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1 三菱 UFJ 銀行 国際業務部 November 9, 2018 ・本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり、金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません。本 資料の中に銀行取引や同取引に関連する記載がある場合、弊行がそれらの取引を応諾したこと、またそれらの取引の実行を 推奨することを意味するものではなく、それらの取引の妥当性や、適法性等について保証するものでもありません。 ・本資料の記述は弊行内で作成したものを含め弊行の統一された考えを表明したものではありません。 ・本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、その正確性、信頼性、完全性を保証するものではあり ません。最終判断はご自身で行っていただきますようお願いいたします。本資料に基づく投資決定、経営上の判断、その他 全ての行為によって如何なる損害を受けた場合にも、弊行ならびに原資料提供者は一切の責任を負いません。実際の適用に つきましては、別途、公認会計士、税理士、弁護士にご確認いただきますようお願いいたします。 ・本資料の知的財産権は全て原資料提供者または株式会社三菱 UFJ 銀行に帰属します。本資料の本文の一部または全部につい て、第三者への開示および、複製、販売、その他如何なる方法においても、第三者への提供を禁じます。 ・本資料の内容は予告なく変更される場合があります。 MUFG BK Global Business Insight EMEA & Americas .自動車産業における米国通商リスクの考察 ナカニシ自動車産業リサーチ 代表兼アナリスト 中西 孝樹 .本格化する見込みの英国の安全保障面での外資規制 メイヤー・ブラウン外国法事務弁護士事務所 外国法事務弁護士(英国ソリシター)シニアアソシエイト 安達 知彦 EU 一般データ保護規則(GDPR):2018 年内にはルールが 簡易化される? ~日本の十分性認定の動向 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 コンサルティング事業本部国際業務支援ビジネスユニット 国際ビジネスコンサルティング部 安念 隆久 … 2 … 8 … 11

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三菱 UFJ 銀行 国際業務部

November 9, 2018

・本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり、金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません。本

資料の中に銀行取引や同取引に関連する記載がある場合、弊行がそれらの取引を応諾したこと、またそれらの取引の実行を

推奨することを意味するものではなく、それらの取引の妥当性や、適法性等について保証するものでもありません。

・本資料の記述は弊行内で作成したものを含め弊行の統一された考えを表明したものではありません。

・本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、その正確性、信頼性、完全性を保証するものではあり

ません。最終判断はご自身で行っていただきますようお願いいたします。本資料に基づく投資決定、経営上の判断、その他

全ての行為によって如何なる損害を受けた場合にも、弊行ならびに原資料提供者は一切の責任を負いません。実際の適用に

つきましては、別途、公認会計士、税理士、弁護士にご確認いただきますようお願いいたします。

・本資料の知的財産権は全て原資料提供者または株式会社三菱 UFJ 銀行に帰属します。本資料の本文の一部または全部につい

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・本資料の内容は予告なく変更される場合があります。

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EMEA & Americas

Ⅰ.自動車産業における米国通商リスクの考察

ナカニシ自動車産業リサーチ 代表兼アナリスト 中西 孝樹

Ⅱ.本格化する見込みの英国の安全保障面での外資規制

メイヤー・ブラウン外国法事務弁護士事務所

外国法事務弁護士(英国ソリシター)シニアアソシエイト 安達 知彦

Ⅲ.EU 一般データ保護規則(GDPR):2018 年内にはルールが

簡易化される? ~日本の十分性認定の動向

三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部国際業務支援ビジネスユニット

国際ビジネスコンサルティング部 安念 隆久

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Ⅰ.自動車産業における米国通商リスクの考察

北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の妥結を公表し、2018 年 10 月 1 日に時限ぎりぎりで米国、メキシ

コ、カナダの 3 カ国間の貿易協定が成立した。新協定の名前こそ NAFTA から「米国・メキシコ・カナダ協

定(USMCA)」に変更されるが、内容は NAFTA の修正である。

国内自動車産業にとっては厳しい合意内容ではあるが、新ルールが決定すれば、そのルールに従って現地

化を推進しさらに競争力を高めるためにまい進することが可能だ。追加関税の影響は無視できないが、将来

の不透明感が軽減できることはポジティブに捉えたい。

USMCA の合意内容は以下の通りだ。

1)完成車(CBU)の NAFTA 域内における現地調達率を現行の 62.5%から 75%に引き上げ、基幹部品が

75%、主要部品が 70%、補完部品は 65%とする。

2)最低時給 16 ドルの工場で生産する割合を乗用車は 40%とする(トラックは 45%)。

3)通商拡大法 232 条の数量割り当てを受け入れ、メキシコ・カナダ共に年間 260 万台までの乗用車の最大

25%関税賦課を対象外、自動車部品についてはメキシコからは年間 1,080 億ドルまで、カナダからは同

324 億ドルまでを対象外とする。

4)移行期間は 3 年間とし、2020 年 1 月から段階的に適用する(図表 1 参照)。

【図表 1 USMCA の実施詳細条件】

出所:米通商代表部(USTR)、ナカニシ自動車産業リサーチ

この条件で有利な結果を得られるのは米国の三大自動車メーカー「デトロイト 3」であり、日本・欧州・

韓国の自動車産業への特恵関税(ゼロ関税)のメリットは大きく後退する公算が大きい。唯一、現地化が大

きく進んでいるホンダは上記の条件を満たす可能性が高く、交易条件面ではデトロイト 3 に近いメリット恩

恵があると考えられる。

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米道路交通安全局(NHTSA)が開示する自動車ラベリング法(AALA)ベースで、北米(米国・カナダ

+メキシコ)の現地調達率を試算した(図表 2 参照)。USMCA 現地調達率の計算の詳細が不明であるため

厳密な判断ではないが、ゼネラルモーターズ(GM)、フォード・モーター(以下、フォード)、フィアット

クライスラー・オートモービルズ(FCA)、ホンダは 75%以上の新域内原産割合(RVC)をクリアできる可

能性が高い。その他の自動車メーカーは、一部あるいは全ての生産モデルで特恵関税の恩典を受けられない

リスクがある。

【図表 2 NAFTA 生産モデルの NAFTA 域内現地調達率(AALA ベース)】

出所:NHTSA、ナカニシ自動車産業リサーチ

時給 16 ドルの賃金条項(LVC)に関しては、厳密な計算ができない。現地での研究開発費を含められる

か否かの会計的な詳細を確認していく必要があるが、現地調達率と賃金コストは連動するものであり、GM、

フォード、FCA、ホンダがおおむねクリアでき、その他の自動車メーカーは一部あるいは全ての生産モデル

で特恵関税の恩典を受けられないリスクがある。

われわれが日本の主要自動車メーカーにヒアリングした結果では、USMCA 現地調達率に関して、ホンダ

が 75%以上、マツダが 68%、SUBARU が 72%となった。トヨタ自動車(以下、トヨタ)、日産自動車(以

下、日産)は開示がないが、AALA のデータから 70%前後の可能性が高いと考えられる。LVC に関しては、

ホンダと SUBARU が満たす可能性が高いが、マツダは満たさない公算が大きい。トヨタ、日産からの開示

はないが、現在の NAFTA 現地調達率から判断して、LVC を満たしている可能性は低い(図表 3 参照)。

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【図表 3 USMCA の適合状況】

出所:ナカニシ自動車産業リサーチ

この仮説に基づき、USMCA による追加関税影響額を試算し、2019 年 3 月期予想営業利益への感応度を

試算したのが図表 4 だ。トヨタの USMCA 追加関税の影響は深刻に捉えるべきだろう。同社はメキシコで

ピックアップを年間 15 万台生産し、さらに、2018 年後半から新工場で 10 万台の生産能力の拡大を計画し

ている。このメキシコでの生産が USMCA の恩典を得られない場合、米国への輸出には 25%もの高関税が

課される。従って、調達・生産計画に大きな影響を及ぼす可能性がある。

【図表 4 USMCA による影響試算】

注:2019 年 3 月期予想営業利益への影響率

出所:ナカニシ自動車産業リサーチ予想

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注目の米・EU の自動車関税の修正への議論

【図表 5 米国を取り巻く自動車関税見直し論議の整理】

出所:WTO、ナカニシ自動車産業リサーチ

優先課題である USMCA が決着を迎えれば、いよいよトランプ政権の通商政策の矛先は欧州と日本へ向

かう。今後の注目は、世界貿易機関(WTO)改革を前提に棚上げされている米・EU の自動車関税の修正へ

の議論だ。通商拡大法 232 条に基づいた鉄鋼・アルミニウムへの高関税に端を発した貿易摩擦は、米・EU

の双方で鉄鋼 25%、アルミニウム 10%の高関税を導入することが発表されたが、2018 年 8 月に WTO 改革

を通じて問題の解決を図るとして、一時的に問題は棚上げされている。

幾つかのケースが考えられるが、(1)数量規制、(2)二国間の自動車関税見直し、(3)WTO 改革を通じ

た最恵国待遇の見直しなどの可能性が考えられる。基本的に米・EU の自動車関税の修正はドイツ車への影

響が大きく、国内自動車産業への影響は軽微である。ホンダの「Civic HTB」6 万台、トヨタ「Corolla HTB」

2 万台が欧州で生産され米国へ輸出されている。これらは北米生産車種とは異なるため、関税引き上げの大

部分は単純に価格転嫁され、数量は減少しても各社の業績への影響は軽微とみられる。

米国市場と共に発展していく道を探るべき

2018 年 9 月の日米首脳会談の結果、日米物品貿易協定(TAG)の交渉入りで合意し、モノの輸出入にか

かる関税の引き下げや撤廃についての交渉が行われる。包括的な自由貿易協定(FTA)ではないとされるが、

この交渉の行方はいまだ見通しがはっきりとしない。この結果が出るまでは通商拡大法 232 条に基づく自動

車関税問題が棚上げされ、交渉に時間的な猶予を設けられたことは好結果であるというのが一般的な国内自

動車産業の受け止め方だ。

恐らく、2018 年 11 月の米中間選挙後に USMCA の議会承認が優先され、その後に日米貿易協定の交渉入

りの議会承認があるとすれば、タイミング的に同年 12 月ごろには正式な交渉が始まるのではないか。通商

拡大法 232 条に基づく米商務省の調査結果は 2019 年 2 月までには決定し、その結果に基づく大統領発令は

90 日である。最悪 25%にまで引き上げるという「脅し」は引き続き USTR がそのカードを握った中での日

米貿易交渉には不安もある。日本側は米国の対日貿易赤字削減を実現できるカードを上手に切りながら、少

しでも有利な決着への道筋を見いだしていかねばならない。

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自動車領域での最大の攻防では、(1)日本からの自動車輸出の数量規制、(2)米国の関税引き上げ、(3)

米国生産車の日本国内での販売拡大、(4)国内安全規制の緩和など、日本市場の非関税障壁を取り除くこと

なども要求されそうだ。国内自動車税制度の見直しもカードとして準備されそうで、日本政府は自動車税の

引き下げ検討を既に 2019 年度の税制改正のテーブルに乗せている。

以下に、日米通商交渉による影響の試算値を示した。一つは、50 万台の輸出数量規制が実施された場合

の 2019 年 3 月期予想営業利益への理論的な影響率を示した。輸出の数量規制は、2018 年 3 月期輸出実績で

比例配分した。もう一つは、米国の乗用車輸入関税の引き上げを 5%、10%、20%の合計三つのシナリオで

2019 年 3 月期予想営業利益への理論的な影響率を示した。あくまでも目安であり影響は軽微とはいえない

が、産業として乗り越えていくことは可能だ。

【図表 6 日米通商交渉での 50 万台の数量規制の営業利益影響試算】

注:2019 年 3 月期予想営業利益への影響率

出所:ナカニシ自動車産業リサーチ予想

【図表 7 日米通商交渉での自動車追加関税による営業利益影響試算】

注:2019 年 3 月期予想営業利益への影響率

出所:ナカニシ自動車産業リサーチ予想

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日本はこの交渉を契機に、危機をチャンスに切り替えていく考えに立つべきだ。対米輸出台数を調整せざ

るを得ないリスクもあるが、これは究極の交渉カードとなる。米国で生産される日本車の国際的な競争力に

結び付け、米国自動車産業の発展とともに、激変する世界の自動車競争を戦っていく力とすべきだ。

日本国内の自動車産業にとって米国は敵ではない。国内と並ぶ第 2 の母国市場である。米国自動車産業の

競争力の発展は、日本車メーカーを支える力となる。過去からこういった試練を乗り越えて、飛躍を遂げて

きたのが日本の自動車産業だ。新ルールが定まれば、そのルールに従って再起を図っていけるだろう。自動

運転技術、コネクテッド、電動化などの技術革新の現地化を進め、米国と共に発展していく道を探るべきで

はないだろうか。

記事提供:ナカニシ自動車産業リサーチ

代表兼アナリスト 中西 孝樹

(2018 年 10 月 11 日作成)

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Ⅱ.本格化する見込みの英国の安全保障面での外資規制

概要

英国政府は、国の安全保障に関わる可能性のある分野への外国からの投資について、政府がより強く介入

できる制度づくりを目指し、白書(ホワイトペーパー)を発行しました。近年、米国やオーストラリアなど

で顕著な外資規制の動きが、英国でも本格的に見られそうです。

はじめに

2018年 7月、英国政府は白書「国家安全保障と投資:法制度改正案のコンサルテーション(National security

and investment: a consultation on proposed legislative reforms)」(以下、本白書)を提出し、外資による英

国企業や資産への投資で、国の安全保障に関わる可能性がある場合に対する政府の規制案を具体化しました。

本白書に対する意見の公募は、2018 年 10 月 16 日に締め切られましたが、本稿では、本白書で検討されて

いる外資規制の内容について考察します。

Ⅰ.規制の特徴

本白書が論じる規制の目的は、英国の安全保障を脅かす可能性のある投資や資産取得などに対し、政府が

そのプロセスに介入することのできる制度をつくることです。

1.自主申告

新制度では、まず、当事者による政府への自主申告を定めています。投資や買収当事者が、取引成立前に

政府に自主申告します。それを受け、政府は当該取引を許可、条件付き許可、または拒否の判断を下します。

2.強制審査

一方、取引の成立前または成立後に、政府が強制的に当該取引の安全保障面からの妥当性に関して審査に

入る制度(Call-in 制度)も定めています。この場合、取引成立後であっても、政府の力でそれを無効にす

ることもあります。事後的な審査に 関しては、取引成立から 6 カ月という期間が提案されています。

政府がこの Call-in 制度を行使するためには、下記の二つの条件が満たされることを必要とします。

(1)発動項目充足(trigger event)

下記の発動項目が満たされ、取得者が資産や対象企業の操業や経営方針を決定する 立場を得ることを条

件とします。

・25%以上の株式や議決権の取得

・対象企業に対する重大な影響力(significant influence of control)の取得

・資産の 50%以上の取得

・当該資産に対する重大な影響力(significant influence of control)の取得

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(2)安全保障面のリスク認定

さらに、上記発動項目の充足が国の安全保障をリスクにさらす合理的な疑いがあると認められることが条

件となります。安全保障に対するリスクは、下記の 3 点から審査されます。

・ターゲットリスク:取得対象の企業や資産が、安全保障をリスクにさらす可能性があること

・発動項目リスク:発動項目により、取得者が安全保障を危険にさらす手段や能力(例えば、操業を中断

させたり混乱させたりすること、スパイ活動を行うこと、不適切な影響力を行使し得るポジションや能

力を得ること)を得ること

・取得者リスク:取得者が対象企業や資産を取得することにより、安全保障を損なわせる可能性があること

つまり、取得対象の企業や資産そのもののリスク、その用途のリスク、そして取得者のリスク(what, how

and who)が審査されることとなります。

Ⅱ.審査プロセス

政府は、自主申告を奨励するポジションです。自主申告では、審査期間として 15 営業日(最大 30 営業日)

が想定されています。政府の想定では、毎年 200 件の申告があり、そのうち 100 件が審査対象となり、うち

50 件には何らかの条件が付けられるとされています。一方、強制審査の場合は、30 営業日(または 75 営業

日か、場合によってはそれ以上)の審査期間が予想されます。

Ⅲ.対象企業や資産

本白書では、安全保障に影響をもたらす「コア分野」として四つの分野が挙げられています。

・一部のインフラ(原子力、防衛、通信、エネルギー、運輸)

・一部の先端技術

・政府に直接物やサービスを提供する重要なサプライヤーや救急隊

・軍事および軍用・民生用ともに利用可能な技術

また、この他にも化学品、食料品、健康関連、宇宙、水、金融といった分野も、比較的安全保障との関連

が深い分野として挙げられています。

Ⅳ.今後の見通し

本白書が提案する制度では、政府の審査は「Senior Minister」の指揮下に置かれるとされています。これ

は、首相や財務大臣といった閣僚クラスを指しており、制度導入に当たって政府の介入の本気度がうかがわ

れます。

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本白書へのコンサルテーション期間後は、具体的な法案に向けた作業が始まります。一連の動きに鑑みる

に、将来的には英国での、特に安全保障に関わると考えられる分野に対する投資については、事前の政府の

クリアランスなどの手続きを経ることが不可避になると予想されます。また、何が「安全保障にとりリスク

か」についてははっきりとした線引きが難しく、対象企業や分野は、政府により恣意(しい)的に変更され

る恐れもあります。このような「海外からの投資に関する政府承認」制度は、既に米国やオーストラリア、

ドイツなどに存在していますが、今後は英国での企業 買収や売却においても、これらの国と同様に、対象

企業の慎重な検討と買収手続きが求められることになるでしょう。

記事提供:メイヤー・ブラウン外国法事務弁護士事務所

外国法事務弁護士(英国ソリシター)シニアアソシエイト 安達 知彦

(2018 年 9 月 25 日作成)

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Ⅲ.EU 一般データ保護規則(GDPR):2018 年内にはルールが

簡易化される? ~日本の十分性認定の動向

概説

- 一般データ保護規則(GDPR)とは、欧州連合(EU)内の個人データの「取り扱い」と「EU 外への移転」

に関するルールを定めたもの。対象となる個人データの種類や取り扱い方法は多岐にわたるため「EU 内

にいる個人に関するデータに触れる企業」は、いったん、GDPR に関して何かしら対応が必要になると考

えた方が安全

- 「取り扱い」に関するルールは、大まかには「GDPR≒日本の個人情報保護法+補完的ルール」と見なせ

るので、対象となり得る企業は、まずは個人情報保護法と補完的ルールに相当する対応ができるか確認し、

その後、細かい調整・手続きを行うのが一つの手

- 「EU から日本への移転」については、早晩(2018 年秋~)、日本の個人情報保護法とその補完的ルール

に従う限り、特別な手続きが不要となる見込み(日本に対する「十分性認定」による)

1. はじめに

2018 年 5 月 25 日に、EU の一般データ保護規則(注 1)、通称 GDPR(General Data Protection Regulation)

の適用が開始されました。そのころは「制裁金 26 億円!? EU の新たな個人情報保護法!」などという目を引

くタイトルで雑誌やニュースに取り上げられていたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。

適用開始から約 5 カ月たち、その運用については厳格な対応を取っている企業から、よく分からず何とな

く放置してしまっている企業までさまざまのようです。そのような中、これから対応について検討を始める

という企業はぜひ知っておいた方がよい、「GDPR に関する手続きの一部が、日本では近いうちに簡易化さ

れる」という見込みが現実化してきました。

本記事では特に、GDPR の対応をまだ取れていなかった企業の方々に「ざっくり言うと GDPR とはこう

いうものだから、こんな企業は気を付けましょう」と「規則の中のこんな点が簡易化される見込みです」と

いう 2 点をお伝えできればと思います。

2. そもそも GDPR はどんなもの?

大まかに言うと「EU 内にいる人の個人データを、(1)EU 内で取り扱う場合と(2)EU 外へ持ち出す場

合に、守らなければならないこと」を定めた規則になります(図 1)(注 2)。

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【図 1:GDPR の対象となる行為】

出所:各種資料を基に筆者作成

<対象>

どのようなことが GDPR の対象になるかについては表 1 にまとめましたが、対象となるデータの種類も

その取り扱い方法もとても一般的かつ網羅的であることから、

・ EU 内に現地法人や営業所、提携先があり、顧客担当者の情報などの営業情報を共有している企業

・ 拠点は日本国内のみだが、EU 内の人や企業に対して、直接商品やサービスを提供している企業

など「EU 内に存在する人の個人データに触れることがあり得る企業」はいったん「GDPR に関して何かし

ら対応しなければならない可能性がある」と考えておいた方が安全と思われます(注 3)。

【表 1:GDPR 対象の詳細】

出所:各種資料を基に筆者作成

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<主なルール>

では、そのような企業が守らなければならないルールにはどのようなものがあるかと言うと、大まかには、

・各個人が自分のデータがどのように取り扱われているか把握でき、かつ、取り扱いの中止や変更を自由に

判断し簡単に実行できるような仕組みを整えること(表 2 の「基本原則」「個人の権利」)

・個人データ取り扱いにおいて技術的・組織的に十分な安全対策を講じて、有事の際にすぐに対応できる体

制を整えること(表 2 の「企業の義務」)

・EU の外に個人データを持ち出す場合、EU 内での取り扱いと同等レベル以上の保護の下で取り扱われる

ことを担保すること(表 2 の「EU 外への移転」)

と言えます。

主なルールについては、表 2 にまとめました。この各ルールに対して、ニュースや雑誌でよく取り上げら

れていた「2,000 万ユーロ(約 26 億円)または前年の全世界売上額の 4%のいずれか高額な方」もしくは「1,000

万ユーロ(約 13 億円)または前年の全世界売上額の 2%のいずれか高額な方」のいずれかを最高額とした

制裁金が科されます。

ただし、これはあくまで「最高額」に関する規定であり、実際には、違反による被害人数や損害の大きさ、

故意または過失、監督機関への協力の程度などによって、そもそも制裁金を科すか否か、科す場合は最高額

以下のどの程度の額にするかが決められます(注 6)。

2018 年 9 月末時点では、実際に制裁金を科された企業はまだないもようです(注 7)。また、データ漏え

いなどの事故を伴わない取り扱い方法の違反や体制の不備などに対しては、いきなり制裁金を科されるとい

うことはなく、まずは監督機関から改善を要請する通知があり、その後も企業が対応措置を取らない場合に

制裁金が科されるという流れになるとみられます(注 8)。

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【表 2:GDPR の主要なルール】

出所:各種資料を基に筆者作成

一方で、これらのルールは、日本の個人情報保護法と比較すると「おおむね同等である」と言うことがで

きます。この点については「EU から日本への個人データの移転」のルールと深く関連するため、次項にて

説明します。

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3. 手続きの一部が簡易化される見込みがある?

ルールのうち「EU から日本への個人データの移転」において、日本の個人情報保護法とその補完的ルー

ルを守っている限りにおいては、早晩に、GDPR の特別な手続きを踏む必要がなくなる見込みです。

<現在の「EU から日本への個人データの移転」に必要なこと>

現在、例えば、日本の企業が EU 内の顧客情報や現法の従業員情報を日本の本社へ持ってくる場合は、以

下のどちらかの手続きを踏む必要があります(注 9)。

・移転元と、移転するデータの種類、目的、使用者および「移転後も GDPR と同等の保護レベルで個人デ

ータを取り扱う」旨などを記した「標準契約条項(Standard Contractual Clauses:SCC)」を締結する(注 10)

・EU 内の法人を含む企業グループ内のルール「拘束的企業準則(Binding Corporate Rules:BCR)」を整

備・作成し、監督機関の承認を受ける

BCR はグループ内で包括的に許可を得られますが、一方で監督機関の承認には 15 カ月以上かかる大掛か

りな作業となるため、多くの日本企業は SCC による対応を行っているもようです(注 11)。一方で、SCC

による対応では監督機関の承認行為がないため、例えばデータ漏えいなどの事故が起こった際に、体制不備

があったと指摘されるリスクがゼロとは言えません。

<手続き簡易化の見込み>

EU 以外の国であっても、その国の法規制などにより EU と同等レベルで個人データが保護されると欧州

委員会が認めた場合(=十分性認定)、その国への個人データの移転は、上記の SCC や BCR などの手続き

なしで自由に行うことができます。

日本に関しては、2018 年 7 月に「2018 年の秋までに日 EU 間の相互の円滑な個人データ移転の枠組みが

運用可能となるために必要とされる関連国内手続きを完了させる」と発表があり(出典 6、注 12)、同年 9

月には日本の個人情報保護委員会より「[…]EU 域内から十分性認定により移転を受けた個人データの取り

扱いに関する補完的ルール」(出典 8)が発表されました。ここで補完された項目は、表 3 に示す 5 点のみ

です。

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【表 3:十分性認定を受けて移転された個人データに対する補完的ルール】

出所:各種資料を基に筆者作成

十分性認定が発行された後、EU から日本への個人データを移転する際に行わなければならないことは「個

人情報保護法とその補完的ルールに従うこと」のみとなります。

また、上記の補完的ルールをもって十分性認定が発行された際には、欧州委員会の認識が図 2 の通りであ

ることが確認されたことになりますので、EU 内での個人データの取り扱いに関しても、まず「個人情報保

護法とその補完的ルールと同等レベルの対応が可能か否か」の確認を行い、続いて差異を埋める調整・手続

きを行う、という流れで対応することも有効であると考えられることになります。

【図 2:GDPR と個人情報保護法、補完的ルールの関係(注 13)】

出所:各種資料を基に筆者作成

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なお、現時点で十分性認定が発行されている国は以下の 11 カ国・地域あり、EU からこれらの国・地域へ

の個人データの移転は特別な手続きなしに自由に行うことができます。

アルゼンチン

アンドラ

イスラエル

ウルグアイ

英領ガーンジー

英領ジャージー

英領マン島

カナダ

スイス

デンマーク自治領フェロー諸島

ニュージーランド

4. 最後に

これまでの説明をまとめると、以下の通りです。

・「EU 内に存在する人の個人データに触れることがあり得る日本の企業」については、何らかの GDPR 対

応が必要になると考えた方が安全

・EU の個人データの移転を日本へ行う場合、もうしばらくの間は SCC 締結による対応が有効であるが、

2018 年内には十分性認定が発行されるものとみられ、その後は、日本の個人情報保護法とその補完的ル

ールを守れば、特別な手続きは不要となる

・EU 内で個人データを取り扱う場合は、そのまま GDPR を順守する必要があるが、その内容は、個人情報

保護法と補完的ルールで大部分が同レベルにカバーされると考えられる

一方で、今後、日本の十分性認定が、2018 年 9 月に発行された補完的ルールだけをもって発行されるの

かについては注視する必要があります。さらに、GDPR の制度自体についても、根本となる「地理的適用範

囲(第 3 条)」などについて具体例や詳細を補完するガイドラインがまだ発行されていないため、今後これ

らが発行された際には、これまでの認識・対応に間違いがないか確認するためチェックする必要があります

(注 14)。

最後になりましたが、経営調査研究会主催のセミナーで GDPR について分かりやすくご解説くださり、

追加のご質問にも丁寧にご対応くださいました生田総合法律事務所の生田圭弁護士に感謝の意を表します。

**********************************************************

注記事項

(注 1) 正式名称は「個人データの取扱いと関連する自然人の保護に関する、及び、そのデータの自由な移転に関する、並

びに、指令 95/46/EC を廃止する欧州会議及び理事会の 2016 年 4 月 27 日の規則(EU) 2016/679」(REGULATION (EU) 2016

/679 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 27 April 2016 on the protection of natural persons

with regard to the processing of personal data and on the free movement of such data, and repealing Directive 95/46/EC

(General Data Protection Regulation))。全文は個人情報保護委員会のウェブサイトにて、日本語仮訳付きで見ることができ

る(出典 1)。本記事における条文の概要などの記述は、平易な表現にするため一部正確性が落ちる部分があるため、完全な

理解のためには GDPR の参照元条文を参照いただきたい

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(注 2) 本記事内では「EU 内」と記しているが、正確には「EEA(欧州経済領域。28 の EU 加盟国+アイスランド+リヒテ

ンシュタイン+ノルウェー)内」である

(注 3) GDPR 第 3 条第 1 項「[…]EU 域内の管理者又は処理者の拠点の活動の過程における個人データの取扱いに適用さ

れる」および同第 2 項「取扱活動が以下と関連する場合、本規則は、EU 域内に拠点のない管理者又は処理者による EU 域内

のデータ主体の個人データの取扱いに適用される:(a)[…]EU 域内のデータ主体に対する物品又はサービスの提供[…]」

より。一方で、この第 3 条に対してはガイドラインが発行されていないため、例えば第 3 条第 2 項の「取扱活動が以下と関連

する場合」の「関連」がどの程度の範囲までカバーされるかなど不明確な点が残り、ガイドライン発行後に要確認となる

(注 4) 条文内では、GDPR 第 4 条(7)「管理者」(個人データの取り扱いの目的および方法を決定する者)と同(8)「処

理者」(管理者の代わりに個人データを取り扱う者)が定められ、その両者が対象となっている。そのため、例えば名刺デー

タ管理のアプリを運営する企業なども「処理者」として GDPR の対象になり得る

(注 5) 企業以外にも、個人データを扱う個人や公的機関なども含まれるが、本記事においては、企業を対象として話を進

める(「管理者」「処理者」の言い換えとして「個人データを取り扱う企業」を用いる。同様に、条文では個人データの主を

「データ主体」としているが、本記事では「個人」と言い換えている)

(注 6) GDPR 第 83 条「制裁金を科すための一般的要件」より

(注 7) EU の主な国の監督機関のウェブサイトに、GDPR に基づいて制裁金を科した事例が掲載されていないことから。例

えば、英国の個人情報保護監督機関である情報コミッショナーオフィス(ICO)のウェブサイトに 2018 年 9 月末時点で掲載

されている強制執行の事例は、2018 年 5 月 24 日以前に起こったもののみ(GDPR 前身の旧法に基づく強制執行)(出典 2)。

大々的に報道されている Facebook に関しても 2018 年 9 月末時点では調査段階で強制執行には至っていない

(注 8) 英国の ICO より、カナダのデータ処理企業である AggregateIQ Data Services に対して、不適切なデータ取り扱い(個

人データの政治的利用)に関する Enforcement Notice が 2018 年 7 月 6 日に発行された(出典 3)。これより、GDPR 発効以

前と同様に、データ漏えいなどの事故を伴わない違反に対しては最初から制裁金が科されるということはなく、まず改善を指

示する通知が発行され、それでも対応措置が取られない場合に制裁金が科されるという流れで運用されることが推察される

(注 9) 例外的な状況として、公共の利益のために必要であったり、裁判などの法的主張時に必要であったりする場合には、

手続きなしでの個人データの移転が認められている(GDPR 第 49 条)

(注 10) GDPR 前身の旧法ベースのものであるが、SCC のひな型が“amending Decision 2001/497/EC as regards the

introduction of an alternative set of standard contractual clauses for the transfer of personal data to third countries”として欧

州委員会のウェブサイトにて公開されている(出典 4)

(注 11) 日本企業では、楽天グループが初めて BCR の承認を受けた(出典 5)

(注 12) さらなる進展として、2018 年 9 月 26 日には欧州データ保護会議(European Data Protection Board:EDPB)にて、

日本の十分性認定の素案が取り上げられ、Review が開始された(出典 7)

(注 13) 個人情報保護法では規定されているが GDPR では規定されていないものも存在する。このため、GDPR の方がカバ

ー範囲が広いわけではないが、GDPR のカバー範囲を母集団と考えたときに、個人情報保護法と補完的ルールで大部分がカバ

ーされることを示した

(注 14) これまでに発行されているガイドラインは、日本語仮訳付きで個人情報保護委員会より公開されている(出典 9)。

「地理的適用範囲(第 3 条)」のガイドラインは、2018 年 9 月 26 日の EDPB の会議でドラフトが取り上げられ Review が開

始したので 4~5 カ月後に発行される見込みである(出典 7)

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出典

記事提供:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部国際業務支援ビジネスユニット

国際ビジネスコンサルティング部 安念 隆久

(2018 年 10 月 5 日作成)

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~本レポートに関するアンケートも実施中~

(回答時間:10 秒。回答期限:2018年 11月 21日)

https://s.bk.mufg.jp/cgi-bin/5/5.pl?uri=uBk9eN

(編集・発行) 三菱 UFJ 銀行 国際業務部

(照会先)松山 昭浩 松山 佳奈枝

(e-mail): [email protected]

本レポートのバックナンバーは、以下の URL からご覧いただけます。

http://www.bk.mufg.jp/houjin/kokusai_gaitame/report/index.html