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Instructions for use Title MHDチャネル流れの解析的研究 : 2次元磁場をよぎるMHD流れと乱流境界層 Author(s) 及川, 俊一 Citation 北海道大学. 博士(工学) 乙第4516号 Issue Date 1994-03-25 DOI 10.11501/3076836 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/32673 Type theses (doctoral) File Information 4516.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

MHDチャネル流れの解析的研究 : 2次元磁場をよぎるMHD流 … › dspace › bitstream › 2115 › 32673 › 1 › 4516.pdfmhdチャネノレ流れの解析的研究-2次元磁場をよぎるmhd流れと乱流境界層-

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    Title MHDチャネル流れの解析的研究 : 2次元磁場をよぎるMHD流れと乱流境界層

    Author(s) 及川, 俊一

    Citation 北海道大学. 博士(工学) 乙第4516号

    Issue Date 1994-03-25

    DOI 10.11501/3076836

    Doc URL http://hdl.handle.net/2115/32673

    Type theses (doctoral)

    File Information 4516.pdf

    Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

    https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/about.en.jsp

  • MHDチャネノレ流れの解析的研究

    -2次元磁場をよぎるMHD流れと乱流境界層-

    北海道大学工学部原子工学科

    及 }II俊一

    1 994年3月

  • 自 次

    第 1章 序 三会口出 @・..・ a・・ o.・..,..・・..・・・.. .・・・・...., .・..・・・・ ・ ・ ・ ・ 1

    1・1 本研究の目的と特徴.. . . .. .. . . .・..・ o.・・..... . . . o. • • • • .・・.. . o .・ 2

    1・2 MHD発電に関する研究開発の現状 00..00・・.. . 0・.D . . ..・・・.. .・・・ 5

    1.2.1 オープンサイクルMHD発電の意義と現状 o• • • • • •• ..0 o .・・.0.・.. 5 トト2 クローズドサイクルMHD発電の意義と現状 ...0日.......0.・.0.14 ト2・3 液体金属MHD発電の意義と現状 .0・.....08..................016

    1・3 本論文の構成 ...00..............・.. . . . . . . . . o. .・・o0 .・.0..・...018

    1章の参考文献... ... .. "." o・........0....0.............00...・・...00.020

    第2章 電磁流体に対する支配方程式系…… 21

    2・l 緒言..・o0 o 0 . . . . . . . .・..0000.0.・.........................0..22

    2・2 記 号 o•• • ., . .・・............................00....・・@・・.o・・・・ 23

    2.2.1 シンボル D.O....oo.oOOOooooo.o.o..ooO・・e・・・・....・e・e・・・ooo.o23 ト2・2 添 字 oo.........ooo....oo..o.............oo....・e・..oo..O'25 かか3省略語.. o 0 . 0 o o D . . • o o • o • 0 • • • o • • o . o o • • • • • o . • o 0 o o • • 0 o . o. o. o • . o 26

    2・3 電気場の支配方程式 o..o.ooooo..oooo...oo・8oOOGB......・0.0....27

    2.3・l 無限分割電極近似 .....oooo.oooo....ooo...o・o.oooooo・.o・e・・・・ 28

    2・4 熱流体場の支配方程式@日..ooo..o...oo......o..日日.. o日o.oo..30

    2・4・1 準一次元近似方程式系・..o D日oo • • • •• • .日o.. o 11 ., . o日...........30 2-4.2 放物近似三次元方程式系 o• 0日日@日0.000000.0.0日.o .日.. . . . . 0・31

    2・5 乱流モデル(turbulencernodel)日........0....・e・....0800......33

  • 目次

    2・5・1混合距離モデルキ2給水4Crnixinglength rnodel) .............・ a・・・ 33

    2・5・2高レイノルズ数k-εモデル DDOOD.OQ.O..ODDOOo・.00・・....0000037

    2・6 数値解析手法..a.. • 0 •• ...日...・0....8...........・・・e・・・・・・・・・ 40

    ト6・1 有限要素法の特徴.. .. ... .. .. .. . . . .. . 0 .0. • • • •• • • • • • .. .旬.......41 2.ト2 時間積分法 .................................oo............oo43

    2章の参考文献@日日....・.. . .・8....08日.....................0.....・・・ 45

    第 3章 SFC型磁界配位..,., 0・H ・-….Q • .・ M ・. 0 ..・ H ・47

    3・1 緒言.D 11 . . . . . o 0 . . . D • • • • • • • • 0 o o 0 o 11 . . . . . .. D D o . 0 . . . . . . D • D • • • • • a 48

    トド1 電極の有限分割効果 ..........00......................00..0..49 3.1.2 冷電極での電流集中現象... . . 0 o •• • •• • • .・.. . D o. . . . . .. . . . .・・・..50

    3・2 電極境界層モデルと基礎方程式・.. a . . . . . . . .日................a・51

    3・3 定常放電状態に及ぼす磁界分布の影響.. . . .. . . . .. . . . ..・.. . . . . . .・・ 53

    3・4 SFC磁界の近似発生法..日........8.0.....................0.56

    3・4・1 無限長導体近似(空心コイル) e...日日日.. . .,. . . o • • D .・・... .・・・ 563.4.2 強磁性体の空間配置 o• • • • • • o • D • D • D o 0 D • • • • • • • • D • • • • • • • • • • • • • •• 58

    3・5 クレセントコイルによる一様 CUF C)磁界発生 ...0............60

    3章の参考文献... . o 0・・・・.. .日.00:D .日..0......0日付.o 0 • o D・o.・@・・..0..62

    第4章 SFC型MHD発電機の三次元特性・ 63

    4・1 緒 。.D • • • • • • ., ., . . o . D . . . . . . D . o . . . o . ., . 0 . . . . o o o 0 . 0 o 0 ・ ・ 0 0 0 ・ ・ • 0 64

  • 目次

    4・2 MHD発電機内の三次元現象... . . . . . . . . .・o.. . o 0 • . . . . 11 . .・・・@・・・ 65

    4・2・1 局所ホール電流... o o. .・・...・・.. .・..................・・・・・・・・・ 654・2・2 MHDニ次流れ.. . . ..1).. . . .. .・・・・.. .. ..・.. . .. .. . .・ oo • • • • • • .・ 66

    4・3 解析モヂルおよび仮定.... .. .. .・.......0..・o• • D o • • • • • • • • • .・・・・ 67

    4.3.1電気場の支配方程式 ........0..........0.............・・・..・・・・ 674.3・2流体場の支配方程式 ...0日....・.0................0........・.._868

    4・4 解析結果および考察・・......8O........⑤ .......oo..............71

    4.4-1 ホール電流 ..............................0.........・.. . . o • .・ 734・4-2 7ァラデー電流 0..O...8....................................・734・4・3 電極電位降下・..................・8.0.・-. .・・.. .. . 0 o.・e・e・・..・ 794.4・4 二次流れ分布...,. . ..0... .. .. •• •• o .・@・・D.. . . o 0 . .・.. . . . . .・・...79 4・4.5 混茂及び軸方向速度の分布 a......................・・.. . . . o .・・・ 80

    4・5 結論...⑤.....00....0.0..0.......00...0..000..00...00・o.匂80.86

    4章の参考文献 o• .日..・.....・..o • •• o. •• •• .日..0.............日.........87

    第5章高導電率プラズマを用いるMHD発電機@・ 90

    5・1 緒 言 ...............8....日 o..oo.....o...o........o..o..... 91

    5・2 支配方程式系..日 o.日00000......日.o o .日@日目。 ooooooooooooooo 93

    5・2・1 印加磁界 .0....000...00脅 oooo..ooooaooooaaao.a....ooaooooo.oo 93 トか2 熱流体場の支配方程式 ..o.a.ooao...o.....o.........oo..ooooo・93

    5"2・3 乱流モデル:高レイノルズ数k一εモデル aeo..o........oaeooo. 96

    トト4 電気場の支配方程式 .a...oaa................oo.ooaoo..oaoo.oo 98

  • 目 次

    5・3計算結果 .......................0.....・.. .・... . . . . ." .・・......100

    5・3.1 CASE-Aチャネ)v...................・・.. . .・・・..・・・・・..・・100シ3・2CASE-Bチャネノレ..⑨. .・..........0......・.. . . . .・・・@・.. .・103

    5・4 結論................................................・.. . .・107

    5章の参考文献@・...................................・ o• • • • •• .・.......108

    第 6章乱れたプラズマに対する一般化オーム則日110

    6・1緒言... .⑨...................0.................8....0.0....111

    6・2 速度・温度乱れの表現... . .. . .日@日.. . . . . .日@日目。@・.. . . . . .日.113

    ト2・1磁界印加のない場合 .........................................1136.2.2 磁界印加された場合 (MHD条件).........・・..... .. .・・・......0115

    6・3一般化オームの式の乱れモデル ........................0.00...0117

    ト3・1温度乱れのみの影響...・.....................................118ト3・2速度乱れのみの影響........................................・1226.3-3 温度・速度乱れの影響・.................00.日D • _日.. "日.."日,,0122

    6・4 簡単な数値例 ............................0.....000....00.・o.・127

    6・5 減衰速度の見積 0..00000日.0.0日日.. 0 0 D日oD • • • 0日付0000..00..・129

    6・5"1乱れ速度の見積 00.0.......0..0.........00.....0......00......129 60ト2解法1.00日 000".00000D.. 00................00.0............ .131 605-3 解法2........日..........0.0.......0............0000.0.00.1336・5"4数値計算@日.0....0.00.....................................・135

  • 自 次

    6・6 結 言@・・ ee.・・.o. . ... ..・・・......・・・ e・...........・@・・・・... . .・138

    6章の参考文献 ..........0.....................・・..・・・・ e・.. .・・..・0..0141

    第7章 士官,、叫H叶 さきム日間 . .. . . . .. ..⑨................00.......・000...0...143

    7・1 平均流れと電磁場の相互作用.........................・.. . . . .・・144

    7・2 流体乱れと電磁場の相互作用・・.....................・ a・......0.145

    7・3本研究の結論..... . ...... .. .. .. ..,.. .. .. .. .日..oo..・...o.......147

    謝辞……….. .・ M ・..……………………………0.0.00.0148

    APPENDIX ……………………………………..149 A 一般化オームの式の導出 ........8..................・..........151

    B 準一一次元MHD方程式の導出 ...........80....・..・・..・..・ e・・・・・156

    C k-ε 法の境界条件(高レイノルズ数).......o.................161

    D 面積摩擦の性質日..日....日日." "日". ..日." . . ..日日...........164

    E クランク・ニコルソン法 00..0..08.................・0.08..0・...167

    F 矩形断面無眼長コイルの作る SFC磁界.,... . . 0 ..0. . .・..・・・・.0・・169

    G クレセントコイルの断面積 ......................8.....000..0・.174

  • 第 l章

    第!章序論

    ぜEB--

  • 第 1章

    1 -1節本研究の目的と特徴

    本研究は、オープンサイクルMHD発電チャネル内で生ずる現象を主として

    磁場と熱流体場の相互作用現象として捉え、外部印加磁界の整形によりチャネル

    内の不安定性を含む電磁流体相互作用を直接的に制御あるいは抑制することによ

    り発電特性を改善する事を主な自的としている。

    燃焼ガスプラズマを利用するMHD発電機は、蒸気タービンやガスタービンを

    用いる発電機に較べ機械的回転部分を持たないため、より高温の燃焼ガスを利用

    できる重接発電システムである。また、その排出ガスの温度は十分高温であるこ

    とから、これらタービン発電機のトッパとして使用すると熱力学的に高い総合発

    電効率が得られることが期待されている D また、導電率を上げるために使用され

    るカリウム化合物などのシード物質による自己鋭硫作用、燃料の効率的利用によ

    る単位電気出力あたりに排出される二酸化炭素の抑制など、環境に対する影響も

    少ない。しかしながら、高温燃焼ガスからの直接発電は、電極材料の電気的およ

    び熱的耐久性を低下させること、シード物質あるいは石炭燃焼時に発生するスラ

    グおよびその構成物質の電極壁面への析出・付着による電気的特性への悪影響、

    集中アーク放電による電流輪送モードが電極材料の寿命の観点から望ましくない

    ことなどにより未だにMHD発電機が実用化されていなし、。これらMHD発電機

    の耐久性・信頼性を損なっている現象は全て電極境界層内の現象であることから、

    MHD発電機の実用化のポイントは電極境界層現象の解明・制御にあるといえる。

    これは以下の簡単なオーダ評価によっても理解されるo すなわち、現在考えられ

    ている大型の商用MHD発電機の出力密度は、 20MW/m3とされているのに対

    して、現在でも主流部では、導電率σ--10S/m以上、流速U--I000m/

    S程度、磁束密度B--5T以上を実現することは容易であり、これらの条件で期

    待される出力密度は、負荷整合時(負荷抵抗と発電機内部抵抗が等しい場合で最

    大出力が得られる条件〉には

    P=jσU 2 B 2 = 6 2. 5 MW / m 3

    。,白

  • 第 1章

    となり、 60MW/m3以上となることからも了解される。

    本研究では、この観点から冷電極を持つオープンサイクルMHD発電機の電極

    境界層における電気的および流体力学的諸特性の改善を目的とした外部磁界配位

    である SFC磁界 (ShapedBゅ FieldConfiguration)の有効性について、従来型

    の一様磁界 (UniforrnB-Field Configutarion:以下UFCと略〉との比較におい

    て論ずる D

    SFC磁界についての詳細は 3章で述べるが、ここで簡単にその概要・特徴を

    説明する。 MHD発電の基本原理は導電性流体(導電率σ〉を磁界Bの中で速度

    Vで運動させることにより電流を誘起し、電力を取り出すことにある。ここで導

    電率は有限で、あるため常にジュール発熱の形で発生電力の損失が存在するo 冷電

    極を持つオープンサイクjレMHD発電機ではこのジュール損失の大部分は電極境

    界層内で発生する。この理由は単に境界層内で起電力を構成する速度Vが主流部

    に較べ遅く(壁面上では 0)導電率が低いことだけにあるのではなく、以下に述

    べるようにホール効果によって境界層内の磁界強度と共に発電機内部抵抗が増大

    するためである。ここでファラヂー結線のMHD発電機を考えると、導電率の低

    い電極境界層内で主流部と間程度の強磁界が印加されていると、電流の連続性よ

    り負荷電流へ寄与する電流成分(ファラデー電流〉は(絶縁壁境界層内を除き〉

    発電チャネル内でほぼ一様であるのに対し、ホール効果による電流(ホール電流〉

    は、主流部ではホール電界によりほぼ打ち消されているが電極近くではホール電

    界が電極酉上で短絡されているためホール効果が直接ホール電流を駆動し、その

    大きさはファラデー電流と間程度以上となるo このホール電流は電極面に沿った

    電流成分であるから、電流は磁界が電極面上で3郎、ほど冷電極境界麗内での電流

    パスを長くし、その結果発電機内部抵抗を高め、電極電圧降下、ジュール損失を

    増加させるo 従って電極境界層は発生電力の損失領域としてしか働かず、その損

    失割合は電極境界層内の磁界強度と共に増大するo そこで、印加磁界としてチャ

    ネル内で一様とするのではなく、電力発生領域である主流部では強くし、ホール

    効果に伴うジュール損失を低減させるため電極近くで弱める分布として SFC磁

    界が粥)I[らによって提案されている (3章参照)0

    さらに本研究で対象としている冷電極乱流温度境界麗には、温度勾配に伴う導

    電率の空間勾配とそれに直交した磁界が何時に碍在しているo 磁界による流体変

    内べU

  • 第 1章

    動、あるいはレイノルズ志力の抑制効果は、古くから主として液体金属を用いた

    実験・理論的解析がなされていたが、液体金属の導電率は空間勾配をほとんど持

    たないため、アルカリシード燃焼ガスプラズマMHDと液体金属MHDでは、乱

    流減衰に関する性質は(液体金属MHDにおいて乱流減衰を特徴付ける無次元数

    である磁気相互作用パラメタがほぼ間程度の範囲にあるにも関わらず〉かなり異

    なると予想、されるo

    またオープンサイクルMHDにおける作動流体の動作温度範囲 CI000K--

    3 0 0 0 K)ではその導電率は温度の 12乗程度に比例するため、シード物質の

    電離・再結合の過程が非常に速く行われて、完全に熱平衡状態であると見なせる

    場合でも導電率の時間(あるいはアンサンプル〉平均値は温度の時間平均値で見

    積もった導電率とは一致せず、この違いは混度変動が強いほど、また導電率の温

    度依存性が非線形になるほど大きくなるo 以上のことは、乱流の弱電離プラズマ

    を作動流体とする場合の支配方程式系、特に次式で示される一般化オーム則に対

    して乱流モデル化が必要であることを意味しているo

    J=σCE+ VX B)一μeJxB

    ここで、右辺第2項はホール効果を表している。

    そこで本研究では、上述したSFC磁界によるMHD発電特性の改善方の提案

    に加え、冷電極温度境界層(磁界および導電率勾配が存在する)内における乱流

    減衰過程をプラントルの混合距離仮説に基つ)~、てモデル化し、一般化オーム則の

    乱れモデルを構成している。

    -a生

  • 第 l章

    1 -2節 MHD発電に関する研究開発の現状*1叫

    高温の導電性流体を強磁界を横切らせて走らせるとき、発生する起電力を使っ

    て外部の負荷に電力を供給するのがMHD発電の原理であるo 高温領域はMHD

    発電機で、中低温領域は蒸気タービンあるいはガスタービンで複合発電を構成す

    ることにより、高い発電効率が得られるo

    現在、発電用ガスターピンにおける最高温度は 13.0 0 OC程度であり、化石燃

    料の火炎温度約 20000Cに較べて7000C程度の開きがある。さらに高い効率

    を持つ発電システムをめざすには、この高温領域を取り込むことが必要となるo

    しかし、これは回転機械では国難でありMHD発電の導入によってはじめて可能

    となるo

    本節ではMHD発電を、ガスプラズ、マを用いるオープンサイクルおよびクロー

    ズドサイクルMHD発電機にわけ、これらの意義および現状について述べると共

    に液体金属MHD発電についても若干ふれるo

    1 -2. 1 オープンサイクルMHD発電の意義と現状

    オープンサイクルMHD発電は燃焼ガスをそのまま発電流路内に導くもので、

    作動気体が高温化 (3000K程度〉できる点に特色があるo 従ってこの高温に

    より高い効率がもたらされる。燃焼ガスに導電性を与えるため、電離ポテンシャ

    ルの低いカリウム等のアルカリ金属の化合物(たとえば炭酸カリウム、水酸化カ

    リウム等〉を重量比で 1%程度シードするo これにより 5--10S/m程度の導

    電率をもたせることができるo 一方3000K程度の高温燃焼ガスを得るには、

    燃焼機内に送り込む空気を予熱したり酸素を富化したりする。この予熱温度を高

    くし、 2000K以上lこするのが望ましいが、それには高温の熱交換器が必要で

    あるD クリーン燃料では問題が少ないが、石炭燃焼ではスラグがこの熱交換器内

    に入ることやシード物質の問題もあり、当初は空気予熱用熱交換器の温度は 14

    OOOC程度にし、 40%程度の酸素富化をする方式がとられるo スラグ条件下で

    F同d

  • 第 1章

    2000Kの熱交換器が可能になれば石炭燃焼オープンサイクルMHD発電の総

    合熱効率は 50%程度になるといわれている。石炭燃焼オープンサイクルMHD

    発電システム例を図 1-1に示した。サイクロン燃焼器などで微粉炭を燃焼させ、

    シード物質を投入したのち、燃焼ガスはMHD発電機に導かれるo 発電機を出た

    作動流体は熱交換器、ボイラを経たあと大気に捨てられる。シード物質は 99%

    以上回~されなければならない。このときには、石炭中の硫黄分が硫化カリウム

    の形になり、シード回収と同時に硫黄分が除去できるのが特色であるo 窒素酸化

    物は熱交換器やボイラなどでの長い滞在時間を利用して販次分解されてゆくので

    大きな問題はないとされているo 燃焼ガス中に含まれるスラグは燃焼器中で 90

    %程度除去されるが、なお残りは発電機や熱交換器、ボイラの方ヘキャリーオー

    バされる D 発電機内の電極表面の温度を適切に選べば表面に厚さ 1mm程度のスラ

    グ層が形成され、これが特に陽極の電極材料を保護する役割をするといわれてい

    る。

    蒸気

    Kz COl補給 湾添加シードKzC 03紛 シード・ :ti炭灰

    一一一時一円略一一一一一一一一…一一日一一一一一一一一一柄。υNM

    LGよーし?三._._._-_._----二一一一一ザーよ一一一;後紛炭望E送用空気

    町総 87%

    空気25・cRh50%

    図1-1 石炭燃焼MHD/汽力プラントシステムの構成

    6 -

  • 第 1章

    石炭燃焼オープンサイクルMHD発電については、燃焼器、寿命の長い発電流

    路、高温熱交換器、シードの処理、超伝導マグネット等のコンポーネントの開発

    がまず必要であり、現在この開発が米国を中心に進められているo システム的に

    は車交変換器と負荷との整合性、硫黄分の処理などの問題があるo 米国のDOE

    (エネルギー省:Departmentof Energy)が 1975年にまとめたECAS吋(先

    進発電技術の評価:EnergyConversion Alternative Study)あるいはそれを引き

    継いだEPRIの研究“でもオープンサイクノレMHD発電は、石炭との組み合わ

    せの場合、総合効率において最も高い変換法であり、発電単価も低く、環境性も

    良いとの評価が出されているo ソ連での評価も同様であり、これがソ連、米国に

    おいてまずオープンサイクルMHD発電に先進発電技術の中で最も高いプライオ

    リチィをおいている理由であるo

    残る最大の問題は信頼性で、果たして 5000--10000時間の運転時間ま

    で到達できるかどうかが焦点、である。発電流路の材料については絶縁材料には、

    電融マク。ネシア系材が良いこと、電極材料としてはジルコニア系材料では陰極に

    Z r 02一Ce 02、陽極にはZr02-LaCaCr02が良い結果を示しているo

    金属電極ではCu-w合金が特に桧極に適していることが明らかにされている。

    陽極はスラグの付着によりこれが保護されるとされるが、一方スラグと導電極の

    間に酸化を促進する電気化学反応が起こるため白金のキャップで銅表面を保護す

    ることなどが試みられているo しかしなお改良の余地は大きくこれを 20 0 0時

    間以上耐久性をもたせる構造上、材料上の研究が必要である。

    日本でも工業技術院から電気共同研究会が委託を受けオープンサイクルMHD

    発電の計画策定と開発指針を与えるベースをなしてきた昭和 42年度~昭和 50

    年度には石油及び天然ガス燃焼の発電システムについて*5、また昭和 53年度~

    昭和 57年度には石炭燃焼の発電システムの概念設計と技術及び経済評価などの

    研究叫が行われた。概念設計は現状技術をベースにしたきわめて保守的なもので

    あったがし1ずれのシステムでも、在来火力や原子力並の発電単価で50%近い熱

    効率となることが見積もられた。また問時にMHD開発にはきわめて大規模な開

    発が必要なことを明らかにしている。

    一方、燃料電池や高温ガスタービンなどの新発電方式は比較的小規模で-開発が

    7 但

  • 第 1章

    可能なため最近の開発の進展がめざましい。このため実用化までの開発期間の長

    いMHD発電では、当初目標とした40%台の熱効率では魅力が乏しいと見るむ

    きもあるo このような中長期的な展望にたち、将来のより高性能のMHD発電シ

    ステム像の検討が最近発表されているo また、開発経費の軽減と早期実用化をめ

    ざして、既存火力にMHDを結合する、いわゆるレトロフィット CRetrofit)シ

    ステムが各国で検討されているo

    レトロフィットシステムは既設の小型火力発電所にMHD発電設備を併設して、

    既存の設備の一部を利用するo このため、敷地開発に制限を伴うがMHDプラン

    トの建設費を軽減でき開発期間も短縮できる o また!日形の既設発電所の発電容量

    の増加と効率の改善ができる適当な選択と設計により技術的なリスクを増やすこ

    と無く MHD技術の商用的な実用化可能性を実証でき、同時に電力事業者へのM

    HD発電技術の移転を可能にするo 従ってレトロフィットシステムは、最初の商

    業発電の実証プラントとして最も現実性があり、アメリカ、イタリア、インド、

    ユーゴスラピアおよび中国などで検討されている。これをまとめたものが表 1-

    1であるo

    以下、日本、アメリカ、ソ連を中心にオープンサイクノレMHD発電システムの

    各要素要素技術の開発の現状について述べる。これまでの試験研究結果から、高

    温空気加熱器を除けば、一般に商用MHD発電プラントの開発には技術的なリス

    クが残されているが重大な技術的障壁はないものと認識されているo 高温空気加

    熱器には当面熱効率を犠牲にして、酸素富化方式による代替が考えられており、

    商用化の準備として各構成機器の技術データベースの蓄積やプロトタイプの概念

    設計が行われており、比較的最小規模での総合試験と開発が行われている。しか

    し、一方ではガスタービンなど競合技術開発の進展にともない、コンパクトで、

    さらに高効車の高性能MHD発電システムを目指した開発も強く望まれているo

    各構成要素の開発課題をまとめると次のようになる。

    ( 1 )石炭燃焼器 石炭燃焼器はMHD発電システムの中で最初の構成機器

    であり、その機能は石炭と酸化剤を高温・高圧の一様な導電性のプラズマに変換

    することであるo 燃焼器の性能はプラント全体の効率に大きく影響するo その主

    要なパラメタは燃焼効率、熱損失割合、スラグ除去率、プラズマ導電率などであ

    8 -

  • 第 1章

    りそれぞれのパラメタは、 99%以上、 3--5%以下(50 0 MW tクラスで〉、

    70--90%、6S/m以上などの値が要求されているo さらに 5--6atmf.{

    上の圧力のもとで最低 10 0 0 0待問程度の耐久性が必要であるとされている。

    最も開発が進んで-いるアメリカのTRW社のCDIF用50MWt燃焼器では、

    これまで行われた 200時間以上の運転によりその設計性能はすでに実証され、

    10MWtおよび20MWtの燃焼器の数百時間の試験結果を含めると、主な運

    転パラメタおよび形状パラメタに関する性能データがほぼ蓄積されてきているo

    表 1-1 代表的なオープンサイクルMHDレトロフィットシステム*1

    国 名 アメリカ イタリア インド ユーコ、スうど了

    名 称、 Sholz Corette ケース 1 ケース2 Kakanj-直

    容既設量70

    うント 46 M恥 166 MWe 75 誕官e 320蹄e 100 高官e 110 Mwe

    燃 手ヰ 石炭 石炭 天然ガス 天然ガス 石炭 天然ガス

    結合方式 蒸気結合 蒸気結合 ガス結合 蒸気結合 蒸気結合 ガス結合

    熱入力H MHD 192 M官t 2256 0EWt 230-240 149 M官t 373 M官t既設 一 5 M官t 155 M有t 一

    MHD出力 24. 4腕e 28 MWe 33 賢官e 10 MWe 20ω22 MWe 52.5腕e

    蒸出気力タービン 50. 0 話恥 185腕e 68嗣e 320肝e 100 肝e 110腕e

    熱 効 率% 31(net) 36(gross) 38 30. 9(net)

    酸素寓化率 40出 36 % 38完 酸素富化 35先

    撃議選 788 'c 649 'c 1700 'c 1523 'c 850 'c 723 'c

    896050pF sia 13001吋1000/100 5i !?53長 11400000pF si 叩 Rs~995/995 F F

    最大磁界 --6T(SC草〉 4.5T(SCM) 6T(SCM) 5T(SCM) 銅鉄 6T(SCM)

    MHD ( --12紛 ( --10出〉 10--12% 14.5出抽出率」ー

    9 -

  • 第 1章

    また、これらの試験を通して燃焼器の樹久性を制限する特別な現象は観測されて

    いない。しかし燃焼器性能の厳密な評価は簡単でなく、均質な高導電率燃焼ガス

    プラズマを発生させるには、運転条件の最適化など研究課題が残されているo

    また、さらに研究が必要な課題は、熱入力に対する形状のスケーリング、スラ

    グの連続排出と電気絶縁および構成材料の耐用性などである。異なった炭種に対

    する経験の蓄積や高圧水での器壁の冷却なども次の開発課題である。なお、燃焼

    器に続く加速ノズルの設計については、既存の設計技術を磁界との相互作用を含

    めたものに拡張しなければならない。

    (2 )発電チャネル 発電チャネノレはMHD発電機の中心機器であり、最も

    重要な開発課題である。その性能は、発電性能として 20--25%以上のエンタ

    ルピ抽出率と 60--70%以上の等エントロピ効率、耐久性として数千時間以上

    の信頼性が要求されているo エンタルピ抽出率は、熱入力 300MW規模のアメ

    リカHPDE装置で3.8Tの磁界において理論的に予想される約 12%が達成さ

    れ、耐久性についてはAVCO社のマークVIと四で、それぞれ一台のチャネルで

    は500時間、個々の陽極では 1300時間の耐久性が実証されて、陽極と陰極

    とも数千時間までの寿命を推定できるようになっているo しかしHPDEの実験

    はトルエン燃焼の短時間(約 10秒〉であり抽出効率はまだ目標値の約 1/2で

    あるo また 等エントロピ効率の検証はまだ行われていなL、。

    従って、エンタルピ抽出率と等エントロピ効率の実証が再重要開発課題の一つ

    である。こうエンタルピ抽出に伴い大きくなる三次元的相互作用の解明も重要で-

    あるo これらの発電機性能ノ守ラメタは大型化と共に向上でき目標値が達成できる

    ものと予測されている。これまでに行われた各種実験において発電機の大型化を

    阻害する現象は発見されていない。

    電極は 10000時間以上試験されたが完全なチャネルとして長時間発電時に

    生じる問題点、たとえば隣接陰極関短絡と陰極近傍の絶縁壁の損傷など十分に解

    明されていない問題の解決が必要であるo さらに炭種の違いによる影響、特に異

    なるスラグによる影響の解明が必要である。出力統合と負荷制御などの電力調整

    は、現状の技術で解決できるが損失と建設費を低減する最適化が重要で・あるo

    10

  • 第 1章

    MHD発電チャネルと下流の熱シード回収システムをつなぐヂィフユーザは、

    チャネルを出た高速のガスの運動エネルギーを静圧に変換し、効率的なMHD発

    電を可能lこすると共に、下流システムに入るガス流速を適度の大きさに下げる役

    目を持ち重要であるo これまでに超音速と亜音速の雨領域のディフユーザが設計

    され、 CDIFのテストからディフユーザ性能の三次元解析も行われているが、

    さらに発電チャネル内の多次元的な流れ解析と合わせて、高効率ヂ、ィフユーザの

    設計技術の確立が必要である。

    (3 )趨伝導電磁若 商用プラントには磁界5--7T、蓄積エネルギとして

    数--10GJの規模の鞍型超伝導電磁石の開発が必要であるo わが閣ではETL

    マークVにおいて 4.5T、60MJのレーストラック形磁石を建設した実績を持

    ち、アメリカではCFFF用の 6T、 168MJの鞍形磁石を建設し、設計仕様

    を試験確認しているo商用化に対して、超大型という点を除けばMHD用電磁石

    の技術水準は最新の超伝導技術の範囲内にあり問題は少ないが建設費の低減とそ

    の大きさにともなう新しい製造技術の開発が必要であるo

    (4)空気(酸化剤〉加熱器 お炭燃焼のM司D排ガスを用いる直接加熱方

    式の高温空気加熱器の開発は長い時間と多額の費用が必要であると考えられてい

    るが、成熟したMHD発電システムを実現するためには不可欠であるとされてい

    る。その開発課題は、

    1.石炭スラグおよびシードを含有する高温燃焼ガスに対する耐食耐熱

    性能を有する蓄熱材料の開発、

    2.蓄熱体やガス流路に堆積するシード・スラグの除去法開発、

    3.高温酎シード耐スラグ高温弁の開発、などである。

    (5 )ボトミングシステム オープンサイクルM百D発電機出口での高温熱

    エネルギーの回奴・和用及び使用済みシード(カリウム〉の由収・再生は、プラ

    ントの高効率化と運転費の低減のために必要である。熱・シード回収システムに

    おける主な技術課題は次のようにまとめられるo NOx、SOxレベルの低減。媒

    じん(シード化合物およびアッシュ〉の捕集・除去。材料劣化〈コ口ージョン〉

    11

  • 第 l章

    特性の把握。伝熱面でのスラッギングおよびファウリング特性の把握。報射熱伝

    達特性の把撞。シード化合物の由収技術(システム内でのマスバランス)0 シー

    ド再生技術。

    (6)高性能発電システム 長期的な観点に立ち、将来より高性能な発電シ

    ステムを実現するために次のような研究開発が望まれているo

    ① 高性能酸化剤加熱システムの開発:加熱温度の向上 (1700K以上〉、

    燃料改質などと結合した再熱システムの開発

    ② 低熱損失、高圧力高性能燃焼器の開発:高温器壁材の開発と器壁への

    熱損失の高効率回収

    ③ 高性能コンパクトMHD発電機の開発:高温壁発電チャネル材料、特

    に高温高電流密度電極材料の開発、高ホール電圧に耐える絶縁、特に電極

    絶縁の開発、器援への熱損失の高効率回収、高磁界コンパクトヂィスク発

    電機の検討

    ④ 高磁界 (10 T程度〉超伝導電磁石の開発

    ⑤ 高効率ヂィフユーザの開発

    ここで述べた各構成機器の開発現状を表 1-2にまとめた。

    12

  • 第 l章

    表 1-2 オープンサイクルMHD発電システムの要素技術開発の現状本 l

    要素技術 特性 実用目標 覧室 現在到達レベル(国;装置〉

    (発工Y抽電Pル出特仁率性) Mj場(哩;吋20--泊先 O 7.先 30 ソ ;U-254.8出 1 日;駄-1 I)

    発ネノ電レチャ 4000--8000 lpihjF)(謹AYCOMk-II) 耐久性 O 50h 然十Sカス〉〉 M;UK-25〉〉

    時間以上 430h (natS02) (寸i

    燃焼器 可決負J さ~3000 K O 321i;瀞荷主結11i??)500--2000肝li70E 41T/s jJ(i日望本4,製2鉄5j 間接加熱 7袋持 S 。1970-2320 K, O. 熱同風;U炉-02)〉

    官加熱招空器気1650 K, 15kg/s

    直接加熱向上

    25F223護主主!kII)ム対トドス分。超マグ伝ネ7導ト

    磁束密度 5--6 T 6T, 168草J額吋O 5T, 34証JC*~;U25-B

    蓄積エネルド --15 GJ 4.5T,60EJ(;散5や〉

    自収 95見以上シードザイクJV

    O --90出以(米上国;CFFF)99. 9出 (日本;融-YI,散-YII)

    再生 経済的70

    ロセス O 勝弘皆伝子持協~)

    S Ox O $1硫a幼m率(日本O先;駄-YII米) 脱 9 以上( 国;CFFF)

    環境保全 NOx 規制値以下 O 0lG2Op.p1mE以B下以(日下本・駄米ωV1C1F ) b/MBtu f), T (国;CFFF)

    ダスト O 2規2制rng種/N以rn下s以の下制御(日(本来菌-UK;C-FFF〉j

    電気学会MHD発電技術専門委員会 fMHD発電技術開発の現状J本lより転載

    13

  • 第 1

    1 -2. 2 クローズドサイクルMHD発電の意義と現状

    クローズドサイクルMHD発電には、希ガス(アルゴンまたはヘリウム)を作

    動流体とするものと液体金属を作動流体とするものがあるが、後者はその加速法

    などにまだ問題があり、現在は希ガスを作動流体とするものが注目されている。

    希ガスを熱交換器で加熱したあと、金属カリウムやセシウムの蒸気をこれにシー

    ドし、発電流路に導く。発電流路を出た作動ガスはボイラ〈蒸気タービンをボト

    ミングする場合〉かあるいは再生器(再生システムにする場合〉を通ったあと圧

    縮器で圧縮され熱交換器にもどされるo 作動流体は循環するのでクローズドサイ

    クルと呼ばれる。

    従って、元来最も適するのは原子炉と組み合わせることであるが、高温ガス炉

    のヘリウム出口温度が1000CCを超えることは核分裂生成物質のリークの問題

    につながるため困難で‘あることが次第に明らかになり、現在では高温ガス炉との

    組み合わせは考えられない。ただし、長期的にはヘリウム出口温度があがること

    も考えられ、また核融合炉では荷電粒子の持つエネルギーを利用することにより

    ヘリウム出口温度を十分高くすることが可能と思われるので長期的には原子力と

    の組み合わせが考えられるo

    化石燃料とクローズドサイクルMHD発電との組み合わせが現実的で、あるが、

    このとき希ガスの最高温度は熱交換器の最高温度で決まる。セラミック蓄熱体熱

    交換器でクリーン燃料を使用すれば 2100Kまでは可能であるといわれているo

    問題は石炭との組み合わせであるo スラグキャリオーバの条件下で、蓄熱型熱交換

    器の温度がどの程度まで上げ得るか、日ずまりを起こさないか、蓄熱体にクラッ

    クが入らないか、またそれを真空引きしたあと、アルゴンガスを流した場合アル

    ゴンに含まれる不純物がどの程度になるかなどが課題となっている。しかし、石

    炭をいったんガス化した後燃焼器に導き、燃焼ガスを熱交換器に通すのがより現

    実的と考えられているo ガス化は、発電所内で行い、ガス化炉から出た低カロリ

    ーガスは高温のクリーンアップシステムで処理されたあと燃焼器に導かれるo ガ

    ス化の過程でのエネルギーの損失をできるだけ小さくしなければならないが 10

    --2 0 %程度の損失は避けられないと考えられている。ガス化一希ガスMHD発

    電システムを図 1-2に例示した。

    14

  • 第 1章

    石灰石

    灰 分

    出力

    i DC司 AC変換器|

    凝総器

    国 1-2 石炭ガス化クローズドサイクノレMHD発電システム

    したがって、クローズドサイクルの熱効率をできるだけ大きくすることが望ま

    しく総合効率において 50%にするにはこの熱効率を 55--60%にする事が必

    要となるo

    シードした希ガスを作動気体とするときには、非平衡電離という現象を使う o

    起電力によって駆動された電流のジュール加熱により電子温度を作動気体の温度

    より高めて電離を促進させ高い導電率を得る。しかしこのとき電離不安定が起こ

    り、現実的には作動気体の導電率とホーノレパラメタを下げてしまう o 東工大では、

    この電離不安定を、シード率を 10-5程度に低くし、シード物質を完全電離する

    ことにより抑えることができ、高導電率、高ホールパラメタのプラズマを生成す

    ることが可能となっている *7。このシード率はオープンサイクルMHD発電に較

    べて約 100分の l程度であること、また非平衡電離を利用することでガス温度

    はオープンサイクルに較べ約 10000C程度低く、さらに反応性の低い希ガスを

    用いるなどの条件から、材料に関する信頼性も高いと考えられている。

    希ガスを用いたク口一ズドサイクノレMHD発電機の発電実験は、ブ口ーダウン

    装置と衝撃波管装置で行われているo フ'ローダウン装置は最初オランダのアイン

    トホーヘン工科大学 CEindhovenUniversity of Technology :以下EUTと略〉

    -15

  • 第 1章

    で熱入力 5MWの装震が建設され、ファラデー形で発電実験が行われてきた。そ

    の後、東工大で熱入力 3--6MWのディスク形発電機が設置された。

    EUTのファラヂー形発電機内の放電は、空間的に集中し、レ・わゆるストリー

    マと呼ばれるひも状の放電となっている。さらに数個のストリーマが上流から下

    流へと移動し、発電出力がストリーマの数と関係しており、シード率を下げた時

    にはストリーマの数が減少して出力が低下するo このようにEUTの実験では電

    離不安定を許容しながらもシード率を高めることによって性能の向上をはかつて

    いる。 EUTの実験では、熱入力を絶対零度基準で評価したエンタノレピ抽出律は

    1 2. 9 %を記録した*8。

    東工大のフゃローダウン装置FUJ1-1ではEUTと異なり、低シード率でシ

    ードを完全電離させプラズマの揺らぎを極力小さくし高性能のディスク形発電機

    を開発する事を目的としている。 1988年 10見に行ったD1SK-F3によ

    る実験では、熱入力を室温基準で評価したエンタルピ抽出率で 15. 6 %、出力

    密度71 MW/m3が得らている刊。

    1 -2.3 液体金属MHD発電の意義と現状

    液体金罵MHD発電には重力形の自然循環システムと自己循環形の加速ノズル

    一分離器ーディブユーザからなるシステムの二種類に大別される。重力形の自然

    循環システムについてはイスラエルのETGARシリーズの開発が進展しているo

    ETGAR-5での導電性作動流体として溶融鉛が、熱力学的作動流体としては

    蒸気が用いられるo

    蒸気は石炭燃焼ボイラでつくられ、温度3900C、圧力 30気圧である o E TG

    AR-5 はイスラエルのネゲ、7~の燐酸肥料工場の敷地内におかれ、工場の蒸気要

    求に応じて、コジェネレーション方式から電力専用方式に切り替えることができ

    るo 同システムで発生される電力は、 DCからACへ変換されイスラエルの園内

    電力系統へ供給される予定となっているo 向システムの仕様を表 1-3に示す口

    この表からも分かるようにETGAR-5では不確かさと開発リスクを避けるた

    めに動作保証がすでになされているプロセス、材料および既存の技術のみを用い

    て設計されているが、それ以後の研究開発プログラムでは種々の試みが計画され

    16

  • 表 1-3 ETGAR-5のパラメタ*1 0

    Cycle high temperature

    Steam temperature at boiler exit

    Steam generator (boiler) mass flow rate

    Cycle high pressure

    Total heat input

    Condensing mode of operation

    Cylce low temperature

    Condensor cooling water inlet temperature

    Net electric power

    AC net electric power

    Electric plant AC efficiency

    Cogeneration mode of operation

    AC nett electric power

    Steam mass flow rate

    Process of steam dekivery options

    A. Superheated steam conditions

    Mass flow rate

    B. Saturated steam conditions

    Mass flow rate

    480 CC

    390 CC

    1. 5 kg/s

    30 bar

    5.07腕

    O. 09 bar

    29 CC

    1.4 賢官

    1.3肝

    25.4鬼

    250 k習

    1. 5 kg/s

    5 bar/480CC

    1. 5 kg/s

    5 bar/152CC

    1.9均/s

    第 1

    ているo 一方、自己循環型のLMMHD(液体金属MHD)発電システムについ

    ては、二相流部で生ずる損失の低減に関して地道な基礎研究が続けられており、

    損失機構の解明、損失低減の条件や方法などに多くの知見が得られている。*11ま

    たこの形のシステムをMHD圧縮機としてプラズマMHDシステムと組み合わせ

    る新しい応用も考えられているo

    LMMHD直流発電機に固有の低電庄一大電流出力密度の対策のーっとして開

    発された誘導型LMMHD発電機が、本質的に高い流速を要求することから、液

    体金属の大きな摩擦損失を招くことが明らかになり、対策が考えられている *110

    17

  • 第 l章

    1 -3節本論文の構成

    第1章は、 MHD発電技術に関する在来の研究と、現在認識されている問題点

    を整理し、本研究の目的と意義について述べているo

    第2章では、電磁流体が従う電気場及び熱流体場の支配方桂式系を示し、それ

    らに対する数値解析手法について概説している。

    第3章では、冷電極を持ったMHD発電機に対して内部抵抗及び放電特性の観

    点から有効であると考えられている 2次元2成分の印加磁界分布形状、いわゆる

    SFC型磁界配位が理想的に実現された場合の基本特性について説明している。

    また、理想的な SFC磁界配位は、電子の数密度と磁界(の発電有効成分〉が空

    間的に相似であることが必要でため実際に発生させることが困難であることから、

    近似発生法を、超伝導電磁石を用いる場合と、通常の鍋鉄マクゃネットのギャップ

    空間に強磁性体を配置させその減磁・増磁効果を用いる場合の 2通りの方法をし

    めし、磁界計算法について説明しているo

    第4章では、電気場と熱流体場に対する 3次元解析による SFC型MHD発電

    機の電気的及び流体力学的特性に関する評価を行っている。本解析により、 SF

    C型MHD発電機は、従来型の一様磁界印加の場合に比較して、ホール効果によ

    って発生し、発電機としては無効電流成分であるホール電流の抑制、電極壁への

    熱及び電流集中の緩和、 MAT不安定性あるいは、電極境界層剥離現象の抑制な

    どの効果があることについて示した。また、一様磁界印加の場合について知られ

    ていた絶縁壁(側壁〉境界層での速度が主流部よりも速くなる、いわゆる速度オ

    ーバシュート現象が、 SFC型MHD発電機では電極境界層においても生ずるこ

    とを示し、そのメカニズムについてSFCとUFCの違いについて説明している D

    オープンサイクルMHD発電機は、クローズドサイクルの場合と異なり大型機

    ほど効率が高くなり、電磁界と流体の相互作用も強くなる D

    そこで第5章では、小型の実験機を用いて商用規模の大型機でのみ生ずるとさ

    れている強相互作用条件を模擬するため提案されている方法を概説し、その中か

    らカーボン燃焼を用いた高導電率プラズマを利用した場合の3次元解析結果につ

    いて述べているo 高導電率プラズマは、一般に高移動度プラズマとなるため、電

    18 -

  • 第 l

    極近くでのホール効果を抑制する事を目的とした SFC型MHD発電機では、通

    常の石炭・石油などの炭化水素系燃料を用いた場合よりもUFC型に較べた電気

    出力の増大傾向が強くなることが明らかにした。

    第6章では、これまで(本論文の第4章、第5章の数値計算を含め)MHD発

    電機の数値解析分野においてほとんど考薦、されていなかった作動流体の乱流特性

    を考慮、した一般化オーム則の乱流モデル化を行っているo 導出された一般化オー

    ム則より、磁界印加時には、温度勾配が定常電流を駆動しその電流に対するロー

    レンツ制動力によって温度勾配に反平行な乱れ速度成分が選択的に減衰を受け、

    その結果温度勾配に平行な定常流が駆動されることを明らかにし、電極境界層で

    の温度及び速度を減少させることを示した。さらにこの効果を支持する測定結果

    を併せて示すと共に乱れ速度に対する運動方程式を解くことにより、この定常流

    の大きさを表す式およびレイノルズ応力の減衰テンソルを導出した。このテンソ

    ルは、温度勾配がない場合に従来液体金属を作動流体として導かれた表式に一致

    することを訴した。

    19

  • 第 1章

    参考文献

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    Proc. of 26th Symp. Engng. Aspects of MHD, 2. 1. 1(1988)

    * 11 F. Joussellin,: "Liquid自etal抵HDPower Generation 1n France, H

    第 10回エネルギー利用と誼接発電シンポジウム,北海道大学, 243(988)

    時 20-

  • 第 2章

    第2章 電極流体,=対する支配方程式系

    21

  • 第 2章

    2 -1節緒日

    本章では、本論文で使用する記号およびMHD発電チャネル内を流れる弱電離

    プラズ、マ流体現象を記述する電気および流体場に対する支配方程式系について示

    し、それら方程式系に対する解析手法について概説するo

    22 必

  • 第 2章

    2-2節記号

    2 -2. 1 シンボノレ

    A van Dr est定数、 26

    磁界によるレイノルズ応力の減衰の比例係数

    熱流束の補正関数

    B 磁束密度、 [TJ

    β : ホーjレパラメタ (μeB)

    流体魂の運動の特性時間の比

    Cf 摩擦係数

    C 乱流モデルの定数

    C1=1.44

    C2=1.92

    CD=O.09

    C =5.5 (なめらかな壁面の場合〉

    c 比熱、 [J/kg/KJ

    D v a n D r i e s tの減衰関数

    乱流減衰関数

    E 電界ベクトノレ、ーマ φ、 [V /mJ

    E e x p (κC)

    e 電荷素量、1.6022xl0-19 [CJ

    G G-ファクタ

    r 比熱比、 cp/ c v

    f 壁面からの距離、 [mJ

    Ha ハルトマン数、 (H a 2=σB 2L2/μ)

    h エンタルピ、 [J/kg]

    ε : 誘電率、 [F /mJ

    全エネルギー密度=ρu2/2 +ρCvT[J/m3J

    内ペ

    unJU

  • 乱流エネルギーの散逸率、 [W/m3J

    J 電流密度、 [A/乍n2J

    K 負荷率=之 Ey/uB z

    k 乱れのエネルギー[J /k g J

    κ : カルマン定数、 0.41

    x 磁気相互作用パラメタ CStuart数〉、 Ha 2/R e

    Q 混合距離、乱れの空間スケール [mJ

    M 分子量 [kg/kmo1J

    m 粒子の質量、 [k g J

    m 質量流量、 [kg/sJ

    μ : 移動度、 [l/TJ

    粘性係数、 [kg/m/sJ

    透磁率、 [H/mJ

    n 粒子数密度、 [個/m3J

    ν : 動粘性係数、 [m 2/ s J

    衝突周波数、 [ 1/ s J

    p プラントル数

    p 圧力、 [P aJ

    R 普遍ガス定数、 83 1 4. 4 [J /K / k m 0 1 ]

    R ガス定数、 R/M

    Re レイノルズ数、 (無次元量 :UL/ν 〉

    ρ : 質量密度、 [k g/m3J

    電荷密度、 [C/m3J

    St スタントン数

    a 導電車、 [S/mJ

    乱流モヂルの定数(プラントル数〉

    T 温度、 [KJ

    t 時間、 [ s J

    τ : 応力、 [P aJ

    平均自由時間、 [ s J

    24

    第 2

  • 第 2章

    U 拡散速度、平均速度の軸方向成分

    V 速度ベクトル、 [m/ s ]

    V y-z断面内の速度ベクトル、 [m/ s ]

    U 速度の X成分、 [m/ s ]

    V 速度の y成分、 [m/sJ

    W 速度の Z成分、 [m/ s ]

    X x-座標、 [mJ

    y y一座標、 [mJ

    Z z一座標、 [mJ

    2 -2.2 添字

    C 電荷(electriccharge)

    e 電子(electron)

    乱れの散逸率

    摩擦(friction)

    H 重粒子(イオン+中性粒子)

    イオンCion)

    k 乱れのエネルギー

    層流(laminar)

    n 中性粒子(neutralparticle)

    p 壁画に隣接する考察点

    定圧変化

    S 粒子の種類、 (s = e 、 i、n)

    乱流(turbulent)

    t r テンソルの転置(transpose)

    V 定積変化

    w 壁面(wall)

    X x一成分

    y y-成分

    -25

  • Z Z一成分

    乱れ成分

    時間平均、アンサンプル平均

    + 無次yEイじ(摩擦速度基準〉

    y-z2次yE量

    * 摩擦速度

    2 -2.3 省略語

    AEDC 主rnold~ngineering Qevelopment center

    ANL 主rgonneNational 1aboratory

    AVCO 主vco~verett~esearch 1aboratory

    C C MH D: Closed-Cycle MHD

    CD 1 F component Qevelopment lntegration Eacility

    C F F F Coal Fired Flow Facility

    C OM Coal Oil担ixture

    DO E Qepartment Qf ~nergy

    E C A S :Energy Conversion主lternative~tudy

    E S P ~lectro~tatic frecipitator

    E T L Electrotechnical Laboratory

    HP D E ~igh ferformance Qemonstration ~quipment

    L MMH D: 1iquid Metal盟Q

    M A T 1 Magneto豆erolhermallnstability

    MH D :EagfletohydrodyaIIlies

    o C MH D: Qpen-Cycle盟2S F C :Shaped B-Eield Configuration

    UF C Uniform B-Field Configuration

    UT S 1 Qniversity of Iennessee ~pace lnstitute

    26

    第 2章

  • 第 2

    2-3節電気場の支配方程式

    MHD発電チャネル内の電気場を記述する支配方程式系*1は、作動流体が弱電

    離ガスプラズマである時には、以下のようになるo

    一般化オーム則(GenerlizedOhrn' s law) (A p p e n d i x -A参照)

    J =σ(E+VxB)

    T......... ille n 川"一μeiJxB-'Vpe +ーでーす了(-::-) ~

    v u ~ ~l e (2 -1)

    ここでスカラ導電率σは、次式で表される。

    凸しニUF

    n一m一

    一日-

    て一

    eu一m

    n一一一σ

    nee μe (2 -2)

    マックスウエノレ方程式系 (Maxwell'sequations)

    マxE oB o t

    (2 -3)

    。EマxB = μo J +μ。ε。一一一

    δt

    -ι(ρC) +マ・ J= 0 o t

    (2 -4)

    (2 -5)

    ここでオープンサイクルMHD発電機で成立する次の仮定をおく。

    ① プラズ、マは電気的に中性 (ρC士宅 0)であるD

    ② 変位電流及び電子の圧力勾配による電流をを無視する。

    ③ 印加磁場は、時間的に一定であるo

    ④ 磁気レイノルズ数は lに比べ十分小さく誘導磁場を無視する。

    ⑤ 電気的な時定数は、熱流体場の時定数に比べ十分短い。

    このとき、電気場の支配方稜式系 (2-1)""' (2-5)は、以下のように表わ

    される。

    27

  • 一般化オームの式

    J 口 σ(E十 VxB)-μe J x B

    定常マックスウエル方程式

    マxE = 0

    または

    E = ーマφ

    電流連続の式

    ヤ.J 口 O

    2 -3. 1 無限分割電極近似

    第 2章

    (2-1')

    (2-3')

    (2-5')

    ファラヂー結線MHD発電機において、流れ方向 (x方向とする〉に連続した

    板状の 1対の電極構造を採用した場合、連続電極ファラヂー型MHD発電機と呼

    ばれる。この場合には、 X方向の電界(ホール電界)E xは、電極によって強制的

    に短絡されることになり E亥 =0の条件を課すことになる(厳密には電極表面だけ

    でEx詰 Oであるが近似的には流路内でほぼ成り立つとしても良しか。この場合に

    は、電極板を帰路とする無用の循環電流が発生し、発電効率を低下させる *2こと

    になるo

    そこでその対策として、流れ方向に電極を分割し、できるだけホール電流を抑

    えようとする電極構造が一般に採用され、分割電極ファラデー型MHD発電機と

    呼ばれる o この電極分割(電極間高さに対する lつの分割jされた電極の流れ方向

    の幅)を無限に細かくしていったときの極限を無根分割電極近似と呼ばれる D こ

    の近似のもとでで.は、 ホ一/ルレ電界Ex1ま断面内ででで‘噂一一一白-山一-山一白-

    実の有限分割電極でで‘も、電極のごく近傍を除いてほぼ成立するo 従って本研究で

    のy-z面内での 2次元解析および放物近似 3次元解析では電気場に対し、無

    限分割電極近似を採用している。

    そのとき電気場の支配方程式系 (2-1)--(2-5)は、ポテンシャルゆを

    用いて次式で表される。

    28

  • 第 2章

    a I _ i T:' 1._ n .•. n '¥ I _ ( aゆ」乙ー |σyx(Ex+vBz-wBy)十 σ (一一一-u B z) a y l V yx ¥..L.IX I V .LJ Z VV .LJ y/ I V yy ¥. a y

    δφ σyz(-zz十 uB y)

    ( T:' 1._ n .._ n '¥ ( aゆ+一一 |σzx(Ex+vBz-wBy) +σ (一一一-u B z) l V Z x ¥. ~ X I V ,J...I Z Y" ,J...I Y / v z y δ y

    oφ zz (-8 ;+uBy) 。

    (2 -6)

    ここで、 σijはテンソル導電率の ij成分(i、 ]=x、y、z)であり、磁界

    がyおよび Z成分を持っときは次式で表されるo

    σ {σ-----

    1 + s y;!+β;!

    1βz βy

    β1+βY2βyβz (2 -7)

    -βyβz βy 1 +β2

    29

  • 第 2章

    2-4節熱流体場の支配方程式

    MHD発電チャネノレ内の乱流状態にある熱流体場を記述する支配方程式系は、

    以下のようになる。

    質量保存則 (Massconservation law)

    。ρ一一+マ・ (ρV) = 0 o t

    運動量保存則 (Mometumconservation law)

    (2 -8)

    d V TT t-r TT .,...., /' "¥. ( """"" TT I /' ""'" TT"¥. tr) ρ7τ+ρV'¥lV ーマ.t (μl十 μt) {マV+ (¥l V) "J.} 1

    = -¥l p 十 JxB (2 -9)

    エネルギー保存則 (Energyconservation law)

    oh r /111. I1h ....., I ρ一 +ρ V. \l h- \l ・~ (と+ ~t) ¥lh ~ ot .,... v 1 'P1' Pt/ "'1

    = V ・マ p + J 2/σ + (μ1+μt)φ' (2-10)

    ここで (μl十 μt)①'吉(tは、散逸関数Cdissipationfunction)とよばれ、軸方

    向の速度勾配が、断面内の変化に比べ小さいとき、次式で表わされるo

    i 川 V,Z . /'aw,z I 川 V . aw,z (t' = 2 i (十一〉臼+ (モ.-!!..)'"~ + (長一+モ子〉臼

    av az az av

    o u ,,2. / o u ,,2 十 (7γ〉十 (7τ〉

    状態方程式 CEquationof state)

    p = ρ5TzρRT

    2 -4. 1 準一次元近似方程式系 (Appendix-B参照〉

    -30

    (2 -1 1)

    (2-12)

  • 第 2章

    N-S方程式系に対して準一次元近似を行うと

    (2-13) 。ρuoA A o x

    。(ρu) , ox

    質量保存則

    + 。ρδt

    (2-14)

    運動量保存則

    。(ρu)δ 〈ρu2十 p)ρ U 2 a A 十一一一一一 十 f= Q ot Ox 'A Ox '''Y

    エネルギ一保存則

    {(ε+p)u},(ε+ p)uoA 一一一 +q=Q(2-15)

    o x A o x 2U

    3↑

    tu一ふ

    L

    Oスσ

    εは、それぞれチャネル断面積、摩擦損失、熱損失、全エネ

    ルギー密度を表す。詳しくはAppend x-Bを参照。

    放物近似三次元方程式系

    q、f、ここでA、

    2 -4.2

    MHD発電ダクト内の流れ場は、非常に方向性が強く衝撃波や境界層の剥離現

    象が生じない条件のもとでは、近似的に下流の影響が上流へ伝わらないとして、

    軸方向の二次微分を無視する、いわゆる放物近似刊本4吋吋刊を用いることができ

    る。この仮定は、流体場の軸方向 (x方向〉の変化が断面内変化に較べ十分小さ

    いことに対応しているo

    このとき、定常流れ場の場合に熱流体場を記述する支配方程式は以下のように

    放物イじされるo

    (2-16) 。(ρv) 質量保存則

    去(ρu)ザ

    BEE構内。

    運動量の式

  • ρu計十ρV'V'U-ふ (μeffV'U)

    dp z 一百三十 JyBz-JzBy

    ρU~~+ρV' 'V V- V'' μe f f {マ V+ (V'V) tr} I 。x

    =-V'p+ (JxB)

    エネルギー式

    ρu宍+ρ 十.V'h-V'. {(~l+~t) マ h}Pl . Pt

    -72 +u・マ p十φ

    第 2輩

    (2-17)

    (2-18)

    (2-19)

    但し、 pおよびpはそれぞれ断面内の平均圧力 (p(x):xのみの関数〉、およ

    び局所圧力 (p(y、z): yおよびZの関数)であるo また、内のついたベクト

    ル量および演算子は (y、z)面内の 2次元量であることを表すものとする。

    たとえば、

    V = 《 δ δ

    {O v w} tr、マ={O一一一一)。y 8 z 本研究では、解析手法としては、 y・-z断面内では三角形一次要素を用いた有

    限要素法、軸方向には、クランクーニコルソンによる陰解法を用いた。これら解

    析手法については、 2-6節で詳しく述べるo

    32

  • 第 2章

    2-5節乱流モヂノレ(turbulencemodel)

    舌し流現象を解析することは、層流現象に較べその工学的重要性は格段に大きい。

    しかし、その本質的な三次元非定常性のため現在のスーパコンビュータを用いて

    も完全な現実的正当性(あるいは妥当性〉を持ったモデルは存在しない。この理

    由は、現実的な乱流(の本質的な〉解析に必要な記憶容量や計算速度i品、ずれも

    現在利用できる計算機の能力より何桁も高し1からであるo

    Launder and Spalding*8によれば良い乱流モデルとは、っき、の 2つの条件を満

    たすものである。

    ① 十分な普遍性(universality)を持つこと

    ② そのモヂノレを構築あるいは使用に当たって、あまり複雑(complex,

    complexity)で‘ないこと

    ここで、普遍性とはそのモデルで使用される経験的な定数および関数が個々の流

    れによらずただーとうり (asingle set of empirical constants and functions)

    であることである。また複雑さは、モデルが扱う微分方程式の数であり、 N本の

    微分方程式を扱う乱流モデルはN方桂式モデルと呼ばれるo 一般に①と②の要請

    は相反する条件となる。

    現在最もよく使われる乱流モデルは、簡単な流れの場合は、プラントルの混合

    距離仮説に基づく混合距離モヂル (0方程式モヂル)および2方程式k-ε モデ

    ルがある。

    2 -5. 1 混合距離モデル叫*lO*ll(mixinglength model)

    乱流粘性 11tの次元は(速度)x (長さ〉であり、一般的には乱れのスケールで表

    現しなければならない。簡単のために、この乱れのスケールを平均流特性に関連

    づけて、乱れの輪送方程式を使う代わりに代数方程式で与えるのがゼロ方程式モ

    円べ

    unペU

  • 第 2章

    デルであり、 Prandtlによる混合距離仮説は、最も有名で‘あるo

    流れの特性長さを gとし、舌しれ特性時間を平均流特性時間(loU/ofl)-lに

    比例すると考えれば、乱れ特性速度は Q2 I o U/δflとなるD その結果、乱流

    粘性の表示が次のように求まる。

    νt = Q21~~1 (2-20)

    混合距離Qは、流体壊が初めの運動量を保って移動すると方向距離として考え

    ることができるo 式 (2-20)では、 Qだけを与えればνtが求まり、境界層や

    自由乱流などいろいろな流れ形式についての Qの経験式が出されている o

    壁境界層での標準的な混合距離表示は次のようになる。慣性底層では Qは5に

    比例するとして Q=κどとおく。壁面では粘性のために乱れは消失し Q→ Oとな

    るから、壁に近い粘性底層、移行層では分子粘性による補正を加える。このよう

    な内挿でよく使われる Qの標準形は、 VanD riestC1956)による次のようなもの

    である。

    Q = κどG(ど〉 (2-21)

    G(ご〉 z1-exp〈-i〉 (2-22) ここで、 κ=0.4 1 はKarman定数で-あるo 指数関数部は減衰関数と呼ばれる

    もので、箆単な境界層についてはA=26であるが、物性値変化、表面粗さ等の

    効果を取り入れたいろいろな関数が提案されているo外層では Qを第断層の淳さ

    3に詑例するとして Q=Cδと与えるか、あるいは νtを一定値として与える。

    乱流であっても壁面に非常に近い領域では層流底層と呼ばれる痛流粘性が支配

    的な領域 (O::;:f+孟--3 0)での補正関数を表している。なめらかな壁に対して

    はA+= 2 6程度であり、粗V¥壁に対しては壁粗さをム 5とするとA+→ Oとなり、

    混合距離は、

    Q=κ(ど+ムど〉 (2-23)

    となる *l20

    34

  • 第 2章

    C ebeci -S mi thモデル

    壁境界層に用いるゼロ方程式モデルではCebeci-Smithモデ、ルが最もよく整備

    されている。このモヂルでは低レイノルズ数効果、遷移、吹き出し、圧力勾配、

    表面曲率等の経験補正を含み、定常境界層の他管内流、非定常境界層にも使用す

    ることができるo

    このモデルは壁近くの内層(添え字 i)では次のような混合距離表示を用いて

    いる。

    2 d U (νt〉iz=Q2--7t r 7

    d f (2-24)

    'Ytr = l-exp (-HCX-Xtr)J主) (2-25)

    X t rは遷移開始点を示し、係数日はRe Xtrを遷移レイノルズ数として

    H = 1 ~xUe:Re 町一 1 ・ 34.一一 I1 200ハ ν2.L'-

  • 第 2章

    7 一1

    f ,6 1 + 5. 5 (γ) c: 0

    (2-29)

    Aは次式に示すように、強い圧力勾配p+および吹出しVw+の効果が計算できる

    ようになっているo

    A 226 -N

    (2-30)

    N zJ[fL:{1-e xp(118vJ〉}+eXP (118vw+〉]

    (2-31)

    U一x

    d一d

    心一

    μp bh

    一一+ w

    v

    (2-32)

    P += 0、Vw+=0の場合にはN=lとなってAはVanDriestの原式に帰着す

    る。

    乱流粘性の外層公式は速度欠損形式を用いた次の形で与えるo

    (νt) 0 口 αIJ (Ue-U) d f I rtrr (2-33) .0

    速度分布に極大がなく Ue-Uがつねにi主であれば積分はUeδ*となって

    (νt) 0 =αUe δ本 rt r r (2-34)

    とおける。 δ*は排除厚さを表す。またαは経験定数で、 Ree孟 50 0 0ならば一定値0.0168となるo 。は運動量厚さを表す。 αが小さいときは、低レイノ

    ルズ数効果をいれた次式を用いる。

    5一H

    5一lT

    Ti一nuh

    no n0

    1EムハUハυ一一α

    (2-35)

    11 = 0.55 [Q-exp (-0.243211/2-0.29821) ]

    (2-36)

    ただし、 Reθ>425、21 = R ee / 4 2 5 -1

    36

  • 第 2章

    内層と外窟の境界はいの連続性から判断し、壁面ど =0から計算を進めて

    (νt )が (νt)。よりも大きくなったときに外層の公式に切り替える o

    このようにCebeci -S mi thモデルは低レイノルズ数効果、遷移、圧力勾配、壁

    からの吹き出し等の効果を含み、 3次元境界層、非定常境界層等の広範園の流れ

    計算に用いられている。

    2 -5.2 高レイノ jレズ数kー εモデル*13*14*15*16*17

    k一方程式 : 乱れのエネルギー

    ρV ・マ kーマ・(丘とマ k) = G-ρε σk

    σk 口1.0、 G =μt φ'

    ε一方程式 : 乱れの散逸率

    ρV・マ εーマ・(丘マ ε) =CIGt一 CMt2σe

    (2-37)

    (2-38)

    ここで、 σ=1. 3、 C1 = 1.44、 C2 1.92である。

    乱流粘性μ(Prandtl-KolmogorovLaw)

    μ= CDρ与2 、 CD = 0.09 (2-39)

    k-ε モデルでは、このように乱流粘性係数を与えるためにkとεに対してモ

    ヂル化された 2本の輸送方程式を解くことになる。この方程式系は靖円型偏微分

    方程式であり N-S方程式と共に境界条件を与える必要があるが、この(高レイ

    ノルズ数)k一εモデルは流体がいたるところ乱流状態になっている場合に成立

    する微分方程式であり、壁面近くでの屑流底層では成立しない。従って、境界条

    件として壁面での条件を用いても意味がない。そこで通常は壁面近くでは低レイ

    ノルズ数k-ε モデルを解き高レイノルズ数モデルと接続するかまたは、いわゆ

    る「壁関数J*18を用いて壁面近くでの非常に細かいメッシュを用いた計算を回

    37

  • 第 2章

    避する、のどちらかが利用されるo いずれの方法でも計算モデルの予測精度は大

    差が無いとされている *130 従って本研究では、壁面でのメッシュ数を多くしな

    くとも良い高レイノルズ、数モデルに境界条件として壁関数を用いる方法を採用し

    た。

    境界条件 (Appendix-C参照〉

    ご+>3 0 (トとよめ なる点(壁面からの距離)ねこ対してνi

    kp= U *2

    C n1/2 D (2-40)

    qu

    *

    u

    (2-41) εp= κど

    Up= T I ny+C

    一 u* 1 n κ

    (E f +) 対数(控〉法刻 (2-42)

    ただし

    κ= 0.4 1

    C = 5.5

    E = exp (κC)

    カルマン定数

    なめらかな壁面のとき

    Upκμfp十壁摩擦(応力〉 (2-43) τwzEll n(EEp+〉ム

    U本 ココ (r~ ) 1/2 :摩擦速度 (2-44) ρ

    q 一 ρu* (hp-hw) :熱流束 (2-45) 可四時~ t 1 n (E f p +) + A (P t、P1) κ

    ここで、 Aは、層流底層および緩和層内の伝熱抵抗と関連する温度の対数分布則

    の定数項を表し次式で表される *190

    -38

  • 第 2章

    A(Pt, Pt) = 5.0 {(手)O. 75_ 1 }

    x {1+0.28EXP (-0.007全)} (2-46)

    乱流モデル定数のまとめ

    P t = 0.7 層流プラントル数

    P t = 0.9 乱流プラントル数

    σk = 1. 0 乱流エネルギーのプラントル数

    σ= 1. 3 舌し流エネルギーの散逸率のプラントノレ数

    C1 = 1.44

    C2 = 1.92

    CD = 0.09

    κ = 0.41 カルマン定数

    C 口 5.5 なめらなか壁面

    B = e x p (κC)

    ここで注意しなければならいのは、これらの経験定数は、磁界が存在しない場

    合に得られた値でありMHDプラズ、マに適用できるかどうかは厳密には調べられ

    ていないことである。磁界が存在する場合の乱流モデルに関しては6章で議論す

    る。

    39 叩

  • 第 2章

    2-6節数値解析手法*20*21

    数理解析学においては、物理現象は、一般に数理モデルで与えられる。数理モ

    ヂルとしては方程式が用いられることが多い。さらにこの方程式は偏微分方程式

    の形をとるのが一般的である。本研究で扱う MHD発電チャネノレ内現象も 2階ま

    たは l階の(二次元または三次元〉偏微分方程式系であるo そこで本節では、本

    研究で扱う偏微分方程式の数値解析手法として採用した有限要素法を中心に微分

    方程式とその近似解法について概説する。

    流体力学・熱伝導の数値解析は、もともと差分法 CFiniteDifference Method

    :FDM)の独壇場であった。一方、有限要素法 CFiniteElement Method :FEM)は

    固体力学や構造解析の分野で発展した数値解析法である D 有限要素法がはじめて

    工学上の問題に用いられたのは 1950年代の米国の航空機設計技術者たちによ

    ってであった。その後、有限要素法が変分法の近似解法への応用、すなわちリッ

    ツ法の考え方と結合されるに至って国体力学・構造解析への応用は大きな飛躍を

    遂げた。 1960年代の後半からは、この有限要素法が流体力学・熱伝導あるい

    は電磁界問題の解析手法としてその有用性が認められるにいたったが、これは偏

    分法の拡張としての重みつき残差法を基本とする近似解法、すなわちガラーキン

    法を代表とする近似解法が有限要素法と結合されたことが大きく貢献している。

    たとえば、流体力学において最も重要なナヴィエーストークス方程式には汎関数

    が存在しないことが知られており、このことから変分法に基づく近似解法である

    リッツ法を用いることが不可能であった。しかし、重みつき残差法に基づく近似

    解法であるガラーキン法を用いることにより有限要素法の定式化が可能となった。

    ここで差分法と有限要素法の比較をしておく o 両者に共通することは連続体を

    縮かく分割(離散化〉し多数の独立点における物理量を変数とする(多元代数)

    連立方程式を解くことにより離散的に連続体中の物理量を求めようとする事であ

    るo 差分法では支配方程式に現れる微分量を近似するのに独立点鵠の物理量の差

    を用いている。すなわち、微分方程式の未知関数に関するテイラー展開近似用い

    て離散化が行われているo 一方の有限要素法では小さく分割された要素内で適当

    に表現された近似内挿関数に対して誤差を最小にするという手法によって、有限

    40

  • 第 2章

    要素方程式を導出しているo すなわち、変分法あるいは重み付き残差法を用いる

    離散化が行われるo また、差分法では原則として直交格子点を採用せざるを得な

    いのに対し、有限要素法では三角形などの任意形状を要素として採用することが

    できる。このことにより有限要素法によれば任意の境界形状を表現できることに

    なるo さらに、差分法では取扱いが不便なノイマン裂境界条件(変数の微分量が

    指定される境界条件〉についても、有眼要素法では自然境界条件として容易に取

    り扱うことができる。また、有摂要素法では近似内挿関数を任意に選択できるこ

    とから与えられた物理問題に対して最適な選択が可能となってし、る。

    有限要素法は、以上の議論から分かるように一般に汎用性に優れているo 一方

    の差分法は、強い非線形問題(たとえば乱流や衝撃波など〉には一般に、計算時

    間などの点からも有利であるといわれているo

    最近注目を集めている境界要素法*22 CBoundary Elernent Method :BEM)は、重

    みつき残差法のー形態として発展してきでいるが、この方法は古くから微分方程

    式を解くためのスタンダードな方法の一つであった積分方程式を用いた定式化に

    基づいている。積分方程式は、解析対象領域の境界だけで記述されるので領域全

    体を扱う FDMやFEM'こ較べ扱う空間の次元が1次元下がるため解くべき微分

    方程式によっては非常に有効な解析法となっている。

    これらの他、 MHDチャネル内の電気現象を等価回路を用いて解析する手法も

    確立されている *23*240

    2 -6. 1 有限要素法の特徴本 25

    本研究で用いた有限要素法の特徴を差分法との比較において列挙すれば以下の

    ようになる

    1 )差分法は基本的に直交格子を用いて表される領域を対象としているのに対し

    て有限要素法では任意形状の有限要素に着目した解析法である。

    このことは解析手法そのものの特徴であって、得られた数値解の安定性や収束

    性についての差異が生ずるという性質ではない。しかし、この違いにより 2)以

    降の特色が生じる。

    41 -

  • 第 2章

    2)用いる近似法として蓋分は誼接的近似であるのに対して、有限要素法は簡

    接的近似である。

    差分法は、基礎式に含まれる微分を直接差分で置き換えることにより近似式を

    得るのに対して、有限要素法では基礎式を一旦重み付き残葦方程式に変換しこれ

    を近似するという間接的方法を用いているo このように、有限要素法では多少複

    雑な手順を踏まなければならないが、重み付き残差法定式には微係数で与えられ

    る境界条件を自然に満足させることができ、またエネルギー原理など物理的意義

    づけを行うことができるo

    3)差分法は、原則的に規則的に配置された正方格子を前提としているが、有

    限要素法では任意配置の領域分割(点〉でよ~ )0

    このことは、有限要素法は有限要素に着目してから全体方程式を作成すること

    と、重み付き残差式という間接的手法を用いることの両方に起因しており、差分

    法との本質的な差異となっているD この特徴によって、実際の問題を解く場合た

    いへん都合の良い性質となっている。すなわち、現象が複雑に且つ急激に変化す

    る領域は分割を細かくし、変化の緩やかな領域では粗くすることが容易にできる。

    差分法の場合には最も急激に変化する部分に合わせて分割!隔を決めるか、バウン

    ダリフィット法による領域変換を用いなければならない。これらにより、有限要

    素法では分割点の総数を減少させることができ、計算機による計算時間の短縮・

    記憶容量の節約を容易に行うことができるo

    4)有限要素法で扱い得る境界条件は、差分法に較べて自然に代入することが

    できる。

    たとえば、微係数で与えられた境界条件や、斜めに傾斜した境界の処理につい

    て、差分法では特別に近似式を作成しなければならないが、有限要素法では重み

    付き残差方程式の自然境界条件として処理される場合が多く、特別な処理を必要

    とせず境界条件を代入することが可能となっているo

    5)有限要素法では汎用プログラムの作成が容易で‘あるo

    ゆ 42

  • 第 2章

    境界条件の代入に対し、特別な処理が不要であり、また分割点の選択が任意で

    あることから入力データの作成だけで処理される汎用プログラムの作成が可能と

    なる。

    6)有限要素法によって離散化された方程式は、車交格子分割j点に限定すれば、

    差分法の離散化方程式に一致するo

    実際に等間隔二次元問題で、等間隔4角形要素を用いて、構成した有限要素方

    程式は、差分式に一致するo しかし、分割が不規射になると普通の差分式とは十

    分な対応が付かない変則的なものが得られることが多い。この意味で、有限要素

    法による方程式は不規則な格子に対しでも差分近似式に対応するものを求めるこ

    とを可能にした手法といえるo

    2 -6.2 時間積分法

    N-S方程式を時間依存で解く場合や、放物近似を採用する場合には方程式は、

    放物型となり、一般に安定な「時間接分」法を使用することが必要である。本研

    究では、 MHD項を含む定常N-S方程式を軸方向に放物化し、軸方向を時間輸

    のように扱い「軸方向」積分法としてクランクーニコルソン法を用いた。以下で

    は「時間積分法Jについて概説する。

    いま、非定常問題(あるいは楕円型方程式に放物近似を行った場合)に対して

    有限要素法(あるいは差分法でもよしサを適用し全節点についてたてた方程式を

    次のように表す。

    [MJ {u} + [SJ {u} = {b} (2-47)

    ここで、 uは解を求めるべき未知最であり、 ・は時間微分を表す。

    強制項b=Oの時、この式の時間積分法として、以下の方法がある。

    ω43

  • 第 2章

    1. 8法(陰解法)

    (~一 [M] 十 8 [S]) {Un+1} = (A1.L [M]一(1一θ)[S]) {un} ムt ムt

    (2-48)

    ここで、 0

  • 第 2章

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