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18 【日本機械工業連合会会長賞】 ヒートポンプ式食品乾燥機(ドライマン) オリオン機械株式会社 長野県須坂市 1. 機器の概要 ヒートポンプ式食品乾燥機(ドライマン:図1)は、乾燥食品(ドライフルー ツ等)の製造用として、家庭用 100V 電源で動作する低消費電力と汎用性に加え、 季節や天候に左右されない安定した乾燥仕上がりを実現し、初心者から幅広いユ ーザ層が使用可能とした。 従来の電気ヒータ加熱式は、外気を加熱すると共に蒸散水分を含んだ加熱空気 を外部に排気しながら食品乾燥するため、加熱エネルギー効率が悪いばかりか、 季節や天候(外気温湿度)によっては乾燥出来ない場合があった。そこで本機は、 加熱源に電気ヒータを使用しないヒート ポンプバランス制御による内気循環型の 除湿乾燥方式を採用し、季節や天候を問 わない広い地域で安心した使用が可能と なった。 これは、独立した加熱回路を用いて冷 却(除湿)回路の排熱を汲み上げる機能 があることから、エネルギーの無駄を排 除しヒートポンプ効率を上げたことによ り大幅な省エネを達成した。 注)ヒートポンプバランス及びドライマ ンはオリオン機械の登録商標です。 写真左)RDF150A 写真右)RDF350A 図1 ヒートポンプ式食品乾燥機 (ドライマン)

【日本機械工業連合会会長賞】 ヒートポンプ式食品乾燥機 ......— 18 — 【日本機械工業連合会会長賞】 ヒートポンプ式食品乾燥機(ドライマン)

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【日本機械工業連合会会長賞】

ヒートポンプ式食品乾燥機(ドライマン)

オリオン機械株式会社

長野県須坂市

1. 機器の概要

ヒートポンプ式食品乾燥機(ドライマン:図1)は、乾燥食品(ドライフルー

ツ等)の製造用として、家庭用 100V 電源で動作する低消費電力と汎用性に加え、

季節や天候に左右されない安定した乾燥仕上がりを実現し、初心者から幅広いユ

ーザ層が使用可能とした。

従来の電気ヒータ加熱式は、外気を加熱すると共に蒸散水分を含んだ加熱空気

を外部に排気しながら食品乾燥するため、加熱エネルギー効率が悪いばかりか、

季節や天候(外気温湿度)によっては乾燥出来ない場合があった。そこで本機は、

加熱源に電気ヒータを使用しないヒート

ポンプバランス制御による内気循環型の

除湿乾燥方式を採用し、季節や天候を問

わない広い地域で安心した使用が可能と

なった。

これは、独立した加熱回路を用いて冷

却(除湿)回路の排熱を汲み上げる機能

があることから、エネルギーの無駄を排

除しヒートポンプ効率を上げたことによ

り大幅な省エネを達成した。

注)ヒートポンプバランス及びドライマ

ンはオリオン機械の登録商標です。

写真左)RDF150A 写真右)RDF350A

図1 ヒートポンプ式食品乾燥機

(ドライマン)

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2. 機器の技術的特徴および効果

2.1 技術的特徴

2.1.1 ヒートポンプバランス

ヒートポンプバランス制御と

は、1台の空調機で冷房と暖房

を同時に運転・制御しているイ

メージである。

図2に示すヒートポンプバラ

ンスでは、圧縮機の吐出側に配

した分流弁によって、加熱流路

(A側)と冷却流路(B側)を

流れる冷媒の分配比を変更する

ことにより、除湿対象の空気に

対し加熱量と冷却量の調整が出

来るため、高精度の温度調整が

可能である。

冷却流路の放熱(凝縮)器か

らの放熱エネルギーを加熱流路

の吸熱(蒸発)器で吸熱して圧

縮機に戻すため、冷凍サイクル

の能力が高くなり、この分を加熱流路側に供給できるため、0~60℃という広範

囲の温度調整が可能となった。

そして、従来必要としていた高出力電気ヒータが不要としたことと、加熱量と

冷却量が 適になるよう圧縮機の回転数制御を行うことにより大幅な省エネルギ

ー化を実現した。さらに、庫内空気を循環させる除湿乾燥方式のため加熱空気を

庫外に排気しないことや、放熱器と吸熱器で熱量を打消し合うため機械室からの

排熱が少ないことにより、十分な環境配慮を実現した。

また、ヒートポンプ方式の弱点である「低周囲温度」を機械室内の蓄熱制御に

より周囲温度0℃に於いても乾燥温度 60℃を達成した。

図2 ヒートポンプバランス概要図

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2.1.2 エアパス構造

断熱槽内に空間を介して伝熱板からなる乾燥庫を設ける(エアパス)方式は、

空間内に冷却器や加熱器を設置し、エアパスから伝熱板に開けられた孔から庫内

に温度調整後の空気を流すと共に、一部の空気を伝熱パネルの外側(エアパス内)

に流す。これにより、一部の空気は庫内を通過せずに冷却器や加熱器に戻され、

効率の良い乾燥が可能となった。(図3)

2.1.3 安全性・環境負荷

吸熱器と放熱器で熱分を打消し合うため、機械室からの排熱が少なく、外気と

の吸排気を行うダンパー操作が不要な内気循環型のため、雑菌や粉塵が混入せず

衛生的であり、機外に燃焼煤煙や乾燥後の熱風を出さないため閉鎖空間でも環境

が保たれる。また、庫内の加熱殺菌機能や漏電ブレーカを標準装備したことによ

り一段と安全性が向上した。

図3 ヒートポンプ式食品乾燥機概要図

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2.2 効果

2.2.1 省エネ性

本機と乾燥処理量が同等な従来機2機種(共に電気ヒータ加熱式)の比較を表

1に示した。これによると、単位乾燥処理量当たりの電力使用量が、~10kg クラ

スでは 43%、~15kg クラスでは 70%夫々削減され省エネを実現。

2.2.2 経済性

前出の従来機との経済性比較によると、共に2年弱でイニシャルコスト差額分

を電力代削減分で回収することが出来る。

2.2.3 第6次産業化への貢献

本機は、第6次産業化に貢献出来る製品を目指し、食品機器で培ったハード開

発とソフト開発を並行して行った。特に、ソ

フト開発は女性メンバー主体のプロジェクト

「チームドライマン」が、社内のテストキッ

チンに於いて、ユーザと共に試験乾燥やレシ

ピを開発し、ハードにフィードバックすると

共に、第6次産業化の普及に貢献した。

3. 用途

本機は乾燥食品(ドライフルーツ等)を製造する第6次産業用として発売し、

個人から農業法人等で稼働している。また、その省エネ性や経済性が高いこと、

家庭用 100V 電源で動作すること、季節や天候に左右されない安定した乾燥仕上が

りであることより、今後は電気ヒータ加熱式からの更新需要も見込まれる。

表1 省エネ性比較

RDF150A 従来機1 RDF350A 従来機21.66 2.93 1.04 3.471.85 4.22 1.85 6.68

【算出条件】 ※1 CO2排出量係数(電力大手平均値)=0.00055(ton-CO2/kWh) 

CO2排出量(t-CO2/年) ※1

~10kgクラス ~15kgクラス

型式

電力使用量/処理重量(kWh/kg)

チームドライマン