁媒体　　：乾燥空気⑶ 定格電圧　　：72kV⑷ 定格電流　　：1200A⑸ 定格遮断電流：12.5kA⑹ 操作方式　　：電動バネ⑺ 極数　　　　：2P

3.5 計器用変圧器第7図に計器用変圧器を示す。機器の主な仕様は，以下のとおりである。

⑴ 形式　　　　：計器用変圧器⑵ 定格一次電圧：44kV⑶ 定格二次電圧：110V⑷ 定格負担　　：100VA

3.6 電鉄用配電盤既設配電盤と列盤となるため，既設配電盤の仕様

に合った予備回線の配電盤を製作・納入した。配電盤の制御回路は，補助継電器によるハードシーケンスとした。配電盤の受電用保護連動装置と交流き電用保護連動装置にはデジタル形を採用した。保護・制御部を2個のCPUで構成し，自己診断機能で本装置が正常であるかを自動監視することで，信頼性を向上した。第8図に電鉄用配電盤を示す。以下の設備で構

成した。⑴ 受電変圧器盤⑵ 交流き電盤

3.7 配電設備五稜郭・新函館北斗間は非電化区間から電化区間に変更となる。これに伴い，五稜郭変電所から大

第6図 き電用遮断器

き電用遮断器の外観を示す。72kVエコ・タンク形VCBで脱SF6化を図っている。

第7図 計器用変圧器

計器用変圧器の外観を示す。

59明電時報　通巻 355号　2017　No.2

沼配電室間のき配電の混触（き電線が配電線に接触し，配電線にき電圧が侵入する事故）を保護するため，大沼配電室に中性点接地抵抗器と連絡遮断装置を設置し，五稜郭変電所の交流き電盤に連絡遮断装置を設置した。

4 む す び

今回納入した各設備が機能を十分に発揮し，安全で迅速な鉄道運行に貢献することで，函館駅～新函館北斗間の在来線が人々の重要な足となることを期待する。最後に，本設備製作にあたり，ご指導・ご協力を

いただいた多くの関係者の皆様に深く感謝の意を表する次第である。

・本論文に記載されている会社名・製品名などは，それぞれの会社の商標又は登録商標である。

《執筆者紹介》

森戸啓介Keisuke Morito

電鉄システム事業部技術部電鉄用変電設備システムのエンジニアリング業務に従事

第8図 電鉄用配電盤

受電変圧器盤及び交流き電盤の外観を示す。新設した配電盤は既設配電盤と列盤構造とし，制御回路は補助継電器によるハードシーケンスとした。