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2013年度 卒業論文
木星の質量の算出
明星大学 理工学部 総合理工学科 物理学系 天文学研究室
10s1-036 花野真実
10s1-048 坂本ほなみ
2
要旨
私たちは天体の観測による研究に興味を持っていた。すると本学の先輩が木星の観測
について研究をしていた事が分かったが、木星の質量算出までは到達していなかった。
そこでガリレオ衛星の撮像から衛星の周期や木星までの距離を出し、ケプラーの第3法
則を用いて最終的に木星の質量を算出する。但し観測、撮像によるガリレオ衛星のデー
タ算出は、第2衛星までとする。
3
目次 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
原理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
第 1 章 木星・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
1-1 木星・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
1-2 ガリレオ衛星・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
1-2-1 イオ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
1-2-2 エウロパ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
1-2-3 ガニメデ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
1-2-4 カリスト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
第 2 章ケプラーの法則・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
2-1 第 1 法則・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
2-2 第 2 法則・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
2-3 第 3 法則・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
第 3 章 観測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
第 4 章 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
第 5 章 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
第 6 章 議論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
4
はじめに
木星は67 個と、太陽系で最も多い衛星の持主である。その複数の衛星の中でも際立
つのは、1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが手製の望遠鏡で発見し
たガリレオ衛星(木星の四大衛星)である。いずれも惑星である冥王星よりも大きい。
その大きくて撮像しやすいガリレオ衛星を第 2 衛星まで撮像し、それぞれの衛星から木
星の距離を写真からグラフ化して周期を求める。そしてケプラーの第 3 法則を用いて木
星の質量を求めていく。
原理
天体望遠鏡を使用し、撮像した木星とその衛星から木星の質量を求めた。観測日時は 1
月13日~16日まで行い、比較的木星とガリレオ衛星が撮像出来ている画像を解析した。
解析には、天体画像処理ソフトのステライメージを用いて、測距を行った。これは特別
な画像処理をせずともステライメージの測定機能を利用し、測距した。
5
第1章 木星
1-1 木星
太陽系の第 5 惑星である太陽系最大の惑星である。主成分は水素約 90%、ヘリウム
約 10%とあとは微量のメタン、水、アンモニアである。アンモニアやメタンの厚い雲
に覆われていて、表面温度は摂氏マイナス 140 度程度である。木星といえばあの縞模
様が特徴的であろう。あの縞模様は大気中に浮かぶアンモニアの氷の粒で出来た雲であ
る。その雲にも粒の大きさや雲の厚さ、微量に含まれる元素の違いなどがあり雲の色に
違いが生まれ縞模様となる。
木星の直径は約 139,822km、質量 1.898 10 kg である。地球が直径 12,742km な
ので約 10 倍、質量 5.972 10 kg なので約 317,83 倍となる。衛星の数は 67 個と太陽
系一の数を誇る。(2013 年 7 月)(宇宙情報センター:木星参照)公転周期は 11.86 年、
自転周期が 0.414 日、赤道半径 71,492km、質量 1.899×10 である。
1-2 ガリレオ衛星
イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが 1610 年に発見した木星の4つの大きな衛
星を「ガリレオ衛星」あるいは「ガリレオの4大衛星」と呼ぶ。イオ、エウロパ、ガニ
メデ、カリストの4衛星。明るさは約6等級で、木星の影に隠れたり、さらに時期によ
っては衛星同士の食を見ることができる。ガリレオはこの4大衛星の運動から地動説の
確信を深めたと伝えられている。
カリスト ガニメデ エウロパ イオ
6
1-2-1 イオ
ガリレオ衛星の第 1 衛星。1979 年のボイジャー探査機によって火山噴火(ロキ火山)
が発見された。これは太陽系天体中、地球以外で観測された最初の火山活動である。さ
らに 1996 年のガリレオ探査機の観測によって新たな火山噴火(ラ・パテラ火山)も確
認された。月とほぼ同じ大きさのイオ程度の天体では、通常はすぐに冷えて火山活動を
長期間維持することはできない(月は 30 億年前に活動を終えた)が、イオの場合は木
星の強力な重力による潮汐摩擦によって活動が継続していると考えられている。表面の
多くは硫黄に覆われ、火山活動にともなってまき散らされた噴出物がまだら模様をつく
っている。軌道長半径は 42.3×10 km、周期は 1.769 日。
1-2-2 エウロパ
ガリレオ衛星の第 2 衛星。大きさは月とほぼ同じである。エウロパの表面は例外的に
滑らかでクレーターはほとんど見られない。この事から、形成以来地殻が大きく変動す
る過程を経てきたことを示している。明るく反射している表面には、幅数 10km、長さ
数 1000km の暗い線が複雑な網目のように広がっている。この大規模な網目の原因は、
エウロパが現在も活動していてその中心核が熱いため、内部の力により表面の氷のプレ
ートが常に動いているためか、木星の強力な潮汐力や他の衛星の引力がエウロパの氷の
プレートを割り続けて氷殻下の物質がかき混ぜられた結果、表面に浮かび上がったガス
や塵が凍りついて暗い色をした縞状の線になったのだと考えられている。
また、表面の長いしみのようなものは、断層から水がにじみ出て表層の氷を滑らかに
した跡であろうと考えられ、エウロパの表面の約 100km 下には、岩と金属の中心核を
包む液体の水の海洋が存在すると考えられている。軌道長半径は 67.2×10 km、周期
は 3.551 日
7
1-2-3 ガニメデ
ガリレオ衛星の第 3 衛星。火星の4分の3ほどの大きさを持つ太陽系最大の衛星。ガ
リレオ探査機の観測により強い磁場が発見され、中心に鉄の核の存在が推定されている。
表面は、厚い氷に覆われているが、暗くクレーターの多いリージョと呼ばれる地域と、
明るい溝状地域のスルカスと呼ばれる地域に二分され、ガニメデの進化を探る手がかり
として関心を集めている。ガニメデの地殻の下には、恐らく液体の水のマントルがあり、
その下には、ケイ酸塩質の固い核があると考えられているが、はっきりしたことはわか
っていない。軌道長半径 107.2×10 km、周期は 7.155 日
1-2-4 カリスト
ガリレオ衛星の第 4 衛星で、4 つの中で最も外側を公転している。表面は氷と岩石の
混合物で覆われ、さらに長期間にわたる隕石衝突や昇華による氷の蒸発により、不純物
が堆積したと考えられている。カリストにはイオのような火山活動やエウロパやガニメ
デに見られるような構造運動による地形も確認されていない。あるのは無数の衝突クレ
ーターや平坦化した巨大多重リング構造のみで、数十億年前の地形を保存していると考
えられている。これは、カリストが4大衛星中最外周の衛星で、木星の潮汐摩擦の影響
がもっとも小さいからと考えられている。直径 4806 ㎞でほぼ水星と同じ大きさであり、
表面は無数のクレーターに覆われている。軌道長半径は 188.5×10 km、周期は 16.689
日(まるの部屋:天文の小部屋参照)
8
第 2 章ケプラーの法則
ヨハネス・ケプラーによって 1619 年に発見された惑星の運動に関する法則である。
この法則には第 1、第 2、第 3 法則まであり、第 1、2 法則は 1609 年に、第 3 法則は
1619 年に発見されている。(ウィキペディア参照)
1-3-1 第 1 法則
「惑星は太陽を一つの焦点とする楕円軌道上を動く:楕円軌道の法則」
これは惑星の軌道が円ではなく楕円であることと、太陽の位置は楕円の中心ではなく
焦点の 1 つであることを述べている。ちなみに太陽とは別のもう一方の焦点には特に何
も見つかっていない。私たちが普段日常生活で目撃する回転運動は楕円ではなく円が多
いが、万有引力の世界では楕円軌道になる。
1-3-2 第 2 法則
「惑星と太陽を結ぶ線が単位時間に描く面積は一定:面積速度一定の法則」
周回する物体と焦点を結ぶ線分を動径というが、この動径が単位時間当たりに動く面
積が一定ということを指している。この面積が一定ということは、惑星は太陽に近いと
きは速い速度で、遠いときは遅い速度で動くということにならなければならない。
1-3-3 第 3 法則
「惑星の公転周期の 2 乗は、軌道の長半径の3乗に比例する:調和の法則」
=π
r:軌道長半径
T:公転周期
G:万有引力定数
M:公転されている方の質量
m:公転している方の質量
π:円周率
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第3章 観測 ・観測日
2014 年 枚数
1 月 13 日 PM21:11~4:55 29 枚
14 日 PM21:30~22:00 4 枚
15 日 PM21:35~4:44 39 枚
16 日 PM20:20~22:20 13 枚 計 85 枚
・観測場所
30 号館 屋上天文台
・使用機材
天体望遠鏡、カメラ(EOS 5D Mark2)、PC(使用ソフト:ステラナビゲータ、ス
テライメージ)
・方法
木星のガリレオ第二衛星までを天体望遠鏡で観測し、カメラで大体 10 分間隔で撮
像する。そして各衛星から木星までの距離を、ステライメージを使用してグラフ化し、
周期と軌道長半径を求める。得た値をケプラーの第 3 法則により木星の質量を求める。
但し木星の直径は分かっているものとする。
上は木星の直径を pixel にするためステライメージで測距している写真。
第
撮
タ。
予想
周期
グ
230p
4章
像したもの
但し、撮像
想線を sin
も合わせて
ラフの1目
pixel、負の
結果
からステラ
像した木星の
波に合わせ
だす。
盛り 14.4 分
領域が 220
果
ライメージで
の右側は正、
せて引き、波
分なのでイオ
pixel より、
10
で各衛星の中
左側は負に
波の最大から
オの周期が
平均 225p
中心から木星
に位置するも
ら最小の振幅
1.76 日、軌
pixel となる
星の中心まで
ものとする。
幅の半分を軌
軌道長半径は
る。
での距離のデ
軌道長半径
は正の領域が
デー
とし、
が
[エウ
周期
350p
ウロパ]
期が 3.53 日
pixel となる
日、軌道長半
る。
半径は正の領
11
領域が 350ppixel、負の領領域も 350ppixel より、平均
12
ケプラーの第3法則を、求めたい木星の質量を表す式に変形すると M= となる。
そして木星の直径が分かっているとして計算していく。その上で、データの散らばりが
ある事を考えるため Excel の STDEV(standard deviation)を利用してその度合いを表
す標準偏差を求める。
木星の直径 142984 ㎞≒80.9[pixel]
(±2.85[pixel])
これより 1pixel≒1.77×10 [km]
(±5.04×10 [km])
また、周期の測定誤差が 1 目盛りなので 14.4(分)=0.01(日)より 0.01 日 までが測定誤
差となる。
イオ 軌道長半径 r: 225[pixel]≒3.98×10 [km]
=3.98×10 [m]
(±5.00×10 [m])
周期 T: 1.76 日=1.52×10 [s]
(±0.01[日])
エウロパ 軌道長半径 r:350[pixel]≒6.20×10 [km]
=6.20×10 [m]
(±5.00×10 [m])
周期 T: 3.53[日]=3.05×10 [s]
(±0.01[日])
ケプ
イ
M=
M≒
(±6
エ
M=
M≒
(+
ま
参考値
ラーの第 3
オ
. .
.
1.61×
6.00 )
測定誤差
ウロパ
. .
.
1.51×
+4.00×10
(
測定誤差
とめると結
値:ステラ
法則に、で
.
.
[kg]
)
差は 1.59 10
.
.
[kg]
[kg])
-3.00×10
差は 1.50 10
結果が下の表
ナビゲータ
でた値を代入
0 ~1.63
0 [kg])
0 ~1.52
表のようにな
タ
13
入する。
10 の間。
10 の間。
なる。
14
第 5 章 考察
各衛星と木星との距離をグラフにして、そこから周期を求めることには成功したが、
エウロパの軌道長半径が小さくなってしまった。そして、最終的な木星の質量の結果も
参考値よりも小さくなってしまった。イオに関して測定誤差の範囲内で一致している。
まず、エウロパの周期に関してはデータが少なかったため、1周期に満たずグラフが
完成していない可能性がある。そして木星の質量が参考値よりも小さくなってしまった
事は、写真が光でぼやけていた事、測距が手動だったためステライメージでのデータ処
理に影響が出たものと考えている。
また離心率が関係していて、軌道長半径からずれてしまったと考えたが計算をした結
果、イオ、エウロパともに円の形になったので、離心率は関係していないことがわかっ
た。以下はその計算結果である。
√
b=a√ b=軌道短半径
a=軌道長半径
e=離心率
e:理科年表から引用
エウロパ:b=6.20× √1 0.009
=6.20× [km]
イオ:b=3.98× √1 0.004
=3.98× [km]
私たちが出したそれぞれの軌道長半径と等しい為、イオ、エウロパともに円軌道とい
うことが分かる。
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第6章 議論
今回ケプラーの第3法則により木星の質量を求めていったが、1 つ疑問に思った事が
ある。ケプラーの第1法則により惑星も同様に万有引力を受けるものとして楕円軌道で
あるはずが、離心率の計算により軌道短半径、軌道長半径ともに同じ値となり真円軌道
であることが分かったことについてである。その結果について、そもそも離心率はごく
わずかでも 0 でないと楕円軌道とみなすので、私たちのデータの量や解析能力によりそ
の小さな値に届かなかったのだと考えている。
最終的な結果は参考値より小さい値となったが、ケプラーの法則により木星の質量が
算出できた事でケプラーの法則への理解が深まった。
謝辞 この研究のための機材やソフトの使用方法をご教示して下さった方々、また、さまざ
まなサポートをして下さり、本当にありがとうございました。
参考文献 • 国立科学博物館
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/index.html
• ステラナビゲータ
• 理科年表
• JAXA
http://spaceinfo.jaxa.jp/