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IOL強膜内固定術の実際と注意点 強膜内固定術の実際と注意点 強膜内固定術の実際と注意点 強膜内固定術の実際と注意点 順天堂大学医学部附属静岡病院眼科 太田俊彦 2015年6月21日 30JSCRS学術総会9 「こか始眼内強膜内固定術」 IOL強膜内固定術 強膜内固定術 強膜内固定術 強膜内固定術 IOL支持部強膜内に固定す術式 過去の報告 過去の報告 過去の報告 過去の報告 鑷子法 Gꜳꝏ SG. ꜳ : J Cꜳꜳꜳ Rffꜳ S, 33 : 1851-1854. 2007 Aꜳꜳ A. ꜳ : J Cꜳꜳꜳ Rffꜳ S 34 : 1433-1438. 2008 小早川信一郎、他 : 眼科手術23 : 125-130. 2010 Oꜳ : G IOL. 88-96, Jꜳ Bꝏ M P. 2012 Oꜳ . ꜳ : J Cꜳꜳꜳ Rffꜳ S 40 : 2-7. 2014 注射針法 Rꝏ-A I . ꜳ : J Cꜳꜳꜳ Rffꜳ S 35 : 2051-2053. 2009 ꜳꜳ S. ꜳ : Oꜳꝏꝏ 121 : 61-66. 2014. 針法 Aꝏꝏ M. ꜳ : J Cꜳꜳꜳ Rffꜳ S 40 : 179-183. 2014 ꝏꜳ . ꜳ : E 26 : 788-791. 2012 T-fixation technique Y-fixation technique Ohta T. AAO 2013 太田俊彦:眼科 3:541-548, 2014 太田俊彦:臨床眼科 681682-1690, 2014 太田俊彦:あたしい眼科 29:153-154, 2012 太田俊彦:IOLRS 27:13-20. 2013 Ohta T:J Cataract Refract Surg 40:2-7, 2014 基本手術操作 基本手術操作 基本手術操作 基本手術操作 切開位置の決定 強膜創の作製 強膜半層切開 強膜穿孔創作製 強膜作製 強膜作製 強膜作製 強膜作製 強膜作製 強膜半層の深さで平行に 創作製しすい 平行に創作製すのが困難 24GMVR

>Þ>Ü>Ý>á º>â v>Þ>Ý ¥ IOL I+w Æ [ /¡ IOL I+w Æ [ …Ophthalmology 2014; 131: 783 -6 Akimoto et al J Cataract Refract Surg 2015; 41: 257 -61 J Cataract Refract Surg 2014;

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IOL強膜内固定術の実際と注意点強膜内固定術の実際と注意点強膜内固定術の実際と注意点強膜内固定術の実際と注意点

順天堂大学医学部附属静岡病院眼科

太田俊彦

2015年6月21日第30回JSCRS学術総会インストラクションコース9

「これから始める眼内レンズ強膜内固定術」 IOL強膜内固定術強膜内固定術強膜内固定術強膜内固定術

IOL支持部を強膜内に固定する術式

過去の報告過去の報告過去の報告過去の報告

�鑷子法

・ Gabor SG. et al : J Cataract Refract Surg, 33 : 1851-1854. 2007

・ Agarwal A. et al : J Cataract Refract Surg 34 : 1433-1438. 2008

・ 小早川信一郎、他 : 眼科手術23 : 125-130. 2010

・ Ohta T : Glued IOL. 88-96, Jaypee Brothers Med Pub. 2012

・ Ohta T. et al : J Cataract Refract Surg 40 : 2-7. 2014

�注射針法

・ Rodriguez-Agirretxe I . et al : J Cataract Refract Surg 35 :

2051-2053. 2009

・ Yamane S. et al : Ophthalmology 121 : 61-66. 2014.

�カテーテル針法

・ Akimoto M. et al : J Cataract Refract Surg 40 : 179-183. 2014

�トロカール法

・ Totan Y. et al : Eye 26 : 788-791. 2012

T-fixation technique Y-fixation technique

Ohta T. AAO 2013

太田俊彦:眼科グラフィック 3:541-548, 2014太田俊彦:臨床眼科 68:1682-1690, 2014

太田俊彦:あたらしい眼科 29:153-154, 2012太田俊彦:IOL&RS 27:13-20. 2013Ohta T:J Cataract Refract Surg 40:2-7, 2014

基本手術操作基本手術操作基本手術操作基本手術操作

�切開位置の決定

�強膜創の作製

・強膜半層切開

・強膜穿孔創作製

・強膜トンネル作製

強膜トンネル作製強膜トンネル作製強膜トンネル作製強膜トンネル作製

曲 直

強膜半層の深さで平行に

創を作製しやすい

平行に創を作製するのが困難

24GMVRナイフ

支持部抜き出し時の基本手技支持部抜き出し時の基本手技支持部抜き出し時の基本手技支持部抜き出し時の基本手技

�前方支持部抜き出し

・インジェクター法

�後方支持部抜き出し

・Push and pull hook technique

・U-shaped hook technique

・Handshake technique

支持部抜き出し用支持部抜き出し用支持部抜き出し用支持部抜き出し用鑷子鑷子鑷子鑷子

アルコン®

グリスハーバー

レボリューション® DSP

マックスグリップ硝子体鉗子 強膜内固定術用鑷子(25G)

Eye Technology

(日本アルコン)

(MEテクニカ)

当院における中期術後成績当院における中期術後成績当院における中期術後成績当院における中期術後成績

�当院にて強膜内固定術後2年以上経過

観察が可能であった75例86眼

�平均年齢 72.3歳(22~88歳)

�全例Y-fixation technique

�平均経過観察期間 29.5ヶ月

(24~38ヶ月)

太田俊彦. 臨床眼科68:1682-1690, 2014

合併症合併症合併症合併症

IOL強膜内固定術強膜内固定術強膜内固定術強膜内固定術

((((86眼)眼)眼)眼)

合併症 n %

外傷性IOL偏位 2 2.3

IOL再利用後偏位 1 1.2

IOL支持部離脱 1 1.2

一過性眼圧上昇 4 4.7

硝子体出血 3 3.5

虹彩捕獲 3 3.5

網膜剥離 1 1.2

太田俊彦. 臨床眼科68:1682-1690, 2014

術後前術後前術後前術後前眼部写真眼部写真眼部写真眼部写真

60歳 男性

術後2年

Vd=0.8×IOL (1.2×IOL×-0.25D = cyl -0.50DAx110°)

IOL強膜内固定術の利点強膜内固定術の利点強膜内固定術の利点強膜内固定術の利点

�煩雑な縫合操作が不要

�縫合糸に起因する合併症(術中の糸の

絡み、劣化、IOL偏位、落下)がみられない

�縫着用IOLが不要

�小切開手術が可能

�IOLの傾斜が少なく、術後乱視が少ない

�IOL偏位例、落下例の整復時に応用可能

�術後IOL偏心・傾斜例の整復が可能

太田俊彦:IOL&RS ; 27: 13-20. 2013

1

これから始める眼内レンズ強膜内固定術

導入期の注意点と術中術後合併症導入期の注意点と術中術後合併症導入期の注意点と術中術後合併症導入期の注意点と術中術後合併症

昭和大・藤が丘昭和大・藤が丘昭和大・藤が丘昭和大・藤が丘 西村栄一西村栄一西村栄一西村栄一

第30回日本白内障屈折矯正手術学会

インストラクションコース9 第8会場

2015年6月21日(日)

Showa University Fujigaoka Hospital

強膜内固定の報告

� Gabor SG, Pavlidis MM: J Cataract Refract Surg. 33:1851-4, 2007→Sutureless intrascleral fixation technique

� Agarwal A et al: J Cataract Refract Surg 34:1433-8, 2008→ Fibrin glue-assisted

� 小早川ら:眼科手術23: 125-130, 2010.

Showa University Fujigaoka Hospital

� Ohta T et al: J Cataract Refract Surg 40: 2-7, 2014

� Yamane S et al: Ophthalmology 121: 61-66, 2014

強膜内固定術導入時の

術式バリエーション

� 強膜弁の作製法

� 強膜トンネルの作製

� IOL支持部の操作方法

(支持部の受け渡し, 引き出し)

� 縫合の有無

� IOLの選択

Showa University Fujigaoka Hospital

Y fixation techniqueHand Shake technique

無縫合double needletechnique

Yamane S et al: Ophthalmology 2014; 121: 61-66

Ohta T et al: J Cataract Refract Surg 2014; 40: 2-7

SurgeonView

Showa University Fujigaoka Hospital

強膜弁作製強膜弁作製強膜弁作製強膜弁作製

フェザーナイフでY(T)字の強膜半層切開

を作製

替刃で強膜半層切開作製

強膜トンネル強膜トンネル強膜トンネル強膜トンネル 24GMVRナイフで作製 25~30G注射針

眼内での支持部の眼内での支持部の眼内での支持部の眼内での支持部の

受け渡し受け渡し受け渡し受け渡し

鑷子で受け渡す 鑷子で支持部を注射針内筒に挿入

眼外への支持部の眼外への支持部の眼外への支持部の眼外への支持部の

引き出し引き出し引き出し引き出し

鑷子で引き出す 注射針を眼外に引き出す

強膜弁への挿入強膜弁への挿入強膜弁への挿入強膜弁への挿入 鑷子にて挿入 鑷子にて挿入

縫合縫合縫合縫合 1~2針 無縫合

全長が長く、光学径が大きい全長が長く、光学径が大きい全長が長く、光学径が大きい全長が長く、光学径が大きい

支持部が長い支持部が長い支持部が長い支持部が長い

支持部の硬さ支持部の硬さ支持部の硬さ支持部の硬さ

硬い硬い硬い硬い :操作中折れやすい。術後:操作中折れやすい。術後:操作中折れやすい。術後:操作中折れやすい。術後IOLは安定。は安定。は安定。は安定。

柔らかい:折れにくいが、曲がることがある。柔らかい:折れにくいが、曲がることがある。柔らかい:折れにくいが、曲がることがある。柔らかい:折れにくいが、曲がることがある。

� IOLの選択

13131313

mmmmmmmm

6.5mm6.5mm6.5mm6.5mm

YA-65BB (HOYA) MA50BM (Alcon)

13131313

mmmmmmmm

6.5mm6.5mm6.5mm6.5mm

Nx-70 (参天)

13.213.213.213.2

mmmmmmmm

7.0mm7.0mm7.0mm7.0mm

Showa University Fujigaoka Hospital

強膜内固定術導入時の術式

強膜弁作製 :替刃で強膜半層切開

強膜トンネル :26G注射針

支持部受け渡し:鑷子でloopを注射針内筒に挿入

支持部引き出し:注射針を眼外に引き出す

縫合 :1~2針眼内レンズ :VA(YA)65BB (HOYA社)

ビデオビデオビデオビデオ

Showa University Fujigaoka Hospital

2

問題点

<術中>

� 注射針内筒への支持部挿入が難しい

� 強膜トンネル挿入時に支持部に負担

� 切開創の位置が限定され、PEA術中

合併症に対応しにくい

<術後>

� 術後に支持部先端が

折れた症例が存在ビデオビデオビデオビデオ

Surgeon View

� 支持部が結膜下に露出し

た症例あり。

最近の強膜内固定の術式

強膜弁作製 :フェザーナイフでT字強膜半層切開

強膜トンネル :24GMVRナイフで作製

支持部の受け渡しと引き出し

:25G硝子体鑷子でhand shaketechniqueで支持部を把持

縫合 :1~2針眼内レンズ :NX-70 (参天)

ビデオビデオビデオビデオ

Showa University Fujigaoka Hospital

問題点

<術中>

� 25G硝子体鑷子挿入時、毛様体を

引っかけ脈絡膜出血を1例生じた。

� 支持部がソフトなため、IOLを挿入し

片方支持部を引き出すと、光学部が

虹彩裏に隠れてしまうことがある。

<術後>

� 支持部が細くソフトであるためIOLのセンタリングに

若干の微調整が必要である

Showa University Fujigaoka Hospital

強膜内固定術導入期の合併症

強膜内固定術を試みた20眼

<術中合併症>

毛様溝縫着術にコンバート 3眼内訳 支持部破損 2眼

支持部が強膜創から抜けIOL落下 1眼

脈絡膜出血 1眼強膜創に硝子体鑷子挿入時

<術後合併症>

支持部結膜下露出 1眼支持部破損 1眼

(ともに支持部が硬いIOL)

術後のIOL偏心と傾斜 (EAS-1000 Nidek社)

Showa University Fujigaoka Hospital

傾斜(度) 偏心(mm)

強膜内固定 自験例 (n=11) 4.62 0.48縫着術 Yaguchi ら 4.65 0.43

Hayashi ら 6.35 0.62Durak Iら 6.09 0.67

強膜内固定導入期の注意点

� 糸によるトラブルはないが、IOL(とくに

支持部)の取り扱いには慣れを要する

� 支持部先端の約0.2~0.3mmで固定する

ため、IOLが早期から安定する

� 支持部が硬いIOLを使用した場合、眼球の

大きさ、強膜弁の作製法にもよるが、支

持部破損、支持部の結膜下露出の可能性

がある

� 多数例による長期的なデータが待たれる

2015/4/10

1

カテーテル針と30G針を用いた眼内レンズ強膜内固定術

Lock & Lead 法

大阪赤十字病院

秋元 正行

Lock & Lead 法とは

カテーテル針と30G針(27G針)だけを用いた眼内レンズ強膜内固定術カテーテル針を鉗子としてループをLock。カテーテル針をガイド針としてループをLead。#1 高額な器具の準備を必要としない。#2 介助者の介入を必要としない。#3 眼内レンズの落下を防止できる。#4 極細の長い強膜トンネルにループを埋没できる。#5 経結膜からのアプローチもそのままの手技で可能。

Lock & Lead法開発の経緯

既報の強膜内固定術では、鉗子を用いた眼内操作にややコツが必要で、介助者の積極的参加が必要とされる術式が多く、術中眼内レンズ落下のリスクもあった。

眼内レンズ縫着術は切断の許されない極細糸の使用が煩雑ではあるが、縫合糸が眼内レンズの落下を防止する。眼外法においては眼内操作はシンプルな対面通針のみであり、主たる操作は眼外で行うことが出来る。

眼内レンズ縫着術の利点を強膜内固定術に導入すべく、カテーテル針を用いる術式を考案した。

用意するもの

24Gカテーテル針(Jelco 4053, Smiths Medical, Dublin, OH) 2本27G針(ニプロ)または30G針(TSK) 2本22G針23G MVR3mmスリットナイフ20G MVRステリストリップ眼内レンズ エタニティNX70がベスト。度数がなければアバンシーAN6K,PN6*どちらのレンズもループの素材がPVDFであるため、しなやかで折曲がりにくい特徴がある。PMMAループIOLを使用する場合のコツは、8ページに解説あり。

カリパー、縫合鑷子、持針器など

Lock & Lead 法とは

眼内レンズ強膜内固定術の分類フラップを作成 トンネルを作成

ガイド針と鉗子を使用

Agirretxe IR, Osa AA, Erviti MU

J Cataract Refract Surg 2009; 35: 2051-3

Yamane S et al

Ophthalmology 2014; 131: 783-6

Akimoto et alJ Cataract Refract Surg 2015; 41: 257-61J Cataract Refract Surg 2014; 40: 179-83Takayama, Akimoto et alBrit J Ophthalmol in press

鉗子の類を2本使用

Agarwal A et alJ Cataract Refract Surg 2008; 34: 1433-8

Ota T et alJ Cataract Refract Surg 2014; 40: 2-7

小早川信一郎 他眼科手術 2010; 23: 125-30

Gabor SGB, Pavlidis MMJ Cataract Refract Surg 2007; 33: 1851-4

Saleh M, et alJ Cataract Refract Surg 2013; 39: 81-6

Trocherを用いて前半後半を分けない方法

Totan Y, Karadag REye 2012; 26: 788-91

Feistmann JA et alRetina 2014; 34: 812-5

眼内レンズ強膜内固定術

どのような固定法が望ましいのか?固定強度について

介助者に頼らず、鉗子を使わず、IOL落下を防止しながら、ループを導出する方法は?

カテーテル針なら、誘導針であり、固定鉗子にもなる。

トンネルの長さが同じなら、より細いトンネルが望ましい。

Akimoto et al, JCRS 2015

手術前半 手術後半

小孔の状態:別角度

手術前半: カテーテル針の加工のコツ

24Gカテーテル針に小孔を作成することで、ガイド針兼鉗子としても利用できる。

スリットナイフを彫刻刀の様に用いて小孔を作成する。ナイフは上ベベルが両ベベルより使い易い。演者らは、通常手術では2.4mm両ベベルナイフを使用しているが、強膜内固定の時は、もっぱら3.0mm上ベベルナイフを使用している。

先行ループ用は、外筒先端から約3.0mmをスリット全幅を目安に計測し先端から根元に向かってU字に切込み、改めてノッチが出来な

いよう十分に離れた根元から先端に向かってU字に切込みをつないで、楕円形とする。後行ループ用は、スリット幅の半分を目安に約1.5mmの小孔を作成する。小孔の縦長は、2mm程度。長すぎると、内針出し入れ時に外筒先端が不安定となる。

写真のように左手人差し指をカテーテル針下に置くと、小孔作成時の安定が良い。カテーテル針を曲げる位置は、先行ループ用は、根元から5-6mm程度の所で約45度曲げる。後行ループ用は中央付近で約15度曲げる。*外筒は柔らかいが針基は硬いので、針基が曲げる位置を越える事は無い。曲げ位置を根元から5-6mmとすることでループ差し込み作業中の内針の引き抜きすぎを防止できる。

スリットナイフで3.0mmを計測

先端から根元へ向かって外筒をU字に削る。

根元から先端へ向かって外筒をU字に削り、楕円形の穴を作成する。

持針器で45度程度に曲げる

完成図(先行ループ用)*中央で曲がっているが、曲げ位置は根元から5-6mmがべスト

手術前半: カテーテル針使用のコツ1

24Gカテーテル針の24Gとは内針の外径であり、外筒の外径は22Gの太さである。従って、強膜穿刺創作成には22G針を使用するのがちょうど良い。

強角膜創を中から外へ穿通するには、22G針または縫合鑷子などをガイドにする。針を用いる場合は、強角膜創と異なる部分に穿刺しないよう横に

振って確かめながら前房内へ挿入する。

カテーテル針は小孔が眼外に出るまでしっかり差し込む。内針を緩めて小孔が利用できるようにするが、抜きすぎると左手片手で再度差し込むのが難しくなる。

加工のコツに記したように針基から5-6mm程度の所で曲げてあると内針が抜けすぎず、後の作業がし易くなる。先行ループは外筒のから挿入、横小孔から2.5-3mm程度露出させる。露出させた部分は、内針を戻すときに引き戻される。

摩擦抵抗が症例で異なるのでよく見ながら作業する。ループが小孔から露出しないようにすることが必要だが挟み込みが短いと固定が弱いので、よくコントロールすること。手術のポイントの一つ。軽く引っ張って抜けないことを確認しておく。

稀に、挟み込みが出来ているように見えても緩い場合がある。すぐ抜けるような場合は、新しいカテーテル針を使用することがより安全。

先行ループが固定出来たら、カテーテル針外筒を左手で持ちながら横穴が露出しないくらいの場所まで引き抜くと同時に、インジェクター先端を強角膜創に右手で差し込む。ループには多少の遊びがあるため、動作としては、インジェクターの先端を差し込むことが優先する。*アバンシィ-メドショットの場合は上下反転させて持つことで、ループをカテーテル針に挿入しやすい向きとなる。IOL挿入時には時計回りにメドショットを上下反転させる。逆時計回りに反転させるとループが捻れるので、IOL挿入後にIOLを眼内で反転させる必要がでてくる。*外筒としたのは、ループ固定後は内針が緩むとループ脱落するので細心の注意が必要なため。

カテーテル針の針基をステリストリップで固定する。テープ固定は右眼の場合は必ずしも必要ではない。

カテーテル針を眼外に引出しすぎると、とくに左眼においてカテーテル針の落下で急なIOLの挙動が発生する可能性がある。カテーテル針が強膜穿刺部に刺さっている状態の方が操作し易い。

万一引きすぎると、先行ループを引出すぎてしまった場合、カテーテル針を眼内に戻して固定してから後行ループ処理を行うもしくは、後述する、シリコンスリーブを用いた方法で、ループの迷入を防止して手術を継続する。

カテーテル針を穿刺縫合鑷子で強角膜創へ誘導

カテーテル針横小孔が完全に露出するまで差し込む

内針を緩め、眼内レンズ先行ループ先端が小孔から2-3mm露出するまで挿入

内針の戻して先行ループを固定

眼内レンズを挿入

2015/4/10

2

手術前半: カテーテル針使用のコツ2

角膜輪部(4-5時くらい)に角膜ポートを20G MVRで作成。角膜ポートから後行ループ用カテーテル針を刺入。先行ループの時と同様に強角膜創へ穿通して、横穴が露出するまで押し込む。

カテーテル針横穴が眼球上方を向くようにしておく。カテーテル針の内針を引き緩めて横穴を露出させる。後行ループを横穴からカテーテル針先端に向かって挿入。

カテーテル針内針を再度込むと後行ループが巻き込まれる。カテーテル針先端からループが露出しないように調整しながら内針を押し込み固定する。(22Gで受ける場合はループ先端が露出していてもそれほど問題にはならない)22G針を右強膜穿刺部位から瞳孔下まで刺入する。

後行ループを固定したカテーテル針を一体のまま前房内に引き戻し、針をガイドに右強膜創から眼外へ穿通し、横穴が露出するまで押し込む。*24Gカテーテル針を22G針で対面通針するコツは針先が90度の関係となるようにするとしっかり固定できる。22Gをベベルアップ。24Gカテーテル針を横ベベルで行っている。カテーテル針針先が見えたら、22G針を外し、鑷子で強膜穿刺部位周囲を押すことで、カテーテル針が眼内から眼外へ出るのを助ける。*24G-22G対面通針は24G-25G対面通針よりやり易い。

後行ループ用カテーテル針内針を緩める。縫合鑷子または針で後行ループ先端をカテーテル針外筒から外しフリーとして、縫合鑷子でしっかり把持。(内針を緩めた後、外筒だけをさらに押し入れると、ループを確保しやすくなる)

カテーテル針外筒・内針をそのまま引き抜く。

固定に用いたテープはそのままに、先行ループ用カテーテル針の外筒部分をゆっくりと引き出す。強膜穿刺部創口サイズが狭い場合は、横穴が引っかかってしまうことがあるので注意。その場合は、強膜を片手で把持、カテーテル針外筒を片手で把持して慎重に引き抜く。カテーテル針が露出されればすなわち先行ループが露出されている。カテーテル針内針を引き抜いてループの固定を外す。ループがカテーテル針から外れてから固定テープを外す。*テープを外す時、思いがけない力が掛かってしまうことがあるので、後行ループ迷入のリスクがある。どうしてもテープを先に外したいときは、テープを切る方がよい。内針が先に緩むと先行ループが迷入することがあるので、先行ループが眼外に露出するまではカテーテル針外筒の先の方を持つように操作する。

角膜ポートから後行ループ用カテーテル針を挿入

後行ループを横小孔から先端へ挿入

穿刺した針をガイドにカテーテル針を穿通

内針の緩めて後行ループを外し、カテーテル針を抜去する

先行ループ用カテーテル針外筒を持って、先行ループを導出

内針を緩めて、先行ループを外す

手術後半:ガイド針によるHaptic挿入のコツ

ガイド針の準備30G肉薄針(TSK)のべベル長は約1.5mm。これを目安に、内べベルで先端から4mm程度で曲げる。

初心者は27G針から始めるのが良い。強膜を薄く掬うにはコツが必要。

30G針の取扱いは10-0PAIRPAKの長針のそれに似ているので、縫着術経験者は長針使用時の注意点を思い出すと参考になる。

トンネルのデザイン

対面通針することで、確実なトンネルデザイン(強膜穿刺創から3mm程度)と、ガイド針(ループ挿入の補助)の確保を行う。ループが透けない良い深さのトンネルを狙うには、強膜穿刺創から刺入するのがベスト。

初心者は強膜穿刺創から少し離して穿刺する。ループが強膜から露出した部分は、ループに沿ってメスで強膜をなぞるとループは強膜内に埋没していく。

2本の強膜半層放射状切開を加えて、その間で通針すれば、深さの確保と強膜把持(固定)がしやすい。

対面通針、ループ挿入のコツ縫着における対面通針と異なるのは同じ大きさの針で行うこと。べベルを互いに90度ずらすと容易になる。

針の把持は、曲げた根元近くを持針器で持つこと。

押し出される最初の針は押し出されれるまで触らず、絶対に引っ張らない。ループは挿入量を決めてその根元よりで持つ。縫合鑷子より持針器の方が安定する。

ループはU字に曲げるが、PVDFのしなやかさを信じてしっかり操作する方が確実性が増す。*PMMA素材のものではU字に曲げると傷むので、強膜トンネルを穿刺創から離して作成しておく。

スリットナイフで強膜半層切開を作成

1本目の針で強膜トンネルを作成

2本目の針で1本目の針を押し出す

2本目の針をガイドにループを挿入

ガイド針を引き抜きループを埋没

応用編:経結膜法のコツ

本手技に慣れると、経結膜的にほぼ同様のことが出来る。

経結膜で行う場合のポイントは以下の通りである。

手術前半:

強膜穿刺創の視認性の確保。出血や結膜浮腫がある場合は、少しだけでも結膜切開をした方が安全(とくに導入初期)。強膜穿刺して時間が経つと浮腫などで穿刺部が分かりにくくなるので、穿刺直後にカテーテル針が穿刺できるよう準備しておく。

綿棒によって上から押さえることは術野確認・確保に非常に有用。後行ループ用強膜穿刺創は、後行ループをカテーテル針にLockして眼内に戻して眼圧を確保してから22G針で穿刺するのが一番やり易い。

そのまま22G針でカテーテル針を導出できる。

手術後半:ループ埋没用トンネル作成時に強膜を把持することができないので、メインテナーやトロカールを把持したり、角膜ポートを利用したりする。

トンネル作成は、強膜穿刺創から離すことが困難となるので、結膜切開する方法で十分な術式への理解と経験が必要。

角膜輪部から1.5mm離して、22G針で穿刺

強膜創を閉じて、眼圧を確保してから22G針を穿刺

トロッカーを把持して眼球を固定

綿棒による術野確保

ループ迷入防止のコツ

先行ループを引き出し過ぎてしまった場合のもう一つのリカバリ法はシリコンゴムで先行ループを眼外に固定しておく方法である。シリコンスリーブから2mm角程度の小片を作製し27Gまたは30G針で串刺しにする。

針穴に先行ループを挿入してからシリコンスリーブ小片をループの方に移動させて針を抜く。シリコンスリーブがループ迷入を防止する。

余ったスリーブに針を刺して小片を切り出す。

ループを針に挿入する

スリーブ小片を把持 針を引き抜く スリーブ片がループ迷入を防止

参考文献1. Using catheter needles to deliver an intraocular lens for intrascleral fixation.Akimoto M, Taguchi H, Takahashi T.J Cataract Refract Surg. 2014 Feb;40(2):179-83.

2. Sutureless intrascleral posterior chamber intraocular lens fixation.Karadag R, Bayramlar H, Sari U.J Cataract Refract Surg. 2014 May;40(5):853-4.

3. Reply.Akimoto M, Taguchi H, Takahashi T.J Cataract Refract Surg. 2014 May;40(5):854-5.

4. Intrascleral fixation technique using catheter needles and 30-gauge ultrathin needles: Lock-and-lead technique.Akimoto M, Taguchi H, Takayama K, Nakagawa S, Hiroi K.J Cataract Refract Surg. 2015 Feb;41(2):257-61.

5. Transconjunctival sutureless intrascleral intraocular lens fixation using intrascleral tunnels guided with catheter and 30-gauge needles.Takayama K, Akimoto M, Taguchi H, Nakagawa S, Hiroi K. Br J Ophthalmol. In press

問い合わせ先:大阪赤十字病院 眼科 秋元 正行[email protected]

これから始める眼内レンズ強膜内固定術これから始める眼内レンズ強膜内固定術これから始める眼内レンズ強膜内固定術これから始める眼内レンズ強膜内固定術

IOLの選択と手術練習の選択と手術練習の選択と手術練習の選択と手術練習

順天堂大学医学部附属静岡病院眼科

松崎有修

第30回JSCRS学術総会インストラクションコース9 2015年6月21日

「これから始める眼内レンズ強膜内固定術」 IOLの固定位置の固定位置の固定位置の固定位置

毛様溝縫着

強膜内固定

毛様体扁平部縫着

13mm必要

17mm必要

16mm必要

強膜内固定術に適した強膜内固定術に適した強膜内固定術に適した強膜内固定術に適したIOLの条件の条件の条件の条件

�全長・支持部がともに長い

�光学径が大きい

�球面IOL

【目的】

【検証方法】

机太郎マルチラボ(株式会社 Frontier Vision製)に輪部より16.0mmの位置に

強膜内固定し、強膜から出る支持部の長さを測定する

①Kitaroに16.0mm幅で強膜固定

②支持部の長さ(X値、Y値)を測定顕

微鏡にて測定

③X値、Y値より支持部長さを計算

Length = √(X2+Y2)

16.0mm

X

Y

パラフィルム厚みパラフィルム厚みパラフィルム厚みパラフィルム厚み ::::0.12mm全長全長全長全長 光学径光学径光学径光学径 N数N数N数N数

VA-70AD 13 7

3

YA-65BB 13 6.5

YA-60BBR 12.5 6

ZA9003 (テクニス)(テクニス)(テクニス)(テクニス) 13 6

AR40e(センサー)(センサー)(センサー)(センサー) 13 6

AN6K(アバンシィ)アバンシィ)アバンシィ)アバンシィ) 13 6

nxnxnxnx----60606060(エタニティー(エタニティー(エタニティー(エタニティー 60)))) 12.75 6

nxnxnxnx----70707070(エタニティー(エタニティー(エタニティー(エタニティー 70)))) 13.2 7

【検証検体】

実験方法

結果 ~支持部長~

IOL支持部離脱支持部離脱支持部離脱支持部離脱

AcrySof®

MA50BM

太田俊彦:臨床眼科 68:1682-1690, 2014

Gabor SGB, et al : J Cataract Refract Surg 36 : 254-259, 2010

VA-70AD YA-65BB アバンシィ エタニティー テクニスセンサー テクニスワンピース MA60AC

引張り長さ(mm) 21.6 22.8 18.7 21.5 19.5 28.5 19.4

荷重(N) 1.303 1.534 0.475 0.898 0.769 0.773 0.385

積分値(N・mm) 5.1397 3.7777 0.9716 2.7493 1.3893 6.4309 0.5516

VA-70AD

VA-70AD YA-65BB アバンシィアバンシィアバンシィアバンシィ エタニティーエタニティーエタニティーエタニティー テクニステクニステクニステクニス

センサセンサセンサセンサーーーー

テクニステクニステクニステクニス

ワンピースワンピースワンピースワンピース

MA60AC

0

1

2

3

4

5

6

7

積分値(N・mm)

0

0.5

1

1.5

2

荷重(N)

強膜内固定術に適した大光学径強膜内固定術に適した大光学径強膜内固定術に適した大光学径強膜内固定術に適した大光学径IOLNX-70 (エタニティー

ナチュラル®

参天

YA65BB

HOYA

全長13.2mm

光学径7.0mm

全長13.0mm

光学径6.5mm

強膜内固定術強膜内固定術強膜内固定術強膜内固定術に不適のに不適のに不適のに不適のIOLはははは????

アクリルフォールダブル

シングルピースIOL

PMMA製

シングルピースIOL

IOL度数補正量度数補正量度数補正量度数補正量

囊内挿入予定囊内挿入予定囊内挿入予定囊内挿入予定IOL度数度数度数度数 減ずる度数の目安減ずる度数の目安減ずる度数の目安減ずる度数の目安

<10D 0

10D<<15D 0.5

15D<<20D 1.0

20D<25D 1.5

25D< 2.0

Suto C. J Cataract Refract Surg 30 : 2452-2454, 2004

=

=

=

=

多焦点多焦点多焦点多焦点IOL縫着術の報告縫着術の報告縫着術の報告縫着術の報告

�Philipp C et al. Ophthalmol. 109 : 2315-2324. 2002

12例の小児や若年者(6~29歳)の術後無水晶眼

に屈折型多焦点IOLを毛様溝縫着

�中村邦彦. あたらしい眼科. 28 : 1131-1132. 2011

41歳男性。アトピー白内障手術後の無水晶体眼に

回折型多焦点IOLを毛様溝縫着

�藤本可奈子 他. IOL&RS. 26 : 53-59. 2012

24歳男性。先天白内障手術(8歳時)後の無水晶体眼

に屈折型多焦点IOLを毛様溝縫着後、LASIKを追加

多焦点多焦点多焦点多焦点IOL強膜内固定術強膜内固定術強膜内固定術強膜内固定術

多焦点IOL強膜内固定術後 PEA+多焦点IOL挿入術後

Vd=1.2(n.c.) Vs=1.2(n.c.)遠方

近方 Vd=0.8(n.c.) Vs=0.8(n.c.)

術後2年4ヶ月

遠方

近方

右眼 左眼