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NTT技術ジャーナル 2017.3 72 NTTドコモは₂₀₁₆年₁₁月₁₇,₁₈日 の ₂ 日間にわたり,NTTドコモおよ びNTTグループの最新の研究開発成 果 を 紹 介 す る「DOCOMO R&D Open House ₂₀₁₆」をドコモR&Dセ ンタ(神奈川県横須賀市)にて開催 しました.ここでは,本イベントの 開催模様を紹介します. 「DOCOMO R&D Open House 2016」の概要 NTTドコモでは「いつか、あた りまえになることを。」というスロー ガンを掲げ,すべてのお客さまによ り便利で快適な生活を提供するため に,さらなるイノベーションに挑ん でいます. 201₆年11月1₇,1₈日に開催された 「DOCOMO R&D Open House 201₆」 では,2020年のサービス提供開始を めざして研究開発に取り組んでいる 第5世代移動通信システム「5G」 をはじめ,AIプラットフォームや IoT(Internet of Things)に関する 技術など,最新の幅広い研究開発成 果を講演や展示を通じて紹介しまし た.今回で ₇ 回目を迎える本イベン トは,ドコモの国内外の法人のお客 さま,協力会社の皆様,IR関係者, メディア関係者,官公庁関係者,大 学 関 係 者 やNTTグ ル ー プ 社 員 の 方々など多数の皆様にご来場いただ き,前年度開催時よりも多くのお客 さまにドコモR&Dの取り組みをご 覧いただきました. 講  演 11月1₇日の基調講演では,尾上誠 蔵NTTドコモ取締役常務執行役員 R&Dイノベーション本部長が「ド コモR&Dが拓く,未来の世界」と 題して,ドコモの技術アセットを活 用したdの推進やR&D中期重点 テーマの方向性とR&Dがめざす未 来について講演を行いました.ま た,“5Gの神話と現実” というテー マで,世界の5G検討状況と方向性 について紹介したうえで,5Gは新 たなコラボレーションやビジネスの 可能性が広がるため通信業界を超 え世界中からの期待が膨らんでい る現状と,この機運を盛り上げさら なるコラボレーションに期待してい ることを示しました(写真 ₁ ). 1₈日の特別講演では,中村武宏 NTTドコモ5G推進室長が「5G導入 に向けた課題と挑戦」と題した講演 を行いました.5Gの世界動向,ス ケジュール,主要技術や共同実験に おける課題と挑戦について紹介しま した.また,2020年の5G実現に向 けた取り組みとして,サービス創出 に向けた「5Gトライアルサイト」 の紹介や,幅広いパートナー企業様 と連携して現在開発中の事例を多数 紹介しました.最後に,コネクティッ ドカーに関する検討を紹介し,5G 導入がさまざまな業界や社会の発展 につながることを紹介しました(真₂ ). 続いて,栄藤稔NTTドコモ執行 役員イノベーション統括部長が「AI とIoTによる産業最適化と社会問題 解決」と題した講演を行いました. AIとは何か,なぜ今AIなのか,今 後 5 年以内に起こるであろうインパ クトのある変革の例など,分かりや すく紹介しました.過去のAIブー 写真 ₁  尾上誠蔵R&Dイノベーション 本部長講演 docomo 情報発信 イノベーション 「DOCOMO R&D Open House 2016」開催報告 久澤 まり /高 たかやま あきら /仮 かりや ともこ /新 あらい しんご /安 あんどう ひでひろ NTTドコモ

「DOCOMO R&D Open House 2016」開催報告 · の取り組み,無線技術の実証実験, 5G基地局と端末の実現に向け実施 している伝送実験などを紹介しまし

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Page 1: 「DOCOMO R&D Open House 2016」開催報告 · の取り組み,無線技術の実証実験, 5G基地局と端末の実現に向け実施 している伝送実験などを紹介しまし

NTT技術ジャーナル 2017.372

NTTドコモは₂₀₁₆年₁₁月₁₇,₁₈日の ₂ 日間にわたり,NTTドコモおよびNTTグループの最新の研究開発成果 を 紹 介 す る「DOCOMO R&D Open House ₂₀₁₆」をドコモR&Dセンタ(神奈川県横須賀市)にて開催しました.ここでは,本イベントの開催模様を紹介します.

「DOCOMO R&D Open House 2016」の概要

NTTドコモでは「いつか、あたりまえになることを。」というスローガンを掲げ,すべてのお客さまにより便利で快適な生活を提供するために,さらなるイノベーションに挑んでいます.

201₆年11月1₇,1₈日に開催された「DOCOMO R&D Open House 201₆」では,2020年のサービス提供開始をめざして研究開発に取り組んでいる第 5 世代移動通信システム「5G」をはじめ,AIプラットフォームやIoT(Internet of Things)に関する技術など,最新の幅広い研究開発成果を講演や展示を通じて紹介しました.今回で ₇ 回目を迎える本イベントは,ドコモの国内外の法人のお客さま,協力会社の皆様,IR関係者,メディア関係者,官公庁関係者,大

学 関 係 者 やNTTグ ル ー プ 社 員 の方々など多数の皆様にご来場いただき,前年度開催時よりも多くのお客さまにドコモR&Dの取り組みをご覧いただきました.

講  演

11月1₇日の基調講演では,尾上誠蔵NTTドコモ取締役常務執行役員R&Dイノベーション本部長が「ドコモR&Dが拓く,未来の世界」と題して,ドコモの技術アセットを活用した+dの推進やR&D中期重点テーマの方向性とR&Dがめざす未来について講演を行いました.また,“5Gの神話と現実” というテーマで,世界の5G検討状況と方向性について紹介したうえで,5Gは新たなコラボレーションやビジネスの可能性が広がるため通信業界を超え世界中からの期待が膨らんでいる現状と,この機運を盛り上げさらなるコラボレーションに期待していることを示しました(写真 ₁ ).

1₈日の特別講演では,中村武宏NTTドコモ5G推進室長が「5G導入に向けた課題と挑戦」と題した講演を行いました.5Gの世界動向,スケジュール,主要技術や共同実験に

おける課題と挑戦について紹介しました.また,2020年の5G実現に向けた取り組みとして,サービス創出に向けた「5Gトライアルサイト」の紹介や,幅広いパートナー企業様と連携して現在開発中の事例を多数紹介しました.最後に,コネクティッドカーに関する検討を紹介し,5G導入がさまざまな業界や社会の発展につながることを紹介しました(写真 ₂ ).

続いて,栄藤稔NTTドコモ執行役員イノベーション統括部長が「AIとIoTによる産業最適化と社会問題解決」と題した講演を行いました.AIとは何か,なぜ今AIなのか,今後 5 年以内に起こるであろうインパクトのある変革の例など,分かりやすく紹介しました.過去のAIブー

「DOCOMO R&D Open House 2016」の概要

講  演

写真 ₁   尾上誠蔵R&Dイノベーション本部長講演

docomo

情報発信

イノベーション

「DOCOMO R&D Open House 2016」開催報告

阿あ く ざ わ

久澤 まり /高たかやま

山  陽あきら

/仮か り や

屋 朋と も こ

子 /新あ ら い

井 伸し ん ご

吾 /安あんどう

藤 英ひでひろ

浩NTTドコモ

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NTT技術ジャーナル 2017.3 73

EVENT

REPORTS

ム時代と今の決定的な違いとして,5GやIoTといった技術の進歩を挙げ,今後さらに産業や社会への応用の時代へと進んでいく,という流れを紹介しました.AIとIoTにより,これまでコンピュータと無縁だった産業での自動化・最適化が可能となり,お客さまとともにデジタル変革を進めていきたい,という方向性を示しました(写真 ₃ ).

最後に,「新しいプログラミングパラダイムとしての機械学習」と題して,株式会社Preferred Networks 最高戦略責任者 丸山宏氏による特別講演が行われました.機械学習が人工知能的な応用を超えて,IT業界全体に大きなインパクトをもたらす技術であること,すなわち機械学習により “ものづくり” パラダイムからの脱却が図れること,深層学習の限界などについてお話をいただきました(写真 ₄ ).

技 術 展 示

NTT研究所からの12件の出展を含む計₉₃件の研究開発成果について,「5G」「モバイルネットワーク」

「AIプラットフォーム(エージェント ・ ヘルスケア ・ ビッグデータ)」

「クラウド基盤」「IoT」「デバイス&インタラクション」「イノベーションチャレンジ」の ₉ つのゾーンに分け紹介し,来場者の関心を集めました(写真 ₅ ).また,パートナーの皆様とドコモR&Dの協創で「さらなる価値」をお客さま ・ 世の中へ提供する「+dの取り組み」を紹介しました.■₅Gゾーン

5Gの実用化に向けた活動と今後の展望のほか,国内外ベンダ1₃社と共同で実施している実験,および

5G時代に向けたパートナー企業との新たなサービス創出活動を紹介しました.

(1) 5G共同実験5Gネットワークを実現するため

の無線アクセス技術やアンテナ技術, 各 周 波 数 帯 に 応 じ たMassive MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術や伝搬モデル特性解析の取り組み,無線技術の実証実験,5G基地局と端末の実現に向け実施している伝送実験などを紹介しました(写真 ₆ ).

技 術 展 示

写真 ₂  中村武宏5G推進室長講演写真 ₃  栄藤稔イノベーション

統括部長講演写真 ₄  Preferred Networks

丸山宏氏講演

写真 5  展示紹介の様子

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NTT技術ジャーナル 2017.374

(2) 5G時代のサービス創出5G技術を活用したサービスの実

証実験やデモンストレーションの取り組みとして,「ストリートミュージアム 5G」や「高度化警備サービス」など,また,2015年12月に開催した「5Gアイディアコンテスト」の優秀作品をヒントにドコモがパートナー企業と共同で開発した「あとか ら お も い で カ メ ラ 」「5G FACTORY」「Free Viewpoint LIVE」のサービスプロトタイプなどを紹介しました.

屋外では,株式会社ディー ・ エヌ ・ エー(DeNA)の無人運転バス

「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」に搭載したカメラからの映像を5Gで伝送するデモンストレーションを実施し,来場者の関心を集めました

(写真 7 ).■モバイルネットワークゾーン

LTE-Advancedを効果的に展開するための無線ネットワークの構成技術である「高度化C-RAN」,故障に強いネットワーク,End-to-Endスライシングのビジョンなど,進化するモバイルネットワークに必要となる 技 術 や,M2M(Machine to Ma-chine)/IoT機器のグローバルでの利用を見据えた「フィルム型広帯域マルチバンドアンテナ」などを紹介しました.■AIプラットフォーム(エージェン

ト ・ ヘルスケア ・ ビッグデータ)ゾーン

(1) エージェントパーソナルエージェントの実現に

向けた取り組みにおいて,現在の自然対話プラットフォームの進化形として,「音声対話統合プラットフォーム」や「対話エージェントスピー

カー」「FAQシステム」「音声分析技術」などを紹介しました.また,言語の壁を超えたコミュニケーションの実現に向けた翻訳技術として,

「てがき翻訳」「翻訳業務支援ツー

ル」「インタビュー翻訳アプリ」など利用シーンに応じたサービスを紹介しました.

(2) ヘルスケアメディカル ・ ヘルスケアの領域に

写真 6  5G共同実験

写真 7  5G実験に用いた無人運転バス

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NTT技術ジャーナル 2017.3 75

EVENT

REPORTS

おける社会的課題の解決の取り組みとして,世界最大規模のライフログデータと生体データの統合解析を開始する「マタニティログ調査」,代謝異常などのセルフ健康検査や「アセトン計測による健康管理」の取り組みを紹介しました.

(₃) ビッグデータビッグデータ解析による社会イノ

ベーションの実現に向けた取り組みとして,AIを活用したリアルタイム移動需要予測など「モバイル空間統計の進化と応用」,ディープラーニング技術を活用した「画像認識技術」,位置に連動した情報配信や人流の分析可視化を実現する「ジオフェンシング ・ プラットフォーム」などを紹介しました.■クラウド基盤ゾーン

ドコモのサービスでも運用実績のあるクラウド環境として,「ドコモ ・ プライベートクラウド」「ドコモ ・ ク ラ ウ ド パ ッ ケ ー ジ ・ Cost Visualizer」を紹介しました.■IoTゾーン

広域でのドローン活用のための機体制御や映像伝送へのニーズの高まりを受けて,上空での通信品質や地上の携帯電話利用の影響など,ネットワーク全体の最適な運用検証を進める「セルラー×ドローン実証実験」や「セルラードローン プロトタイプ」「ドコモドローンラボ」などを紹介しました.

また,農業IoTなどの分野での活用に向けた「LPWA対応IoTゲートウェイ」や次世代交通インフラへの展開が期待される「スマートパーキングシステム」,市民が安心して暮らせるまちをめざした「神戸市ドコモ見守りサービス(実証実験)」な

ど,社会的課題の解決に向けた取り組みを紹介しました.■デバイス&インタラクションゾーン

近い未来に活用が見込まれる折り曲げ可能なディスプレイを用いて画面サイズを自由に変えることができるUI(User Interface)/UX(User Experience)の実現例,₃₆0°カメラで撮影した₄K映像をリアルタイムに伝送し,ヘッドマウントディスプレイで視聴することで臨場感の高いバーチャル世界の構築を実現する

「VRリアルタイム伝送」など,モバイルサービスの進化を切り拓くデバイス&インタラクション技術を紹介しました.■イノベーションチャレンジゾーン

自由な視点からのイノベーション創出をめざし,新たな価値創造のきっかけをつくる取り組みとして,社員が自ら考え,生み出したアイデアやプロトタイプを紹介しました.■+dの取り組み

ドコモが開発した「自然対話プラットフォーム」を提供した教育分野 に お け るICT化 推 進 の 事 例 や,ディープラーニングを用いた「高精度な画像分析技術」を提供した自治体におけるドローン実証プロジェクトの事例,「モバイル空間統計」を活用したマーケティング戦略の事例などを紹介しました.

Open Houseを終えて

今回は, 前年度の2.1倍となる,約2₇00名のお客さまをお迎えし,ドコモR&Dの取り組みをご覧いただきました.

お客さまからは,「今回はより一層内容が幅広く ・ 深くなっており,

時代の進歩を感じた」「最先端の技術を見ることができ将来が楽しみになった」「とても興味深い展示が多く,5Gの広がりや可能性を感じた」

「多くの企業と “協創” して,新しいサービスを開発していることを感じた.良い刺激となった」など,ドコモR&Dの将来に対する期待のお言葉を多くいただきました.Open Houseを通じ,「スマートイノベーションへの挑戦」に取り組むドコモR&Dの取り組みをご理解いただき,パートナーの皆様とともに新たな価値創出をする「+d」のきっかけをつくることができたのではないかと考えています.お客さまからのドコモR&Dに対する強い期待にこたえ,

「さらなる価値」をお客さま ・ 世の中へ提供し続けられるよう,一層努力していきます.

Open Houseを終えて

(後列左から) 新井 伸吾/ 安藤 英浩/ 高山  陽

(前列左から) 仮屋 朋子/ 阿久澤 まり

 今後も多くのお客さまに最新の研究成果をご覧いただけるように,DOCOMO R&D Open Houseを進化させていきます.皆様のご来場をお待ちしています.

◆問い合わせ先 NTTドコモ R&D戦略部 TEL ₀₃-5₁56-₁7₄₉