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本日の論点(案) (海外電力事業における現状と課題) 平成29年11月29日 事務局 資料2

本日の論点(案) - METI...IPP分野における現状と課題(全体俯瞰) アジア・豪州 北 米 中東・北アフリカ 欧 州 中南米 サブサハラ 市場の

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本日の論点(案)

(海外電力事業における現状と課題)

平成29年11月29日

事務局

資料2

Page 2: 本日の論点(案) - METI...IPP分野における現状と課題(全体俯瞰) アジア・豪州 北 米 中東・北アフリカ 欧 州 中南米 サブサハラ 市場の

日本の電力・ガス会社の海外IPP事業進出状況(展開地域別)

欧 州 北 米 サブサハラ 中東・北アフリカ アジア・豪州 合計(MW)

出所:各社IR資料、各種記事及びヒアリングにより整理

日本の電力・ガス会社は、東南アジア、北米を中心にIPPビジネスを展開。近年は、北米マーチャント市場や、中東、南米の案件への進出も増えてきている。

運転中 建設中 ※ 2017年11月時点の実績。数字は持ち分容量(丸紅は2017年3月末時点(運転中のみ)、Engieは2016年時点)

中南米

676

54

300

1

4,876

680

3,000

300

電源 開発

JERA

関西 電力

九州 電力

中国 電力

四国 電力

東北 電力

1,239

1,030

181

223

495

243

250

1,200

24

29

1,785

232

600

1,250

700

6,685

912

6,150

1,150

1,586

989

1,525

54

300

181

224

29

243

300

293

54

東京 ガス

964 1,495 98 320 113

大阪 ガス

53

525

1,182

525

1,235

(参考)

丸紅

(参考)

Engie 13,600

13.000

700

100

27.200 (中東のみ)

2,700

39,700

200 800

2,100

(アフリカ全土)

1,207

4,980

1,829

3,421

11,437

110,000

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現状・企業動向①

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日本の電力・ガス会社の海外IPP事業進出状況(地域・電源種別)

2

27%

54%

11%

8%

7.8GW

アジア・豪州

Total

ガス

石炭

再エネ

水力

1.7GW

中東

59%

41%

0.2GW

欧州

最も案件の多いアジア・豪州では、石炭火力が5割以上(容量ベース)を占める。北米、中南米(メキシコ)、中東ではガス火力が大半。欧州は再エネが4割を占める。

91%

4% 5%

5.9GW

北米

4.1GW

中南米

99%

1%

※ 2017年11月時点の10電力会社、電源開発、東京ガス、大阪ガスの実績合計。数字は持ち分容量(建設中含む)。北米の石炭は重油(87MW)含む。

出所:各社IR資料、各種記事及びヒアリングにより整理

<日本の電力・ガス会社の海外IPP事業に関する電源種別持分容量の総計>

現状・企業動向②

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(参考)直近1年程度の電力・ガス会社による主な海外IPP案件

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米国PJM市場、NY市場等(容量市場あり)のガス火力案件の増加が顕著だが、欧州、インド、南米における再エネ事業への参画等、進出地域・分野が多様化している。

米国 ショア天然ガス火力発電事業:72.5万kW(大阪ガ

ス20%・豊田通商31%ほか)2017年3月参画 フェアビュ―ガス火力発電事業105万kW (大阪ガ

ス50%ほか)2020年稼動予定 ペンシルベニア州ガス火力発電事業:100万kW(関

西電力30%、伊藤忠商事50%ほか)2021年稼動予定

ペンシルベニア州バーズボロガス火力発電事業:48.8万kW(東京ガス33%、双日33%ほか)2019年稼動予定

クリケットバレー・ガス火力発電事業:110万kW(JERA44%ほか)2020年稼動予定

インドネシア タンジュン・ジャティB石炭火力発電所5・6

号機拡張事業:200万kW(関西電力、住友商事ほか)2021年稼動予定

チリ ウアタコンド太陽光発電事業:10

万kW(四国電力、双日ほか)2018年稼動予定

インド 再生可能エネルギー発電事業者

(ReNew社):150万kW(JERA10%)2017年2月株式取得

アイルランド アイルランド共和国風力発電事

業:22.3万kW(関西電力24%、双日29%、東京UFJ7%ほか)2017年7月参画

(参考)ドイツ 海底送電O&M事業受託(中

部電力)2017年4月参画

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IPP分野における現状と課題(全体俯瞰) アジア・豪州 北 米 中東・北アフリカ 欧 州 中南米 サブサハラ

市場の 概 観

・ ここ数十年は旺盛な需要増が見込まれるが、脱石炭(再エネシフト)の流れもあり。 ・バングラデシュ等、新たな市場でもIPP成立事例が出てきている。 ・豪州では再エネなど公益分野でのM&Aが急増。

・市場ごと(PJM、NYSO、SPP)に状況が異なるが、再エネの普及、シェールガスによるガス価格の低下による影響が大きい。

・再エネ案件が増加。入札では価格競争が熾烈を極める。 ・サウジでは、財政難を背景として、バイクレからIPPに切替え、案件多数。競争は熾烈。案件公表からクローズまでが極めて早いのが特徴。

・市場の伸びは再エネ(洋上風力)等に集中。本年10月にEU再エネ目標30%への引き上げに言及。 ・(非注力領域である)石炭火力発電所資産の売却などの動きが活発化

・経済成長によって増加する電力需要を補うよう電源開発が見込まれる。 ・チリでは2017年にエネル他が平均32.5$/MWhという過去最低価格で落札する等、競争も激化。

・電力供給の今後の主役は石炭、水力、ガス。 ・小型の再エネIPP案件(巨額の資金調達不要)が急増。 ・法制度が未成熟で入札IPP制度がない国が多い。

経 緯 ・ 現 状

国内 電力 ガ ス 会社

・商社は1980年代後半から海外IPP事業に参入。電力会社も2000年代から商社と組んでIPP事業に資本参画を開始。 ・秦、尼、越等で石炭・ガス火力を中心に展開。

・米州市場は2000年代後半からガス火力中心に進出。 ・近年、ユーティリティの進出検討案件が増加。

・実績僅か。 ※ 商社は2000年頃からIWPP等で進出(現地電力会社、韓国企業等の組むケースが多い)。直近は三井物産がモロッコでアフリカ初のUSC案件を落札。

・再エネのみ実績あり。

・メキシコ市場は2000年代前半からガス火力中心に進出。 ・南米市場は運転中の実績はなし。 ※ 2017年に四国電力がチリで太陽光発電を落札。

・実績なし。 ※ 商社は、すでに南アフリカ等で電力アセットを有す。(ex.住友商事の南ア風力IPP)

海外勢

・中国企業が価格面に加え技術力向上を背景に勢力を拡大、ローカル企業も台頭。

・火力は国内電力会社がメインプレーヤー。近年老朽化した発電所の廃止・閉鎖が相次ぐ。 ・再エネでは環境ファンドとも競合。

・近年は域内(サウジ)のアクアパワーが中東、北アフリカを中心に勢力を拡大。欧州勢(ENGIE等)含め競争は熾烈。

・海外勢は陸続きの欧州企業が大半を占めている。

・ イベルドローラ等が90年代後半の電力セクターの改革直後に、事業者買収により進出。

・インフラが未整備の段階であるため基本的に国営電力会社が多いが、一部歴史的経緯(旧宗主国としての影響力)の深い地域への進出も見られる。

日本の 課 題

・日本が最もプレゼンスをもつ地域であるが、近年は優良案件の組成が厳しくなってきている状況。アセットの高度管理等の強みを活かす戦略が求められる。

・米国では、長期PPA付案件が減少しており、マーチャント案件への対応(PPA契約切れ案件含む)が課題。

・サウジ等におけるのIPP案件の増加はチャンスといえるが、海外勢との競合は熾烈で、価格競争力の強化、早期の案件組成能力(優先交渉権獲得からクローズまで1年を切る案件が多い)が求められる。

・洋上風力については、国内での商業運転実績はなく、まずは欧州での少額出資案件等を通じて経験を積むことが必要。

・日本企業の進出が遅れており、入札情報や案件情報へのリーチが弱いことが大きな課題。 ・他の新興国地域と同様に、事業リスクが高い。

・ハイリスク案件が多く、JICA、JBIC、NEXI等による支援が重要。 ・小型再エネIPP案件はいかに安くクイックに仕上げるかがポイント。

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現状・市場①

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東南アジアにおけるIPP分野のポテンシャル等

ミャンマー インドネシア ベトナム マレーシア

現況

・水力発電への依存、低い電化率が課題。早急な対応が求められている。 ・近年は積極的なIPP導入を進めている。 ※ 財政圧迫となる電気料金補助金削減(料金値上げ)が進む。

•2つのクラッシュプログラムを進めたが、多くの案件がうまく稼働せず。

•35GW電力プログラム(2014~2019)公表も、ジャワ島はすでに供給過剰で、政府は、ジャワ島での新たな石炭火力発電所の設立をしない方針。

•拡大する需要に対し電源の確保が喫緊の課題

•水力依存から、より安定的な石炭火力に注力。

•比較的成熟度が高く、市場の伸びも鈍化傾向。価格変動リスクが低い石炭火力の他、再エネにも注力する方針。

•電気料金の値上がりを抑制するため、効率的な発電所運営が課題。

新増設見込み (万kW/年)

40万kW/年 2015年:253万kW 2020年:453万kW

480万kW/年 2015年:4,000万kW 2020年:6,400万kW

352万kW/年 2015年:2,400万kW 2020年:4,161万kW

58万kW/年 2015年:1,746万kW 2020年:2,034万kW

IPP入札の動向 (トピックス)

• 2030年時点の最大電力が現在の4~7倍(910万kW~1,454万kW)に増加する見通しであり、政府は外国資本を中心としたIPPの活用※によりこれに対応したい方針。

※ 電気事業は国営で実施されて いるが、卸電力分野のみIPP の参入が認められている

• 日尼エネルギーフォーラムで入札条件等の課題解決を協議。

• 最近の案件では、計画外停止率5%以下、平均稼働率80%以上等の要件を規定。

• 落札済みの35GWプロジェクト17GWのうち日系コンソの関与は約9GWを占める。

• 中国企業の工期遅延問題などから、中国依存度低下を目的として2014年に入札法を改正(品質優先)、以降、中国勢の存在感は低下。

• 近年は、政府保証、兌換保証の問題あり。(今後は重要案件のみ政府保証発出か)

• 近年、IPPの国際競争入札も始まり、3件目の入札で初めて海外勢として日本コンソ(三井物産等)が落札。

• 当面火力の大型案件は期待できないものの、政府(KeTTHA)は再エネ(FIT入札制度)を中心とした日本の投資に期待

評価 (ポテンシャル)

• 大きな投資ポテンシャルを有し、また2012年の外国投資法改正等により、外国投資の要件・手続面で一定の明確化が図られたが、実際の投資段階ではいまだ多くの点でリスクが残存。

• 既に存在するいくつかの大型IPP案件についても、計画段階にとどまっているものが多い。

• ジャワ5、ジャワ7等での中国コンソの苦い経験からIPPにも技術力を追求(引く続き安価な中国IPPに魅力は感じるも)、日本勢のプレゼンスは高いが、他方で(EPCではあるが)非OECD加盟国に不利な入札条件の見直し等のネガティブな動きもあり。

• 資金不足の中、拡大する需要にどう対応するかが課題であり、全体最適な投資戦略支援(いつ何にどれだけ投資すれば良いか)へのニーズは高く、日本企業への期待も高い。

• 大幅な需要増は期待できないが、発電所の一層の質の高い発電所運営(高効率運転)に関心が高く、O&M等のサービス分野での進出にチャンスあり。(老朽化施設のリプレースニーズもあり)

(参考) 送電ロス・電化率

送電ロス:25% 電化率:38%

送電ロス:10% 電化率:93%

送電ロス:8.9% 電化率:98%

送電ロス:9.2% 電化率:99.9%

イ ン フ ラ 成 熟 度

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現状・市場②

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IPP分野におけるファイナンス面の課題(先進国/途上国別)

途上国 Conventional (共通) Renewable

資金調達

現状 一般的にはJBIC6割+市中銀行によ

る協調融資。 ポリティカルリスクについて市中銀行でのリスクテイクが厳しい

案件は、JBIC又はNEXIがポリティカルリスクに対する融資保証を行うケースもある。

JBICは2010年代から、地熱、水力、風力を中心に融資実績あり。

課題

(発電事業自体が国家事業ではなくなってきているなか)政府保証がつかないサブ・ソブリン案件に対する融資拡大。

信用力が比較的低い新興国での特別勘定の有効活用。 ※ 低所得国では、再保険も海外禁止等の規制があることが多く、レンダーの(再)保険会社の格付け条件をクリアできないことも。(サブサハラでは近年制度導入が増加)

熾烈なタリフ競争を背景にファイナンス面での一層の競争力強化が課題。

※ 地熱井掘削の資金調達など

現状

電力会社によるNEXI海外投資保険の活用は過去1案件のみ。(海外事業資金貸付保険の活用も10件に満たない)

民間保険の付保(天災、事故による工事遅延、事業中断リスク等)が融資要件。

フロンティア国における電力IPPでは、市中銀行は、NEXI特別非常危険特約(PPA契約違反を非常危険と見なしてカバー)を求める。

再エネ分野でNEXI海外事業資金貸付保険の活用案件が増加。

課題

多様化するファイナンス形態への対応。(保険料分割納付等)

政府保証がつかないサブ・ソブリン案件(尼、越、印等)への対応。(例:地場銀行を通じたツーステップローン等)

実績の少ない国(バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、サブサハラ、南米等)への取組拡大。

複雑化する案件スキーム(Gas to Power等)の対応。

制度変更リスク(FIT制度等)への対応。

※ 地熱井掘削に伴うリスク低減のための保険と制度設計等にも期待

先進国 Conventional Renewable

資金調達

現状 JBICは、先進国においても(高度技術要件を満たすことを前提

に)融資は可能であるが、これまでに実績はなく、市中銀行を中心とする協調融資が成立。※ 市中銀行による組成が難しい案件もあり。

JBICは、英国、オランダの洋上風力等で融資実績あり。 基本的には、市中銀行を中心とする協調融資が成立するケースが

多い。

課題 (米国市場等を念頭に)今後、案件が増加すると市中銀行に

よる組成に(量的な)支障が生じる可能性もあり。 JBICの融資に関しては、「高度技術要件」の制約があり、ブラウン

案件投資には支障あり。

現状 民間保険の付保(天災、事故による工事遅延、事業中断リスク等)が融資要件。 相手国(米国等)の信用リスクが低く、非常危険の付保ニーズは低い。

課題 マーチャント案件への対応(市場電力価格変動による返済原資の想定とのぶれに対するリスクヘッジ)

課題・分析①

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市場環境の成熟度の高い地域の課題 (→ 競争に勝ち抜くための課題)

市場環境の成熟度の低い地域の課題 (→ 進出する上での課題)

IPP分野におけるファイナンス面の課題(全体俯瞰)

7 従来型市場・分野

新市場・分野

新たな市場や分野等へ事業展開する上での課題や、サブソブリン案件や相手国の要件厳格化への対応、事業者側のニーズ(案件組成・ファイナンス形態の多様化)への対応、脱石炭火力の国際世論など、近年ファイナンス面の課題も多様化している。

ポリティカル要素

<課題の種別>

サブソブリン案件の増加

政府保証発出抑制(ベトナム)

兌換リスク(ベトナム)

内資優先等の制度変更(インドネシア) → 詳細次頁

マーチャント案件の投資ニーズ増

案件スキームの多様化(ex. Gas to Power)

地域国際金融・保険機関との連携 (ex.イスラム金融機関、ICIEC)

熾烈な入札タリフ競争増

運転実績・O&M能力等の適正評価

多様化するファイナンス形態

石炭火力への融資抑制の動き

金利スワップ契約解約清算金支払リスク

課題・分析②

コマーシャル要素

実績の少ない国・地域への対応

大型・高リスク案件化(長期化)

Page 9: 本日の論点(案) - METI...IPP分野における現状と課題(全体俯瞰) アジア・豪州 北 米 中東・北アフリカ 欧 州 中南米 サブサハラ 市場の

(参考)インドネシアにおける事業環境(主にファイナンス)の変化

本年度、インドネシア政府はPPA関連の新規制となる法改正を複数施行。

背景には、政府がIPP案件をPLN子会社や地場企業に実施させたい意向があるものと推測。

今後、案件組成に障壁となる可能性あり、大使館を通して政府間協議中。

8

(変更内容) ① PLNに影響する不可抗力・法令変更については、みなし電力料金の支払いなし。

② テイクオアペイの期間がローン期間のみに限定。 ③ 建設期間中の株式担保権のレンダーによる実行を実質的に制限。 ④ 完工遅延時のPPA上の遅延損害金が高額に設定。

※ 解釈の是非等、確認中

課題・分析③

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「質の高いインフラパートナーシップ」の施策拡充

サブ・ソブリン向けファイナンスの創設:これまで国に対してしか投融資できなかったが、途上国の財政規律の高まりにより増加する政府保証がつかないサブ・ソブリン向け案件に対しても、一定の条件のもと、円借款(JICA)、投融資(JBIC)、保険引受(NEXI)が可能となる。

大型・高リスク案件への対応強化 JBICのリスクマネー供給拡大:リスクを伴う海外インフラ案件向けの「特別勘定」を創設し、JBICのより積極的なリスク・テイクを

可能とする。 NEXIの機能強化:NEXI貿易保険について、保険期間を大幅に長期化(15年→30年)。また、非常危険(カントリーリス

ク)については、100%保険でカバー。

ドル建てファイナンスの拡充:1958年の円借款創設以降、初めて「ドル建て借款」を創設し、インフラ導入国の為替リスクを低減。

円借款の手続きの迅速化:手続の抜本的な見直しを行い、通常約3年かかる手続期間に関し、重要案件については手続期間を半減し、最大1年半まで、それ以外についても最大約2年まで短縮。

現地ニーズへの対応

「質の高いインフラ」の提供

「ハイスペック借款」の創設:「質の高いインフラ」と認められる案件について、譲許性の高い借款を供与し、技術力のある日本企業のインフラ輸出を後押し。

実証・テストマーケティング事業の実施:日本が優位をもつ技術等を活用した「質の高いインフラ」の一号案件をお試しで無償提供。

JICAとADBの連携強化:JICAがADBと協調し、質の高いPPPインフラ案件に投融資を行う信託基金を創設。

インフラ輸出の迅速化 スピードを重視する新興国での受注獲得に向け、いち早い案件形成が可能に。

インフラ導入国の多様なニーズに対応し、日本のインフラ輸出を加速化。

現地雇用創出や裾野産業育成などにも配慮した日本のインフラの普及を促進。

世界のインフラ獲得競争が一層激化する中、安倍総理が5月に発表した「質の高いインフラパートナーシップ」の施策を拡充し、日本企業のインフラ・システム輸出を一層推進。

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政策動向①

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(制度変更前の) 課題・問題意識

改善内容 ( )内は実施時期

(制度変更後の) 活用状況・課題

①サブ・ソブリン案件への対応強化

・政府保証のないサブ・ソブリンへの融資は従来限定的であったが、途上国における財政規律の高まり等により案件増。

・サブソブリン対応保険を創設し、サブ・ソブリン案件の積極的な支援を行う。(2016年4月実施済)

インドネシアにおける政府保証のないPLN向け融資に対して4件保険引受実績あり。政府保証のない案件は増加しており、今後も活用拡大が期待される。

②リスクマネー供給拡大

・リスクを伴う案件(信用力が比較的低い新興国等)への投資ニーズの高まり。

・JBIC「特別勘定」を創設し、JBICのより積極的なリスク・テイクを可能とする。(2016年10月実施済)

電力案件における特別勘定の活用実績はない。

③保険期間を長期化

・インフラ案件の投資資金需要が超長期化(電力事業等においては20~25年超)しており、こうしたケースへの対応が必要(現状は上限15年)。

・投資保険期間を長期化 (15年間→30年間)することで、長期のインフラ案件への我が国企業の出資を支援する。(2016年4月実施済)

投資アセットの長期保有を基本とする企業にとっては長期保険期間はメリットがあるが、一方で、アセットの回転について関心のある企業等は長期の付保に至らないケースも生じうる。(当初2年のみ付保、以後1年更新等)

④非常危険(カントリーリスク)のカバー率の拡大

・高リスク国におけるプロジェクトにおいては、金融機関のリスク管理上、数%のリスクでも融資等の支障となるケースが存在。

・非常危険(カントリーリスク)のカバー率を現状の95~97.5%から100%へ拡大することで、高リスク案件への融資等を促進する。(融:2016年4月済、投:2016年7月済)

ユーティリティ企業参画案件にて活用実績あり。今後更なる進出促進に期待。

⑤ドル建て貿易保険の創設

・現在、貿易保険契約は円建てであるが、保険対象の融資契約がドル建ての場合も多く、外貨建て(特に米ドル建て)での保険金支払い要望あり。

・ドル建て貿易保険を創設し、民間企業の負担を軽減する。(2017年10月実施済)

実施直後ではあるが、すでに足元の案件で活用の動きあり。

レンダーのメリットはもちろん、事業会社も保険料をドルで支払うことになり、出資者及びレンダーが拠出するドルを円転することなく使えるため為替リスクがなく、出資者も一定のメリットを享受。

施策拡充後の現状と課題 ①

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施策拡充後の現状と課題 ②

JBIC特別勘定の創設やNEXI非常危険のカバー率拡大等によるハイリスク案件への進出促進に期待。

他方、今後増加が見込まれるマーチャント案件への対応、熾烈な競争に勝ち抜くための施策、案件スキームやファイナンス形態の多様化への対応、及び運転実績・O&M能力等(ユーティリティ企業の強み)の適正評価の仕組みづくり等が今後の課題とされる。

赤字:今回の施策でカバーが期待されるリスク

市場環境の成熟度の高い地域の課題 (→ 競争に勝ち抜くための課題)

市場環境の成熟度の低い地域の課題 (→ 進出する上での課題)

11 従来型市場・分野

新市場・分野

ポリティカル要素

<課題の種別>

実績の少ない国・地域への対応

大型・高リスク案件化(長期化)

サブソブリン案件の増加

政府保証発出抑制(ベトナム)

兌換リスク(ベトナム)

内資優先等の制度変更(インドネシア) → 詳細は次ページ参照

マーチャント案件の投資ニーズ増

案件スキームの多様化(ex. Gas to Power)

地域国際金融・保険機関との連携 (ex.イスラム金融機関、ICIEC)

熾烈な入札タリフ競争増

運転実績・O&M能力等の適正評価

多様化するファイナンス形態

石炭火力への融資抑制の動き

金利スワップ契約解約清算金支払リスク

コマーシャル要素

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外資開放・民営化などの動向や現地ニーズを的確に把握しつつ、ユーティリティー企業・メーカー間の協業等を通じた新たなサービス展開(オペレー ション&メンテナンスとセンサー技術等のパッケージ提案等)により、案件獲得を加速化

電力分野の海外展開戦略の策定(2017年10月31日公表)

12

経済産業省では、本年10月31日に電力分野の海外展開戦略を策定し、市場動向や日本の強み、競合国の動向等を踏まえ、注力すべき重点領域を整理し、今後の海外展開の取組の方向性を示した。

具体的な戦略(政策の方向性)として、これまでに制度改善を図ってきた各種経協ツール(NEXI、JBIC、JICAによるファイナンス支援等)を迅速かつ効果的に活用すると共に、トップセールスの推進や要⼈招聘及び現地/海外企業との連携等を支援することとした。

具体的戦略(以下の取組を官民協力の下に推進)

(1)発電事業の海外進出

(5)送配電事業の海外進出

ノウハウや実績のある日本のユーティリティ企業・商社等が、国内/現地/海外企業と戦略的に連携するなどグローバル化を推進し、新たなビジネスモデル(高い品質の一気通貫サービスの提供等(Gas to Power等))を強みに案件獲得を加速し、更なるノウハウ蓄積やコスト削減を達成

日本のユーティリティ企業等が持つノウハウ(運転、環境対策、人材育成等)を、技術・マネジメント・コスト等の面で競争力ある形で発揮(IoT活用・ビッグデータ分析に基づく高度なO&M等)し、事業拡大

太陽光・風力等、電力需要の伸びが最も大きい再エネ分野においても、企業連携等を活かして競争力を強化

コスト競争力を、多方面(イニシャル・メンテナンスコスト/発電コストの削減)から強化し、シェアを拡大 Gas to Power等のパッケージ輸出においても、日本製機器の高い発電効率等の強みを活かす

先進的な技術(IGCC等)について、他国に先んじて海外案件を獲得し、量産効果によるコスト削減を目指す 高効率分野(USC)及び環境装置分野では、ニーズに応じた最適価格によるシステムを提供することで競争力を強化

地熱資源国に対して、人材育成・適地調査など多面的に支援し、シェアをさらに拡大

(2)ガス火力(主要機器の輸出)

(3)石炭火力(同上)

(4)地熱(同上)

政策動向②

Page 14: 本日の論点(案) - METI...IPP分野における現状と課題(全体俯瞰) アジア・豪州 北 米 中東・北アフリカ 欧 州 中南米 サブサハラ 市場の

ファイナンス面の今後の課題(案)

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海外IPP事業を展開する上で、「質の高いインフラパートナーシップ」のファイナンス施策の拡充は一定の効果が期待されるものの、より競争力を強化し案件を獲得するためには、引き続き以下の課題に対応する施策の検討が必要か。

- 今後の検討課題(一例)

① 案件スキームやファイナンス形態の多様化への対応

② 環境配慮型の高効率火力(高度O&M含む)に対するファイナンス面の競争力強化

③ 増加が見込まれるマーチャント案件への対応

④ (ユーティリティ企業が強み※を有する)O&M能力等の適正な評価(ex.ISO活用)

※ 売買契約期間を通したO&Mへの主体的関与による安定操業、操業リスクの低減