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1035 紙 パ ル プ 製 品 のLCA の た め のLCI試 算 方 法 王子製紙株式会社 製紙技術研究所 仲山 伸二, 矢 口 時也 The LCI Calculation Method for LCA of Pulp and Paper Products Shinji Nakayama and Tokiya Yaguchi Pulp & Paper Research Laboratory, Oji Paper Co., LTD. 仲山伸 矢 口時也 We have been investgating about life cycle assesment (LCA) of pulp and paper products. In this in- vestigation, we have been using to the caluculation of life cycle inventory (LCI) data for LCA from our mill operation data, our laboratory research data and the reference data. In this paper, we introduced firstry, some LCI data from reference literatures, and secondary, about our calulation method of accu- mulation from practical mill operation data, laboratory research data and some reference data. Finaly, we compared with LCI data about pulp and paper products of literatures and our caluculation results. In this comparison, we found there were neary equal results by our calulation method of accumulation and other methods. Keywords : LCA, life cycle assessment, LCI, life cycle inventory, energy, CO2, NOx SOx, pulp, paper, products 分類: X2紙パ ルプ産 業環境 般, Z2紙パ ル プ産 業 一般 1. 緒 地 球環 境保 全 の意 識が 高 ま り,「紙 パ ルプ 製 品が, ライフサ イクルでどのような環境的負荷を与えている か,紙 パ ルプ製 品の環境 負荷 の デー タを公 表 して欲 し い 」 とい う 関 心 が 増 加 して きて い る 。 各 種 工 業 製 品 の 環境負荷を的確に評価する方法 として,製 品原材料の 入 手か ら廃 棄,回 収,再 生にいたるすべての工程での 環 境 評 価 をす る ラ イ フ サ イ ク ル ア セ ス メ ン ト(LCA) 王法 が 開 発 さ れ つ つ あ る 。ISO 14040シ リー ズで国 際 標 準 化 さ れ て い る が,個 々の 産業 のLCAに つ いて ど のように積算 して,ど う評 価 す る と い う詳 細 に つ い て は,こ れ か ら 整 備 され つ つ あ る状 況 で あ る 。 紙 パ ル プ 業 界 で も,経 済 産 業 省 の 指 導 の も と,日 本 製 紙 連 合 会 が 中 心 に な り,紙 パ ル プ 製 品 のLCAを 算 出するための統 一基 準 が作 成 され よ うと してい る。 1970年 に 米 国 で 各 種 飲 料 容 器 の 資 源 消 費 と環 境 負 荷 を比較 調 査 した こ とにLCAは 始 ま り,プ ラス チ ッ ク や 洗 剤 の 環 境 負 荷 が 研 究 さ れ た1)。1990年 になって LCAが,製 品 の 環 境 評 価 の ツ ー ル で あ る こ とが 認 識 さ れ る よ う に な て き た 。 我 が 国 で も,1979年 に科学技 術庁資源調査会か ら,「衣 ・食 ・住のライフ ・サ イク ル ・エ ネル ギー」 が 報告 され2),生活 金般 に わ た る製 品のエネルギー評価が行われている。紙パルプの製品 2002年7月 111

紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

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Page 1: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

1035

技 術 報 文

紙パルプ製品のLCA  のためのLCI 試算方法

王子製紙株式会社 製紙技術研究所 仲山 伸二, 矢 口 時也

The LCI Calculation Method for LCA of Pulp and Paper Products

Shinji Nakayama and Tokiya Yaguchi

Pulp & Paper Research Laboratory, Oji Paper Co., LTD.

仲 山伸 二 矢口時也

We have been investgating about life cycle assesment (LCA) of pulp and paper products. In this in-

vestigation, we have been using to the caluculation of life cycle inventory (LCI) data for LCA from our

mill operation data, our laboratory research data and the reference data. In this paper, we introduced

firstry, some LCI data from reference literatures, and secondary, about our calulation method of accu-

mulation from practical mill operation data, laboratory research data and some reference data. Finaly,

we compared with LCI data about pulp and paper products of literatures and our caluculation results.

In this comparison, we found there were neary equal results by our calulation method of accumulation

and other methods.

Keywords : LCA, life cycle assessment, LCI, life cycle inventory, energy, CO2, NOx SOx, pulp, paper,

products

分類: X2紙 パ ルプ産 業環境 般,  Z2紙 パ ル プ産 業 一般

1.  緒 言

地 球環 境保 全 の意 識が 高 ま り,「紙 パ ルプ 製 品が,

ライフサ イクルで どの ような環境 的負 荷 を与 えて い る

か,紙 パ ルプ製 品の環境 負荷 の デー タを公 表 して欲 し

い」 とい う関心 が増加 して きて いる。 各種 工業 製品 の

環境 負荷 を的確 に評価 す る方法 として,製 品原 材料 の

入 手か ら廃棄,回 収,再 生 にい たるす べ ての 工程で の

環境 評価 をす る ラ イフサ イク ルア セ ス メン ト(LCA)

王法 が 開発 されつ つ あ る。ISO 14040シ リー ズで国 際

標 準 化 され てい るが,個 々の 産業 のLCAに つ いて ど

の ように積算 して,ど う評価 す る とい う詳 細 につい て

は,こ れ か ら整備 され つつ あ る状 況 で ある。

紙パ ル プ業 界で も,経 済 産業 省の 指導 の もと,日 本

製紙 連合 会 が 中心 に な り,紙 パ ル プ製 品 のLCAを 算

出す るた めの統 一基 準 が作 成 され よ うと してい る。

1970年 に米 国 で 各種 飲 料 容 器 の 資 源 消 費 と環 境 負

荷 を比較 調 査 した こ とにLCAは 始 ま り,プ ラス チ ッ

クや洗 剤の 環境 負荷 が 研 究 され た1)。1990年 に な って

LCAが,製 品 の環 境 評価 の ツー ルで あ る こ とが 認 識

され る よう にな て きた。我 が 国 で も,1979年 に 科学 技

術 庁 資源 調 査 会 か ら,「 衣 ・食 ・住 の ラ イ フ ・サ イ ク

ル ・エ ネル ギー」 が 報告 され2),生 活 金般 に わ た る製

品のエ ネ ルギー 評価 が行 わ れて いる。 紙パ ル プの 製品

2002  年 7 月 111

Page 2: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

1036 仲 山 伸 二, 矢 口 時 也

の 関連で は,再 生 繊維 の原 料 と しての 溶解 パル プ,図

書,新 聞につ い てのエ ネルギ ーが試 算 され お り,日 本

で の紙類 のLCAの 先駆 けの1つ とい え る。 この 後,

(社)化学 経 済研 究所 か ら,紙 製 品 に関 して は,紙 ・板紙

の製造 エ ネ ルギ ー,紙 容器,ク ラフ ト袋,段 ボ ール箱

の外装 ライ ナー,中 芯 原紙 につ い てエ ネル ギー評 価 が

行 われ た3)。プラ スチ ック処 理促 進 協 会 か らは,紙 ト

レイ,ク ラ フ ト紙 製 シ ョ ッピ ングバ ッグ,ミ ル ク カー

トン,段 ボー ル につ い て のLCAが 行 わ れ て い る4)。

これ らの デー タは全 般 的 なデ ー タで あ り,我 々が 要求

され てい る特 定の 会社 の,特 定 の工 場 の特定 の製 品 の

LCAを 求 め る参考 に はな るが,こ れ だけ で直接,個 々

の製 品 につ い て評価 す る こ とは出来 な い。

最近,個 々の製 品の 評価 に関 しての い くつ かの 報告

が され て い る。 海外 の 文献 で は,ユ ー カ リの植 林 木 と

成 熟 木 のBKPのLCA5),ワ ラパ ル プの 配 合 の あ りな

しに よる電 話帳 用紙 のLCA6等 が報告 されて い る。

我 が 国 の紙パ ル プ業 界 関連 で は,1995年 に 開催 され

たLCAシ ンポ ジ ウ ムの 参加 報告7)があ り,LCAの デ

ー タ蓄 積 の必要性 が 指摘 され,製 紙 会社,ユ ーザ ー に

お い て もLCA手 法 が 検 討 さ れ,数 報8~12)報告 され て

い る。 著 者 らは,自 社 製 品 のLCAに つ い て,自 社 の

デ ー タ と公 表 され てい る使用 可能 なデー タを活 用 して,

積 み上 げ方 式 に よ り,自 社 のLCA手 法 を確 立 す る と

の 方針 で検 討 して きた。 こ れ まで,紙 パ ル プ製 品 の

LCAに つ い て試 算 方法 を確 立 し,学 会 等 で発 表 して

きて い る'3~16)。本 報 は,第67回 の研 究 発 表 会 で 「非

木材 パ ル プ のLCA試 算」 と して発 表 した内 容 に,さ

らに検 討 を加 え,著 者 らの開 発 したLCA試 算方 法 に

つ いて も概説 す る。

2.  方 法

2.1  LCA  の 試算 範 囲

紙 パ ルプ製 品 の ライ フサ イク ル と して カ ウ ン トす る

範 囲 は,計 算 で きる範 囲 内 にあ るパ ルプの 製造 工程,

流 通 工程,回 収工 程等 が含 まれて い る。具体 的 に は,

木材 パ ルプの 原料 で あ る植 林 木の植 え付 けか ら,パ ル

プ化,抄 造,加 工,販 売,古 紙 回収,古 紙パ ル プ製 造

まで 含 まれ る。製 造 のた めの,用 排 水処 理,黒 液燃焼,

薬 品 回収,発 電,蒸 気 製造,廃 棄物 処理 工程 も含 まれ

る。 た だ し,こ れ らの範 囲は,評 価 比較 す る対象 物 に

よ り,そ の試算 範 囲 を限定 して,同 一計 算範 囲 で計算

した、 これ は,例 え ば,プ ラスチ ック と紙 の比較 の よ

うな素 材 その もの の違 い を比較 す る場合 には,紙 パ ル

プ製 品 のLCAの 絶 対値 が 必 要 であ るが,実 際 には,

製 品 の配 合 を変 え た場 合,LCAは ど う な るか とい っ

た ケー スが多 い と予想 される。 この場 合 は,異 な る原

料,工 程,流 通 等 だ けのLCAに よ り,簡 易 的 に相 対

比較 で 求め る こ とも可 能 であ る し,作 業 も効率 的であ

る。 い ずれ に して も,試 算 範囲 は,比 較 の基礎条 件で

あ るの で,比 較物 で ほぼ 同一で あ るべ きであ る し,特

異 的 な場 合 は,そ の範 囲 を明確 に限 定 して比較すべ き

で あ る。

また,各 工 程 で使用 す るデー タは,信 頼 す るに足 る

デ ー タであ れば,公 表 され たデ ー タを出来 るだ け活用

し,信 頼 で きないデ ー タまた は各工場 に よって異 な る

デ ー タ(輸 送 距離,自 家発比 率,配 合等)は 工場 の実

測 もし くは,推 定 デ ー タを使 用 した。 これ らの デー タ

は ラ イフサ イク ル イ ンベ ン トリー(LCI)デ ー タ と呼

ば れ,こ れ ら を総合 して,LCAが 実 施 され る こ と に

な る。

以 下 に,バ ー ジ ンパ ル プ100%で 上 質紙 を製造す る

パ ルプ紙 製造 工程 の各工 程 で,LCIの 基礎 デ ー タ とし

て採 用 で きる信用性 が 大 きい と考 え られ る公表 デー タ

または推 定 デー タを紹 介す る。著 者 らが求 めた古紙 の

配合,漂 白法,塗 工 の 有 無等 の 変化 に よ るLCIデ ー

タお よび文献値 との比較 につ い ては後述 す る。

2.2  紙 パ ル プ製 造工程 での試算 項 目

2.2.1  木 材 チ ップ調 達工程

紙 パ ルプの 主原 料の 一つ であ る木材 につ いて は,海

外 で の植林 木 を主 た る対 象 とした。海外 の天 然木,国

産 の植 林 木,天 然 木 につ い ては,海 外 の植林 木の デー

タを部 分 的 に修 正 して求 め た。海外 の植 林 は,一 例 と

して,西 オー ス トラ リア州の 放牧跡 地 にユ ー カリを植

林 す る もの と し三,日 本 の 中部地 方 に あ る内陸工 場 で

パ ル プ化 し製 品 とす る もの と した。 植林 の地 な ら し,

施 肥,植 え付 け,除 草剤 散布,伐 採,集 荷,パ ー キ ン

グ,チ ッピ ン グ,内 陸輸 送(産 地 国,消 費 国),チ ッ

プ船輸 送 にお いて,使 用 され る作業 用車 両,設 備,船

舶 の動 力源 となっ てい る軽 油,重 油,電 気の使 用量 を

実 際 に求 めた。 これ に木材 の 成長量,木 材 の容積 重,

チ ップの容積 重,チ ップ船 の積 載効 率か ら,単 位重量

(BDT)当 た りの使 用量 を求 め た。

例 えば,チ ップ船 での輸 送 エ ネルギー 原単位 は,バ

ラ積 み チ ップ の載 貨係 数 が,80~120ft3/tで あ り,原

料 食 塩 の積 載 効 率 が30~40ft3/tで あ る18)ので,平 均

で は チ ップ は工 業用 原 料塩 の1/2.86の 積 載 効 率 とな

る。 原 料 塩 の輸 送 距 離13,000kmを1ト ン 当た りの

重 油 消 費 量0.01Lで 輸 送 して い る191ので,木 材 チ ッ

プは こ の2.86倍 の0.220×10-6L/t・kmで 運 搬 で きる

こ とにな る。 また,チ ップの トラ ック輸送 で は,ト ラ

ック積 載 トン当 た り1.4~1.5m3積 載 で きる20)から,

112 紙パ技協誌 第56巻 第7号

Page 3: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

紙パ ルプ製 品のLCA  のためのLCI 試算 方法 1037

平 均 で1.45m3と 仮 定 す る。15ト ン トラ ッ ク の軽 油

燃 費 を2.7km/Lと す る19)と,木 材 チ ップの 見 か け比

重 を0.455kg/m3で あ る21)とす る と,チ ップ の陸 上輸

送 のエ ネルギ ー原 単位 は,0.00374L/t・kmと な る。

表1~3に 利 用 可能 な文 献値 を紹 介 す る。 これ らの

値 は,原 料,製 造方 法,製 品 に よって工 場毎 に異 な っ

てい るので,そ の製 品 を製造 して い る工 場 での原 単位

を使 用 す るこ とが,計 算精 度 を よ り高 め る こ とに な る。

しか し,こ れ らの デー タが 入 手 困難 な場 合,表1~3

の値 を使 用 して も,概 略 数値 を求 め る こ とは可 能 であ

る。

2.2.2  パ ル プ化 工程

パ ル プ化工 程 で代 表的 なパ ル プ化 法 と して,木 材 パ

ル プ の生 産 で49%を 占め,最 も生 産 の多 い広 葉 樹 の

Table 1 Plantation Data of Eucalypt Species17)

Table 2 Harvesting Data

Table 3 Chipping and Chip Transportation Data

2002 年 7 月 113

Page 4: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

1038 仲 山 伸 二, 矢 口 時 也

晒 クラ フ トパ ル プを主 た る対象 と して検 討 した。 蒸解

は連 続蒸 解 装 置 で蒸解 し,酸 素 漂 白後,C/D-EO-H-

Dの4段 漂 白す る もの と し,こ れ らのパ ル プ化 の ラボ

デー タの代 表値 と して,い くつ か の文 献5)23)24)25)を参考

に,直 接 引用 出来 な いデ ー タは,文 献値 か ら推定 した

デー タを表4に 示 す。

エ ネルギ ー 消 費 量 につ い て は,表5に 示 す1998年

に紙 パ ルプ技術 協 会エ ネ ルギ ー技 術 委 員会が 集計 した

資料26)の平 均値 を利用 した。参 考 まで にTAPPI AL-

KALINE COMITEEが 集計 したUSAの エ ネル ギ ー

の平均 値 を併 記 した。 同一 の工 程 での比 較 で ないの で,

直接比 較 は 出来 な い し,126工 場 中の29工 場 の 回答値

の平均 値 に意 味が あ るか疑 問 であ るが,全 般 的 にUSA

の方 がエ ネルギ ー消 費が多 い傾 向が認 め られ る。

使 用電 力 の うち,購 入電 力 につい ては,資 源エ ネル

ギ ー庁 の1999年 の 日本 の電 力 発電 構 成 比 の実 績 値27)

お よび,電 力 中央 研究 所の それ ぞれ の発電 方式 に よる

燃料 消 費量,CO2排 出量 等 のデ ー タ28等 よ り算 出 し,

これ らのLCIデ ー タ を表6に 示 した。 自家 発 電 電 力

につ い て は,資 料26)より,消 費 され たエ ネ ルギー 源で

発電 され る として算 出 し,表7に 消 費 され たエ ネルギ

ー比 率 を示 す。表8に 紙パ ル プ産業 で使用 され るエ ネ

ルギー 源のLCIデ ー タを示す 。

蒸解,漂 白,抄 紙 お よび紙加 工等 で使用 した薬 品の

製 造 に 要 したエ ネル ギ ー 関 連 のLCIデ ー タは,(独)

物 質 ・材 料研 究機 構 の エ コマ テ リ アル研 究 チ ー ムの

Table 4 Pulping Data

114 紙パ技協誌 第56 巻第7 号

Page 5: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

紙パ ルプ製品のLCA  のためのLCI  試算方法 1039

Table 5 Pulping Energy Consumption and Generation

Table 6 Generation Resouces of Public Electricity at Japan in 200027,28)

*

LPG, Other Gases, Sun Power, Terrestrial Heat, Wind Power & etc* *

Estimsted equal to the values of Oil

Table 7 Energy Generation Resouces of Pulp & Paper Mill at Japan in 199826)

2002 年 7 月 115

Page 6: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

1040 仲 山 伸 二, 矢 口 時 也

HPで 公表 してい るLCIの デ ー タベ ー ス(DB)29)を 利

用 した。 利用 した デー タの一 例 を表9示 す 。 このDB

は1990年 の 産 業 連 関表 か ら計 算 され た予 備 的LCA

の た め の4000品 目の 環 境 負荷 のDBで あ る。 各 品 目

につ い てエ ネ ル ギ ー,CO2,SOx,NOx,BOD,COD,

SS,N,Pに つ い ては その消 費量 お よび排 出量 の代 表

値 と上 限値 が 求 め られ て い る。 また,NH4,CLSO4,

金 属,無 機 物,芳 香 族 有機化 合物,脂 肪属 有 機化 合物,

環状 有 機化 合物,メ タ ン,有 機物,化 合物 につい て は,

そ の排 出量 の上 限値 が求 め られ てい る。紙 パ ル プ製品

に関 して は,経 済 産 業 省 統計 に準 じて 分 類 され た78

品 目につ いて計 算 され てい る。著 者 らが積 み上 げ 方式

で 求 め た 紙 パ ル プ製 品 のLCIデ ー タ との比 較 につ い

て は,後 述 す る。

以上 は,バ ー ジ ンパ ル プ100%で 上 質紙 を製 造 す る

パ ル プ 紙 製造 工 程 の 各 工 程 で のLCIの デ ー タ の考 え

方 を示 した もので あるが,古 紙 の配合,紙 ・板 紙 の製

造工 程 にか か るエ ネル ギ ー につ いて は文 献26)に詳細 な

調 査結 果が掲 載 されて い るので,こ れ らの数値 が 利用

出来 る。 また,製 紙 工程 以 降の 印刷,貼 合,段 加 工,

打 ち抜 き,製 函 等 の さま ざ まな加 工工 程 につ いて も,

同様 に使 用 してい る電気,蒸 気,燃 料,薬 品等 の消 費

量 を求 め る こ とに よ り,算 出す る こ とが可 能 であ る。

2.3  LCI 分析 手法

紙 パ ル プ製 品 の 全 般 的 なLCIを 求 め る に は,前 章

で説 明 した デー タを使 用す れば概 略の 数値 は算 出で き

るが,個 々の工 場 で製造 した個 々の製 品の詳細 なLCA

の比 較 は困 難 で あ る。 そ こで 筆 者 らは,特 定 製 品 の

LCA実 施 に際 して,そ の 製造 工 場 に お け るエ ネ ルギ

ー需 給 バ ラ ンス 等 が適 切 に反 映 され る よ うにLCI分

析 支援 ツー ルを試作 した。具 体 的に は,工 場 名 を選 択

し,パ ルプ配 合,歩 留 り等 の抄造 デ ー タを入力す る と,

そ の製 品のLCIが 集 計 され もの で あ り,以 下 にそ の

概 要 を ま とめ る。

前 記 目的の ため に は,LCIの 集計 に必要 とされ る イ

ンベ ン トリデ ー タを 各工 場 別 に 同一 フ ォーマ ッ トで

DB化 して お くこ とが 必要 とな る。 この イ ンベ ン トリ

DBの 主要項 目を部 門別 に整 理 し,以 下 に示 す。 これ

らの 大部 分 は,各 工場 の生 産計 画 に使 用 されて いる操

業管 理 デー タをそ の ま ま使 用 した。

1)  動 力部 門 (工場平 均)

(1) 蒸 気

・蒸気 発 生 比 率(%):  黒 液,重 油,石 炭,都 市 ガ

ス,バ ー ク,廃 タ イヤ,ス ラ ッジ,廃 熱,etc

・燃 料 種 別 ボ イ ラー 蒸 発 倍 数(et):  黒 液(/BDt) ,

重 油(/kl),石 炭(/t),都 市 ガ ス(/Nm3),バ

ー ク(/BDt),etc

・蒸気 使 用 比 率(%):  プ ロセ ス用,所 内,自 家 発

電用,用 排 水 用,雑 損

(2) 電 力

Table 8 LCI Data of represent value of Pulping and Papermaking Utilities19,26,27,28,29)

*

Estimated

116 紙パ技協誌 第56 巻第7 号

Page 7: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

紙パ ルプ製 品のLCA  のためのLCI 試算 方法 1041

・電 力供 給比 率(%):  蒸 気 ター ビ ン,ガ ス ター ビ

ン,デ ィーゼ ル(D/G),水 力, 購 入電 力

・発電 エ ネルギ ー原 単位(/MWh):  蒸気(et) ,都

市 ガス(Nm3),D/G重 油(kL)

・電 力使 用 比率(%):  プ ロセ ス 用,所 内,用 排 水

用,雑 損

2)  パ ル プ部 門( 各種パ ル プ別)

(1) 原材 料/副 資材

・原 料 原 単 位(/t-pulp):  N材 原 木(BDt),N材

チ ップ(BDt),L材 チ ップ(BDt),古 紙(ADt)

パ ルプ(ADt)

.外 材比 率(%):  上記 原料 別の輸 入比 率

・薬品 原単位(kg/t-pulp):苛 性 ソー ダ,生 石灰,

酸素,脱 墨 剤,消 泡剤,etc

(2) 用役 そ の他

・パ ル プ 製 造 用 役 原 単 位(/t-pulp):蒸 気(et),

電力(kWh),用 水(m3)

・石灰 キ ル ン重 油原 単位(kL/t-UKP)

.黒 液 固形 分得 量(BDt/t-UKP)

3)  抄 造部 門( 各種 製 品別)

(1)原 料 構 成

・紙料 配 合: 各種 パ ル プ配 合率(%),対 パ ル プ填

料添 加率(%)

・塗工 カラー比 率(%):  対 原紙(オ フマ シ ン),対

パ ルプ(オ ンマ シ ン)

・カラー組 成(%):  顔料 ,ラ テ ックス,ス ターチ

(2)歩留 り/内 部 リサ イ クル

・歩 留 り: M/C総 歩 留 り(%),総 仕上 歩留 り(%),

カ ラー ロス(%)

・内部 リサ イ クル:損 紙戻 り率(%),カ ラ ー戻 り

率(%)

(3)用 役

Table 9 LCI typical Data of represent value of Pulping and Papermakmg Basie Chemicals29)

2002 年 7 月 117

Page 8: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

1042 仲 山 伸 二, 矢 口 時 也

・抄 造 用役 原 単 位(/t-product):  蒸 気(et),電 力

(kWh),用 水(m3)調 成 ・塗工 ・仕 上 げ を含 む

.カ ラ ー調 製 用 役 原 単 位(/t-color):  蒸 気(et),

電 力(kWh),用 水(m3)

4)  環 境 部 門

(1) 燃 料種 ・燃 焼装 置 別大気 負荷

・CO2 :燃 料種 別 の排 出係 数

・NO x,SOx,煤 塵: 燃 料 種 ・燃 焼 装 置 (各種 ボ イ

ラー,D/G,キ ル ン等)別 の排 煙 処理 込み 排 出係

数(数 工場 の実 績調 査 に基 づ く代 表値 を各工場 共

通 で使 用)

(2) 排 水 処 理

・用 排水 処 理 用 役 原 単 位(/m3-water):  蒸 気(et),

電 力(kWh)

・放 流 水 の水 質 負荷(kg/m3-water):BOD,COD,

SS

(3) 固形 廃 棄物 処理

・ス ラ ッ ジ 発 生 原 単 位(BDt):  苛 性 化 汚 泥(/t-

UKP),各 種DIPス ラ ッジ(/t-DIP),排 水 処理 排

泥(/m3-water)

・灰 分(%):  各 種 ボ イ ラー燃 料(石 炭,バ ー ク,

廃 タイヤ等),各 種DIPス ラ ッジ,排 水処 理排 泥

・DIPス ラ ッ ジ一次 処 理 内 訳(%):  焼 却(熱 回 収

あ り/な し),回 収 原 料,排 水,そ の他

・排 水 処 理排 泥 一次 処 理 内 訳(%):  焼 却(熱 回 収

あ り/な し),そ の他

・固形 廃 棄 物 有功 利 用 率(%):  苛 性 化 汚 泥,石 炭

灰,そ の他焼 却灰,そ の他 有姿

2.4  イ ンベ ン トリ分析 の流 れ

前 項 で整備 したDBに 基づ く個 別 製品 の場 内製 造 プ

ロセス を対象 範 囲 と した イ ンベ ン トリ分析 の フロー を

以下 に示 す。 ここで,機 能単位 は製 品1t(風 乾 重量)

であ る。

1)  原材 料 計算

本 分析 支援 ツール にお いて,計 算 の基 点 となる個 別

製品 の必 要情 報 は,前 項2.3の2)に 示 した抄 造 部 門

の原料 構成,歩 留 り等 に 関す る各 デー タで あ る.ま ず,

これ らの デー タか ら,内 部 リサ イクル分(塗 工紙 等 の

易合 の 工 程 損 紙 の戻 り分 や,板 紙 の 場合 のDIPス ラ

ッジの 中層 へ の抄 き込 み 分 な ど)を 控 除 した 製 品1t

を作 るの要 す る各種 配 合パ ル プ,填 料,お よび塗 工 カ

ラー原 料 の投入 量 を算 出す る。 各種 配合 パ ルプ につ い

ては,さ らに,前 段 のパ ル プ製造 工程 の 原単位 か ら,

票料 チ ップや古 紙 パ ル プ薬 品 の消 費量 が換算 され,

最終 的 に場 内 に搬 入 され る原材 料(N材,L材,国 内,

毎外 別)お よび副資 材 の物量 が集 計 され る。 こ こで,

紙力 剤等 の抄 紙薬 品 に関 して は,少 量 の ため イ ンベ ン

トリの対 象 か ら除外 した。 また,自 製薬 品類 について

は,す べ て購 入 資材 として扱 い,場 内で の薬品調 製 に

係 るエ ネル ギー消 費 は イ ンベ ン トリの対 象外 と した。

これ らの物量 デ ー タは,実 績調 査デ ー タあるい は適当

な公 表DBの 利 用 に よ り,原 料 輸 送や伐採 ・チ ップ化,

副資 材 の外部 製造 プ ロセ スに 関わ る環 境負荷 な どライ

フサ イクル の上流 ス テー ジの試算 に用 い られ る。

2)  蒸 気発 生/電 力供 給 内訳

まず,パ ル プ製 造/抄 造 部 門の 各 プロ セ ス用役 使 用

量 を積 上 げ,プ ロセ ス全体 で必要 とされ る蒸気 電力,

用水 量 を算 出す る。 これ と,工 場 平均 の蒸気 使用比 率,

電力 使用 比率'用 排 水 処理 用役 原単位 か ら,所 内(蒸

気,電 力),自 家発 電用(蒸 気),用 排 水処理(蒸 気,

電力),雑 損(蒸 気,電 力)分 を割振 り,プ ロセ ス使

用 分(蒸 気,電 力)と 合計 して対 象製 品の場 内製造 に

係 る総 蒸 気発 生量 お よび総電 力使 用量 を求 める。次 い

で,こ れ らの蒸 気/電 力 を以下 の ル ー ル に従 っ て,そ

れぞ れ発 生起 源別 に再 分配す る。 ここで,プ ロセスで

使 用 され る抽 背気 は常 に一 定比 率 の 汽 力 自家 発 電 力

(腹水 発電 を含 む)を 伴 い,ボ イラー/タ ー ビ ン系統 や

製 品 別 に よる コジェ ネ熱 電比 お よび発電 効率(抽 背 気

/復 水 発 電比 率)の 変動 はな い もの と して取 り扱 った。

(1) 蒸 気発 生 内訳

黒液 発生 量(UKP換 算 配合量 ×黒 液固形 分得量)と

回収缶 の蒸 発倍 数か ら黒 液起 源の 蒸気 を発生 させ,総

蒸 気発 生量 に対 す る過不 足分 を工場 平均 の蒸気 発生比

率 に従 い その他 の燃 料(重 油,石 炭,都 市 ガス,etc),

お よび廃 熱(ガ ス ター ビ ン,デ ィーゼ ル発 電 の場 合)

で発生 させ る。

(2) 電 力供 給 内訳

自家 発電 用蒸気 と工場平 均 の発電 蒸気 原単位 か ら汽

力 自家 発電 力 を発 生 させ る。その他 の 自家 発電 設備(ガ

ス,デ ィー ゼ ル,水 力)を 有す る場 合 は,工 場 平均 の

電力 供給 比 率 を用 い て これ らの電力 を発生 させ る。 こ

の とき,ガ ス ター ビ ンや デ ィーゼ ル発電 に よる電力量

とこれ らの廃 熱利 用 に よる蒸気 発生量 のバ ランスが保

た れ るよ う考 慮 して あ る。 最終 的 に生 じる総電力 使用

量 に対す る過 不足 分 を購入 電力 とす る。

3)  エ ネルギ ー消 費量/大 気 圏排 出物質

蒸 気 発生/電 力供 給 内訳 を各 効 率(蒸 発 倍 数,発 電

エ ネル ギー原 単位)で 割 り戻 し,投 入エ ネルギ ー(燃

料)に 換 算す る。燃 料燃 焼 に伴 う大気 負荷 の内,燃 料

の種 類 の み で 決 定 され るの は 通常CO、 のみ で あ る。

そ の他 のNOx,SOx,煤 塵 に 関 して は,燃 焼 条件 お よ

び排煙 処 理(脱 硫 ・脱硝 ・集 塵)設 備 の有無 によ り大

118 紙パ技協誌 第56 巻第7 号

Page 9: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

紙パ ルプ製品のLCA  のためのLCI  試算方法 1043

き く異 な るため,以 下 の通 り,排 出源 別 にエ ネル ギー

消 費量 を集計 し(汽 力 自家発 電力 は最終 的 に ボイ ラー

燃 料 と して計 上),こ れ らの排 出係 数 と対応 させ る。

エ ネルギ ー消費量(/t-product)

・各種 ボ イラー燃 料: 黒 液(BDt),重 油(kl),石

炭(t),バ ー ク(BDt),etc

・石灰 キ ル ン燃料: 重 油(kl)

・発 電用 燃 料: ガス ター ビ ン用都 市 ガ ス(Nm3),

デ ィーゼ ル発電 用重油(kl)

・電力: 自家 水力(kWh) ,購 入電力(kWh)

上記集 計結果 に基 づ き,大 気 囲排 出物 質 は場 内での

エ ネル ギー 消 費 に伴 うCO,,NOx,SOx,煤 塵 を計 上

した。す なわ ち,燃 料の採 掘/精 製/輸 送 等 に係 るエ ネ

ルギー消 費は ここで考 慮 して いな い。 また,場 内 製造

プロセ スで発生 す るバー ク,ス ラ ッジ等 につ いて も副

生燃 料分 につ いて は黒 液 と同様 にエ ネ ルギー消 費 とし

て扱 い,そ の燃焼 に伴 う大 気負荷 を考慮 して あ るが,

熱 回収 を伴 わ ない単純焼 却 分 につい ては対 象 か ら除外

した。 また,購 入電力 の排 出係 数は 日本 国内平 均 とし,

自家 水力発 電 につ い ては,建 設 ・施設 運用 に係 るエ ネ

ルギ ー消 費は考慮 せず,無 負荷 として扱 った。

4)  水圏排 出物 質

水 圏排 出物 質 と して は,用 水使 用量(≒ 排 水 量)に

放流 水 の水 質負 荷(排 出係 数)を 乗 じ,BOD,COD,

SS分 を計 上 した。 す な わ ち,工 場 全体 の排 水 負 荷 を

対 象製 品の用 水使用 量 で按分 した。厳 密 には,パ ルプ

の種類等 によ り各 工程排 水 の負荷 は異 な るが,実 際 の

排 水処理 の フ ロー は複雑 で単独 処理 後 の合流 排水 に対

し2次 ・3次 処 理が な され る ケー ス も多 い。 これ らを

考 慮 した排 出量の算 出 には,各 工程 排水 毎 に最終 処理

後 の水 質負荷 を設 定が必 要で あ り,今 後 の課 題 であ る。

5)  固形廃 棄物

各種燃 料の 消費量 と灰 分(石 炭,バ ー ク,廃 タ イヤ

等)か らボ イラー燃 焼灰 の発生 量 を,KP配 合 量 か ら

苛性 化 汚 泥発 生 量(UKP換 算 配 合 量 ×苛 性 化 汚泥 発

生 原 単位)を そ れ ぞ れ 試 算 した。 また,各 種DIPス

ラ ッジ(DIP配 合 量 ×ス ラ ッジ発 生 原単 位),排 水 処

理排 泥(用 水使 用量 ×排泥 発生 原単 位)に つ い ては,

各発 生量 と灰分 お よび一次 処理 内訳 か ら,そ れぞ れ焼

却灰(熱 回収 あ り/な し)と 未 処理 有 姿 発 生量 を試 算

した。 これ らの固形廃 棄物 発生 量 を種 別(苛 性 化 汚泥,

石炭灰,そ の他焼 却灰,そ の他 有姿)に 整 理 し,各 有

効利 用分 を控除 して最 終処 分量 と した。

3.  結 果 と考 察

3.1  紙 パル プ製 品のLCI  デ ータ比較

著 者 らが 求め た個 別製 品 に対 して,そ の製造 工場 で

のLCIの デ ー タが信 頼 性 の あ るデ ー タで あ るか を確

認 す る た め,こ れ まで 報 告 され て い るLCI文 献 値 の

エ ネル ギ ー消 費 量,CO2,SOx,NOxの 排 出 量 の デ ー

タ5)6)12)と比 較 した 結 果 を表10に 示 す 。 こ れ らの 結 果

を比 較す る と,エ ネルギ ー消 費量,CO2の 排 出量 に関

しては,数 値 に完 全 な一致 はな い もの の,オ ー ダー的

に はほ ぼ一致 してい る こ とが認 め られ る。

統 計的 数値 で ある産 業 関連 表 か ら算 出 した文 献29)の

紙パ ル プ 関連 のLCIデ ー タの代 表 値 の例 を表11に 示

す。 表10と11を 比 較 す る と,著 者 らの社 内デ ー タの

積 み 上 げ方式 か ら算 出 された個 別製 品 のデ ー タ と,産

業 関連 表 のLCIの デ ー タが ほ ぼ一 致 して い る と もい

え る。 これ は産業 関連 表か ら算 出 され たデ ー タ も,著

者 らの社 内デ ー タか ら算 出 され た デー タ も,ほ ぼ同程

度 にLCIの デー タ と して正 確 であ る とい っ て も過 言

で ない とい える。

た だ し,エ ネル ギー消 費量,CO2の 発 生 量以 外 の デ

ー タにつ いて は,前 述 の とお り,個 々の 設備,装 置 で

新 旧 に差が 出 る もので あ り,違 って 当然 とい え る し,

これ らの数 値が 産業 関連 表 の統計 値 よ り大 きけれ ば,

LCA的 には代 表 値 以下 で あ る こ とに な り,さ らに改

善 努力 が必 要 であ る とい うこ とにな る。

3.2  簡易LCA  試算 方法

以上 は,紙 パ ル プ製 品 のLCAの 基 礎 とな るLCIの

試算 方 法 につ いて,そ の一般 的 な試算 方法 と著 者 らが

開 発 したLCI分 析 手 法 につ い て 説 明 した。 ご存 知 の

とお り,こ れ らのLCIの デ ー タを も とに,そ れ ぞ れ

の環 境影 響項 日の環境 に対 す る重 み係 数 を乗 じて合 計

し,各 製 品,各 工程 がLCAと して の良 不 良が 判 断 さ

れ る こ とにな ってい る。著 者 らが採 用 してい る積み 上

げ方 式 に よるLCAの た めのLCI試 算 方法 に よれ ば,

比 較 的 精 度 の高 いLCIが 試 算 され,LCAに つ なげ る

ことが可 能 であ る。 しか し,紙 ・パ ルプ産業 以外 の 方

か ら,そ れ ほ ど手 間 をか けず に,一 般 的 な話 と して,

概 略 知 りた い とい う要 望が あ る。例 えば,紙 とプ ラス

チ ック を包装 資材 と して使 用す る のに,と どち らが よ

り環 境 に影 響 が 少 な いか,概 略 のLCIの デ ー タが 知

りた い,と い った 要求 であ る。 これ らの要望 に対 して

は,い くつ か のデ ー タベ ース(DB)が 提 供 され て い

る。

1つ は,前 述 の 文 献29)のDBで あ り,産 業 関 連 表 か

ら求 め た統 計 的手 法 に よ り求 め られ た もの で,4,000

2002 年 7 月 119

Page 10: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

1044 仲 山 伸 二, 矢 口 時 也

品種 が掲 載 されて お り,統 計的 に は正 しい はず であ る

が,デ ー タが実 態 に即 してい るか は,積 み上 げ方 式 に

よ る確 認 も必 要 で あ る。 ま た,こ の デー タは1990年

のデ ー タであ り,デ ー タと しては最 新 デー タに よ る比

較 が 望 ま し く,2000年 の産 業 関 連 表 に よるLCIデ ー

タへ の更新 を切 望 してい る。

また,資 源環 境技 術 総合研 究 所が 開発 した ライ フサ

イ クル アセ ス メ ン ト実施 ソ フ トウ ェア30)があ り,ISO

14040シ リー ズ に準拠 した環 境 評 価 を したLCAが 報

告 で きるよ うに な って い る。 この ソフ トに は,314品

目につ い て の積 み上 げ に よ るLCIの 最 新 デ ー タが 掲

載 され,こ れ に調査 した独 自デ ー タ を付加 して 固有 の

LCIデ ー タに修正 す る こ とが可 能 となって い る。 しか

し,積 み上 げ デー タの範 囲 につ いて は,原 文 で確 認す

る必要 が ある。

4.  結 論

以上,紙 パ ルプ 製 品のLCAの 基礎 とな るLCIの 試

算 方法 につ いて,そ の一般 的 な試算方 法 と著者 らが 開

発 したLCI分 析 手 法 につ い て 説 明 した。 本 来 は,こ

れ らのLCIの デ ー タを も とに,そ れ ぞ れ の環 境 影 響

項 目の環 境 に対す る重 み係 数 を乗 じて合計 し,各 製品,

各工 程 がLCAと して どうで あ る との 判 断が され る こ

とに なって い る。 環境 影響 項 目の環境 に対 す る重 み係

数 に関 して は,い くつ か係 数の 試案が 発表 され てい る

が,国 際 的 に承認 されて いる もので はな い。筆者 らは,

こ 重 み係数 が,環 境 情勢,地 域 情勢,国 際情勢,技

術進 展等 の社 会情 勢 に よって変化 す る ものであ る と認

識 して い る。 したが っ て,筆 者 らは,LCAに 関 して

は,似 か よ った 製 品,工 程 にお い て,各LCIを 求 め

る こ とに よって,重 み係 数 を乗 じるこ とな く,個 々の

LCIデ ー タ を比 較 す る こ と と考 え て い る。 こ れ らの

LCIデ ー タを比 較す る こ とに よ り,改 善項 目を明確 に

して改善 す る ことが,よ り環 境 に悪影響 を及ぼ さない

製 品 を製造 す るで あ り,LCAの 本 来 の 日的で あ り,

手段 であ る と考 えて いる。

Table 10 LCI Data of Pulp and Paper Products by accumulating method

120 紙パ技協誌 第56 巻第7 号

Page 11: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

紙 パルプ製品のLCA  の ためのLCI 試算方法 1045

ただ し,現 時 点で は個 々の製 品 の製造 に使 用 され て

いる購入 した薬 品類 につ いて は,産 業関 連表 か ら求 め

られ た統 計 的LCIデ ー タ を利用 して い る。 この デ ー

タの精度 が積 み 上げ方式 のデ ー タ と同程 度 に高 い と し

て も,本 来で あれ ば,購 入薬 品 にお い て も積 み上 げ方

式 に よるLCIデ ー タを用 い て 集計 す るの が本 筋 で あ

る と考 えて いる。

著者 らが 開発 したLCIの 分 析 手 法 は,比 較 的 精 度

の高 い手 法 と考 えて い る が,さ らに 精 度 の 高 いLCI

デー タが 得 られる よ う,み ず か ら も努力 してい きた い

と考 えてい る。 紙パ ル プ各社 も,こ れ まで 公表 され た

LCI分 析 手法等 を参 考 に,自 社 にあ っ たLCI分 析 手

法 に よ り,自 社 の製 品,工 程 のLCI調 査 事 例 を公 表

され,業 界 と してLCI分 析 手 法 が 定着 して い くこ と

を期待 して いる と ともに,購 入薬 品 にお け る積み 上 げ

方 式 に よるLCIデ ー タの蓄 積 を関係 業 界 に 期待 した

い。

引 用 文 献

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ン ト(LCA)の 実際,1996,31

2) 科学技 術庁 資源 調査 会:衣 ・食 ・住 の ラ イフ ・サ

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3) (社)化学 経 済 研 究 所:新 素 材 導 入 に伴 う 省 エ ネ ル ギ

ー 効 果 の 分 析 に つ い て ,1981

4) プ ラ ス チ ッ ク 処 理 促 進 協 会:プ ラ ス チ ッ ク な ど 包

装 素 材 の 環 境 影 響 評 価(LCA),1997,10

5) H. Ryynanen, pJ. Nelson: ApPitaJ. 49 (3) 167

(1996)

6) A. VizcarraV. Lo, P. A. Bich, PA. Watson: Tappi

J. 82 (2) 115 (1999)

7) 飯 田 清 昭:  紙 パ 技 協 誌50(6)882(1996)

8) 生 田 圭 司:  紙 パ ル プ 技 術 タ イ ム ス39(5)5(1996)

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安 井 至:第66回 紙 パ ル プ研 究 発 表 会 講 演 要 旨 集.

盛 岡,1999,P174,同:紙 パ 技 協 誌54(8)1108

(2000)

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学 会 研 究 発 表 会,講 演 論 文 集I.廃 棄 物 学 会,札

幌,2000,P207

11)  野 口 勉,佐 竹 一 基,冨 田 秀 実:紙 パ 技 協 誌54(12)

1679(2000)

12)  中 澤 克 仁,片 山 恵 一,桂 徹,坂 村 博 康,安 井 至:

Table 11 LCI typical Data of represent value of Pulp and Paper Products by statistical method 29)

2002 年 7 月 121

Page 12: 紙パルプ製品のLCA のためのLCI 試算方法 - JST

1046 仲 山 伸 二, 矢 口 時 也

第67回 紙パ ル プ研 究 発表 会講 演要 旨集.86(2000),

同:紙 パ技協 誌55(6)838(2001)

13) 岡 田比斗 志,仲 山伸 二,香 川仁 志,浜 口佳織,田

原江 利 子:第66回 紙 パ ル プ研 究発 表 会 講 演 要 旨

集.紙 パ ルプ技術 協 会,盛 岡,1999,P88

14) 岡 田比 斗志:SENI GAKKAISHI(繊 維 と工業)

56(4)P-118(2000)

15) 浜 口佳織,矢 口時也:第4回 ケナ フ等植 物 資源 利

用研 究 会 と第7回 特 別講演 会予 稿 集.(財)地 球 ・人

間環 境 フ ォー ラム(ケ ナ フ協 議 会),東 京,1999,

P1-1

16) 矢 口時 也,浜 口 佳織:第67回 紙 パ ル プ研 究 発 表

会講 演 要 旨集.紙 パ ル プ技 術 協会,東 京,2000,

P90

17) (社)海外 産 業 植 林 セ ン ター:産 業 植 林CO2定 化 評

価等 に関す る調査 研 究報 告,1999,P.13,14,21,

2000,P.23

18) 木村 孝義:紙 ・パ ルプ1999年7月 号P1

19) (社)産業環 境管 理協 会:LCA実 務入 門,1998,P95

20)紙 パ ル プ技術 協 会:原 木 ・調 木1969,P255

21) N.B. Clark : Appita J. 43 (5) 350 (1990)

22) S. Aziz, N.M. Arafat : 1997 TAPPI Pulping Con-

ference Proceeding, 455 (1997)

23) P.J. Nelson, C.W.J. Chin, S.G. Grover : Appita J. 46

(5) 354 (1993)

24) J.L. Colodette, J.L. Gomide, D.S. Argyropoulos, Y.

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deBrito : Appita J. 52 (5) 368 (1999)

25) U. Germgard : Appita J. 43 (4) 305 (1990)

26)  紙 パ ル プ 技 術 協 会 エ ネ ル ギ ー 技 術 委 員 会,第7回

エ ネ ル ギ ー 使 用 実 態 調 査 報 告(2001),ま た は 平

成12年 度 紙 パ ル プ技 術 協 会 年 次 大 会 要 旨 集.紙

パ ル プ 技 術 協 会,仙 台,2000,P90

27)  資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 ホ ー ム ペ ー ジhttp://www.

enecho.meti.gojp/

28)  電 力 中 央 研 究 所,研 究 報 告:Y94009

29)  (独)物 質 ・材 料 研 究 機 構 エ コ マ テ リア ル研 究 チ ー

ム デ ー タ ベ ー スhttp://www.nims.gojp/ecoma

terial/J/ecodb/ecodb.htmの 予 備 的LCAの た め

の4000品 目 の 環 境 負 荷 よ り,ま た は 文 献18)付

録CD―ROM

30)(社)産 業 環 境 管 理 協 会:ラ イ フ サ イエ ン ス ア セ ス メ

ン ト実 施 ソ フ トウ ェ ア 「JEMAI-LCA」for Win-

dows,(2000)

(受 理:  '01. 10. 23)

122 紙パ技協誌 第56 巻第7 号