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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title ヘリカル型海流MHD発電機の大型化のための性能予測(Performance Prediction of Helical-Type Seawater MHD Power Generator for Enlargement) 著者 Author(s) 武田, / 宮川, 拓也 / 瀧本, 佳史 / 宮沢, / 松本, 真治 掲載誌・巻号・ページ Citation 神戸大学大学院海事科学研究科紀要 = Review of Graduate School of Maritime Sciences, Kobe University,11:59-65 刊行日 Issue date 2014 資源タイプ Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 版区分 Resource Version publisher 権利 Rights DOI JaLCDOI 10.24546/81008071 URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81008071 PDF issue: 2020-06-13

Kobe University Repository : KernelMHD (Magneto-Hydro-Dynamics) 発電の 研究を続け ている . 研究対象 は リニア型海流 MHD 発電 (4) から, ... Fig.1 Principle

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Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le

ヘリカル型海流MHD発電機の大型化のための性能予測(PerformancePredict ion of Helical-Type Seawater MHD Power Generator forEnlargement)

著者Author(s) 武田, 実 / 宮川, 拓也 / 瀧本, 佳史 / 宮沢, 肇 / 松本, 真治

掲載誌・巻号・ページCitat ion

神戸大学大学院海事科学研究科紀要 = Review of Graduate School ofMarit ime Sciences, Kobe University,11:59-65

刊行日Issue date 2014

資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI 10.24546/81008071

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81008071

PDF issue: 2020-06-13

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神戸大学海事科学研究科紀要 第 11号

ヘリカル型海流 MHD発電機の大型化のための性能予測

Performance Prediction of Helical-Type Seawater MHD Power Generator for Enlargement

武田 実,宮川 拓也*,瀧本 佳史**,宮沢 肇***,松本 真治****

Minoru TAKEDA, Takuya MIYAGAWA*, Yoshifumi TAKIMOTO

**,

Hajime MIYAZAWA***

, Shinji MATSUMOTO****

(平成 26年 6月 30日受付)

Abstract

Sustainable energy/renewable energy such as solar energy, wind energy and tidal energy is greatly

attractive to produce hydrogen, which is expected to be the ultimate medium for worldwide storage and

transport. A seawater magnetohydrodynamics (MHD) power generator/hydrogen generator is a unique system

that not only transforms the kinetic energy of ocean and tidal currents directly into electric energy but also

generates hydrogen gas as a by-product. Recently, a new helical-type seawater MHD generator with

partitioned electrodes having a helical insulation wall with an outer diameter of 97 mm and a length of 155

mm and a 7 T solenoid superconducting magnet has been designed, fabricated and examined to elucidate the

characteristics of the generator. It is important to predict performance of the helical-type generator for

enlargement and feasibility. Using a simple helical model including the influence of an electromagnetic body

force, calculation results of the characteristics of the large-scale generator are reported.

(Received June 30, 2014)

1.はじめに

2011 年 3 月 11 日の東日本大震災以降,日本

だけではなく世界的に脱原発の動きが活発にな

り,原子力発電に変わる新たな発電方法として,

太陽光発電や海流発電など自然エネルギーを利

用した発電に関心が高まっている(1).

日本では長年,原子力発電や火力発電によっ

て大半の電力を賄っており,資源の少ない日本

では燃料の大半を輸入に頼ってきた.2012 年

の 1 次エネルギー自給率は原子力エネルギーを

含めて僅か 6 %であり,震災前(2010 年:

19.9%)に比べて大幅に減少している(2).この

ような減少傾向は戦後長きに亘って続いており,

問題解決のために日本では以前より自然エネル

ギーを利用した発電に関する研究が行われてき

た(3).本研究室では超伝導技術を応用した海洋

エネルギーの有効利用に着目し,1970 年代よ

り海流 MHD (Magneto-Hydro-Dynamics) 発電の

研究を続けている.研究対象はリニア型海流

MHD 発電(4)から,より実用化に適したヘリカ

ル型海流 MHD 発電に移った(5)-(7).海流 MHD

発電は,海水が磁場を横切る際に発生する起電

力を直接利用するので,発電出力を大きくする

ためには,強い磁場とその磁場を有効に利用す

ることが重要となる.当初研究が行われていた

リニア型海流 MHD 発電機とレーストラック型

超伝導マグネットの組み合わせでは,磁場の有

効な利用と強磁場化および大型化が困難であっ

た(5).そのため強磁場化,大型化が可能なソレ

ノイド型超伝導マグネットを用いて,磁場を有

効利用したヘリカル型海流 MHD 発電機の研究

が行われている.

これまでに行われた研究により,海流 MHD

発電機はその原理に従って作動することが分か

ってきた(5)-(7).しかしながら,実験で得られる

発電出力は非常に小さく,実用に堪えうる発電

ができるのか良くわかっていなかった.そこで

本研究では,ヘリカル型海流 MHD 発電機が大

型化した状況を想定して性能予測を行い,ヘリ

カル型海流 MHD 発電機の実用化可能性を調べ

た.一方,過去の研究から電磁ブレーキと呼ば

れる電磁体積力が発電に影響するのではないか

と指摘されている(8).そこで,本研究における

性能予測では,この電磁ブレーキを考慮した性

能予測も行った.

* 海事科学研究科 現在,日立造船㈱勤務 ** 海事科学研究科 現在,日立建機㈱勤務 *** 海事科学研究科博士課程前期課程 ****

物質・材料研究機構

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2.発電原理

Fig.1にヘリカル型海流 MHD発電の原理図を

示す.この発電機は,ソレノイド型超伝導マグ

ネット,ヘリカル状仕切り板,同軸二重円筒状

の電極からなる.電極間に磁場 B を軸方向へ印

加し,その中を海水が磁場を横切るように流れ

ることで電磁誘導の法則より起電力が発生する.

この起電力が電気分解電圧を超えると,電流 I

が流れて発電が行われる.ヘリカル型発電機を

用いることにより,小さい体積でも流路の長さ

を多くとることができるので,流体損失が増え

るものの単位体積当たりの発電量を大きくする

ことができる.

Fig.2 に電磁ブレーキの発生原理図を示す.

海流 MHD 発電では,電磁誘導の法則により発

生した起電力に伴う電流 I と磁場 B との間に,

Fig.2 に示したような,海水の流れの向きとは

逆向きの力(電磁体積力)が発生する.この力

を本研究では電磁ブレーキと呼び,電磁ブレー

キを考慮した性能予測を行っていく.

3.性能予測方法

3.1 計算モデル

性能予測に用いたヘリカル型海流 MHD 発電

機モデル(ヘリカルモデル)の概略図を Fig.3

に示す.本研究では,様々な条件下でヘリカル

モデルの流体損失や発電出力などを性能予測し

た.

性能予測で用いたヘリカル型発電機の流路形

状を Fig.4に示す.

流路形状は,主にヘリカル状仕切り板のピッ

チ長 lp,内側電極外半径 r1,外側電極内半径 r2,

ヘリカル状仕切り板の回転の数 n より決定され

る.本研究では形状の変化にあまり関係のない

回転の数を 4 で一定とした.これは,過去の研

究で得られた最適値に近いものである.本研究

では,Fig.4 で示したように様々な発電機形状

を想定し性能予測を行った.

3.2 性能予測計算式

本研究では Darcy-Waichbach の式より,ヘリ

カル流路の流体損失ΔPloss を以下のように表し

た.

Fig.1 Principle of helical-type seawater MHD

power generation.

Fig.2 Principle of electromagnetic braking

generation.

Fig.3 Calculation model of helical-type seawater

MHD power generator for performance prediction.

Fig.4 Duct configuration of helical-type seawater

MHD power generator.

Seawater flow U

Seawater flow U

Helical wallOuter electrodeMagnet

B

I

Inner electrode

Water current

60

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ここで,λ:らせん円管の管摩擦係数,lhc:ヘ

リカル流路の中心流路長さ [m],d:らせん円

管の水力直径[m],ζ e:ヘリカル角φ方向への

回転運動に伴う局所損失係数,ζen:発電機入口

での断面積変化に伴う局所損失係数,ζex:発電

機出口での断面積変化に伴う局所損失係数,

ρ:海水の密度 [kg/m3],Uav:海水の平均流速

[m/s]である.

(1)式のらせん円管の管摩擦係数 λ(9)は,以下

のように表される.

ここで,λs:直管の摩擦係数,Re:レイノルズ

数,R:管中心軸の曲率半径[[m],Ud:代表速

度[m/s](ここでは海水の平均流速 Uav),Dd:代

表長さ[m](ここではらせん円管の水力直径 d),

ν:海水の動粘度[Pa・s]である.

(2)式における直管の摩擦損失係数はセルギー

ダス(10)の式より,以下のように表される.

ここで,ε:流路の材質の絶対粗さ[m]である.

なお,絶対粗さ ε は発電機やヘリカルモデルの

素材を塩化ビニール管や新しい炭素鋼であると

して ε = 0.00003 [m](11)とした.

局所損失係数 ζe はワイスバッハの実験式(12)

より以下の通り与えられる.

ここで, である.

発電機出入口の局所損失係数 ζenと ζexは,そ

れぞれ次式で与えられる.

ここで,Ah:ヘリカル流路断面積[m2],A:ヘ

リカル状仕切り板の前後にある直管の断面積

[m2]である.

ただし,Cc 値はメリマンの縮流係数公式(12)

より,以下の式で与えられる.

ここで,Cc:縮流係数[-],d1:拡大前代表長さ

[m],d2:拡大後代表長さ[m]である.これらの

式を用いてヘリカル流路の流体損失を計算した.

次に,起電力 Ve の式は電磁誘導の式より,

以下のように表される.

ここで,B:印加磁場[T],r1:内側電極外半径

[m],r2:外側電極内半径 [m]である.

また,発電機の内部抵抗は,以下の式で表さ

れる.

ここで,L:電極の長さ[m]である.

(8)式及び(9)式より,発電出力(最大値)の

式は以下のように表される.

ここで,Vre:電気分解電圧[V]である.

次に,電磁ブレーキは海水に働くローレンツ

力であり,電磁体積力 f として表される.この

体積力は以下のように表される.

ただし,D

VVE ree

em

である.ここで,J:電

流密度[A/m2],σ:電気伝導度[S/m],Ω:海水流

動の角速度[rad/s],r:ヘリカル流路の中心半径

[m],Eem:海水中を流れる電流に伴う電場

[V/m]である.

上式で示した電磁体積力 f をヘリカル流路の

中心長さ lhc で積分したものが,ヘリカル型発

2

2av

exenehc

loss

U

d

lP

(1)

20/12

2Re

R

ds

dUDU avddRe

Re

51.2

7.3

/log2

Re

51.2

7.3

/log2

Re

12

7.3

/log2

2

10

10

10

22

BdC

AdB

dA

ABC

ABAs

(3)

2sin05.2

2sin946.0 42

e (4)

24arctan

2

r

lp

(2)

2

11

cen

C

2

1

A

Ahex

(5)

(6)

12 /1.1

0418.0582.0

ddCc

(7)

2

1

2

2 rrl

BnUV

hc

ave

(8)

)ln(2

1

1

2

r

r

LRin

(9)

2max4

1ree

in

VVR

P (10)

BE

BrBJf

BrJ

em

)(

2

(11)

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電における電磁ブレーキによる圧力損失ΔPem

となる.以下に式を示す.

(1)式~(12)式を用いて,各条件での性能予測

を行った.

3.3 計算条件

以下に性能予測を行った計算条件について述

べる.本研究では,まず発電機形状やその他の

条件にかかわらず,ヘリカル型発電機内部の海

水の流速が常に一定である条件で性能予測を行

った.これは発電機を大型化した際の発電機の

基本特性をとらえるためである.

次に,各条件での限界流速における性能予測

を行った.限界流速に関する説明図を Fig.5 に

示す.限界流速とは,ヘリカル型発電機を実際

に海流中に設置したときを想定し,各条件での

海流の持つ全圧が全てヘリカル流路内での海水

の流動による動圧と流体損失や電磁ブレーキに

使われたと仮定したときの流速である.位置エ

ネルギー以外の静圧がない海流では,限界流速

でヘリカル流路内を海水が流動するとき,ヘリ

カル流路の出口で静圧がゼロになる.

上記の条件において,限界流速 Ulimはベルヌ

ーイの定理より,以下のように表される.

ここで,U:海流の流速[m/s],ζ :流体損失係

数[-],Ulim: 限界流速[m/s]である.

なお,計算した条件は設置した箇所が水面下

10 m,20 m の時,海流の流速が 4 knot (= 2.0

m/s),2 knot (= 1.0 m/s)の時である.

続いて,電磁ブレーキによってヘリカル流路

内の動圧が変化する場合について性能予測を行

った.ヘリカル流路内の流速変化の説明図を

Fig.6 に示す.電磁ブレーキは,流体損失と違

い純粋な圧力損失ではない.電磁ブレーキとは

2 節でも説明したように,海水の流動方向とは

逆向きに働く電磁体積力であり,流れを妨げて

流速を小さくする方向に働く力である.従って,

電磁ブレーキは流速に影響するはずである.本

研究では,この電磁ブレーキによる影響を動圧

の圧力損失として考え,ヘリカル流路内の流速

が変化すると仮定し,ベルヌーイの定理より電

磁ブレーキを考慮した際のヘリカル流路内各部

の流速を求め性能予測を行った.

電磁ブレーキによって動圧が変化すると仮定

し摩擦損失を考えない場合,ヘリカル流路各部

での流速はベルヌーイの定理より,以下のよう

な動圧保存の式で表される.

ここで, U0:ヘリカル流路入り口での海水の

流速[m/s],U a:ヘリカル流路内のある地点 a

での海水の流速[m/s],na:ある地点までのヘリ

カル回転の数[-],lhca:ある地点 aまでのヘリカ

ル流路の中心長さ[m]である.

Fig.5 Illustration of limit value of flow velocity.

Fig.6 Illustration of flow velocity variation

induced by electromagnetic brake.

D

lVVB

lBrfdxP

hcree

hc

l

emhc

2

0

(12)

D

lBV

D

UrrnB

UghU

hcre

lim2

12

22

2lim

2

2

1

2

ghU

D

lBVc

D

rrnBba

a

acbbU

hcre

2

,2

1

2

4

2

21

22

2

2

lim (13)

a

acbbU

D

lBV

D

UrrnBUU

a

hcareaa

2

4

22

2

21

22

2220

,2

a

D

rrBnb

a2

12

22

2

20U

D

lBVc hcare

(14)

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(15)

本研究では,以上の三つの条件を基準として

性能予測を行った.

4. 性能予測結果

3 節で述べた各性能予測式および計算条件を

用いて,発電機を大型化した際の発電出力など

の性能予測を行った.性能予測を行うに当たり,

計算条件の煩雑化を防ぐために,ヘリカル流路

断面の形状において,ピッチ長 lpと内側電極外

半径 r1 を外側電極半径 r2 の関数として,以下

のようにおいた.

ここで,a:外側電極内半径に対するピッチ長

の係数,b:外側電極内半径に対する内側電極

外半径の係数である.

aおよび bは変数であり,ともに 0.1から 1.0

の範囲で,α/βの形で変化する.ここで α,βは

α,β = 1,2,3…10 の範囲で変化する整数であ

る.これらの係数により,大型化した際の性能

予測の比較を分かりやすくし,また性能予測の

結果を簡単な形で表せるようにした.以下に,

性能予測結果を示す.

4.1 最適形状の決定

ヘリカル型発電機の発電における最適形状に

ついて,性能予測より考察を行った.

本研究では各条件での限界流速を用いた性能

予測において,単位体積あたりの発電出力が最

大となる発電機形状に着目した.ここで,単位

体積あたりの発電出力とは,各形状の発電機の

発電出力を発電機の体積で割ったものである.

なお発電機は電極に覆われている部分のみとし,

前後の管路は含めないものとした.単位体積あ

たりの発電出力が大きいほど発電機の占有体積

に対する発電出力が大きくなる.

Fig.7 に限界流速での単位体積あたりの最大

発電出力と外側電極内半径の関係を,また

Fig.8に各条件での最大発電出力を示す aと bの

関係を示す.

Fig.7を見ると,印加磁場 7 Tにおいて,どの

条件でも外側電極内半径が 0.5 m であるとき最

大値をとることが分かる.このことから外側電

極内半径が 0.5m 程度の発電機が最適であると

考えられる.

Fig.8 を見るとわかるように,a = 0.5~0.8,b

= 0.15~0.25付近に計算データが集中している.

これは今まで基準として,実験に用いた発電機

形状(a = 0.75,b = 0.2)に近い領域である.特に

単位体積あたりの最大発電出力を示した r2 =

0.5 mでの最適形状は,どの条件でも a = 0.75,

b = 0.22であり,非常に基準形状に近い.

これらの結果から r2 = 0.5 m,a = 0.75,b =

0.22 である発電機形状が発電に最適であると考

えられる.本研究では,過去の研究との比較も

踏まえて,過去の研究で最適であるとした形状,

r2 = 0.5 m,r1 = 0.11 m,lp = 0.375 mである発電

機形状を基準形状として研究を進めた.

4.2 電磁ブレーキと流体損失の比較

発電機を大型化する際の電磁ブレーキと流体

損失の比較を行った.なお,印加磁場 B は 7 T

で一定とし,ヘリカル流路内の流速 Uavは 5 m/s

で変化しないものとする.

発電機が基準形状のまま相似拡大していく際

の流体損失と電磁ブレーキの比較を示した図を

Fig.9 に示す.この図を見ると,大型化に伴い

電磁ブレーキが比例的に増大するのに対し,流

体損失は徐々に減少していることがわかる.こ

のことから大型化すると,流体損失より電磁ブ

レーキの対策が重要になってくると考えられる.

4.3電磁ブレーキが発電出力に与える影響

流速が一定である条件と電磁ブレーキによっ

て流速が変化する条件において発電出力の予測

Fig.7 Relationship between power output per unit

volume and inradius of outer electrode.

Fig.8 Relationship between a and b in the maximum

power output. 212, brrarlp

63

Page 7: Kobe University Repository : KernelMHD (Magneto-Hydro-Dynamics) 発電の 研究を続け ている . 研究対象 は リニア型海流 MHD 発電 (4) から, ... Fig.1 Principle

を行い,電磁ブレーキが発電出力に与える影響

を調べた.

発電機が基準形状の場合,初期流速が 5.0

m/s,印加磁場が 7 T の時の電磁ブレーキを考

慮した場合と考慮しない場合の発電出力の比較

を Fig.10 に示す.なお,電磁ブレーキを考慮し

ない場合の平均流速は,初期流速のまま一定で

あるとした.

Fig.10 を見ると,電磁ブレーキが小さい,外

側電極内半径が 0.1 m や 1.0 m の時には,両者

の差はほとんどない.しかし,それ以上の大き

さでは明らかに両者の差が出ており,外側電極

内半径が 5.0 m の時に電磁ブレーキを考慮した

場合は考慮しない場合の 1/6 程度の出力しか出

ないことがわかる.これは電磁ブレーキが大型

化による影響を強く受けることに加え,発電出

力は外側電極内半径に大きく関係して増大する

ためである.

電磁ブレーキによる影響についてより詳しく

調べるために,今まで一様であるとしていた印

加磁場や電場の場所ごとの変化を考慮に入れて

計算した.その結果,発電出力は磁場の大きさ

に比べて流速に大きく依存していることがわか

った.従って,発電機を大型化する際には流速

を増大させることで電磁ブレーキによる影響を

相対的に小さくでき,発電出力を効率よく向上

させることができると考えられる.

5. まとめと今後の課題

本研究では様々な計算条件を想定し,ヘリカ

ル型海流 MHD 発電機を大型化する際の性能予

測を行った.以下に本研究のまとめを示す.

(1) 今後の研究の基準とするために,単位体積

あたりの発電出力が最大となる発電機形状を調

べた.その結果,外側電極内半径が 0.5 m,内

側電極外半径が 0.11 m,ピッチ長が 0.375 mで

ある発電機形状が発電に最適であることが分か

った.

(2) 大型化する際の電磁ブレーキ,発電出力お

よび流体損失について性能予測を行った.その

結果,流体損失は大型化に伴い徐々に減少して

いくのに対して,電磁ブレーキは比例的に増大

していくことがわかった.また,電磁ブレーキ

によって流速が変化する場合,発電出力は電磁

ブレーキを考慮しない場合に比べて約 1/6 とな

った.

(3) 流速と発電出力の関係について調べた結果,

初期流速を増大させることで電磁ブレーキが発

電出力に与える影響を相対的に小さくできるこ

とが分かった.この結果から,大型化する際に

は流速を上げる何らかの工夫が必要であると考

えられる.

今後の課題として,電磁ブレーキが動圧に影

響する割合等がよくわかっていないので実験的

にこれを明らかにすること,シミュレーション

ソフトを用いてより詳細な性能予測を行うこと,

ヘリカル型発電機の流路内部の流速を上げられ

るよう改良することなどが挙げられる.

謝辞

本研究の一部に対して,科学研究費基盤研究

A(24246143)の援助を受けました.ここに謝意

を表します.

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(4) 岩田 章, 佐治吉郎, 吉和雅雄:超電導海流

Fig.9 Comparison between fluid loss and

electromagnetic brake for large-scale generator.

Fig.10 Comparison between power output and initial

average velocity with both electromagnetic brake

and no electromagnetic brake.

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Page 8: Kobe University Repository : KernelMHD (Magneto-Hydro-Dynamics) 発電の 研究を続け ている . 研究対象 は リニア型海流 MHD 発電 (4) から, ... Fig.1 Principle

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