24
蓮 6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成 19 年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表 6.1.1 に示す。 表 6.1.1 蓮ダムの平成 19 年度の生物調査等 報告書名 調査等対象 実施時期 内容 両生類・爬虫類・哺 乳類 春季:平成 19 年 5 月 28 日~6 月 1 日 夏季:平成 19 年 7 月 23~25 日 秋季:平成 19 年 10 月 1~5 日 冬季:平成 20 年 1 月 7~11 日 河川水辺の国勢 調査による両生 類・爬虫類・哺 乳類調査 河床状況 付着物・付着藻類 糸状緑藻類 底生動物 魚類 河床状況:平成 19 年 12 月 13 日 付着物・付着藻類: 夏季:平成 19 年 8 月 22 日 冬季:平成 19 年 12 月 13 日 糸状緑藻類:平成 19 年 8 月 16~17 日 底生動物: 夏季:平成 19 年 8 月 22~24 日 冬季:平成 19 年 12 月 13~14 日 魚類:平成 19 年 8 月 22~24 日 土砂投入モニタ リング調査 平成 19 年度蓮 ダム水辺の国 勢調査及び河 川環境調査業 務報告書 アユ放流 アユの分布・個体数 流:平成 19 年 5 月 20 日 目視観察:平成 19 年 5 月 21~22 日 平成 19 年 5 月 28~29 日 平成 19 年 6 月 4~5 日 平成 19 年 6 月 11~12 日 平成 19 年 8 月 16~17 日 蓮川におけるア ユの生息状況調 出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書 6.1.2 ダム周辺の環境の概要 蓮ダムの生物調査の結果の概要を図 6.1.1 に示す。

実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

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Page 1: 実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

蓮 6-1

6.生物

6.1 生物の概要

6.1.1 生物調査等の実施内容整理

平成 19 年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表 6.1.1 に示す。

表 6.1.1 蓮ダムの平成 19 年度の生物調査等

報告書名 調査等対象 実施時期 内容

両生類・爬虫類・哺

乳類 春季:平成 19 年 5 月 28 日~6 月 1 日

夏季:平成 19 年 7 月 23~25 日

秋季:平成 19 年 10 月 1~5 日

冬季:平成 20 年 1 月 7~11 日

河川水辺の国勢

調査による両生

類・爬虫類・哺

乳類調査 河床状況 付着物・付着藻類 糸状緑藻類 底生動物 魚類

河床状況:平成 19 年 12 月 13 日 付着物・付着藻類:

夏季:平成 19 年 8 月 22 日

冬季:平成 19 年 12 月 13 日 糸状緑藻類:平成 19 年 8 月 16~17 日 底生動物:

夏季:平成 19 年 8 月 22~24 日

冬季:平成 19 年 12 月 13~14 日 魚類:平成 19 年 8 月 22~24 日

土砂投入モニタ

リング調査

平成 19 年度蓮

ダム水辺の国

勢調査及び河

川環境調査業

務報告書

アユ放流 アユの分布・個体数

放 流:平成 19 年 5 月 20 日 目視観察:平成 19 年 5 月 21~22 日

平成 19 年 5 月 28~29 日

平成 19 年 6 月 4~5 日

平成 19 年 6 月 11~12 日

平成 19 年 8 月 16~17 日

蓮川におけるア

ユの生息状況調

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

6.1.2 ダム周辺の環境の概要

蓮ダムの生物調査の結果の概要を図 6.1.1 に示す。

Page 2: 実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

蓮 6-2

図6.1.1 蓮

ダム

周辺

の生

物調

査の

結果

の概

図6.

2.2

環境

情報

重要な種

区分

分類

種名

指定区分

確認地点

確認年度

ネコキギ

国天、環EN

下流

H18

アカザ

環VU

流入、下流

H8~

H9、H14、H18

モノアラガイ

環NT

湖内、下流

H6、

H8、H14

カワトンボ

環LP

流入

H14

フライソンアミメカワゲラ

環NT

流入

H6

ヒメテンコケムシ

環NT

下流

H18

ドロニガナ

環VU

下流

H15

チャボシライトソウ

環EN

流入、周辺

H15

クマガイソウ

環VU

周辺

H5~

H6、H15

チュウサギ

環NT

周辺

H5

ミサゴ

環NT

周辺

H5

ハチクマ

環NT

周辺

H13

オオタカ

希少、環VU

周辺

H10、H13

ハイタカ

環NT

周辺

H5、

H13

クマタカ

希少、環EN

周辺

H10、H13

ハヤブサ

希少、環VU

周辺

H10

サンショウクイ

環VU

周辺

H10、H13

アカモズ

環NT

周辺

H13

ブチサンショウウオ

環NT

流入

H10

イモリ

環NT

周辺、流入、下流

H5、

H10、

H16、

H19

ツキノワグマ

環LP

周辺

H16、H19

ニホンカモシカ

特天

湖内、周辺

H5、

H16、

H19

両生類

哺乳類

重要種

(環境省

RDB・法指

定種の

み)

魚類

底生動物

植物

鳥類

代表的な種

環境区分

分類

種名

魚類

オイカワ、カワムツ、コイ

底生動物

ユスリカ科

鳥類

カイツブリ、マガモ

魚類

タカハヤ、カワヨシノボリ、カジカ

底生動物

シロハラコカゲロウ、

ヒゲナガカワトビケラ

鳥類

キセキレイ、カワガラス

魚類

アユ、ウグイ、オイカワ

底生動物

アオマダラカゲロウ、

ウルマーシマトビケラ

哺乳類

タヌキ、キツネ、テン

鳥類

アオバト、ツツドリ、アオゲラ、

ヤブサメ

爬虫類

タカチホヘビ、ヒバカリ、マムシ

両生類

ヤマアカガエル、タゴガエル

昆虫類

コオニヤンマ、サカハチチョウ、

アオスジアゲハ

植物

スギ、ケヤキ、コナラ、アカメガシワ、

カワラハンノキ

ダム湖周辺

ダム湖内

流入河川

下流河川

外来種

区分

分類

種名

外来種法区分

備考

ブルーギル

特定外来生物

オオクチバス

特定外来生物

サカマキガイ

オオマリコケムシ

植物

オオキンケイギク

特定外来生物

他86種確認

コジュケイ

ドバト

カンタン

フタトゲホソヒラタムシ

オオタコゾウムシ

イネミズゾウムシ

イエヒメアリ

セイヨウミツバチ

モンシロチョウ

昆虫類

外来種

(国外外

来種の

み)

他国内外来種

2種確認

魚類

底生動物

鳥類

[指定区分

]

環:環境省

レッド

リスト

 符号

EN:絶滅危惧

ⅠB類

VU:絶滅危惧

Ⅱ類

   

NT:準絶滅危

   

LP:地域個体

特天

:特別天然

記念物

(国

指定)

国天

:天然記念

物(

国指定)

希少

:国内希少

野生動

植物種

湖岸

植生

湖岸

植生

青田

フェ

ンス

蓮フ

ェンス

青田

貯砂

ダム

蓮貯

砂ダム

津本

フェ

ンス

クマ

タカ

ダム

湖周

下流

河川

ダム

流入

河川

出典

: 平

成19

年度

部地

方ダ

ム等

管理

フォ

ロー

アッ

プ委

員会

ダム

定期

報告

書(案

)を

元に

追記

Page 3: 実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

蓮 6-3

6.2 河川水辺の国勢調査(生物)

6.2.1 調査実施状況

河川水辺の国勢調査に基づく平成 19 年度の生物調査実施状況を、表 6.2.1 に示す。

平成 19 年度は、両生類・爬虫類・哺乳類調査が実施された。

表 6.2.1 生物調査実施状況

対象施設 魚介類 底生

動物

動植物

プラン

クトン

植 物 鳥 類

両生類

爬虫類

哺乳類

陸上昆

虫類等

蓮ダム(平成 19 年度) ○

6.2.2 調査結果(両生類・爬虫類・哺乳類)

(1) 調査の概要

両生類・爬虫類・哺乳類調査の調査内容の概要を表 6.2.2 に、調査地区位置図を図

6.2.1 に示す。

表 6.2.2 調査内容の概要

調査方法

目撃等 トラップ ダム湖

環境

エリア

区分

調査地区

番号 調査地区の特徴 調査実施年月日

シャー

マン+

ピット

無人撮影

櫛蓮蓮 5 湖岸部 ● ○ △ ○

櫛蓮蓮 6 流入部(蓮川) ● ○ △ ○

櫛蓮蓮 7 流入部(青田川) ● ○ △ ○

ダ ム 湖

櫛蓮蓮 9 水位変動域 ● ○ △ ○

櫛蓮蓮10 エコトーン(湖面に

続く林縁部) ● ○ △ ○

櫛蓮蓮11 スギ-ヒノキ植林 ● ○ ○

櫛蓮蓮12 クヌギ-コナラ群落 ● ○ ○

櫛蓮蓮13

内 アカメガシワ-ヌルデ群

落 ● ● ○ ○

ダ ム 湖

周辺

櫛蓮蓮14 湖岸道路・沢沿い ● ● ○ ○(沢部)

櫛蓮蓮16 蓮川 ● ○ ○ 流入

河川 櫛蓮蓮17

流入河川 青田川 ● ○ ○

下流

河川 櫛蓮蓮20 下流河川(蓮川) ● ○ ○

櫛蓮蓮23 環境創出箇所

(木場公園) ● ○ ○

その他

櫛蓮蓮24 地形改変箇所

(地すべり地区)

春季:

平成 19 年 5 月 28 日

~6 月 1 日

夏季:

平成 19 年 7 月 23 日

~25 日

秋季:

平成 19 年 10 月 1 日

~5 日

冬季:

平成 20 年 1 月 7 日

~11 日

● ○ ○

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

【調査方法】 ●:春、夏、秋、冬に実施

△:春、夏、秋に実施

○:春、秋に実施

Page 4: 実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

蓮 6-4

シャーマントラップ ピットトラップ

カメトラップ

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

図 6.2.1 調査地区位置図

餌の置き場所に乗ると

入口が閉まる

穴を掘って

容器を埋める

魚肉等の餌を

いれる

Page 5: 実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

蓮 6-5

(2) 調査結果の概要(両生類・爬虫類・哺乳類相の整理)

両生類・爬虫類・哺乳類の確認種数を表 6.2.3 に、確認種リストを表 6.2.4 に示す。

また、環境区分毎の主要な確認種を表 6.2.5 に示す。

平成 19 年度調査では、合計 23 科 38 種が確認された(表 6.2.4 参照)。このうち新

たに確認された種は、ニホンヒキガエル、シロマダラ、ジネズミ、ヒミズ、アブラコ

ウモリ属の一種、カヤネズミの 6 科 6 種であった。

両生類は、ダム湖内で 3 科 5 種、ダム湖周辺で 5 科 9 種、流入河川で 4 科 6 種、下

流河川で 4 科 6 種、その他で 2 科 2 種が確認された。新たに確認された種は、ダム湖

周辺で確認されたニホンヒキガエルであった。

爬虫類は、ダム湖内で 5 科 6 種、ダム湖周辺で 5 科 9 種、流入河川で 4 科 5 種、下

流河川で 3 科 5 種、その他で 4 科 4 種が確認された。新たに確認された種は、ダム湖

周辺で確認されたシロマダラであった。

哺乳類は、ダム湖内で 8 科 9 種、ダム湖周辺で 12 科 16 種、流入河川で 8 科 9 種、

下流河川で 6 科 8 種、その他で 8 科 9 種が確認された。新たに確認された種は、流入

河川で確認されたアブラコウモリ属の一種、下流河川で確認されたカヤネズミ、ダム

湖周辺で確認されたヒミズ、アブラコウモリ属の一種、その他(環境創出箇所)で確

認されたジネズミであった。

表 6.2.3 両生類・爬虫類・哺乳類の確認種数

ダム湖内 ダム湖周辺 流入河川 下流河川 その他

両生類 3 科 5 種 5 科 9 種 4 科 6 種 4 科 6 種 2 科 2 種

爬虫類 5 科 6 種 5 科 9 種 4 科 5 種 3 科 5 種 4 科 4 種

哺乳類 8 科 9 種 12 科 16 種 8 科 9 種 6 科 8 種 8 科 9 種

合計 16 科 20 種 22 科 34 種 16 科 20 種 13 科 19 種 14 科 15 種

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

Page 6: 実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

蓮 6-6

表 6.2.4 両生類・爬虫類・哺乳類の確認種リスト

ダム湖内

ダム湖周辺

流入河川 下流河川 その他

1 両生綱 イモリ科 イモリ Cynops pyrrhogaster ○ ○ ○ 2 両生綱 ヒキガエル科 ナガレヒキガエル Bufo torrenticola ○ ○ 3 両生綱 ヒキガエル科 ニホンヒキガエル Bufo japonicus japonicus ○ ○4 両生綱 アマガエル科 アマガエル Hyla japonica ○ ○ ○ ○5 両生綱 アカガエル科 タゴガエル Rana tagoi tagoi ○ ○ ○ 6 両生綱 アカガエル科 ツチガエル Rana rugosa ○ ○ ○ 7 両生綱 アカガエル科 トノサマガエル Rana nigromaculata ○ ○ ○8 両生綱 アカガエル科 ナガレタゴガエル Rana sakuraii ○ 9 両生綱 アオガエル科 シュレーゲルアオガエル Rhacophorus schlegelii ○ ○ ○ ○ 10 両生綱 アオガエル科 カジカガエル Buergeria buergeri ○ ○ ○ ○ 11 爬虫綱 イシガメ科 イシガメ Mauremys japonica ○ ○ ○ ○ 12 爬虫綱 トカゲ科 トカゲ Eumeces latiscutatus ○ ○ ○ ○13 爬虫綱 カナヘビ科 カナヘビ Takydromus tachydromoides ○ ○ ○ ○ ○14 爬虫綱 ヘビ科 タカチホヘビ Achalinus spinalis ○ 15 爬虫綱 ヘビ科 アオダイショウ Elaphe climacophora ○ ○ 16 爬虫綱 ヘビ科 シマヘビ Elaphe quadrivirgata ○ ○ ○ ○17 爬虫綱 ヘビ科 ジムグリ Elaphe conspicillata ○ 18 爬虫綱 ヘビ科 シロマダラ Dinodon orientalis ○ ○19 爬虫綱 ヘビ科 ヤマカガシ Rhabdophis tigrinus ○ ○ ○ ○ 20 爬虫綱 クサリヘビ科 マムシ Agkistrodon blomhoffii ○ ○ ○21 哺乳綱 トガリネズミ科 ジネズミ Crocidura dsinezumi ○ ○22 哺乳綱 モグラ科 ヒミズ Urotrichus talpoides ○ ○- 哺乳綱 モグラ科 モグラ科の一種 Talpidae ○ ○ ○ ○23 哺乳綱 ヒナコウモリ科 アブラコウモリ属の一種 Pipistrellus sp. ○ ○ ○- 哺乳綱 - コウモリ目の一種 Chiroptera ○ 24 哺乳綱 オナガザル科 ニホンザル Macaca fuscata fuscata ○ ○ ○ ○ ○25 哺乳綱 ウサギ科 ノウサギ Lepus brachyurus ○ ○ ○ ○26 哺乳綱 リス科 ニホンリス Sciurus lis ○ ○ ○27 哺乳綱 リス科 モモンガ Pteromys momonga ○ 28 哺乳綱 ネズミ科 アカネズミ Apodemus speciosus speciosus ○ ○ 29 哺乳綱 ネズミ科 ヒメネズミ Apodemus argenteus argenteus ○ ○ ○ 30 哺乳綱 ネズミ科 カヤネズミ Micromys minutus japonicus ○ ○- 哺乳綱 ネズミ科 ネズミ科の一種 Muridae ○ 31 哺乳綱 クマ科 ツキノワグマ Selenarctos thibetanus ○ 32 哺乳綱 イヌ科 タヌキ Nyctereutes procyonoides viverrinus ○ ○ ○ 33 哺乳綱 イタチ科 テン Martes melampus melampus ○ ○ ○ ○ ○34 哺乳綱 イタチ科 イタチ属の一種 Mustela sp. ○ ○ ○ ○ ○35 哺乳綱 イタチ科 アナグマ Meles meles anakuma ○ 36 哺乳綱 イノシシ科 イノシシ Sus scrofa leucomystax ○ ○ ○37 哺乳綱 シカ科 ホンドジカ Cervus nippon nippon ○ ○ ○ ○ ○38 哺乳綱 ウシ科 カモシカ Capricornis crispus ○ ○

学名No. 綱 科 和名初めて確認された種

確認状況

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

表 6.2.5 環境区分毎の主要な確認種

ダム湖内 ダム湖周辺 流入河川 下流河川 その他

タゴガエル、

ツチガエル、

カジカガエル

タゴガエル、

シュレーゲルア

オガエル、

カジカガエル

イモリ、

カジカガエル、

ツチガエル

イモリ、

ツチガエル、

トノサマガエル

アマガエル、

トノサマガエル

イシガメ、

トカゲ、

ヤマカガシ

トカゲ、

カナヘビ、

ヤマカガシ

トカゲ、

シマヘビ、

ヤマカガシ

イシガメ、

カナヘビ、

シマヘビ

トカゲ、

カナヘビ、

シマヘビ

ノウサギ、

ホンドジカ、

イノシシ

ニホンザル、

ホンドジカ、

テン

ニホンザル、

テン、

ホンドジカ

モグラ科の一種、

テン、

ホンドジカ

ニホンザル、

ノウサギ、

ホンドジカ

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

Page 7: 実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

蓮 6-7

(3) アドバイザー意見の整理

アドバイザー意見は、以下のとおりである。

表 6.2.6 河川水辺の国勢調査アドバイザー意見

聞き取り対象

者氏名等

聞き取りで得られた知見・情報

富田 靖雄 (元三重県立博物館長 三重県動物学会長) 平成 19 年 5 月21 日

・調査内容、時期について、計画書の内容でよい。 ・夜間調査は、湖岸周回道路を行えば、概ね全域把握が可能である。 ・冬期に、ナガレタゴガエルの繁殖集団の確認を試みること。 ・流入支川で、カワネズミを目的として、大きめのシャーマントラップ、ある

いは市販の籠罠をかけることが考えられる。 ・文献については、前回の国勢調査後にまとまった報告書はでていない。しか

し、三重県自然史研究会の会誌に種毎の情報がある可能性がある。レッドデータブックの元データは公表されていない。

・標本を採取して、三重県博物館に収めてほしい。とくに、ナガレタゴガエル・カワネズミ・ヤチネズミ類・モグラ類・イタチ属については、捕獲あるいは死体を拾得した場合は、1 個体ずつくらいは標本を残しておくこと。

・フィールドサインの誤同定が多いので注意すること。頭骨等については拾って残すか、最低でも写真は残すこと。カモシカについては県で情報を集めている。

・アライグマについては、県で有害鳥獣駆除を行っているので、情報を持っている。

・三重県において、森林性コウモリの情報が不足している。 ・最近、カモシカの目撃が少なくなっている。 ・蓮ダム周辺のイタチ属は、ニホンイタチで、チョウセンイタチはまだ侵入し

ていないと思われる。 ・サンショウウオ類については、蓮ダム周辺では、ブチサンショウウオのみ、

オオダイガハラサンショウウオ・ハコネサンショウウオは標高 800m~1000m位の場所にいる(流域内には分布する)。ヒダサンショウウオは分布していない。

・蓮ダムの管理所に、テングコウモリが飛び込んだことがある。

◆過年度調査結果との比較 確認種数の過年度調査結果との比較を下図に示す。調査地点や調査方法に変更が

あったため(蓮 6-11 参照)、一概に比較はできないが、蓮ダムにおける両生類・爬

虫類・哺乳類の確認種数はいずれも増加傾向にある。

7 9 8 10

79 9

10

13

13 17

18

0

10

20

30

40

平成5年度 平成10年度 平成16 年度 平成19年度

確認

種数 哺乳類

爬虫類

両生類

2 7

3134

38

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

図 6.2.2 過年度調査結果との比較

Page 8: 実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

蓮 6-8

富田 靖雄 (元三重県立博物館長 三重県動物学会長) 平成 20 年 3 月17 日

1)文献について ・テングコウモリの記録があったはずなので、その文献をいれた方がよい。 2)出現種について ・全体的によく出ていると思う。 ・モモンガの糞については、あまり現場で見ないのでこちらでも調べてみる ・自動撮影装置で確認されたイタチ属は、ニホンイタチぽいが、測定できない

ので SP のままでよい。 ・ブチサンショウウオ、カワネズミについては、通常確認は難しい。ヒバカリはもっと下流の水田の周辺に多く、ヤマアカガエルもダム周辺は主たる生息域ではないので確認されなければ仕方ないのでは。

・サンプルについて、できれば博物館に収めてほしい(特にナガレタゴガエル) 3)今後について ・アオダイショウ、シマヘビなどを捕まえて、強制嘔吐させると、ネズミ類のリストが充実する。

・カワネズミは専用のトラップを使うと捕獲できる。

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

(4) 考察

○ダム湖及びダム湖周辺 ダム湖内及びダム湖周辺の低茎草地は、ノウサギやホンドジカ、イノシシ等の哺乳

類の確認が多く、餌場として利用されている可能性が高い。特に冬季のダム湖岸部の

草地では、これらの哺乳類の糞や足跡が多く確認された。

ダム湖周辺の周回道路は、哺乳類の移動路(サル・カモシカ・ホンドジカ等)や、

サインポスト(=糞)として利用されていた。道路の側溝についても、土が溜まる場

所を餌場としてアナグマが利用していた。また、水が溜まる場所ではカエルの幼生が

確認され、これらをねらって集まったと思われるヤマカガシの幼体が多数確認された。

○流入河川

流入河川では、清澄な河川に生息するカジカガエルが多く確認された。

○下流河川

下流河川では、小さい面積のオギ原で、今回初めてカヤネズミの巣が確認された。

ごく狭い面積ながら、ハビタットとして機能していることは評価される。

○全体

タゴガエル(主にダム湖内およびダム湖周辺で確認)・アマガエル及びシュレーゲル

アオガエル(主に下流河川で確認)・カジカガエル等(環境創出箇所、地形改変箇所以

外で確認)の両生類は、ワンド・たまりや沢部だけでなく、低茎草地、森林部でも比

較的確認数が多かった。このことから、これらの種の成体が水辺に隣接した陸地も利

用していることが伺える。

Page 9: 実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

蓮 6-9

6.2.3 特定種

(1) 調査の概要

特定種の調査は、「6.2.2 調査結果(両生類・爬虫類・哺乳類)」の「 (1)調査の概

要」と同様である。

(2) 調査結果の概要

本年度の現地調査で確認された特定種は、両生類がイモリ、ニホンヒキガエル、ナ

ガレタゴガエルの 3 種、爬虫類がタカチホヘビ、シロマダラの 2 種、哺乳類がニホン

リス、モモンガ、ツキノワグマ、カモシカの 4 種であり、合計 9 種であった。

特定種の確認状況の経年変化を、表 6.2.7 に示す。

表 6.2.7 特定種の確認状況の経年変化

特定種 確認年度 特定種指定状況

類 和名 H5 H10 H16 H19 文化財 環RL 三重県

両生類 ブチサンショウウオ ○ NT NT

イモリ ○ ○ ○ ○ NT

ニホンヒキガエル ○ NT

ナガレタゴガエル ○ ○ VU

爬虫類 タカチホヘビ ○ ○ ○ NT

シロマダラ ○ NT

哺乳類 カワネズミ ○ VU

ニホンリス ○ ○ ○ NT

モモンガ ○ ○ EN

ツキノワグマ ○ ○ LP EN

カモシカ ○ ○ ○ 特天 NT

文化財:天然記念物緊急調査(文化庁、1982)

特天:特別天然記念物

環RL:環境庁レッドリスト(両生類・爬虫類:平成 18 年 12 月 22 日公表)、

(哺乳類:平成 19 年 8 月 3 日公表)

絶滅危惧ⅠA 類(CR):ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種

絶滅危惧ⅠB 類(EN):ⅠA 類ほどではないが、近い将来における絶滅の危険

性が高い種

絶滅危惧Ⅱ類(VU):絶滅の危険が増大している種

準絶滅危惧(NT):現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によ

っては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

情報不足(DD):評価するだけの情報が不足している種

LP:地域的に孤立しており、地域レベルでの絶滅のおそれが高い個体群

三重県:三重県レッドデータブック 2005「動物」(三重県、2006)

環 RL と同様 出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

Page 10: 実施時期蓮6-1 6.生物 6.1 生物の概要 6.1.1 生物調査等の実施内容整理 平成19年度における、蓮ダムの生物に関する調査の概要を表6.1.1に示す。

蓮 6-10

(3) アドバイザーの意見

特定種についてのアドバイザー意見は以下のとおりである。 表 6.2.8 特定種についての河川水辺の国勢調査アドバイザー意見

聞き取り対象者氏名等

聞き取りで得られた知見・情報

富田 靖雄 (元三重県立博物館長 三重県動物学会長) 平成 19 年 5 月21 日(月)

・冬期に、ナガレタゴガエルの繁殖集団の確認を試みること。 ・流入支川で、カワネズミを目的として、大きめのシャーマントラップ、あるいは市販の籠罠をかけることが考えられる。

・標本を採取して、三重県博物館に収めてほしい。とくに、ナガレタゴガエル・カワネズミ・ヤチネズミ類・モグラ類・イタチ属については、捕獲あるいは死体を拾得した場合は、1 個体ずつくらいは標本を残しておくこと。

・カモシカについては県で情報を集めている。 ・最近、カモシカの目撃が少なくなっている。 ・サンショウウオ類については、蓮ダム周辺では、ブチサンショウウオのみ、オオダイガハラサンショウウオ・ハコネサンショウウオは標高 800m~1000m位の場所にいる(流域内には分布する)。ヒダサンショウウオは分布していない。

・蓮ダムの管理所に、テングコウモリが飛び込んだことがある。 富田 靖雄 (元三重県立博物館長 三重県動物学会長) 平成 20 年 3 月17 日

1)文献について ・テングコウモリの記録があったはずなので、その文献をいれた方がよい。 2)出現種について ・全体的によく出ていると思う。 ・モモンガの糞については、あまり現場で見ないのでこちらでも調べてみる ・ブチサンショウウオ、カワネズミについては、通常確認は難しい。ヒバカリ

はもっと下流の水田の周辺に多く、ヤマアカガエルもダム周辺は主たる生息域ではないので確認されなければ仕方ないのでは。

・サンプルについて、できれば博物館に収めてほしい(特にナガレタゴガエル)3)今後について ・アオダイショウ、シマヘビなどを捕まえて、強制嘔吐させると、ネズミ類の

リストが充実する。 ・カワネズミは専用のトラップを使うと捕獲できる。

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書 (4) 考察

本年度は、特定種のニホンヒキガエルとシロマダラが新たに確認された。ニホンヒ

キガエルは、水たまりや池で繁殖し森林等に生息する種であり、ダム湖周辺の広葉樹

林において確認された。シロマダラは森林に生息する種であり、ダム管理所前におい

て確認された。一方、過年度の調査で確認されながら本年度確

認されなかった特定種は、ブチサンショウウオとカワネズミで

あった。ブチサンショウウオは、青田川で確認されていたが、

もっと流量の少ない源流を生息場所とする種であり、過去の確

認箇所がそもそも主たる生息場所ではなかったと考えられる。

カワネズミは、もともと個体数密度が少ないこと等から、確認

が難しいものと考えられる。特定種の確認が多かったのは、ダ

ム湖周辺の貯水池に流入する沢であり、ナガレタゴガエルが四

季を通じて複数個体確認されたほか、ツキノワグマ、ニホンリ

スなどが確認された。

ニホンヒキガエル

シロマダラ

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蓮 6-11

◆前回調査からの調査方法の変更点 今年度(平成 19 年度)の調査は、「平成 18 年度河川水辺の国勢調査基本調査マニュア

ル【ダム湖版】」(監修:国土交通省河川局河川環境課、編集:(財)ダム水源地環境整備セ

ンター)に基づき実施した。一方、前回(平成 16 年度)調査は「平成 6 年度版 河川水辺

の国勢調査基本調査マニュアル【ダム湖版】(※平成 13 年一部訂正)」(監修:建設省河川

局開発課、編集:同上)に基づいて実施されており、同マニュアルの改訂に伴う調査方法

の変更等があった。

詳細を以下に示す。 表 6.2.9 前回調査からの変更点

調査区域の設定 調査方法

マニュアルの

変更

「代表的な植物群落内及び植物群

落外(林縁部、開放水面、河畔)」

毎に設定(平成 13 年一部訂正版)

「ダム湖環境エリア区分内に設定

された代表的な場所毎」に設定(平

成 18 年度版)

現地調査の精度の統一を図る

ため、各調査方法の実施目安

や努力量の目安といった項目

が新たに示された(平成 18 年

度版)。

蓮ダムにおける

調査方法の変更

調査ルート 11 ライン及びトラップ

調査地点7地点(前回調査)

全 14 区域(調査ルート及びトラッ

プ調査地点含む)(今年度調査)

※図 6.2.3 参照

無人撮影の導入(今年度調査)

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書、

平成 19 年度 中部地方ダム等管理フォローアップ委員会 蓮ダム定期報告書(案)

図 6.2.3 調査地点の比較

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蓮 6-12

6.3 環境保全対策

6.3.1 環境保全対策の整理

(1) 環境保全対策の実施状況

蓮ダムでは、平成 14 年度より下流河川生態系保全対策が行われている。

表 6.3.1 環境保全対策の実施状況

No. 保全対策 項目

概要 位置 設置時期

1 下 流 河 川生 態 系 保全対策

下流河川への土砂供給 図 6.3.1 参照 H14~19 年度

櫛田川(本

川)→

蓮川→

上宇藤木下流

大俣堰下

蓮ダム

塩ヶ瀬

名倉橋下

櫛田川合流前

犬飼(櫛田川本川)

大俣堰

土砂投入箇所

土砂投入モニタリング調査地点

糸状緑藻類調査範囲

上宇藤木

木屋切

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

N0 500m

蓮ダム

奥香肌湖

櫛田川

青田川

蓮川

蓮川

図 6.3.1 環境保全対策の実施地点及び調査地点

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蓮 6-13

(2) 環境保全対策の概要

蓮ダムでは下流河川における河床低下、アーマーコート化、糸状緑藻類の異常繁茂

等の問題に対し、貯砂ダム上流に堆積した土砂を下流河川に移送し、河川環境を回復

させる対策を実施している。土砂投入の実施地点は前掲図 6.3.1 に示したとおりであ

る。環境保全対策の概要を表 6.3.2、土砂投入の状況を表 6.3.3 に示す。

表 6.3.2 環境保全対策の概要

手法 下流河川への土砂供給

目的 ダム下流河川における河床低下、アーマーコート化、糸状緑藻類の異常繁茂等の各種問題の改善

目標 ダム建設以前の蓮川本来の河川環境の回復 (河床低下の回復、河床材料の細粒化、糸状緑藻類の抑制)

内容 平成14~19年度にダム下流河川に計 5 カ所土砂を供給した。 写真:土砂供給の状況 H14 年度

維持管理 土砂投入後は維持管理は必要としない

効果確認 平成 14~19 年度に効果検証調査を実施

平成 19 年度の事業費 7,000(千円)

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

表 6.3.3 土砂投入状況

投入地点

年度 木屋切 名倉橋下

上宇藤

木下流 上宇藤木 大俣堰下

土砂

投入量

(m3)

平成 14年度 100 100

平成 15年度 200 300 500 1,000

平成 16年度 50 200 250 500

平成 17年度 100 100 200 400

平成 18年度 450 200 500 850 2,000

平成 19年度 450 200 500 850 2,000

合 計 900 250 500 1,700 2,650 6,000

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

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蓮 6-14

(3) 環境保全対策の結果の整理

平成 19 年度に実施された環境保全対策の効果を検証する現地調査のうち、生物を対

象としたものについて、その結果を整理して以下に示した。

1) 調査範囲

調査範囲、調査地点は前掲図 6.3.1 に示したとおりである。調査地点は、大俣堰よ

り下流の蓮川に 5 地点、櫛田川本川には対照区として 1 地点が設けられている。

2) 調査実施時期

調査実施時期を表 6.3.4 に示す。 表 6.3.4 蓮ダムの環境保全対策に係る平成 19 年度の生物調査

対策項目 調査対象 実施時期

付着物・付着藻類 夏季:平成 19 年 8 月 22 日 冬季:平成 19 年 12 月 13 日

糸状緑藻類 平成 19 年 8 月 16~17 日

底生動物 夏季:平成 19 年 8 月 22~24 日 冬季:平成 19 年 12 月 13~14 日

下流河川への土砂供給

魚類 平成 19 年 8 月 22~24 日

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

3) 調査方法

調査項目および調査方法を表 6.3.5、図 6.3.2 に示す。 表 6.3.5 環境保全対策に係る生物調査の調査方法

調査名称 調査項目 調査方法 調査概要

付着物 ・付着藻類調査

乾燥重量 強熱減量 種構成 細胞数

コドラートブラシ法による採取

・石の表面からコドラート・ブラシ法によって付着物を 150cm2分(5cm×5cm×6 箇所)採取

・採取したサンプルは検体ごとに付着藻類 75 cm2

分、付着物 75 cm2分に分け、それぞれ分析

糸 状 緑 藻類調査

分布状況 目視記録 ・河川踏査による被度の目視記録および写真撮影

底 生 動 物調査

種構成 個体数 湿重量

定量採取:サーバーネット 定性採取:タモ網

・定量採集では、各地点の早瀬 2 カ所より採集 ・定性採集では、早瀬以外の様々な環境より調査

員 2 名で 15 分採集

魚類調査 種構成 個体数

投網、タモ網、セルビン、カゴ網

・1地点につき投網 10 投、タモ網は 2 名で 30分間、セルビンは 2 個を1時間設置

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

コドラートブラシ法

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蓮 6-15

サーバーネット タモ網

投網 セルビン

カゴ網

4) 調査結果の概要

a. 付着物 土砂投入量と有機物量、クロロフィル量の間には、地点毎に傾向が異なり、明瞭な

傾向はみられなかったものの、経年的には有機物量の比率が上昇傾向にある。有機物

量比率の変化を下図に示す。

※有機物量比率=強熱減量/乾燥重量

図 6.3.2 有機物量比率の変化

0

20

40

60

80

H14.0

5

H14.0

7

H15.0

1

H15.0

8

H16.0

9

H17.0

1

H17.0

2

H17.0

9

H17.1

2

H18.0

9

H18.1

2

H19.0

8

H19.1

2

有機

物量

の比

率(%

)

犬飼(櫛田川本川)

櫛田川合流前

名倉橋下

塩ヶ瀬

上宇藤木

大俣堰下

平成19年度

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び 河川環境調査業務 報告書

50cm×50cm

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蓮 6-16

付着藻類と有機物の比率の指標である AI 値の変化を下図に示す。地点別にみると、

最下流の櫛田川合流前と対照区の犬飼については、低いレベルで安定していた。これ

は、石レキ上の付着物内における付着藻類の比率が高いことを示し、付着藻類の剥離

更新が順調に行われていることを示す。一方、塩が瀬、大俣堰下では、調査回による

変動が非常に大きく、平常時の付着藻類の更新が正常に行われていない可能性がある。

※AI値=強熱減量/クロロフィル量

図 6.3.3 有機物量比率の変化

b. 付着藻類 各地点のレキから採取した付着藻類の夏季の経年変化を下図に示す。

近年、藍藻の割合が増加し、対照区である犬飼と同程度の地点も見られるようにな

った。また、平成 17 年度頃から優占種の中に糸状藍藻類であるHomoeothrixホ モ エ オ ス リ ッ ク ス

属が含ま

れるようになってきている。本種は、通常の河川で瀬において優占する種であり、ア

ユの餌としても重要である。これは、土砂投入により、付着藻類の生育環境が良化し

たことを示すと考えられる。

犬飼

櫛田

川合

流前

名倉

橋下

塩ヶ

塩ヶ

上宇

藤木

大俣

堰下

上宇

藤木

大俣

堰下

櫛田

川合

流前

名倉

橋下

犬飼

調査なし

調査なし

調査なし

0

20

40

60

80

100

120

細胞

0

20

40

60

80

100

120

細胞

H17.9

0

20

40

60

80

100

120

細胞

0

20

40

60

80

100

120

細胞

H19.8H18.9

H16.9

図 6.3.4 付着藻類調査結果(夏季)

緑藻綱

藍藻綱

紅藻綱

珪藻綱

渦鞭毛藻綱

※藍藻・緑藻の

一部は糸状

体数 万細胞

/cm2

0

100

200

300

400

500

600

700

800

H14.5

H14.7

H15.1

H15.8

H16.9

H17.1

H17.2

H17.9

H17.1

2

H18.9

H18.1

2

H19.8

H19.1

2

AI

犬飼(櫛田川本川)

櫛田川合流前

名倉橋下

塩ヶ瀬

上宇藤木

大俣堰下

※H14,15年の櫛田川合流前

 の値は、柏野地点の結果で

 補完した。

平成19年度

1,023

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

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蓮 6-17

c. 糸状緑藻類 糸状緑藻類の被度の調査結果を、区間調査初年度である平成 15 年度の結果とともに

下図に示す。平成 15 年度は、糸状体を形成する緑藻が調査区間の大半で確認され、河

床全体を覆い尽くすような異常繁茂も認められた。一方、平成 19 年度の確認区間は、

大俣堰直下から土砂投入地点(上宇藤木下流)より 100m 下流の地点であった。また、

全体的に著しく伸長した糸状体は見られず、被度は概ね 5%未満であった。

図 6.3.5 糸状緑藻類調査結果

平成19年度 調査結果

N 0 500m

平成 19 年度

櫛田川合流点付近

糸状緑藻類は

確認されなかった

平成15年度 調査結果

N0 500m

大俣堰

平成 15 年度 大俣堰下流

平成19年度 調査結果

大俣堰

糸状緑藻類が確認された区間

土砂投入地点

(上宇藤木下流)

N0 500m

平成 19 年度 大俣堰下流

蓮ダム

奥香肌湖

櫛田川

青田川

蓮川

蓮川

大俣堰下流

櫛田川合流点付近

ほぼ全区間で糸状緑藻類を確認

糸状緑藻類の繁茂状況

糸状緑藻類の繁茂状況

平成15年度 調査結果

N 0 500m

平成 15 年度

櫛田川合流点付近

ほぼ全区間で

糸状緑藻類を

確認

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

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蓮 6-18

d. 底生動物 底生動物の優占種の経年変化を下表に示す。底生動物では、石やレキ間に分泌絹糸

を用いた捕獲網や巣を作る、造網型トビケラが優占している。同じ造網型トビケラの

中でも、平成 16 年頃はウルマーシマトビケラ等のシマトビケラ科が優占していたが、

平成 18 年以降はヒゲナガカワトビケラ等のヒゲナガカワトビケラ科が概ね優占して

いる。シマトビケラ科が大きな石の表面に比較的細かい網巣を張るのに対し、ヒゲナ

ガカワトビケラは、礫と礫の間に粗い捕獲網をもつ巣をかける。このため、造網型ト

ビケラの優占種の変化は、土砂投入によって、ヒゲナガカワトビケラ科の足場となる

ような比較的粒径の小さいレキが増え、ヒゲナガカワトビケラ科の生息に適した環境

が形成されたためと考えられる。

表 6.3.5 優占種一覧表

湿重量第一位 第二位 第三位

種名湿重量(g/0.5m

2)

優先度(%)

種名湿重量

(g/0.5m2)優先度(%)

種名湿重量

(g/0.5m2)優先度(%)

H16 9 犬飼 ― ― ― ― ― ― ― ― ―2004 櫛田川合流前 ウルマーシマトビケラ 0.24 29.3 ヘビトンボ 0.23 28 ムカシトンボ 0.13 15.92004 名倉橋下 ウルマーシマトビケラ 0.24 61.5 Kamimuria属 0.03 7.7 Hxatoma属 0.03 7.72004 塩ヶ瀬 ヒゲナガカワトビケラ 1.08 65.5 ウルマーシマトビケラ 0.28 17 オオシマトビケラ 0.17 10.3

2004 上宇藤木 ヒゲナガカワトビケラ 1.87 48.6 ウルマーシマトビケラ 1.53 39.7 オオシマトビケラ 0.12 3.1

2004 大俣堰下 ウルマーシマトビケラ 0.32 32 エルモンヒラタカゲロウ 0.31 31 ヒゲナガカワトビケラ 0.22 22H17 9 犬飼 ― ― ― ― ― ― ― ― ―2005 櫛田川合流前 Corbicula属 0.24 19.6 Stenopsyche属 0.23 18.7 ヒゲナガカワトビケラ 0.17 13.72005 名倉橋下 Oyamia属 0.25 19.7 ウルマーシマトビケラ 0.23 18.5 オオシマトビケラ 0.22 17.52005 塩ヶ瀬 ヒゲナガカワトビケラ 0.69 24.9 オオシマトビケラ 0.63 22.8 ウルマーシマトビケラ 0.30 11.12005 上宇藤木 オオシマトビケラ 2.97 31.8 ヒゲナガカワトビケラ 2.45 26.1 ウルマーシマトビケラ 1.99 21.3

2005 大俣堰下 オオシマトビケラ 0.67 57.7 Neoperla属 0.24 20.3 ムナグロナガレトビケラ 0.07 5.8

H18 9 犬飼 トビケラ目 1.51 43 ヒゲナガカワトビケラ 0.70 19.8 Hexatoma属 0.44 12.6

2006 櫛田川合流前 ヒゲナガカワトビケラ 3.73 58.2 トビケラ目 1.08 16.8 オオヤマカワゲラ 0.82 12.72006 名倉橋下 ヒゲナガカワトビケラ 4.79 62.5 トビケラ目 1.06 13.8 オオシマトビケラ 0.64 8.42006 塩ヶ瀬 ヒゲナガカワトビケラ 4.86 53.3 トビケラ目 1.87 20.4 オオシマトビケラ 0.81 8.92006 上宇藤木 オオシマトビケラ 23.00 29 ヒゲナガカワトビケラ 15.16 19.1 ウルマーシマトビケラ 10.95 13.82006 大俣堰下 オオシマトビケラ 14.61 30.6 トビケラ目 11.35 23.8 ヒゲナガカワトビケラ 6.54 13.72006 12 犬飼 ヒゲナガカワトビケラ 5.86 36.6 ナカハラシマトビケラ 1.80 11.3 ナミヒラタカゲロウ 1.79 11.22006 櫛田川合流前 ヒゲナガカワトビケラ 7.26 71 ナミヒラタカゲロウ 0.49 4.8 カミムラカワゲラ 0.39 3.82006 名倉橋下 ヒゲナガカワトビケラ 6.04 58.4 Hexatoma属 1.53 14.8 ウルマーシマトビケラ 0.32 3.12006 塩ヶ瀬 ヒゲナガカワトビケラ 25.33 51.2 オオシマトビケラ 12.42 25.1 チャバネヒゲナガカワトビケラ 4.46 9

2006 上宇藤木 オオシマトビケラ 10.05 44.1 ヒゲナガカワトビケラ 8.54 37.5 ウルマーシマトビケラ 1.04 4.5

2006 大俣堰下 オオシマトビケラ 28.03 58.2 ヒゲナガカワトビケラ 10.79 22.4 ナカハラシマトビケラ 2.53 5.2H19 8 犬飼 チャバネヒゲナガカワトビケラ 3.68 38.2 ヒゲナガカワトビケラ 2.56 26.6 Oyamia属 0.93 9.62007 櫛田川合流前 ヒゲナガカワトビケラ 13.84 67.9 トビケラ目 2.13 10.5 アカマダラカゲロウ 1.16 5.72007 名倉橋下 ヒゲナガカワトビケラ 0.95 51.4 チャバネヒゲナガカワトビケラ 0.27 14.7 ウルマーシマトビケラ 0.11 62007 塩ヶ瀬 ヒゲナガカワトビケラ 8.68 74.6 トビケラ目 1.03 8.9 アカマダラカゲロウ 0.59 5.12007 上宇藤木 ヒゲナガカワトビケラ 10.19 71.3 トビケラ目 1.33 9.3 アカマダラカゲロウ 0.95 6.6

2007 大俣堰下 ヒゲナガカワトビケラ 6.32 60.7 チャバネヒゲナガカワトビケラ 1.09 10.5 アカマダラカゲロウ 0.68 6.5

2007 12 犬飼 ヒゲナガカワトビケラ 5.08 33.5 チャバネヒゲナガカワトビケラ 4.88 32.1 Oyamia属 0.89 5.9

2007 櫛田川合流前 ヒゲナガカワトビケラ 10.15 66.6 チャバネヒゲナガカワトビケラ 0.88 5.8 ウルマーシマトビケラ 0.73 4.8名倉橋下 ヒゲナガカワトビケラ 8.53 59.9 チャバネヒゲナガカワトビケラ 1.44 10.1 オオシマトビケラ 0.64 4.5塩ヶ瀬 ヒゲナガカワトビケラ 3.64 39.9 チャバネヒゲナガカワトビケラ 1.15 12.6 オオシマトビケラ 1.04 11.4上宇藤木 ヒゲナガカワトビケラ 8.59 56.6 オオシマトビケラ 4.02 26.5 ナカハラシマトビケラ 0.61 4大俣堰下 ヒゲナガカワトビケラ 6.66 37.3 オオシマトビケラ 4.54 25.4 サワガニ 3.46 19.4

地点月年

造網型(シマトビケラ科) 匍匐型 遊泳型造網型(ヒゲナガカワトビケラ科)

なお、確認された重要種は以下の 2 種である。

表 6.3.6 底生動物重要種一覧

重要種 設定根拠 確認状況

サナエトンボ科 ヒメクロサナエ

三重県レッドデータブック 2005 絶滅危惧II類

櫛田川合流前 1個体 ※H18も同地点にて確認

ゲンゴロウ科 キボシケシゲンゴロウ

三重県レッドデータブック 2005 準絶滅危惧種

大俣堰下 2個体

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

平成 19 年度

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

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蓮 6-19

e. 魚類 魚類の経年確認状況を下図に示す。捕獲個体数については、一定の傾向はうかがえ

ない。種数については、地点によっては増加する傾向がみられる。

砂質を好む魚種であるニゴイとカマツカの出現個体数の変化を下図に示す。ニゴイ

とカマツカは、平成 16 年に比べ複数地点で確認されるようになり、個体数も増加傾向

にある。これは、土砂投入によって砂質分が増加したためと考えられる。

なお、重要種としてレキ底を好むアカザ(環境省レッドデータブック 絶滅危惧 II

類、三重県レッドデータブック 絶滅危惧 II 類)が年 1~7 個体(平成 16~19 年)確

認されているが、確認地点や経年的な変化に一定の傾向はみられない。

図6.3.6 魚類の経年確認状況

調

調

調

し0

5

10

15

20

犬飼

櫛田

合流

点前

名倉

橋下

塩ヶ

大俣

堰下

捕獲

個体

ニゴイ

カマツカ

0

5

10

15

20

犬飼

櫛田

合流

点前

名倉

橋下

塩ヶ

大俣

堰下

捕獲

個体

ニゴイ

カマツカ

0

5

10

15

20

犬飼

櫛田

合流

点前

名倉

橋下

塩ヶ

大俣

堰下

捕獲

個体

ニゴイ

カマツカ

0

5

10

15

20

犬飼

櫛田

合流

点前

名倉

橋下

塩ヶ

大俣

堰下

捕獲

個体

ニゴイ

カマツカ

67

5 6 5

0

100

200

300

400

犬飼

櫛田

合流

点前

名倉

橋下

塩ヶ

上宇

藤木

大俣

堰下

H16

捕獲

個体

0

5

10

15

20

種数

810

7

3

0

100

200

300

400

犬飼

櫛田

合流

点前

名倉

橋下

塩ヶ

上宇

藤木

大俣

堰下

H17

捕獲

個体

0

5

10

15

20

種数

7

10 10

75

7

0

100

200

300

400

犬飼

櫛田

合流

点前

名倉

橋下

塩ヶ

上宇

藤木

大俣

堰下

H18

捕獲

個体

0

5

10

15

20

種数

9

7

9

76

7

0

100

200

300

400

犬飼

櫛田

合流

点前

名倉

橋下

塩ヶ

上宇

藤木

大俣

堰下

H19

捕獲

個体

0

5

10

15

20

種数

カワヨシノボリ

オオクチバス

アマゴ

アユ

アカザ

シマドジョウ

ニゴイ

カマツカ

ウグイ

タカハヤ

アブラハヤ

カワムツ

オイカワ

コイ

種数

調

調

調

調

調

調

H17

H18

H19

H16

H17

H18

H19

H16

捕獲個体数、種数 ニゴイ、カマツカ

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

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蓮 6-20

(4) 考察

土砂投入対策の効果を検証するための調査結果を表 6.3.7 に整理して示す。なお、

目標像は対照区の犬飼とした。

表 6.3.7 土砂投入対策効果検証調査結果総括

項目 結果概要

河床状況調査

粒度組成

土砂投入以後、各地地点ともに細粒化は進んでいる。特に平成 18 年以後、急激に細粒化が進んだ。特に塩が瀬及び名倉橋地点では、投入土砂に匹敵する程度の細粒となった。 しかし、投入土砂あるいはダム上流地点の粒度と比較すると、まだ粒度は粗い傾向にある。 目標達成度:犬飼地点は常に投入土砂より粒度が細かく、その点から考えると、最下流の櫛田川合流点前であっても達成できていない。

付着物

・土砂投入後年々有機物-無機物比が変化し、有機物の比率が増加する傾向にある。・付着物量と藻類量の比である AI 値は、蓮川最下流地点(櫛田川合流点前)とコントロール地点である犬飼で低い値で安定していたが、他地点では変動が大きかった。 目標達成度:AI の変動は、櫛田川合流点前で犬飼とほぼ同じ変動幅であり、この地点については達成できていたが、他地点は変動幅が大きく、達成できていない

付着物・付着藻類調査

付着藻類

平成 18 年度以後、藍藻類の比率が増え、優占種に、アユの餌として重要なHomoeothrix 属が含まれるようになった。 目標達成度:藍藻類の比率が犬飼と同程度の地点もみられるようになり、その面では目標を達成したと考えられる。

糸状緑藻 平成 17 年度以後、被度が大幅に減少し、それが維持されている。

底生動物 優占種の構成がシマトビケラ科→ヒゲナガカワトビケラ科と変化した。この変化は平成 18 年より顕著となった。

しかし、平成 18 年度、平成 19 年度冬季には、上流 2 地点では、この遷移の逆行する傾向がみられた。 目標達成度:平成 19 年になって地点間の差がなくなったが、冬季に上流 2 地点では、遷移が逆行する傾向がみられた。上流 2 地点を除けば、概ね目標を達成したと考えられる。

魚類 平成 17 年以後、砂質の底質を好むニゴイ、カマツカが増加する傾向がみられた。 目標達成度:ニゴイやカマツカが、犬飼地点以上に生息するようになり、その面では目標を達成したと考えられる。

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蓮 6-21

6.4 その他の生物調査等

(1) アユの生息状況調査

蓮ダム下流蓮川におけるアユの好適な生息環境を把握するための基礎資料を得る事

を目的に、アユ生息状況調査を平成 18 年度から実施している。

1) 調査範囲

調査は、蓮ダム直下の大俣堰から櫛田川合流点までの約 4km の範囲と、名倉谷川及

び唐谷川の一部で行った。

2) 調査実施日

本年度の調査実施日及び調査期間中の各種漁業の解禁情報は、下表の通りである。

調査は放流翌日から 3 週間後までの期間に週 1 回の頻度で行った(第 1 回~第 4 回

調査)。その後、6 月 24 日に友釣りが解禁された。第 5 回調査は放流 12 週間後、友釣

り解禁から 7 週間後に実施した。

表 6.4.1 アユ分布状況調査等の実施日

捕獲解禁情報等 調査回 放流からの期間 実施年月日

稚アユ放流 - - 平成 19 年 5 月 20 日

第 1 回調査 放流日翌日 平成 19 年 5 月 21-22 日

第 2 回調査 放流 1 週間後 平成 19 年 5 月 28-29 日

第 3 回調査 放流 2 週間後 平成 19 年 6 月 4-5 日

第 4 回調査 放流 3 週間後 平成 19 年 6 月 11-12 日

友釣り解禁 - - 平成 19 年 6 月 24 日

第 5 回調査 放流 12 週間後 平成 19 年 8 月 16-17 日

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

3) 調査方法

放流された稚アユが、放流後に瀬や淵のどこに分布するのか、潜水目視観察により

確認した。現地では、河川を河川環境区分(早瀬、平瀬、淵等)に区分し、それぞれに

おいて、アユの分布数(尾数)、ハミ跡の有無、水深、流速等について記録した。

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蓮 6-22

4) 調査結果の概要

放流翌日と放流 3 週間後のアユの分布を以下に示す。放流翌日は、放流箇所周辺の

早瀬または平瀬を中心に 100 尾以上の群れが確認されたが、3 週間後には分散が進ん

だ。

新塩ヶ瀬橋より上流では、ほとんどが 50 尾以上の群れで、早瀬または平瀬で確認さ

れた。新塩ヶ瀬橋上流~谷野柏野堰の淵・トロ連続区間では、アユはほとんど確認さ

れなかった。谷野柏野堰より下流では、土砂投入地点より下流の早瀬または平瀬で単

独で遊泳する個体が多数確認された。

これを河川環境区分(早瀬・平瀬・トロ・淵)別に示すと、いずれの調査回におい

ても、6~8 割の個体が早瀬または平瀬で確認されており、アユの稚魚が、瀬の環境を

好んで分布していることが分かる。

図 6.4.1 アユ分布現況調査結果

1122 24

9 5

5

1517

2320

33

17

3142

36

51 46

28 2639

0%

20%

40%

60%

80%

100%

5/21-22 5/28-29 6/4-5 6/11-12 8/16-17

確認

個体

数割

合(%

)

早瀬

平瀬

トロ

図 6.4.2 河川環境区分別のアユ確認個体数割合

蓮ダム

谷野柏野堰

新塩ヶ瀬橋

放流日翌日

(5/21-22)蓮ダム

奥香肌湖

櫛田川

青田川

蓮川

蓮川

新塩ヶ瀬橋

凡例:アユの確認の数

1~10

11~50

51~99

100 以上

稚アユ放流地点

土砂投入地点

新塩ヶ瀬橋

谷野柏野堰

蓮ダム

放流 3 週間後

(6/11-12)

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

出典:平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び河川環境調査業務 報告書

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蓮 6-23

5) 考察

アユの確認数が多いのは、平瀬もしくは早瀬、淵、トロの順となっており、一般的

にアユの生息場所といわれる早瀬、平瀬での確認割合は 60~80%であった。

この結果から、蓮川では淵、トロよりも明らかに早瀬、平瀬を選択してアユは分布

していることが示唆された。

このことから、蓮川におけるアユの生息環境の保全には早瀬、平瀬といった瀬環境

の保全が重要であると考えられる。

また、現在ダム下流で行っている土砂投入対策には、河床を上昇させ浮石から成る

良好な瀬環境を再生する効果も期待される。

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蓮 6-24

【文献・資料リスト】 蓮ダム 19 年年次報告書に使用した文献・資料リスト

NO. 文献・資料名 発行者 発行年月

6-1 平成 19 年度 蓮ダム水辺の国勢調査及び

河川環境調査業務 報告書

株式会社 環境調査

技術研究所

H20.3

6-2 平成 19 年度 中部地方ダム等管理フォ

ローアップ委員会 蓮ダム定期報告書

(案)

国土交通省中部地方

整備局

H19.12