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1 MIEスタートアップ情報提供事業 モデル事例 報告書 平成29年3月 三重県 【実施機関 : 株式会社 タスクール Plus 】

MIEスタートアップ情報提供事業 モデル 事例 報告書Ⅲ.スタートアップモデル事例 1. スタートアップの流れ 〈スタートアップの動機〉

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Page 1: MIEスタートアップ情報提供事業 モデル 事例 報告書Ⅲ.スタートアップモデル事例 1. スタートアップの流れ 〈スタートアップの動機〉

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MIEスタートアップ情報提供事業

モデル事例 報告書

平成29年3月

三重県

【実施機関 : 株式会社 タスクール Plus 】

Page 2: MIEスタートアップ情報提供事業 モデル 事例 報告書Ⅲ.スタートアップモデル事例 1. スタートアップの流れ 〈スタートアップの動機〉

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内容

Ⅰ.スタートアップを取り巻く現状 .................................................................................. 3

Ⅱ.三重県のビジネス環境................................................................................................. 3

Ⅲ.スタートアップモデル事例 ......................................................................................... 6

1. スタートアップの流れ ............................................................................................. 6

2. 商品開発 ................................................................................................................... 8

3. チャネル開拓 .......................................................................................................... 13

4. 展示会出展 ............................................................................................................. 14

5. 事業計画ブラッシュアップ ................................................................................... 16

6. 資金調達(融資) .................................................................................................. 19

7. 資金調達(補助金) .............................................................................................. 24

8. プロモーション ...................................................................................................... 26

9. グローバル展開 ...................................................................................................... 29

9. 組織化(組織/人事) .................................................................................................. 31

10.組織化(会社組織) ................................................................................................... 34

11.法務 ........................................................................................................................ 37

Ⅳ.まとめ ........................................................................................................................... 39

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Ⅰ.スタートアップを取り巻く現状

「トランプ大統領の誕生」や「イギリスの EU離脱」など時代は変化のスピー

ドを上げ、不確実性を増しています。これからのスタートアップは変化に柔軟

に対応しながら、成長戦略を着実に進めるかじ取りを求められています。

スタートアップが起業後 1 年以内に倒産する確率は 30%程度、3 年以内に

は約半数の事業所が廃業に追い込まれているというデータも出ています。

(出所:中小企業白書 2006 年版より)

この厳しいビジネス環境の中でスタートアップが生き残り、良い成果を残

すには、明確な事業コンセプトと目標設定が必要不可欠となります。地図が

ないまま手探りで歩く場合と、明確なゴールを設定し、最短ルートを模索し

ながら進む場合で、どちらが目標にたどり着く可能性が高いかは、 言うま

でもないでしょう。モデル事例を参考にスタートアップを成功させましょ

う!

Ⅱ.三重県のビジネス環境

三重県は、本州のほぼ中央に位置し、海、山の豊富な自然に恵まれ、農業・

漁業、さらに北部は中京工業地帯に属していることから工業も盛んとなってい

ます。また伊勢神宮や伊勢志摩国立公園などの日本有数の観光地も擁しており、

観光業も成立させています。

三重県の人口は 2016年 10月現在 1,806千人で、全国の都道府県中 22番目(全

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国の人口に占める割合は約1.4%)、同じく面積は 25 番目、同じく人口密度

は 23番目となっています。

経済力については、名古屋圏の一部である北勢地域を抱える事から、人口の

割に GDP の水準は高く、1 人当たりの GDP の県民経済計算は常に上位に位置し

ています。

農業における、有数の産物は、なばな、モロヘイヤ、きくらげ、茶等があり

ます。なばなの順位は全国 1 位で出荷量は約 768 トンで全体の約 29.2%、モロ

ヘイヤの順位は 3 位で出荷量は約 79 トンで全体の約 5%、きくらげの順位は 7

位。出荷量は約 10トンで全体の約 2.9%となっています。中でも茶は、静岡県、

鹿児島県に次ぐ全国第3位の出荷量、出荷量シェアは 9.1%を占めるなど、農業

でも一定の産出量を誇っています。

林業も県南部で盛んであり、特にヒノキ丸太の生産量は全国2位を誇ってい

ます。

漁業生産は、我が国全体の漁業生産と同様に、昭和59年頃をピークに減少

傾向となってはいるものの、直近の統計でも、漁獲生産量で全国第4位、生産

額で全国第8位を誇る全国有数の水産県となっています。

工業については、三重県の北中部は前述のとおり、中京工業地帯であり、主

要企業も多く存在しています。

四日市市では富士電機において自動販売機の生産量が全国で最も多いなど全

国に存在感を示し、コンビナートには化学関連の大企業の工場が多く立地し、

日本の石油化学工業の一翼を担っています。

亀山市には、ハイテク企業誘致策により建設されたシャープ亀山工場があり、

一方古くからカメヤマローソク(本社は大阪市に移転)が立地し、ローソクの

生産量は全国一を誇っています。

伊勢市では美和ロックの工場が立地し、鍵の生産量が全国一となっています。

観光業においては、伊勢神宮や伊賀上野、二見浦、世界遺産の熊野古道などの

観光地やナガシマスパーランド、なばなの里、志摩スペイン村、鈴鹿サーキッ

トなどのテーマパークがあり、特に伊勢・志摩地区は観光地としても全国に名

を響かせています。

三重県は上記のとおり、全ての業態において相応の需要が見込まれ、スター

トアップにとって大きな可能性を提供しています。

この状況下、県下で開廃業した件数は以下の通りとなっています。

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これによれば、統計上のデータ直近 2年で新設-廃業は、わずかながら廃業事

務所数が上回っており、総数としては微減となっています。その中でも個人の

廃業が多く、法人においては新設事務所が 2,000 件程度純増加を見ているのが

わかります。

政府のまとめた成長戦略では、日本の開業率を欧米並みの 10%に引き上げる

ことが目標とされています。三重県でもスタートアップを支援する施策が求め

られています。

(出所:「平成 25年度 年次経済財政報告」より)

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Ⅲ.スタートアップモデル事例

1. スタートアップの流れ

〈スタートアップの動機〉

90%以上のスタートアップが起業後

1年~5年の間に大変だった時期があっ

たとアンケートに回答しています。(国

民生活金融公庫創業研究所調べ)

スタートアップが事業を開始し、困

難を乗り越えていくには、確固たる

創業動機と情熱が必要となります。

困難を共に乗り越えるためには、

ご家族の同意・応援を得られてい

ることも大切です。

スタートアップする事業は、顧客ニーズ・時代の流れにあった事業、である

ことはもちろん、ご自分のご経験や知識が活かせるものとするべきです。

技術やノウハウの獲得には時間が必要となります。また、スタートアップ

直後に、お客様から注文をいただけるかどうかは、前職での人脈、信用に頼る

ことも多いものです。未経験の分野でのスタートアップは難しいので、フラン

チャイズの活用など経験不足を補完する方策が必要となります。

厳しい競争環境の中、生き残るには同業他社との差別化が求められます。

スタートアップ当初は、売上は予想より少なく、費用は思ったよりかさむこと

が多いものと知り、先行する同業他社のデータを入手するなど、裏付けのある

数字に基づいて創業計画を策定してみましょう。

事業を早めに軌道に乗せるためには、借入金は少なければ少ないに越したこ

とはありません。借入金の返済負担により、事業の採算性が損なわれることの

ないよう、まず着実に自己資金を蓄えることから始めましょう。

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〈行動計画〉

スタートアップを成功させるためには、スケジュールを決め物事

を進めていくことが必要です。目標を達成する確率を高めるために、

期日を決めて、逆算して行動計画を決めていきましょう。

スタートアップまでのスケジュールとともに、現在お勤めの方で

あれば退職の時期も同時に決定し、早めに伝えることで円満退社と

なるよう心がけます。

〈事業プラン・商品コンセプトの決定〉

スタートアップを志した動機・情熱を、実現可能な計画として、

事業計画、商品コンセプト、店舗型であれば立地、予算など計数

計画まで落とし込んでいきます。

〈資金調達〉

蓄えてきた自己資金でのスタートアップが難しければ、借入等

で調達を検討します。ここまでに立ててきた創業計画を活用し、

資金調達をすすめていきます。そのため、創業計画は第三者から

見て妥当性が高いと判断されるものでなくてはなりません。

〈プロモーション〉

良いものを創り出しても、それが世の中に伝えられなければ、

売上にはつながりません。広告など、プロモーションはスタート

アップ時にとても重要になります。

〈各種申請・届出〉

開業届や申告等の手続きを行います。

人材を確保した場合には、雇用保険等の手続きも必要です。

〈開業〉

スケジュールに則り準備を進めてきました。さらスタートアッ

プを実行に移す時です。さあ夢に向けての出発です。

そのためのモデルとなる事例を見ていきましょう。

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2. 商品開発

高度経済成長期には、メーカーも企業側の意向(プロダクトアウト)で多く

の商品を効率よく生産して市場に供給することで目的は達成できました。しか

し低成長時代に突入し、市場が飽和している今の時代、消費者の心を動かし、

心を満たす商品で利益を上げることが必要になってきます。それを実現する手

段が顧客志向の商品開発です。(顧客第一、消費者志向=マーケットイン)

「顧客志向の商品開発」には自社の意向よりも顧客の声の収集を、直感より

も顧客からのフィードバックを踏まえての継続的な改善を進めていくことが必

要となります。特にグローバル市場においては、マーケットごとの経済

動向や地域特性などにより、消費者のニーズもさらに多様化します。

買い手が売り手と違うという環境において、いかに顧客の立場で考え

るかが、新たな製品を生み出すためには重要になります。

顧客からの声、ご意見やご要望には、自社の商品コンセプトを考える上で重

要な情報が隠されています。消費者の反応を分析し購買者の実態を把握します。

<市場分析>

市場分析、顧客の声などから得られた情報を活用し、さまざまな指標を用い

たポジショニングマップを作成します。例えば「機能と価格」「ユーザーの年

齢と商品満足度」などを指標にして、自社商品と競合品とのポジションを明確

にしてみましょう。

商品コンセプトは商品開発における最も重要な部分です。この商品はどのよ

うなものか、誰が使うのか、どのようなシーンで使用されるのか、メリットは

何かなどを言葉や絵で表現したものです。

<商品コンセプト>

「誰に」「何を」「どのように」という 3つの要素で考えていきます。

(1)「誰に(ターゲット)」に販売するのか

(2)「何を」どのようなニーズを満たし、どのような便益を提供するのか

(3)「どのように」ニーズや便益をどのような方法で満たすのか

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<試作開発>

創業時の商品開発において、外注の活用なども考慮しながら開発を進めまし

ょう。外注のメリットとしては、投資のリスクの回避、外部の技術の活用、正

確な需要予測がたてられるまでの需要変動への対応力強化があげられます。

試作品を顧客に提供して反応を計測し、その結果を基に試作品を改良する。こ

こまでの一連のプロセスを短期間で繰り返し、試作品を改良して顧客に受け入

れられるもの=「新商品」にしていくことが重要です。

〈Ⅿ社の概要〉

Ⅿ社は三重県中部で製茶業を行っています。事業領域である製茶業は約 2000

年の歴史を有しています。その長い伝統と同時に、今日でも日々、健康に良い

様々な効果が報告されており、全世界に注目されています。

日本に中国への留学僧や商人によって 9世紀に伝えられたお茶は、わが

国で独自の革新を遂げ「日常生活に根付いた喫茶文化」を一般化させました。

しかし近年、ライフスタイルの変化を受け、日本茶離れは深刻となっており、

国内消費など需要の減少から価格が低迷、減産を招く悪循環に歯止めがかから

ず、2015年の全国生産量は推計で5%減の7万9500トンと、1965年以来50年ぶり

に8万トンを割り込んでいます。

下のグラフの通り、日本茶業界は茶類の消費量、緑茶一人当たりの消費量と

も減少傾向に歯止めがかからない危機的状況を迎えています。

(出典:全国茶生産団体連合会HPより)

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消費が落ち込む日本茶の今後の発展のためには、「伝統」の継承はもちろん、

これまでのお茶の歴史がそうであったように、たゆまぬ「革新」が必要となり

ます。

Ⅿ社は「顧客の信用を第一」とするとともに、「オンリーワンへのこだわり」、

「長期的思考」、「地域特性を競争優位へと結びつける発想」で新たな「革新」

を生み出す必要があると考え、新規創業の決意で新規事業の立ち上げを検討し

はじめました。

〈市場分析〉

減少を続ける日本茶の国内市場から目を転じて、海外に目を向けてみると、

日本食ブームの影響もあり市場は拡大、日本茶の輸出額は増加の一途をたどっ

ています。ここ 10年の傾向は顕著で、国内消費は減少傾向にあるのに対し、

輸出は、輸出量・金額・輸出対象国とも年々増加しています。輸出量全体の

50%弱を占めるアメリカを中心に、2004年(平成 16年)の 39カ国から、2013

年(平成 25年)には 49カ国

になっています。

日本政府も日本茶を重点

品目に加えており、2005 年

には 21.1 億円だった日本

茶の輸出金額は、2014 年に

はその 3 倍以上の 78 億円

を達成。2020 年には 150 億

円を見込んでいます。6 年

でおよそ倍増を目指すと

いうのです。 (出所:「茶の輸出戦略」農林水産省)

この機会をとらえ、今後の発展に

つなげるため、Ⅿ社では、中小企業

診断士など外部の専門家の協力も受

けながら、新規事業計画を策定にと

りかかりました。ターゲットは海外

の日本文化に興味のある富裕層、

Ⅿ社の強みである良質の「伊勢茶」

を原料に、現地に合った新商品を開

発することにしました。

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Ⅿ社はビジネスにもっとも重要な顧客ニーズの収集のため、シンガポールの

展示会「オイシイジャパン」「カフェアジア」に出展を行いました。商品自体

には大変高評価をいただきました。しかし日本製の商品は、中国製などの商品

と比べ高価格になり、初回購入への障壁になっていることも、現地の方の声で

わかりました。大手日本茶メーカーも海外進出に熱心で、現地の嗜好に合わせ

たローカライズ、大手日本茶メーカーとの差別化の必要性を強く感じる結果と

なりました。

(写真:展示会oisiijapan)

JETROが実施したアンケートによると、海外には日本茶に興味がある方が多

く、日本茶が好きな理由の第 1位は「健康に良い」という声で全体の 60%以上

を占めています。世界的な日本食ブームと相まって、日本茶には健康的なイメ

ージが強く、ニーズは大きいものがあります。とはいえ、廉価な海外のお茶や

大手日本茶メーカーとの競合は避ける必要があるため、現地の嗜好に合わせた

ローカライズ、大手日本茶メーカーとの差別化を意識して、新商品開発をすす

めました。

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新開発商品はアセアンの国で人気

が高い甘さが加わった飲料を、と考え

ました。

アセアンの国々ではお茶や珈琲に

は砂糖を加えるのがスタンダードで

す。例えば、珈琲の粉をドリップする

個包装タイプでも、砂糖が入ったタイ

プが多く、時にはミルクも入っていま

す。「伊勢茶」を現地の味にローカラ

イズし、拡大するアジア地域の日本茶

需要を捉える商品として提案していきます。

大手の日本茶メーカーは既に日本茶の輸出やギフト用の日本茶を販売してい

ます。この様な状況の中、後発中小メーカーとしては、試飲会を中心とした味

だけのアピールで海外販路開拓を行っても、差別化が難しいと考えたからです。

〈商品コンセプト〉

現地では純日本的な「抹茶」に人気が高いです。

スターバックスの「抹茶ティーラテ」が火付け役となり、

アメリカや欧州市場でも抹茶は大人気になっています。

海外の有名なファッションモデルやセレブがお気に入

りの飲み物として紹介したことでブームが加速し、抹茶

味の商品が世界中に浸透しています。今では英語で抹茶

=Matchaで通じるレベルとなっています。アメリカやオ

ーストラリアでは「Matcha Bar」なるものまで誕生して

いるそうです。

同時に、健康志向の方に「豆乳=SOY」も認知度が

高いこともわかりました。しかし、それらを一つに楽し

める「抹茶SOY」は商品化されていません。

そこで今回、世界的ブームの「抹茶」と、甘いお茶へ

の現地ニーズを満たすため、健康志向のイメージの強い

「豆乳=SOY」をブレンドした新商品の開発を目指しました。

シンガポールを中心としたアセアンエリアでも伊勢志摩サミットは話題にな

っています。伊勢と言う地名も認知度が高くなっており、お茶のブランドとし

てアピールする良いきっかけです。三重県を意識した商品として、海外の皆さ

んに、「伊勢茶」をよりアピールしていきます。

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〈試作開発〉

「伊勢茶」の力を最大限に活かしつつ、

競合を避けるために、ローカライズを進め

ニッチな市場を狙った新商品として、

「抹茶SOY」の試作開発を行いました。

過去、2年に渡り 4回、シンガポールの展

示会「オイシイジャパン」「カフェアジア」

に出展をおこない、大変高評価をいただい

てきました。現状は売上に大きなインパク

トを与えるまでにいたっていませんが一般

向けの即売会でも、良い評価を得ています。

3.チャネル開拓

チャネルとは商品が消費者とつながる取引経路のことです。消費者とつなが

るチャネルとしては、新聞・雑誌・TV等の広告を通じたチャネルや、現場で

実際に商品の販売を行う小売店などがあります。

チャネルの開拓はスタートアップにとって極めて重要になります。ターゲッ

ト層の顧客が、商品を購入したいと思った時にすぐ買える状況を作り上げるこ

とがチャネル戦略の理想の形になります。

<直接取引>

直接取引は、自社が顧客に直接商品を販売する形態です。近年はインターネ

ットの普及により、メーカーが直接消費者に販売するなどネットショッピング

の市場が拡大しています。ネットショッピングは急激に拡大しており、多くの

競合の中に埋没してしまう危険性も高くなっています。

<間接取引>

自社と顧客の間に中間業者を経由させます。スタートアップは、自社にはな

い物流機能・品揃え機能、専門性、集客機能、情報提供機能など大きなメリッ

トをうけることができます。

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〈直接取引〉

Ⅿ社は、新商品「抹茶SOY」を海外消費者に直接販売していくため、越境

ECサイトの制作も検討しています。越境ECサイトの構築、海外へのWEB

マーケティングには多額のコストが必要となるため、M社は資金調達の方法を

模索しています。

〈間接取引〉

Ⅿ社は、展示会が縁で出会ったコンサルタント会社と契約し、海外への販路

開拓に取り組みました。コンサルタント会社はシンガポールにも支店をもち、

海外にも強いコネクションを保有してい

ました。チャネル開拓にも協力していた

だいたおかげで、現在は 150g10 杯分入

りパッケージ製品を現地 5 店舗でテスト

販売しています。(日系スーパー(2店舗)、

中華まんじゅう店(2店舗)、喫茶店)

海外ビジネスに取り組みはじめたばか

りのⅯ社単独では、海外への販路開拓は

難しかったでしょう。今回は外部協力者

の力を借りることでスムーズに進めるこ

とができました。

このように事業をうまく立ち上げ、拡

大していくために、協力していただける

事業パートナーを見つけるのもスタート

アップの課題の一つとなります。

4.展示会出展

展示会はTVや新聞とは違い、商品を実際に「見て、触れる」ことが特徴で

す。業界に興味のある方(見込み客)が来場するため、販路開拓、販売促進や

マーケティング調査など情報収集が効率的にできるなど多くのメリットがあり

ます。未来のお客様、ともに成長するパートナー、商品の改善に向けての重要

な情報を探しに行きましょう。

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<顧客ニーズ>

展示会への出展はスタートアップにとってもっとも重要なマーケティング情

報となる顧客ニーズの収集のために効果的です。展示会の一番のメリットは、

一度に多くの見込み顧客と会えること。実際にお客様が何を求めているのか生

で会話できることです。展示会には特定のテーマに興味のある方だけが来場す

るため、マーケティングへの高い効果が見込めます。

<協力会社の掘り起こし>

自社の業界、特定のテーマに興味のある方だけが来場するため、パートナー

を発掘する場としても有効です。スタートアップは経営資源が小さいため、協

力してくれる外部の企業は非常に重要になります。

<メディア>

展示会には業界内の元気な企業が集まるのでメディアも来訪するなど、宣伝

効果も大きいです。メディアに取り上げられれば認知度も大きく向上します。

〈従業員のモチベーションアップ〉

お客様と直接対話し、自社の商品が求められていると感じられることで、自社

従業員のモチベーションアップ、成長につながります。

このように効果が大きい展示会ですが、その分コストも必要となります。

一般的に出展費用が1ブースにつきおよそ20万円から30万円程度。ブースの装

飾費や搬入出費用やアルバイトの費用、自社従業員の交通費や宿泊代等でスタ

ートアップには大きな負担となります。

出展目的を明確にして、出展

のメリットを最大限に引き出す

こと、事前の準備を万全に行う

ことに留意しましょう。

(写真:三重県リーディング産業展)

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5.事業計画ブラッシュアップ

事業計画書は経営のシナリオともいえるものですが、ビジネス環境は刻一刻

と変化しているため、シナリオ通りには進まないことも多いでしょう。その環

境への対応も経営者の資質の一つとなります。事業計画書をチェックリストと

して活用し、事業の進捗管理、そして予想通りに運ばなかった時には、軌道修

正を進めていきます。予想通りに運ばない状況でも、失敗は継続不能のことで

あり、継続していく中で成功のチャンスが訪れると考え、改善を進めていきま

す。

〈PDCA〉

新たな事業を小さく始めて成功しそうかどうかを早期に見極め、芽がないと

判断したら、すぐに製品やサービスを改良したり、事業の内容を一新したりし

て、軌道修正を繰り返すリーンスタートアップの手法が参考になります。

事業計画の進捗を管理し、成果を検証することで傷が浅いうちに進路を変更

し、重傷を負って事業そのものが継続できなくなる事態に陥るのを防ぎます。

チャレンジを続け、成功へと近づいていくのです。まず仮説を立て、新規事業

のアイデアを構想する。その後最低限のコストで開発した製品をテストマーケ

ティングし、その結果をもとに製品を改良していく。このような手順で仮説の

構築と検証を繰り返すため、早期に有望か否かを見定め、軌道を修正できるの

です。

計画があるため、成功か失敗

かがわかり、軌道修正や改善も

可能となります。ビジネスに完

成はありません。が、PDCA

を回し、常に完成に近づける意

識こそが事業を成功に導きます。

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〈PDCA〉

Ⅿ社は、現地消費者の声の獲得を目指し、海外展示会にも継続的に出展して

います。展示会や、海外取扱店舗でのテスト販売時には、味についても好評を

得ています。テストマーケティングでニーズを取り込み、商品の改善を続けて

います。

(写真:展示会では現地の消費者へ、日本茶の歴史、新商品の魅力を伝えました。)

〈顧客の声〉

展示会では日本製の商品は、通常、中国製と比べ高価格となってしまい、初

回購入への障壁になっていることがわかりました。顧客の声を集めてみると個

包装、小パッケージにすることが求められています。スピード感をもって商品

に反映させていきます。買いやすくすることで「伊勢茶」を広く知ってもらい、

リピート購買を 促すためです。

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〈事業計画のブラッシュアップ〉

ターゲット市場:シンガポール

シンガポールへの日本茶輸出の現状

テストマーケティングの結果、

ターゲット市場をシンガポールに

絞ることとしました。政府も日本

茶を重点品目に加えており、その

中でも市場として有望視されてい

るのは、アメリカ、シンガポール

です。新規事業では展示会への出

展、販売実績のあるシンガポール

をターゲットとします。

ヘルシーで美味しく、見た目も美しい和食の人気は非常に高いです。海

外にある日本食レストランは推計でも5万5000店舗以上になります。その

ため、和食に不可欠な日本茶が海外市場に喰い込める可能性は高いと考

えます。日本茶産業の発展のた

めにも、世界の食市場の成長を

取り込む必要があるのです。

今後は日本食レストランでの取

り扱いも増やしていきます。

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シンガポールでは日本食レストランの店舗数の増加にあわせて、日本茶の消費

も増えています。日本茶の輸出量1位はアメリカとなっていますが、大手メーカ

ーとの競合を避けるため、シンガポールに注力していきます。

今後は現地での取扱店舗の増加、越境ECサイトを活用した直接販売により

テストマーケティングをすすめ、リピートの拡大とさらなる現地消費者の声の

獲得、利益率の向上を目指します。日本茶需要が急拡大しているという機会を

取り込み、その後は英語圏の他市場に横展開をすすめたいと考えています。

6.資金調達(融資)

スタートアップが一番困るのがお金の面、資金繰りでしょう。現金がなけれ

ば、商品の仕入れもできなくなるなど事業は立ちいかなくなります。利益は出

ていても現金がないことで倒産する、「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあ

るでしょうか。顧客の支払い条件や、仕入れ先への支払期限に目を配り、 現

金を確保してください。

ビジネスにおいて現金は酸素にも血液にもたとえられる絶対的なものです。

キャッシュフローが足らなければ、事業の成長もままなりません。自己資本で

足りない場合は資金調達が必要となります。

資金調達など外部の協力や支援が必要となるとき、自分の事業について、

口頭で伝えるだけでは必要な情報が十分に相手に伝わらない場合がありま

す。ゆえにビジネスプランの新規性や市場性、実現性、将来性、競合優位性、

安全性、収益性などを示すために、創業計画を作成します。

創業計画を作成し、資金調達を外部に依頼するときに一番重要なことは、

①何に使うのか、

②その資金をどのように調達するのか、

③借入がある場合、運営していく事業の利益で返済が出来るのか、

という 3つの観点となります。

①については、大きく運転資金と設備資金に分けられます。

運転資金は開業時には主に在庫資金、1ヶ月程度の立て替え費用となるでし

ょう。在庫資金については1ヶ月の売上の何倍が必要かを考えることが必要で、

立て替え費用については、従業員給与、家賃などの支払いから入金までの間の

立て替えた資金がいくらかかるか、毎月の予想コストを睨みながら算出します。

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設備資金は、開業時にはいきなり不動産取得から考えない方が無難でしょう。

店舗開設にしても自分の事業が計画通りいかないこともあるわけですので、そ

の場合の退出の可能性を考え、まずは賃貸から始めるのがよいと考えられます。

その場合の内装資金、什器備品など、可能な限り、あい見積もりをとり、一番

条件のよい業者を選出することも重要なことです。

②については、①の総額を算出し、それの 2、3割は自己資金を拠出すべきで、

借入金は多くとも総額の8割程度に抑えるのがよいと考えられます。これは、

ひとつは事業を運営していくことにおいて、借入金返済負担が重くなるのを防

ぐこと、もうひとつはこの水準以下でないと現実的に借入をうけることが困難

な水準となるからです。借りたは良いものの、売上が見通しどおりの水準まで

いかず、借入返済のために売上確保に必死となり、結果的に顧客に無理強いを

してしまい、顧客離れを招いてしまっている例が少なからず見受けられます。

夢の実現のための起業が、借金返済のためとならぬよう、起業前にしっかりと

自己資金を貯蓄しておくことも重要なことだと考えられます。

③については、売上が見通し通りいく「通常シナリオ」と、やや下振れする

「リスクシナリオ」を用意しておくことが望まれます。リスクシナリオについ

ては、どこまで売上が下がったら借入金の返済ができなくなるかの「返済損益

分岐点売上高」を算出しておくことが重要です。いずれにせよ、通常シナリオ、

リスクシナリオとも売上見通しは当然ながら、コスト面の精緻な計上が必要で

す。

この創業計画ですが、いきなり完璧なものを作成するのは難しいため、中小

企業診断士などの専門家を活用してアドバイスをうけると良いでしょう。無料

専門家派遣の制度もありますので、行政・公的機関に相談してみましょう。

(参考:中小企業庁サイト「ミラサポ」(https://www.mirasapo.jp)

無料で専門家派遣をうけることが可能です。

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スタートアップが融資を受けることを考える場合、①日本政策金融公庫(国

民金融生活部門)、②地方銀行・信用金庫における保証協会付融資(創業等関連

資金保証)が一般的です。日本政策金融公庫は、100%政府出資の政策金融公庫

として一般の金融機関が行う金融を補完することを旨としており、創業支援に

積極的に取り組んでいます。

日本政策金融公庫の借入を申込む場合、上記の経営計画を下敷きとして所定

の創業計画書を作成します(創業計画書の記入例を次ページに記載)。

ただし上述の自己資金は、預金通帳などの確証を求められることが多いです

し、かつ、自己資金は資金使途総額の3割を求められることが多いです。

②の信用保証協会を利用した民間金融機関による融資も、創業に利用する場

面も多くなってきています。三重県では三重県信用保証協会があり、民間金融

機関を経由して保証を得て、融資を受けます。注意すべきは①と比較して金利

のほか保証料がかかることですが、創業等関連資金保証という制度を使えば、

金利は全期間 1.4%の固定金利と定められており

(2017年 3月現在)、また保証料については一部県からの補助が受けられ、かつ

市町村によっては県からの補助以外の部分の補助が全額受けられるところもあ

り、実質的に①よりも低く資金調達が可能となる場合もあるので専門家に相談

をしてみるとよいでしょう。

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(創業計画書の記入例)

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7.資金調達(補助金)

補助金とは、政府が直接的または間接的に公益上必要がある場合に、民間や下位の

政府に対して交付する金銭的な給付のことです。国には政策目標がありますが、目標

を達成するためには、その目的にあった事業を、事業者のみなさまに、広くあるいは、

しっかりと取り組んでもらうことがとても重要となります。補助金とは、そのような

政策目標に合致する事業にたいして実施のサポートのために給付するお金のことで

す。

補助金は借入とは違い、基本的に返済の必要がありません。帳簿には特別利益

の国庫補助金収入として計上されます。例えば 50 万の補助金・助成金と同額の

利益を稼ぐ為には利益率 5%として 1000 万の売上をあげることが必要です。

補助金は申請者全員が獲得できるものではなく、同時期の申請者と比べられ、

優れたビジネスプランから順に採択され交付されるものです。第三者に自社の強

みを伝えられない資料では、採択が難しいため、できるかぎり写真、図表などを

活用し、第三者に伝わる書類づくりを目指しましょう。補助金ごとに事業者の対

象や趣旨、加点のポイントが異なりますので専門家の助言を受けることが採択へ

の近道となります。

ただ注意してほしいのは、返済不要とはいえ、自己資金分は必要となることで

す。現金は実際に流出するため、補助金があるからと安易に補助金を利用し自社

の成長に必要のない事業を行うのは禁物です。

(参考写真:補助金申請書類)

グラフの活用で

直感的にわかりやすい

文書とすること。 写真を利用することで

事業のイメージを

伝わりやすくする。

感情に訴えること。

自社だけでなく、

社会的にも有益な事業

であると伝えること。

補助金申請書作成

のポイント

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Ⅿ社は、積極的に新規事業に取り組んできたものの、次の一手、海外へ販売す

るための越境ECサイトの制作、WEBプロモーションには大きなコストがかか

るため、自己資金で行うことが難しくなってきていました。

そこで、「みえ地域コミュニティ応援ファンド

助成金(現在は募集しておりません)」に応募し、

資金調達を考えていましたが、 自社での申請で

は「採択」に至らなかったため、外部専門家の力

を活用し進めることとしました。

今回は申請資料の作成に事業計画策定の専門

家、中小企業診断士の支援をうけました。申請書

の作成には第三者のチェックが大きな力を発揮

します。自社の事業について自分では理解してい

ても専門用語などで第三者には伝わらない部分

への指摘や、事業の独自性や地域社会への貢献度

など、補助金の審査ポイントについて書き漏らさ

ないように、とのアドバイスを受けて進め、再度申請までこぎつけました。

その後も、補助金の審査ポイントに加点になる「三重県版経営力向上計画」の

承認や、2 次審査のプレゼンテーション用の資料作成などに、外部専門家の力が

役に立ち、無事に再挑戦では補助金獲得につながりました。

Ⅿ社は返済の必要のない補助金を活用できるため、事業のスピードを、一段階

上げることが可能になりました。今後も海外ビジネスの拡大に向けて、スピード

感を持って事業を進めていきます。

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8.プロモーション

プロモーションのための代表的な手段として広告、パブリシティ、販売促進などが

挙げられます。プロモーション戦略で重要な点は、ターゲット層の顧客の状況を想定

し、購買行動につながるようにプロモーション手段を最適に組み合わせることです。

<広告>

商品知名度のアップを狙うには、ターゲット層を広くカバーできる「広告」が最も

効果的だと認識されています。代表的な広告宣伝には以下のようなものがあります。

(1)マスコミ広告(マスコミ 4媒体と呼ばれるテレビ・新聞・ラジオ・雑誌による

広告)訴求力が強いが、その分大きなコストがかかるため、スタートアップには負担

が大きいです。

(2)WEB広告(インターネットやモバイルを介した広告)

WEB広告の特徴はターゲティング性とインタラクティブ性にあります。

ターゲティング性とは、年齢・性別などによる属性、ユーザーの行動履歴、地域など

によって、広告を配信する対象を細かく分けられる点を指します。

インタラクティブ性とは、ユーザーからのアクションが可能であるなど双方向での、

従来の広告では不可能だった顧客とのコミュニケーションがとれる点です。

WEB広告は増加傾向を示しており、スタートアップを含めた中小企業のプロモーシ

ョン戦略の重要な手段となるでしょう。

<パブリシティ>

パブリシティとは、自社が発信する情報を新聞や雑誌などの媒体に記事として取り

上げてもらうことです。媒体に記事として取り上げるかどうかはメディア側が決める

ことになりますが、基本的にコストがかからないため、「無料の広告」とも呼ばれま

す。メディアの高い信用をうけ、認知度向上に高い効果を発揮します。

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<セールスプロモーション>

販売促進は、トライアル購買と購買頻度の向上を目的に実施します。販売促進には、

サンプル配布、ディスプレイ、デモンストレーション販売、販売店の手伝い、販売員

の派遣、消費者教育、消費者の組織化、特売、クーポンなどが挙げられます。実演用

キット、陳列機材、POP、店頭用ビデオなどの制作が必要となる場合がありますので、

コスト、費用対効果と相談しながら専門業者などに外注しましょう。

商品の知名度を高めるためのプロモーションについては、予算や人的販売(営業マ

ンによるコミュニケーション活動)を勘案しながら、ターゲットとする顧客に新商品

をいかに効果的に訴求させるか考え、各種の手段を組み合わせていきましょう。

〈WEB プロモーション〉

Ⅿ社では補助金での資金調達の目途がたったため、新商品のプロモーション戦

略を立案しました。スタートアップのプロモーション戦略の極意は、「選択と集

中」です。ターゲット市場を「選択」して、そこに経営資源を「集中」させるこ

とにします。

ターゲット市場のシンガポール

は、日本と比べてもインターネッ

ト、モバイルの普及がすすんでお

り、アクティブ SNSユーザーも多

いです。今回の新商品「抹茶SO

Y」はオフィスで働く女性をター

ゲット顧客としています。特にイ

ンターネットの影響力が大きい

層ということで、プロモーション

は WEBに集中して行います。

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人気ブロガーを活用し、「健康に抹茶SOY」をSNSで発信、クーポン券やキャ

ンペーンを企画し、ターゲット顧客が販売先への来店するよう促します。

その後、リピート需要を取り込むためのWEBサイト(越境 ECサイト)を構築し、

繰り返し購入してくれるように誘導します。

〈ノベルティー〉

アセアンの中華系の方は、お正月や節目の時に、企業や店舗はノベルティーと

して、ちょっとしたギフトを配る習慣があり、ギフトとしての購買についても、今後

の有望なターゲット顧客として捉えてプロモーションをしていきます。

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9.グローバル展開

〈海外展開〉

国内においては、人口減少により市場拡大が見込めない中、海外にはこれから経済

成長が期待できる国が存在しています。加えて 2020東京オリンピックにより日本へ

の注目は高まっており、ビジネスチャンスが大きく拡がっています。しかし海外展開

には、国内ビジネスにはないリスクが存在しますし、海外展開を進めていくためには、

継続的な投資が必要になります。まずは自社にとって海外展開が必要なのか、よく検

討してみてください。

現地の知識不足によって、海外展開が円滑に進まないことが多々あります。 進出

先の国や地域を選定した理由や根拠を明確に社内に周知しましょう。そして現地での

課題を想定し、その解決策についてよく理解しておきます。海外事業に詳しいコンサ

ルタントなど事業パートナーの力を借りて、現地のネットワークをつくることをおす

すめします。スタートアップはまず行政、ジェトロなど関係機関のアドバイザーへ相

談し、情報を収集しましょう。

海外展開実現までのロードマップ(中小企業庁ミラサポ HPより)

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〈インバウンド〉

ビジネスのグローバル展開というと、前述した自社で海外展開するといった「アウ

トバウンド」な取り組みが主流でした。しかし、「爆買い」などの流行語にもある通

り、訪日外国人観光客数はここにきて急増しています。訪日外国人旅行者を迎え

入れる「インバウンド」施策が重要になります。

2020 年に年間 2000 万人と目標

設定されていた訪日外国人観光

客数を、2016 年には 2404 万人と

前倒しで大きくクリア。今後は日

本でのビジネス、スタートアップにお

いてもグローバルなお客様を意識す

ることが必要になってきているので

す。 訪日外国人数(出所:日本政府観光局)

まずは「顧客志向」で訪日外国人の立場に立ち、対応策を考えてみましょう。ユー

ザーの目線では、いつどこで何を見るのかを考え、自社はどのような取り組みをする

べきか整理するのです。

訪日外国人の立場に立てば、日本との接点は「旅行者が日本に来る」よりも前、「旅

行者が自国で検索する」ところから始まります。

そして、その行動に対してスタートアップができる最低限の施策は「自社のホームペ

ージを多言語化する」ということになります。

例えば、国土交通省 国土交通政策研究所が行った調査によると、訪日外国人の「旅

館」の予約方法として、旅館ホームページからの直接予約が 15.9%に及ぶという結

果が出ています。日本ならではのサービスが受けたいという訪日外国人旅行者のイン

サイトとして、写真などが豊富で見やすい自社ホームページは必須とあることがわか

るでしょう。

まずは完璧な言語対応よりも「訪日外国人旅行者のお客様に何ができるか」という

考えることがスタートになります。2020東京オリンピックに向け、国をあげてイン

バウンド政策が進められています。

3年後、日本のすばらしさを外国人のお客様に伝え、最高のおもてなしができるよ

う、今からインバウンド施策をスタートしましょう!

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9.組織化(組織/人事)

スタートアップが事業の拡大を図るとき、いかに優秀な人材を採用できるかどうか

が、さらなる成長のカギになります。大企業のように多くのスタッフが働いていれば、

一部のスタッフの能力は全体のレベルに影響を大きく与えません。しかし、スタート

アップの時のように従業員が少数の場合であれば、採用する人材の能力が業績に大き

な影響を及ぼします。

人材を新たに雇用すれば、当然人件費は上昇します。固定費の増加は損益分岐点が

高くなることを意味します。したがって、スタートアップの人材の採用には、細心の

注意を払うことが必要となるのです。

〈人材採用の流れ〉

具体的な採用の流れは、以下のとおりになります。

(1) 自社の求める人物像、採用数、給料などの待遇面などを検討します。

併せて、採用コスト(広告費用、面接コスト)の予算も検討する必要があります。

(2) 求人広告を掲載します。

<募集媒体の選択>

求人雑誌への掲載

WEB求人への掲載

自社 HPへの掲載

ハローワークなどの公的機関の活用

求人広告の掲載の留意点はとしては、下記のとおりとなります。

(1)労働条件や業務内容をなるべく具体的に記載しましょう。

面接応募者は、求人企業の労働条件や業務内容を見て申し込みをします。その労働

条件や業務内容はできるだけ具体的に記載しましょう。

情報不足によるアンマッチで採用した従業員が退社した場合、採用コストがさらに

必要になります。

(2)男性・女性だけの募集、年齢制限を設けた募集は出来ません

労働者の募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇にあた

っては、男性と女性の差別的取扱いは、原則禁止とされています。

また、労働者の募集・採用にあたって、年齢の制限を設けることも原則できません。

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〈面接のポイント〉

スタートアップの場合、社長が 1回の面接で採用の合否を決めてしまう場合も多い

でしょう。社長みずからが面接を行うことで、社長が求める人物像に、比較的近い人

材が見つかる可能性が高くなりますし、社長自らが積極的に人材募集に関わっている、

必要とされているというよいイメージを応募者に与えることができます。

しかし社長の 1回の面接だけでは、一人の主観が入りやすくなる危険性があるため、

複数回の面接を設けるか、複数人で面接を行うことにより、主観を

できるかぎり排除するようにしましょう。

〈採用決定〉

従業員として雇用してしまえば、むやみに解雇はできなくなります。慎重に採用す

る人材を選定する必要があるでしょう。また、採用しなかった方の履歴書も個人情報

です。個人情報保護法の観点から、履歴書は返送するようにしましょう。

〈業務標準化・マニュアル化〉

スタートアップは、創業者である社長の力で、事業を回しているといっても過言で

はないでしょう。しかし社長自身が、調達も営業も管理まで、すべてを行う体制には

限界があります。売る努力ではなく、売れていく仕組み、儲かる仕組みを作っていく

必要があります。そのために、業務を属人化させないよう意識的に標準化を進めてい

きましょう。

業務標準化とは仕事の手順を文書化し、共有していくことです。自社のノウハウを

マニュアルとして明文化していきましょう。マニュアルは社員教育や人事評価のため

にも役に立つものです。最初に手間がかかりますが、今後の業務効率化を考えると、

早めに取り組んでいきたいものです。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」という言

葉もあります。新人を戦力として活用するためには、「業務を説明し、手順・ポイン

トを説明しながらやってみせ、目的を理解させ、できるまで反復、できた点は褒め、

できない点は指摘し、評価する。」これを継続していくことが必要となります。社員

教育のときは、業務のみ引き継ぐのではなく、会社の方向性、トップの思い、社員の

やりがいといった理念・ビジョンをも引き継いでいくことも意識して進めましょう。

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〈語学に堪能な従業員〉

海外展開時にはトラブルが発生した場

合に備え、社内に外国語で対応できる人

材を確保することも必要となります。海

外とのビジネスの発展のために、外国語

の素養のある社員の採用・育成を行うこ

とを考え、Ⅿ社ではロンドン留学経験を

持ち、語学 (英語)に堪能な従業員を

採用しました。

海外の顧客対応、ニーズの収集、クレ

ーム処理などに力を発揮してくれました。

優秀な人材を確保が、今後の成長を左右すると考えています。

(参考:「抹茶SOY」を活用した従業員のアイデアレシピ

海外の方からも好評をいただいています。)

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10.組織化(会社組織)

スタートアップ時、会社を設立するか、個人事業でスタートするかで迷う場合も出

てくるでしょう。会社法が改正され、簡単に会社を設立することができるようになり

ました。

法人化には、設立時の金銭的な出費以外にも、メリット・デメリットがありますの

で、根拠をもって選択していただきたいと思います。

ここで、大きな判断材料となる法人化の税金面のメリット・デメリットを確認しま

しょう。

〈個人〉

〈法人〉

上野表からもわかる通り、課税所得が 900 万円を超えると個人事業の課税所得が

43%で法人の税率を超えます。

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さらに上のグラフで比べてみると、所得が 600万円以下の場合は法人よりも個人の

実効税率のほうが低くなっています。しかし、700万円を超えると逆転。それ以降は

法人のほうが支払う税金が少なくて済むことがわかります。実際には法人化に伴うコ

ストなどもありますから、所得が概ね 900万~1,000万円以上になったら、法人化を

検討したほうが賢明といえるでしょう。

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〈法人化のメリット・デメリット〉

メリット デメリット

業務面のメリット

① 対外的な信用度の向上。

→大きな会社との取引には必要になる。

② 経営の合理化。

→家計と経営の分離。

③ 人材が集まりやすい。

業務面のデメリット

① 設立登記の手続きに手間がかかる。

→司法書士への依頼がおすすめ。

② 会計・税金の知識が必要に。

→税理士に頼んだ方がよい。

金銭面のメリット

① 収入が多ければ多いほど節税になる。

→900万~1,000万超えるなら法人に。

② 役員報酬、退職金を経費にできる。

→個人は親族に退職金NG。

③ 社会保険に加入できる。

→国民年金に比べ増額に。

④ 消費税を 2年間免除。

→1,000万を超えると課税。

⑤ 相続税対策、法人による事業承継可能

法人所有の財産は個人の相続財産からは

除かれます。

不動産の相続や贈与は登記費用など高額

な諸経費がかかるが、法人であれば自社株

のみとなり諸経費がかからないうえに、

評価対策についても自社株は不動産と比べ

て対策が取りやすい。

⑥ 法人の方が経費が認められやすい

個人の不動産所得は不労所得のため経費

が認められにくい。法人であれば生命保険

など個人よりも広く経費計上が可能。

⑦ 決算期が選べる。

→繁忙期に申告を避けられる。

⑧ 赤字が 7年繰り越せる。

→個人では青色でも 3年。

金銭面のデメリット

① 設立費用などキャッシュが今以上に必

要になる。

(司法書士、税理士費用)

② 赤字でも法人住民税均等割を払う。

(個人なら 0)

③ 社会保険に加入しなければいけない。

→コスト増

④ 大企業との取引により入金サイトが長

くなる。資金繰り難化。

キャッシュが必要になるので、法人化前に

十分に用意をしてください!

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11.法務

スタートアップは、契約の仕組みなどについて十分な知識を持っているとは言えな

いのが実情でしょう。ビジネスパーソンに必要不可欠な常識を学ぶこと、法的知識を

身につけることは、自分だけでなく自社を守る事につながります。

〈コンプライアンス〉

規制緩和、グローバル化が進展する一方で、消費者保護法が法的に強化されるなど、

企業を取り巻く環境は大きく変化しています。これに伴い、企業の自己責任が強く求

められる一方で、企業不祥事やビジネストラブルが増加し法的問題に至ることも珍し

くありません。

このような状況に対応するには、ビジネスパーソンがコンプライアンスに関する能

力を身につけ、法令を遵守し、業務の適法性を確保することが不可欠です。スタート

アップ時からリスクマネジメントのために、コンプライアンス体制の構築を進めてい

きましょう。

従業員の起こした不祥事で信用を失い、事業継続が困難になる可能性はゼロではあ

りません。そのリスクを意識し、アルバイトを含めた全従業員に「コンプライアンス」

を徹底させましょう。

〈知的財産〉

知的財産制度には、著作権制度、特許制度、商標制度などがあります。特許制

度は、最初に発明した人だけがその発明を独占できるので、とくにビジネスでは

大切にされています。商標制度は、商品の名前などを保護する制度です。

知的財産は、それ自体に価値があり、それを強みに事業をスタートアップする

ことで表に出てしまうため、隠しておくことが難しいものです。そこでコピーを

防ぐため新しい技術や商品の名称などの情報について、知的財産として一定期間

保護し、他人の不正なコピーを禁止しているのです。このような知的財産の模倣

を禁止する制度を「知的財産制度」といいます。スタートアップの競争力向上の

ためには知財戦略についても、重要性を認識することが必要です。企業間競争が

激化する中で、商品開発とともに知財を重視した経営で競争力を強めていきまし

ょう。

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〈ハラール認証〉

Ⅿ社では、お茶業界の新しい取り組みとして、積極的

に最新の製茶工場システムを導入し三重県産のお茶を国

内の多くの方々に楽しんでいただけるよう、安定した高

品質のお茶栽培を行っています。

加えて、2020 年の東京オリンピックを控え、国内だけ

ではなく海外からの旅行者に対しての食品環境整備(お

もてなし)が急務になっています。

Ⅿ社では、近年増加しているムスリム(イスラム教徒)の方々に、安心して飲んで

いただけるよう、日本のハラール認証機関である NPO法人日本アジアハラール協会の

「ハラール認証」を取得しました。

ハラール(ハラル)とは、イスラム教の聖典「クルアーン(日本ではコーランとも言

う)」に基づいたムスリムが使用を許されている物を指します。

ムスリムは、このハラール品であると認められている物以外は、基本的に避けなけれ

ばいけないと言われています。 ハラール(ハラル)かどうかは、今回取得した認証

マークで識別され、ムスリムが安心して使用できるということを日本語が理解できな

い人に対しても解かるようにするための認証です。

ハラール認証取得には、お茶はもちろんのこと、工場内の環境であったり、パッケ

ージの素材、一緒に使用する原材料まで聖典「クルアーン」に乗っ取らなければなり

ません。それらの厳しい条件を全てクリアした物だけに与えられるのが「ハラール認

証マーク」です。

ハラール認証を受けていることを、アジアで増え続けるイスラム教徒向けにアピー

ルできることもⅯ社の強みとなっています。

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Ⅳ.まとめ

スタートアップを決心した皆さんは、いま大きな情熱を抱いているでしょう。これ

から辛い時期を乗り越える為には、自分のやっている仕事に対する情熱が必要です。

今後、事業を拡大するために優秀な人を集める為にも情熱は必要です。

「スタートアップして、時間・スケジュールに縛られずフレキシブルに働く。」

魅力的な言葉ですが、創業直後は 24 時間対応のフレックスタイムになるのが実際

のところかもしれません。「自分が始めた会社で、社長となり采配を振るう。」はずが、

現実は、自分の周りのビジネスパートナー全員が、あなたのボスとなることも。情熱

はスタートアップにとって、競争相手と戦うためだけでなく、ストレスと戦うための

持ち駒のようなものです。ここぞというところで使えるように大切にしてください。

ビジネスに必勝の一手はありませんが、失敗のリスクを軽減できる法則はあります。

まずは成功者に学ぶのがスタートアップ成功の一番の近道です。モデル事業を参考に、

ご自分のビジネスを振り返ってください。

・顧客ニーズに適合した商品・サービス。

・積極的な情報収集と得た情報のニュートラルな判断。

・協力してくれるパートナーの存在。

・的確な需要予測に基づいた売上見通し、コスト面の精緻な計上による計数計画。

タイムリーな月次決算。

・自己資金の確保。

・5年後 10年後の有りたい姿、その為に今何をすべきかというヴィジョン

もしも苦境が到来しても、失敗は事業を継続できないことのみであり、継続してい

く中で、成功のチャンスが訪れると考え、改善し、歩を進めていくのです。

テスラモーターズの CEOであるイーロン・マスク氏は、「もし今 取り組んでいるな

かで失敗した経験がないのなら、それはイノベーションが足りていない証拠だ」と、

失敗と改善を繰り返すことの大切さを伝えています。

事業を諦めないために必要となるのも創業時の動機、情熱なのです。

スタートアップに大きな可能性を提供する三重県で、ご自身の夢を形にしていきま

しょう!