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波の基本 振幅・速さ・波長・周期・振動数 v = f = 1 T を覚える 山と山 谷と谷が出合うと強め合う 山と谷が出合うと弱め合う 波の要素 波と聞いて初めに思いつくのは海の波であると思う。 上がったり下がったりしているのである。また受験生 なら「実力に波がある」というと,調子が良かったり 悪かったりすることである。波と聞いて,かめはめ波 やどどん波を思いついた人は某マンガの読みすぎであ る。音や光も波であることを覚えてもらいたい。波を 伝える物質 (海なら海水,音なら空気) を, 媒質という。 実際に媒質は上下しているだけで,振動を伝えるだけ である。音は空気の振動であるが,音源の空気分子が直接飛んでくるわけではない。 では右図の話。曲線は三角関数のものなのでサインカーブとよばれる。実線が現在の波, 点線は 3 秒後この波が初めてなった形とする。 ●速さ 図の通り,6m の距離を 3 秒で通過するので, v =6 ÷ 3=2 2m/s ●振幅 基底の位置から山の高さまたは谷の深さのことである。図より A = 3m ●波長 波は同じパターンを何回も繰り返す。1 パターンの長さは図より λ = 8m さて,ここで波の要素として大切なことがある。周期と振動数である。公式よりも意味を 理解してもらいたい。 ●周期 波において同じパターンを繰り返すのにかかる所 要時間のこと。今回,波長 8m,速さ 2m/s なので 1 波長に かかる時間 T は,普通に距離÷速さを考えると T =8 ÷ 2=4 T = 4s ●振動数 これは 1 秒でパターンを繰り返す回数のこと。 単位は Hz で,周期の逆数になる。f = 0.25s 波の公式 波長を λ[m],伝播する速さを v[m/s],振動数を f [Hz],周期を T [s] としたとき, v = f = 1 T ついでに vT = λ 2 つは何が何でもとにかく覚えるようにしてもらいたい。上の波では波長が 8m,振動数 0.25s,速さが 2m/s なので確かに v = が成り立っている。 また,波の三角関数式 y = A sin2π t T - x λ をテーマに扱う問題はごくまれにしか出題 されない。数学 II の三角関数と波の公式の基本を理解できたら,少しずつ取り組むように してもらいたい。 p1097-2 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 物理■

波の基本 - Coocanshinkaisoku.la.coocan.jp/kogi/physhadou.pdf波の基本 振幅・速さ・波長・周期・振動数 v = fλとf = 1 T を覚える 山と山 谷と谷が出合うと強め合う

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波 の 基 本

振幅・速さ・波長・周期・振動数

   v = fλと f = 1T を覚える

山と山 谷と谷が出合うと強め合う

山と谷が出合うと弱め合う

波の要素

 波と聞いて初めに思いつくのは海の波であると思う。

上がったり下がったりしているのである。また受験生

なら「実力に波がある」というと,調子が良かったり

悪かったりすることである。波と聞いて,かめはめ波

やどどん波を思いついた人は某マンガの読みすぎであ

る。音や光も波であることを覚えてもらいたい。波を

伝える物質 (海なら海水,音なら空気)を,媒質という。実際に媒質は上下しているだけで,振動を伝えるだけ

である。音は空気の振動であるが,音源の空気分子が直接飛んでくるわけではない。

 では右図の話。曲線は三角関数のものなのでサインカーブとよばれる。実線が現在の波,

点線は 3秒後この波が初めてなった形とする。●速さ 図の通り,6mの距離を 3秒で通過するので,   v = 6÷ 3 = 2   2m/s●振幅 基底の位置から山の高さまたは谷の深さのことである。図より A = 3m●波長 波は同じパターンを何回も繰り返す。1パターンの長さは図より λ = 8m さて,ここで波の要素として大切なことがある。周期と振動数である。公式よりも意味を

理解してもらいたい。

●周期 波において同じパターンを繰り返すのにかかる所

要時間のこと。今回,波長 8m,速さ 2m/sなので 1波長にかかる時間 T は,普通に距離÷速さを考えると

T = 8÷ 2 = 4   T = 4s●振動数 これは 1秒でパターンを繰り返す回数のこと。単位は Hzで,周期の逆数になる。f = 0.25s

波の公式

 波長を λ[m],伝播する速さを v[m/s],振動数を f [Hz],周期を T [s]としたとき,v = fλ と f = 1

T ついでに vT = λの 2つは何が何でもとにかく覚えるようにしてもらいたい。上の波では波長が 8m,振動数が 0.25s,速さが 2m/sなので確かに v = fλが成り立っている。 また,波の三角関数式 y = A sin 2π

( tT − x

λ)

をテーマに扱う問題はごくまれにしか出題

されない。数学 IIの三角関数と波の公式の基本を理解できたら,少しずつ取り組むようにしてもらいたい。

p1097-2 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 物理■

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波のグラフ

横軸が x軸のグラフは 波の絵横軸が t軸のグラフは 時間変化波が動く様子を想像することが大切

xのグラフ 波 1つで波長tのグラフ 波 1つで周期

グラフの種類

 波のグラフを苦手としている人は多い。まず波のグラフ

は 2種類あり,それらは全く違うということを認識してもらいたい。まず x-yグラフであるが,波を見た目の通り図にしたものである。要はリアルに動いている波をカメラで

捕らえた的な「波の写真」である。ある一瞬の波の形を描

いたものだから,時刻は決まっている。

 そして y-tグラフは波のある場所での上下の動きを時間とともに記録したものであり,波を見たままではない。あ

る点における挙動なので場所は決まっている。

グラフの利用方法

 では y-xグラフと y-tグラフの変換について,簡単な例をもとに考えたい。

例題① 幅 2mのパルス波 (1個分だけの波)が速さ 2m/sで伝わっている。時刻 t = 0のとき,右上図のような状態になっていたとすると,x = 5.0mの点における y-tグラフはどうなるだろうか。■解答■ まず,x = 5の所に何か物体をつないでおくことをイメージする。波が 3m進めばその物体は波の影響を受けて動き始める。これは速さ 2m/sなので 3÷ 2 = 1.5秒後のことである。パルス波は 2mなので,2÷ 2 = 1秒の時間をかけてそれをまたぐ。時刻 1.5秒で盛り上がり,1秒かけてパルス波をまたぎ終わる。だから右上図のようになる。

例題② 波長 4mの正弦波が速さ 10m/sで xの正方向に伝わっている。t = 0のとき,図のようになった。このとき x = 0の点における y-tグラフはどうなるか。■解答■ 波は図でいう右側へ進んでいる。同じように原点

におもりなどをしばりつけておくと一瞬の未来はガクッと下

へ下がる。そして谷底まで沈んだら這い上がってきて,次は山

の頂上になり,そして元の位置に戻る。だから,横軸が時間 tのグラフを描くとまず下がってそして上がるグラフ,− cos型のグラフになる。高さ 0に戻るまでは 1周期。波長 4m,速さ10m/sなので波 1個分にかかる時間は 10÷ 4 = 2.5秒となる。

p3107-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 物理■

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縦  波  (改訂 2.5)

個々の媒質粒子の振動方向と

  波そのものの進行方向が平行

波が伸び縮みしながら進むイメージ

縦波の代表例は音波の伝播

速度は振動中心で最大

縦波の横波表記

 部活などの応援席でやる「ウェーブ」を想像し

てほしい。ひとりひとり (媒質)が体を上下に振動させることで,結果的に波が伝わって動いている

ように見える。このように,振動方向と進行方向

が垂直であるものを横波という。もし,ひとりひ

とりが左右に体を振動させて同じように伝えると

ある箇所では人が集まって暑苦しくなり,ある場

所では寂しくなる。実際に実行したらやや不気味

だが,これが縦波である。

 縦波は図にはうまく描けなく,よく行われるの

が「横波表記」である。波の進行方向を yとし,波がない時の媒質粒子は等間隔に並んでいると仮定

する。波が起こった時,媒質粒子が等間隔に並べ

たときに本来あるはずの位置よりも進んでいれば

正の方向に,後退していれば負の方向に点をとる。そしてその点を結べば完成する。

縦波の要素

 右図のように縦波を横波表記して①~⑤の番号をつけた。時間

の経過とともに①→②→③…となるのではない。

●速さ 波の媒質は一定の幅を振動している。振動の端では折り

返し,振動の中心に向かって加速し,中心を越えたら減速する。

②と④は速さが 0である。速さの向きは一瞬未来の波形を描いて考える。下に進めば後ろ向き,上に進めば前向きである。

 ②は進みすぎて折り返して戻ろうとする点なので速さは 0。 ④は戻りすぎて折り返して進もうとする点なので速さは 0。 ①と⑤が後ろ方向の速さが最大で,③が前方向の速さが最大。

●加速度 媒質の加速度が 0になるのは②,④となる。②は前に出すぎたので戻ろうとするため,後ろ向きの加速度が最大になる。

④はその反対になる。①,③,⑤は加速をやめて減速モードに入

るため,加速度は 0。●疎と密 イラストで見ていただいても分かる通り,縦波が伝播

している時,媒質が集まっている部分と少ない部分がある。集まっている部分を密,少なく

なっている部分を疎という。①と⑤が疎,③が密である。

p2560-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 物理■

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干 渉 条 件  (改訂 2.5)

同位相,同周期の波は経路差が

d = λ2 × 2m (mは整数)で強め合う

d = λ2×(2m+1) (mは整数)で弱め合う

干渉条件

 波と波はぶつかっても互いに進行方向は曲がらない。しか

し山と山がぶつかり合うと大きな山になり,山と谷は打ち消

し合う。つまり波どうしは単純に乗算し合う。これを干渉と

いう。乗算するというのは,AとAを足すと 2Aになったり,山と谷を合成すると 0になったりすることである。 同位相 (山と谷を同じタイミングで出す)で振動数や振幅などが同じ波を出す 2つの波源 S1,S2 を準備する。観測者をO(observer)とする。S1Oや S2Oを波の経路という。右上のはにわの図は S1からの距離が 2.5λ,S2からの距離が 4λであり,経路差は 1.5λである。

強め合う条件  d = mλ 弱め合う条件  d = λ× 2m + 12 (mは整数)

これを覚えやすく,使いやすくしたものが次の式である。半波長の偶数倍が強め合う条件で,

半波長の奇数倍が弱め合う条件である。

強め合う条件 d = λ2 × 2m 弱め合う条件 d = λ

2 × (2m + 1)

節線の考え方

 平面上に置かれた 2つの波源 Aと Bから,同じ球面波の波が出ているとする。するとこの面上では全く振動しない部分と強く振動

する部分が現れる。全く振動しない部分を連続的に結んだものを節

線 (ふしせん)といい,この線上は Aからの距離と Bからの距離の差が半波長の奇数倍となっている。

 ではここで,2本の隣り合っている節線 L1,L2を考える。L1上に点 P,L2上に点Qを考えると,Pにおける経路差は AP− BP(AP > BP のとき)であるから,

AP− BP =λ2 × (2m + 1) · · · · · · (1)

次に L2 上の点 Qにおける経路差も AQ− BQであるが,L1 と L2 は互いに隣り合う節で,AP− BPよりも大きいので AQ− BQは 1つ大きい奇数となる。そのため

AQ−BQ =λ2 × (2m + 3) · · · · · · (2)

よって,(1)と (2)から,この波の波長は次のようになる。(AQ− BQ)− (AP− BP) = 3λ

2 − λ2 = λ λ = (AQ− BQ)− (AP− BP) □

 ここで線分 AB上である Aと Bの間には定常波とよばれるものができる。このときの節と節の間隔が半波長となるのでそれを元に計算すればよい。

p2542-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 物理■

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定 常 波  (改訂 2.5)

逆向きで同じ周期の波が干渉

見かけ上進行しなくなり

  それぞれの場所で振動

半波長ごとに

  全く揺れない点・節ができる

定常波とは

 同じ周期で互いに逆向きの波が重なり,干渉し合うと見た目では進ん

でいない波ができる。これを定常波 (または定在波)という。いつでもどこでも簡単に試せるので一度やってみてもらいたい。ヘッドホンコー

ドや USBケーブルなどを機械から抜き,両端を持って同じタイミングで上下に振動させる。すると定常波ができるはずである。この定常波を

ビデオカメラなどで撮影してスロー再生をすると,完全に直線になる瞬間がある。この瞬間

は半周期ごとである。また,波の振動中ひたすら全く振動しない点がある。これは後述する

が,半波長ごとに存在する。

 この定常波を図示するとき,一般的には右上図のようにサツマイモを横につなげたような

図を描く。しかし,どちらが実線でどちらが破線かはこだわらなくてよい。

節 と 腹

 定常波は,図の通り最も膨らむ部分と,見かけ上全く振動してい

ない部分が出てくる。最も膨らむ部分を腹,振動していないように

見える部分を節という。腹と腹は半波長ごとにあり,節と節も半波

長ごとに存在する。腹と節は,それぞれ干渉条件の強め合う点と弱

め合う点とに対応する。

●腹と節の数 波源 Aと Bがあり,同周期の波が同位相 (同じタイミング)で出ているとする。波長を λ,AB = 3λとする。このとき,腹と節の数はそれぞれ何個ずつあるだろうか。

 まず,Aも Bも同位相なので,ABの中点 (Aから 1.5λの点)には2つの波源から同時に山,または谷が届くのでこの場所では必ず腹になる。以降,0.5λごとに腹ができるので,Aからの距離が 0,0.5λ,λ,の場所に腹ができると分かる。また,腹と腹のど真ん中に節ができるので,それをもとに図を描いていく。中点より A側には節が 3個できることが分かる。B側も同じ条件なので 3個の節ができ,合計 6個になる。腹は両側に 3個ずつと中点で 7個できる。 この方法が分かりやすいが,干渉条件を用いる方法もある。Aからの距離が xの点Xにおいて強め合うとする。XにおけるAとBからの経路差は (3λ− x)− xなので

3λ− 2x = λ2 × 2m x = (3−m)λ

2 m :整数これで xが 0 x 3λとなる xを求めれば,x = ±3, ±2, ±1, 0の 7ヶ所となる。

p2543-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 物理■

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音 の 干 渉

音源までの距離の差が経路差

音が強くなるのは |d1 − d2| = 2m · λ2音が弱くなるのは |d1 − d2| = (2m+ 1)λ2mの値の考え方が最大のポイント

クインケ管

 クインケ管とは左図のような,トロンボーン型の管状の装置

である。音の干渉実験のために考案されたものである。音源で

発された音は入口で二手に分かれ,一部は Aを経由し,また一部はBを経由してYで再び出合って干渉し合う。B側の管はトロンボーンのように伸縮自在で任意に管に平行な方向に出し入

れができる。

 まず,ある瞬間にYで聞こえる音の強さが最小だったとする。そこからクインケ管を長さ dだけ引くと音が最小になったとする。その後は d引き出すごとに最小となる。この音の波長を求め方を解説する。まず最初,XBY −XAY = �とする。このとき弱め合うので

XBY −XAY = � = (2m + 1)λ2 · · · · · ·①そして d引き出すと,XBYの経路が往復で 2d長くなるから,経路差は � + 2dになる。また干渉条件も 1つずれる,つまりmを 1つ増やす。

XBY′ −XAY = � + 2d = (2m + 3)λ2 · · · · · ·②①,②から λ = 2dとなる。

干渉条件

 では次の例題。波長 2の音を出す音源を原点 Oと P(0, 10)に固定し,観測者HがOから x軸正の向きに x軸に沿って進む。このとき Hが原点にいるとき,音からの経路差は 10。これは半波長 (= 1)の 10(偶数)倍なので強め合う。では初めて Hが極小の音を観測する x座標はどこだろうか。Hを (x, 0)にいるとする。経路差は

PH−OH = √100 + x2 − xPHは三平方の定理を使った。では干渉条件。初めて弱め合うから

λ2 ×1とかやらないように。よく考えるとHが原点から離れる

につれ,経路差は小さくなるのである。Hが原点にいたとき,経路差は半波長の 10倍だった。経路差が減っていくので半波長の 9倍になるまで離れたときに初めて弱め合う。

√100 + x2 − x = λ2 × 9 x = 19

18 □

p1090-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 物理■

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屈  折

波は媒質によって速度が変わる

しかし振動数は変化しない

  

n1n2 =

λ2λ1 =

v2v1 =

sin rsin i

屈折率のみ分子分母が逆と覚える

屈折とは

 屈折という言葉自体は物理の専門用語ではないのでどのよ

うな現象なのかはご存知の人も多いと思う。波は媒質を伝わ

るが,その媒質は,材質,濃さ,温度など条件は一つ一つ違

うので,当然ながら伝わる速さも変わる。では速度が変わる

となぜ波が曲がるのだろうか?

 右図の通りである。波は横長の柔らかい棒が棒と垂直方向

に向かってくると思えばよい。つまり,n人 n+ 1脚のような横一列に並んだ団体がやってくるのである。図の場合,進

行方向右側の①は他の人よりも先にグラウンドを抜けて草む

らに入り,足が遅くなる。その後時間差で②が草むらに入り,

足が遅くなる。するとこの集団の列はもはや真っ直ぐではなく,グラウンドと草むらの境界

で折れ曲がる。③や④の人が草むらに入ると 4人 5脚の進行方向自体が変わってしまうのである。

屈 折 率

 では草むらに入る前の速度を v1,草むらでの速さを v2とおいたとき,

v1v2 = nを屈折率という。波の基本式 vT = λより,

媒質 1,2での波長は λ1 = v1T,λ2 = v2T となるから,v1v2 = λ1

λ2がいえる。また右図の dは d sin i = λ1,d sin r = λ2とできるのでこれらより,

n = v1v2 = λ1

λ2= sin i

sin rとなる。この nは,媒質 1から媒質 2に入るときの屈折率なので媒質 1に対する媒質 2の屈折率とよばれる。日本語の感覚として「に対する」は基準で「もと」にするため,1に対する 2の屈折率は n2

n1である。しかし,v,λ,sinでは分子分母

が見事に逆になるので気をつけてほしい。屈折率の導き方や意味は上記のとおりになるが,

問題を解くときは屈折率の覚え方として次のようにすると良い。

1に対する 2の屈折率 n2n1

= λ1λ2

= v1v2 = sin θ1

sin θ2ここで n1,n2という文字を何気なく登場させたが,n1は媒質 1の絶対屈折率といい,仮想の媒質に対する媒質 1の屈折率を表す。計算するために便利な表記をするだけである。

p1096-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 物理■

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気柱の共鳴  (改訂 1.0)

共鳴するとき

  開口端では腹・閉口端では節

図を描いて波長を求める

音は縦波であり,疎・密がある

場合によっては開口端補正も考える

共  鳴

 紙などを丸めて筒を作って声を出すと大きく響くことがある。これが共鳴であり,このと

きの振動数が固有振動数である。勉強の休憩のときなどに実験してみていただきたい。ノー

トや新聞紙などを丸めて,色々な高さの声を出す。するとある高さの声の時に筒自体がビ

ビッと響くことがある。しかしこの実験は教室,自習室および街角等ではやらないように。

 まず音の重要な公式として v = fλ。音の速さは気温で決まるので,vは基本的に一定である。ここでは音速は 340m/sとさせていただきたい。図のように筒の口付近で音を鳴らす。ピストン

など壁で反射するときは固定端反射なので,必ず定常波の節にな

る。このとき,開口端で腹となるような距離ならば共鳴する。

 ピストンを引いていくと,まず 4.0cmで共鳴し,次はそれよりちょうど 10cm引いた点で再び共鳴したとする。さらに引いていくと 10cmごとに共鳴したとする。このとき,右図の上から 2番目と 3番目のようにシリンダーの口付近が腹,ピストンの所が節という横波表記した図を描いてもらいたい。すると 10cmがこの波の半波長であることはすぐに分かるのである。つまり,波長

λは,λ = 0.10× 2 = 0.20mとなる。では波長が分かれば振動数もすぐに求められる。振動数 f [Hz]は,340 = f × 0.20より 1.7× 103Hzとなる。

振動数を上げるとき

 振動数 f を上げると,波長は短くなる。基本振動の状態から波長を短くし,再び共鳴したとき,これは 3倍振動となる。この 3倍振動もしっかり図を描いて考えればよい。 しかし,開口端補正という魔物が潜んでいるので気をつけて

もらいたい。実は先ほど筒の口付近が腹という表現をしたが,現

実には腹が筒の口よりも少しはみ出た所にできる。1倍音のとき,初めに共鳴したのは 4cmの時だったが,1/4波長なら 5cmになるはずである。つまり 1cmはみ出ている。はみ出た長さのことを開口端補正という。これは筒によって決まるので,振動数を上げても必ず 1cmはみ出すことになる。つまり 3倍音が 5cmとなるから,波長は図より 3λ′/4 = 5で 20

3 cm,つまり

230mと求めることができる。すると振動数 f ′

は,

340 = 230 × f ′ f ′ = 5.1× 103Hz

 とにかく公式よりも図で考えるようにするべきである。筒の絵を描いてそこにサインカー

ブを 2本重ねて描くことができれば何も難しいことはない。

p1257-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 物理■

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ドップラー効果  (改訂 1.0)

ドップラー効果の公式

f = V − v0V − vsf0

を覚えただけでは不十分

仕組みを理解することが大切

音の波長が縮む

 緊急車両がサイレンを鳴らしながら通過するとき,音程が突然変わるのは有名である。こ

れは進行方向側では波長が縮み,後ろ側では波長が伸びることによる。これをドップラー効

果という。首都圏にお住まいの人なら,特急あずさ,かいじ,ひたちなど,京阪神にお住ま

いの人なら新快速電車,特急サンダーバード,はるかなど,中京にお住まいの人なら名鉄パ

ノラマカーなどの汽笛を聞いてみていただきたい。電子音楽なので通過するときはメロディ

にドップラー効果がかかるのでおもしろい音になっている。

●音源が動くとき ここからはセンター試験などでは重

要となるので確実に理解してもらいたい。音というのは

空気の分子を振動させて伝えるので,勢いをつけて音を

出しても音速は変わらない。

 音速を V [m/s],音源の速さを vs[m/s],音源の発する振動数を f0[Hz]とする。音を出しながら進んだとき,t0秒後には音の先頭は V t0[m]進むが,音の最後尾は音源の場所なので vst0[m]しか進んでいない。よって音の「長さ」は V t0 − vst0[m]となる。t0秒間音が出たので,この中に入っている波は,f0t0個である。波長 λ′

,つまり

1個 1個の間隔はλ′ = V t0 − vst0

f0t0 = V − vsf0

 この波長の音が観測者のもとへ速さ V [m/s]で飛んでくるので,観測者の聞く振動数はV = fλ′

より f = VV − vs f0[Hz]

●観測者が動くとき こちらの方がやや扱いづらい。観測者

が音源から v0[m/s]で逃げる状況を考える。音を聞いてからt1 秒後,音の先頭は V t1[m]進んでいる。観測者も v0t1[m]進んだので,観測者を追い抜いた音の長さは V t1−v0t1[m]。やってくる音の波長を λ[m]とすると,λ = V/f0 なのでこの中の波の数 kは,

k = V t1 − v0t1λ = V − v0

V t1f0観測者はこの波の数だけ t1秒に聞くので,振動数 f は

f = kt1 = V − v0

V f0[Hz] ドップラー効果では公式を使いこなすことは大切であるが,まず「音の長さ」というもの

を意識し,ドップラー効果の公式を導き出せるようにしておくべきである。

p1210-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 物理■

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光速の測定 (I) フィゾーの実験光がLの距離を往復する時歯車がどれだけ回転しているか

光は往路では歯車を通り抜け

復路では歯車の歯に当たる

回転するのにかかる時間を計算

フィゾーの実験

 光の速さ光速は 3.0×108m/s(1秒で地球を赤道に沿って 7.5周する猛スピード)であり,測定は容易ではない。フィゾーが行ったのが歯車

を使う方法である。レーザー光源,歯車,鏡を

一直線に設置し,歯車を回転させて歯車の歯と

歯の間の隙間にレーザーを通し,鏡に反射させ

る。そのレーザー光線が戻って来るまでに歯車

を色々な速度で回転させ,鏡から戻って来る光

線が歯にぶつかるようにする。この時の歯車の

回転速度から光速を求める方法である。歯車と

鏡の間の距離を L[m]とすると,この区間を往復,つまり 2L[m]進む間に歯車がどれだけ回転したか,そこから時間を求める方法である。

 歯車というと小学算数や中学数学で問題を解

いて何となく嫌いという人が多いだろうが,こ

こで使う歯車の話は,むしろそれらより簡単で

ある。まず,歯車として円形をして円周に等間隔に歯が N 本並んでいるものを考える。この歯車を高速回転してみる。1周で歯がN 本並んでいるので例えば歯 Aから隣の歯 Bが同じ場所に来るには 1/N 回転をすればよい。だから,歯と歯の間を「隙間」とよぶことにすると,歯とその隣の隙間の回転は歯 0.5本分の回転なので 1

2N 回転といえる。 歯車を 1秒に n回転させることとする。これを回転数といい,n[Hz]のように単位 Hz(ヘルツ)で表現する。すると,1回転は 1/n秒になる。2回転が 2/n秒…と考えていけば1

2N 回転は

12nN 秒

の所要時間となる。光の速さを c[m/s]とすれば,歯車と鏡の間を往復する時間は 2Lc 秒。こ

れが,上記の歯車が回転する時間と同じだから12nN = 2L

c c = 4LNnのようにすればよい。実際に使った値を代入していけばおよそ 3.0× 108m/sになる。 光速の測定はこの他にフーコーやマイケルソン・モーレーなどが行っている。どの方法も

鏡や歯車を高速で回転させ,光を往復させてその時間を測るものである。これが直接入試問

題に登場することはそれほど多くないが,この関連の問題が出題されることがある。よく理

解しておいてほしい。

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光 の 屈 折  (改訂 2.0)

1に対する 2の屈折率n12 = n2

n1 =λ1λ2 =

v1v2 =

sin θ1sin θ2n以外は逆数をとる

屈折で,振動数は変化しない

屈折角のとり方は光軸と法線とのなす角

 光も波である以上,屈折する。真空中の光速はご存知の 3.0 × 108m/sだが,水やガラスなどの媒質中ではそれよりも遅くなる。屈折率は確実に覚えておき,間違えないようにした

いものである。波長,屈折角,速度は後回しにして,まずは屈折率 nから先に覚えるのがラクである。1に対する 2の屈折率は「に対する」のつくものが基準で分母に行くと覚えておく。すると次のような式が得られる。

n12 = n2n1

= λ1λ2

= v1v2 = sin θ1

sin θ2ここで,n1 や n2 は絶対屈折率とよばれ,n12 は相対屈折率というが,n12 や n23 の覚え方はあまりしない方が無難かもしれない。分数で nの式をしっかり覚え,波長と sinと速度は逆数になると覚えるのが最善策である。

例 絶対屈折率 1.5の気体から絶対屈折率不明の液体に入射角45◦ で入射したら屈折角が 30◦であった。このとき,液体の屈折率はどうなるか。n ←液体の n

1.5 ←気体の n = sin 45◦ ←気体の θsin 30◦ ←液体の θ

n = √2× 1.5 2.1 □

 絶対屈折率はこのように求められるが,次に気体に対する液体の相対屈折率を求めてみ

る。このとき,気体の nを分母に,液体の nを分子に置いた式を立てれば安全に値を求めることができる。正確に覚えておくべきである。中途半端に「確か何かが逆んなってんねん」

と考えながらやるのは危険である。

n = n ←測りたい n1.5 ←基準の n = sin 45◦

sin 30◦ = √2 1.4 □

これが相対屈折率である。相対屈折率は同じ物質でも,相手の物質によって値が異る。

光  路

 水中やガラス中を進む光は速度が落ちる。しかし屈折

の法則から振動数は変わらないので,光の干渉で光の経

路を測るときは光路で測る。光路とは,真空中で同じ回

数だけ振動した場合に進んだ距離に換算したものである。

簡単に言うと,光が屈折率 nの媒質中を距離 d進んだとき,光路は ndになる。これを覚えておけばよい。 ここで光が L[m]の直線距離を進むとき,そのコースの途中に厚さ d[m]で屈折率 nの樹脂を置いた場合の光路を求めてみる。真空中なら d[m]である距離が光路としては nd[m]になる。つまり本来の距離より nd − d[m]だけ長くなるので,本来の長さ L[m]からそれをプラスし,L + (n− 1)d[m]となる。

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臨界角と全反射  (改訂 2.0)

屈折率の高い媒質から低い媒質へ

  透過するとき

屈折角が 90◦になるときの  入射角が臨界角

媒質内で反射してしまうことを全反射

臨 界 角

 水,油,ガラスなどの媒質から真空や空気などへ光が通過すると

き,入射角より屈折角が大きくなるので,入射角を少しずつ大きくし

ていくと,そのうち屈折角が 90◦を超えるということは簡単に想像できるはずである。屈折角が 90◦となるときの入射角を臨界角という。ここで媒質の屈折率を n,外の屈折率を 1とする。入射角を θとし,屈折角を 90◦とすれば屈折率の公式より,

sin θsin 90◦ = 1

n sin θ = 1n

これをみたす θが臨界角である。さらに θを大きくする (0 < θ < 90◦)と,屈折角が 90◦を超えて内側に反射する。これを全反射という。入射角に iを用いるとき,不等式 sin i > sin θが成り立てば全反射の条件を満たす。

全反射の例

●円板の半径 水深 h,屈折率 nの水の底に点光源を置いて点光源の鉛直真上が中心となるような円板を水面に浮かべる。このと

き,水面上のどこからも点光源が見えなくなるための円板の最小

半径を求めよ,という問題は多い。ご存知の通り光は広がる。ちょ

うど円板の端に届く光が全反射するようにすればよい。まず臨界

角を θとし,円板の半径を rとすると前述の通り sin θ = 1n であ

る。図より三平方の定理を用いて

sin θ = r√r2 + h2 =⇒ r√r2 + h2 = 1n

両辺 2乗して rについて解くと r = h√n2 − 1  □●二段階の屈折 屈折率 n2のガラスの上に屈折率 n1(n1 < n2)の液体を載せる。液体から真空へ出ないためにはガラスからの入射角の

条件はどうなるか。

 液体から真空に向かうときの臨界角を θとすると sin θ = 1n1。次

にガラスからの入射角を iとすると,屈折率の公式からsin θsin i = n2

n1=⇒ sin i = 1

n2 結局 n2のガラスから直接真空に向かって全反射するときの臨界角と同じであることが分かる。屈折角が 90◦ となるときの入射角のことを臨界角ということを忘れないでもらいたい。全反射も屈折率の公式を正確に覚えておけば最小限の知識で対応できる。

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ヤングの干渉実験 (I)  (改訂 1.0)

スクリーンに光の縞ができる

3平方の定理で S1Qおよび S2Qを求め,近似式  (1 + α)n 1 + nαによって  光路差 (経路差)を求める干渉条件を思い出す

経路差の導出

 光をスリットとよばれる細い隙間で 2つに分け,その 2本の光を干渉させる実験をイギリスの偉大な学者ヤングが 1807年に行った。上の図はよく出るが,パターンもある程度固定している。つ

まり,これを習得してしまえば何も怖いことがなくなるといえよ

う。レーザーを 2つのスリットで 2つの光線に分ける。まず,波が強め合う条件と弱め合う条件は∆dを経路差として

強め合う:∆d = 2m · λ2弱め合う:∆d = (2m + 1) · λ2

mは整数

を思い出してもらいたい。∆dは経路差で∆d = S2Q− S1Q なので,3平方の定理から

S2Q− S1Q =√

L2 +(

x + d2)2 −

L2 +(

x− d2)2

= L√

1 + 1L2

(

x + d2)2 − L

1 + 1L2

(

x− d2)2

ここでは αが小さいとき,√1 + α 1 + 12αを使う。近似が必要なときは基本的に問題文

に書かれているので安心してほしい。

x � L, d � L なので

1L2

(

x + d2)2

= α, 1L2

(

x− d2)2

= βとするとS2Q− S1Q = L√1 + α− L√1 + β

L(

1 + 12α

)− L(

1 + 12β

)

= L2 (α− β) = xd

L干渉条件

 経路差が分かったので強め合う条件は

xdL = mλのようになる。これを x = の式に変形す

ると,x = Lλd mが得られる。Oからの距離がこの式で表される点に明るい線が見える。こ

れは明線という。1つは m = 0である光をスリットに通す前の光軸の延長上,つまり点 Oである。そこから外側へ離れるにつれ 1次,2次,…,m次の明線という。等間隔で明線が並んでいることになる。

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ヤングの干渉実験 (II)  (改訂 2.5)

明線のできる条件xdL = mλ (mは整数)

中心から数えてm番目の明線の位置 xmは

xm = Lλd m

経路差を別の方法で求めると

 ヤングの実験装置で,スリット間距離を d,スリットとスクリーンの距離をL,光軸の延長線と,スクリーンと交わる点,すなわち干渉縞の中心をO,Oから明線または暗線までの距離を xとする。このとき,x � Lと d � Lである。すると自然に θという角がものすごく小さい角となる。角 θが小さいとき,物理ではしばしば sin θ tan θとする。これが必要な問題では基本的に問題文中に明記されている

ので覚えなくてよいが,そのうち覚えてしまうだろう。

 経路差は図のように d sin θであるが,この時に限っては d tan θでもよい。相似の関係により,tan θ = x

L なので経路差 d tan θ = xd

Lとなり,結局一緒な結果となる。

明線間隔・暗線間隔

 原点 Oから明線のできる位置までの距離を xとする。明線というのは光が強め合うので,xd

L = mλ ⇐⇒ x = Lλd m

xはmに関する単純な等差数列となる。この xは,Oからm番目の明線までの距離を示している。これらの間隔は

∆x = xm+1 − xm = Lλd ∆x = Lλ

d また暗線間隔も同じように求まる。光が弱め合う条件は

xdL = λ

2 (2m+1)なのでこの場合でも∆xを求めてみると明線間隔と同じになる。dと Lは実験器具の寸法であり,明線間隔は波長 (光の場合は色)で決まるといえる。スリット間隔 dを小さくすると明線間隔は広くなる。これは回折が大きくなるからである。

液体の中で行うとき

 この実験を液体の中で行うとどうなるだろうか。経路差ではなく,

光路差で計算をする。液体の絶対屈折率を nとする。この中での光の波長は λ/nであるから明線間隔は次のようになり,空気中で実験を行ったときの明線間隔を屈折率で割ったものになる。

∆x = Lλd ⇔ ∆x′ = Lλ

nd = ∆xn

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ニュートンリング  (改訂 2.5)

経路差は図形的に 3平方の定理で反射による位相のずれの判断

強弱の干渉条件

上から光を入射させると

  レンズに光の輪が映し出される

ニュートンリングとは

 薄い片凸レンズの凸面をガラス板の上に置いて,レンズの平面か

ら光を入射させ,反射光どうしが干渉し合わせる。すると同心円状の

干渉縞ができる。光のリングを明環や明輪というが,大きさによって

レンズの曲率半径などを求めることができる。曲率半径という単語

も聞き慣れないと思うが,難しいものではない。レンズを球体に復元

したときのその球の半径のことである。またレンズはコンタクトレ

ンズ位の大きさと思ってもらいたい。

 ではまず光路差を求める。レンズの曲率半径を R,中心から n番目の明るい環 (以下明環)の半径を rnとする。レンズとガラス台とのすきまの長さを dとおけば,光路差は 2dになる。ここで,図 2より3平方の定理を使うと,

R2 = r2n + (R− d)2 ⇐⇒ 2Rd = r2n + d2 = r2n(

1 + d2r2n

)

d � rnより 2Rd r2n 2d = r2nR

近似を用いたが,入試問題で近似が必要な時は問題文に何らかの注意書きがあるので安心し

てほしい。

干渉条件

 光が反射するとき,向こう側の屈折率が大きい境界では波の位

相が πずれる。図 3より,①の光の位相はガラス→外部の境界で反射するのでずれないが,②の光の位相は外部→ガラスの境界で

反射するため,位相は πずれる。このとき干渉条件の明,暗が逆転する。だから明環は光路差が半波長の奇数倍となる位置になる。

 上の 2つから,明環の半径を求めてみる。入射する光の波長はλとする。光路差は 2dで,これが半波長の奇数倍になればよい。

2d = r2nR = (2n− 1) · λ2 (n = 1, 2, 3, · · · )

rn =√Rλ

2 (2n− 1)となる。これはレンズの中心から数えて n番目の明環の半径である。(2n + 1)にした場合,n = 0が 1番目となり,nの値と番目がずれるので注意してもらいたい。 またこの明環半径であるが,明環どうしの間隔は外側ほど狭くなる。いわゆる無理関数√2n− 1は nを大きくすると増え方が弱くなるからである。レンズの中心は光路差が 0となる。これは半波長の 0倍,つまり偶数倍なので光は弱め合うから,中心は暗くなる。

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薄膜の干渉  (改訂 2.0)

光路差は (CO + OB)×屈折率ACとDBは光路が同じ三角比の考えを使い,光路差は

2nd cos θ位相がズレるかズレないか考慮する

光の進む速さに要注意

 シャボン玉などの薄い膜に光を当てると膜の内側と外側とで反射

した光が干渉する。頻出分野なのでしっかりとおさえておきたいと

ころである。まず,同位相の平面波が 2つの水面 A,Bに到達するとし,Aは膜内に透過し,Bでは反射した。透過した光は曲がって速さを落とすため,図の ACと DBは同じ数の波が含まれる。そのため,Bと Cの位相は揃っている。つまり光路差は CO + OBを求めて屈折率の nをかければよい。 図の①のように CO + OBが経路差となる。屈折角を rとし,無理して計算すれば出るが,②のように Bを X′

面に関して対称移動

するとやりやすくなる。膜の厚さを dとすれば,CB′ = BB′ cos rとなり,2d cos rといえる。光路差は nをかけて

CB′ = 2nd cos r (セカンドコサイン)とでも覚えてしまえばよい。

干渉条件

 光の干渉で気をつけるべき点は位相のズレである。波は自由端反

射なら普通に反射するが,固定端反射の場合,位相が πズレる。これは単純にいうと山と谷が反転するのである。屈折率の小さな媒質

から大きな媒質に向かって反射するとき位相がズレる。膜に入る前

に Xで反射する光は位相が πずれるが,膜の内部で反射する光,つまりX′

で反射するものは位相がズレない。よって干渉条件は強弱が

逆転するため,強め合う条件が

2nd cos r = λ2 (2m + 1) (m = 0, 1, 2, · · · )……(i)

となる。またX′の下が膜よりもさらに屈折率の高いもののとき,例

として屈折率が 1.5nの媒質が膜の下にあるとき,両方の光の位相がπずつズレる。これはお互いにはズレていないため,干渉条件は逆転せず,強め合う条件は

2nd cos r = mλ (m = 1, 2, 3, · · · )……(ii)となる。片方の位相がズレるときは干渉条件は逆転し,両方ずれる

ときは干渉条件はそのままである。

 また,整数mの範囲にも気をつけてもらいたい。要は (i)の式では

12λ,

32λ,…,(ii)の式では λ,2λ,…を表現すればよい。

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くさび型ガラスの干渉  (改訂 2.0)

明線までの距離 xは2x tan θ = λ

2(2m− 1) m = 1, 2, · · ·そして厚さDはD = Lλ

2∆x経路差の考え方

 頻出の干渉である。2枚の平面ガラスを重ね,どちらかの端に紙や糸などを挟む。そして上から光を入射させて干

渉を観測すれば紙や糸などの厚さ,太さが分かる。光を当

て,上からのぞくと右図のような光の干渉縞を見ることが

できる。折りたたんだ点Oからm番目 (m = 1, 2, 3, · · · )の明線までの距離を xmとする。この場所でのガラスとガ

ラスに挟まれた微妙な空間の厚さを dとおく。するとその場所における光の光路差は 2dとなる。まずはこの 2dを求めることから始めたい。

 平板ガラスの長さを L,挟んだ紙の厚さをDとすれば,相似三角形で考えると,

xm : d = L : D d = xmDL

右図の Bのように,空気層からガラス層に向かって反射する光は位相が πズレる。しかし Aのようにガラス内で反射する光は位相のズレはない。強め合う条件と弱め合う条件が逆転して,光路差が半波長

の奇数倍のときに強め合うから

2 · xmDL = λ

2 (2m− 1) (mは自然数)となる。これは,xm = Lλ

4D (2m− 1)となるので明線間隔∆x は,

∆x = xm+1 − xm = Lλ2D D = Lλ

2∆x実際の試験ではこれを導かせてさらに数値を代入させるものが多い。

反対から見たとき

 下から見た場合,干渉縞はどのように見えるだろうか。下から

見える干渉縞は,直進する光Aと空気層内で 2回反射する光Bとが干渉し合うことで見えるものである。Aは位相のズレがないが,Bは位相が反射の際に 2回ともズレる。2回 πズレるということは,結局は 2πズレるので,この光の位相は元に戻っている。そのため Aと Bの位相は同じになり,干渉条件は元に戻る。 原点O付近では光路差が 0である。半波長の 0倍,つまり偶数倍になる。上から見た場合,原点付近は暗く見える。下から見ると原点付近は明線が見え

る。上から見た場合と下から見た場合とでは明線と暗線が逆転するという結論になる。

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レ ン ズ

レンズの公式1a + 1

b = 1f

fが焦点距離三角形の相似を活用する

レンズの公式

 レンズは入試問題でも頻出ではないが,光の屈折や

干渉などとの融合問題がたまに出題されている。公式

を使えて実像と虚像の区別はできるようにしておきた

いものである。

 ご存知の通りレンズは物体を拡大するものであるが,物理学でレンズというのは光を屈折

させることにより,ある 1点に光を集める装置のことである。�OEF∽�BDFを考えると,BD : OE = b− f : f BD = b− f

f OE次に,�OAC∽�OBDを考える。相似比は a : bなので,

a : b = AC : BD AC = abBD = a(b− f)

bf OEAC = OEなので,bf = a(b− f)となり,これを両辺を abf で割り,整頓すると例の公式が出てくる。

実像・虚像

 レンズが作る像を作図するには次のような原則

がある。これに従っていけば無理なく作図できる。

①レンズ面に垂直に入った光はレンズを通過する

と「焦点」を通過するように折れ曲がる。

②レンズの中心を通る光は通過後も直進する。

③焦点を通ってレンズを通過した光は以後,レン

ズ面と垂直な方向に折れ曲がる。

基本は①と②さえあれば作図できる。

●倒立実像 物体をレンズの焦点よりも外側 (レンズに遠い方)に置く。すると右上の図のように物体とはレンズに対して反対側に像を結ぶ。これは倒立実像とよばれる。この場所に

黒い紙や黒い板などを置くと像が映る。

●正立虚像 焦点よりも内側にロウソクを立てた場合,そのロウソクよりも後ろの方から像

が出ているようにレンズには写る。これは虚像とよばれる。実像はスクリーンに映すことが

できるが,虚像はあたかもその場所にあるかのように見えるだけで,スクリーンには映らな

い。図の通り像の反転はしないので,正立虚像となる。計算をすると bの値がマイナスで出てくる。

 また,像の大きさを物体の大きさで割ったものが倍率である。倍率は相似比から求めるこ

とができる。倍率は n =∣

ba∣

である。

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