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がんの治療と口腔ケア ~その意義と実際
市立函館病院 歯科・歯科口腔外科
南田 秀之
オーラルケア
口唇、歯列、粘膜、舌、唾液⇒生理的機能
マウスケア
口唇、歯 舌で形成される領域
口腔ケアとは
口腔の解剖
がん対策推進基本計画(平成19年6月)
死亡原因の1位~30万人
男性の2人に1人。女性の3人に1人。
治療中140万人。新規患者50万人。
がんは「国民病」とよんでも過言ではない
胃がん、子宮がんなど横ばい。 食生活の欧米化などで、 肺がん、大腸がん、乳がん、
前立腺がんなどは増加傾向にある。
がんの種類の変化
現 状
日本は手術のレベルがトップクラスだったうえ、
胃がん等おもに手術に適したがんが多かった。
相対的に化学療法、放射線療法の提供体制が
不十分だった。
反 省
がんの治療
放射線
化学療法
手 術
放射線療法、化学療法の推進、これらを専門的に行う
医師等の育成
治療の初期段階からの緩和ケアの実施
がん登録の推進
重点的に取り組むべき課題
手術
化学療法
放射線療法
がんの治療
冠動脈性心疾患、細菌性心内膜炎
心臓周囲に形成されたアテロームからの歯周病菌の検出
糖尿病
歯周病菌の作る炎症性物質はインスリンの働きを弱める。
誤嚥性肺炎
原因菌として歯周病菌が検出される。
ビリダンス連鎖球菌・フゾバクテリウム
菌血症・敗血症
ある種の歯周病菌は血管内へ侵入できる
菌量が多い、菌量は少ないが持続的
カテーテル、人工弁などの異物
免疫力の低下
早産・低体重児出産
母に歯周病がある場合はない場合の7倍
歯周病と全身疾患の関わり
オーラルケア
口唇、歯列、粘膜、舌、唾液⇒生理的機能
マウスケア
口唇、歯 舌で形成される領域
口腔ケアとは
デンタルプラーク
「食べかす」ではなく「バリアを持つ細菌の塊」
歯垢って?
セルフケアとプロフェショナルケア
セルフケア
プロケア セルフケア
プロケア
歯磨きの3,3,3運動
1日3回、食べたら3分以内に、3分間歯を磨こう。 ⇒
その根拠は、強いて言うならステファンカーブ
1日1回 21.9%
1日2回 48.3%
1日3回 25.2%
平成23年歯科疾患実態調査 (歯磨き回数)
実は、効果的な歯磨き回数、歯磨き時間に関する明
確なエビデンスはない。ただ、プラークの形成には24
時間が必要なので1日1回は高品質な歯磨きが必要
と思われる。口腔内の細菌は就寝中に増殖するので、
就寝前と起床時の歯磨きは有効といえる。
口腔疾患の予防
口腔細菌による感染症の予防
安全で快適な療養の提供
生活の質の向上
口腔ケアの目的
悪性腫瘍手術
がん化学療法
心臓・大血管手術
頭頸部領域の放射線療法
入院時から悪化している口腔環境
カピカピ、ガピガピ、出血
当院での口腔ケアの主な対象
周術期を通じて口腔を原因とする病巣感染を防止する
生活自立度が低下している間に既存の口腔疾患を悪
化させない
悪性腫瘍の手術を受けられる患者 さんに対しては
絶飲食ー唾液の恩恵なし
水分バランスー脱水の可能性
発熱-脱水の可能性
手術後患者の口腔に関する問題点
⇒乾燥対策が重要
消化関連
消化
咀嚼の補助
溶媒(味覚)
発音・発生
潤滑
感染防御
浄化
pH緩衝
抗菌
細菌凝集
歯の再石灰化
全身関連
排泄
内分泌
水分平衡調節
唾液の機能 (1日500~1000ml)
全化学療法の約40%で口腔粘膜炎が発現し、その半数は予定された化学療法を完遂できていない。
がん化学療法を受けられる患者さんに対しては治療の完遂をまず目指す
ダメージコントロール
抗がん剤の副作用の出やすさは細胞周期に関係する。 口腔粘膜の細胞周期は7日なので、投与後数日で粘膜炎の初期症状 が発現し、7~10日ほどで完成する。
アフタ
いわゆる口内炎。特徴は円形から楕円形、境界鮮明な炎症局面で周囲に紅潮と、表面に白色から黄色の偽膜を有する。
写真:文光堂出版「口腔粘膜疾患アトラス」より引用
敗血症
転移性アフタの特徴で出血性変化を伴う。
写真:文光堂出版「口腔粘膜疾患アトラス」より引用
口唇ヘルペス
口腔カンジダ症
急性偽膜性 慢性肥厚性
Grade 2の口内炎
対象 初回化学療法を受けた166名
前期
78名
11年6月~12年9月
(16か月間)
後期
88名
12年10月~13年3月
(6か月間)
※12年10月より「セルフケア支援」を開始
※血液内科の症例は03年より「セルフケア支援」を
行っているため対象外とした
結果1
前期 後期
口腔外科受診率 55% 94%
Grade2以上の
口腔粘膜炎
21% 2%
口腔カンジダ症 9% 1%
※03年より血液内科ではGrade2以上の
口腔粘膜炎の発症は継続して5%以下
口腔粘膜炎は100%発生する
頭頸部領域の放射線治療
⇒
いかに清潔を保てる口腔を作るか
放射線障害
口腔乾燥 味覚障害 粘膜炎 顎骨壊死 う蝕
摂食・嚥下
栄養管理
皮膚・排泄管理
口腔管理⇒口腔ケアチーム
チーム医療
歯科受診の流れ
手術・化学療法等決定 歯科受診
歯周基本検査、スケーリング、PMTC、PTC (ブラッシング、含嗽などセルフケア)
必要に応じて、齲蝕処置、抜歯などの歯科治療
化学療法、放射線療法、ステロイド療法 週1回、口腔内経過観察
手術患者 手術前日にPMTC,粘膜清掃 術後ケアは2日間か抜管まで
歯科医師による口腔ケアの説明と口腔内審査、パノラマ撮影
急性期の肺炎予防
人工呼吸器関連肺炎
感染性心内膜炎のリスク低減
心臓・大血管手術
手術後の将来を見越して 先手をうつことも必要
人工呼吸を開始してから48時間以降に発症した肺炎。
人工呼吸器関連肺炎
人工呼吸患者の10~20%に発症
死亡率は30~40%
発症リスクは1日1%増加。
口腔衛生状態の改善(1~2週間、あとは本人次第)
齲歯
修復(即日~10日)
根管治療(最長2週間)
抜歯(1~2週間)
歯肉炎、歯周炎
病態、病因の認識⇒歯石の除去、セルフケアの確立(最低2週
間)
手術前、化学療法前の歯科処置と 必要な準備期間
歯肉ろう
歯槽膿瘍と歯根嚢胞
口腔ケア用カート
口腔ケア用品
口内清掃
保湿・予備洗浄
清掃補助具
デンタルフロス 歯間ブラシ
舌ブラシ
歯ブラシ ヘッド、毛の長さに 特色あり
小型・平切 複数の長さの毛を使用
ブラッシングスキルが高く 時間をかけてていねいに できる人向け。
ていねいなブラッシングは できるがややスキル不足 な人。
時間をかけてブラッシング できない人。
義歯もしっかり磨きましょう。 あなたの体の一部です。
毛先が2mm開くと、プラークの除去率が40%低下する。
4週間の使用で毛先の損耗、ブラシ繊維の硬度の低下
を認める。
歯ブラシの寿命
毛先が2mm開くと、プラークの除去率が40%低下する。
4週間の使用で毛先の損耗、ブラシ繊維の硬度の低下
を認める。
歯ブラシの寿命
⇒外観では毛先が開いたら。期間では1か月。
虫歯予防ーフッ化物
特別なプラーク除去効果ー酵素
歯周病予防ー殺菌剤、抗炎症剤
着色汚れの除去ーポリエチレングリコール
歯磨き粉
医薬品ー感染予防用の含嗽剤、フッ化物洗口液
医薬部外品-殺菌剤などの有効成分・・・「薬用」
化粧品ー潤滑剤や活性剤などの基本成分
洗口剤
セルフケアの歯磨き
軽くすすいで、磨いて、うがい
周術期の口腔ケア
保湿・予備洗浄⇒口内清掃⇒保湿
口腔ケアの実際
口腔乾燥症
病院歯科における口腔ケア
ICUでの口腔ケア風景
舌みがき
舌苔とは毛羽立った舌乳頭の表面に、脱落上皮細胞、細菌 食べかす白血球、唾液中のタンパク質が沈着して形成される。
9割はお口の問題が口臭の原因
そのうちの6割は舌苔が原因
ご静聴ありがとうございました