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これからの農業生産における 環境保全型農業の役割 2016年3月4日 国連大学サステイナビリティ高等研究所 シニア・プログラム・コーディネーター 永田 1 平成27年度北陸地域環境保全型農業推進セミナー

これからの農業生産における 環境保全型農業の役割することを目的に、世界の人々の栄養と生活水準の向上、農業生産 性の向上、農村に生活する人々の生活条件の改善、世界経済成長

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Page 1: これからの農業生産における 環境保全型農業の役割することを目的に、世界の人々の栄養と生活水準の向上、農業生産 性の向上、農村に生活する人々の生活条件の改善、世界経済成長

これからの農業生産における環境保全型農業の役割

2016年3月4日国連大学サステイナビリティ高等研究所シニア・プログラム・コーディネーター

永田 明

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平成27年度北陸地域環境保全型農業推進セミナー

Page 2: これからの農業生産における 環境保全型農業の役割することを目的に、世界の人々の栄養と生活水準の向上、農業生産 性の向上、農村に生活する人々の生活条件の改善、世界経済成長

• 持続可能な社会を目指す地球規模の取組

• これからの農業生産の目指す方向

• プランBとしての世界農業遺産(GIAHS)

• 世界農業遺産認定地域における環境保全型農業の取組

• これからの農業生産における環境保全型農業の役割

内容

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持続可能な社会を目指す地球規模の取組

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• 2015年9月25日-27日、ニューヨーク国連本部において、「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加のもと、その成果文書として、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択

• アジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画として、宣言および目標をかかげた。この目標が、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継であり、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」

• 国連に加盟するすべての国は、全会一致で採択したアジェンダをもとに、2015年から2030年までに、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など、持続可能な開発のための諸目標を達成すべく尽力

持続可能な開発目標(SDGs)

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• 目標1.あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる• 目標2. 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する• 目標3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する• 目標4 .すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する• 目標5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う• 目標6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する• 目標7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する• 目標8 .包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある

人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する• 目標9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推

進を図る• 目標10. 各国内及び各国間の不平等を是正する• 目標11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する• 目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する• 目標13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる*• 目標14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する• 目標15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、

ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する• 目標16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提

供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する• 目標17. 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

持続可能な開発目標(SDGs)

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• 2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。

• 2.2 5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。

• 2.3 2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。

• 2.4 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。

• 2.5 2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。

• 2.a 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。

• 2.b ドーハ開発ラウンドの決議に従い、すべての形態の農産物輸出補助金及び同等の効果を持つすべての輸出措置の並行的撤廃などを通じて、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。

• 2.c 食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。

目標2.飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

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• 2015年11月30日から12月13日まで、フランス・パリにおいて、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)等が開催され、最終的に12月12日に新たな法的枠組みである「パリ協定」が採択

• 「パリ協定」の内容• 世界共通の長期目標として2℃目標のみならず1.5℃への言及

• 主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること、共通かつ柔軟な方法でその実施状況を報告し、レビューを受けること

• JCM を含む市場メカニズムの活用が位置づけられたこと

• 森林等の吸収源の保全・強化の重要性、途上国の森林減少・劣化からの排出を抑制する仕組み

• 適応の長期目標の設定及び各国の適応計画プロセスと行動の実施• 先進国が引き続資金を提供すること並んで途上も自主的にすること• イノベーションの重要性が位置づけられたこと• 5年ごとに世界全体の状況を把握する仕組み• 協定の発効要件に国数及び排出量を用いるとしたこと• 「仙台防災枠組 」への言及(COP決定)

• COP22は、2016年11月にモロッコ・マラケシュで開催

国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(UNFCCC-COP21)

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• 生物多様性条約(CBD)第12回締約国会議(COP12)が,2014年10月6日-17日,平昌(韓国)にて開催され,162の締約国・及び地域,関連機関,市民団体等から約3,000人が参加

• COP12に先だって,9月29日-10月3日,カルタヘナ議定書第7回締約国会合(MOP7)が開催されるとともに,COP12と並行して,10月13日-17日,名古屋議定書の発効に伴い,名古屋議定書第1回締約国会合(MOP1)が開催

• 今回の会議では,日本が議長国を努めたCOP10において採択された愛知目標の中間レビューが行われるとともに,途上国に対する国際的な資金フローを2倍にすることに一致

• 次回のCOP13は,メキシコで開催されることで一致

生物多様性条約第12回締約国会議(CBD-COP12)

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• 2015年6月5日-13日,第39回総会(総会はFAOの最高意思決定機関として2年に1度開催)がローマのFAO本部にて開催され,191加盟国及び欧州連合(EU)のほか,国連世界食糧計画(WFP)など関係国際機関が参加

• FAOは、人々が健全で活発な生活をおくるために十分な量・質の食料への定期的アクセスを確保し、すべての人々の食料安全保障を達成することを目的に、世界の人々の栄養と生活水準の向上、農業生産性の向上、農村に生活する人々の生活条件の改善、世界経済成長への寄与を使命として活動

• FAOの5つの戦略目標は、以下のとおり• 1. 飢餓・食料不安・栄養不良の撲滅支援• 2. 農林水産業の生産性・持続性の向上• 3. 農村の貧困削減• 4. 包括的かつ効率的な農業・食料システム• 5. 災害に対する生計のリジリエンスの強化

国連食糧農業機関(FAO)第39回総会

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• 持続可能な食料と農業の原則• Improving efficiency in the use of resources is crucial to

sustainable agriculture

• Sustainability requires direct action to conserve, protect and enhance natural resources

• Agriculture that fails to protect and improve rural livelihoods, equity and social well-being is unsustainable

• Enhanced resilience of people, communities and ecosystems is key to sustainable agriculture

• Sustainable food and agriculture requires responsible and effective governance mechanisms

FAO:持続可能な食料と農業に向けてTowards Sustainable Food and Agriculture (SFA)

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これからの農業生産の目指す方向

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• 農業の構造改革や新たな需要の取り込み等を通じて農業や食品産業の成長産業化を促進するための産業政策と、構造改革を後押ししつつ農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮を促進するための地域政策を車の両輪として進めるとの観点に立ち、食料・農業・農村施策の改革を進め、若者たちが希望を持てる「強い農業」と「美しく活力ある農村」の創出を目指していく。

食料・農業・農村基本計画まえがき(抜粋)

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「プランB」としての世界農業遺産(GIAHS)

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• 世界農業遺産(GIAHS)は、2002年に南アフリカのヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(通称「ヨハネスブルグ・サミット」)でFAOが提唱

• FAOの最大の目的は、世界の人々を食料不足による飢餓から救うことであり、そのために「緑の革命」などにより、品種改良や耕地の拡大を進めて食料を増産

• これには一定の評価がなされる一方で、地域の暮らしや文化、生物多様性の維持と必ずしも調和的でないという問いも提起

• そこで、もう一つのアプローチ、「プランB」として考え出されたのが、世界農業遺産(GIAHS)

世界農業遺産(GIAHS)とは

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• Globally ・・・・・・ 世界的に

• Important・・・・・ 重要な

• Agricultural・・・・農業の

• Heritage ・・・・・・ 遺産

• Systems・・・・・・ システム

国際的には「GIAHS」と略称(一般にジアスと発音)

日本では「世界農業遺産」と公称19

世界農業遺産(GIAHS)とは

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• 世界農業遺産(GIAHS)とは、次世代に継承すべき伝統的農業・農法(林業、水産業を含む)を核として、生物多様性、文化、優れた景観等が一体となって保全・活用される世界的に重要な農業システムを、FAO(国連食糧農業機関)が認定するもの

• 2002年から、当初は途上国向けの支援策として始められたイニシアティブ(事業)

• 日本での関心も高まりつつあり、「食料・農業・農村基本計画」(平成27年3月)にも、「世界農業遺産(次世代に継承すべき世界的に重要な伝統的農業を国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する制度)の認定拡大に向けた取組・・・を推進する。」と記載

世界農業遺産(GIAHS)とは

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UNESCO世界遺産とFAO・世界農業遺産との違い

世界農業遺産

「システム」

未来志向

進化する知恵の遺産

ダイナミックな保全

世界遺産(文化遺産)

「不動産」

歴史重視

遺跡や建造物が主

現状を変えない

のが基本21

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• 世界農業遺産は、博物館に陳列されている化石のような「過去の遺物」ではない

• 世界農業遺産は、社会的・経済的、生態学的な変化に適応しながら、進化を続けている「生きている遺産」、「未来への遺産」

• このため、世界農業遺産には、地域の関係者が協力し、環境の変化に適応しながら、伝統的な知識と実践を次の世代に継承していく、「ダイナミック(動的)な保全」が重要

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世界農業遺産は「生きている遺産」

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1. 食料と生計の保障2. 生物多様性と生態系機能3. 知識システムと適応技術4. 文化、価値観、社会組織 (農文化)5. 優れた景観と土地・水資源の管理の特徴その他の記述事項• 農業システムの管理に関連する他の社会的・文化的特徴• 歴史的な重要性• 現代的な重要性• 脅威と課題• 実際的な考慮(実践的な取組等)• アクションプランのアウトライン等

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世界農業遺産の認定基準(FAO)

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世界のGIAHSサイト

• GIAHSの認定サイトは、2015年12月現在36サイト(15か国)

• 地域別には、アジアが全体の72%(日中で53%)(アフリカ8%、近東・北アフリカ14%、南米6%)

• 日本・韓国以外はすべて開発途上国に所在

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世界農業遺産認定サイト

全36サイト(2016年1月現在)

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日本の世界農業遺産(GIAHS)サイト

「クヌギ林とため池がつなぐ 国東半島・

宇佐の農林水産循環」(大分県国東)

「静岡の茶草場農法」(静岡県掛川)

「阿蘇の草原の維持と持続的農業」(熊本県阿蘇)

「能登の里山里海」(石川県能登)

「みなべ・田辺の梅システム」

(和歌山県みなべ・田辺)

「清流長良川の鮎」(岐阜県長良川)

「高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合シ

ステム」(宮崎県高千穂郷・

椎葉山)

◆ 2011年にGIAHS認定

◆ 2013年にGIAHS認定

◆ 2015年にGIAHS認定

国連大学はGIAHS認定地域5サイトの申請に協力し、平成26年度の日本GIAHS候補地の7つの申請地域にも技術的助言を提供

農水省が設置したGIAHS専門家会議が使用するGIAHS申請・認定評価基準の案を農水省に提供

全8認定地域

「トキと共生する佐渡の里山」(新潟県佐渡)

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GIAHS国際フォーラム(2011.6 中国・北京)

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• 2年に一度の世界農業遺産国際会議が、2013年5月29‐31日、石川県能登で開催(約600名が参加)

• FAOトップの事務局長ほか、各国政府、国連機関・国際機関の高官によるハイレベル・セッションも開催

• GIAHS科学委員会・運営委員会が開催され、新規認定サイトが決定

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世界農業遺産国際会議(2013.5 日本・能登)

石川県能登で開催された世界農業遺産国際会議

阿蘇、静岡、国東を含め世界各国から新たな6つのGIAHSが認定

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• GIAHS認定のためのプロセス(手順)に関するガイドライン案の作成

• GIAHSの運営を改善するためのクライテリア(認定基準)、作業手順、方法論の改定・改善の勧告

• 新しいGIAHSサイトの決定

FAO GIAHS運営・科学合同委員会(2015.12、イタリア・ローマ)

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認定証の授与左上:古田岐阜県知事右上:仁坂和歌山県知事左: 河野宮崎県知事

委員会のようす

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世界農業遺産認定地域における環境保全型農業の取組

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世界農業遺産の活用

• 農産物等の付加価値向上、ブランド力の強化

• 環境保全型農業、6次産業化などの推進

• →成果が出るまでには一定の時間が必要

• 観光(グリーン・ツーリズムなど)への活用

• 農業・農村の活性化に結びつけること

• 世界のGIAHSサイトとの知識や経験の交流

• 国際フォーラムや現地ワークショップの開催

• しかし、最も重要なことは住民の意識の変化

• 住民の自信と誇り、そして希望の回復

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2000年前の漢時代から続く、水田に放された魚(鯉)が、害虫・雑草の防除や代替肥料として農業に役立つとともに、食料にもなるなど、さまざまな役割を果たす農業システム

水田養魚(中国・浙江省)

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水田養魚(中国・浙江省)

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水田養魚(中国・浙江省)

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米や魚製品へのGIAHSの表示が、付加価値を増大「田魚干」(鯉の干物)(1斤=500g)

10元→30元

「魚家楽」(農家レストラン)が農家所得の向上に貢献

観光客 2千人(’04)

→数万人(‘12)

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トキと共生する佐渡の里山(新潟県)

1700年の稲作の歴史を背景に、江戸時代の金山開発で拓かれた水田を中心として、トキも棲める豊かな生態系を保全するため、冬期湛水や江の設置など「生きものを育む農法」と、その認証制度を推進

野生復帰したトキ 冬期湛水田

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• 朱鷺と暮らす郷づくり認証米

• 佐渡(認証米)の価格は、新潟一般コシヒカリの2割高

• 佐渡棚田協議会設立(2011)、能登・佐渡里山里海連携会議発足(2012)、世界農業遺産佐渡モニターツアー(2013)、能登・佐渡高校生交流(2013)など

• 世界農業遺産(2011年認定)、日本ジオパーク(2013年認定)、世界文化遺産(2017年登録目標)の3遺産の一体的な活用を検討

佐渡における世界農業遺産の活用

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2008 2013 伸び

農家数(戸) 256 622 2.4倍

面積(ha) 427 1,334 3.1倍

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朱鷺と暮らす郷づくり認証制度

• 台風被害をきっかけにした販売不振に対応するため、平成19年12月に発足

• 認定基準• 佐渡産のお米

• 栽培者がエコファーマー

• 農薬・化学肥料の5割以上減

• 「生きものを育む農法」

• 江の設置、冬期湛水、水路や魚道の設置、ビオトープの設置のいずれかを実施

• 年2回の生きもの調査(平成22年産米から)

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生きものを育む農法

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江 冬期湛水

魚道 ビオトープ

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生き物調査

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能登の里山里海(石川県)

2100年前まで遡れる稲作など、里山里海を中心とした生物多様性の豊かな持続的な農林水産業と、それと一体となった「あえのこと」などの伝統的な農村文化を保全・継承

あえのこと白米千枚田

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• 世界農業遺産の認定を契機に、奥能登の4つの農協が同一の基準を設けた特別栽培米

• 棚田で栽培し、農薬や化学肥料を慣行より5割以上削減するなどの基準を満たす必要があり、売り上げの一部を、地域住民と都市住民やボランティアが協力した棚田の維持・保全活動の財源に充当

• 2013年:3割減減(エコ栽培基準)開始、2014年:5割減減(特別栽培基準)開始

• 作付面積は徐々に拡大• 28ha(2012)→40ha(2013)→46ha(2014)

能登棚田米(能登棚田保全活動協議会)

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東京の有名百貨店のGIAHSフェアで販売された「能登棚田米」

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• 能登全域で定めた統一栽培指針に基づき、化学肥料・農薬の成分を慣行より3割以上削減する「エ

コ栽培」と、その生産の背景にある田んぼにも焦点を当て、機械除草や農業機械のアイドリングストップ、かかしの設置、生きもの調査など、「能登ならではの環境や生活と調和した田んぼづくり」に取り組んで丁寧に作られた能登産のコシヒカリ

• 作付面積は急速に拡大

• 53ha(2013)→2,890ha(2014)

能登米(能登米振興協議会)

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店頭販売されるようになった「能登米」

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1. 対象商品:食品(農林水産物等一次産品及びその加工食品、飲料)2. 申請者資格:農業、林業、畜産業、漁業又は製造業を営む個人、法人若し

くはこれを営む者で組織される団体で、次のすべてを満たす者1. 原則として、能登地域の生産者又は能登に事業所、製造施設を有する者2. 対象となる商品の生産、製造又は加工の全部若しくは一部を行う者3. 世界農業遺産「能登の里山里海」の価値の向上に積極的に協力できる者4. 法令による営業禁止又は営業停止等の行政処分、その他法令による処分を受

けていない者

3. 認定基準: 「能登の里山里海」で育まれ、世界農業遺産の保全・継承に資する商品で、以下に掲げるすべての要件を満たすもの

1. 能登で生産・製造された食品であること(ただし、能登地域以外で製造された商品であっても、能登地域ならではの原材料を使用し、世界農業遺産「能登の里山里海」の価値の向上と地域の活性化に資するものは可)

2. 商品の原材料・生産方法等が次の条件を満たすこと1. ア 次のいずれかを満たす能登地域ならではのもの

1. 能登で伝承され、これからも引き継いでいくべきものであること2. 能登の太陽、風、水、土地が育んだものであること

2. 商品のコンセプトが世界農業遺産「能登の里山里海」の利活用・保全に合致するもの

3. 消費者の信頼を確保する安全・安心のための取組がなされていること

未来につなげる「能登」の一品認定制度

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これからの農業生産における環境保全型農業の役割

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• 基本的には、気候変動の緩和、生物多様性の保全などグローバルな持続可能性の観点から、食料安全保障にも留意しつつ、世界の農業生産全体を環境保全的なものに転換していくことが必要• 一部の地域においては、食料安全保障の観点からも、農薬や化学肥料に依存しない環境保全型農業の方が有利な場合も存在

• 日本もグローバル社会の一員として、グローバルな観点から、農業生産における環境保全型農業の役割は不変• 同時に、日本国内の生物多様性の保全等の環境保全の観点からも、農業生産における環境保全型農業の役割は重要

グローバルな持続可能性の観点から

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• 需要拡大が見込まれる有機農産物を含め、環境保全型農業に基づく付加価値の高い農産物の生産によって農業経営の改善に貢献できる可能性

• 小規模な農業経営、女性や高齢者の力を活用した農業経営において環境保全型農業を活かせる可能性

• これらのことから、農業経営の観点からみても、農業生産における環境保全型農業の役割は重要

• 環境保全型農業による農産物に、物語性(ストーリー性)を加えてブランド化を図るなど、付加価値を向上させることが重要

農業経営の観点から

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• 環境保全型農業は、農業生産だけでなく、地域振興にも貢献できる可能性

• 農業生産における環境保全型農業の役割と、地域振興における環境保全型農業の役割を一体的にとらえることが必要

• 環境保全型農業を地域全体のブランド化につなげることが重要

地域振興の観点から

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• 気候変動への対処や生物多様性の保全など「持続可能な開発」のためのグローバルな対応が求められていること、環境保全型農業を農業経営の改善に活かせる可能性があること、また地域の活性化にも活かせる可能性があることなどから、「食料・農業・農村基本計画」にあるように、産業政策と、地域政策を車の両輪として進めるとの観点に立ち、若者たちが希望を持てる「強い農業」と「美しく活力ある農村」の創出を目指す中で、環境保全型農業をこれからの農業生産において適切に位置づけることが重要

まとめ

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ご清聴ありがとうございました

53国連大学(東京都渋谷区)