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1
有機-無機マイクロカプセルへの酵素等のナノ触媒の固定化
宇都宮大学 工学部 応用化学科
研究員 倉山 文男
2
研究の背景
酵素・・温和な条件で特定の反応を進行させる優れた触媒
包括法
格子型 マイクロカプセル型
・ゲル化条件および酵素のサイズに依存
包括法は、酵素を化学修飾しないために適用範囲が広い
工業プロセスに組み込む場合には酵素の固定化が必要
3
アルギン酸とは
アルギン酸ナトリウム(AlgNa)
架橋剤O
OO-
O-O
O
O-O-
O
O-O
O-
O
‘Egg box’ model
Ca2+
ゲル化
利点 ・二価の金属カチオンで簡単にゲル化
・生体親和性が高い
コンブ、ワカメに代表される褐藻類に特有な天然多糖類
用途 食品、医薬品、化粧品、工業品
OH
HOH
HH
OH
COONa
H
OH
H
COONa
H
OHOH
H HO
O
n
4
従来技術と問題点①
アルギン酸を用いた固定化酵素の作成例
CaCl2 酵素
酵素の内包・固定化
アルギン酸を架橋溶液(CaCl2)に滴下するだけの簡単な方法
AlgNa水溶液
CaCl2水溶液
欠点・低分子量の酵素(300kDa以下)は内包できない。・金属カチオンが外れるとゲルが溶解する。
5
従来技術と問題点②
無機成分(シラン化合物など)
アルギン酸
複合化
細孔の緻密化
安定性の向上
ハイブリッド担体
酵素の保持能力の向上
アルギン酸ゲルビーズやカプセルへの適用例
主に3つの方法に分類
第1法 シリカのアルコキシド、シリカコロイド、触媒
第2法 シリカのアルコキシド、シランカップリング剤、有機溶媒
第3法 ケイ酸ナトリウム、ポリペプチド(凝集剤)
6
従来技術と問題点②(つづき)
ゲル化
シロキサン-ヘキサン混合液
Siloxane層の形成回収架橋溶液
第2法アルギン酸
NaSiO3溶液
第3法アルギン酸
ゲル化
架橋溶液凝集剤の導入
凝集剤溶液 回収
Siloxane層の形成
ゲル化/複合化
架橋溶液
調製
第1法
回収
アルギン酸-シリカゾル混合液
多段階プロセス(酵素ロス)
有機溶媒の使用
凝集剤の使用
触媒の使用
欠点
7
新技術の概要①
APTES
AlgNa水溶液
CaCl2+APTES水溶液
Si
OCH2CH3
OCH2CH3
OCH2CH3
(CH2)3H2N
アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)…水中で安定に溶解
CaCl2 酵素
アミノ系シランカップリング剤(APTES)の添加
有機溶媒凝集剤触媒
一切使用しない
本法の特徴…簡単(1step)
新しい作成法
8
有機-無機カプセルの特徴①
APビーズAPTES:0.3MCaCl2:0.03M
1 mm
AlgビーズAPTES:なしCaCl2:0.01M
AlgNa水溶液
CaCl2+APTES水溶液
アルギン酸を用いたアルギン酸ビーズ(Algビーズ)作成法の簡便性を損なうこと無く、有機-無機カプセル(APビーズ)の作成が可能
9
有機-無機カプセルの特徴②
APビーズ
ギ酸脱水素酵素(FDH)を固定化した例モデル酵素
0
20
40
60
80
100
0.3M0.2M0.1M0.05Mなし
固定
化率
(%
)
APTES濃度
0
20
40
60
80
100
1 2 3 4 5 6
繰り
返し
利用
効率
(%
)
繰り返し利用回数
APビーズ
Algビーズ
100%固定化が可能
再利用可能Algビーズ
固定化率40%程度
再利用不可能
(分子量74,000Da)
10
新技術の概要②
・高粘性液体・CaCl2・酵素・AAPTS
AlgNa水溶液AAPTSCaCl2 酵素AlgNa
アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(AAPTS)…水中で安定に溶解
Si
OCH3
OCH3
(CH2)3H2N OCH3(CH2)2 HN
アミノ系シランカップリング剤(AAPTS)の添加
有機溶媒凝集剤触媒
一切使用しない
本法の特徴…簡単(1step)
新しい作成法
11
有機-無機カプセルの特徴①
・高粘性液体・CaCl2・酵素・AAPTS
AlgNa水溶液
2 mm
500 µm
50 µm 100 µm
AEAビーズAAPTS:0.05MCaCl2:0.05M
AlgビーズAAPTS:なしCaCl2:0.05M
従来法の簡便性を損なうこと無く、有機-無機カプセル(AEAビーズ)の作成が可能
12
有機-無機カプセルの特徴②
ギ酸脱水素酵素(FDH)を固定化した例モデル酵素
(分子量74,000)
0
20
40
60
80
100
AAPTSなし pH7 pH8
固定
化率
(%
)
0
20
40
60
80
100
1 3 5 7 9繰
り返
し利
用効
率(%
)繰り返し利用回数
AEAカプセル
Algカプセル
AEAカプセル
100%固定化が可能
再利用可能
Algビーズ固定化率60%程度
再利用不可能
13
有機-無機カプセルの特徴③
補酵素(NADH)のカプセルへの拡散挙動の例(分子量665)
0.8
0.85
0.9
0.95
1
1.05
0 5 10 15 20 25 30
C/C0
時間(h)
0.05M
0.03M
0.01M
カプセル作成時のAAPTS濃度によって拡散挙動が大きく変わる
AAPTS濃度
14
想定される用途
• 高付加価値の化合物を生産する酵素の固定化担体。複数の酵素による多段階反応にも有効であると考えられる。
• 徐放性製剤への利用。
• 酵素以外にも、無機固体触媒の固定化と触媒反応において当技術が有効であることを確認しており、常温での反応を進行させる触媒に広く適用できる可能性がある。
• 汚染金属イオンの吸着剤
15
実用化に向けた課題
• 従来技術と同様に、本技術においても二価の金属カチオンが脱離するとカプセルが溶解する。用途によっては、化学架橋や、カチオン性ポリマーの利用を検討する必要がある。
• 用途の探索。
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企業への期待
• 酵素を利用している企業、酵素の担体を探索している企業、との共同研究を希望。
• 原理的には、カプセルのみではなく、シート状、ブロック状、チューブ状などの従来法で達成できる様々な形状のアルギン酸ゲルに本技術は利用できると考えられます。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :マイクロカプセルの製造方法
• 出願番号 :特願2011-163733• 出願人 :宇都宮大学
• 発明者 :倉山文男、鈴木昇、佐藤正秀、
古澤毅、小川翼
18
問い合わせ先
宇都宮大学 地域共生研究開発センター
産学連携・知的財産部門
准教授 野本 義弘
TEL 028-689 - 6317
FAX 028-689 - 6320
e-mail nomoto@cc.utsunomiya-u.ac.jp