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1
日本の水質総量規制日本の水質総量規制瀬戸内海での総量削減経験紹介瀬戸内海での総量削減経験紹介
財団法人地球環境戦略研究機関
北京事務所長 小柳 秀明
IGESIGES本部本部
←←IGESIGES北京事務所が入っている北京事務所が入っている中日友好環境保護中心中日友好環境保護中心
2
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)Institute for Global Environmental
Strategies1998.3.31.設立1998.3.31.設立
亜州太平洋地域におけ
る持続可能な開発の実
現を目指し、実践的かつ
革新的政策研究を行う
国際的研究機関
国内外に5つの研究拠点
1.本部(神奈川県葉山町) 2.関西研究中心(神戸市)
3.北九州事務所(北九州市) 4.Bangkok(曼谷)事務所(泰国)
5.北京事務所(2006年7月設立) (その他に東京事務所)
3
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)Institute for Global Environmental
Strategies
・職員総数 130名(包括32名外国人)
うち研究員64名(包括28名外国人)
・3年を1期とした研究項目の実施
・2007年4月から第4期の研究項目を実施中
①気候政策、②Biofuels、③森林保全、④淡水管理、⑤廃棄物・資源、⑥Business及び環境、⑦能力開発と教育、⑧項目管理Office(PMO)
4
日本の水環境管理政策回顧日本の水環境管理政策回顧
•• 主として海域における汚染事件発生を契機に主として海域における汚染事件発生を契機に水汚染を防止する法律を初めて制定水汚染を防止する法律を初めて制定
•• 19581958年年 水質保全法水質保全法
工場排水規制法工場排水規制法
19701970年年 水質汚濁防止法(全国一律規制)水質汚濁防止法(全国一律規制)
19731973年年 瀬戸内海環境保全臨時措置法瀬戸内海環境保全臨時措置法
((日本ではじめて総量規制の実施日本ではじめて総量規制の実施))
19781978年年 水質汚濁防止法改正水質汚濁防止法改正
(総量規制制度の導入)(総量規制制度の導入)
5
東京湾東京湾瀬戸内海瀬戸内海 伊勢湾伊勢湾
6
日本の閉鎖性海域=88カ所指定(水質汚濁防止法等)
瀬戸内海は最大面積(12の特色ある湾灘)
参考:渤海面積参考:渤海面積 約約95,000km295,000km2 参考:三峡ダム面積参考:三峡ダム面積 約約10,840km210,840km2 ??
7
瀬戸内海流域図瀬戸内海流域図
8
1958年、製紙会社が新
工場の操業を開始すると、黒い水が東京湾に流れ出した。
海水が変色し、魚が大量死
日本の水環境管理政策回顧日本の水環境管理政策回顧
9
怒れる漁民達の必死の行動怒れる漁民達の必死の行動
漁民達は工場に抗議したが、工場側は拒否
漁民が乱入する前に、既に警官200人が待機しており、
乱闘騒ぎに
漁民達は工場を包囲する抗議行動を行った。そして、工場との交渉が決裂すると、怒った漁民達が工場に乱入
8人が逮捕、140人が負
傷
工場を海から包囲する漁民
10
水質保全法と工場排水規制法の制定水質保全法と工場排水規制法の制定
マスコミの論調は漁民に同情的、そして衆議院でも漁民の行動を当然とし、警察の対応を批判する発言が相次いだ。
水質保全法、工場排水規制法が1958年に制定
問題点
汚濁を生じているか、汚濁生ずるおそれのある水域を指定し、規制→水域指定が汚濁の進展に追い付かない
排水基準違反に対する直罰なし(改善命令規定はある)
水質汚濁対策が行われることになったが、依然として問題が残る
11
水質汚濁防止法の制定(水質汚濁防止法の制定(19701970年)年)
(1)全国一律排水基準の設定(水域関係なし)と、都道府県による上乗せ排水基準の設定
(2)排水基準違反に対する罰則規定(直罰規定)
(3)改善命令以外に排水停止命令排水停止命令規定
(4)特定施設(汚染された水を排出する施設)(汚染された水を排出する施設)設置については届出制
■濃度規制の開始濃度規制の開始
12
瀬戸内海環境保全臨時措置法制定の背景瀬戸内海環境保全臨時措置法制定の背景
赤潮が瀬戸内海全域に広がる(1970年頃)、各地で漁業被害が発生、社会問題化、1972年には播磨灘で大規模赤潮発生(7月中旬~8月下旬まで消長を繰り返しながら)→赤潮訴訟
瀬戸内海環境保全知事・市長会議設立(1971)
瀬戸内海での水質汚濁が問題化、「瀬戸内海をきれいにする協議会」設立(1969年)
瀬戸内海を汚染から守る議員連盟結成(1972)
13
赤潮発生場所(1960~2004)
14
瀬戸内海環境保全臨時措置法の施行(1973)
(1)特定施設(汚染された水を排出する施設)の設置規制
→環境影響評価(EIA)の実施
→設置は地方政府による許可制
瀬戸内海ではじめて水質総量規制を実施することを決定
1973年 当初3年間(後に2年延長)の時限法(議員提案)→1978年に改正し恒久法(特別措置法)へ
15
瀬戸内海環境保全臨時措置法の施行(1973)
(4)自然海浜の保全
(3)栄養塩削減指導(1978年改正で導入)・当初はりんのみ、1996年から窒素も対象・現在は実質的に水質汚濁防止法総量規制へ移行
(5)海面埋立の抑制
(2)産業系COD負荷1/2カットのための水質汚濁防止法の排水基準強化(1978年改正により水質汚濁防止法総量規制基準へ)
16
瀬戸内海流域図瀬戸内海流域図
17
大阪湾大阪湾埋立状況埋立状況
18
水質総量規制制度導入の背景水質総量規制制度導入の背景(1)(1)
濃度規制の問題点
(1)上流府県等内陸部の負荷の規制の限界
(2)生活排水への配慮の不備
(3)特定事業場の水量増への対応
(4)その他(希釈水への対応)
19
瀬戸内海環境保全臨時措置法の成立1973年:3年間の時限措置(後に2年延長)
【特徴】
1.特定施設の設置許可制
2.産業系のCOD負荷を1/2にカットするための上乗せ排水基準
水質総量規制制度導入の背景水質総量規制制度導入の背景(2)(2)
20
・日当たりの排出量で規制
・排水量が比較的大きな工場・事業場を対象(500m3以上等)
1973~75年に
多くの都府県で公害防止条例等で排水負荷規制を実施
水質総量規制制度導入の背景水質総量規制制度導入の背景(3)(3)
21
•下水道・浄化槽の整備•処理の高度化
•小規模事業場対策•未規制事業場対策•農業、畜産農業等•一般家庭•底質対策等
•日平均排水量50m3 の特定事業場
•濃度×水量=負荷量•負荷量測定義務
総量削減基本方針(環境大臣)
総量削減計画 (都府県)
総量規制基準 削減指導等 事業の実施
目標年度、削減目標量、削減に関する基本的事項
生活系、産業系、その他系別の削減目標量、方途等
総量規制制度の概要(1978年法改正)
22
19611961 19681968 19721972 19791979 19841984 19891989 19941994 19991999
7070水質汚濁防止法制定
水質汚濁防止法制定
7373瀬戸内海環境保全臨時措置法
瀬戸内海環境保全臨時措置法
23
汚濁負荷量の推移及び削減目標量(COD)
CODの発生負荷量
324290
243
197167
144 128151 150 141 134 118
99 84
488
444
400365
319
261237
115
83
76
119101 97
8376
63
429
367
356
309
286
245247
89
82
72
67
5553477
413
355
286247
211193
307286 272
246221
186167
1,012
900
838
746
672
561537
65
5259
4241
38
40
36
3028
24
3735 34
2529
2722
20
95
0
200
400
600
800
1000
1200
S54 S59 H1 H6 H11 H16 H21 S54 S59 H1 H6 H11 H16 H21 S54 S59 H1 H6 H11 H16 H21
年度
COD発
生負
荷量
(トン/日
)
生活系 産業系 その他系
東京湾伊勢湾
瀬戸内海
(注)平成21年度の値は削減目標量とした
7979 8484 8989 9494 9999 04 0904 097979 8484 8989 9494 9999 04 0904 09 7979 8484 8989 9494 9999 04 0904 09
24
COD(化学的酸素要求量)の測定
5mmol-KMnO4の1滴(約0.05mL)→COD 約0.1mg/L
試料100ml 1/40N-KMnO4で酸化
汚れを分解するには、酸素が必要。汚れを人工的に酸化剤で分解してやり、消費した酸化剤の量を必要酸素量に換算
25
汚濁負荷量の推移及び削減目標量(窒素)
窒素の発生負荷量
201187 183 175 164
136 130
69 73 64 64 60 50
189 188201 205
159 152
9682
72
50
52 49
249225 223
259
117 116
43
5854
49
228226
232
233
200 197
364
333319
280254
208 199188 185
168 161143
123
666639
656
697
476 465
184
52
191
26
41
42
29 29
2439 29
221
51
67
6464
5549
4066 63
62
129
596
0
200
400
600
800
S54 S59 H1 H6 H11 H16 H21 S54 S59 H1 H6 H11 H16 H21 S54 S59 H1 H6 H11 H16 H21
年度
窒素
発生
負荷
量(トン/日
)
生活系 産業系 その他系
東京湾
伊勢湾
瀬戸内海
(注1)点線の棒グラフは、関係都府県のデータの集計(注2)平成21年度の値は削減目標量とした
7979 8484 8989 9494 9999 04 0904 09 7979 8484 8989 9494 9999 04 0904 09 7979 8484 8989 9494 9999 04 0904 09
26
汚濁負荷量の推移及び削減目標量(りん)
りんの発生負荷量
24.9
17.615.1 14.2 13.5
10.4 9.6 9.8
6.7 6.3 6.4 6.54.4
29.6
19.116.6 16.8
12.4 11.6
9.5
6.4
5.24.3
7.0
6.5
20.4
16.2
14.2 13.3
8.0 7.76.1
4.6
12.9
11.7
11.911.0
10.2 10.2
41.2
30.2
25.923.0
21.1
15.314.0
24.4
20.418.8
17.315.2
9.6
62.9
47.0
42.741.1
30.6 29.5
16.0
5.1
4.14.82.8
1.71.85.3
3.5
2.9
13.2
7.27.2
7.6
2.7
4.14.5
5.6
6.2
6.8
2.8
11.2
3.1
2.4
40.4
10.8
0
20
40
60
80
S54 S59 H1 H6 H11 H16 H21 S54 S59 H1 H6 H11 H16 H21 S54 S59 H1 H6 H11 H16 H21
年度
りん発
生負
荷量
(トン/日
)
生活系 産業系 その他系
東京湾
伊勢湾
瀬戸内海
(注1)点線の棒グラフは、関係都府県のデータの集計(注2)平成21年度の値は削減目標量とした
7979 8484 8989 9494 9999 04 0904 09 7979 8484 8989 9494 9999 04 0904 09 7979 8484 8989 9494 9999 04 0904 09
27
総量規制基準適用
特定施設以外の施設
特定施設以外の施設
特定施設 汚水等の処理施設
間接冷却水
特定排出水
排出水
特 定 事 業 場
総量規制基準の適用
排水基準(濃度基準)の適用
28
総量規制基準の遵守と汚濁負荷量の測定・記録義務
特定排出水
汚濁負荷量の測定・記録義務(法第14条第2項)
総量規制基準遵守義務(法第12条の2)
※法:水質汚濁防止法
測定手法の届出(法第14条第3項)
記録義務違反(法第33条)
総量規制基準不適合のおそれ
改善措置命令(法第13条第3項)
改善措置命令違反(法第30条)
罰則
29
総量規制基準の設定方法
L(総量規制基準) = C(濃度) × Q(水量) × 10-3
(Kg/日)• COD、窒素、りんの項目別に計算する。
• Q(水量)を業種等に区分する。
• 業種等に区分したC(濃度)、Q(水量)をさらに時期により区
分する。
・業種A LnA= ( Cno×Qno + Cni×Qni ) × 10-3
・業種B LnB = ( Cno×Qno + Cni×Qni ) × 10-3
・・・・・
・・・・・
基準値 = ΣLn(A-K)
・業種K Lnk= ( Cno×Qno + Cni×Qni ) × 10-3
30
基準表の見方
303070その他232・・・・・・・・・・・・・・・
303040畜産農業(日平均排水量1,000m3以上)
1
(1)
Cco備考
(3)
Ccj
(2)
Cci業種その他の区分
項番号
①CODの例
(1)Cco ・・・ 1980年6月30日までに増加した特定排出水量に適用
(2) Cci ・・・ 1980年7月1日から1991年6月30日までに増加した特定排出水量に適用
(3) Ccj ・・・ 1991年7月1日以降に増加した特定排出水量に適用
31
基準表の見方(つづき)
3070その他232・・・・・・・・・・・・
3040畜産農業(日平均排水量1,000m3以上)
1
(1)
Cno(Cpo)
備考
(2)
Cni(Cpi)
業種その他の区分項番号
②窒素の場合(括弧内はりんの表の形)
(1)Cno(Cpo) ・・・ 2002年9月30日までに増加した特定排出水量に適用
(2)Cni (Cpi) ・・・ 2002年10月1日以降に増加した特定排出水量に適用
32
汚濁負荷量の測定頻度
毎日測定400m3~
1日測定/30日50m3~ 100m3未満
1日測定/14日100m3~ 200m3未満
1日測定/7日200m3~ 400m3未満
測定頻度事業場日平均排水量
注:知事が例外規定を定めることができる。
33
濃度の測定方法
○知事が例外規定を定めた場合のみ
(4)簡易な水質計測器
(自動採水機能なし)
(1日3回以上採取し分析)
○知事が例外規定を定めた場合のみ
(3)指定計測法(手分析)
(1日3回以上採取し分析)
○
(1)によることが技術的に妥当でない場合、その他(1)によりがたいと認められる場合
(2)コンポジットサンプラー
(流量比例採取)
+指定計測法(手分析)
○
400m3未満400m3以上
○
事業場日平均排水量
(1)水質自動計測器
(自動採水・記録機能付き)
COD:COD計、TOC計、TOD計、UV計 等
窒素:T-N計 りん:T-P計
34
水量の測定方法
○知事が例外規定を定めた場合のみ
(3)JIS K0094の8 等簡易な計測法
○○(2)積算体積計
(記録機能付き)
○
400m3未満400m3以上
○
事業場日平均排水量
(1)流量計又は流速計
(流量積算記録機能付き)
35
総量規制の成果は上がったか?総量規制の成果は上がったか?
•• 赤潮の発生は抑制傾向赤潮の発生は抑制傾向
•• 瀬戸内海に流入する汚染負荷量(瀬戸内海に流入する汚染負荷量(COD)COD)は著しく減少し、顕著な削減効果は著しく減少し、顕著な削減効果
•• 特に産業系の削減量大特に産業系の削減量大
36
瀬戸内海での瀬戸内海での赤潮発生件数赤潮発生件数
70 72 74 76 78 80 82 84 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 9486 88 90 92 94 96 98 00 0296 98 00 02
37
19611961 19681968 19721972 19791979 19841984 19891989 19941994 19991999
7070水質汚濁防止法制定
水質汚濁防止法制定
7373瀬戸内海環境保全臨時措置法
瀬戸内海環境保全臨時措置法
38
水域面積当たり負荷量と海域のCOD
39
濃度分布の変化 東京湾COD 1984年~2002年
1982~1984 2000~2002
40
1982~19842000~2002
濃度分布の変化
瀬戸内海 COD
1984年~2002年
41
水域面積当たり負荷量と海域の窒素濃度
42
濃度分布の変化 東京湾 窒素 1984年~2002年
1982~1984 2000~2002
43
1982~1984
2000~2002
濃度分布の変化
瀬戸内海 窒素
1984年~2002年
44
水域面積当たり負荷量と海域のりん濃度
45
1982~1984 2000~2002
濃度分布の変化 東京湾 燐 1984年~2002年
46
1982~19842000~2002
濃度分布の変化
瀬戸内海 燐
1984年~2002年
47
総量規制の成果は上がったか?総量規制の成果は上がったか?
•• しかし、海域の水質に関しては、必ずししかし、海域の水質に関しては、必ずしも顕著な改善が見られていないも顕著な改善が見られていない
48
瀬戸内海における瀬戸内海におけるCODCOD濃度推移濃度推移
73 75 77 79 81 83 85 873 75 77 79 81 83 85 87 88 90 92 947 88 90 92 94 96 98 00 02 0496 98 00 02 04
49
瀬戸内海における全窒素(瀬戸内海における全窒素(TT--N)N)濃度推移濃度推移
73 75 77 79 81 83 85 873 75 77 79 81 83 85 87 88 90 92 947 88 90 92 94 96 98 00 02 0496 98 00 02 04
50
瀬戸内海における全燐(瀬戸内海における全燐(TT--P)P)濃度推移濃度推移
73 75 77 79 81 83 85 73 75 77 79 81 83 85 87 88 90 92 9487 88 90 92 94 96 98 00 02 0496 98 00 02 04
51
瀬戸内海における平均透明度の推移瀬戸内海における平均透明度の推移
73 75 77 79 81 83 85 73 75 77 79 81 83 85 87 88 90 92 9487 88 90 92 94 96 98 00 02 0496 98 00 02 04
52
総量規制の成果は上がったか?総量規制の成果は上がったか?
•• 産業系も生活系も、今後大きな削減をす産業系も生活系も、今後大きな削減をするには、限界に近づいている。るには、限界に近づいている。
53
総量規制の成果は上がったか?総量規制の成果は上がったか?
54
総量規制の成果は上がったか?総量規制の成果は上がったか?
55
今後の課題今後の課題
•• 総量抑制の堅持総量抑制の堅持
•• 更なる削減可能性の検討更なる削減可能性の検討
•• →→生活系排水対策生活系排水対策
•• →→面源対策面源対策
•• 水質以外の要素にも着目した「生態の水質以外の要素にも着目した「生態の修復」への取組修復」への取組