70
No.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 . 巻頭言 環境保全センター長 藤 井   聡 山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 普段見過ごしている山形の自然景観案内 ― 出羽山地が作る地域性を読み取る ― 国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 金   英 樹 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開 編集後記 NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章 センター業務報告 CONTENTS 目次

NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

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Page 1: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

No23

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2020年3月

環境保全

 NO

23

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学地域教育文化学部  八 木 浩 司

普段見過ごしている山形の自然景観案内― 出羽山地が作る地域性を読み取る ―

国土交通省新庄河川事務所  光 永 健 男山形大学地域教育文化学部  八 木 浩 司

山形大学大学院教育実践研究科  村 山 良 之

  金   英 樹

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

編集後記

NPO土砂災害広報センター  緒 續 英 章

センター業務報告

CONTENTS 目次

  巻頭言

環境保全センター長 藤 井   聡  

 山形県はその周囲を北から独立峰の鳥海山出羽三山である羽黒山月山湯殿山朝日連

峰蔵王連峰飯豊連峰および吾妻連峰の秀峰に囲まれています最上川は吾妻山付近に源

を発し山形県中央部を北に流れ新庄市付近で西に向きを変え庄内に至り日本海に注いでいま

す山形大学は米沢山形鶴岡の各市にキャンパスを置きこれら自然に囲まれて教育研究

活動を行っています

 「環境保全」では毎年「山形県の自然環境」をテーマに学内外の多くの先生がたにご寄稿いた

だいています今年度は八木浩司先生(山形大学地域教育文化学部)に「普段見過ごしている山

形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」をご寄稿していただきましたそこで

は出羽三山および最上川の成り立ちをはじめ幅広い話題を取り上げられており「山形県の自

然環境」についての「知の集積」と言えましょう

 また村山良之先生(山形大学大学院教育実践研究科)八木浩司先生(山形大学地域教育文

化学部)光永健男氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広

報センター)に「「大雨避難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました庄内地

区は出羽三山と最上川水系により自然環境が特徴付けられているといっても過言ではないと思わ

れますとくに立谷沢川は月山の東麓を回り込んで北流し最上川に至る荒廃河川で庄内町

では洪水被害を招く危険性があるとされていますご寄稿には「山形県庄内町を中心とする小

中学校で児童生徒が土砂災害とその防災策について学ぶとともに実際の判断や行動が難しい

大雨時に避難について児童生徒が話し合いながら考える」ための教育実践について詳細な報

告がなされています

 原稿を拝読いたしますと「山形県の自然と環境」「山形県の自然の優しさと厳しさ」について

諸先生方が如何に情熱的に研究されているかが伺えますそして先生方の研究において「山形

の自然と環境」「庄内での土砂災害の危険とその回避」を知ることは「日本の自然と環境」を知

ることであり「日本の子供たちを自然の脅威」から守ることであるとの強いメッセージを読み

取ることができます

 山形大学は研究と教育を通じて「地域と共生」し「社会に貢献」しています山形大学環境

保全センターはこれからも「地域との共生および社会への貢献」を果たすために積極的に環境

情報を発信してゆく所存です

飯田キャンパス内から西蔵王および龍山を望む

―3―

センター業務報告

1年度別実験廃液発生量の推移

2平成30年度の部局別廃液発生量

3平成30年度の廃液の内訳

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

5第37回大学等環境安全協議会総会研修会参加報告

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参加報告

1年度別実験廃液発生量の推移

 平成元年度から平成30年度までの30年間におけ

る学内から排出された実験廃液の発生量を「グ

ラフⅠ廃液発生量の推移」に示します

 無機廃液の発生量は平成5年度の約7700ℓをピークに平成7年度から12年度は約3000ℓで推移していました平成13年度以降は1617年度に若干減少したものの約5000ℓとなり

2324年度には約7000ℓと増加しています平

成25年度以降は4500ℓ前後で推移しています

 有機系廃液の発生量は平成元年度から4年

度まで約2000ℓ前後とほぼ横ばい状態でした

が平成5年度から著しい増加傾向を示し15年度には約22000ℓに達しました平成16年度から

23年度は20000plusmn約3000ℓで推移しましたが

平成24年度は約28000ℓに増加しています平成

25年度以降は漸減傾向にあり30年度は約22000ℓでした今後は22000ℓ前後で推移していくも

のと思われます

グラフ Ⅰ 廃液発生量の推移

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

H1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29

廃液量(L)

年度

無機廃液

有機廃液

―4―

2平成30年度の部局別廃液発生量

 平成30年度における部局別廃液の発生量を棒グ

ラフにして示しますグラフⅡが「平成30年度無

廃液発生量」グラフⅢが「平成30年度有機廃液

発生量」です

 無機廃液の部局別発生量は全学合計4269ℓの内工学部が2596ℓ(全体の61)農学部1513ℓ(35)理学部50ℓ(12)地域教育文化

学部40ℓ(09)医学部39ℓ(09)附属病

院16ℓ(04)附属学校15ℓ(04)でした

 有機廃液の部局別発生量は全学合計22006ℓの内工学部が18306ℓ(全体の83)附属病院1220ℓ(55)農学部1141ℓ(52)医

学部800ℓ(36)理学部500ℓ(23)地域

教育文化学部39ℓ(02)でした

 無機廃液はその大部分が工学部と農学部からの

発生量となっており有機廃液の大部分は工学部

からの発生量となっています 

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

グラフ Ⅱ 平成30年度 部局別発生量(無機廃液)

グラフⅢ 平成30年度 部局別発生量(有機廃液)

―5―

3平成30年度の廃液の内訳

 種類別の廃液発生量百分率を円グラフで示しま

すグラフⅣが「平成30年度無機廃液の内訳」

グラフⅤが「平成30年度有機廃液の内訳」です

比較するため平成29年度のグラフをその下に示

しました

 無機廃液は発生量の多い順に一般重金属化合

物447酸及びアルカリ廃液412ホウ素廃

液77フッ素廃液41となっています写真

廃液は医学部で現像液108ℓと定着液45ℓが発

生しました

 有機廃液は発生量の多い順に可燃性廃液(炭

化水素系溶剤)407難燃性廃液265ハロ

ゲン系廃液256となっています分類別廃液発

生量の割合は平成27年度までの10年以上ほぼ同様

の傾向を示しハロゲン系廃液と可燃性廃液(炭

化水素系溶剤)がそれぞれ全体の3分の1以上を

占めていました平成28年度以降この傾向に変化

がみられハロゲン系廃液が減少するとともに難

燃性廃液が増加しています平成30年度はこれま

でで初めて難燃性廃液の発生量がハロゲン系廃液

を上回りました

グラフⅣ 平成30年度 無機廃液の内訳

重金属系廃液

1910 447

酸及びアルカリ廃液

1759 412

ホウ素廃液331

77

フッ素廃液175

41

六価クロム系廃液56

13

ヒ素廃液20

05

シアン廃液18

04

難分解シアン廃液5

01 水銀系廃液0

00

水銀系廃液0

00

―6―

グラフ Ⅳ 平成29年度 無機廃液の内訳

グラフⅤ 平成30年度 有機廃液の内訳

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

―7―

グラフenspⅤ 平成29年度 有機廃液の内訳

可燃性廃液8960 390

ハロゲン系廃液6303275

難燃性廃液6099266

含窒素系有機物44920

廃油44619

重金属含有有機廃液329

14

特殊引火性物質含有廃液

32814 含硫黄系有機物

4002

―8―

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

 鶴岡キャンパス実験排水系において平成30年4

月にBOD値がまた飯田キャンパスNo1枡にお

いて平成31年1月にn-ヘキサン抽出物質(動植物

油脂類)が排水基準値を超えた基準値を超えた

項目は他に無かったが鶴岡キャンパスを除く3

キャンパスにおいてBODn-ヘキサン抽出物質

(動植物油脂類)が複数回排水基準値の8割を超

えていた

飯田キャンパス

―9―

50~90 86 79 73 76 84 75 67 79 7 86 71 84 7600 430 430 170 120 140 110 430 320 160 120 290 160 390600 300 290 65 75 90 79 98 300 87 89 140 87 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 30 23 10 64 77 40 22 21 11 45 30 64 25

220 96 31 - - - - - 96 - - - 11 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 0006 - - - - - - - 0006 0006 - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

02 00 - - - - - - - - - - - -

002 000 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 85 83 85 82 85 82 83 80 71 82 84 81 82600 580 310 580 410 580 200 350 220 200 560 250 580 160600 250 190 160 94 180 130 250 120 120 140 190 80 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 19 15 67 10 14 75 19 68 11 11 67 73 65

220 99 26 31 11 26 36 99 31 12 26 22 13 14

50~90 86 85 86 76 75 77 77 79 75 76 82 84 77600 530 260 430 97 170 230 110 240 180 84 190 530 69600 240 220 96 72 130 180 87 220 210 83 180 240 50

5 0 - - - - - - - - - - - -

30 28 15 21 7 16 81 72 13 14 39 11 28 29

220 76 46 76 - 14 15 - 69 17 - 17 24 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 - 0006 - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -02 00 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 88 80 88 86 68 77 81 85 79 77 84 67 78600 230 82 150 230 34 53 69 130 29 30 74 36 80600 330 35 76 160 11 57 38 120 20 16 44 12 330

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 24 18 24 12 14 21 94 86 - - 65 - 25

220 110 17 17 18 - - - 110 - - 11 - -

50~90 72 70 69 72 71 72 72 72 68 69 72 70 69600 210 21 13 24 - 13 21 12 21 - 23 34 13600 83 44 50 43 - 15 26 - 83 17 22 38 25

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 12 - - - - - - - - - - 12 -

220 00 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

14 枡

4 枡

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBODSS

六価クロム

砒素

総水銀

アルキル水銀

1 枡

採水場所

採水日最高値

採水日

採水日

412 510

採水日

412 510

510

最高値

測定項目

排水基準 最高値

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

採水場所

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

ジクロロメタン

ベンゼン

採水場所

測定項目

排水基準

2 枡

3 枡

pHBODSS

214510

測定項目

排水基準 最高値

412

最高値

よう素消費量

カドミウム

シアン

ジクロロメタン

四塩化炭素

ベンゼン

よう素消費量

314

118 1213 110 214 314614 712 89 913 1011

110 214 314

614 712 89 913 1011 118 1213 110

118712

214 314

pH

712 89 913 1011 118 1213 110 214 314

89 913 1011 118 1213

採水日

412

614 89 913 1011 1213

ハイフン(-)検出限界以下

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

110

412 510 614

よう素消費量

カドミウム

シアン

六価クロム

砒素

614 712

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

総水銀

アルキル水銀

四塩化炭素

BODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

―10―

小白川キャンパス

50~90 89 88 85 89 88 600 590 280 230 480 590 600 270 270 200 84 120

5 00 - - - -

30 7 70 64 44 28

220 43 15 14 19 43 102 100 66 102 100

01 - - 01 01

01 000 - - - - 1 0 - - - - 1 0 - - - -

01 00 - - - - 05 00 - - - - 01 000 - - - -

0005 0000 - - - - 5 0 - - - - 3 006 001 - 006 - 5 069 0077 0087 069 0059 10 031 007 029 031 003 10 004 - 002 004 - 2 000 - - - - 8 015 012 010 015 004

要注意項目基準値オーバー

10月 1114 12月 1月 27 3月

12月 1月 214 3月7月 823 9月

6月 7月 829

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素

pHBODSS

よう素消費量アンモニア性窒素

生活排水系桝

採水日最高値

採水日

4月 524

4月 523

H30年度

H30年度

砒素総水銀

フェノール類

カドミウムシアン

有機りん鉛

六価クロム

最高値

380

10月 1115

9月

6月

斜線()測定せずハイフン(-)検出限界以下

実験排水系桝

溶解性鉄溶解性マンガン

クロムフッ素

銅亜鉛

(mgℓ)

(mgℓ)

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 2: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

  巻頭言

環境保全センター長 藤 井   聡  

 山形県はその周囲を北から独立峰の鳥海山出羽三山である羽黒山月山湯殿山朝日連

峰蔵王連峰飯豊連峰および吾妻連峰の秀峰に囲まれています最上川は吾妻山付近に源

を発し山形県中央部を北に流れ新庄市付近で西に向きを変え庄内に至り日本海に注いでいま

す山形大学は米沢山形鶴岡の各市にキャンパスを置きこれら自然に囲まれて教育研究

活動を行っています

 「環境保全」では毎年「山形県の自然環境」をテーマに学内外の多くの先生がたにご寄稿いた

だいています今年度は八木浩司先生(山形大学地域教育文化学部)に「普段見過ごしている山

形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」をご寄稿していただきましたそこで

は出羽三山および最上川の成り立ちをはじめ幅広い話題を取り上げられており「山形県の自

然環境」についての「知の集積」と言えましょう

 また村山良之先生(山形大学大学院教育実践研究科)八木浩司先生(山形大学地域教育文

化学部)光永健男氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広

報センター)に「「大雨避難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました庄内地

区は出羽三山と最上川水系により自然環境が特徴付けられているといっても過言ではないと思わ

れますとくに立谷沢川は月山の東麓を回り込んで北流し最上川に至る荒廃河川で庄内町

では洪水被害を招く危険性があるとされていますご寄稿には「山形県庄内町を中心とする小

中学校で児童生徒が土砂災害とその防災策について学ぶとともに実際の判断や行動が難しい

大雨時に避難について児童生徒が話し合いながら考える」ための教育実践について詳細な報

告がなされています

 原稿を拝読いたしますと「山形県の自然と環境」「山形県の自然の優しさと厳しさ」について

諸先生方が如何に情熱的に研究されているかが伺えますそして先生方の研究において「山形

の自然と環境」「庄内での土砂災害の危険とその回避」を知ることは「日本の自然と環境」を知

ることであり「日本の子供たちを自然の脅威」から守ることであるとの強いメッセージを読み

取ることができます

 山形大学は研究と教育を通じて「地域と共生」し「社会に貢献」しています山形大学環境

保全センターはこれからも「地域との共生および社会への貢献」を果たすために積極的に環境

情報を発信してゆく所存です

飯田キャンパス内から西蔵王および龍山を望む

―3―

センター業務報告

1年度別実験廃液発生量の推移

2平成30年度の部局別廃液発生量

3平成30年度の廃液の内訳

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

5第37回大学等環境安全協議会総会研修会参加報告

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参加報告

1年度別実験廃液発生量の推移

 平成元年度から平成30年度までの30年間におけ

る学内から排出された実験廃液の発生量を「グ

ラフⅠ廃液発生量の推移」に示します

 無機廃液の発生量は平成5年度の約7700ℓをピークに平成7年度から12年度は約3000ℓで推移していました平成13年度以降は1617年度に若干減少したものの約5000ℓとなり

2324年度には約7000ℓと増加しています平

成25年度以降は4500ℓ前後で推移しています

 有機系廃液の発生量は平成元年度から4年

度まで約2000ℓ前後とほぼ横ばい状態でした

が平成5年度から著しい増加傾向を示し15年度には約22000ℓに達しました平成16年度から

23年度は20000plusmn約3000ℓで推移しましたが

平成24年度は約28000ℓに増加しています平成

25年度以降は漸減傾向にあり30年度は約22000ℓでした今後は22000ℓ前後で推移していくも

のと思われます

グラフ Ⅰ 廃液発生量の推移

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

H1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29

廃液量(L)

年度

無機廃液

有機廃液

―4―

2平成30年度の部局別廃液発生量

 平成30年度における部局別廃液の発生量を棒グ

ラフにして示しますグラフⅡが「平成30年度無

廃液発生量」グラフⅢが「平成30年度有機廃液

発生量」です

 無機廃液の部局別発生量は全学合計4269ℓの内工学部が2596ℓ(全体の61)農学部1513ℓ(35)理学部50ℓ(12)地域教育文化

学部40ℓ(09)医学部39ℓ(09)附属病

院16ℓ(04)附属学校15ℓ(04)でした

 有機廃液の部局別発生量は全学合計22006ℓの内工学部が18306ℓ(全体の83)附属病院1220ℓ(55)農学部1141ℓ(52)医

学部800ℓ(36)理学部500ℓ(23)地域

教育文化学部39ℓ(02)でした

 無機廃液はその大部分が工学部と農学部からの

発生量となっており有機廃液の大部分は工学部

からの発生量となっています 

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

グラフ Ⅱ 平成30年度 部局別発生量(無機廃液)

グラフⅢ 平成30年度 部局別発生量(有機廃液)

―5―

3平成30年度の廃液の内訳

 種類別の廃液発生量百分率を円グラフで示しま

すグラフⅣが「平成30年度無機廃液の内訳」

グラフⅤが「平成30年度有機廃液の内訳」です

比較するため平成29年度のグラフをその下に示

しました

 無機廃液は発生量の多い順に一般重金属化合

物447酸及びアルカリ廃液412ホウ素廃

液77フッ素廃液41となっています写真

廃液は医学部で現像液108ℓと定着液45ℓが発

生しました

 有機廃液は発生量の多い順に可燃性廃液(炭

化水素系溶剤)407難燃性廃液265ハロ

ゲン系廃液256となっています分類別廃液発

生量の割合は平成27年度までの10年以上ほぼ同様

の傾向を示しハロゲン系廃液と可燃性廃液(炭

化水素系溶剤)がそれぞれ全体の3分の1以上を

占めていました平成28年度以降この傾向に変化

がみられハロゲン系廃液が減少するとともに難

燃性廃液が増加しています平成30年度はこれま

でで初めて難燃性廃液の発生量がハロゲン系廃液

を上回りました

グラフⅣ 平成30年度 無機廃液の内訳

重金属系廃液

1910 447

酸及びアルカリ廃液

1759 412

ホウ素廃液331

77

フッ素廃液175

41

六価クロム系廃液56

13

ヒ素廃液20

05

シアン廃液18

04

難分解シアン廃液5

01 水銀系廃液0

00

水銀系廃液0

00

―6―

グラフ Ⅳ 平成29年度 無機廃液の内訳

グラフⅤ 平成30年度 有機廃液の内訳

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

―7―

グラフenspⅤ 平成29年度 有機廃液の内訳

可燃性廃液8960 390

ハロゲン系廃液6303275

難燃性廃液6099266

含窒素系有機物44920

廃油44619

重金属含有有機廃液329

14

特殊引火性物質含有廃液

32814 含硫黄系有機物

4002

―8―

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

 鶴岡キャンパス実験排水系において平成30年4

月にBOD値がまた飯田キャンパスNo1枡にお

いて平成31年1月にn-ヘキサン抽出物質(動植物

油脂類)が排水基準値を超えた基準値を超えた

項目は他に無かったが鶴岡キャンパスを除く3

キャンパスにおいてBODn-ヘキサン抽出物質

(動植物油脂類)が複数回排水基準値の8割を超

えていた

飯田キャンパス

―9―

50~90 86 79 73 76 84 75 67 79 7 86 71 84 7600 430 430 170 120 140 110 430 320 160 120 290 160 390600 300 290 65 75 90 79 98 300 87 89 140 87 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 30 23 10 64 77 40 22 21 11 45 30 64 25

220 96 31 - - - - - 96 - - - 11 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 0006 - - - - - - - 0006 0006 - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

02 00 - - - - - - - - - - - -

002 000 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 85 83 85 82 85 82 83 80 71 82 84 81 82600 580 310 580 410 580 200 350 220 200 560 250 580 160600 250 190 160 94 180 130 250 120 120 140 190 80 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 19 15 67 10 14 75 19 68 11 11 67 73 65

220 99 26 31 11 26 36 99 31 12 26 22 13 14

50~90 86 85 86 76 75 77 77 79 75 76 82 84 77600 530 260 430 97 170 230 110 240 180 84 190 530 69600 240 220 96 72 130 180 87 220 210 83 180 240 50

5 0 - - - - - - - - - - - -

30 28 15 21 7 16 81 72 13 14 39 11 28 29

220 76 46 76 - 14 15 - 69 17 - 17 24 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 - 0006 - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -02 00 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 88 80 88 86 68 77 81 85 79 77 84 67 78600 230 82 150 230 34 53 69 130 29 30 74 36 80600 330 35 76 160 11 57 38 120 20 16 44 12 330

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 24 18 24 12 14 21 94 86 - - 65 - 25

220 110 17 17 18 - - - 110 - - 11 - -

50~90 72 70 69 72 71 72 72 72 68 69 72 70 69600 210 21 13 24 - 13 21 12 21 - 23 34 13600 83 44 50 43 - 15 26 - 83 17 22 38 25

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 12 - - - - - - - - - - 12 -

220 00 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

14 枡

4 枡

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBODSS

六価クロム

砒素

総水銀

アルキル水銀

1 枡

採水場所

採水日最高値

採水日

採水日

412 510

採水日

412 510

510

最高値

測定項目

排水基準 最高値

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

採水場所

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

ジクロロメタン

ベンゼン

採水場所

測定項目

排水基準

2 枡

3 枡

pHBODSS

214510

測定項目

排水基準 最高値

412

最高値

よう素消費量

カドミウム

シアン

ジクロロメタン

四塩化炭素

ベンゼン

よう素消費量

314

118 1213 110 214 314614 712 89 913 1011

110 214 314

614 712 89 913 1011 118 1213 110

118712

214 314

pH

712 89 913 1011 118 1213 110 214 314

89 913 1011 118 1213

採水日

412

614 89 913 1011 1213

ハイフン(-)検出限界以下

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

110

412 510 614

よう素消費量

カドミウム

シアン

六価クロム

砒素

614 712

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

総水銀

アルキル水銀

四塩化炭素

BODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

―10―

小白川キャンパス

50~90 89 88 85 89 88 600 590 280 230 480 590 600 270 270 200 84 120

5 00 - - - -

30 7 70 64 44 28

220 43 15 14 19 43 102 100 66 102 100

01 - - 01 01

01 000 - - - - 1 0 - - - - 1 0 - - - -

01 00 - - - - 05 00 - - - - 01 000 - - - -

0005 0000 - - - - 5 0 - - - - 3 006 001 - 006 - 5 069 0077 0087 069 0059 10 031 007 029 031 003 10 004 - 002 004 - 2 000 - - - - 8 015 012 010 015 004

要注意項目基準値オーバー

10月 1114 12月 1月 27 3月

12月 1月 214 3月7月 823 9月

6月 7月 829

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素

pHBODSS

よう素消費量アンモニア性窒素

生活排水系桝

採水日最高値

採水日

4月 524

4月 523

H30年度

H30年度

砒素総水銀

フェノール類

カドミウムシアン

有機りん鉛

六価クロム

最高値

380

10月 1115

9月

6月

斜線()測定せずハイフン(-)検出限界以下

実験排水系桝

溶解性鉄溶解性マンガン

クロムフッ素

銅亜鉛

(mgℓ)

(mgℓ)

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 3: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―3―

センター業務報告

1年度別実験廃液発生量の推移

2平成30年度の部局別廃液発生量

3平成30年度の廃液の内訳

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

5第37回大学等環境安全協議会総会研修会参加報告

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参加報告

1年度別実験廃液発生量の推移

 平成元年度から平成30年度までの30年間におけ

る学内から排出された実験廃液の発生量を「グ

ラフⅠ廃液発生量の推移」に示します

 無機廃液の発生量は平成5年度の約7700ℓをピークに平成7年度から12年度は約3000ℓで推移していました平成13年度以降は1617年度に若干減少したものの約5000ℓとなり

2324年度には約7000ℓと増加しています平

成25年度以降は4500ℓ前後で推移しています

 有機系廃液の発生量は平成元年度から4年

度まで約2000ℓ前後とほぼ横ばい状態でした

が平成5年度から著しい増加傾向を示し15年度には約22000ℓに達しました平成16年度から

23年度は20000plusmn約3000ℓで推移しましたが

平成24年度は約28000ℓに増加しています平成

25年度以降は漸減傾向にあり30年度は約22000ℓでした今後は22000ℓ前後で推移していくも

のと思われます

グラフ Ⅰ 廃液発生量の推移

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

H1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29

廃液量(L)

年度

無機廃液

有機廃液

―4―

2平成30年度の部局別廃液発生量

 平成30年度における部局別廃液の発生量を棒グ

ラフにして示しますグラフⅡが「平成30年度無

廃液発生量」グラフⅢが「平成30年度有機廃液

発生量」です

 無機廃液の部局別発生量は全学合計4269ℓの内工学部が2596ℓ(全体の61)農学部1513ℓ(35)理学部50ℓ(12)地域教育文化

学部40ℓ(09)医学部39ℓ(09)附属病

院16ℓ(04)附属学校15ℓ(04)でした

 有機廃液の部局別発生量は全学合計22006ℓの内工学部が18306ℓ(全体の83)附属病院1220ℓ(55)農学部1141ℓ(52)医

学部800ℓ(36)理学部500ℓ(23)地域

教育文化学部39ℓ(02)でした

 無機廃液はその大部分が工学部と農学部からの

発生量となっており有機廃液の大部分は工学部

からの発生量となっています 

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

グラフ Ⅱ 平成30年度 部局別発生量(無機廃液)

グラフⅢ 平成30年度 部局別発生量(有機廃液)

―5―

3平成30年度の廃液の内訳

 種類別の廃液発生量百分率を円グラフで示しま

すグラフⅣが「平成30年度無機廃液の内訳」

グラフⅤが「平成30年度有機廃液の内訳」です

比較するため平成29年度のグラフをその下に示

しました

 無機廃液は発生量の多い順に一般重金属化合

物447酸及びアルカリ廃液412ホウ素廃

液77フッ素廃液41となっています写真

廃液は医学部で現像液108ℓと定着液45ℓが発

生しました

 有機廃液は発生量の多い順に可燃性廃液(炭

化水素系溶剤)407難燃性廃液265ハロ

ゲン系廃液256となっています分類別廃液発

生量の割合は平成27年度までの10年以上ほぼ同様

の傾向を示しハロゲン系廃液と可燃性廃液(炭

化水素系溶剤)がそれぞれ全体の3分の1以上を

占めていました平成28年度以降この傾向に変化

がみられハロゲン系廃液が減少するとともに難

燃性廃液が増加しています平成30年度はこれま

でで初めて難燃性廃液の発生量がハロゲン系廃液

を上回りました

グラフⅣ 平成30年度 無機廃液の内訳

重金属系廃液

1910 447

酸及びアルカリ廃液

1759 412

ホウ素廃液331

77

フッ素廃液175

41

六価クロム系廃液56

13

ヒ素廃液20

05

シアン廃液18

04

難分解シアン廃液5

01 水銀系廃液0

00

水銀系廃液0

00

―6―

グラフ Ⅳ 平成29年度 無機廃液の内訳

グラフⅤ 平成30年度 有機廃液の内訳

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

―7―

グラフenspⅤ 平成29年度 有機廃液の内訳

可燃性廃液8960 390

ハロゲン系廃液6303275

難燃性廃液6099266

含窒素系有機物44920

廃油44619

重金属含有有機廃液329

14

特殊引火性物質含有廃液

32814 含硫黄系有機物

4002

―8―

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

 鶴岡キャンパス実験排水系において平成30年4

月にBOD値がまた飯田キャンパスNo1枡にお

いて平成31年1月にn-ヘキサン抽出物質(動植物

油脂類)が排水基準値を超えた基準値を超えた

項目は他に無かったが鶴岡キャンパスを除く3

キャンパスにおいてBODn-ヘキサン抽出物質

(動植物油脂類)が複数回排水基準値の8割を超

えていた

飯田キャンパス

―9―

50~90 86 79 73 76 84 75 67 79 7 86 71 84 7600 430 430 170 120 140 110 430 320 160 120 290 160 390600 300 290 65 75 90 79 98 300 87 89 140 87 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 30 23 10 64 77 40 22 21 11 45 30 64 25

220 96 31 - - - - - 96 - - - 11 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 0006 - - - - - - - 0006 0006 - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

02 00 - - - - - - - - - - - -

002 000 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 85 83 85 82 85 82 83 80 71 82 84 81 82600 580 310 580 410 580 200 350 220 200 560 250 580 160600 250 190 160 94 180 130 250 120 120 140 190 80 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 19 15 67 10 14 75 19 68 11 11 67 73 65

220 99 26 31 11 26 36 99 31 12 26 22 13 14

50~90 86 85 86 76 75 77 77 79 75 76 82 84 77600 530 260 430 97 170 230 110 240 180 84 190 530 69600 240 220 96 72 130 180 87 220 210 83 180 240 50

5 0 - - - - - - - - - - - -

30 28 15 21 7 16 81 72 13 14 39 11 28 29

220 76 46 76 - 14 15 - 69 17 - 17 24 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 - 0006 - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -02 00 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 88 80 88 86 68 77 81 85 79 77 84 67 78600 230 82 150 230 34 53 69 130 29 30 74 36 80600 330 35 76 160 11 57 38 120 20 16 44 12 330

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 24 18 24 12 14 21 94 86 - - 65 - 25

220 110 17 17 18 - - - 110 - - 11 - -

50~90 72 70 69 72 71 72 72 72 68 69 72 70 69600 210 21 13 24 - 13 21 12 21 - 23 34 13600 83 44 50 43 - 15 26 - 83 17 22 38 25

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 12 - - - - - - - - - - 12 -

220 00 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

14 枡

4 枡

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBODSS

六価クロム

砒素

総水銀

アルキル水銀

1 枡

採水場所

採水日最高値

採水日

採水日

412 510

採水日

412 510

510

最高値

測定項目

排水基準 最高値

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

採水場所

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

ジクロロメタン

ベンゼン

採水場所

測定項目

排水基準

2 枡

3 枡

pHBODSS

214510

測定項目

排水基準 最高値

412

最高値

よう素消費量

カドミウム

シアン

ジクロロメタン

四塩化炭素

ベンゼン

よう素消費量

314

118 1213 110 214 314614 712 89 913 1011

110 214 314

614 712 89 913 1011 118 1213 110

118712

214 314

pH

712 89 913 1011 118 1213 110 214 314

89 913 1011 118 1213

採水日

412

614 89 913 1011 1213

ハイフン(-)検出限界以下

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

110

412 510 614

よう素消費量

カドミウム

シアン

六価クロム

砒素

614 712

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

総水銀

アルキル水銀

四塩化炭素

BODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

―10―

小白川キャンパス

50~90 89 88 85 89 88 600 590 280 230 480 590 600 270 270 200 84 120

5 00 - - - -

30 7 70 64 44 28

220 43 15 14 19 43 102 100 66 102 100

01 - - 01 01

01 000 - - - - 1 0 - - - - 1 0 - - - -

01 00 - - - - 05 00 - - - - 01 000 - - - -

0005 0000 - - - - 5 0 - - - - 3 006 001 - 006 - 5 069 0077 0087 069 0059 10 031 007 029 031 003 10 004 - 002 004 - 2 000 - - - - 8 015 012 010 015 004

要注意項目基準値オーバー

10月 1114 12月 1月 27 3月

12月 1月 214 3月7月 823 9月

6月 7月 829

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素

pHBODSS

よう素消費量アンモニア性窒素

生活排水系桝

採水日最高値

採水日

4月 524

4月 523

H30年度

H30年度

砒素総水銀

フェノール類

カドミウムシアン

有機りん鉛

六価クロム

最高値

380

10月 1115

9月

6月

斜線()測定せずハイフン(-)検出限界以下

実験排水系桝

溶解性鉄溶解性マンガン

クロムフッ素

銅亜鉛

(mgℓ)

(mgℓ)

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 4: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―4―

2平成30年度の部局別廃液発生量

 平成30年度における部局別廃液の発生量を棒グ

ラフにして示しますグラフⅡが「平成30年度無

廃液発生量」グラフⅢが「平成30年度有機廃液

発生量」です

 無機廃液の部局別発生量は全学合計4269ℓの内工学部が2596ℓ(全体の61)農学部1513ℓ(35)理学部50ℓ(12)地域教育文化

学部40ℓ(09)医学部39ℓ(09)附属病

院16ℓ(04)附属学校15ℓ(04)でした

 有機廃液の部局別発生量は全学合計22006ℓの内工学部が18306ℓ(全体の83)附属病院1220ℓ(55)農学部1141ℓ(52)医

学部800ℓ(36)理学部500ℓ(23)地域

教育文化学部39ℓ(02)でした

 無機廃液はその大部分が工学部と農学部からの

発生量となっており有機廃液の大部分は工学部

からの発生量となっています 

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

廃液

量[ℓ]

部 局 名

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

人文学部

 理学部

 医学部

 工学部

 農学部

附属病院

附属学教

地域教育

文化学部

グラフ Ⅱ 平成30年度 部局別発生量(無機廃液)

グラフⅢ 平成30年度 部局別発生量(有機廃液)

―5―

3平成30年度の廃液の内訳

 種類別の廃液発生量百分率を円グラフで示しま

すグラフⅣが「平成30年度無機廃液の内訳」

グラフⅤが「平成30年度有機廃液の内訳」です

比較するため平成29年度のグラフをその下に示

しました

 無機廃液は発生量の多い順に一般重金属化合

物447酸及びアルカリ廃液412ホウ素廃

液77フッ素廃液41となっています写真

廃液は医学部で現像液108ℓと定着液45ℓが発

生しました

 有機廃液は発生量の多い順に可燃性廃液(炭

化水素系溶剤)407難燃性廃液265ハロ

ゲン系廃液256となっています分類別廃液発

生量の割合は平成27年度までの10年以上ほぼ同様

の傾向を示しハロゲン系廃液と可燃性廃液(炭

化水素系溶剤)がそれぞれ全体の3分の1以上を

占めていました平成28年度以降この傾向に変化

がみられハロゲン系廃液が減少するとともに難

燃性廃液が増加しています平成30年度はこれま

でで初めて難燃性廃液の発生量がハロゲン系廃液

を上回りました

グラフⅣ 平成30年度 無機廃液の内訳

重金属系廃液

1910 447

酸及びアルカリ廃液

1759 412

ホウ素廃液331

77

フッ素廃液175

41

六価クロム系廃液56

13

ヒ素廃液20

05

シアン廃液18

04

難分解シアン廃液5

01 水銀系廃液0

00

水銀系廃液0

00

―6―

グラフ Ⅳ 平成29年度 無機廃液の内訳

グラフⅤ 平成30年度 有機廃液の内訳

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

―7―

グラフenspⅤ 平成29年度 有機廃液の内訳

可燃性廃液8960 390

ハロゲン系廃液6303275

難燃性廃液6099266

含窒素系有機物44920

廃油44619

重金属含有有機廃液329

14

特殊引火性物質含有廃液

32814 含硫黄系有機物

4002

―8―

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

 鶴岡キャンパス実験排水系において平成30年4

月にBOD値がまた飯田キャンパスNo1枡にお

いて平成31年1月にn-ヘキサン抽出物質(動植物

油脂類)が排水基準値を超えた基準値を超えた

項目は他に無かったが鶴岡キャンパスを除く3

キャンパスにおいてBODn-ヘキサン抽出物質

(動植物油脂類)が複数回排水基準値の8割を超

えていた

飯田キャンパス

―9―

50~90 86 79 73 76 84 75 67 79 7 86 71 84 7600 430 430 170 120 140 110 430 320 160 120 290 160 390600 300 290 65 75 90 79 98 300 87 89 140 87 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 30 23 10 64 77 40 22 21 11 45 30 64 25

220 96 31 - - - - - 96 - - - 11 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 0006 - - - - - - - 0006 0006 - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

02 00 - - - - - - - - - - - -

002 000 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 85 83 85 82 85 82 83 80 71 82 84 81 82600 580 310 580 410 580 200 350 220 200 560 250 580 160600 250 190 160 94 180 130 250 120 120 140 190 80 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 19 15 67 10 14 75 19 68 11 11 67 73 65

220 99 26 31 11 26 36 99 31 12 26 22 13 14

50~90 86 85 86 76 75 77 77 79 75 76 82 84 77600 530 260 430 97 170 230 110 240 180 84 190 530 69600 240 220 96 72 130 180 87 220 210 83 180 240 50

5 0 - - - - - - - - - - - -

30 28 15 21 7 16 81 72 13 14 39 11 28 29

220 76 46 76 - 14 15 - 69 17 - 17 24 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 - 0006 - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -02 00 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 88 80 88 86 68 77 81 85 79 77 84 67 78600 230 82 150 230 34 53 69 130 29 30 74 36 80600 330 35 76 160 11 57 38 120 20 16 44 12 330

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 24 18 24 12 14 21 94 86 - - 65 - 25

220 110 17 17 18 - - - 110 - - 11 - -

50~90 72 70 69 72 71 72 72 72 68 69 72 70 69600 210 21 13 24 - 13 21 12 21 - 23 34 13600 83 44 50 43 - 15 26 - 83 17 22 38 25

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 12 - - - - - - - - - - 12 -

220 00 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

14 枡

4 枡

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBODSS

六価クロム

砒素

総水銀

アルキル水銀

1 枡

採水場所

採水日最高値

採水日

採水日

412 510

採水日

412 510

510

最高値

測定項目

排水基準 最高値

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

採水場所

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

ジクロロメタン

ベンゼン

採水場所

測定項目

排水基準

2 枡

3 枡

pHBODSS

214510

測定項目

排水基準 最高値

412

最高値

よう素消費量

カドミウム

シアン

ジクロロメタン

四塩化炭素

ベンゼン

よう素消費量

314

118 1213 110 214 314614 712 89 913 1011

110 214 314

614 712 89 913 1011 118 1213 110

118712

214 314

pH

712 89 913 1011 118 1213 110 214 314

89 913 1011 118 1213

採水日

412

614 89 913 1011 1213

ハイフン(-)検出限界以下

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

110

412 510 614

よう素消費量

カドミウム

シアン

六価クロム

砒素

614 712

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

総水銀

アルキル水銀

四塩化炭素

BODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

―10―

小白川キャンパス

50~90 89 88 85 89 88 600 590 280 230 480 590 600 270 270 200 84 120

5 00 - - - -

30 7 70 64 44 28

220 43 15 14 19 43 102 100 66 102 100

01 - - 01 01

01 000 - - - - 1 0 - - - - 1 0 - - - -

01 00 - - - - 05 00 - - - - 01 000 - - - -

0005 0000 - - - - 5 0 - - - - 3 006 001 - 006 - 5 069 0077 0087 069 0059 10 031 007 029 031 003 10 004 - 002 004 - 2 000 - - - - 8 015 012 010 015 004

要注意項目基準値オーバー

10月 1114 12月 1月 27 3月

12月 1月 214 3月7月 823 9月

6月 7月 829

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素

pHBODSS

よう素消費量アンモニア性窒素

生活排水系桝

採水日最高値

採水日

4月 524

4月 523

H30年度

H30年度

砒素総水銀

フェノール類

カドミウムシアン

有機りん鉛

六価クロム

最高値

380

10月 1115

9月

6月

斜線()測定せずハイフン(-)検出限界以下

実験排水系桝

溶解性鉄溶解性マンガン

クロムフッ素

銅亜鉛

(mgℓ)

(mgℓ)

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

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写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

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図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

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図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

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写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

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山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

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写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

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き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

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   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

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写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

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荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

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17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

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写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

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写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

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写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

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写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

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写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

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図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

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写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

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図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

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図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

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写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

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図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

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写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 5: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―5―

3平成30年度の廃液の内訳

 種類別の廃液発生量百分率を円グラフで示しま

すグラフⅣが「平成30年度無機廃液の内訳」

グラフⅤが「平成30年度有機廃液の内訳」です

比較するため平成29年度のグラフをその下に示

しました

 無機廃液は発生量の多い順に一般重金属化合

物447酸及びアルカリ廃液412ホウ素廃

液77フッ素廃液41となっています写真

廃液は医学部で現像液108ℓと定着液45ℓが発

生しました

 有機廃液は発生量の多い順に可燃性廃液(炭

化水素系溶剤)407難燃性廃液265ハロ

ゲン系廃液256となっています分類別廃液発

生量の割合は平成27年度までの10年以上ほぼ同様

の傾向を示しハロゲン系廃液と可燃性廃液(炭

化水素系溶剤)がそれぞれ全体の3分の1以上を

占めていました平成28年度以降この傾向に変化

がみられハロゲン系廃液が減少するとともに難

燃性廃液が増加しています平成30年度はこれま

でで初めて難燃性廃液の発生量がハロゲン系廃液

を上回りました

グラフⅣ 平成30年度 無機廃液の内訳

重金属系廃液

1910 447

酸及びアルカリ廃液

1759 412

ホウ素廃液331

77

フッ素廃液175

41

六価クロム系廃液56

13

ヒ素廃液20

05

シアン廃液18

04

難分解シアン廃液5

01 水銀系廃液0

00

水銀系廃液0

00

―6―

グラフ Ⅳ 平成29年度 無機廃液の内訳

グラフⅤ 平成30年度 有機廃液の内訳

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

―7―

グラフenspⅤ 平成29年度 有機廃液の内訳

可燃性廃液8960 390

ハロゲン系廃液6303275

難燃性廃液6099266

含窒素系有機物44920

廃油44619

重金属含有有機廃液329

14

特殊引火性物質含有廃液

32814 含硫黄系有機物

4002

―8―

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

 鶴岡キャンパス実験排水系において平成30年4

月にBOD値がまた飯田キャンパスNo1枡にお

いて平成31年1月にn-ヘキサン抽出物質(動植物

油脂類)が排水基準値を超えた基準値を超えた

項目は他に無かったが鶴岡キャンパスを除く3

キャンパスにおいてBODn-ヘキサン抽出物質

(動植物油脂類)が複数回排水基準値の8割を超

えていた

飯田キャンパス

―9―

50~90 86 79 73 76 84 75 67 79 7 86 71 84 7600 430 430 170 120 140 110 430 320 160 120 290 160 390600 300 290 65 75 90 79 98 300 87 89 140 87 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 30 23 10 64 77 40 22 21 11 45 30 64 25

220 96 31 - - - - - 96 - - - 11 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 0006 - - - - - - - 0006 0006 - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

02 00 - - - - - - - - - - - -

002 000 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 85 83 85 82 85 82 83 80 71 82 84 81 82600 580 310 580 410 580 200 350 220 200 560 250 580 160600 250 190 160 94 180 130 250 120 120 140 190 80 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 19 15 67 10 14 75 19 68 11 11 67 73 65

220 99 26 31 11 26 36 99 31 12 26 22 13 14

50~90 86 85 86 76 75 77 77 79 75 76 82 84 77600 530 260 430 97 170 230 110 240 180 84 190 530 69600 240 220 96 72 130 180 87 220 210 83 180 240 50

5 0 - - - - - - - - - - - -

30 28 15 21 7 16 81 72 13 14 39 11 28 29

220 76 46 76 - 14 15 - 69 17 - 17 24 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 - 0006 - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -02 00 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 88 80 88 86 68 77 81 85 79 77 84 67 78600 230 82 150 230 34 53 69 130 29 30 74 36 80600 330 35 76 160 11 57 38 120 20 16 44 12 330

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 24 18 24 12 14 21 94 86 - - 65 - 25

220 110 17 17 18 - - - 110 - - 11 - -

50~90 72 70 69 72 71 72 72 72 68 69 72 70 69600 210 21 13 24 - 13 21 12 21 - 23 34 13600 83 44 50 43 - 15 26 - 83 17 22 38 25

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 12 - - - - - - - - - - 12 -

220 00 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

14 枡

4 枡

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBODSS

六価クロム

砒素

総水銀

アルキル水銀

1 枡

採水場所

採水日最高値

採水日

採水日

412 510

採水日

412 510

510

最高値

測定項目

排水基準 最高値

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

採水場所

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

ジクロロメタン

ベンゼン

採水場所

測定項目

排水基準

2 枡

3 枡

pHBODSS

214510

測定項目

排水基準 最高値

412

最高値

よう素消費量

カドミウム

シアン

ジクロロメタン

四塩化炭素

ベンゼン

よう素消費量

314

118 1213 110 214 314614 712 89 913 1011

110 214 314

614 712 89 913 1011 118 1213 110

118712

214 314

pH

712 89 913 1011 118 1213 110 214 314

89 913 1011 118 1213

採水日

412

614 89 913 1011 1213

ハイフン(-)検出限界以下

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

110

412 510 614

よう素消費量

カドミウム

シアン

六価クロム

砒素

614 712

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

総水銀

アルキル水銀

四塩化炭素

BODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

―10―

小白川キャンパス

50~90 89 88 85 89 88 600 590 280 230 480 590 600 270 270 200 84 120

5 00 - - - -

30 7 70 64 44 28

220 43 15 14 19 43 102 100 66 102 100

01 - - 01 01

01 000 - - - - 1 0 - - - - 1 0 - - - -

01 00 - - - - 05 00 - - - - 01 000 - - - -

0005 0000 - - - - 5 0 - - - - 3 006 001 - 006 - 5 069 0077 0087 069 0059 10 031 007 029 031 003 10 004 - 002 004 - 2 000 - - - - 8 015 012 010 015 004

要注意項目基準値オーバー

10月 1114 12月 1月 27 3月

12月 1月 214 3月7月 823 9月

6月 7月 829

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素

pHBODSS

よう素消費量アンモニア性窒素

生活排水系桝

採水日最高値

採水日

4月 524

4月 523

H30年度

H30年度

砒素総水銀

フェノール類

カドミウムシアン

有機りん鉛

六価クロム

最高値

380

10月 1115

9月

6月

斜線()測定せずハイフン(-)検出限界以下

実験排水系桝

溶解性鉄溶解性マンガン

クロムフッ素

銅亜鉛

(mgℓ)

(mgℓ)

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 6: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―6―

グラフ Ⅳ 平成29年度 無機廃液の内訳

グラフⅤ 平成30年度 有機廃液の内訳

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

酸及びアルカリ廃液1980 427

重金属系廃液

1693 365

ホウ素廃液450

97

フッ素廃液152

33

リン酸廃液98

21

水銀系廃液82

18

ヒ素廃液72

16

シアン廃液59

13 難分解シアン廃液46

10

六価クロム系廃液6

01

可燃性廃液8957 407

難燃性廃液5840265

ハロゲン系廃液5632256

廃油54425

重金属含有有機廃液471

21

含窒素系有機物38117

特殊引火性物質含有廃液

13106

含硫黄系有機物50

02

―7―

グラフenspⅤ 平成29年度 有機廃液の内訳

可燃性廃液8960 390

ハロゲン系廃液6303275

難燃性廃液6099266

含窒素系有機物44920

廃油44619

重金属含有有機廃液329

14

特殊引火性物質含有廃液

32814 含硫黄系有機物

4002

―8―

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

 鶴岡キャンパス実験排水系において平成30年4

月にBOD値がまた飯田キャンパスNo1枡にお

いて平成31年1月にn-ヘキサン抽出物質(動植物

油脂類)が排水基準値を超えた基準値を超えた

項目は他に無かったが鶴岡キャンパスを除く3

キャンパスにおいてBODn-ヘキサン抽出物質

(動植物油脂類)が複数回排水基準値の8割を超

えていた

飯田キャンパス

―9―

50~90 86 79 73 76 84 75 67 79 7 86 71 84 7600 430 430 170 120 140 110 430 320 160 120 290 160 390600 300 290 65 75 90 79 98 300 87 89 140 87 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 30 23 10 64 77 40 22 21 11 45 30 64 25

220 96 31 - - - - - 96 - - - 11 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 0006 - - - - - - - 0006 0006 - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

02 00 - - - - - - - - - - - -

002 000 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 85 83 85 82 85 82 83 80 71 82 84 81 82600 580 310 580 410 580 200 350 220 200 560 250 580 160600 250 190 160 94 180 130 250 120 120 140 190 80 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 19 15 67 10 14 75 19 68 11 11 67 73 65

220 99 26 31 11 26 36 99 31 12 26 22 13 14

50~90 86 85 86 76 75 77 77 79 75 76 82 84 77600 530 260 430 97 170 230 110 240 180 84 190 530 69600 240 220 96 72 130 180 87 220 210 83 180 240 50

5 0 - - - - - - - - - - - -

30 28 15 21 7 16 81 72 13 14 39 11 28 29

220 76 46 76 - 14 15 - 69 17 - 17 24 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 - 0006 - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -02 00 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 88 80 88 86 68 77 81 85 79 77 84 67 78600 230 82 150 230 34 53 69 130 29 30 74 36 80600 330 35 76 160 11 57 38 120 20 16 44 12 330

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 24 18 24 12 14 21 94 86 - - 65 - 25

220 110 17 17 18 - - - 110 - - 11 - -

50~90 72 70 69 72 71 72 72 72 68 69 72 70 69600 210 21 13 24 - 13 21 12 21 - 23 34 13600 83 44 50 43 - 15 26 - 83 17 22 38 25

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 12 - - - - - - - - - - 12 -

220 00 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

14 枡

4 枡

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBODSS

六価クロム

砒素

総水銀

アルキル水銀

1 枡

採水場所

採水日最高値

採水日

採水日

412 510

採水日

412 510

510

最高値

測定項目

排水基準 最高値

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

採水場所

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

ジクロロメタン

ベンゼン

採水場所

測定項目

排水基準

2 枡

3 枡

pHBODSS

214510

測定項目

排水基準 最高値

412

最高値

よう素消費量

カドミウム

シアン

ジクロロメタン

四塩化炭素

ベンゼン

よう素消費量

314

118 1213 110 214 314614 712 89 913 1011

110 214 314

614 712 89 913 1011 118 1213 110

118712

214 314

pH

712 89 913 1011 118 1213 110 214 314

89 913 1011 118 1213

採水日

412

614 89 913 1011 1213

ハイフン(-)検出限界以下

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

110

412 510 614

よう素消費量

カドミウム

シアン

六価クロム

砒素

614 712

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

総水銀

アルキル水銀

四塩化炭素

BODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

―10―

小白川キャンパス

50~90 89 88 85 89 88 600 590 280 230 480 590 600 270 270 200 84 120

5 00 - - - -

30 7 70 64 44 28

220 43 15 14 19 43 102 100 66 102 100

01 - - 01 01

01 000 - - - - 1 0 - - - - 1 0 - - - -

01 00 - - - - 05 00 - - - - 01 000 - - - -

0005 0000 - - - - 5 0 - - - - 3 006 001 - 006 - 5 069 0077 0087 069 0059 10 031 007 029 031 003 10 004 - 002 004 - 2 000 - - - - 8 015 012 010 015 004

要注意項目基準値オーバー

10月 1114 12月 1月 27 3月

12月 1月 214 3月7月 823 9月

6月 7月 829

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素

pHBODSS

よう素消費量アンモニア性窒素

生活排水系桝

採水日最高値

採水日

4月 524

4月 523

H30年度

H30年度

砒素総水銀

フェノール類

カドミウムシアン

有機りん鉛

六価クロム

最高値

380

10月 1115

9月

6月

斜線()測定せずハイフン(-)検出限界以下

実験排水系桝

溶解性鉄溶解性マンガン

クロムフッ素

銅亜鉛

(mgℓ)

(mgℓ)

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

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写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

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図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

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図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

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山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

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写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

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き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

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   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

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写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

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荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

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17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

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写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

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写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

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写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

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写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

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写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

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写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

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図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

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図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

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写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 7: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―7―

グラフenspⅤ 平成29年度 有機廃液の内訳

可燃性廃液8960 390

ハロゲン系廃液6303275

難燃性廃液6099266

含窒素系有機物44920

廃油44619

重金属含有有機廃液329

14

特殊引火性物質含有廃液

32814 含硫黄系有機物

4002

―8―

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

 鶴岡キャンパス実験排水系において平成30年4

月にBOD値がまた飯田キャンパスNo1枡にお

いて平成31年1月にn-ヘキサン抽出物質(動植物

油脂類)が排水基準値を超えた基準値を超えた

項目は他に無かったが鶴岡キャンパスを除く3

キャンパスにおいてBODn-ヘキサン抽出物質

(動植物油脂類)が複数回排水基準値の8割を超

えていた

飯田キャンパス

―9―

50~90 86 79 73 76 84 75 67 79 7 86 71 84 7600 430 430 170 120 140 110 430 320 160 120 290 160 390600 300 290 65 75 90 79 98 300 87 89 140 87 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 30 23 10 64 77 40 22 21 11 45 30 64 25

220 96 31 - - - - - 96 - - - 11 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 0006 - - - - - - - 0006 0006 - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

02 00 - - - - - - - - - - - -

002 000 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 85 83 85 82 85 82 83 80 71 82 84 81 82600 580 310 580 410 580 200 350 220 200 560 250 580 160600 250 190 160 94 180 130 250 120 120 140 190 80 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 19 15 67 10 14 75 19 68 11 11 67 73 65

220 99 26 31 11 26 36 99 31 12 26 22 13 14

50~90 86 85 86 76 75 77 77 79 75 76 82 84 77600 530 260 430 97 170 230 110 240 180 84 190 530 69600 240 220 96 72 130 180 87 220 210 83 180 240 50

5 0 - - - - - - - - - - - -

30 28 15 21 7 16 81 72 13 14 39 11 28 29

220 76 46 76 - 14 15 - 69 17 - 17 24 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 - 0006 - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -02 00 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 88 80 88 86 68 77 81 85 79 77 84 67 78600 230 82 150 230 34 53 69 130 29 30 74 36 80600 330 35 76 160 11 57 38 120 20 16 44 12 330

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 24 18 24 12 14 21 94 86 - - 65 - 25

220 110 17 17 18 - - - 110 - - 11 - -

50~90 72 70 69 72 71 72 72 72 68 69 72 70 69600 210 21 13 24 - 13 21 12 21 - 23 34 13600 83 44 50 43 - 15 26 - 83 17 22 38 25

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 12 - - - - - - - - - - 12 -

220 00 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

14 枡

4 枡

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBODSS

六価クロム

砒素

総水銀

アルキル水銀

1 枡

採水場所

採水日最高値

採水日

採水日

412 510

採水日

412 510

510

最高値

測定項目

排水基準 最高値

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

採水場所

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

ジクロロメタン

ベンゼン

採水場所

測定項目

排水基準

2 枡

3 枡

pHBODSS

214510

測定項目

排水基準 最高値

412

最高値

よう素消費量

カドミウム

シアン

ジクロロメタン

四塩化炭素

ベンゼン

よう素消費量

314

118 1213 110 214 314614 712 89 913 1011

110 214 314

614 712 89 913 1011 118 1213 110

118712

214 314

pH

712 89 913 1011 118 1213 110 214 314

89 913 1011 118 1213

採水日

412

614 89 913 1011 1213

ハイフン(-)検出限界以下

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

110

412 510 614

よう素消費量

カドミウム

シアン

六価クロム

砒素

614 712

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

総水銀

アルキル水銀

四塩化炭素

BODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

―10―

小白川キャンパス

50~90 89 88 85 89 88 600 590 280 230 480 590 600 270 270 200 84 120

5 00 - - - -

30 7 70 64 44 28

220 43 15 14 19 43 102 100 66 102 100

01 - - 01 01

01 000 - - - - 1 0 - - - - 1 0 - - - -

01 00 - - - - 05 00 - - - - 01 000 - - - -

0005 0000 - - - - 5 0 - - - - 3 006 001 - 006 - 5 069 0077 0087 069 0059 10 031 007 029 031 003 10 004 - 002 004 - 2 000 - - - - 8 015 012 010 015 004

要注意項目基準値オーバー

10月 1114 12月 1月 27 3月

12月 1月 214 3月7月 823 9月

6月 7月 829

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素

pHBODSS

よう素消費量アンモニア性窒素

生活排水系桝

採水日最高値

採水日

4月 524

4月 523

H30年度

H30年度

砒素総水銀

フェノール類

カドミウムシアン

有機りん鉛

六価クロム

最高値

380

10月 1115

9月

6月

斜線()測定せずハイフン(-)検出限界以下

実験排水系桝

溶解性鉄溶解性マンガン

クロムフッ素

銅亜鉛

(mgℓ)

(mgℓ)

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 8: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―8―

4平成30年度の下水道排水水質分析結果

 鶴岡キャンパス実験排水系において平成30年4

月にBOD値がまた飯田キャンパスNo1枡にお

いて平成31年1月にn-ヘキサン抽出物質(動植物

油脂類)が排水基準値を超えた基準値を超えた

項目は他に無かったが鶴岡キャンパスを除く3

キャンパスにおいてBODn-ヘキサン抽出物質

(動植物油脂類)が複数回排水基準値の8割を超

えていた

飯田キャンパス

―9―

50~90 86 79 73 76 84 75 67 79 7 86 71 84 7600 430 430 170 120 140 110 430 320 160 120 290 160 390600 300 290 65 75 90 79 98 300 87 89 140 87 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 30 23 10 64 77 40 22 21 11 45 30 64 25

220 96 31 - - - - - 96 - - - 11 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 0006 - - - - - - - 0006 0006 - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

02 00 - - - - - - - - - - - -

002 000 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 85 83 85 82 85 82 83 80 71 82 84 81 82600 580 310 580 410 580 200 350 220 200 560 250 580 160600 250 190 160 94 180 130 250 120 120 140 190 80 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 19 15 67 10 14 75 19 68 11 11 67 73 65

220 99 26 31 11 26 36 99 31 12 26 22 13 14

50~90 86 85 86 76 75 77 77 79 75 76 82 84 77600 530 260 430 97 170 230 110 240 180 84 190 530 69600 240 220 96 72 130 180 87 220 210 83 180 240 50

5 0 - - - - - - - - - - - -

30 28 15 21 7 16 81 72 13 14 39 11 28 29

220 76 46 76 - 14 15 - 69 17 - 17 24 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 - 0006 - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -02 00 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 88 80 88 86 68 77 81 85 79 77 84 67 78600 230 82 150 230 34 53 69 130 29 30 74 36 80600 330 35 76 160 11 57 38 120 20 16 44 12 330

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 24 18 24 12 14 21 94 86 - - 65 - 25

220 110 17 17 18 - - - 110 - - 11 - -

50~90 72 70 69 72 71 72 72 72 68 69 72 70 69600 210 21 13 24 - 13 21 12 21 - 23 34 13600 83 44 50 43 - 15 26 - 83 17 22 38 25

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 12 - - - - - - - - - - 12 -

220 00 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

14 枡

4 枡

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBODSS

六価クロム

砒素

総水銀

アルキル水銀

1 枡

採水場所

採水日最高値

採水日

採水日

412 510

採水日

412 510

510

最高値

測定項目

排水基準 最高値

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

採水場所

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

ジクロロメタン

ベンゼン

採水場所

測定項目

排水基準

2 枡

3 枡

pHBODSS

214510

測定項目

排水基準 最高値

412

最高値

よう素消費量

カドミウム

シアン

ジクロロメタン

四塩化炭素

ベンゼン

よう素消費量

314

118 1213 110 214 314614 712 89 913 1011

110 214 314

614 712 89 913 1011 118 1213 110

118712

214 314

pH

712 89 913 1011 118 1213 110 214 314

89 913 1011 118 1213

採水日

412

614 89 913 1011 1213

ハイフン(-)検出限界以下

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

110

412 510 614

よう素消費量

カドミウム

シアン

六価クロム

砒素

614 712

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

総水銀

アルキル水銀

四塩化炭素

BODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

―10―

小白川キャンパス

50~90 89 88 85 89 88 600 590 280 230 480 590 600 270 270 200 84 120

5 00 - - - -

30 7 70 64 44 28

220 43 15 14 19 43 102 100 66 102 100

01 - - 01 01

01 000 - - - - 1 0 - - - - 1 0 - - - -

01 00 - - - - 05 00 - - - - 01 000 - - - -

0005 0000 - - - - 5 0 - - - - 3 006 001 - 006 - 5 069 0077 0087 069 0059 10 031 007 029 031 003 10 004 - 002 004 - 2 000 - - - - 8 015 012 010 015 004

要注意項目基準値オーバー

10月 1114 12月 1月 27 3月

12月 1月 214 3月7月 823 9月

6月 7月 829

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素

pHBODSS

よう素消費量アンモニア性窒素

生活排水系桝

採水日最高値

採水日

4月 524

4月 523

H30年度

H30年度

砒素総水銀

フェノール類

カドミウムシアン

有機りん鉛

六価クロム

最高値

380

10月 1115

9月

6月

斜線()測定せずハイフン(-)検出限界以下

実験排水系桝

溶解性鉄溶解性マンガン

クロムフッ素

銅亜鉛

(mgℓ)

(mgℓ)

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 9: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―9―

50~90 86 79 73 76 84 75 67 79 7 86 71 84 7600 430 430 170 120 140 110 430 320 160 120 290 160 390600 300 290 65 75 90 79 98 300 87 89 140 87 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 30 23 10 64 77 40 22 21 11 45 30 64 25

220 96 31 - - - - - 96 - - - 11 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 0006 - - - - - - - 0006 0006 - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

02 00 - - - - - - - - - - - -

002 000 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 85 83 85 82 85 82 83 80 71 82 84 81 82600 580 310 580 410 580 200 350 220 200 560 250 580 160600 250 190 160 94 180 130 250 120 120 140 190 80 130

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 19 15 67 10 14 75 19 68 11 11 67 73 65

220 99 26 31 11 26 36 99 31 12 26 22 13 14

50~90 86 85 86 76 75 77 77 79 75 76 82 84 77600 530 260 430 97 170 230 110 240 180 84 190 530 69600 240 220 96 72 130 180 87 220 210 83 180 240 50

5 0 - - - - - - - - - - - -

30 28 15 21 7 16 81 72 13 14 39 11 28 29

220 76 46 76 - 14 15 - 69 17 - 17 24 -

003 000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

01 00 - - - - - - - - - - - -

05 00 - - - - - - - - - - - -

01 001 - 0006 - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -02 00 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -01 00 - - - - - - - - - - - -

50~90 88 80 88 86 68 77 81 85 79 77 84 67 78600 230 82 150 230 34 53 69 130 29 30 74 36 80600 330 35 76 160 11 57 38 120 20 16 44 12 330

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 24 18 24 12 14 21 94 86 - - 65 - 25

220 110 17 17 18 - - - 110 - - 11 - -

50~90 72 70 69 72 71 72 72 72 68 69 72 70 69600 210 21 13 24 - 13 21 12 21 - 23 34 13600 83 44 50 43 - 15 26 - 83 17 22 38 25

5 00 - - - - - - - - - - - -

30 12 - - - - - - - - - - 12 -

220 00 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

14 枡

4 枡

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

H30年度

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBODSS

六価クロム

砒素

総水銀

アルキル水銀

1 枡

採水場所

採水日最高値

採水日

採水日

412 510

採水日

412 510

510

最高値

測定項目

排水基準 最高値

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

採水場所

pHBODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

ジクロロメタン

ベンゼン

採水場所

測定項目

排水基準

2 枡

3 枡

pHBODSS

214510

測定項目

排水基準 最高値

412

最高値

よう素消費量

カドミウム

シアン

ジクロロメタン

四塩化炭素

ベンゼン

よう素消費量

314

118 1213 110 214 314614 712 89 913 1011

110 214 314

614 712 89 913 1011 118 1213 110

118712

214 314

pH

712 89 913 1011 118 1213 110 214 314

89 913 1011 118 1213

採水日

412

614 89 913 1011 1213

ハイフン(-)検出限界以下

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

110

412 510 614

よう素消費量

カドミウム

シアン

六価クロム

砒素

614 712

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

よう素消費量

総水銀

アルキル水銀

四塩化炭素

BODSS

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

(mgℓ)

―10―

小白川キャンパス

50~90 89 88 85 89 88 600 590 280 230 480 590 600 270 270 200 84 120

5 00 - - - -

30 7 70 64 44 28

220 43 15 14 19 43 102 100 66 102 100

01 - - 01 01

01 000 - - - - 1 0 - - - - 1 0 - - - -

01 00 - - - - 05 00 - - - - 01 000 - - - -

0005 0000 - - - - 5 0 - - - - 3 006 001 - 006 - 5 069 0077 0087 069 0059 10 031 007 029 031 003 10 004 - 002 004 - 2 000 - - - - 8 015 012 010 015 004

要注意項目基準値オーバー

10月 1114 12月 1月 27 3月

12月 1月 214 3月7月 823 9月

6月 7月 829

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素

pHBODSS

よう素消費量アンモニア性窒素

生活排水系桝

採水日最高値

採水日

4月 524

4月 523

H30年度

H30年度

砒素総水銀

フェノール類

カドミウムシアン

有機りん鉛

六価クロム

最高値

380

10月 1115

9月

6月

斜線()測定せずハイフン(-)検出限界以下

実験排水系桝

溶解性鉄溶解性マンガン

クロムフッ素

銅亜鉛

(mgℓ)

(mgℓ)

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 10: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―10―

小白川キャンパス

50~90 89 88 85 89 88 600 590 280 230 480 590 600 270 270 200 84 120

5 00 - - - -

30 7 70 64 44 28

220 43 15 14 19 43 102 100 66 102 100

01 - - 01 01

01 000 - - - - 1 0 - - - - 1 0 - - - -

01 00 - - - - 05 00 - - - - 01 000 - - - -

0005 0000 - - - - 5 0 - - - - 3 006 001 - 006 - 5 069 0077 0087 069 0059 10 031 007 029 031 003 10 004 - 002 004 - 2 000 - - - - 8 015 012 010 015 004

要注意項目基準値オーバー

10月 1114 12月 1月 27 3月

12月 1月 214 3月7月 823 9月

6月 7月 829

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素

pHBODSS

よう素消費量アンモニア性窒素

生活排水系桝

採水日最高値

採水日

4月 524

4月 523

H30年度

H30年度

砒素総水銀

フェノール類

カドミウムシアン

有機りん鉛

六価クロム

最高値

380

10月 1115

9月

6月

斜線()測定せずハイフン(-)検出限界以下

実験排水系桝

溶解性鉄溶解性マンガン

クロムフッ素

銅亜鉛

(mgℓ)

(mgℓ)

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 11: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―11―

米沢キャンパス

50~90 84 84 72 84 77 67 77 82 83 83 76 73 76600 360 110 70 360 210 280 110 210 200 270 110 74 90600 300 180 96 280 120 130 60 82 220 300 20 19 46

30 26 15 40 22 22 17 10 18 26 21 80 61 44

0005 0000 - - - - - - - - - - - -

1 0 - - - - - - - - - - - -

03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -002 000 - - - - - - - - - - - -

50~90 81 8 81 81 79 72 75 79 8 81 77 78 77600 370 350 220 43 60 140 51 82 160 120 370 270 220600 200 130 78 50 75 120 40 92 76 180 68 25 200

0005 0000 - - - - - - - - - - - -1 0 - - - - - - - - - - - -03 00 - - - - - - - - - - - -01 000 - - - - - - - - - - - -02 0028 0006 0017 0011 0004 0009 0003 0026 0026 0028 0004 0010 0003002 000 - - - - - - - - - - - -004 00000 - - - - - - - - - - - -01 0000 - - - - - - - - - - - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

H30年度

西 排水系枡

四塩化炭素

phBODSS

総水銀シアン

トリクロロエチレンテトラクロロエチレン

ジクロロメタン四塩化炭素

12-ジクロロエタンベンゼン

1010 1114

313

1212 116 213 313

1010 1114 1212 116 213912

613 711 88 912

613 711 88

採水場所

採水場所

排水基準

排水基準

測定項目

測定項目

n-ヘキサン抽出物質

総水銀

pHBODSS

テトラクロロエチレン

シアン

トリクロロエチレン

東 排水系枡

ハイフン(-)検出限界以下

最高値

採水日最高値

採水日

411 516

411 516

(mgℓ)

(mgℓ)

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 12: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―12―

鶴岡キャンパス

50~90 71 65 59 63 62 65 68 64 62 71 68 64 65600 600 600 190 110 100 200 17 360 40 120 37 130 77

600 22 32 13 13 80 22 60 13 75 21 82 75 10

5 38 38 20 17 18 09 - 05 09 09 10 13 -

30 5 08 22 - - 05 17 46 15 08 - 33 41

3 012 002 002 001 001 003 002 - 004 004 002 002 0122 009 003 004 003 002 006 002 003 005 003 005 002 00910 120 025 066 086 093 12 023 075 075 012 019 039 05101 000 - - - - - - - - - - - -

0005 0000 - - - - - - - - - - - -検出されない 0000 - - - - - - - - - - - -

002 00000 - - - - - - - - - - - -220 000 - -5 0 - -10 002 002 0022 0 - -

003 000 - -1 0 - -1 0 - -

05 00 - -01 00 - -

0003 0000 -8 0 - -

要注意項目基準値オーバー

H30年度

シアン有機りん

六価クロム砒素

よう素消費量フェノール類

溶解性マンガンクロム

カドミウム

総水銀

銅亜鉛

溶解性鉄

アルキル水銀

採水日最高値

フッ素

四塩化炭素

採水場所

排水基準

測定項目

実験排水系枡

PCB

n-ヘキサン抽出物質(鉱油類)

n-ヘキサン抽出物質(動植物油脂類)

pHBOD

SS

ハイフン(-)検出限界以下斜線()測定せず

116 214 313719 822 913614 1017 1115 1219419 516(mgℓ)

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 13: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―13―

5第37回大学等環境安全協議会総会研修発

表会参加報告(大津 芳)

 標記総会研修発表会に参加しましたまた

7月17日午後に開催された「ガスセンサ研修(新

コスモス電機株式会社)」18日午前に開催された

「2019年度実務者連絡会第1回集会」および19日午後に開催されたスーパーコンピュータ「京」

とアサヒプリテック株式会社神戸工場(廃液廃

試薬等の処理工程)の見学会に出席しました合

わせて報告いたします

ガスセンサ研修(新コスモス電機株式会社) 日時2019年7月17日(水)1400-1630 場所新コスモス電機株式会社 

         コスモスセンサセンター

    兵庫県三木市吉川町上荒川748-1

 内容労働安全衛生の現場において数多く使用

されているガスセンサに関し測定に係

るガスの性質やその検出原理などを理解

するとともにより良い測定法や活用術

を学ぶ

コメント  約25名の参加があったまず「ガスの基礎

知識」と題する講義があった可燃性ガスには

空気と混合した場合に特定のガス濃度範囲で爆

発するという爆発限界があり下限界より濃度

が低い場合上限界より濃度が高い場合には爆

発しないことまたガスが存在する場所の密

閉性が高ければ高いほど爆発したときのエネ

ルギーの逃げ場がなくより大きな破壊に繫が

る事などを模型を使用した実験で提示した

「個人曝露濃度計の活用」の講義につづきセ

ンサー工場とショールームの見学がおこなわれ

た知識としての「爆発限界」を実際に体験す

ることができたことなど記憶に残る研修会で

あった

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

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普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

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写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

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図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

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図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

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写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

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山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

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写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

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き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

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   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

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写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

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荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

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17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

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写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

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写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

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写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

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写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

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写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

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図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

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写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

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図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

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図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

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写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

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図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

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写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 14: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―14―

2019年度 第1回実務者連絡会集会 日時2019年7月18日(木)930-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント  世話人のかたによる事前アンケートの集約が

あり他大学で問題になっていることなどを具

体的に把握することができた印刷物として残

ることは後から調べたいときに大きな助けに

なる多大な労力を必要とする仕事であるが今

後も継続してほしい

  質疑では東工大大天さんの活躍が目覚まし

かった幅広い実務経験を持ち常に論理的思

考で問題に対処していることがうかがえたツ

メの垢をいただきたいと考えた

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 15: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―15―

第37回大学等環境安全協議会総会研修発表会 日時2019年7月18日(木)1300-1730       7月19日(金)900-1200 場所理化学研究所(神戸地区)

    融合連携イノベーション推進棟 講堂

 7月18日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 酒井 伸一

  文部科学省 大臣官房文教施設企画

              防災部計画課

 課長補佐  近藤 裕史 

理化学研究所 理事  加藤 重治 

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 16: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―16―

【研修発表会】 1315 特別講演

     「計算で予測する日々の天気と将来の

気候」

  理化学研究所 計算科学研究センター

 チームリーダー  富田 浩文 

 1415 プロジェクト報告

     「全学安全教育プログラムの実施を通

しての安全教育に関する実証的研究」

      錦見  端村田 静昭富田賢吾松岡  博三品 太志

松浪 有高日影 達夫杉本和弘(名古屋大学)

     「安全講習用電子教材の開発」

      田中 信也1服部 徹太郎1

吉 岡  敏 明1 本 間   誠1三上 恭訓1中村 修2藤井邦彦2(1東北大学2筑波大学)

 1515 企業ポスターセッション

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 17: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―17―

【大学等環境安全協議会及び実務者連絡会総会】 1600 大学等環境安全協議会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22018年度事業計画予算案

  3表彰

  4役員改選

  5その他

 1630 実務者連絡会総会

  12018年度事業報告決算報告

  22019年度事業計画予算案

  3その他

 1700 受賞講演

     技術賞

      鹿児島大学 濱田 百合子 

     功労賞

       高エネルギー加速器研究機構

平  雅文 

       株式会社環境管理センター

水落 憲吾 

 1730 事務連絡

 1815 懇親会

     【会場神戸ポートピアホテル

                 和楽の間】

  挨拶 大学等環境安全協議会

 会長 酒井 伸一 

   理化学研究所 理事 加藤 重治 

7月19日(金)

 900 一般発表

     「大学等における安全衛生管理活動の

俯瞰(中期計画のテキスト分析を通

じて)」

      中村 修1藤井 邦彦1川上

貴教2中山 政勝3

      (1筑波大学2北海道大学3静岡

大学)

     「化学物質のリスク情報を伝えるアプ

リケーションの開発」

      山口 佳宏1林 瑠美子2喜多 敏博1富田 賢吾2

       (1熊本大学2名古屋大学)

     「熊本大学における危険物の保管量管

理について」

      片山 謙吾坂本 敬行山口 

佳宏(熊本大学)

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 18: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―18―

 1015 休憩

     「化学物質のリスクアセスメント+リ

スクマネジメントに活用可能なガス

検知器の活用提案」

      寺内 靖裕(理研計器株式会社)

     「ダクトレスヒュームフードの活用意

義と留意点」

      三上 恭訓渡邉 武(東北大学)

     「大学等の実験系廃棄物管理において

有効と思われる石綿含有スクリーニ

ング手法の提案」

      榊原 洋子(愛知教育大学)

 1140 事務連絡

 1200 閉会の辞

 大学等環境安全協議会 副会長 大島 義人

コメント 理化学研究所計算科学研究センターチームリー

ダー富田浩文氏による特別講演「計算で予測す

る日々の天気と将来の気候」が興味深かったま

ず気象学と気候学の違いについて気象学は地

球大気で起こる諸現象についての学問であり地球

物理学の一分野であるのに対し気候学は各地域

における大気現象の平均描像についての学問であ

り海洋学や生物学地球化学を含む複合化学であ

ること気候学は英語でclimatologyというが

climate(気候)のclimaはもともと傾きという意

味であり太陽の傾きが気候を支配する大きな要

因であること日々の天気予報や気候変動予測

はシミュレーションによっておこなわれるが

2012年に供用が開始されたスーパーコンピュータ

「京」などを駆使することにより予報予測の精

度が格段に上がっていることエアロゾルの雲に

対する効果が太陽光の反射率の大小を規定する

ため予報予測の不確実性における最大の要因

であることなどが述べられた短期的には気候

災害の防止長期的には気候変動に対する対処に

役立つ学問でありやりがいがと意気込みが感じ

られた

 7月19日午前の「一般発表」は実務の役に立

つ情報が盛りだくさんであり有意義であった

例えば消防法における危険物の指定数量の算出

方法やダクトレスヒュームフードの有機溶剤使用

時における問題点など知識の復習や新知見の修

得につながった

【見学会】 1300 理研計算科学研究センター 

      スーパーコンピュータ「京」 見学

 集合場所理研計算科学研究棟計算機棟 

1階ロビー

 1415 理研計算科学研究棟計算機棟 出

発(アサヒプリテック株式会社 神戸

工場へ)

     集合場所理研計算科学研究棟計

算機棟 1階ロビー

 1500 アサヒプリテック株式会社 神戸工場

見学 (廃液廃試薬等の処理工程を

見学)

 1700 JR三ノ宮駅周辺で解散

6第35回大学等環境安全協議会技術分科会参

加報告(大津 芳)

 標記分科会に参加しましたまた20日午後に

開催された「ダルトン株式会社静岡テクノパー

クショールーム見学研修会」21日午前に開催さ

れた「2019年度第2回大学等環境安全協議会実務者連絡会集会」に出席しました合わせて報告

いたします

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

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 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

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コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

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2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

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12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

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2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

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<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

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令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

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普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

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写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

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図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

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図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

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写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

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山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

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写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

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き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

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   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

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写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

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荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

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17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

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写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 19: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―19―

ダルトン株式会社 静岡テクノパークショールーム見学研修会 日時2019年11月20日(水)1210-1730 場所静岡テクノパーク(ショールーム)

    静岡県藤枝市八幡407-3

 内容製品紹介とデモンストレーションや現物

等を確認し大学等における実験室の安

全管理や環境対応について知見を得る事

を目的とする

コメント  最新のドラフトチャンバーについて機能な

どの説明を受けた私が実験をおこなっていた

20年ほど前のものと比べ基本的な機能は当然同

じだがより便利な機能が追加されるとともに

省エネ化などが進んでいることが理解できた

2017年にイトーキの完全子会社となったことも

あり実験室のトータルな設計などにも関わる

ようになっているとのことである上記写真の

洗眼器のような安全設備に興味を引かれた

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 20: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―20―

2019年度 第2回実務者連絡会集会 日時2019年11月21日(木)930-1200 場所静岡大学(浜松キャンパス)

    創造科学技術大学院2階205会議室

 議題

 1今後の活動計画方針について

 2プロジェクトの推進状況について

 3廃棄物部門及び安全衛生部門の現状と課題

について 

 4現在取り組んでいる問題課題等(参加者

から)

コメント フロンの回収を依頼する場合出入りの科学機

器販売業者などに比べ第一種フロン類充塡回収

業者に直接依頼したほうが安くあがるとの情報を

得た機会があれば活用したい

 

第35回大学等環境安全協議会技術分科会 日時2019年11月21日(木)1300-1705       11月22日(金)900-1200 場所静岡大学 浜松キャンパス 佐鳴会館 

会議室

11月21日(木)

 1200 受付開始

 1300 挨拶

  大学等環境安全協議会 会長 吉岡 敏明 

        静岡大学 学長 石井  潔

 1315 特別講演

     「防災教育と研究を通して地域社会へ

の貢献」

       静岡大学防災総合センター

          センター長 岩田 孝仁

 1415 特別講演

     「遠州灘海岸の環境保護活動を通し

て」

      特定非営利活動法人

       サンクチュアリエヌピーオー

理事長 馬塚 丈司 

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 21: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―21―

 1515 企業ポスターセッション

 1545 実務者連絡会企画プログラム

     「化学物質のリスクアセスメントにお

ける大学の取組みと今後の課題」

 コーディネータ東京工業大学 橋本 晴男

琉球大学 古謝 源太

      はじめに

         東京工業大学 橋本 晴男

     「東工大における化学物質のリスクア

セスメント導入状況」

         東京工業大学 加藤 博子

     「化学物質管理支援システムを使った

リスクアセスメントの現状と課題」

           熊本大学 片山 謙吾

     「実務者による化学物質のリスク評価

システムの開発と運用」

           群馬大学 近藤 良夫

 1700 事務連絡

 1800 懇親会

     【会場ホテルクラウンパレス浜松4

階「芙蓉の間」】

     挨 拶 大学等環境安全協議会

 会長 吉岡 敏明 

 11月22日(金)

      所用により欠席

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 22: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―22―

コメント  馬塚丈司氏による特別講演「遠州灘海岸の環

境保護活動を通して」が興味深かった氏は活

動の一環としてアカウミガメの保護に携わって

いる毎年5月中旬から9月上旬までの産卵期

には毎日朝の3時から海岸で産卵調査をして

いるとのことであった調査で見つけた卵は盗

掘などを防ぐため全て掘り出し海岸に建てた保

護柵内に埋め戻して自然の状態で保護するこ

と卵は一旦掘り出すと孵化しないといわれて

いたがまったく問題なく孵化すること孵化し

た子亀は全てが海に帰るまで見届けていること

などの話とともに卵一個が数万円子亀にな

ると一匹数十万円で取引されていることなど

保護活動に関わる興味深い情報を情熱的に講話

していただいた

  氏の講演で一箇所違和感をおぼえる点が

あった「夕焼け小焼け」の「夕焼け」は日没

前「小焼け」は日没後に空が赤くなる状態を

指すとの説明であったが私には「『こやけ』

は語調を整えるために添えたもの」との『日本

国語大辞典』の説明のほうがしっくりとくるよ

うに思われる

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

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普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

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写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

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図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

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図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

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写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

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山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

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写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

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き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

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   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

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写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

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荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

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17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

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写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

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写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

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写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

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写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

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写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

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図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

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写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

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図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

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図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

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写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

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図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

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写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

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写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 23: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―23―

2019 年 6 月 6 日

基礎臨床各講座の教授 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 21 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 カドミウムおよびその化合物 ( gml)

3 クロム酸およびその塩 ( gml)

4 クロロホルム ( gml)

5 コバルト及びその無機化合物 ( gml)

6 シアン化カリウム ( gml)

7 シアン化ナトリウム ( gml)

8 四塩化炭素 ( gml)

9 ジオキサン ( gml)

10 ジクロロメタン ( gml)

11 重クロム酸およびその塩 ( gml)

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 24: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―24―

12 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

( gml)

13 ヒ素およびその化合物 ( gml)

14 ふっ化水素 ( gml)

15 ベンゼン ( gml)

16 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

17 マンガンおよびその化合物 ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 アセトン ( gml)

2 イソブチルアルコール ( gml)

3 イソプロピルアルコール ( gml)

4 イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)

( gml)

5 エチルエーテル ( gml)

6 キシレン ( gml)

7 クレゾール ( gml)

8 トルエン ( gml)

9 ノルマルヘキサン ( gml)

10 1-ブタノール ( gml)

11 2-ブタノール ( gml)

12 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 過マンガン酸塩類(過マンガン酸カリウムなど( gml)

2 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

2 第一種石油類ガソリンなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 25: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―25―

2019 年 6 月 6 日

附属病院各部署の長 殿

山形大学飯田地区事業場

総括安全衛生管理者

山形大学医学部長 山下 英俊

有害化学物質保管状況等確認のための予備調査

山形大学飯田地区事業場における化学物質の取り扱いは労働安全衛生法

消防法毒物及び劇物取締法などに準拠して行われており万全の体制がとら

れています当安全衛生委員会により平成 18 年に医学部および附属病院付属施

設などにおける化学物質の使用状況が調査され有機溶剤および特定化学物質の

使用様態と使用量が報告されました爾来 10 年以上が経過し化学物質の使用保

管に関し情報を更新する必要が生じています現地確認をするための予備調査とし

て下記アンケートに回答をお願いいたします

回答にあたっては下記化学物質一覧のなかで保管しているものがある場合

当該物質の番号に丸をつけおおよその保管量(gまたは ml)を記入してくだ

さい

提出期限2019 年 6 月 7 日

提出先管理課施設係(担当倉成)

(不明な点は倉成(内線 5037)または環境保全センター大津(内線 5142)まで)

特定化学物質障害予防規則(特化則)対象物質

<製造禁止物質>

1 石綿および 01(ww)以上含有製品

<第2類物質>

1 アクリルアミド ( gml)

2 エチレンオキシド ( gml)

3 クロロホルム ( gml)

4 水銀およびその無機化合物(体温計血圧計温度計なども含む)

5 ホルムアルデヒド(ホルマリン) ( gml)

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 26: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―26―

<その他>

1 ステリハイド(グルタラールグルタルアルデヒド)

( gml)

2 ディスオーパ(フタラール) ( gml)

3 アセサイド(過酢酸) ( gml)

有機溶剤中毒予防規則(有機則)対象物質

<第2種有機溶剤>

1 エチルエーテル ( gml)

2 キシレン ( gml)

3 クレゾール ( gml)

4 1-ブタノール ( gml)

5 2-ブタノール ( gml)

6 メタノール ( gml)

消防法に基づく危険物

<危険物第一類>

1 次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウムなど) ( gml)

<危険物第四類>

1 特殊引火物エーテルアセトアルデヒドなど ( gml)

その他有害危険物と思われるものを記載してください

―27―

令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

― 29 ―

普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

― 30 ―

写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

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図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

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仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

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出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 27: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

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令和 1 年 6 月 5 日

メディカルサイエンス推進研究所データ管理部有機溶媒臭事案

山形大学飯田地区衛生管理者 大津 芳

日時令和 1年 5月 24 日 お昼頃

場所メディカルサイエンス推進研究所データ管理部(基礎棟 2階)

状況

木村宏人先生が在室中に軽い刺激臭を感じのどの痛み胸の苦しさ頭痛のため体調不良になっ

窓は閉めてあり換気扇のみ稼働していたとのこと

流しには S字トラップが設置してあり下水管からの臭いの可能性は低い

発生場所原因は不明であるが可能性として換気扇(ロスナイ)から取り込んだ外気由来部屋

の南東角にあり建物の1階から6階まで貫通しているパイプスペースを通しての上層階由来が考えら

れる

今回の事案とは直接には関係ないと思われるが最近室内のほこりがひどく掃除してもすぐに机

の上が黒くなるほどであるとのことでほこりの発生場所を突き止め解消して欲しいとの要望もあっ

関連は不明であるが昨年 926 と 102 に当該管理部の斜め下に位置する第一解剖学教室の助手室

において有機溶媒臭事案が発生している連絡を受けて現場に行ったが窓が開放され換気されてお

り原因物質および発生場所の特定は不能であった

以上

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普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

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写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

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図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

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図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

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写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

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山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

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写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

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き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

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   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

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写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

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荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

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17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

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写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

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写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

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写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

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写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

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写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

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図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

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写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

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図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

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図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

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写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

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図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

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写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 28: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

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普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

はじめに

 自然景観に意味を見出す考え方はヨーロッパで

近代地理学が起こるまではなかったしかし現代

においてでさえ身の回りの自然景観に関心を持っ

て日々暮らしている人は一部のマニアを除いて

ほぼ皆無と言っていいだろう赤茶けた溶岩層が

むき出しになった噴火口であったり比高数百mにおよぶ断崖絶壁を流れ落ちる滝などの非日常的

な景観に接すれば人は自然の力を直感して見入

ることはあるしかしそれらランドマーク的景

観に対してでさえそれらの科学的な意味につい

て過去の教育で学んだことと結びつけて思いを

巡らせる人は少ないだろう

 山形で育ってこられた人に山形の街が位置する

地形を説明する際にも扇状地であることを告げ

ると半数以上の人からldquoそうだったのかrdquoとの

つぶやきが発せられる初等中等教育からテク

ストとして学んでいたにも拘わらずそれを現実

のものとして認知同定出来ていなかったことに

なる知識がアクティベートされてきていなかっ

たすなわち体系化され繋がった知識になってい

なかったことになる知識と意識がなければ我々

のまわりで生起する現象に気づくことも理解する

こともできない

 本稿では山形に暮らしながらありふれたもの

として普段見過ごしている自然景観について特

に出羽丘陵月山周辺の地形と自然景観について

写真とスケールの異なる地図を使いながらその

成り立ちや地形や人との関わりの意味を紹介した

隆起に打ち勝った最上川

 出羽山地は東北日本内弧の南北性山地列のうち

日本海側に位置する山地である(図1)新庄側

から西方を見れば出羽山地は最上川の行く手を

阻むがごとく存在している(写真1)

 出羽山地は中新世以降形成された陥没帯やそ

の周辺海域を埋めた海成堆積物(2000万年前~

400万年前頃)から構成されている写真2に示

された地層は立谷沢川沿いで認められた出羽山

地を構成する堆積物の最下部層である地層を切

る東落ちの正断層はこの地層が堆積している時

図1 東北日本の大地形 等高線間隔200m 国土地理院基盤地図情報ダウンローサービスサイト(httpsfgdgsigojpdownloadmapGisphptab=dem)から入手した10mグリッドDEMからGISソフトで作成 以下の地図も同様に作成

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写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

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図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

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図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

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写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

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山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

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写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

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き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

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   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

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写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

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荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

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17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

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写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

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写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

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写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

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写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

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写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 29: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

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写真1 本合海上空から西方に見た出羽山地と最上川

写真2 出羽山地の底部をなす海成堆積物(立谷沢層)と正断層 (立谷沢川潜岩堰堤下流側)赤矢印を結んだ線に正断層が認められる 赤破線から下位が花崗岩起源の砂岩

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 30: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 31 ―

図2 出羽山地を横切って流れる最上川と最上峡等高線間隔50m

ですらまだ日本海の拡大に伴う陥没が続いてい

たことを示しているしかし海底で堆積したそれ

らの地層が現在山地をつくっていることはあ

る時期(おおよそ300万年前頃)を境にその場が

隆起に転じたことを示している(佐藤1986Sato1994池田ほか1999守屋ほか2008)このようにして隆起する山地に対して川の浸食が

打ち勝った場所が山形県の古口から清川にかけ

ての最上峡である(図2写真3)最上川が出

羽丘陵を東西に横切って掘り込んだ河谷である

古口付近では約7-5百万年前頃に水深1000m前後で堆積した泥岩層が出ているが下流側に向

かってより古い時代の地層が川面沿いに現れてい

る白糸ノ滝が見られる草薙付近には1500万年前

頃の堅い泥岩が河床から100m程度高い位置に出

てくる(写真4)なぜ下流側の高い位置に元々

深い位置で溜まった古い地層が出ているかの理由

は出羽丘陵はその西縁を限る青沢断層(池辺ほ

か1979大沢ほか1986)の活動によって強く

持ち上げられたからであるその結果出羽丘陵

を作る地層は東側に傾斜しているので下流側の

出羽丘陵の中心に近づくほどもともと深い位置

にたまった古い地層が隆起によって持ち上げられ

てくるからである(図3)

 出羽山地の隆起と最上峡の形成は表裏一体ので

きごとである川の浸食の力は非常に強く年間数

ミリ程度の隆起ならそれに打ち勝って谷を削って

しまう出羽丘陵が隆起を始めたころ既に内陸

側には湖が広がり奥羽脊梁山脈はその輪郭が表れ

始めていた従って降った雨は太平洋側に流れ

るものと日本海側に流れるものに分かれて内陸

側から日本海側に流れる水は古最上川となって現

在の出羽丘陵あたりを既に流れていたと考えられ

る出羽丘陵の隆起が始まった当初古最上川は

低い場所をもとめて流路をあちこちに振っていた

と思われるしかしそのうちに流れの位置が決

まると出羽丘陵が隆起してもそれと同じ速度で

最上川が河床を削り込んでしまう出羽山地西縁

を限る活断層の動きから判る同山地の隆起速度は

せいぜい年間1mm程度であるこのような動き

が300万年間続いたことで出羽丘陵を穿入蛇行し

ながらもスリットのような切れ込みとして掘り

― 32 ―

図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

― 33 ―

写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

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荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

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編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 31: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

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図3 出羽山地を持ち上げる庄内平野東縁の断層群(模式図)

写真3 清川上空からみた出羽山地と最上峡

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写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

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山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

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写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

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き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

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   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

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写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

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荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

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17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

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写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

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写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

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写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

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写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

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写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

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図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

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写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

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図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

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図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

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写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

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図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

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写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

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謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 32: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

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写真4  懸垂谷を流れ落ちる白糸ノ滝         赤い鳥居の背後に滝が流れ落ちている

込まれたものが最上峡である(図2参照)すな

わち最上峡は出羽丘陵が300万年間続けてき

た隆起を結果として見ることの出来る場所と言え

る最上峡は山形県の重要な観光スポットでもあ

る古口からの舟下りは数百万年前から2千万

年前までの世界に下るタイムトンネルでもある

なお隆起する山脈を横切って流れる河川のこと

を先行性流路それによって形成された谷 峡谷

のことを横谷(横切る谷)と呼ぶ規模の大きな

横谷としてはヒマラヤの隆起に打ち勝って8千

峰群を横切ってチベット側から流れるカリガン

ダキ川カルナリ川(いずれもガンジス川の支流)

が知られている

 最上峡沿いには幾つかの滝が最上川に注ぎ落ち

ているそのうち舟下り終了点付近に位置する白

糸ノ滝は水量は少ないもののその大きな比高か

ら国道47号線を通る人々のランドマークとなって

いるしかしなぜそこに滝があるかを考えるヤ

ボな人はまずいない地学的には滝があること

はその場所に浸食されにくい堅い地層が分布して

いることを示している白糸ノ滝は1500万年前頃

に水深千数百メートルの深海底に植物性プランク

トン(珪藻)や放散虫と呼ばれる動物性プランク

トンの死骸が静にたまってできた比較的堅い珪質

泥岩の部分が崖となって水が流れ落ちているもの

だこの珪質泥岩はプランクトンの細胞組織や

放散虫の殻を作っていたガラス物質起源のシリカ

成分が集まって他の粘土成分とともに固まったも

のであるこの珪質泥岩層は最上川本流には浸食

され掘り込まれたが白糸ノ滝上流の小さな支谷

の水量では堅くて浸食できず崖となって残っ

た上述の通り滝は川の削り込む力より川底の

地層が十分に堅くさらに掘り込めなかった場所に

形成されるこのような水量の多い本流に対し

て集水域の小さな支谷が合流する際浸食力の差

から合流点付近で滝を作っている地形を懸けんすいこく

垂谷と

呼ぶ本来懸垂谷はヒマラヤなどの大きな本流性

の谷氷河に対して脇から支谷が合流する際に形

成されたものをさす場合が多い

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山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

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写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

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き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

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   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

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写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

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荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

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17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

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写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

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写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

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写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

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写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

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写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

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図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

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写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

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図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

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図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

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写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

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図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

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写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

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謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

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「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 33: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 34 ―

山地や地峡部が作り出す清川だし

 最上川は清川で立谷沢川と合流しさらに進

めば前方が開けて庄内平野に入ると狩川付近に

発電用の白い大きな風車群が見えてくる(写真

5)狩川は日本で始めて商業風力発電が開始さ

れた場所でもある風力発電所は海沿いの段丘

や山の上に置かれることが多いなぜ低平な平野

の水田地帯にいくつもの風車が置かれているだろ

うかそれには背後の最上峡や月山の地形的

効果で引き起こされる強風帯の形成がある(力

石ほか2006)狩川付近の強風を考える際は

漏斗の注ぎ口にあたる「逆円錐」の部分と足にあ

たる「管」の部分をイメージしてほしい新庄盆

地と鮭川古口が「逆円錐」にあたり最上峡が

「管」にあたるすなわち太平洋側から奥羽山脈

の低所を越えてきたヤマセ起源の重い冷風が(写

真6)古口付近で集められ収束し最上峡を吹き

抜け地峡風となって庄内平野になだれ込むこと

で清川から狩川にかけてのエリアに強風帯が形成

されるこれが一般に知られる「清川だし」で

日本三大局地風の一つに数えられているさらに

月山の急な西側斜面に沿って発生したおろし風

が庄内平野側の余目付近にまで吹き下ろして

くる強風もある(写真7)いずれにせよ清川

だしは北西太平洋上に強い高気圧が張り出し日

本海側には低気圧が存在する際に起こりやすい

その際もう一段階地形的な効果が働いている

冷たく重い東風を遮る役割を果たしている奥羽脊

梁山脈も尾花沢と古川を結ぶ鍋越峠周辺では南

北に6キロ程度続く海抜500-600mの低所となっ

てその北西延長に最上峡が存在することだ(図

1参照) この奥羽脊梁山脈の切れ目から冷風

がまさに堰を切るように尾花沢側に流れ込みさ

らに最上川の河谷に沿って新庄盆地西側に収束し

ていく尾花沢と言えばスイカやソバの名産地

であるそれは畑作地が広いことを意味してい

るが夏季にヤマセが入り込むことで冷涼な気候

であることも影響していることを知っておくべき

であろう逆に冬場は北西風が庄内側から地形

的な低所である最上峡付近を経由して内陸部に吹

写真5 狩川付近の発電機用風車群と庄内平野最上川 (清川上空から撮影)

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 34: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 35 ―

写真6 奥羽山脈の峠から漏れ出るヤマセ (山形市関沢上空から撮影)

写真7 月山西側斜面を吹き下ろすヤマセ起源の雲 (鶴岡市野山付近から撮影)

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 35: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 36 ―

き抜けることで(図4)尾花沢付近の豪雪がも

たらされる3月半ば山形盆地で田んぼの土が見

えだした頃国道13号線の村山陸橋を北に越える

といきなり白銀の世界に舞い戻り(写真8)尾

花沢に入れば隣り合う家々の軒下に雪が深く残っ

ていることをご覧になられたことがあると思う

このような山形の風土形成にとって最上峡や奥羽

脊梁山脈の低所部の存在が如何に大きいか認識す

べきであろう逆に村山から南側の山形盆地で

は稜線を切れ込む海抜800m前後の峠以外低所

のない奥羽脊梁山脈が冷たく重い大気ヤマセ

を堰き止める衝立の役割を果たしている(写真6

参照)そこでは逆に漏れ出るヤマセが山越え

することでフェーンが発生しやすくなり5月か

ら6月にかけて乾燥した晴天をもたらせてくれ

るこれがサクランボの生育に適した気候環境

となり果物王国山形の自然環境的基盤にもなっ

ている

出羽山地西縁に発達する火山としての鳥海山と月山

 出羽山地はその両縁部を断層に限られた地塁山

地で特に西縁は青沢断層に沿って比高300m以

上の直線的な急崖となって庄内平野と画されてい

る(図5)この急崖の南北両端には火山である

鳥海山月山が位置している(写真9)月山北

面の弥陀ヶ原から北を眺めれば出羽山地西縁に

沿って直線的に流れる立谷沢川の河谷越しに鳥海

山が望まれる(写真10)  鳥海山の形成は60万年前以降(林山元

2008)月山の形成は88万年前以降(中里ほか

1996)であるそれら2つの火山は出羽山地の隆

起後青沢断層という地殻の弱線に沿ってマグマ

が上昇したことで発達したものと考えられるな

お青沢断層の延長は月山の南側にも続き大

井沢断層と名前を変え寒河江川の谷に沿って大井

沢の南にまで続いている(写真11)

図4 東北地方中部の地形概観と庄内平野から仙北平野に吹き抜ける風(冬期)

     矢印が冬期季節風

図5 鳥海山出羽山地月山の位置関係と地形概観等高線間隔150m      

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 36: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 37 ―

   写真8 村山市北部村山陸橋付近に見られた積雪域の境界       (2009年3月9日村山市高森山上空から撮影)       画面右側の無雪地域が村山市画面左奥の積雪地域が尾花沢市       画面下部を最上川が流れる

写真9 出羽山地西縁を限る青沢断層と鳥海山月山 (西川町志津上空から撮影)CH鳥海山 DW出羽山地 GSS月山 SH庄内平野  

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 37: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 38 ―

写真10 立谷沢川の河谷越しに見える鳥海山と出羽山地 (弥陀ヶ原下位から撮影)画面右下の黄色い領域が立谷沢川の河谷          

写真11 寒河江川上流大井沢断層の直線谷と月山 (大井沢南方上空から撮影)

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 38: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 39 ―

荒廃河川としての立谷沢川

 月山北面から流れる立谷沢川が直線的な河谷と

なっていることを強調したが瀬場よりも上流域

は半円形で反時計廻りに流れる水系網を呈してい

る(図5)このような水系網は現在の月山火

山発達前にカルデラが形成されていたことと関係

があるらしいまたこの水系網が立谷沢川の荒廃

河川としての水理地形的特徴を高めている

 清川から立谷沢川の河谷に入ってまず気づくこ

とは山間の河谷にも拘わらず幅の広い谷底平野

が広がりそれが17km上流の瀬場まで続いている

ことである(写真12)このような地形景観は

最上流部で斜面崩壊が激しく常に土砂が流れ下っ

てくる荒廃河川に共通したもので背後に大起伏

山地や火山を抱え最上流部に大崩壊地が存在する

場合に形成される例えば静岡県の安部川大井

川四国山地南面の佐喜浜川などの河川で認めら

れるでは立谷沢川ではそのようなメカニズム

で土砂が大量に排出されるのであろうか

 火山から流れ出す川は一般に頂上(火口)か

ら全方向すなわち放射状に流れ出す場合が多

い(図6)これは成層火山の場合頂上を中心

に円錐形を呈しているため最大傾斜方向に流れ

る水が結果的に放射状の水系網を形成するからで

ある従って成層火山の山麓部には放射状水系網

からもたらされた土砂が火山山麓複合扇状地を

形成するためなだらかな裾野地形景観を呈する

ことになる(写真13)しかし月山の場合立

谷沢川は古いカルデラ壁に沿ってすべての支流を

巻き込みながら一本の流路として反時計廻りに

流れることから月山東面のからもたらされる土

砂はすべて立谷沢川に集められ下流側に運ばれる

(写真14)しかも月山は青沢断層を跨いで発

達していることから火山体の載る基盤が断層活動

によって砕かれ脆くなっているそもそも火山

は溶岩や火砕岩が累重したものであることから

不均質で崩れやすいおまけに破砕された基盤岩

の亀裂を通して流入してくる火山性熱水には硫化

水素などが多く含まれ基盤の風化粘土化も進

んでいる(写真15)そのような月山の火山体を

立谷沢川は深く掘り込んでいることからその谷

筋に沿って多くの地すべりが至る所で発生してい

る(写真16)すなわち崩れるべくして崩れ続け

る火山として月山を捉えることが出来る(写真

写真12 立谷沢川沿いの広い谷底平野 (清川付近から撮影)

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

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仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

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Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

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出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

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内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 39: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 40 ―

17)崩れ落ちた土砂は雪解け水や集中豪雨によっ

て土石流となって立谷沢川に集められ下流側に襲

いかかってくる(写真18)立谷沢川は有史以

来暴れ川としてその名を馳せ恐れられて来た理由

には以上のような地学的背景があったからだた

びたび発生した土石流は人びとが丹精込めて築

きあげた田畑を覆い家屋や人命までをも流し去っ

てしまう土石流になすすべもない人びとにとっ

てそれは暴れ龍に見えたに違いないその立谷

沢川に棲む暴れ龍を諫めてくれるよう人びとが建

立し祈ったのが龍神供養塔である(写真19)立谷沢川の谷筋には12の供養塔がたてられ現在

図6 火山を開析する放射状の水系  北海道昆布岳火山

写真13 富士火山山麓の複合扇状地としての裾野地形 (富士宮市上空から撮影)

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 40: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 41 ―

写真14 月山東面を反時計廻りに流れる立谷沢川 (念仏ヶ原上空から撮影)

写真15 立谷沢川支流濁沢右岸池の台で2011年5月に発生した地すべり発生域と風化粘土地すべり発生域に認められた風化によって形成されていた青白灰色粘土

でも地域住民によって大切に守られているととも

に月山龍神祭りが夏に開催されている立谷沢

川に沿っては昭和12年から国による治水 砂防

工事が現在に至るまで続けられている45箇所

の砂防堰堤や延長21kmに亘る流路工が整備され

(写真20)突発的な土砂災害から住民を守って

いる

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 41: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 42 ―

写真16 弥陀ヶ原北東御浜池直下の濁沢左岸で1993年6月に発生した地すべり(池の台南方上空から撮影)                 

写真17 月山北面と濁沢における地すべり崩壊による浸食 (濁沢立谷沢川出合上空から撮影)    

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 42: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 43 ―

写真19 鉢子集落に残る龍神供養塔

写真18 2011年5月発生の池の台地すべりに伴い濁沢を流下した土石流(濁沢立谷沢川出合上空から撮影)        ensp 

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 43: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 44 ―

写真20 瀬場集落付近の砂防堰堤と床固工 (瀬場堰堤東上空から撮影)

月山西面の崩壊にともなう流山地形

 月山は88万年前~36万年前にかけて発達した火

山である溶岩の分布から当初は2300m程度の標

高をもつ成層火山であったと考えられている(図

7伴2005)しかし村山側から見た月山が

緩やかでたおやかであることに対し庄内側は比

高500-700mの切り立った屏風のような崖で縁取

られている(写真21)この急崖の存在や火山岩

の分布高度に見られるギャップから月山の火山

体は西側23が崩れ落ちたと考えられている

従って現在残っている火山体は6合目以下が残

されているに過ぎないこれは前述の出羽山地を

隆起させた青沢断層の延長部に月山が位置してい

ることと関係しているようだ(図8)すなわち

月山は出羽山地の西縁を跨ぐように発達している

ことから青沢断層やその南延長成分の活動に

よって山体にずれが生じて破壊が進んだことで山

体崩壊に至ったものと考えられるそして火山

体の崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物は現在の藤

島川に沿って庄内平野側に流下し月山高原牧場

付近から羽黒山の西側山麓手向付近にかけて流

山地形を残している(写真22)手向集落の立地

する地形を詳細地形図で見るとそこは長径2-

300mの小丘群によって凹凸を呈しながらも庄内

平野方向(北西方向)に連続する流山地形が拡がっ

ている(図9)集落内の神社が少し小高い位置

にあったり随神門脇に置かれた大石や祓川左岸

に作られた須賀の滝に見られる大きな角々しい岩

屑の存在からも(写真23)山体崩壊に伴う流山

地形であったり岩屑なだれ堆積物であることが判

るこのような流山地形は大崩壊を起こした火

山体の山麓部に残されていることが多く鳥海火

山の場合は芭蕉も訪れた象潟などがその代表的な

例である

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 44: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 45 ―

写真21 田麦俣上空から見た月山西面の急崖

図7 月山火山の模式断面 (伴雅雄原図)

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 45: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 46 ―

図8 月山とその周辺の地形概観   等高線間隔50m

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

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仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

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出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

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川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

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1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 46: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 47 ―

写真22 月山西面の崩壊にともなう岩屑なだれ堆積物がつくる流山地形群 (鶴岡市川尻上空から撮影)             

  藤島川右岸と羽黒山西山麓に挟まれた位置に濃緑の木々に覆われた流山地形群が残る           

写真23 祓川須賀の滝背後に見られる岩屑なだれ堆積物としての角礫層

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 47: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 48 ―

図9 羽黒山周辺の地形    等高線間隔10m

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 48: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 49 ―

図10 高野山の地形   等高線間隔20m

羽黒山の地形的意味

 羽黒山神社のある丘陵も青沢断層と酒田衝

上断層に挟まれそれらの断層活動によって持

ち上げられた地塁である(図3参照)丘陵とは

言っても宗教施設群の於かれた場所には標高

400~420m程度の平坦な地形が残ることから(図

9)かつてそこを川が流れていたことがわかる

羽黒山が月山を含めた出羽三山の神々を祀る宗教

的拠点となりえたことは以下のようなことが考

えられるすなわち冬期の厳しい環境では一年

を通して月山の山頂でお祀りすることが不可能な

ため冬でも人が暮らせるほどの高度にある現在

の羽黒山の場所で羽黒山湯殿山の神々とともに

祀りするとともに山伏が修行に励んだのではな

かろうか手向の集落から随神門を下って祓川に

降り須賀の滝が結界を意味しそれより羽黒山

の聖域が始まる2400段余の石段を上る比高300mの参道は俗世と聖域とを精神的に隔てる宗教

的舞台装置である杉の巨木が整然と配せられた

参道を上るにつれその荘厳さや非日常性から聖

域に分け入ることを再認識させられるしかし地

学的にはこの坂は過去数十万年間の断層隆起に

よってもたらされた段差でもある高度的に周囲

と隔絶されているにも拘わらず段丘起源の空間

的に広がりのある場所であったからこそ大規模

な宗教施設群の展開が可能であったと考える高

野山や比叡山など山岳仏教の根拠地はいずれも

下界からは隔絶された位置にありながら山頂部

に空間的に広がりのある平坦面小盆地のような

小宇宙的地形環境に開かれている(図10)羽黒

山を開いた人びとも同様な宗教的視点と拡張性

でこの場所を探し当てたに違いない後付けかも

知れないが豊かな庄内平野に接した位置的環境

も羽黒山を栄えさせた経済的要因として考えられ

よう

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

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仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

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出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

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内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 49: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 50 ―

写真24 2010年2月発生の七五三掛地すべりによる頭部の陥没地形

出羽山地は地すべり地形の巣

 地すべりとは斜面を作っている地層がその重

みでそれ自身をその場所に留め置けなくなって下

方に滑り落ちていく現象であるすなわち滑り

落ちる地層底面の摩擦や粘着力が地下水のもつ

圧力や地震力によって低下することで発生する

過去にこのようにして発生した地すべりの痕跡

地すべり地形の集中している地域の一つが出羽

山地である(図11防災科学技術研究所)2010年2月末から活動が顕著になった鶴岡市大網七

五三掛地区の地すべり災害は記憶に新しいところ

である(写真24) 出羽山地は2000万年前以降に海底で堆積した堆

積物から成り立っていることは既に述べた厚い

地層が堆積する深く落ち込んだ地溝が形成される

ためには地殻が引き延ばされるような動きが

あったことを意味しているその際単に地殻が

引き延ばされ正断層による陥没が起こるだけでな

くまさに引き裂かれた海底からマグマが大量

に噴出することになる海底に噴出した火山噴出

物が沈降拡大しつつある海底を埋めて堆積した

(写真2参照)その際まれに火山灰に富んだ

地層が層状に挟み込まれたりする火山灰層はガ

ラス質の細粒層で風化して粘土質になりやすい

経験的に粘土層は水を含むとヌルヌルになって滑

りやすいことはご存知であろうつまり出羽山

地を構成する海成堆積物には地すべりを引き起こ

し易い地層を包含しているしかもそれらの海成

堆積物自体が地質時代的には新しい時期のもの

で堆積後の続性作用で強く固化することなしに

隆起に転じたことで崩れやすいまた日本海側

に位置することで冬期の降雪が多く春先の融雪

水の浸透による地下水位の上昇が顕著な地域であ

るさらに300万年前以降の隆起にともない浸食

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 50: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 51 ―

図11 出羽山地に分布する地すべり地形 清水ほか(1983)清水大八木(1986ab)に基づき防災科学技術研究所の地すべり地形分布図webサイト(httpdil-opacbosaigojppublicationnied_tech_note)からダウンロードしたshpファイルをGISソフト上で編集した青灰色のエリアが地すべり地形

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 51: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 52 ―

写真25 鶴岡市大網地区七五三掛地区に発達する地すべり起源の緩斜面 (鶴岡市月山ダム北方上空から撮影)        ensp 

による谷の形成も進んだことで斜面の不安定化も

進んでいるすなわち出羽山地は地すべりの発

生しやすい条件がすべて揃った地域であるとこと

で結果的に地すべりが過去から現在まで発生し

続けた地域となっている出羽山地以外でも同

様な海成堆積物が分布し積雪量の多い新潟県の魚

沼丘陵や東頸城丘陵は地すべりの多発地域でもあ

る(Japan Landslide Society 2012) 地すべりという災害も人がいなければ単なる

地変(急激な地形変化現象)にすぎない地すべ

り現象は遙か有史以前から緩やかな斜面を出羽

山地に作ってきた(写真25)やがて南向きの緩

やかな斜面に人々が入り込み地すべりを引き起

こす引き金にもなる豊富な雪解け水を利用して棚

田を開き生業活動を行ってきた七五三掛大

網岩根沢そして日本の棚田百選に選ばれた豊牧

地区四ヶ村の棚田景観も(写真26)出羽山地

を削剥する地すべりによってもたらされた景観で

あるこのように出羽山地内には山間地であり

ながら食糧の生産が可能な土地が点在していたと

も言い換えることが出来ようそれらの村々が江

戸期には出羽三山信仰の登拝口として多くの参拝

者を迎えてきた

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 52: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 53 ―

写真26 大蔵村豊牧地区四ヶ村の棚田景観

おわりに

 江戸期から大正初めまで最上川は舟運交通路

として山形の物流を支えてきた多くの人や物資

が最上峡を行き来したことになるしかし歴史

家が当然のこととして触れない最上峡の自然景観

的意味を読み取ろうとすることはこの地域を

様々な時間スケールで学際的に理解することに繋

がるそのコンテクストから考えれば出羽山地

や最上峡を含む地域はかつての深海底が隆起し

そこを最上川が隆起に打ち勝って先行谷を形成し

た場所となるさらに最上川という水路と地峡を

吹き抜ける風がかつての水運や山形の経済を支

えていたというストーリーが読み取れるそし

て現在では再生可能エネルギー利用の最先端の

場ともなっている

 地域性や風土と言われる語はその場所の自然

環境をバックボーンとして展開されてきた人間活

動の現れ方を意味しているある地域がどのよう

な場所であるかを理解することは自然景観の大

枠が作られる少なくとも105~6年スケールから現

代史的な101~2年スケールでの事象についてそれ

ぞれ意味づけしさらにそれらのかかわりを検討

しながら再構成していくことである歴史と違っ

て時間スケールの大きな地学事象について認識す

ることは難しいことのように思われるかも知れな

いがほとんどの身近な自然景観は初等中等教

育で学習したはずの用語や知識で認識可能なもの

であるそれらが身の回りに実際に存在するもの

であることを意識して始めて目にするものに対

しての意味づけが可能になるまた身近な自然

景観にも意識を巡らせることは103~4年程度の

大きな時間スケールで場所を捉えることにも繋が

り過去の地変の発生を認識することで自然災害

を回避する一歩にもなるまずは街に出て山形

が傾いた場所にあることや舟下りや棚田巡りを

しては見えてくる地層についての関心をもつこと

である

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 53: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

― 54 ―

謝  辞

 本稿をまとめる機会を与えて下さった山形大

学環境保全センター大津 芳博士には深く感謝

の意を表します

 本稿で使用した空中斜め写真の撮影では陸上

自衛隊東北方面航空隊山形県消防防災航空隊

国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所防災

科学技術研究所から搭乗の便宜を図っていただい

た関係各位には心から感謝申しあげます

引用文献

5 万分の1地すべり地形分布図 第5集「青森

仙台」図集防災科学技術研究所研究資料 第116号

伴 雅 雄(2005)月山日本の地形3「東北」

pp274-276東京大学出版会

林 信太郎山元正継(2008)鳥海火山地質学雑

誌114補遺87-95池 辺 穣大沢 穠井上寛生(1979)酒田地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅)

地質調査所42p池 田安隆今泉俊文東郷正美平川一臣宮内

宗裕(2002)第四紀逆断層アトラス東京大学

出版会254pJa pan Landslide Society(2012) Landslide in

Japan 68p守 屋俊治鎮西清高中嶋 健檀原 徹(2008)

山形県新庄盆地西縁部の鮮新世古地理の変遷-

出羽丘陵の隆起時期と隆起過程-地質学雑誌

114 巻8号p389-404中 里浩也大場孝信板谷徹丸(1996)月山火山

の地質とK-Ar年代岩鉱911-10大 沢 穠片平忠実土屋信之(1986)清川地域

の地質地域地質研究報告(5万分の1図幅) 地質調査所61p

力 石國男蓬田安弘 石田祐宣(2006)山形県庄

内平野の強風「清川だし」の発生機構について

風工学シンポジウム論文集19(0)19-24佐 藤比呂志(1986)東北地方中部地域(酒田-古

川間)の始生代地質構造発達史(第Ⅱ部)東北

大学地質古生物学教室邦文報告891-45清 水文健大八木規夫井口隆(1982)5万分の

1地すべり地形分布図 第1集 「新庄酒田」

図集防災科学技術研究所研究資料 第69号清 水文健大八木規夫(1986a)5万分の1地す

べり地形分布図 第4集「村上佐渡」図集

防災科学技術研究所研究資料 第109号清 水文健大八木規夫(1986b)5万分の1地す

べり地形分布図 第5集「青森仙台」図集

防災科学技術研究所研究資料 第116号Sa to H(1994)The relationship between late

Cenozoic tectonic events and stress field and basin development in northeast Japan JGR 99 22261-22274

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 54: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―55―

「大雨避難ワークショップ」の開発と展開

山形大学大学院教育実践研究科 村 山 良 之 

山形大学地域教育文化学部 八 木 浩 司 

国土交通省新庄河川事務所 光 永 健 男 

NPO土砂災害広報センター 緒 續 英 章金   英 樹 

 

1はじめに

 避難訓練は日本の学校における防災教育で

もっとも一般的なものでありそのほとんどは

児童生徒が教員の指示に従って素早く安全に避難

することに主眼が置かれてきたしかし東日本

大震災の経験から児童生徒が自ら判断行動で

きることを目指す防災教育が(改めて)求めら

れることとなったこのことを踏まえて避難訓

練においても無予告や休み時間等の訓練が広く

実施されるようになったが課題も多いことが明

らかにされている(村越ほか2016)本文は

児童生徒が自ら判断し行動できることを目指し

て開発した「大雨避難ワークショップ」について

その概要とその後の展開について報告するもので

ある

 この開発にあたっては「避難という予めの正

解がないこと」をどのように児童生徒に教えるの

かという防災教育の根本的な課題と向き合うこ

ととなった筆者らが検討するなかでむしろこ

のことをそのまま子どもたちに投げかけるべきで

あろうとの結論に達し後述のようなワーク

ショップ形式の授業を構成したNPO土砂災害

広報センターが既に作成していたカードを用いた

コンテンツを基にアレンジして予めの正解がな

いこと教師側からは明示的には示さないが早め

の避難が安全であることこれらに気づく(自覚

する)ことを促すことを目指した

 本報告の基になった2017年度以降の山形県庄

内町を中心とする小中学校における実践は土砂

災害とその防災策について学ぶとともに実際の

判断や行動が難しい大雨時の避難に関して児童生

徒が話し合いながら考えるというものである

庄内町を流れる立谷沢川は月山の東麓を回り込

んで北流し最上川に至る荒廃河川である2017年は同河川における国の直轄砂防事業80年にあた

り国土交通省「新庄河川事務所管内土砂災害地

域防災対策検討」事業が展開されその一環とし

て庄内町の小中学校における防災教育支援を開始

した実践の柱は立谷沢川流域の景観や防災施

設の現地見学(4校時分貸切バス利用)と模

型実験および「大雨避難ワークショップ」(計2

校時分)の2つである前者を八木後者を村山

が中心となり両者の随所で国土交通省最上

川赤川水系砂防ボランティアが解説等を担った

そして土砂災害防止広報センターが全体をコー

ディネートした注1)本事業は2018年度以降も

継続し月山麓の大蔵村鶴岡市旧朝日村地区の

学校にも展開している

 本文で報告する「大雨避難ワークショップ」は

この事業推進にあたって開発されたものである

模型実験を伴わないワークショップのみの形で

他地域の学校の児童生徒教員研修社会人向け

研修等で多数回実践を重ねている

 実践を重ねるなかで子ども対象のワーク

ショップにおいても大人対象のワークショップ

を含む研修等でも本ワークショップの位置付け

が大きく展開した後段ではそのことを明らかに

して本ワークショップを用いた研修の可能性に

ついて言及したい

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 55: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―56―

図1 「大雨避難ワークショップ」で使用のスライド(抜粋) 2019年9月17日庄内町立立川小学校5年生対象

2「大雨避難ワークショップ」

 ⑴ ワークショップの概要

 ここでは庄内町立立川小学校での実践事例

(2019年9月17日台風19号による災害の前5

年生対象)をもとに「大雨避難ワークショップ」

の内容について示す(図1)これは2017年度

における実践例とほぼ同じである(村山ほか

2018)がその後若干の改良と2019年施行の警戒

レベル等を加えたものである

 「大雨避難ワークショップ」は参加者が数人

ずつのグループで相談しながら3種類のカード

群(土砂災害防止広報センター作成絵と文字で

表現)を用いて大雨時の避難について考えるも

のであるカードは①時間雨量を示すもの6枚

(強い雨猛烈な雨等)②気象警報注意報(注

意報警報特別警報)に土砂災害警戒情報を加

えた4枚③避難勧告等の3枚(避難準備高齢

者等避難開始避難勧告避難指示(緊急))で

ある①~③のセットごとにカード内容の順番

に従ってシート上に横に並べることを指示した

(問題Ⅰ~Ⅲ)作業の結果としてシート上に

①~③のセットごとに(3列)カード内容の軽重

の順番に沿って横に並ぶことになるこれらが縦

には単純につながらないことすなわち時間雨量

(だけ)では注意報や避難勧告が決まらないこと

等も説明したここまでがワークショップの前半

である

 それぞれについて順序を判断して並べるという

単純な作業だが子どもたちにはじゅうぶんな作

業量であるとくに避難勧告と避難指示(緊急)

等子どもにはわかりにくく各グループでの相談

は白熱することが多かったじつは大人のワー

クショップでも避難に関するカードの順序は難

しいことが判明している

災害(さいがい)へのそなえ

大雨や土砂災害(どしゃさいがい)からいのちを守るために

2019年09月17日 庄内町立立川小学校

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 56: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―57―

2

今年(2019年)佐賀県を中に九州北部で災害去年(2018年)広島県岡県愛媛県で災害

2018年 形県には2回

2018年80506

酒沢1125鶴岡755酒715新庄615真室川720590狩川575最上町向町560mm時

2018年83031

560真室川差鍋535最上向町510狩川450mm時(狩川 24時間量1300mm 48時間量2260mm 最記録更新)

 後半では川の近くの自宅で家族と一緒にいる

場合を想定してどの時間雨量のタイミングで避

難するかについてグループごとに相談発表を

求めた(問題Ⅳ-1)さらに条件を変えて複

数回質問し昼と夜お年寄りがいる場合といな

い場合等について尋ねた(問題Ⅳ-2~4)そ

の際はスライドのとおりではなく昼と夜を比

較して夜の方がより弱い雨で避難するかより強

い雨で避難するかとうい問いかけに変更したそ

の後どこに避難するのかも尋ねた(問題Ⅳ-

5)スライドでは上記想定のままだが実践で

は参加者自身の家族の避難場所について知ってい

るかを尋ねたそしてそれぞれの自宅からの避

難場所について家族で相談することを提案した

 以上の後に2017年7月5日九州北部豪雨災害

時における時間雨量警報注意報避難勧告等

の実際のタイミングを示して大雨時に適確なタ

イミングで避難することが難しいこと(予めの正

解がないこと)まれにではあるが激しい降雨の

前に出るはずの気象警報や避難勧告等が間に合わ

ない場合があることを実例をもって示したそ

して2019年開始の「警戒レベル」について示

し気象警報注意報と避難勧告等のカードを縦

に並べる作業を行った

 最後にこの授業でやったことを考え続けてほ

しいこと家族と相談してほしいことそして子

どもたちには率先避難者になって欲しいこと等を

伝えてワークショップを終えた

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 57: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―58―

問題Ⅰ

こたえ

1時間あたり雨の量 mm 10-20 20-30 30-50 50-80 80-

問題Ⅰ

雨がだんだん強くなる順にならべてください

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 58: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―59―

問題Ⅱ

こたえ

問題Ⅱ

雨についての情報(じょうほう)をならべてください

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 59: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―60―

問題Ⅲ

こたえ

問題Ⅲ

避難(ひなん)についての情報(じょうほう)をならべてください

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 60: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―61―

 ⑵ ワークショップの効果2017年度アンケー

トより

 2017年度の庄内町における実践概要は表1の

とおりである本事業初年度にあたり可能な限

り実践校における児童生徒へのアンケート調査

を行ったその結果によると大雨避難ワーク

ショップ模型実験現地見学を含む取組によっ

て土砂災害に対する理解が進んだことがわか

るたとえば土砂災害が発生しやすい場所発生

しやすい時土砂災害の防災策等の知識が増え

たさらに大雨時に避難したいと答えた者が大

幅に増えた(以上についてはアンケートデータ省

略)さらには避難場所の確認や家具の転倒防

止等の災害への備えも増えたことから(図2)

自然災害全般への意識が高まったと考えられる

現地見学と模型実験大雨避難ワークショップの

うちいずれかのみ実践の学年と両方実践の学年

(学校)を比較すると防災学習の内容を家族に

話した割合は両方を経験した学年(学校)がき

わだって高い(表2)学校での防災学習成果を

家庭に展開するにおいてワークショップ等と現

地見学と組み合わせることが有効であることもわ

かった立川中ではもっとも印象に残った授業

は何かとの問いに対して29人のうち2人が講義

(ワークショップ)を挙げた(表3)現地見学

や模型実験に比べて明らかに地味なワークショッ

プであることを勘案すると本ワークショップは

生徒にかなりのインパクトを与えられたものと評

価できよう

問題Ⅳ-1

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 あなたはどんなタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-2

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも昼間だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 61: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―62―

問題Ⅳ-3

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも夜だったらあなたはどのタイミングで避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-5

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 避難(ひなん)するときどこに避難(ひなん)しますか

問題Ⅳ-4

あなたは川の近くに住んでいます家族といっしょにいます

立 場

質 問 もしも家族におじいちゃんやおばあちゃん小さな赤ちゃんがいたらあなたはどのタイミングで

避難(ひなん)しますか

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 62: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―63―

福岡教育 先による

2017年75〜7

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 63: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―64―

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1415避難準備1426避難勧告(全市)

1530〜 避難指(地区ごと)21

0932注意報

1751特別警報(浸砂)

0932注意報

1314警報(浸)1403警報(+砂)

1751特別警報(浸砂)

20

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 64: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―65―

砂災害防広報センターによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表1 2017年度 庄内町における実践概要

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 65: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―66―

表2 防災学習の内容を家族に話したか (2017年)

表3 一番印象に残っている授業 (2017年 立川中学校)

図2 2017年 各校の事前事後アンケートによる

表 1 2017 年度 庄内町における実践概要

図 2 準備していること 2017 年 各校の事前事後アンケートによる

実施日 対象 概要

7月11日~12日 立川中学校 1年生11日 現地見学12日 授業

9月25日~26日 立川小学校 5年生(34名)25日 授業 34校時26日 現地見学 1~4校時

10月2日~3日 余目第一小学校 6年生(29名)2日 授業 34校時3日 現地見学 1~4校時

10月10日(火)余目第四小学校 5年生(24名)        6年生(29名)

5年 現地見学 1~4校時6年 授業 56校時

授業模型実験+大雨避難ワークショップ

14

10

21

15

11

7

26

27

15

20

8

15

18

23

3

3

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前非

常持ち出し袋

避難場所

家具類固定

気象情報

はい いいえ

立川小 2017

6

7

15

7

9

8

23

22

22

22

13

22

19

21

5

7

0 20 40 60 80 100

事後

事前

事後

事前

事後

事前

事後

事前

非常持ち出し袋

避難

場所

家具類

固定

気象情

はい いいえ

余目一小 2017

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 66: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―67―

表 2 防災学習の内容を家族に話したか (2017 年) 各校アンケートによる

表 3 一番印象に残っている授業 (2017 年 立川中学校) アンケートによる

現地見学 模型実験講義

(ワークショップ)計

人数 21 6 2 29

724 207 69 1000

現地見学模型実験

ワークショップ はい いいえ 計

人 22 8 30

733 267

人 23 5 28

821 179

人 13 10 23

565 435

人 10 18 28

357 643times

立川小 5年

余目一小 5年

余目四小 5年

余目四小 6年

times

3「大雨避難ワークショップ」の展開

 小学校と中学校での実践からすぐに次のこと

がわかった小学生は規範的な答にまとまってし

まう傾向が強くたとえば夜は逃げるのが危険だ

から昼よりも早く避難する(すべき)という結論

を(ほぼ)全てのグループが出すこれに対し

て中学生は現実を踏まえた議論ができるので

たとえば夜は昼より雨が強くなるまで逃げない

(逃げられない)という結論のグループも出てき

て避難に関する重要な課題があぶり出されて

ワークショップの議論が深まった

 本ワークショップを始めた2017年度は子ども

たちのこのような反応から小学生レベルにはこ

のワークショップは難しすぎるかもしれないと考

えたしかし規範的に偏りがちな小学生の反応

こそ防災の観点から重要であることに気づくこ

とになったこれとは逆に大人対象のワーク

ショップを重ねるなかで現実論がより強く展開

する傾向が明瞭となった大人は上記の中学生

の一部と同じくたとえば夜は早く逃げない(逃

げられない)とするグループが多くなりやすく

極端な場合はまったく逃げないというグループも

現れて本音の現実論が出ることでワークショッ

プが盛り上がることもあった

 そこで子ども向けワークショップでは「大

人は逃げない」と伝えて注2)子どもたちが率先

避難者になることや大人を含む周りの人に避難を

呼びかける役割についてワークショップのまと

めの段階に加えたまた大人向けの研修では

「大雨避難ワークショップ」を体験していただい

た後同ワークショップでの子どもの様子すな

わち子どもほど早めに避難する(しようとする)

ことを伝えて大人は子どもに助けてもらうこと

なるかもしれないこととくに教員向け研修にお

いては子どもたちを率先避難者として養成するこ

とを依頼した2018年西日本豪雨災害では愛媛

県西予市で17歳の息子さんが家族を説得して自宅

から避難し土砂災害の直撃を受ける直前に逃れ

た事例が報道された(愛媛新聞電子版2018年7

月10日)この事例を大人向けのワークショッ

プのまとめの段階に加えた

4 おわりにさらなる展開をめざして

 模型実験とワークショップについて2017年度

山形大学地域教育文化学部地理研究室4年生諸君

(当時)に参観コメントを依頼したそれを踏

まえて子ども向け「大雨避難ワークショップ」

は改善されその後もわずかずつであるが改良を

加えている

 大人向けの防災研修等においてもテーマや担

当時間の条件が合う場合はアイスブレイキング

を兼ねてこの「大雨避難ワークショップ」を研修

冒頭に配置することが多くなった参加者の反応

はおおむね良好であると思われるワークショッ

プ後半はもとより前半のカード並べから白熱す

ることもある

 2019年2月9日新潟県社会科教育研究会授業実

践研修会で防災研修の機会を得てここでも「大

雨避難ワークショップ」を最初に行ったその後

に地理院地図等を用いたハザードマップの読

図学校の防災管理と防災教育に関する実践的内

容の一部を提示した参加者へのアンケートによ

れば(表4ab)「大雨避難ワークショップ」が

有益と感じた参加者がほとんどで研修全体につ

いてのコメントも肯定的であったワークショッ

プの実践希望もひじょうに多い一方でそれがで

きそうであるとした参加者の割合がこれより低

いことも明らかになった

 本ワークショップのもともとの目的である参

加者(子どもも大人も)が自ら判断し行動でき

るようになることに加えてワークショップ実践

から明らかになった率先避難者としての子ども

への期待とその養成をとくに先生方に期待した

いそのために「大雨避難ワークショップ」の

実践が容易にできるようカードカードを並べ

るシートパワーポイントファイル解説等を作

成することそしてこれらを先生方に配付する仕

組みを作る計画である子ども向けだけでなく

大人向けのコンテンツとしても改善を重ねて行き

たい

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 67: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―68―

表 3a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

参加者所属 人

小学校 13 371

中学校 11 314

高校 0 00

その他 11 314 学生行政大学等

計 35

全く有益でない 0 00

あまり有益でない 0 00

どちらともいえな 0 00

少し有益 1 29

有益 34 971

計 35

やりたくない 1 29

とちらでもない 2 57

やりたい 32 914

計 35

難しそう 2 57

とちらともいえな 12 343

できそう 21 600

計 35

大雨避難ワークショップについて もしも材料(カードシートパワポファイルなど)があればあなたも児童生徒や教員対象にやってみたいですか

大雨避難ワークショップ

大雨避難ワークショップについて あなたがやるのは難しそうですか

表4a 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の評価

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 68: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―69―

1)大雨避難ワークショップ以外の現地見学や模

型実験を含めて本事業のうち庄内町での実

践の概要については村山ほか(2018)を参

照されたい

2)「大人は逃げない」と伝えると小学生はおお

いに驚き「大人は死にたいの」といった

反応が得られたこともあった大人に限るも

のではないが大雨時に人々がなかなか避難

しないことについては数多くの研究があり

さまざまな理由が検討されているたとえ

ば田中ほか(2016)はそれらの要因群を包

括的に整理している

文  献

村越 真小山真人河合美保地震に対する抜

き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進

するか安全教育学研究16⑴ pp3-132016

村山良之八木浩司窪田敏一緒續英章金英

樹土砂災害に関する防災教育-児童生徒が自

ら判断行動できることを目指して-安全

教育学会第19回横浜大会発表要旨集pp58-592018

田中皓介梅本通孝糸井川栄一既往研究成果

の系統的レビューに基づく大雨災害時の住民避

難の阻害要因の体系的整理地域安全学会論文

集29pp185-1952016

表4b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

表 3b 新潟県社会科教育研究会授業実践研修会参加者の感想

講演についてどんなことでもよいですからコメントや改善提案を書いてください

社会科授業と防災教育それぞれrdquo答えrdquoのない学習で自分の判断で行動できるように生きて

いけるようにという点で同じものだと感じた思考が判断力を高めることができるように防災教育

の指導にチャレンジしたい(小学校)

ちょうど 5 年生の自然災害の学習をしているので大雨ワークショップはタイムリーでした学習参観

などで子どもと保護者の両方が意識を持ち高められるよう努力をしたいと思いました(小学校)

実際に大雨ワークショップをやってみると大人でも判断に迷うことがあることに気づけた子どもに

やらせる前にまずは体験をしてみるのが重要だと感じた(中学校)

「子供を率先避難者として育てる」この言葉が非常に重く聞こえました子供の持つ純粋な恐怖心

が防災においてもっとも役に立であろうということを学びました(大学院生)

2019 年 2 月 9 日研修会時のアンケートによる

ワークヨップに言及したもの等を抜粋一部改変

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 69: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

―70―

編 集 後 記

 山形大学環境保全センターは山形大学全学における環境安全衛生および医学部キャンパスにおける労

働安全衛生を担保するための中心組織として位置づけられています業務報告の項で述べましたが今年

度は有害化学物質の保管状況等に関する情報の更新に向けた作業を開始しました引き続き不測の事態

に対処できるよう万全を期し労働安全衛生に係る体制づくりを進めていきたいと思います

 さて今年度の広報誌は2014年度以来2度目となりますが地域教育文化学部の八木浩司先生と大学

院教育実践研究科の村山良之先生にお願いしそれぞれの専門分野からご寄稿をいただきました八木先生

の前回のご寄稿では東日本大震災をうけ山形県内の活断層について詳しく解説していただきました

今回は「普段見過ごしている山形の自然景観案内-出羽山地が作る地域性を読み取る-」と題し出羽

山地の自然と風土を題材に様々な時間スケールで学際的に理解できるよう包括的に解説していただきま

した前回のご寄稿はきれいで判りやすい多数の写真を掲載され好評を博しましたが今回はより広い内

容を含んでおり極めて興味深い論考に仕上げていただいたと思います村山先生八木先生光永健男

氏(国土交通省新庄河川事務所)緒續英章氏金英樹氏(NPO土砂災害広報センター)には「「大雨避

難ワークショップ」の開発と展開」をご寄稿いただきました村山先生は防災教育の専門家として日本

屈指の方でありネパールなどの国外でも活動しているほか山形県などの各種諮問委員会のメンバーと

して活躍されていますこれまでの数多い活動実践の中から最近おこなわれたものをご紹介いただきま

したお忙しい中興味深い原稿をお寄せ下さったお二人に心より感謝申し上げます

 当センターは山形大学全学を対象とし環境および職場安全衛生管理に係る数多くの業務を行っていま

す実験廃液処理化学物質管理作業環境測定など疑問や要望がございましたらお気軽にご相談くだ

さい

(大津 芳)

環ensp境ensp保ensp全 No23

2020年3月

編 集  山形大学環境保全センター

     990-9585 山形市飯田西2-2-2

     責 任 者 藤 井   聡(センター長)

印 刷  コロニー印刷(山形福祉工場)

     990-2322 山形市桜田南1- 19

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記
Page 70: NoNo.23 山形大学環境保全センター Environmental Preservation Center,Yamagata University 2020年3月 環境保全 NO. 23 山形大学環境保全センター 巻頭言環境保全センター長

No22

山形大学環境保全センターEnvironmental Preservation CenterYamagata University

2019年3月

全 

NO

22

山形大学環境保全センター

巻頭言 環境保全センター長  藤 井   聡

山形大学学術研究院  玉 手 英 利

山形県のツキノワグマ(Ⅰ) 最近の出没状況について

山形大学学術研究院  玉 手 英 利  林 田 光 祐

山形県のツキノワグマ(Ⅱ) 山形大学農学部付属演習林に        おけるツキノワグマ調査

編集後記

山形県の絶滅危惧植物とその保全山形大学理学部  横 山   潤

センター業務報告

CONTENTS 目次

  • 巻頭言   環境保全センター長 藤井 聡
  • センター業務報告
  • 普段見過ごしている山形の自然景観案内 -出羽山地が作る地域性を読み取る-    山形大学地域教育文化学部 八木 浩司
  • 「大雨避難ワークショップ」の開発と展開    山形大学大学院教育実践研究科 村山 良之
  • 編集後記