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剣道編

指導計画やオリエンテーションの工夫例...指導計画やオリエンテーションの工夫例 Q1 指導計画(単元計画)を立てるときには,どのようなことに留意すべきでしょうか。Q2

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剣道編

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指導計画やオリエンテーションの工夫例

Q1 指導計画(単元計画)を立てるときには,どのようなことに留意すべきでしょうか。

Q2 オリエンテーションでは、どのようなことを指導したらよいでしょうか。

を伝える剣道の理念

「剣道は,剣の理法の修練による人間形成の道である 」。

体育の授業を通して,剣道は我が国固有の文化と伝統的な考え方を知らせ,単に勝敗にこだわる

ことなく,清く・正しく・たくましい人間を育てる目標があることを知らせましょう 「剣道」と。

は,日本の武士が剣(日本刀)を使った戦いを通じ,剣の理法を自得するために歩む道を指し,剣

道を学ぶということは,この剣の理法を学ぶことを意味します。あえていえば,剣の理法の奥にあ

る武士の精神を学ぶことが重要で,剣の操法を厳しい稽古を通じて学ぶことは,そのための一つの

。手段とみられています。これが剣道の目的が「人間形成の道」と言われている理由です

を伝える剣道(武道)の歴史

古代の神話や伝記に我が国で刀剣の記述がありますが,日本独特の鎬(しのぎ)造り刀は平安時

代に造られるようになり,その後,応仁の乱の時代に剣術の各流派が成立しました。鎌倉時代にな

ると武士の訓練のために盛んに行われ,そのころの練習は何も身に付けずに木刀を使って形を中心

に行われました。そして,江戸時代に竹刀や防具が考案され,現在のように竹刀で打ち合う形にな

りました。

明治以降,剣道と呼ばれるようになり,第二次世界大戦後,一時禁止されていましたが,195

3年から学校でも行われるようになりました。1970年には国際剣道連盟も設立され世界に広く

普及し,2003年にはイギリスで第12回世界剣道選手権も開催され41カ国・地域から参加す

るなど世界中に普及しています。

時期

剣道では,暑い時期の土用稽古,寒い時期の寒稽古という練習も精神面の鍛錬として一般

的です。しかし,初心者を対象とした体育の授業では,防具を共用するため梅雨などの汗を

かきやすい暑い時期や,素足で行うことや竹刀での打突することを考慮すると寒い時期も避

けた方がよいでしょう。用具等を他校から借用する場合もあり,各校の実情に合わせ適切に

計画を立てましょう。

時数

年間10~35時間で計画することになりますが,授業時数に応じて,技術的な到達目標

を設定する必要があります。例えば防具が準備できなければ,竹刀のみで素振り・竹刀への

打ち込み,日本剣道形や基本剣道形が中心となります。また,素振り等で終わることなく,

対人的技能の練習のなかで剣道の特性に触れさせていくことが大切です。高等学校では,大

学等の入試での実技試験によく取り上げられる基本動作を最低限身に付けさせることが大切

です。さらに,剣道の魅力である対人的技能を生かし,試合を楽しむレベルまで指導できる

ようにしましょう。

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Q3 防具の数が足りないのですが,どのように工夫するとよいでしょうか。

自作の教材

竹刀や木刀を利用することが望ましいですが,ホームセンター等で購入できる棒(丸材)

などでも,素振りや日本剣道形,剣道基本形など相手を打突しない場面では利用することが

可能です。長さや太さは木刀や竹刀の長さを参考にしてカットするとよいでしょう。

(参考)

木刀 長さ 102cm

柄の直径 約2.2mm×3.0mm

竹刀 長さ 中学生114cm 高校生117cm

柄の直径 約2.5mm~3.0mm

して人数分準備する借用

近隣校(中・高校を問わず)と指導時期をずらし,互いに借用し人数分準備する。初めて

学習する者も多く,一斉指導する場面も多いため,全員分用意した方が指導の効率がよいで

しょう。また,過去に武道推進校など研究発表を行った学校には,用具等そろっていること

があるので相談してみるとよいでしょう。

小グループ学習でのローテーション

グル-プ等でのローテーションで授業を組み立てみましょう。用具の数が少ない場合に有

効であり,工夫次第で活動や運動量が十分に確保できます。しかし,グループごとに違った

活動をするため,活動内容を十分に理解させることや,生徒が自主的に活動できるような学

習の訓練が必要となります。

(例)

生徒数40名,防具10組 竹刀20本 木刀10本 の場合

A 防具着用しての学習 10名 防具 10名 木刀 10名

B 竹刀での学習 10名 防具の着脱 基本剣道形→ ↓

C 竹刀での学習 10名 竹刀 10名 竹刀 10名↑ ←

D 木刀での学習 10名 素振り 足さばき

学習形態 4グル-プ 4会場

・1時間ごとにローテーション(4時間でみんなが同じ内容を学習)

・1時間に20分×2ローテーション(2時間で全員が同じ内容を学習)

・1時間に10分×4ローテーション(1時間でみんなが同じ内容を学習)

理想としては,授業者全員の防具があり一斉に使用できることが望ましいのですが,費用

の問題から数が足りなかったり,初めはそろっていた場合でも,年数が経つと使用できない

物がでてきたりして不足している場合があります。そこで,次のような事例を参考に取り組

んでみましょう。

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防具の管理や安全について

Q4 剣道を指導する場合,安全についてどのようなことに注意するとよいでしょうか。

裸足でのすり足や,素振りによるマメなどのけがをしやすいです。

竹刀や木刀など比較的長く堅い物を使うため,前後左右に特に注意して取り扱うよう指導が必

要です。

防具の破損,竹刀の竹や革の破損に留意し,交換・修理などをする必要があります。

裸足ですり足を行うため,板目に沿って稽古することが基本です。床の状況を知るためにも,

体育館であればモップがけや,剣道場であればぞうきんがけなども安全を点検する学習の一つと

なります。また,支柱のカバーにはラインテープを貼り,ふたで足をけがしないように留意する

必要があります。

必要以上に強く打たせないことが大切です。競技者レベルでは,打ちの強さが問われることも

ありますが,授業レベルでは,相手をいたわり,必要以上に強く打たせない指導が大切です。

剣道着や袴が準備できない場合は,けがを防止するため,ジャージの長袖・長ズボンで防具を

付けるようにしましょう。

剣道はアキレス腱を切りやすい競技の一つです。準備運動を入念にすることはもちろん,無理

のない練習法で実施することが大切です。

できるだけ板目に沿って練習する 長袖・長ズボンの上に着装する

支柱カーバーはラインテープを貼る

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Q5 竹刀の点検と手入れの方法は,どのようにするとよいでしょうか。

※竹刀は4本の竹でできているため,同じ竹が傷

まないように,柄,中結や先革を回しながら使用

したり,割れた竹のみを交換し,他の竹刀の竹と

合わせて使うこともあります。

※ガラスの破片を使って竹を削ることもできます

が,安全のためにも市販されている「竹刀削り」

を用意し,できれば剣道部員や経験者により手入

れするとよいでしょう。

授業の開始時はもちろん,途中,最後と何度も

。 ,点検することが大切です 中・高校生は力も強く

竹刀が破損しやすくなります。小さなささくれで

も目に入れば大きなけがになることもありますの

, 。で 必ず授業の前後に以下の点検を行いましょう

また,予備の竹刀を必ず用意しておき,授業中

に竹刀を整備することがないようにしましょう。

竹がささくれていないか?→ささくれを削る。細く

なりすぎた竹は廃棄しましょう。

。竹が割れていないか?→割れた竹は廃棄しましょう

先革(さきかわ)が破れていないか?→少しでも破

れていたら交換しましょう。

弦(つる)がしっかり張れているか?→緩んでいた

ら張り直しましょう。

はじめと終わりには竹刀の点検

竹の手入れ

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Q6 防具などの管理は,どのようにすればよいでしょうか。

個人で用意するもの

手ぬぐい(日本手ぬぐい)

面下(あごあて)

小手下

使用するたびに各自洗濯させましょう。手ぬぐいについては必ず着用しますが,面下や小

手下については,面や小手をみんなで使用するため,衛生的にも使用することが望ましいで

しょう。それぞれ400円程度で市販されています。面下は手ぬぐいを折ったものや小手下

は薄地の手袋等で代用が可能です。

防具の干し方

・ 授業終了後,使用者は面や小手の汗を各自の手ぬぐいでよくふき,小手は手のひらの

革をよく伸ばしておくとよいでしょう。

・ 風通しのよい場所で,陰干し(皮革の部分硬くなったり色があせるため)がよいでし

ょう。

・ 除菌スプレー等も市販されているので利用するとよいでしょう (カビ,悪臭対策)。

・ 使わない時期であっても1,2回は,干して乾燥させましょう。

授業後の片付け方(横) 手のひらを伸ばす

垂の紐を伸ばして 授業後の片付け方(正面)

手ぬぐい あごあて 小手下

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剣道の所作や着衣について

Q7 剣道では,どのような礼法や所作を指導するとよいでしょうか。

正座での整列

礼(三節の礼) 座礼・立礼

神・師・友人への礼をいい,自分の存在や安全,指導者や友人への感謝の気持ちを抱かせ

ることで,人として重要なことであることを伝えましょう。

正座

授業の開始終了時のあいさつを,正座

で実施することが望ましいでしょう。生

徒個々の事情もあるため,強制はしにく

いですが,生活の中で正座をする機会が

少なくなってきた昨今,わずかな時間で

も体験させるよい機会です。

正座

礼とは相手に対して尊敬と感謝の心を抱き,互いに思いやる素直な気持ちを目に見える形で表現

することです。

立礼

座礼

立礼

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蹲踞(そんきょ)

蹲踞とは,わが国古代,貴人に対し最

上級の敬意を表すために行われていた礼

法の一つです。形だけでなく,稽古や試

合を行う相手に対しての心のもち方につ

いても指導しましょう。

左座右起(さざうき)

座るときは左足から,立つときは右足

から立つことをいいます。

竹刀は日本刀と同じように,左腰に差

し右手で抜刀することから,正座時自分

の左に刀を置き,いつでも,右足から斬

,り掛かることができるようにするために

左座右起となります。

黙想

, 。正座をして 目を閉じて呼吸を整える

授業前は気持ちを集中させ,授業後は気

持ちを落ち着かせるように指導しましょ

う。

蹲踞

前かがみにならないこと

左座右起

黙想

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竹刀の扱い

「 」 , 。刀は武士の魂 と言われていたこともあり その代わりの竹刀も大切に扱わせましょう

またいだり,竹刀の先を床に着けたり,休息時に杖代わりにしないように指導しましょう。

竹刀をまたいではいけません竹刀を杖代わりにしてはいけません

提げ刀 帯刀

左手は鍔(つば)に親指をかけ腰の位置

右手も腰の位置

提げ刀(さげとう)と帯刀(たいとう)

剣道では,練習や試合を開始する場合に,立礼の位置(9歩の間合)に進み,提げ刀の

姿勢でお互いの礼を行い,帯刀し3歩進んで開始線で竹刀を抜き合わせつつ,踞(そんき

ょ)し開始します。

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Q8 着衣にかかる時間を短縮するためには,どのようにするとよいでしょうか。

装着例 胴止金具

結びの文化ともいわれ,着装は大切なことでありますが,限られた時間の中では,スムーズ

にできないことともあります。授業者のレベルに応じて,着装の時間短縮の工夫をしましょう。

胴ひも用の金具

胴止金具(1組200円程度)を利用すると,胴ひもを結ぶ必要がなくなり時間が短縮できま

す。

ひものかわりにゴムを使用し

かぶるようにつけた例

胴ひも

結び方が蝶結びでない

ため金具を利用すると時

間は短縮できます。

面の工夫

面ひもは初心者には結びにくく,時間も

かかるため,マジックテープ等で簡単にす

ることができる。しかし,あくまで初級者

についてであり,本来の結び方を指導する

ことも大切です。

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剣道練習方法の例

Q9 剣道の授業での体ほぐしの運動には,どのようなものがあるでしょうか。

手ぬぐいチャンバラ

相手に(顔以外)手ぬぐいを使ってタッチをねらいます。30秒から1分程度。

タッチボクシング

相手の体(胸から膝)にタッチします。タッチした者はガッツポーズ,された者はその場

でダウン(腕立て伏せ2回)をして,また続けます。相打ちはお互いにダウン。30秒から

1分程度。

その他にも

面付け試合(垂,胴付け試合)

防具の着装をタイムレースやリレー形式で競います。

すり足リレー

グループ対抗ですり足(左足が右足を追い越さない)で回旋リレーで競います。一歩が大

きくならないよう何歩以上という条件を付けた方がよいでしょう。

面打ち込みリレー

グループ対抗で面の打ち込みを回旋リレーで競います。

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Q10 素振りから打突動作,基本打ちへの練習には,どのようなものがあるでしょうか。

三挙動素振り

中段から 「いち」 「 に ~ い 」 「さん」

振りかぶり 振り下ろし

三挙動素振りの留意点

・息は,振りかぶるとき吸い,振り下ろすときに吐きます。

・振り下ろしは面の高さで止めます。

・振りかぶりはゆっくり,振り下ろしは速くします。

・前後への移動は,できるだけ大きく行います。

・無駄な力を入れずにスムーズに行います。

・勢いをつけず,ゆっくりと行います。

・剣先が速く動くように肩,肘,手首を使います。

三挙動素振り

1 「いち」の号令で,中段の構えから,肩関節を中心に頭上まで振りかぶります。.

.「 」 , , 。2 にー の号令で 左足蹴り出しで右足を前に送りつつ 面の高さまで振り下ろします

3.振り下ろしと同時に,左足を基本の足型の位置に引きつけます。

4 「さん」の号令で,腕を面の高さから中段の構に戻しながら,左足を後方へ送り,右足.

を基本の足型の位置に引きつけます。

素振りから打突動作(面打ち等)へは,三挙動素振り,一挙動素振り,跳躍素振り,打突

動作と練習する方法があります。打突動作ができるようになると,基本打ち等の様々な練習

が可能になります。

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歩行に合わせた練習

左足 右足(踏み込み) 左足 右足(踏み込み)

拍手 拍手

バレーボールでのドリブル

ボールの中心を真上から打つこと

はじめは1人で 3人組

打突時の手と足を合わせるための練習法

剣道では,打突時に気剣体の一致が求められます。これは,竹刀で部位を打つと同時に,

右足を踏み込む必要がありますが,初心者には難しく足が先で竹刀が遅れることが多くみら

れます。また,素振り時には,振り下ろしと左足の引きつけを同時に行うため(三挙動の素

振り参照 ,打突時のタイミングをよく理解させましょう。)

・歩行に合わせ,右足が踏むときに手拍子をする。

・歩行に合わせ,右足を踏み込み,同時に手拍子を加える。

手の内に「さえ」を出すための練習法 1

バレーボールを利用し,竹刀でドリブルの要領でつく。

・1人や2人1組でドリブルパスをする。

・何人かで円陣を組みドリブルパスをする。

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バドミントンシャトルを打つ練習

小手の高さ 面の高さ

手の内に「さえ」を出すための練習法 2

バドミントンシャトルやソフトテニスボールやピンポン球を打つ練習。

・2人組で1人がシャトルを面の高さや小手の高さに投げる。

・投げられたシャトルを真上からたたく。

・手首を使うこと。小さく振るとうまくいく。

ピンポン球を打つ練習

小手の高さ 面の高さ

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Q11 日本剣道形は,どのように授業に取り入れればよいでしょうか。

Q12 剣道基本形とは,どのようなものですか。

日本剣道形の留意点

・相手の額に目を付ける (注視)。

・9歩の間合いで立礼し,互いに3歩前に。

・すり上げは半円を描くように。

・打太刀「ヤー」仕太刀「トー」の発声は鋭く。

とは,剣道の技能の向上がねらいですが,剣道形を繰り返し行うことで,剣道の基本日本剣道形

的な礼儀作法や技術,剣の理法を習得できます。具体的には,正しい姿勢・礼儀・技・間合・打突

の機会・気合いや発声・相手の気持ちや動きを読む勘(かん)などであり,学習指導要領に例示さ

れている基本動作や対人的技能を習得するための練習方法の一つです。本来は,太刀七本,小太刀

三本の計十本ですが,初心者に理解しやすく,実戦に近い一,二,五本目の三本から学習すること

が望ましいでしょう。また,1級審査や昇段審査でも一本目から五本目まで行うため,剣道部員で

あれば実演できることがメリットの一つです。

日本剣道形とは別に,初級者を主な対象とした があります。平成13年に全日本剣道剣道基本形

連盟から発表された比較的新しい稽古法のため,まだあまり普及していません。しかし,日本剣道

形と比較して,学習指導要領で例示されている基本動作や対人的技能で構成されていることや,日

本剣道形と違い中段の構えから技を出す点が授業での教材として優れています。形では普通木刀を

使用しますが,竹刀でも行うことができます。また面を着けて実際に打突し基本打ちとして指導す

ることも可能です。

また,全部で9本で構成されており,3本ずつ,3段階に分けて指導するのもよいでしょう。

(例)

1年生基本1~3

2年生基本4~6(1~6)

3年生基本7~9(1~9)

基本1 一本打ちの技 「正面 「小手 「胴(右胴 」※「突き」」 」 )

基本2 二・三段の技(連続技) 「小手→面」

基本3 払い技 「払い面(表 」)

基本4 引き技 (鍔ぜり合い) 「引き胴(右胴 」)

基本5 抜き技 「面抜き胴(右胴 」)

基本6 すり上げ技 「小手すり上げ面(裏 」)

基本7 出ばな技 「出ばな小手」

基本8 返し技 「面返し胴(右胴 」)

基本9 打ち落とし技 「胴(右胴)打ち落とし面」

※中学生では「突き」は禁止。

剣道形での礼から蹲踞まで

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Q13 初心者でもできる試合の方法には,どのようなものがあるでしょうか。

基本打ちで勝敗を競う判定試合以外にも,初級者が試合をするためにはルールを工夫する必要が

あります。簡易な試合を行うためには,次の様な特別なルールを設定するとよいでしょう。

・攻めと守りの試合(5本で攻めと守りを交代)

・面だけの試合

・面と胴だけの試合

審判の位置

主審の右手が赤

生徒は試合での勝敗について関心があります。しかし,通常の試合を行うには,多くの時

間を必要とします。基本判定試合であれば,早い段階での基本動作や対人的技能の習熟度を

試合形式で楽しむことができます。生徒のレベルに応じて本数や時間を設定し,勝敗につい

ては,その場で旗で勝敗を決めるものや,集計して得点を競う方法などがあります。

※旗による審判でなく得点を競う場合基本判定試合判定表

基本判定試合 気 剣 体 審査員

判定表 合 計

大きく長い気合い 打突部を正しく打 手と足の一致

氏名 つ

赤 ( ) 3 2 1 3 2 1 3 2 1 点

白 ( ) 3 2 1 3 2 1 3 2 1 点

(複数会場を設定する)基本判定会場図

◎元立ち

副審 ●赤選手

◎ ◎ ○白選手

主審

○ ●

副審 ・主審の「始め」で始め 「判定」で旗をあげる。,

・ 勝負あり」で終了する。「

審判旗のあげ方

基本判定試合内容

レベル1 面打ち 小手面打ち 胴打ち

レベル2 切り返し 打ち込み稽古

レベル3 切り返し かかり稽古

レベル4 しかけ技 応じ技

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Q14 試合で相手を打つチャンスは,どんなときでしょうか。

相手の起こり頭

打とうとするときには必ず隙ができるといわ

れます。相手の起こり頭,言い換えれば相手が

打とうとしたときがチャンスです。出ばな面,

出ばな小手(出小手)などがその技です。

相手の受けとめたところ

技を受けとめれば、構えが崩れそこに隙ができます。たとえば,小手を打って相手に受け

止められたら,素早く面を打つなどが有効です。

(打ち終わったところ)技のつきたところ

相手の打ちが終わった時に隙ができます。連続技でも三本ぐらいまでが多いので,その技

が終わった瞬間は,気が抜けたり,体勢が崩れたり,大きく呼吸をするためチャンスとなり

ます。

それ以外にも

相手が引いたところ

相手が引き技を打つなど,さがったところを打つ。

相手がいついたところ

フェイントをかけるなどして,相手がいついたところを打つ。

応じ技をつかう

相手の技を予想して,それに対する応じ技をつかう。例えば,相手の面を予想して,胴に

返す。また,小手を予想して,抜いて面を打つなどである。

剣道では,相手を打つをチャンスを「打突の機会,好機」とか 「三つの許さぬところ」,

といい,次のような教えがあります。

)出ばな小手(出小手

面を受けたところ 面を受けたところ 胴を受けたところ

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Q15 指導者は,どのようなアドバイスや声かけをしたらよいでしょうか。

正座

顎を引き背筋を伸ばそう。

肩の力を抜こう。

立礼

相手から目を離さず,15度傾けて一呼吸待って元にもどそう (互いの礼)。

頭を深く下げ,30度傾けて礼をしよう (正面や上座への礼)。

座礼

両手の親指と人差し指で三角形の中に顔を入れるように礼をしてみよう。

足(構え)

足は左右は肩幅よりやや狭く,前後は左つま先は右足踵のところするようにしよう。

左足は約30度,右足は紙一枚浮かせるようにしよう。

足の内側の線が平行になるようにしよう。

足の内側が平行に 右足は紙一枚,左足は30度

左足を開いてはいけません 左の踵をついてはいけません

剣道の授業中では,模範を示して生徒に行わせることが多いですが,剣道が身近でない生

徒にとって何が正しいのか,どこに注意すべきなのか分からないで戸惑っている生徒をみる

ことがあります。そこで,指導者は実際に生徒に活動させながら次のようなアドバイスをす

ると効果的でしょう。

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右にまげてはいけません

素振りでのアドバイス

大きく振りかぶろう。

肩を使って振りかぶろう。

竹刀の先が速く動くように振ろう。

右手の力を抜いて右手で振ろう。

真っ直ぐ振りかぶろう。

握り方

柄頭(つかがしら)いっぱいまで握ろう。

中指・薬指・小指の3本に力を入れよう。

上から見て親指以外の爪が見えないように握ろう。

左手はへそのやや下,握りこぶしひとつ離して構えよう。

握り方(上から) 握り方(横から)

竹刀は柄頭(端)までにぎる 左手はへそからこぶしひとつ離す

真っ直ぐに振りかぶる

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小手打ちでのアドバイス

強く打たないように気をつけよう。

大きく振りかぶらずに打ってみよう。

横からでなく上から打ってみよう。

太鼓をバチでたたくように,ポンと打ってみよう。

胴打ちでのアドバイス

剣先でアルファベットの の字を書くように打ってみよう。C横からではなく斜め上から打ってみよう。

面打ちでのアドバイス

手と足の踏み込みを合わせよう。

真っ直ぐに振りかぶろう。

ポンとはねるように打ってみよう。

面打ち

胴打ち 小手打ち

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中学校・高等学校用武道 剣道 試合方法とルールカード

剣道試合の仕方とルール☆☆個人戦☆☆

(1)個人試合は,三本勝負で行う。(2)三本勝負は,制限時間内に二本先取した者を勝ちとする。ただし,制限時間内に一方だ

けが一本を取った場合は,そちらを勝ちとする。(3)制限時間内に勝負が決まらないときには,延長戦を行い,先に一本取ったほうを勝ちと

する。ただし,判定・抽選によって勝敗を決めたり,引き分けにすることもできる。

☆☆団体戦☆☆

(1)1チーム五人制で行われることが多い。先鋒・次鋒・中堅・副将・大将で構成し,その順序で個人試合を行う。三人制では、先鋒・中堅・大将で行う。

(2)試合は,勝者数法が一般的で、他に勝ち抜き法がある。・勝者数法

勝った者が多いチームを勝ちとする。勝った者が同数のときは,全員の合計本数の多いチームを勝ちとするが,合計本数が同じ場合は,代表者戦によって決める。

・勝ち抜き法勝った者が次の順番の相手と続けて試合を行い,相手チーム全員を勝ち抜いたチーム

を勝ちとする。

■勝負の判定

(1)先取勝ち・試合時間内に二本先取した者を勝ちとする。・延長戦では,一本先取した者を勝ちとする。

, , , 。・試合時間内に 一方だけが一本を取ったときは そちらを勝ちとし 延長戦は行わない

■打突

(1)打突ができるのは,次の部位である。面部(面,右面,左面 ,胴部(右胴,左胴 ,小手部(右小手)突部(突き垂れ)) )

※中学生以下は禁止,高校生も授業では禁止することが望ましい。(2)有効打突(一本)とは,充実した気勢と正しい姿勢で,打突部位を竹刀の打突部で正し

く打突し,残心のあるとき,有効打突と判定され「一本」 となる。(3)次の場合の正確な打突も有効となる。

・竹刀を落としたり,倒れた者に,ただちに加えた打突。・一方が場外に出ると同時に加えた打突。

(4)次の場合は有効打突とされない。・相打ちのとき。・被打突者の剣先が相手の上体全面について,その気勢,姿勢が充実しているとき。

■反則

(1)相手や審判員に非礼な言動をしたとき 「不正用具」を使ったときには負けとなる。,(2)次の行為は反則とし二回犯すと相手に一本が与えられる。

・試合中に場外に出る。・相手の竹刀を握る。・相手に足をかける,払う。・不法に場外へ相手を押し出す,突き出す。・不当なつばぜりあいをする。・不法に相手の身体に手をかける,かかえる。・自分の竹刀を両手からはなしたとき。・故意に剣道具のない部位を打つ。

Page 22: 指導計画やオリエンテーションの工夫例...指導計画やオリエンテーションの工夫例 Q1 指導計画(単元計画)を立てるときには,どのようなことに留意すべきでしょうか。Q2

中学校・高等学校用武道 剣道 掲示資料

手ぬぐいのかぶり方床にひろげる

上の一枚を持ち上げて上の角を持って半分に

左角を持って斜め手前に折る 出ている部分を入れて完成!

反対も折る 上の一枚をつまんでかぶる

完成!!裏表をひっくり返す

頭の大きさに合わせて

折ってみよう!