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2004 - 9「車両技術 228 号」 3 1.はじめに 721系電車は、1988(昭和63)年の1次車投入以来、1994 (平成6)年の7次車まで合計38ユニット、114両を製作し た。その後、3両固定編成の 731 系電車の導入を行ってき た。711 系電車の老朽車の置替計画に際し、当初 731 系5次 車の導入を計画したが、先頭車は製作コストが高くなるこ JR 北海道 721 系交流電車8次車の概要 とう はじめ 写真1 外観 要旨 北海道旅客鉄道株式会社の 721 系電車は、札幌圏の旅客輸送の主力として新千歳空港アクセス車両“快速エアポー ト”として多くが使用されている。2000(平成12)年12月に、二室からなる客室の一室を指定席とした“uシート” 車両がデビューし、大変ご好評を頂いている。このたび、721 系8次車として前後二室とも“uシート”化した車両 を新製するとともに、自由席車両にも新製車両の導入を行って、6両固定編成化し、“uシート”座席数の拡大、バリ アフリー対応などを行った。この新製車両は JR 北海道が築き上げた床下機器カバーやエアーカーテン装置など、寒冷 地独特の対策を盛込んだ車両構造となっていることが特徴である。 北海道旅客鉄道株式会社 運輸部 運用車両課 車両開発 写真2 uシート車外観(窓下の青と赤のカラー帯、出入 口のuシートシンボルに注目) 写真3 自由席車外観

JR北海道721系交流電車8次車の概要 · 2011. 11. 22. · 4 jr北海道721系交流電車8次車の概要 とから、721系6、7次車の3両ユニットの2編成を併結し

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Page 1: JR北海道721系交流電車8次車の概要 · 2011. 11. 22. · 4 jr北海道721系交流電車8次車の概要 とから、721系6、7次車の3両ユニットの2編成を併結し

2004 - 9「車両技術228号」 3

1.はじめに721系電車は、1988(昭和63)年の1次車投入以来、1994

(平成6)年の7次車まで合計38ユニット、114両を製作し

た。その後、3両固定編成の731系電車の導入を行ってき

た。711系電車の老朽車の置替計画に際し、当初731系5次

車の導入を計画したが、先頭車は製作コストが高くなるこ

JR北海道 721系交流電車8次車の概要

佐さ

藤とう

肇はじめ

写真1 外観

要旨

北海道旅客鉄道株式会社の721系電車は、札幌圏の旅客輸送の主力として新千歳空港アクセス車両“快速エアポー

ト”として多くが使用されている。2000(平成12)年12月に、二室からなる客室の一室を指定席とした“uシート”

車両がデビューし、大変ご好評を頂いている。このたび、721系8次車として前後二室とも“uシート”化した車両

を新製するとともに、自由席車両にも新製車両の導入を行って、6両固定編成化し、“uシート”座席数の拡大、バリ

アフリー対応などを行った。この新製車両はJR北海道が築き上げた床下機器カバーやエアーカーテン装置など、寒冷

地独特の対策を盛込んだ車両構造となっていることが特徴である。

北海道旅客鉄道株式会社 運輸部 運用車両課 車両開発

写真2 uシート車外観(窓下の青と赤のカラー帯、出入

口のuシートシンボルに注目)

写真3 自由席車外観

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JR北海道 721系交流電車8次車の概要4

とから、721系6、7次車の3両ユニットの2編成を併結し

て運用している快速エアポートの中間先頭車を活用し、8

次車としては、中間車だけを新製して、6両固定編成化し

たものである。製作両数は、中間電動車7両及び付随車14

両の合計21両で、これにより711系1、2次車は淘汰する

ことにした。また併せて2000年から導入している“uシー

ト”車が非常に好評なことから、既存編成も含めて“uシ

ート”車は前後二室ともuシート座席としてサービスの向

上を図ることとした。

(編集部注:721系及び731系電車は、それぞれ本誌185号:1989年及び212号:1997年参照)

2.車両の特徴721系8次車は、主に空港アクセス用の快速エアポートに

組込んで使用されるが、朝夕は、通勤車両として運用され

るため、車両コンセプトとしては、“空港へのアクセス車両”、

“通勤車両”の二つを兼ね備えた車両である。

快速エアポートは、ビジネスで利用されるお客様及び観

光で利用されるお客様が多いことから“uシート”の利用

促進を目的に座席数の拡大を行った。また冬期に車両から

の落雪による窓ガラスの破損を防止するために、側窓を全

てポリカーボネート板とするとともに、車両床下機器への

着雪を低減するために床下機器のフルカバー化などを行っ

た。

通勤車両として運用されることを考慮し、自由席車は朝

夕の混雑緩和対策として客室仕切りを廃止し、防寒対策と

して側引戸の半自動ドア化及びエアーカーテン装置を設け

ている。

3.デザイン3.1 エクステリアデザイン自由席車は、現行と同じ当社のコーポレートカラーであ

る緑のラインを基調としているが、“uシート”車は、空港

へのアクセス車両として、新千歳空港のイメージカラーで

ある青と赤を使用している。青と赤のラインを通すことで、

現行車両のイメージを踏襲し、縦の青帯で“uシート”の

範囲を表し、また上部に緑のラインを通し編成としての統

一感を持たせている。

出入台部には、“uシート”のシンボル標記を貼り“uシ

ート”車であることを表現している。

3.2 インテリアデザイン“uシート”車の室内デザインは、自由席車との差別化

を図り「ゆとりやなごみの感じられる空間」をコンセプト

に、落ち着きのある腰掛と、内装を木目調とアースカラー

でまとめた。また現行車両のデザインイメージを継承する

ために、座席の腰部に赤と青を配置している。

自由席車両のデザインは、ブルー系の腰掛で「空港駅や

北海道」をイメージし、オフホワイトで内装をまとめるこ

とで、「清潔感」、「明るさ」を表現している。

4.編成・レイアウト概要編成は、「現行のTc1、Tc2(制御車)に新製車M1(中

間電動車)2両と新製車T、Tu(中間付随車)各1両を組

込んで6両編成となるF5100、F5200番代編成(3編成)」、

「現行のTc1、Tc2と現行のM’(中間電動車)2両に新製車

T、Tu各1両を組込んで6両編成となるF4100、F4200番

代編成(4編成)」、それに「現行のTc1、Tc2に新製車M2

(中間電動車)1両を組込んで3両編成となるF5000番代編

成(1編成)」の3種類である。

Tu車は編成の4号車に組込まれ、3号車側に車掌室を設

けている。3ドア車両で“uシート”車を構成するため、

既存車同様、車両中央に客室仕切りを設けて二室の客室を

構成しており、各室に大形荷物置場を設置している。

M1車は3ドア車両の客室仕切りがない車両で、編成の

2号車及び5号車に組込まれる。

T車もM1車同様、3ドア車両の客室仕切がない車両で、

編成の3号車に組込まれ、4号車側に車いす対応トイレ

(真空式コンパクトトイレ)、車いすスペース及び介護者用

跳ね上げシートを設けている。

M2車は3両編成の2号車に組込まれる車両で、ほかの

既存編成と連結されるためTu車同様、3ドア車両で客室仕

切りを設けた二室の客室で構成している。

現行の編成番号、車両番号は8次車の導入に合わせ変更

した。車両番号の5000番代は、新製M1、M2車による編

成で回生ブレーキ有りを表し、4000番代は、既存M’車に

よる編成で、回生ブレーキのない車両である。また車両シ

ステムは編成前後の3両づつで一つのユニットを構成して

おり、6両編成中の新千歳空港寄りの編成に100番代、小樽

寄りの編成に200番代を付与した。

写真4 uシート車室内 写真5 自由席車室内

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2004 - 9「車両技術228号」 5

モハ721-5100�モハ721-5200�(M1)�

131(56)�

41.7

4 280�

アルミニウム製シングルアーム、空気上昇ばね下降式�

VVVFインバータ、回生ブレーキ付�

三相かご形誘導電動機 230kW×4台/両�

4 086

�モハ721-5001�(M2)�

90(56)�

41.8

サハ721-4200�サハ721-5200�(Tu)�

73(43)�

29.5

電動ベルト式戸閉装置�

サハ721-4100�サハ721-5100�(T)�

132(54)�

32.7

項 目 �

�形 式

定員( )内座席(人)�

質     量(t)�

最大寸法(㎜)�

用 途 �

構 体 材 料 �

電気方式・軌間(㎜)�

車 両 性 能 �

集 電 装 置 �

制 御 装 置 �

ブ レ ー キ 方 式 �

台 車 構 造 ・ 形 式 �

主 電 動 機 �

低 電 圧 電 源 装 置 �

蓄 電 池 �

空 気 圧 縮 機 �

冷 房 装 置 �

暖 房 装 置 �

戸 閉 装 置 側扉�

        妻扉�

保 安 装 置 �

列 車 無 線 装 置 �

表 示 装 置 �

照 明 装 置 �

放 送 装 置 �

使 用 線 区 �

車 両 製 作 会 社 �

主 回 路 製 作 会 社 �

長さ�

幅�

高さ�

諸       元�

20 800�

2 916�

普通鉄道旅客車�

ステンレス�

AC20kV架空単線式・1 067�

最高速度130㎞/h、加速度0.61m/s2(2.2㎞/h/s)非常・保安減速度1.44m/s2(5.2㎞/h/s)�

電気指令式応荷重付空気ブレーキ�

軽量ボルスタレス空気ばね軸はり式台車・N-DT721B N-TR721B�

T車:静止形インバータ方式(SIV)8.5kVA、10.5kW�

50Ah シール形鉛蓄電池�

T車:単相誘導電動機全閉 2段圧縮単動往復式 1 657㍑/min�

屋根上集中式ユニット形34.9kW、冷媒R407C�

シーズ線ヒータ、ファンヒータ�

単気筒複動式シリンダドアエンジン�

ATS-SN、EB、TE装置�

C型無線機�

車外:側面行先表示器(字幕式) 車内:車内案内表示器(LED)�

客室蛍光灯:40W、20W�

音声合成自動放送装置�

函館本線、千歳・室蘭線�

川崎重工業ñ(台車とも)�

(主変換装置)ñ日立製作所、ñ東芝  (主変圧器)三菱電機ñ�

(主電動機)三菱電機ñ、ñ日立製作所、ñ東芝�

表1 JR北海道721系電車8次車主要諸元(新製した中間車のみ)

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JR北海道 721系交流電車8次車の概要6

図1 編成図

注 枠で囲んだ形式番号の中間車を今回新製した。

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2004 - 9「車両技術228号」 7

図2 形式図(M1)

モハ721-5100代モハ721-5200代

図3 形式図(T)

サハ721-4100代サハ721-5100代

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JR北海道 721系交流電車8次車の概要8

図4 形式図(Tu)

サハ721-4200代サハ721-5200代

図5 形式図(M2)

モハ721-5000代

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2004 - 9「車両技術228号」 9

5.車両性能最高運転速度は、現行と同じ130㎞/hである。

力行性能は、空車から190%乗車までの応荷重機能を有し

ており、この荷重範囲での起動加速度(0→57㎞/h)は

0.61m/s2(2.2㎞/h/s)である。これは、既存M’車が組み

込まれる4000番代と同等の性能を有している。

721系5000、5100、5200番代の回生ブレーキは、731系で

採用したシステムをベースにした方式である。回生能力は

力行引張力と同程度の最大ブレーキ力を有しており、回生

ブレーキは、常用ブレーキ(B2N~B7N)時に作用し、速

度10㎞/hまでは回生ブレーキが有効なシステムとしてい

る。更に5100、5200番代は、T車遅れ込め制御を実施して、

回生ブレーキを極力有効に使用するような制御とし、回生

率の向上を図っている。

6.車体車体は、既存車と同じ車体断面で、軽量ステンレス構造

としている。窓の吹き寄せ部は板厚1.5㎜のダルフィニッシ

ュ仕上げで、その他の幕板、腰板、妻外板等は板厚1.5㎜の

バフ仕上げでビード出し(ひも出し工法)構造である。

出入台は、既存車両同様に片側3箇所としているが、“u

シート”車以外は側引戸の戸袋窓を廃止した。

客室窓は、全て固定窓とし、客室窓、出入台・側引戸窓、

車掌室・側開戸の昇降窓は、表面硬化処理を施した合成樹

脂板(ポリカーボネート)を使用し、冬期のバラスト跳ね

上げによる窓ガラスの破損に対して万全を期している。

冬期対策として、側引戸は断熱構造ドアを採用し結露防

止を行っている。またドア開閉不良を防止するため、ステ

ップ下面に配置しているレールヒータは、現行より戸先部

が十分加熱される様に配置した。

7.客室7.1 uシート車(Tu)Tu車は、編成の4号車に組込まれる指定席“uシート”

車であり、3ドア車両で客室仕切を設けているため、客室

は二室構成であり、各仕切戸はタッチ式自動ドアとしてい

る。各仕切りの出入台側には、「指定席/自由席」の区分表

示器を設け、各室にはスーツケースを縦置きできる大形荷

物置場を設けている。また車内表示器を客室の前後に設置

し、次駅案内やFM文字放送を表示している。

座席部の床はカーペット敷きとし、蛍光灯は現行車両と

同様に白熱電球色を使用し「暖かみ」、「ぬくもり」を演出

している。

腰掛は、回転リクライニングシートで1 030㎜のシートピ

ッチで、背面に大形テーブル、チケットホルダを装備し自

由席車との差別化を図った。脚台は通路側のみで、暖房器

を吊下式ヒータとし、既存車と比べ足元を広くした。

7.2 自由席車(M1、T、M2)M1車、T車は、731系と同様に客室仕切りがなく、防寒

対策として各出入台には半自動ドアスイッチ、エアーカー

テン装置、パーティションを設け、室内暖房も容量アップ

している。

出入口は、識別し易くするため、ドア、パーティション

を731系同様黄色とした。また出入口付近には、縦、横方向

に吊り手を設け、腰掛背ずり部の取手は、つかみやすい様

に大形化している。

パーティション横には、2人掛けロングシートを配置し、

その他は、既存車と同様転換シートを配置した。転換シー

トは、袖部の形状を丸形に変更し、シートピッチは現行と

同じ910㎜で、シート転換時の操作性や乗り心地の向上を図

っている。またTu車同様、脚台は通路側のみで、暖房器は

吊下式ヒータとし足元を広くしている。

M2車は、3両編成(F5001)の2号車に組込まれる車両

で、既存車と同じく客室仕切りを設けている。この編成は、

他編成と連結されるため、この車両のみ半自動スイッチ等

を装備していることが容易に確認出来ないためである。

なお、客室仕切りがあるので、各防寒対策は準備工事と

している。これは721系電車が札幌圏の主力の通勤車両とし

て運用されており、将来、混雑緩和対策として721系全車仕

切戸を撤去し、防寒対策として半自動スイッチ、エアーカ

ーテン装置を取付ける構想があるからである。

なお、M2車の客室仕切戸は片引の手動式で、客室内仕

切り上部に車内表示器を設けている。また客室は仕切壁横

からT車、M1車と同じくロングシート、転換シートを配

置している。

7.3 バリアフリー対策8次車には、次のバリアフリー設備を設けた。3号車

(T車)には車いす対応トイレ、車いすスペース及び介護者

用跳ね上げシートを設けており、4号車(Tu車)には一人

掛車いす対応シートを配置している。また各車両には次駅

案内表示器、側引戸開閉時には、ドアチャイムが鳴動して

注意を喚起する。車両連結妻部には、転落防止ほろを設け

ており、乗降口ステップ部には、段差を容易に識別できる

ように、黄色のすべり止めを設置している。

8.空調装置空調装置は、ユニット式を屋根上に配置している。空調

制御装置は、空調装置本体に内蔵され、モニタ装置から送

信される制御指令と設定温度を取込み、これらのデータと

各車の温度検出値により圧縮機の運転周波数可変による冷

房制御、各ヒータ類の稼働率可変による暖房制御を行って

いる。1台の空調装置内に2台の制御部を持つ構成で、両

制御部は各々に入力される指令、温度情報によりそれぞれ

個別に稼働させるため、きめ細かな制御を可能としている。

また換気指令時には空調装置内のダンパ装置を開き、室内

項 目�

車体長 �

心皿間距離�

車体幅�

片側出入口個数�

相当曲げ剛性�

相当ねじり剛性�

曲げ固有振動数�

ねじり固有振動数�

主材料�

特 性�

20 800�

14 400�

2 916�

3扉�

918(T車構体完成時)�

232(T車構体完成時)�

�13.85(T車構体完成時)�

9.65(T車構体完成時)�

ステンレス�

(㎜)�

(㎜)�

(㎜)�

(GN・m2)�

(GN・m2/rad)�

(Hz)�

(Hz)�

表2 721系電車8次車車体特性

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JR北海道 721系交流電車8次車の概要10

図6 床下機器配置(M1、M2)

図7 床下機器配置(T)

図8 床下機器配置(Tu)

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2004 - 9「車両技術228号」 11

図9 主回路の系統図

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JR北海道 721系交流電車8次車の概要12

送風機運転により換気動作を行う。

既存車より定員が増加したことにより、空調装置の冷房

能力は、既存車の1.5倍の34.9kW(30,000kcal/h)に向上さ

せた。

9.床下ぎ装冬期の走行により、床下機器への着雪を防止し、床下機

器の破損、ポイント不転換、融雪作業の省力化を図るため

に、床下ぎ装配置は785系中間増備車と同様な構造としてい

るが、豪雪極寒地での様々な経験及びデータに基づき更に

耐雪面で進歩させた構造としている。基本的な構造は、床

下機器間を板厚1㎜のパネルでふさぐ床下機器カバー方式

としている。また台車の前後は氷塊等の衝突が予想される

ことから、板厚3.2㎜の端部ふさぎを配置し、台車上部の台

枠下面も着雪しやすいので、車体台枠下面をステンレス板

でふさぎ、極力着雪しにくい構造としている。さらに、床

下機器の下部ぎ装限界を従来の185㎜から219㎜に拡大する

ことで、雪の舞い上げ防止を図っている。床下機器間をパ

ネルでふさぐ床下機器カバー方式は、ボディーマウント方

式と比較して低コストで着雪防止を図ることができるメリ

ットがある。

元空気タンク・ブレーキシリンダ・空気ばね・応荷重・

救援ブレーキなど使用頻度の高いコックは、集中配置し、

操作性を考慮して点検ふたを設けている。

10.電気機器10.1 主回路M1及びM2車に搭載されている主変換装置は、IGBT素

子を採用しており、コンバータ部が3レベル変調単相電圧

形PWMコンバータで、インバータ部が2レベル変調三相

電圧形PWMインバータを各2群搭載し、各々が2台の主

電動機を駆動する。

パンタグラフは785系中間増備車で採用したシングルアー

ム式で、高速走行時の架線追従性の向上およびメンテナン

ス性の向上を図っている。

主変圧器は、主変圧器送風電動機を廃止した走行風自冷

式変圧器とし、メンテナンスの省力化を図り、駅停車時の

騒音を低減している。

主電動機は、731系と同じ三相かご形誘導電動機(N-

MT731形)で、床上に設置した雪切装置による強制冷却方

図10 力行性能曲線

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2004 - 9「車両技術228号」 13

図11

動台車組立(N-DT721B)

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JR北海道 721系交流電車8次車の概要14

図12

従台車組立(N-DR721B)

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2004 - 9「車両技術228号」 15

式により1時間定格出力230kWとしている。

10.2 補助電源装置補助電源装置(SIV)はT車床下に搭載されており、主変

圧器の3次巻線の400V電源を入力し、コンバータ部では単

相サイリスタ混合ブリッジ回路のサイリスタの位相制御に

より安定したDC100V(10.5kW)を出力し、直流負荷への

電力供給とバッテリへの浮動充電、およびインバータ部へ

の電力供給を行っている。インバータ部は、コンバータ部

で得られた直流100Vを入力とし、IGBTを高周波でPWM

制御して得られる高次高調波の少ない交流50Hz波形をフィ

ルタで整形し、AC100V(4.25kVA×2)を出力している。

11.台車721系1000番代台車を基本とした軸はり式の軸箱支持装

置をもつ軽量ボルスタレス台車であるが、現行の台車空気

ばね上面高さより17㎜下げた。これは出入口を変更したた

め、出入口ステップとまくらはりが重なり、構造を強化す

る必要があり、ホームとステップの高さを既存車と合わせ

るため空気ばねを変更し、形式を動台車はN-DT721B、従

台車はN-TR721B形式に変更した。空気ばねは、ダイヤフ

ラム形で横剛性を向上させ乗り心地の向上を図っている。

基礎ブレーキ装置は、動台車、従台車とも既存車同様に踏

面両抱き式としている。

駆動装置は、タワミ軸継手にTD継手を使用した平行カル

ダン方式とし、TD継手のCFRP製タワミ板は1枚としてい

る。またその締結方法を、従来の折曲げ座金からハードロ

ックナットに変更している。

12.ブレーキ装置ブレーキ装置は731系ブレーキ制御方式を踏襲した回生ブ

レーキ併用の電気指令式空気ブレーキ方式としている。ブ

レーキ制御装置内の圧力センサユニットから各台車の荷重

信号を受信するとともに、各種信号を受信して4個の電空

変換中継弁をコントロールして、軸毎に独立したBC(ブレ

ーキシリンダ)圧力を与えている。また滑走検知時には、

従来のBC圧力制御弁を用いないで直接、電空変換中継弁を

コントロールしてBC圧緩め作用(再粘着作用)を行う制御

としている。また前後軸のBC圧力を変えることにより滑走

を抑制する軸重移動補償制御を行っている。

13.モニタ装置モニタ装置は、モニタ中央装置、モニタ端末装置、表示

設定器で構成され、主変換装置、ブレーキ受量器、空調装

置、自動放送装置、FM文字放送装置、車内表示器、側面表

示器とインターフェイスを取っている。また既存車への組

込となるため、既存車の機器はソフトウェアの変更を行っ

ている。

14.終わりに新千歳空港は、毎年約1,800万人のお客様が利用されてお

り、そのうち、約半数の方が“快速エアポート”を利用し

ている。8次車の導入と3月13日のダイヤ改正と同時に、

“uシート”専用の指定席券売機の設置や、札幌駅で新千歳

空港行き快速“エアポート”を全て5、6番ホームからの

発車させるなど、新たな空港アクセスの輸送体系を構築す

ることとなった。これからも“uシート”車が、ひとりで

も多くのお客様にご利用頂き、空港アクセス輸送の新しい

顔となることを、スタッフ一同心から期待している。

台車形式�

車体支持方式�

軸箱支持方式�

固定軸距�

軸受中心間距離�

車輪直径�

車軸ジャーナル径�

台車最大長(排障器なし)�

台車最大幅�

空車時空気ばね高さ�

空気ばね中心間距離�

空気ばね有効径�

ブレーキ機構�

ブレーキ倍率�

軸箱支持剛性�

(kN/㎜/box)��

1台車総質量�

ボルスタレス空気ばね支持�

軸はり式�

2 100�

1 640�

860�

120�

3 764�

2 655�

971�

1 900�

540�

踏面両抱き式ブレーキ�

(㎜)�

(㎜)�

(㎜)�

(㎜)�

(㎜)�

(㎜)�

(㎜)�

(㎜)�

(㎜)�

前後�

左右�

上下�

(㎏)�

動台車�

N-DT721B

従台車�

N-TR721B

9.8�

9.2�

5.3�

1.3�

6 755�

(主電動機含む)�

6.8�

8.8�

4.9�

1.0�

4 385

表3 台車主要諸元