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1 恒常性(ホメオスタシス) 生体内や外部の環境因子の変化に関わらず、生体の状態が 一定に保たれるという性質、あるいはその状態のこと 正常 体温(℃) 36.9±0.4 空腹時血糖(mg/dl) 80~100 収縮期血圧(mmHg) 130未満 拡張期血圧(mmHg) 85未満 血液pH 7.35~7.45 血液浸透圧(mOsm/l) 275~290 尿pH 6.0~6.5 腎臓 下大静脈 左腎 腹部大動脈 総腸骨動脈 総腸骨静脈 尿管 膀胱 尿道 右腎 横隔膜の下の背部に一対ある ソラマメの種子のような形 重さ:約 150 g 縦:約 12 cm 幅:約 6 cm 厚さ:約 3 cm 腎盂 腎小体 腎小体 (約100万個) 糸球体 ボウマンのう ボウマン腔 尿細管 血中の成分をろ過する (原尿の生成) ・毛細血管の透過性が高い ・糸球体の血圧が高い 原尿生成量(1日あたり) 110~170ℓ 限外ろ過 分子量が70000以下のものを ろ過する 10000なら水と同じ速度 分子量の例:ヘモグロビン68000、血清アルブミン69000 腎臓での再吸収 髄質 皮質 腎小体 近位尿細管 遠位尿細管 集合管 ヘンレ係蹄 下行脚 上行脚 水を再吸収 Na ・Cl を再吸収 水・Na を再吸収 水・ブドウ糖・Na などを再吸収 水・Na ・Cl を再吸収 アンモニアを排出 腎盂へ 尿の再吸収 血液成分 糸球体での ろ過量 膀胱へ向かう 尿中の量 水(ℓ) 180 1~2 塩化物イオン(g) 640 6.3 ナトリウムイオン(g) 579 4 カリウムイオン(g) 29.6 2 重炭酸イオン(g) 275 0.03 尿素(g) 54 30 尿酸(g) 8.5 0.8 ブドウ糖(g) 162 0 成人男性1日あたり この場合の高血糖は180 mg/dl以上 高血糖だと尿細管でのブドウ糖吸収が間に合わない 腎臓での再吸収 髄質 皮質 腎小体 近位尿細管 遠位尿細管 集合管 ヘンレ係蹄 下行脚 上行脚 水を再吸収 Na ・Cl を再吸収 水・Na を再吸収 水・ブドウ糖・Na などを再吸収 水・Na ・Cl を再吸収 アンモニアを排出 腎盂へ バソプレシン 鉱質コルチコイド

恒常性(ホメオスタシス) 腎臓web.agr.ehime-u.ac.jp/.../slides/Biology07_Homeostasis.pdf1 恒常性(ホメオスタシス) 生体内や外部の環境因子の変化に関わらず、生体の状態が

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1

恒常性(ホメオスタシス)

生体内や外部の環境因子の変化に関わらず、生体の状態が

一定に保たれるという性質、あるいはその状態のこと

例 正常

体温(℃) 36.9±0.4

空腹時血糖(mg/dl) 80~100

収縮期血圧(mmHg) 130未満

拡張期血圧(mmHg) 85未満

血液pH 7.35~7.45

血液浸透圧(mOsm/l) 275~290

尿pH 6.0~6.5

腎臓

下大静脈

左腎

腹部大動脈

総腸骨動脈

総腸骨静脈

尿管

膀胱

尿道

右腎

横隔膜の下の背部に一対ある

ソラマメの種子のような形

重さ:約 150 g

縦:約 12 cm

幅:約 6 cm

厚さ:約 3 cm

腎盂

腎小体

腎小体 (約100万個)

糸球体

ボウマンのう

ボウマン腔

尿細管

血中の成分をろ過する

(原尿の生成)

・毛細血管の透過性が高い

・糸球体の血圧が高い

原尿生成量(1日あたり) 110~170ℓ

限外ろ過

分子量が70000以下のものを

ろ過する

10000なら水と同じ速度

分子量の例:ヘモグロビン68000、血清アルブミン69000 腎臓での再吸収

髄質

皮質

腎小体

近位尿細管 遠位尿細管

集合管

ヘンレ係蹄

下行脚 上行脚

水を再吸収 Na+・Cl-を再吸収

水・Na+を再吸収

水・ブドウ糖・Na+

などを再吸収

水・Na+・Cl-を再吸収

アンモニアを排出

腎盂へ

尿の再吸収

血液成分 糸球体での ろ過量

膀胱へ向かう 尿中の量

水(ℓ) 180 1~2

塩化物イオン(g) 640 6.3

ナトリウムイオン(g) 579 4

カリウムイオン(g) 29.6 2

重炭酸イオン(g) 275 0.03

尿素(g) 54 30

尿酸(g) 8.5 0.8

ブドウ糖(g) 162 0

成人男性1日あたり

この場合の高血糖は180 mg/dl以上

高血糖だと尿細管でのブドウ糖吸収が間に合わない

腎臓での再吸収

髄質

皮質

腎小体

近位尿細管 遠位尿細管

集合管

ヘンレ係蹄

下行脚 上行脚

水を再吸収 Na+・Cl-を再吸収

水・Na+を再吸収

水・ブドウ糖・Na+

などを再吸収

水・Na+・Cl-を再吸収

アンモニアを排出

腎盂へ

バソプレシン

鉱質コルチコイド

2

バソプレッシン

浸透圧・血液量・血圧が反対の状態なら分泌が抑制される

バソプレッシンの分泌または作用が低下すると尿崩症になる

血中浸透圧の増加

視床下部

浸透圧受容器

血液量の低下

左心房

容量受容器

血圧の低下

心臓や血管

血圧受容器

血管収縮、水の再吸収

バソプレシン

尿崩症では1日の尿量が3ℓを超える 鉱質コルチコイド

血圧の低下

腎血流量の低下

鉱質コルチコイド 血管収縮

血圧増加・血液浸透圧の増加

腎臓 肝臓

レニン アンジオテンシンⅠ

アンジオテンシンⅡ

副腎

Na+再吸収促進

肝臓

下大静脈へ

肝動脈(25%)

肝鎌状間膜

横隔膜

肝門脈(75%) 総胆管

胆のう

肝臓

右葉

左葉

正常成人では1~2 kgほど 働き 例

消化 胆汁の生産(脂肪の消化の補助)

糖代謝 グリコーゲン合成・乳酸の処理・糖新生など

脂質代謝 コレステロール合成・脂肪貯蔵など

タンパク質代謝 アルブミン・グロブリンの合成など

アミノ基の処理 尿素合成

解毒作用 アルコールの分解など

血液凝固 プロトロンビン・フィブリノーゲン合成など

肝臓の働きの一部

生殖とホルモン

視床下部

下垂体前葉

卵巣

濾胞 黄体

性腺刺激ホルモン

放出ホルモン

濾胞刺激ホルモン

標的器官

エストロゲン

インヒビン

標的器官

プロゲステロン

黄体形成ホルモン

フィードバック フィードバック

黄体形成ホルモン

卵胞刺激ホルモン

エストロジェン

プロジェステロン

インヒビン

下垂体前葉

卵巣

ホルモンの分泌量

ホルモン分泌と排卵

LHサージ

3

卵胞腔 一次卵母細胞

原始卵胞 発育卵胞

成熟卵胞

赤体 黄体

白体

顆粒膜細胞

透明帯

卵巣

排卵

卵胞ホルモン

黄体ホルモン 二次卵母細胞

閉鎖卵胞

神経系による呼吸の調節

大脳

随意的呼吸 不随意的呼吸

呼吸筋

延髄(脳幹)

呼吸中枢は延髄にある

頚動脈の頚動脈小体

大動脈の大動脈小体

高CO2

低O2

血液

化学受容器

促進

化学受容器

伸展

呼吸量増大

抑制

伸展受容器

自律神経求心路 交感神経 副交感神経

心臓

心房 心室 静脈血 動脈血

肺へ

全身へ 肺動脈

肺静脈 大動脈 上大静脈

下大静脈

僧帽弁(房室弁)

大動脈弁(半月弁)

左心房

左心室 右心室

右心房

三尖弁(房室弁)

肺動脈弁(半月弁)

拍動の調節

心房 心室

房室結節

プルキンエ線維

ヒス束

右脚

左脚

洞結節 心房収縮

心筋の収縮は自律神経系と心臓の刺激伝導系で調節される

等容性心室収縮

心室拍出

等容性心室弛緩

心室流入

0.5-1 m/秒

0.05-0.1 m/秒

2-4 m/秒

神経系による心拍の調節

心房 心室

ヒス束

右脚

左脚

心筋の収縮は自律神経系と心臓の刺激伝導系で調節されている

房室結節

プルキンエ線維

洞房結節

心室収縮

交感神経

副交感神経

抑制 延髄

脊髄

促進

心拍・血管運動中枢は延髄にある

交感神経により血管が収

縮し血圧が上がる

副交感神経は一部の血管

を拡張する

心臓周辺の血管

下大静脈

上大静脈

肺動脈

肺静脈

腕頭動脈 左総頸動脈

左鎖骨下動脈

大動脈

大動脈弓

冠状動脈

上半身へ

心臓へ

4

体温

37℃ 44℃ 33℃ 26℃ 20℃

死 亡

心 室 細 動

半 昏 睡 状 態

平 熱

死 亡

42℃

酵 素 の 変 性

熱放散

血管の拡張・収縮

発汗

熱産生

ふるえ産熱・非ふるえ産熱

甲状腺ホルモン等のホルモン分泌

熱放散の抑制

血管の拡張・収縮

立毛筋の収縮(発汗の抑制)

神経系と内分泌系の関係:体温調節

間脳視床下部

体温調節中枢

感覚器

(皮膚)

低温

下垂体

前葉

チロキシン

心拍促進

肝臓代謝促進

骨格筋代謝促進

体内

心拍促進

肝臓代謝促進

骨格筋代謝促進

心拍促進

肝臓代謝促進

骨格筋代謝促進

皮膚

立毛筋収縮

毛細血管収縮

交感神経

自律神経 内分泌系

甲状腺

副腎皮質 糖質コルチコイド

副腎髄質

神経系と内分泌系の関係:体温調節

感覚器

(皮膚)

高温

下垂体

前葉

心拍促進

肝臓代謝促進

骨格筋代謝促進

体内

心拍抑制

肝臓代謝抑制

骨格筋代謝抑制

心拍促進

肝臓代謝促進

骨格筋代謝促進

皮膚

立毛筋弛緩

毛細血管拡張

発汗促進

交感神経

自律神経 内分泌系

甲状腺

副腎皮質

副腎髄質

間脳視床下部

体温調節中枢

低血糖

血糖値 mg/dl ホルモンの分泌 症状

80 以下 インスリン分泌低下

65~70 グルカゴン・アドレナリン分泌

60~65 成長ホルモン分泌

60 コルチゾール分泌 低血糖症

低血糖による体の反応

・脳への糖供給不足・・・めまい・疲労感・脱力・集中力の欠如・昏睡など

・アドレナリン分泌による作用・・・発汗・神経過敏・ふるえ・失神など

神経系と内分泌系の関係:血糖調節

間脳視床下部

血糖調節中枢 低血糖

各組織

自律神経 内分泌系

ランゲルハンス島

A細胞 B細胞

膵臓 副腎

髄質 皮質

下垂体

前葉

肝臓

グルコース グルコース

グリコーゲン たんぱく質

成長ホルモン

糖質コルチコイド

交感

神経

グルカゴン

アドレナリン

神経系と内分泌系の関係:血糖調節

高血糖

各組織

自律神経 内分泌系

ランゲルハンス島

A細胞 B細胞

膵臓 副腎

髄質 皮質

下垂体

前葉

肝臓

グリコーゲン 消費

グルコース グルコース

副交感

神経

インスリン

間脳視床下部

血糖調節中枢

5

インスリンの作用

骨格筋 血中ブドウ糖の取り込み促進

タンパク質合成促進・分解抑制

脂肪組織 血中ブドウ糖の取り込み促進

脂肪酸合成促進・脂肪分解抑制

膵臓 グルカゴンの分泌抑制

肝臓 グリコーゲン合成促進・分解抑制

糖新生を抑制

膵臓

インスリン

インスリンが働かなくなると

膵臓

インスリン

血中ブドウ糖

組織への取り込み ブドウ糖

グリコーゲン タンパク質

アミノ酸

アミノ酸

ブドウ糖

1型糖尿病

糖尿病の約10%

日本では10万人に1~2人

ほとんどが20歳までに発症

患者はインスリン注射薬を

携帯する必要がある

膵臓

インスリン

インスリンを分泌する膵臓

β細胞が死滅する

生活習慣病ではない

血糖値を下げることができない

1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)

2型糖尿病【インスリン非依存型糖尿病】

糖尿病の約90%を占める(遺伝的要因も関係する)

膵臓

インスリン

インスリンの分泌が低下する

膵臓

インスリン

インスリン感受性が低下する

血糖値を下げることができない

生体防御

第一防御(非特異的防御)

自然免疫

物理的防御:皮膚の角質・粘膜(ムチン)・洗浄

化学的防御:リゾチーム・塩酸・加水分解酵素

体外

体内

ランゲルハンス細胞

角層

顆粒層

有棘層

基底層

基底膜

真皮(結合組織)

ヒトの表皮の断面模式図

表皮の有棘層に存在する樹状細胞で、皮膚免疫を担う

ランゲルハンス細胞

外部から侵入する細菌や

ウイルスなどを感知し、

脳に伝える

T細胞を感作して免疫反

応を促す

6

一次止血:血小板凝集

血管 血管内皮細胞

コラーゲン 血管内皮細胞

血小板

vWF因子

vWF因子:ヴォン・ヴィレブランド因子

XII因子

活性化XII因子

III因子

二次止血:血液凝固

二次止血:血液凝固

プロトロンビン トロンビン

フィブリノーゲン フィブリン

フィブリンポリマー プラスミン 溶解

血液凝固にはCa2+と

ビタミンKが必要

血友病

血液凝固異常症で伴性遺伝する

X染色体上にある血液凝固因子

遺伝子の異常による

血管内皮の破損

組織の損傷

線維素溶解系

生体防御

第一防御(非特異的防御)

自然免疫

物理的防御:皮膚の角質・粘膜(ムチン)・洗浄

化学的防御:リゾチーム・塩酸・加水分解酵素

第二防御(非特異的防御)

自然免疫:白血球・炎症・体温上昇・補体・抗体など

*補体:細菌の溶解や抗原のオプソニン化を行う血中たんぱく質

体外

体内

サイトカイン

細胞から分泌されるタンパク質で、特定の細胞に

情報伝達をするもの

インターロイキン

・白血球が分泌するサイトカイン

・白血球の活性化・増殖および分化促進

・体温上昇などの抗ウイルス反応促進

インターフェロン

・白血球や血管内皮細胞などが分泌するサイトカイン

・抗ウイルス作用や腫瘍細胞増殖抑制作用をもつ

・未感染細胞に様々なタンパク質を合成させ、ウイルス

抑制能を与える

白血球

顆粒球

単球

リンパ球

好中球

好酸球

好塩基球

NK細胞:腫瘍細胞・感染細胞を破壊

T細胞・B細胞(獲得免疫)

マクロファージ:細菌や死んだ細胞を捕食

細菌の貪食(食作用)

炎症反応

アレルギー反応

自然免疫と白血球

好中球

血管

細菌などを貪食

細菌

ウイルス

死んだ細胞

ウイルス感染細胞

マクロファージ

細菌・ウイルス・死んだ細胞などを貪食

NK細胞

ウイルス感染細胞を破壊

7

生体防御

第一防御(非特異的防御)

自然免疫

物理的防御:皮膚の角質・粘膜(ムチン)・洗浄

化学的防御:リゾチーム・塩酸・加水分解酵素

第二防御(非特異的防御)

自然免疫:白血球・炎症・体温上昇・補体・抗体など

*補体:細菌の溶解や抗原のオプソニン化を行う血中たんぱく質

第三防御(特異的防御)

獲得免疫:細胞性免疫・体液性免疫

体外

体内

NK

K

H1

H2

リンパ球と免疫

造血

幹細胞

リンパ系

幹細胞

T細胞 ヘルパーT細胞 (Th1)

ナチュラルキラー細胞

B細胞 形質細胞

キラーT細胞

感作がなくても細胞傷害性をもつ

癌細胞やウイルス感染細胞を殺す 細

ヘルパーT細胞 (Th2)

胸腺

NK

K

H1

H2

H1

K K

細胞性免疫

①マクロファージが異物(ウイルス)を貪食

断片化された異物

②抗原提示細胞に変化

③ヘルパーT細胞 が活性化

インターロイキン

④マクロファージが活性化

④キラーT細胞が活性化

パーフォリン

など

H1

ウイルス感染細胞 ⑤攻撃・破壊

K K K K

記憶細胞

抗体

ジスルフィド結合

Fab領域

Fc領域

L鎖

H鎖

抗原結合部位

可変域

可変域

B細胞が作る糖タンパク質分子で特定の分子:抗原に結合する

抗体は免疫グロブリンからなる

B細胞は1種類の抗体を生産する

体細胞超変異により抗体が多様

化する

ヒトの抗体の種類

名前 形態 特徴 おもな局在

IgG 1量体 もっとも多い 血液

IgM 5量体 初期免疫に関わる 血液

IgA 2量体 消化管や呼吸器の免疫 血液・粘膜・涙

IgD 1量体 抗体産生の誘導 B細胞

IgE 1量体 アレルギー反応に関わる 血液・肥満細胞

体液性免疫

H2

①マクロファージが異物(ウイルス)を貪食

断片化された異物

②抗原提示細胞に変化

③ヘルパーT細胞 が活性化

インターロイキン

④B細胞が活性化し、形質細胞に

H2

好中球

抗体

⑤オプソニン化

マクロファージ

⑥食細胞による貪食

記憶細胞

オプソニン化:抗原に抗体が結合することで食作用を受けやすくなること