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Copyright(C) 2004, Coaching Management Inc. All Rights Reserved. 1 <コーチング研修で成果を出すための7つの盲点> こんにちは。コーチング・マネジメント代表の野口嘉則です。あなたがこのレポート を入手された、その行動に敬意を表します。そして、このレポートを通じてあなたと 出会えたご縁を嬉しく思います。このレポートがあなたのお役に立ちますように! 教育研修費をムダに使わないために 当社のホームページ( http://coaching-m.co.jp/ )で「なぜ社員研修の効果が持続 しないのか?」をお教えしましたが、そのように、充分な成果につながらない研修は めずらしくありません。 このレポートでは、「コーチング研修で 最大限の 成果を出すための7つのポイント (盲点)」をお伝えします。コーチングは、上手に(=戦略的に)導入すれば、組織の 中のコミュニケーションの流れを活性化し、社員のモチベーションを高め、さらには、 自立型人財を育成します。ひいては、組織風土そのものを改革して、業績の向上に直 結する基盤を作ります。 そこで重要なのは、上記のような成果に確実に結びつくような「戦略的導入」をす ることです。この戦略的導入に当たって、盲点になりがちな重要ポイントが7つある のです。このポイントをクリアしないままコーチング研修が実施されているケースは、 めずらしくありません。このレポートは、コーチング研修の実施を検討される前に読 んでいただくのが理想的です。教育研修費をムダに使わないためにも、ぜひご参考に して下さい。 大前提がズレていると、すべてがズレてきます! コーチング研修を実施する前提条件として、まず、「コーチングとは何か」を正確に 理解していただくことが重要です。正確な理解があって初めて、的を得た導入戦略を 立てることができます。「コーチングを導入する目的は何か?」「自社にどのように役

<コーチング研修で成果を出すための7つの盲点>coaching-m.co.jp/report2.pdf17 せん(研修後、日が経つとともに忘れてしまいやすい)。

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<コーチング研修で成果を出すための7つの盲点>

こんにちは。コーチング・マネジメント代表の野口嘉則です。あなたがこのレポート

を入手された、その行動に敬意を表します。そして、このレポートを通じてあなたと

出会えたご縁を嬉しく思います。このレポートがあなたのお役に立ちますように!

教育研修費をムダに使わないために

当社のホームページ(http://coaching-m.co.jp/)で「なぜ社員研修の効果が持続

しないのか?」をお教えしましたが、そのように、充分な成果につながらない研修は

めずらしくありません。

このレポートでは、「コーチング研修で最大限の成果を出すための7つのポイント

(盲点)」をお伝えします。コーチングは、上手に(=戦略的に)導入すれば、組織の

中のコミュニケーションの流れを活性化し、社員のモチベーションを高め、さらには、

自立型人財を育成します。ひいては、組織風土そのものを改革して、業績の向上に直

結する基盤を作ります。

そこで重要なのは、上記のような成果に確実に結びつくような「戦略的導入」をす

ることです。この戦略的導入に当たって、盲点になりがちな重要ポイントが7つある

のです。このポイントをクリアしないままコーチング研修が実施されているケースは、

めずらしくありません。このレポートは、コーチング研修の実施を検討される前に読

んでいただくのが理想的です。教育研修費をムダに使わないためにも、ぜひご参考に

して下さい。

大前提がズレていると、すべてがズレてきます!

コーチング研修を実施する前提条件として、まず、「コーチングとは何か」を正確に

理解していただくことが重要です。正確な理解があって初めて、的を得た導入戦略を

立てることができます。「コーチングを導入する目的は何か?」「自社にどのように役

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立つのか?」「自社のどこから(どの階層から、どの部署から)導入するのがベストか?」

これらの問いはとても重要ですが、それ以前に、コーチングに対する理解が不完全だ

と、問いに対する答え自体がズレたものになってしまします。そこで、7つの盲点に

ついてお伝えする前の大前提として、コーチングについての正しい理解をしていただ

きたいと思います。まずは、「コーチングとは何か」の問いに対する私なりの答えをお

伝えします。

コーチングは「(1)コミュニケーション・スキル」

コーチングの1つ目の側面は「コミュニケーション・スキル」です。例えば、上司

が部下に対してコーチングを使う場合、コーチングスキルを使ったコミュニケーショ

ンを通じて、①部下のやる気を引き出し、②部下の自発的行動を促すことができます。

やる気だけでなく行動まで引き出すところが特長です。さらに、コーチングを使った

コミュニケーションは、③部下を自立型人財に育成します。自立型人財とは、言われ

たことしかやらないマニュアル型社員とは違って、「自ら考え、自ら行動し、自ら成果

を出せる人財」のことです。以上のように、コーチングは相手(部下)に対して「モ

チベーションアップ」と「能力育成」の2つの効果を同時にもたらします。

ではまず、「コーチングはなぜ相手のモチベーションを強力に高めるのか」の種明か

しから始めましょう。それは、コーチングが相手の内発的モチベーションを高めるス

キルであるということです。

モチベーションには、外発的モチベーションと内発的モチベーションがあります。

外発的モチベーションとは、外からの動機づけのことで、例えばアメとムチがこれに

当たります。「いい仕事をすれば昇給・昇進する。(=アメ)」「成績が悪いとペナルテ

ィーがある。上司に叱責される。(=ムチ)」などです。また、理論・理屈によるモチ

ベーション(例:「仕事とは・・・であるべきだ」)や、権威によるモチベーション(例:

社長命令、上司命令)なども外発的モチベーションに入ります。

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組織においては、この外発的モチベーションも当然必要です。しかし、「外発的モチ

ベーションだけでは社員を動かせない時代」に入ってきていることを多くの経営者や

コンサルタントが指摘しています。例えば、「外発的モチベーションとしての制度(成

果主義、目標管理制度など)を全面的に導入したにもかかわらず、社員のモチベーシ

ョンはまったく上がらない(むしろ下がった)」などという例はたくさん見受けられま

す。

一方、本人の内から湧いてくる「やる気」や「アイデア」によるモチベーションを

内発的モチベーションといいます。内発的モチベーションの特長は、外発的モチベー

ションよりもはるかに強力で、持続性があり、創造性を誘発するという点です。例え

ば、ウイークデイは「朝6時半に起きるのが眠くて辛い」と言っている社員が、休日

に趣味の釣りに行く時には、朝4時に起きても平気だったりします。その社員にとっ

て、釣りは内発的なモチベーションですので、「苦にならないし、疲れない」のです。

人は内発的モチベーションで動く時、アクティブかつエネルギッシュに行動します。

しかも持続性があります。また、多くの創造的な仕事は、内発的モチベーションの結

果です。仕事の中で、社員の内発的モチベーションを引き出すことができれば、社員

のパフォーマンスを最大限に高めることができるのです。

時代はどのように変わりつつあるか?(現代モチベーション事情)

内発的モチベーションがこれだけ強力なものであるにも関わらず、多くの企業は外

発的モチベーションに依存したマネジメントを行なってきました。なんと効率の悪い

ことでしょうか。そして、今や企業において、モチベーション・クライシス(モチベ

ーションの危機)が叫ばれる時代になったのです。

経済が右肩上がりだった高度成長時代においては、外発的モチベーションが充分通

用しました。「頑張ったら豊かになれる」「昇進して、おいしいものを食べたい」とい

うことが動機になりました。

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しかし、今はこれが通用しなくなってきています。特に若い社員ほど、この傾向は

顕著です。子どものころからおいしいものを食べて育ってきた人達は、頑張って昇給・

昇進することにハングリーにならないのです。「昇進しなくていいから休日を下さい」

という人も増えています。終身雇用制が崩れつつある今、昇進にこだわるよりも、プ

ライベートを大切にして精神的な満足感を満たすことを優先する人が増えているので

す。これは、外発的モチベーション中心の企業の中にあっては、精神的満足感が仕事

では十分には満たせない(=内発的モチベーションから来る満足感が得られない)の

で、プライベート志向に偏らざるを得ないことを意味しています。

この外発的モチベーション(アメ、ムチ、理論理屈、権威)が通用しなくなってき

ている傾向は、若い社員ほど強いのですが、現在の大学生や高校生たちが社会人にな

ってくるにしたがって、ますますこの傾向は強まっていくと言われています。これは

今の子ども達をよく観察しても推察できます。ということは、「内発的モチベーション

を高める戦略をどのくらい具体的に打ち出し、どのくらい組織に定着させていくか」

が、今後の企業の命運を握る重要な鍵になってくることは明らかです。

では、なぜ企業にとって、これまで内発的モチベーションが盲点になってきたのか?

それは、内発的モチベーションを引き出す体系化された手法が存在しなかったからで

す。社員のやる気を引き出すのが上手な経営者や管理職は存在します。彼らの多くは、

内発的モチベーションを引き出すことが上手なのです。しかし、「彼らの何を、どの順

番で学べば、彼らのように人をモチベートできるようになるのか?」が体系化されて

なかったのです。体系化されてないので、「秘訣は、どうもコミュニケーションにある

らしい」と多くの人が気づきながらも、目に見えにくいコミュニケーションに取り組

むよりも、目に見える制度や施策などの外発的モチベーションの方に力を注いできた

のです。

コーチングは、「社員をやる気にさせるのが上手な経営者」や「人材育成の得意な管

理職」、「名選手をたくさん育てている名コーチ」、彼らを研究し、彼らのコミュニケー

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ションの特長を抽出し、体系化し、習得しやすいようにスキル化したものです。つま

り、「モチベーションの達人」や「人材育成の名人」のスキルをトレーニングで習得で

きるようにしたのがコーチングなのです。

なぜ社員を「自立型人財」に育てないとまずいのか?

高度成長時代は、「上司に従順で、言われたことを忠実に頑張る」だけの社員でも充

分に通用しました。いわゆるマニュアル型社員でも、行動量を維持するだけのモチベ

ーションがあれば、それなりの仕事をしました。

しかし、時代は変わり、変化・変革の時代と言われるようになりました。環境の変

化のスピードも加速化し、現場での迅速な判断力や問題解決力が社員に要求されるよ

うになりました。上司におうかがいを立てないと動けない社員(=考える力、判断力

のない社員)では、変化のスピードについていけず、チャンスを競合会社に持ってい

かれてしまうのです。

コーチングは、社員(部下)に考えさせ、彼らが自ら答えやアイデアを見つけ出せ

るようサポートするコミュニケーションスキルです。社員の考える力や判断力、さら

には責任能力を飛躍的に高めます。

またコーチングは、「部下のレベルに合わせた権限委譲」を実現できるスキルという

こともできます。これまで、「権限委譲」=「放任的なやり方」ととらえていた経営者・

管理職の人達にとって、権限委譲はとても難しいテーマだったと思います。「まだ任せ

られない」「今のレベルで任せるのは心配だ」という理由で、なかなか権限委譲に踏み

切れないケースが多かったのです。権限委譲をしないため、いつまで経っても部下の

能力や責任感は高まらず、ますます権限委譲をできないという悪循環が起きていまし

た。

コーチングが画期的なのは、「放任ではなく、しっかりサポートしながらも、部下本

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人に考えさせ権限を移行していく手法」であることです。つまり、「権限を委譲しなが

らも、相談に乗る」というスタイルを確立するのに最適なコミュニケーションスキル

なのです。

コーチングは「(2)マネジメント手法」

コーチングの2つ目の側面は「マネジメント手法(経営手法)」です。「組織をマネ

ジメントする手法としてのコーチング」という視点こそ、企業に導入して成果を出し

ていく時に、とても重要な視点になります。特にコーチングは、「組織風土の改革」と

「ES(従業員満足度)の向上」を実現する手法として、非常にパワフルです。

企業をパソコンに例えれば、Windows XP とか Mac OSX などのOS(オペレーティ

ング・システム)にあたるのが、その企業の「組織風土」です。最新のアプリケーシ

ョンソフトを用意しても、このOSが古くて性能が低ければ、そのソフトはインスト

ールできません。同様に、新しい人事制度を導入しても、また、新しいシステムを導

入しIT化を進めても、それらを活かす組織風土がなければ制度もシステムも空回り

してしまいます。OS(組織風土)をバーションアップする必要があります。

組織風土というと捉えにくいものと思う方もいらっしゃいますが、組織風土を左右

しているのは「その組織でどんなコミュニケーションがとられているか」ということ

です。その組織でとられているコミュニケーションの傾向やパターンが、その組織の

風土を、ひいては企業文化を作っていきます。この切り口から見ると、どのようにし

て組織風土を変えていけばよいかが見えてきます。

コーチングを中心とした体系的なコミュニケーショントレーニングを組織の中に定

着させていくことで、「個性と才能を育てる土壌」「チャレンジを歓迎する風土」「前向

きな失敗が許される雰囲気」「ちょっとしたことでも、すぐに上司に報連相する習慣」

「社員どうしが承認し合う文化」などを組織風土として作っていくことができます。

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あなたの組織の血流量は?

もう一つ別の角度から、組織の中のコミュニケーションについて考えてみましょう。

人間の健康状態を計る一つの指標は「血のめぐり(血液の循環)」です。血行が良いほ

ど健康的であり、逆に、身体が老化してくると毛細血管などの血流量が減ります。組

織も同様です。健康な組織(=組織としての能力が高く、成果を出せる組織)ほど、

コミュニケーションの流れが活性化しています。コミュニケーションの量も多く、し

かもスピーディーです。

では、どのようにすればコミュニケーションを活性化させることができるのでしょ

うか?次のように嘆いている管理職は少なくありません。「部下からの報連相(報告・

連絡・相談)の量が少なくて困っている。中には、必要最低限の報連相しかしてこな

いやつがいる。これでは、その部下が何を考えているかわからない。」「うちでは、必

要最低限の報告すらしてこないやつがいる。何回叱っても改善されない。」・・・。彼

らは、部下から充分な情報が上がってこないので困っています。部下の考えが理解で

きないため、部下への指示・命令もうまく伝わりません。

このことは、経営の視点から見れば、とても深刻なことです。市場ニーズ・顧客ニ

ーズが多様化している現在、現場(川下)の情報を経営サイドにまで吸い上げること

は、時として、企業の存亡を左右するくらい重要なことです。部下から上司への情報

の流れが少ないということは、現場の情報が経営サイドにも上がってこないというこ

とです。

アサヒビールの危機を救ったのは・・・

かつて経営危機に瀕したアサヒビールは、樋口廣太郎氏をトップに迎え、現場の声

が経営サイドに上がってくるよう、社員の声に耳を傾け、ボトムアップの流れを徹底

的に作りました。おかげで「味に新鮮さがない」「ラベルが、かっこ悪い」という多く

の顧客の声が経営サイドに届き、味とラベルを変えたビールの発売に踏み切りました。

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銀色のラベルの「スーパードライ」です。顧客の声を反映させた「スーパードライ」

の発売により、アサヒビールは経営危機を脱したばかりでなく、後のドライ戦争をリ

ードするポジションにまで上りました。それまでは、顧客の声(=現場情報)は、聞

く耳を持たない管理職のところでストップしていたわけです。実際、アサヒを始め、

どこのビールメーカーも、味とラベルを変えることなく守っていたわけです。

多くの会社で、報連相の重要性ややり方を社員に教えています。にもかかわらず、

先ほど例に挙げたように、部下から情報が上がってこないと嘆く上司は非常に多いの

です。なぜ報連相が定着しないのでしょうか?それは、上司側のコミュニケーション

に問題があるケースが多いのです。部下の目で見ると、「とても気楽に相談できる雰囲

気ではない。」「下手に報連相すると責められてしまいかねないので、なるべく報連相

しないに限る。」などと考えたくなるようなコミュニケーションしか取れない上司が、

日本の企業には、あまりにも多いと思います。コーチングは、そこを根本的に改善し

ていきます。上司・部下間のコミュニケーションの量が増え、上司・部下間の考え方の

ギャップが埋まり、職場がチームとして一体化してきます。

ボトムアップとトップダウン、どっちがいい?

コーチングは、ボトムアップの情報の流れを促します。ここで、ボトムアップとい

うことについて、大切なことをお伝えします。よく「ボトムアップ型とトップダウン

型と、どっちがいいか?」と問う人がいらっしゃいます。それに対して、先ほどのア

サヒビールを再建した立役者である樋口廣太郎さんや中條高徳さんは、次のようにお

っしゃいます。「ボトムアップもトップダウンも両方必要である。下から上へ、上から

下へ、双方向の流れがあって初めて、それぞれが機能する。片方だけでは機能しない。

トップは、組織の方向性や戦略を決めたら、トップダウンで組織の末端にまで伝えな

いといけない。それが、末端まで伝わるかどうかは、日ごろから聞く耳を持って、ボ

トムアップの情報にどのくらい耳を傾けているかで決まる。」つまり、ボトムアップの

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風土があってこそ、トップダウンも機能するということです。逆に、ボトムアップの

風土がない(トップダウンだけの)会社では、「トップダウンで伝えたことが、なぜか

末端まで浸透しない。社員は理解したような顔をするくせに、なぜか定着しない。」と

いうことになるのです。

優秀な人材を確保するためには、ESの向上が不可欠!

コーチングを導入して、「社員の能力を発揮させる土壌」「現場の声に耳を傾ける風

土」を作っていくと、ES(従業員満足度)が向上してきます。これは、社員のモチ

ベーションを高める上で有効なのはもちろんですが、優秀な人材を確保する上でも非

常に重要です。リクルートワークス研究所の調査(2002 年)によると、「いずれ転職

したい」という転職意向者は 39.7%もおり、若年層ほど転職意向は強まり、20 代では

50%を超えています。では、なぜ転職したいのか?その理由のトップ3は、

(1)現在の職場環境では、自分の能力が発揮できない。

(2)現在の職場環境では、自分が自分らしく生きることができない。

(3)現在の職場では、自分のためになるような教育や経験を得ることができない。

これを逆に考えると、魅力ある職場とは、

(1)能力を最大限に発揮させ、

(2)各自の個性を尊重し、

(3)能力の向上をサポートする「人材育成の仕組み」がある職場。

これはまさしく、コーチングが定着した職場の状態ですね。

今、企業も「誰からも入りたいと思われる企業」と「誰もが働きたくないと思う企

業」への二極分化が進んでいっています。日経ビジネス(2002.4/29)の特集「人と会

社の新しい関係」の中で、次のようにコメントされています。「企業は、働く人の意識

が変わりつつあることを、過小評価すべきではない。あらゆる面で、既存の人事制度

は試練を受ける。社員と企業が相互に利益を得るウィン-ウィン関係の構築が急がれ

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る」と。

マネジメント手法としてのコーチングは、企業の中のコミュニケーションを活性化

し、組織風土を変革し、ボトムアップの情報の流れを作り出します。ボトムアップの

流れができるということは、トップダウンを強く機能させることにもなります。また、

人間関係の問題を減少させ、ESを向上させ、優秀な人材を確保する基盤を作ります。

以上のことからも、コーチングが経営手法として非常にパワフルなものであることや、

現代という時代にマッチしたものであることがわかります。より詳しく理解していた

だくためには、当社のホームページ(http://coaching-m.co.jp/)をご参照ください。

第1の盲点「研修前の動機づけと課題の明確化」

では、コーチング研修で成果を出すための1つ目の盲点からお伝えしましょう。そ

れは「研修の実施前に、研修での学習効果を高めるための事前準備をすること」です。

この事前準備は、一般的に軽視されがちなのが実情で、簡単な事前アンケート程度で

すませてしまっているケースが非常に多いようです。そこで、4つの事前準備をお伝

えします。

1日研修であれ2日研修であれ、限られた時間内で、いかに学習効果を高めるかと

いうことは、非常に重要です。学習効果が高い状態とは、研修において習得したスキ

ルを知識で終わらせずに、実際の仕事での実践に繋げ、さらに成果にまで結び付ける

ことができる状態です。

その学習効果は、研修のスタート時点での、次の2点に大きく左右されます。

(1)参加者の研修に対するモチベーションがどのくらい高まっているか

(2)参加者の課題がどのくらい明確になり、問題意識がどのくらい高まっ

ているか

まずは、研修へのモチベーションを高めるポイントについて触れてみます。参加者

の取り組む姿勢によって、研修での学習成果が左右されるわけですから、参加者が受

け身で(学校の生徒のような感覚で)参加するのではなく、自分ごととして主体的に

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参加することが大切です。

< 1 > 事 前 広 報 の 工 夫

そのポイントの一つは、研修に対する参加者の「目的意識」を最大限に高めること

です。参加者にとって、研修で得られる成果が具体的にイメージできるほど、目的意

識が高まります。それも、自分の仕事上の「どんな問題」に対して「どのように役立

ちそうか?」が具体的にリアルにイメージできたらベストです。そのための方法の一

つは、参加者が「自分の仕事上の課題を解決できそうだな!」「そんなスキルなら身に

付けたい」「こんなテーマの話が聞きたかった!」と思うような文章で「研修案内レタ

ー」を作り、できれば1ヵ月前くらいには、参加者に配っておくことです。例えば、

レターの中で「研修の目的」や「期待される成果」を伝える場合の文章を考えてみま

しょう。営業マン(セールス・パーソン)向けのセールス・コーチング研修を例にし

てみましょう。

(悪い例)

「管理職としてのマネジメントスキルのアップ」

「部下のやる気を引き出すためのコミュニケーション・スキル習得」

・・・これでは、あまりにも一般的かつ抽象的で、参加者の心が動きません。

インパクトがない文章と言えます。

(良い例)

「次の3つのスキルを習得し、職場で使えるようにする。

①部下が心を開いて相談を持ちかけてくるようになる技術【ペーシング】

②こうすれば部下は自ら考え自ら動くようになる【質問のスキル】

③部下のモチベーションを高める叱り方がある!【アクノレッジメント】」

・・・これなら具体的で参加者の興味を引きます。期待値が高まります。

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研修案内レターを作る時には、研修講師にも相談して、文章をしっかり考えること

が必要なのです。

< 2 > 事 前 ア ン ケ ー ト の 工 夫

研修前のモチベーションを高める2番目のヒントは事前アンケートです。事前に実

施するアンケートの内容を工夫することで、参加者のモチベーションを確実に高める

ことができます。その内容については、研修講師とも相談の上、自社の事情に合った

ものを考えてみられるのがよいと思いますが、一般的なアンケート項目の例も挙げて

おきます。

「現在、職場において問題を感じているのは、どんなことか?」

「どんなスキルを高めたいか?」

「何が解決できたらもっと成果が出ると思うか?」

「研修で、どんなテーマを扱ってほしいか?」

「研修の内容ややり方についてのリクエストは?」・・・等など

アンケートを実施することで、参加者の姿勢が、「あらかじめ用意された内容の研修

を受ける」という受け身な姿勢から、「研修に自分のリクエストや意見を反映できる」

という主体的な姿勢に変わります。もちろん、結果として、参加者からのリクエスト

を採用できないケースもありますが、その場合も、アンケートを通して「自分のリク

エストを検討してもらった」という感覚を持ってもらうよう工夫できます。

また、実際、アンケートの内容が、研修内容を考える上での重要なヒントになるケ

ースは多く、アンケート結果については、研修講師にもフィードバックすることが大

切です。研修講師が、参加者の生(なま)の声を参考にして、参加者が実際に抱えて

いる課題のヒントになりそうな事例を用意したり、参加者の課題に直結するエクササ

イズを組み込んだりすれば、研修の効果はグンと上がります。理想的には、「参加者」

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と「企画者(経営者や担当者)」と「講師」が共同で研修を企画しているという雰囲気

にまでなれば、参加者の取り組み姿勢は最高の状態になります。

< 3 > モ チ ベ ー シ ョ ン 向 上 & 課 題 明 確 化 の 切 り 札 「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン サ ー ベ イ 」

研修の実施前に、参加者のモチベーションを高め、課題を明確にする最もパワフル

なツールとして、当社では「コミュニケーション・サーベイ(調査)」を使うことを提

案しています。これは、研修に参加される方達の、職場でのコミュニケーションの現

状を、10 の重要ポイントに絞って調査するものです。参加者の部下の方達から評価し

てもらう方法と、360 度評価でやる方法があります。

参加者は、自分のコミュニケーションの現状を 10 項目それぞれの点数として見るこ

とができるだけでなく、研修参加者全員の集計平均データと比較した自分の数値が、

各項目ごとにわかるようになっています。つまり、全体から見た自分の強みと課題が

明確にわかる仕組みです。このサーベイの結果を事前に知ることによって、参加者は

自分の課題を明確化でき、研修に対して強くモチベートされることになります。

さらに、このサーベイが最も強力なツールたるゆえんは、研修後のスキル習得度や

成果を評価するツールとしても使えることです。つまり、研修後の実践と定着を計測

することができるので、参加者達の励みになるわけです。

< 4 > 事 前 課 題 の 工 夫

研修前に事前課題を提供して取り組んでもらうことは、研修の予習にもなりますし、

また、参加者の参加意識を高めるのに有効です。また、事前課題に取り組んでから研

修に参加することで、研修の中での気づきや体験が深いものになります。事前課題は

参加者の負担にならないよう1つか2つに絞り、また、1ヵ月前~2週間前くらいに

は提供するのがよいと思います。事前課題も研修講師と相談して、自社の状況に合っ

たものを考えるのがベストですが、参考までに、いくつかの例を挙げておきます。

(1)添付の資料を読んで、感想文を書いておいて下さい。研修の中で、その感想

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についてディスカッションしてもらう場を設けます。

(2)次に挙げる課題図書の、特に第1章と第3章を読んでおいて下さい。研修内

容の予習になる章です。

(3)添付資料の例題を読んで、自分なりの解決策(アイディア)を3つ挙げてお

いて下さい。研修の中で発表してもらいます。

(4)添付の資料に書いてあるコミュニケーション方法を、職場で2人以上に対し

て実行してみてください。研修前に体験しておくことで、研修での気づきが

深まります。

(5)添付アンケートを職場で部下に対して実施し、部下の仕事意識などをリサー

チしておいて下さい。

(6)あなたから見て、「仕事ができる」と思える人を3人選んで(他部署の人でも

可)、次のテーマについてインタビュー(質問)しておいて下さい。

(7)添付の「キャリアプラン&ライフプラン整理シート」に記入しながら、自分

の人生設計について考え、今回の研修内容を自分の人生設計にどのように役

立てることができるかを考えておいて下さい。

・・・等など

第2の盲点「学習効果を高める研修の進め方」

第2の盲点は、「学習効果を高める研修の進め方」です。これについては、ポイント

を2点に絞ってお伝えします。

< 1 > フ ァ シ リ テ ー タ ー の ス キ ル

研修での学習効果を高め、その後の実践につなげるためには、研修におけるファシ

リテーションがきわめて重要になってきます。研修におけるファシリテーションとは、

「参加型の場づくりをし、参加者の参加意欲を高め、参加者から気づきを引き出し、

さらに、参加者の学びを定着させるスキル」であり、また、「グループの相互作用を促

進して、限られた時間の中で最大限の成果を創り出すスキル」とも言えます。

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研修講師のことを最近はファシリテーターと呼ぶことが増えてきましたが、講師の

ファシリテーションスキルのレベルには非常に大きな開きがあります。当然といえば

当然のことですが、ファシリテーションスキルの高い講師を選ぶことは、研修の成果

を左右する重要事項です。選ぶ基準としては、①ファシリテーションの学習歴と②フ

ァシリテーションの経験量の2つがポイントです。①に関しては、「実際にファシリテ

ーションを学び、トレーニングを受けているかどうか?」を講師に聞いてみることが

できます。そして、さらに重要なのが②の経験量です。これについても、講師本人に

聞いてみるのが早いと思います。

ファシリテーションの具体例も挙げておきましょう。例えば、研修の中で、参加者

がロールプレイング形式のエクササイズをやったとしましょう。その後で、講師が参

加者に「やってみて感想はどうですか?」と質問したとします。さて、質問された参

加者は、感想を聞かれたわけですから感想を答えます。「楽しかったです。役割になり

きって演じました。」という感想もあるかもしれません。しかしこれは、「参加者が何

を学び、それが仕事とどう関係していて、これからどうしていきたいか」と関係ない

答えです。では、講師が感想を問うのではなく、「やってみて何か気づいたことはあり

ましたか?」と質問したらどうでしょうか。質問された参加者は、自分の中での気づ

きを探ります。例えば「自分は相手の話を聞けてないなーと思いました。」と答えたと

しましょう。そこで次に、講師が、それを仕事の場面と結びつける質問をします。「そ

の気づきは、お仕事にどのように関連していますか?」。「うーん・・・。あっそうか!

最近部下からの相談が少ないなと思ってたんですが、自分の聞き方にも原因があるか

もしれませんね。」と参加者。さらに講師が、「これから、どんなことに気をつけたい

ですか?」。「えー、そうですね。とりあえず、部下の話をさえぎって話すことはやめ

ようと思います。」。以上は、ファシリテーションの一つの例です。ファシリテーショ

ンには、質問によって参加者の気づきを引き出すスキルがいくつもあります。上記の

例は、「認知(気づき)」→「関連付け」→「応用」というステップを踏むことで、エ

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クササイズでの体験を、職場で実践する実行課題に結びつけるスキルです。

別の例を挙げます。研修を終えるときに、「今日の研修の感想を一言ずつ聞かせてく

ださい」と講師が問いかけたとします。すると、参加者は見事に感想を話します。「楽

しくて、眠くなりませんでした。」とか「講師のキャラクターが良かったです。」とか、

まさしく“感想”を答える参加者が多いわけです。もし、研修の成果を振り返って再

確認してもらいたいなら、「今日の研修の収穫・成果は何でしたか?」という質問が有

効です。参加者は問いかけに応えて、自分の中での収穫を探します。「探して」→「見

つけて」→「言葉にしてアウトプットする」。このプロセスで、参加者の学習は定着す

るのです。収穫を充分に探ってもらうには、「今日の研修の収穫のトップ3を教えてく

ださい。」という問いかけも有効です。参加者も、3つの収穫を見つけるためには、深

く振り返る必要があります。その分、気づきも深まります。ただし、この場合は、適

度に時間を提供してあげてください。

さらにファシリテーターは、一人の参加者からの質問があった時に、それを、他の

参加者にも考えてもらうきっかけとしたり、他の参加者からも知恵やアイデアを引き

出して、全体を一つのチームとして機能させることもします。そのことで、気づきや

アイデアが全体で共有できます。(もちろん、ケースに応じて、参加者からの質問に即

答することもあります)。ファシリテーションは、参加者の相乗効果(シナジー)を生

み出すスキルなのです。

< 2 > 体 験 学 習 を 中 心 に し た プ ロ グ ラ ム

学習には「概念学習」と「体験学習」があります。「概念学習」とは、例えば「コーチ

ングとは、部下の・・・・・」というような概念を学ぶもので、知識を覚えることが中心

になります。これが中心だと参加者が受け身になりやすいのです。また、左脳による学習

なので、実際の仕事現場での場面とつながりにくく、研修後の定着になかなか結びつきま

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せん(研修後、日が経つとともに忘れてしまいやすい)。

それに対して、「体験学習」とは、参加者が能動的に参加することで様々な「体験」を

得られるような学習方法です。右脳も使う学習とも言えます。体験学習は、教育効果を高

める2つの原則を満たしています。2つの原則とは、1.直接経験の原則(自分で体験す

ると身に付く)、2.自発・創造の原則(主体的に取り組むと新たな知恵が生まれる)、

です。体験学習の中で代表的なものは、各種エクササイズ形式のワーク(教育ゲーム、ロ

ールプレイング、など)です。また、ディスカッションも体験学習の一つです。エクササ

イズとディスカッションをうまく組み合わせることで、さらに効果が増します。

研修の中では、もちろんレクチャー(概念学習)も必要ですが、体験学習を中心にプロ

グラムを組み、さらに、プログラムの構成に適度な変化をもたせることが大切です。例え

ば、ロールプレイング、教育ゲーム、レクチャー、全体ディスカッション、少人数ディス

カッション、記入シート、ビデオ上映などを組み合わせて変化を持たせると、参加者を引

き込んで高い集中度を維持させることができます。また、レクチャーの時も、パワーポイ

ントなどで図解化したものを見せると、右脳も刺激して参加者の理解を助けます。

《参考》

※ アメリカの心理学者レビンは、第二次大戦中、食肉不足を緩和するために、普段あまり食べること

のない牛の臓物を食べるように家庭の主婦を説得することを研究した。

主婦を二つのグループに分け、一方のグループには、栄養学の専門家による講演会に参加してもら

った。講演会の内容は、臓物を家庭で調理し、食卓にのせることをすすめる話だった。

もう一方のグループには、臓物を食卓にのせることの利点を討論するディスカッションに参加しても

らった。この討論会では、臓物を自分の家庭で使うかどうかについて話し合いが行なわれ、最終的に

「家庭で使う」と皆で決めた。

数週間後、この二つのグループの主婦たちの食習慣を調べたところ、ディスカッションをやった方

のグループだけ、主婦のほとんどが実際に臓物を使っていることがわかった。

これにより、講演形式で説得するよりも、集団で討論して臓物を使うことを決めた時の方が、説得効

果があることがわかった。これは、概念学習よりも体験学習の方が効果的である例である。

以上、研修の中身については、2点に絞ってお伝えしました。

他にも、「研修自体の構造をコーチングと同じ構造にする」「エクササイズの題材を実

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践につながるリアルなものにする」「研修の中に、事前アンケートや事前課題とリンク

させたコンテンツを用意する」「参加者の仕事内容や業種に合った事例を用意する」な

ど、いくつかポイントがありますが、詳しい説明は省略します。

第3の盲点「研修後の定着のフォロー」

第3の盲点は、「研修後の定着のフォロー」です。参加者達の実践をサポートし、コ

ーチングを定着させる仕組みが必要です。この仕組みをしっかり作っておかないと、

参加者個人の意志にのみ依存することになります。意志の力だけで成果を出すまで持

っていける人は、一部の人に限られてしまうでしょう。

また、実践を始めた参加者達は、そこで新たな問題にぶつかったりします。それら

をクリアすれば、コーチングの定着に向けて大きく前進することになります。そこで、

効果的なフォローをすることが重要です。

フォローのやり方は様々です。研修内容や研修参加者の仕事内容に応じて、最適な

やり方を考えることが大切です。いくつかのやり方をご紹介します。「フォロー研修」

を実施することは、とても効果的です。1日研修だと理想的ですが、半日(3~4 時間)

研修も可能です。もし、参加者達の時間の問題などでフォロー研修の実施が難しい場

合、「電話会議システムを使ったフォローミーティング」が効果的なのでおすすめです。

同時に複数(何十人でも可)の参加者が、職場や自宅から電話で参加することができ

る電話会議システムを使います。このシステムを使えば、参加者達も参加しやすく、

また、1時間程度のミーティングを何回か設定する(例えば、週1回×1ヵ月間)こ

ともでき、継続的なフォローの場を作ることができます。この電話会議システムは、

参加者も講師も、電話一本で職場からでも自宅からでも参加できるので、日中だけで

なく夜の実施も可能です。当社もこのシステムは、よく使います。そして、顧客企業

には大好評です。もう一つ「フォローコーチング」も効果的です。これは、参加者が

講師(もしくはプロ・コーチ)から「電話によるコーチング」をマン・ツー・マンで

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受ける方法で、最もきめ細かなサポートを受けることができます。また、以上に紹介

したような方法を複数組み合わせる場合もあります。

また、研修後のスキルアップの度合いを計測して数値化するツールを使えば、参加

者にとって、非常に励みになり、実践意欲を高いレベルで維持できます。当社の場合、

そのツールとして、第1の盲点でご紹介した「コミュニケーションサーベイ」を主に

使い、非常に高い効果が出ています。

他には、「研修終了時に、参加者達が実践度や定着度を自己チェックできるようなチ

ェックリストを渡す」「研修終了時に、『今後の実践課題』を名刺大のカードに記入し

てもらい、研修後1ヵ月間携帯してもらう」「参加者同士のピア・コーチングをやって

もらう」などの方法も有効です。

第4の盲点「なるべく上層部から導入する」

第4の盲点は、「なるべく上層部から導入する」です。「うちの会社の中堅社員向け

にコーチング研修をやってほしい」という依頼があった場合、私は「その中堅社員の

上司の方達(=管理職)は、すでにどこかでコーチング研修を受けられたのですか?」

と質問します。もし、その答えがNOである場合、私としては、まず上司(管理職)

から研修を実施することをおすすめします。

例えば、中堅社員さん達が最初にコーチング研修を受けたとします。研修を受講し

た中堅社員さん達は、研修終了後、自分の部下にコーチングを使いながら、成果に繋

げていこうとするでしょう。しかし、その中堅社員さん達が、自分の上司(管理職)

からは指示・命令・叱責中心の指導をされていたらどうでしょうか?

人は、自分が指導されたように指導します。自分が育てられたように育てます。つ

まり、無意識のうちに、自分の上司をモデルにしているのです。これを心理学でモデ

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リングといいます。だからこそ、コーチングの導入は、上層部からしていくほど、効

率よく組織に定着していくのです。

特に中小企業の場合、できればトップや経営幹部からコーチングを導入するのが理

想的です。トップと経営幹部だけで少人数のコーチング研修をやり、その後、管理職、

中堅幹部と実施していくわけです。これは、最も早く組織風土改革を推進することに

なります。

トップや幹部の方が研修を受けるのが難しい場合、エグゼクティブ・コーチング(プ

ロ・コーチによるマンツーマンのコーチング)を受ける方法もあります。電話による

エグゼクティブ・コーチングの中で、コーチングについて学んだりトレーニングした

りする時間も用意できます。さらに、エグゼクティブ・コーチングでは、組織へのコ

ーチングの定着についてのサポートを受けることもできます。そして、社員(部下)

に研修を実施していけば、自然に組織へ定着させていくことが可能となります。

また、「諸事情により社員といっしょに研修を受けるのが難しいが、自分自身もコー

チング研修を受けたい」という経営者の方のために、当社では公開セミナーとして「経

営者コーチング塾」(東京、大阪、広島)を企画しています。これについては、当社ま

でお問い合わせください。

第5の盲点「制度、施策との連動」

第5の盲点は、「制度、施策との連動」です。この第5の盲点あたりから、各社、各

組織の状況によって対応の仕方が様々なので、文章で充分な説明するのは難しくなっ

てきます。このレポートでは、簡潔にお伝えしたいと思います。

まず、一番強力なのは、コーチングの導入を会社の経営理念や経営戦略とリンクさ

せることです。特に中小企業さんでの事例が多いのですが、例えば、コーチングの導

入をきっかけに、経営理念の一つに「社員を大切にする(ESの向上を追及する)」と

か「現場の声に耳を傾ける(現場主義)」などを新たに加えるなどの例があります。も

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ちろんこれは、コーチングの定着のために経営理念を加えたのではありません(これ

では順番が逆ですね)。「社員を大切にすることを経営理念として新たに決めたから、

その手段の一つとしてコーチング導入をする」ということです。また、コーチングの

導入にともない、経営戦略の一つとして、「コミュニケーション改革を行いボトムアッ

プの組織風土を作る」などを打ち出した例もあります。

その他、コーチングの手法を取り込んだ制度や施策、イベントなどを仕掛けること

も可能です。また、朝礼に、コーチングの考え方を取り入れたコーナーを設けたり、

会議をコーチングと同じ構造で進めたり(これは非常に会議の生産性を高めます!)

と、いろいろアイデアがあります。このように、コーチング研修だけでなく、経営戦

略とか制度とか施策とかにコーチング的な手法をうまく取り入れれば、コーチングの

定着は加速化するのです。

第6の盲点「メンタル面(人間力)の強化」

第6の盲点は「メンタル面の強化」です。コーチングをスキル・テクニックとして

教えるだけでなく、コーチング的な考え方や心構え(=コーチングマインド)といっ

しょに伝えることは非常に有効です。これは、参加者達が「リーダーとしての自分の

あり方」を見つめ直すきっかけになります。さらに、自立的な考え方を訓練すること

で「リーダーとしての軸」も確立され、より効果的なコーチングを行える素地ができ

ます。

ただ、このメンタル面の強化は、プログラムに上手に組み込む必要があります。最

初から強調すると「精神論」みたいになって、実践と繋がりにくくなります。入り口

としては、まず形から(スキルから)入ることをおすすめします。そして、スキルの

練習をするプロセスで、段階的に伝えていくのが効果的です。参加者からの質問があ

ったときに、その質問への回答にからめて伝えることもありますが、これはとてもイ

ンパクトがあります。

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1日研修の場合でも、プログラム終了までに、「どのような心構えを強化していけば、

コーチングが上達するのか?」を伝えておくことは非常に重要です。「心構え」を抜き

にして、表面的な技術としてのみコーチングを用いることは、とても効率が悪いから

です。

人材育成の最高の達人と言われる吉田松陰の教育法は、驚くほどコーチングに似て

います。「彼はコーチングを習っていたのではないか?」と思ってしまうほどです。よ

く研究してみると、松陰の「ものの見方」は、「コーチングマインド」そのものです。

(詳しくは私のメールマガジンのバックナンバーをご覧ください。私のHPからご覧

になれます)。松陰のように「ものの見方」や「門下生に対する心構え」がコーチング

的であれば、コーチングを習っていなくても、見事に人材を育てるようなコミュニケ

ーションが取れるのです。だからこそ、スキルを教えると同時に、「どのような『心構

え』や『ものの見方』を強化していけばよいか」も同時に伝えておくことは、コーチ

ングを定着させる上で、非常に有効なのです。

一定期間の間に数回の研修を実施して、長期的な育成をしていく場合は、このメン

タル面の強化を本格的にやることができます。メンタル面の強化は、「EQの向上」と

言うこともできます。そして最終的には、参加者の人間力・人間性を高めていくこと

を目指します。この人間性がビジネスにおいて非常に重要になってきています。

国内で最大級の経営コンサルティング会社である船井総合研究所の船井幸雄会長と

小山政彦社長は、その共著である「長所伸展の法則」で、次のように語られています。

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多少スキルが劣っていても、人間性がある以上のレベルに達した「人柄の良い人」な

ら、上司やお客さんから好かれて、結果として多くの仕事に関わることになるはずで

す。逆に、いくら知識や能力が人より優れていても、人柄に問題があれば「仕事がで

きる」という評価を得るのは難しいでしょうね。

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それに今では、商品知識やセールストークが武器のビジネスマンよりも、人間的に

好かれるタイプの人のほうがモノをよく売ります。業績そのものも、人間性のほうに

軍配が上がる時代なんですよ。これもデフレ時代の特徴の一つに数えていいと思いま

す。 (参照→「長所伸展の法則」船井幸雄&小山政彦 著、ビジネス社)

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この著書の中で、船井氏と小山氏は、「ビジネスに人間性などは関係ないと思われた時

代が長く続いたが、ここにきて時代が変わった」と分析されています。また、「人間性

をよく知らずに育った若者たちが社会人になってきていて、人間性教育を短時間で浸

透させる必要がある」と論じておられます。

この人間性はコーチングの場面でも大きな影響力を持ちます。例えば、上司が部下

をコーチングする時に、「どのくらいコーチングが機能するか」を決める最大の要因は、

「上司のコーチングスキルのレベル」以上に、「部下がその上司をどのくらい信頼・尊

敬しているか」なのです。最大の決め手は、上司側の人間性なのです。

さて、この人間性を高めることについては、名著と言われる「7つの習慣」(スティ

ーブン・R・コヴィー著)を始め、次の本が参考になります。「グラッサー博士の選択

理論」(ウイリアム・グラッサー著)、「ヒューマンリレーション・コンピテンシーの威

力(ついていきたくなる上司の研究)」(斎藤 勇 著)、「長所進展の法則」(船井幸雄

&小山政彦 著)、「ビジョナリー・カンパニー2」(ジェームズ・C・コリンズ著)。

そして、非常に重要な原則は、「研修の内容は、シンプルで分かりやすく実践的であ

ること」です。特に、人間性を高めるためのプログラムを組み込む場合、この原則か

ら外れないように意識する必要があります。当社では、「形から入って人間性を高める」

と言っておりますが、まず、わかりやすい「形(=スキル)」から入っていき、「それ

なら、すぐに使える」「このスキルは、あの部下に使ってみよう」と実践につなげて捉

えてもらいます。そして、そのスキルのトレーニングと実践の過程で「人間性(EQ、

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メンタル)」を向上させていくよう、プログラムをデザインしています。それから、研

修参加者の人間性の向上をサポートするためには、参加者本人が「人間性を高めた

い!」という意志を持つことが不可欠です。そのための動機づけがきーポイントであ

り、いくつかの切り口を用意しておく必要があります。

第7の盲点「成果を出すための流れ」

第7の盲点は「成果を出すための流れ」です。 コーチングでは、相手(部下)に

対して質問を投げかけていくのですが、「どんな流れで(どんな順番で)質問を投げか

けていくか」がとても重要です。そして、「成果を導き出しやすい流れ(フレームワー

ク)」が存在します。その最も基本的なものとしては、GROWモデルがよく使われま

す。まずは、研修の中でGROWモデル(もしくは、それに変わる基本的な流れ)を

参加者に教える必要があります。

さらに、数回の研修を通じて育成していく場合は、中級レベルの「フレームワーク」

まで教え、部下のブレイクスルー(=現状突破)をサポートできるようにトレーニン

グしていくことが有効です。部下のブレイクスルーをサポートできるようになれば、

これぞハイパフォーマンス・コーチングと言えます!この中級レベルのフレームワー

クについては、文章で説明すると長くなり過ぎるので、省略します。その代わり、参

考文献を紹介します。「ブレイクスルー思考」(G・ナドラー著)、「突破の科学」(日比

野省三 著)、「システム・シンキング入門」(西村行功 著)、「創造思考を身につける」

(新森保紀 著)、以上が参考文献です。

ただ、これらの本で紹介してある手法や理論を、研修でそのまま教えてしまうと、

とても難しい内容になってしまいます。「研修の内容は、シンプルで分かりやすく実践

的であること」の原則に沿って、「これならすぐに使える」という形に翻訳してから伝

えることがポイントです。

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以上、「コーチングで最大限の成果を出すための7つの盲点」についてお伝えしまし

た。長いレポートを最後まで読まれたことに、心から敬意と感謝の意を表します。

プロ・コーチとして、また、コーポレート・コーチングの会社の代表として、日々が学

びの連続です。顧客企業との関わりの中で、様々な経験をさせていただいてますが、その

経験からの学びがこのレポートのベースになっています。また、日本最大のコーチ養成期

間である「コーチ21」で、コーチ養成トレーニングのクラスコーチ(講師)をずっとさ

せていただいてますが、そこでの経験から学んだことも大きいです。たくさんのプロ・コ

ーチを目指す人達のサポートをさせていただいて、いろいろなことに気づかされます。

このレポートがお役に立てば幸いです

有限会社コーチング・マネジメント 代表取締役 野口嘉則

このレポートを読 まれて、当 社 のコーチングプログラムの導 入 にご関 心 のある方 は、お気 軽 にお問 い合

わせ下 さい。

◆なお、年間契約や半期契約については、ベストなサポートを提供するために顧客数を限定しています。定員いっぱ

いの場合は、一定期間お受けできないことがありますので、ご了承下さい。

有限会社コーチング・マネジメント TEL 082-276-6303 FAX 082-270-2206

E-mail [email protected]

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