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i:コ こコ i:コン研究 ISamineResearch なる可能性を求めて グル コサ ミン研究会 長岡 中村 野村義宏 三郎 Iucosamine Qlucosamine Qlucosamine グルコサミン研

サi:コン研究 i:コこコ - josailibir.josai.ac.jp/il/user_contents/02/G0000284... · て,グルコサミン塩酸塩およびグ)i,コサミン葦似糖 が,軟骨細胞の増殖。分化に与える影響を比較し,グ

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  • サi:コこコi:コン研究

    ISamineResearch

    なる可能性を求めて

    編 集

    グルコサミン研究会

    長 岡 功

    中 村 洋

    野 村 義 宏

    南 三 郎

    Iucosamine

    Qlucosamine

    Qlucosamine

    グルコサミン研

  • (ど

    賓宰淑青草裟

    - 一 一 _ 一 一 一

    ∴ ~ ~~ ∴ ~ --- --:I

    ; . ; . 、 ~: 、. ・ 、・ 、

    高齢社会を迎え,QOL低下の一因となる一次性変形性関節症が問題となっている。 現荏,変形 性

    関節症の療病緩和を目的に,グルコサ ミン含有の健康食品を利用する人が増えている。しかし,グル

    コサミンの関節軟骨への作用メカニズムは不明な点が多い。そこでわれわ れ は , グルコサミンとグル

    コサ ミン含有健康食品の原材料であるキチンおよびキチン やキ トサン誘導体紫 を 含 むグルコサミン紫

    似糖が,軟骨細胞株ATDC5に与える影響を検討し,これらの搾用メカニズムについて解明すること

    を目的に研究を実施 した。

    ATD C 5をグルコサミン塩酸塩あるいは,グルコサミン幸似糖存在下で培拳 し,これらの物質の軟

    骨細胞 の 増殖 。分似 二与える影響を調べた。増殖はMTT活性,分化はアルが )フォスフアタ-ゼ活

    性を指 標 に検討 した。その結果,ダルコ-ス,N-アセチルグルコサ ミン,キ トビオ←ス,キ トサン

    ダイマ- , ラク ト-ス,ラタ トサミン,N-アセチルラク トサミンは,Å耶〕C5の増殖や分化に影響を

    与えなかった.一方,グルコサミン塩酸塩はATDC5の増殖に影響を与えなかったが,jWDC5の分

    化を抑制 した。

    次に,グルコサミン塩酸塩がATDC5の基質産生および石灰化に影響を与えるかどうかを,アルシ

    アンプjL,- (pH2.5およびpHl。0)染色およびアリザリンレッド染色の手法を掛 1て検討した。そ

    の結果,グルコサミン塩酸塩を添加 したjWDC5の石灰イ飢ま,顕著に抑制されていた.さらに,グル

    コサ ミン塩酸塩は硫酸基をもつグリコサ ミノグリカンの産生を誘導 したや また,グルコサミン塩酸塩

    添加によるATDC5の遺伝子発現パタ-ンを,済yPC民法を用いて解析 した.その結果,グルコサミ

    ン塩酸塩は,転写因子であるSmad2,Smawd逢および軟骨特異的基質蛋白質のmatr主ⅩGlapTOteまn

    (Map)の mRNA発現を抑制した。

    以上の結果より,グルコサミン塩酸塩は軟骨組織の石灰化を抑制し,コンドロイチン硫酸の産生を

    促進する可能性が考えられた.グルコサミン塩酸塩の石灰化抑制メカニズムは,転写因子であるSmad

    2,Smad4のmRF挽発現を調節することにより,MGPなどの軟骨基質遺伝子の発現を介して石灰化

    を抑制している可能性が考えられた。

    グ)L/コサミン研究2:8-14,2006

    一・ I・ヾ

    グルコサミン,ATDC5,軟骨 ,グ リコサ ミノ グ リ カン.Slllad

    生活の乱れ,疾病および 薬 物 の 影 響 , メカニカルスト

    レスなど,さまざまな要因で 変 形 性 関 節症を発症 した

    軟骨組織の弾力,隆および圧縮抵抗性は, 軟 骨 細胞お 軟骨組織は,軟骨細胞間基質が 減 少 し , 軟骨の異所石

    よび軟骨細胞間基質により維持されている。加齢,食 灰化を起こしている卜3).近年,変 形 性 関節症 (oA)

    l)城西大学薬学部医療栄養学科 〒350-0295埼玉県坂戸市けやき台 ト1h一mano@josaLacJ'p

  • グルコサミン研究 VoL2 2006 9

    の療病緩和を目的として,ヒアルロン酸やコン ドロイ

    チン硫酸などの構成糖であるグルコサ ミンが経口摂取

    されている4)サヒア)i,ロン酸は,N-アセチルグルコサ

    ミンとグルクロン酸が交互に結合 してできた直鎖状の

    高分子多糖である5),コン ドロイチン硫酸は , ガラク

    トサ ミンとグルクロン酸を構成糖 とし,アグ リカンの

    側鎖 として軟骨組織 に存在 している6)。グル コサ ミン

    摂取による変形性関節症の症状改善効果は臨床 レベル

    では報菖 されているが,詳 しい摩周メカニズムは現状

    では不明である7,8)。また,グルコサ ミン含有健康食品

    揺,キチン加水分解物が利用 されているが,N-アセ

    チルグルコサ ミンを含むグルコサ ミン類似糖の有効性

    は 検討 されていない,

    内軟骨性骨化は,軟骨細胞が間葉系幹細胞から分 化

    し,軟骨細胞の増殖 ・成熟 。肥大化の過程 を 経 て , 骨

    に置換 される骨の形成過程である9)。その際 夕 関 節 軟

    骨や肋軟骨など,一部の組織は骨に置換せず軟骨 の ま

    ま維持 される.軟骨碓指の詳 しいメカニズムは不明な

    点が多いが,さまざまな転写因子によって軟骨および

    骨の形成過程は調節を受けており,これ らを介 して,

    細胞間基質などの産生が調節 され軟骨の分化 。増殖が

    制御 されている10,ll)。軟骨が石灰化する前段階で,ア

    ルカリフォスファタ-ゼ (A二ぼ)活性が上昇すること

    が必須であると考 えられてお り,成熟 した軟骨細胞

    揺 , ヒアルロン酸やコン ドロイチン硫酸などのグ リコ

    サ ミノグ リカンを産生 し,軟骨細胞の性質を維持する

    役割を絶っている12・13)

    軟骨細胞間基質 と し て よく知 られてい る ⅠⅠ型 コラ

    -ゲン (Coi≧)は,軟骨 特 異的コラ-ゲ ン で , 軟骨

    形成過程の増殖軟骨細胞期および肥大化軟 骨 細 胞期の

    細胞間基質に存在し,石灰化軟骨細胞期 お よ び 骨形成

    の過程では消失することが報告 されているま4)。matr反

    Glap1-Ote主n (MGP)は,軟骨細胞 間基質蛋 白質の一

    つで,血管内皮細胞の動脈硬化部においても観察され

    ていることから,石灰化に深 く関 与 する蛋白質の一つ

    で あ る と 考 え ら れ て い る15・16)らboneG旦aprotein

    (BGP)は骨特異的基質蛋白質で,軟骨形成および骨

    形成過程の進行に伴い増加 し,骨基質 を 維 持 す るため

    に重要な蛋白質であると考えられている17)。

    軟骨細胞の増殖 中分化 を制御する増殖因 子は,bone

    :・, = ・ ・ ・∴ 一 ・ll・:・ _

    growthfactoT β (T G FlB ) がよく知 られている18)。こ

    れら披,細胞 膜 に 存 在 す るレセプタ-に結合後 , 転写

    因子のSmad 群 を リ ン 酸 化 し ,軟骨特異的遺伝子の発

    現を調節する19)卓 Sm ad 2 は き 骨形成園子の-つであ

    るTG斉しβの下流に存在 し,軟骨の分化を促進する転

    写因子の一つ と考 えられている19,20).また,Smad2は

    Sox9や Rullx2などとへテロ二量体を形成すること

    により,Sox9や 鮎 nx2の下流 に存在する軟 骨特異

    的遺伝子の発現を調節すると考えられている19)。smad

    ・‖まT)ン酸化され た Smad2やSlllad3とへ テ ロ 二量

    体を形威し,さまざまな転写因子と相互摩周 す る こと

    によって,軟骨の分化 を 制 御 し ていると考 え ら れ てい

    る19B21).sox9は Soxfam 豆Iy に 属 する転写因子の 一つ

    管,間葉系幹細胞か ら軟 骨 細 胞 への分化の誘導と,肥

    大化軟骨細胞への分化の 抑 制 を 調節する軟骨特異的転

    写因子 と考 え られている19,22,23)。鮎nxlは肥大化軟骨

    に発現 し,内 軟 骨 性骨化に 必 要な転写因子の一つと考

    えられてい る19,24)。一方,鮎nx2は成熟軟骨に発 現

    し,骨細胞への置換に必要な骨特異的転写因子の一つ

    と考えられている19725t26)

    今回われわれ は.培養軟骨細胞株ATDC5を用い

    て,グル コサ ミン塩酸塩およびグ)i,コサ ミン葦似 糖

    が,軟骨細胞の増殖 。分化に与える影響を比較 し,グ

    ルコサ ミン塩酸塩およびグルコサ ミン類似糖が,軟骨

    細胞外基質の構成糖 としてのみではなく,軟骨細胞の

    増殖および分化に影響 を与える可能性を検討 した。さ

    らに.ブルコサ ミンが軟骨組織維持に及ぼす メカニズ

    ム解明のため,軟骨細胞外基質蛋白質および転写園子

    のlllRNA発現について検討 した.

    培養軟骨細胞株 は,mouseteratocarcinomaceiiAT

    Li05由来の亜棟であるATDC5細胞を用いた uiIKEN

    CeiiBankNo。RCB0565)27)。ATDC5の 培 地 は,Du1 -becco'smod道edEagle'S培 地 とHam'sF12培 地 の

    1:1混合培地 (hvitrogen)に,5% ウシ胎児血清

    (FBS昌nvitTOgen),100ti互/miペ ニ シ リン,50pl/mi

    ス トレプ トマ イシ ンを添 加 し用 い た.ArrDC5は

    37℃,5%C0 2の条件 で培養 した.継代 は0書25% ト

    リプ シ ン0。02%EDTA溶 液 (S呈gmaA故豆ch)を 用

    い,2-3日ごとに行った。

    グルコサ ミン塩酸塩およびグルコサ ミン類似糖が軟

    骨細胞の分化に与える影響を調べるために,通常培地

    (N),グ )i,コ - ス (GまC),グ ル コ サ ミ ン塩 酸 塩

    (GkN)タN-アセチルグル コサ ミン (GkNAc),キ ト

    サ ンダイマ- (G呈cN)2,キ トビオ -メ (G互cNAc)2,

  • 70

    ラク ト-ス (GaトGIc),ラク トサ ミン (Ga卜GlcN),

    N-アセチルラク トサ ミン (Ga卜GまcNAc)をそれぞれ

    最終濃度で1jlg/miになるように培地率に添加 した。

    I:I~ . ・ ・、一・:・'1.

    アルカリフォスフアタ-ゼ (ALP)染色液は0。05

    S' ・R..・・~ ・、 l・ ・:・S ・・.I; ち・ ・I

    '-・・.1■J;i --_・・・・ i- .● !、・! ・・. ・・!:

    (Sigma)を使用 したB細胞は,96穴細胞培養庸マイ

    クロテス トプ レ- トを用い,約 5×103個ずつ播種

    し,GkNおよびグルコサ ミン類似糖を添加後,5日

    間培牽 した。培養後,細胞 を20% ホルマ リンで固定

    し,ALP染色液を履いて37oCインキュベ-夕内で 15

    分反応させ,水洗 した。染色霧栄は,画像解析ソフ ト

    N損弓mageを用いて数値化した.

    ~;.-I: ・t .′・..∴

    AicまanBiue8GX (Fika)を0。5M 酢酸 (pH2。5)め

    るいは0.1M塩酸 (pHl中0)に溶解 し,1% アルシア

    ンプル -溶液 (ABp欝2。5)ならびに (ABp塁上0)

    を作製 した。各アルシアンプル-溶液は用時漆過し,

    使用 した.細胞は24穴細胞培養FHマ イクロテストプ

    レ- 卜を用い,約 2さ5XiO4個ずつ播種 し,GkNおよ

    -I.II I ・-I.I/.:

    びグルコサミン類似糖を添加後,35日間培養 した。

    培養期間中,3日ごとに培地交換を行ったす35日間培

    養後,20% ホルマリンで固定 した。固定 した細胞

    揺,アルシアンブル-染色液を室温で-晩反応させ,

    水洗 した。染色結果は,画像分析 ソフ トNiH弓mage

    を招いて数億化した。

    、 ∴ ● 、 I .

    アリザ リンし,ソド染色は,AlizarinRe(lSilel・tilled

    (S短ma)と28% アンモニア水を履いて i% アリザ

    リンレッ ド溶液 (pH6.38)を調製 し,染色に用い

    た. 細胞は2逢穴細胞培養摺マイクロテス トプレ- ド

    を 掩 い ,約 2。5×104個ずつ播種 し,G呈cNおよびグ)i/

    コサ ミン葦似糖を添加後,35日間培養 したB培養期

    間中,3日ごとに培地交換 を行 った。35日間培養

    後,20% ホルマリンで固定 したp染色は,2恒量水 洗

    後,アリザリンレッド染色液と室温で10分間反 応 さ

    せ,水洗 し,石灰化を評価 した。染色結果は, 画 像 分

    析ソフ トNI冨Iimageを柳 1て数値 した。

    一 一-∴ '.

    ATDC5を6cmシャ-レを用いて,約 5×105倦 げ

    っ播種 し,GlcNおよびグル コサ ミン類似糖 を添加

    ・′∴/-∴/;. :///:/:////://///://://://:; /////

    Smad2 5'-CCCACTCCATTCCAGAAAAC-3+ 58 25

    3'-AACACCAGAATGCAGGTTCC-5ー - 一 ■ ■

    Smad4 5'-CGTGCTTACCCACTGAAGGA-3' 58 25

    3十一GCTGGCTGAGCAGTAAATCC-5'

    SoX9 5㌧TGCAGCACAAGAAAGACCAC-3. 58 30

    3'-CCCTCTCGCTTCAGATCAAC-5'

    Runx1 5㌧ACTTCCTCTGCTCCGTGCTA-3' 58 25

    3㌧GGTCGTTGAATCTCGCTACC-5' ー I ■ ■

    Runx2 5十-ATGGTGGAGATCATCGCGGACCACCCGGCC-3' 58 28

    3†-ACACCTACTCTCATACTGGGATGAGGAATG-5ー ■ 一 ■ 一 ■ ■

    Co!2 5十一GTCGAGCAGCAAGAGCAAGGA-3' 58 28

    3㌧CTTGCCCCACTTACCAGTGTC-5' ■ - ■ ■ ■

    MGP 5'-ATGAAGAGCCTGCTCCCTC†-3' 58 22

    3'-CTAATATTTGGCTCCTCGGC-5ー t I ■ ■

  • 後,3日間培養 した.RNAはTrwoIReagent(hvitr0-

    gen)を用い抽出した.抽出したRNAはDPC処理水

    に溶解後,分光光度計を用い定量 した.cDNAは,常

    法に従い1〝gのRNAから,逆転写酵素反応法で合成

    した.PCRは常法に従い表1のプライマーを用いて

    行った.

    LL G 果

    il書芸孟孟宗 慧 芸SAT,9",JiB].譜 がALP活性 を比較 した結果,本実験で用いたGIcN

    は,グ)i,コサ ミン類 似 糖 で あ るGIc.GIcNAc.

    (GIcN)2,(GIcNAc)2.Gal-GIc,Gal-GIcN,Gal-GIcNAc

    と比較してALP活性を抑制 した (図1A).染色結果

    杏,画像分析ソフ トNTH-imageを用いて数値化 した

    結果,GIcNは,ネガティブコントロールであるGIc

    と比較 しALP活性は約 1/3に減少 した (図18),こ

    の結果から,GIcNは軟骨細胞の分化を顕著に抑制す

    一軒通常培地 グルコース グルコサミン塩蛍塩

    GIcN

    ■ J r 竃 IN-アセチルクルコサミン キトサンタイマー キトビオース

    GIcNAc (GIcN)2 (GIcNAc),

    ラクトース ラクトサミン N-アセチルラクトサミンGaトGIc Gal-GIcN Gal-GIcNAc

    グルコサミン研究 Vo12 2006 77

    ると考えられた.一方,グルコサ ミン禁似糖である

    GIcNAc,(GIcN)2,(GIcNAc)2,Gal-GIc,GaトGIcN,

    Gal-GIcNAcは,ATDC5のALP活性に影響を与えな

    かった.また,結果には示さないが,グルコサミン塩

    酸塩およびグルコサミン類似槍の添加は,本実額条件

    においてMTTアッセイによるATDCの細胞増殖能に

    影響を与えなかった.

    2F

    グルコサ ミン塩酸塩が軟骨細胞株 ATDC5

    の石灰化に与える影響

    GIcNはAJT)C5のALP活性 を顕著に抑制 したた

    め.GIcNがATT)C5の石灰化に与える影響を検討 し

    た ATDC5の石灰化は,アリザリンレッド染色を用

    いて比較 した.その若紫.GIcNは,ネガティブコン

    トロール (GIG)と比較 して,石灰化を著 しく抑制 し

    た (図2).

    B

    N・アセチルラクトサ三ン

    ラクトサミン

    ラクトース

    キトビオース

    N・アセチルグルコサミン

    キトサンタイマー

    クルコサFlJン塩酸壕

    グルコース

    通常培地

    図1 グルコサミン塩酸塩およびグルコサミン類似糖が,培養軟骨細胞株 ATDC5の分化に与える影響

    B

    l }

    N GIc

    (LrSIP%)E2aje

    6u

    ruLetspaJuuE)ZIEEZa^lle)aJ

    『 過約

    40

    30

    20

    10

    0囲2 グルコサミン塩酸塩が培養軟骨細胞株ATDC5の石灰化に与える影響

  • 72

    31

    AB(pH25)(総グリコサミノグリカン)

    A8(PHIO)(流転基特異的グリコサミノグリカン)

    (LLSLP%)

    e

    aje

    6

    ∈一uJ一elS

    (s

    NH

    d

    )an一q

    Ue一〇一e

    aNleleJ

    N GIc GIcN

    (oLHd)an

    一qUt313一Pa^I

    tPla」

    図3 グルコサミン塩酸塩が培養軟骨細胞株ATDC5のクリコサミノグリカン産生に与える影響

    グルコサミン塩酸塩が軟骨細胞株 ATDC5のグリコサミノグリカン産生に与える影響

    アルシアンブルー染色 (pH2.5)を用いて,総グ

    リコサミノグリカンの産生を検討した結果,GIcNは

    GIcと比較し,総グリコサミノグリカンの産生を抑制

    した (図3).この結果は,石灰化およびALP活性の

    結果と類似 していた.一方,アルシアンプル-染色

    (pHl.0)の枯宋,総グリコサミノグリカンの染色と

    異なり,GIcNは硫酸基特異的グリコサミノグリカン

    の産生を促進した (図3).

    4I

    グルコサミン塩酸塩が軟骨細胞基質遺伝子群

    の mRNA発現に与える影響

    RT-PCR法を用いて,軟骨培養細胞ATDC5におけるGIcNが軟骨細胞基質遺伝子のmRNA発現に与え

    た影響を図4に示 した.その結果,ColZmRNAと

    BGPの発現量は.GIcNとGIcで顕著な差がなかった

    が,MGPmRNA量は,GIcNによってGIcの約2/3

    長に減少した,

    51グルコサミン塩酸塩が転写因子群の mRNA発現に与える影響

    RトPCR法を用いて.軟骨培賛細胞ATDC5においてGIcNが軟骨特異的転写因子群のmRNA発現正に

    与える影響を図5に示 した.その結果.Smad2と

    Smad4のmRNA量が,GIcNによってGIcの約2/3

    に減少 した.それに対 して,Runxl,RunxZ,Sox9

    のmRNAはGIcNの影響を受けなかった

    lⅢ・考 察

    本実験の結果,GIcNは,その他のグルコサミン架

    BGP

    ma

    ^一SUOIU〓

    e

    UE)一SO^-一IZLE)J

    MGP厄

    a

    ^一SUalU二eU6IsaN)

    e

    leJ

    ・∵8NSuaL⊆teu61Sa^r)

    t2一aJ N GIc GtcN N GIc GIcN N GIc GIcN図4 グルコサミン塩酸塩が培養軟骨細胞株ATDC5の軟骨基質蛋白質mRNA発現)に与える影響

  • グルコサミン研究 VoL2 2006 73

    rrĵ!(I,.uatU!JeuB!sâ膏PJ

    a!̂s

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    Smad2

    N GIG GIcN

    Sox9

    心>!SuaJU二EZuFj!sâ!)EtIaJ

    rj^!Sua

    T

    u二

    E?uB

    !sFj^

    一L

    E)1aJ

    2

    5

    5nU

    0

    0

    Run大1

    N NCGLJG

    NGfcGZcN

    図5グルコサミン塩酸塩が培養軟骨細胞株ATDC5の軟骨特異的転写因子mRNA発現量に与える影響

    似糖 と比較 して,ATDC5の慮腰活性 を低下 させ る

    ことが判明 した.G旦cNは,jWDC5のALP活性を抑

    制したことから,軟骨細胞の分化調節に関与 している

    可能性が考えられた。一方,G且cNにみ られた軟骨分

    ・ ・・・. -l ~1・ . 叩.:・一・' -

    似二糖類では観察 されなかった。

    .、. I・ ・● .‖∴.:l'、・;l: ・・㍉

    の増殖 には影響 を与えなかったBしたがって,GicN

    は,本実験で便周 した濃度では,ATDC5に細胞毒性

    を与えないと考えられた¢

    弘之cNによる分化調節作用がATDC5の石灰化に影

    響を与えているかについて検討 した結果,ATDC5に

    おいて,G旦C紺は,顕著に石灰化 を抑制することが明

    らかとなった。さらに,G旦cNが,総グ リコサ ミノグ

    リカン産生および硫酸基 をもつグ リコサ ミノグ リカン

    の産生に影響を与えるかどうかについて検討 した結

    乳 GkNは,硫酸基 をもつ グ リコサ ミノグ リカンの

    産生を誘導す ることが判明した。

    幣骨の代表的なグ リコサ ミノグ リカンには,ヒアル

    ロン酸およびアグ リカンの 傍日銀であるコン ドロイチ ン

    硫酸やケラタン硫酸がある12㌔今回の結果から,GkN

    はヒアル ロン酸ではなく,コン ドロイチ ン硫酸やケラ

    タン硫酸の産生調節を介 して,石灰化 を抑制 している

    河能性が考 えられたp

    そこで,石灰化抑制およびコンドロイチン硫酸 かケ

    ラタン硫酸産生誘導に関与する遺伝子を検討 した。そ

    の結異.GlcNがh・,lGPlllRNAの発現を抑制 したこと

    か ら,GicNは軟骨細胞のMGP遺伝子発現 を介 し

    て,石灰化を抑制 した可能性が考えられた¢さらに ,

    コン ドロイチン硫酸 やケラタン硫酸の産生を誘導 した

    GまcNは,Smad2とSma銅 mRNAの発現量を減少 さ

    せた.Sl11ad2は T CTF.βL]71く一流に存在する転写国子と

    して知 られている18)¢また,Smad2は,Sox9および

    毘unx2と結合 し,軟骨の分化過程を調節 している可

    能性が報告されている19-20㌧ 以上のことより,GまcNの

    石灰化抑制作用は,Smad2の発現調節を介 し,Smad

    2が関与す るSOX9および 鮎 nx2の遺伝子発現制御

    を通 して,最終的にその下流の MGPや軟骨基質蛋白

    質の発現 を制御 している可能性が考 えられた中

    本実験の結果から,GicNは ,軟 骨細胞の石灰化を

    抑制する可能性が示唆された.そしり作剛 葦楢は.軒与:

    国子であるSllladZや Smadい り111RNA 発現 ,を調節す

    ることにより,MGPおよびコ ン ドロイチ ン硫酸産生

    に関わる遺伝子など,軟骨特異的遺伝子の発現を調節

    している可能性が考えられた.さらにGIcNによる

    jYTDC5石灰化抑制作糟は,GicNAcお よびグ)i,コサ

    ミン矧廿二糖類では得られない可能性が考えられた.

    本実朕はATr)L15をf削 たゝ iTli.7'tj.()石r天化ア 、リセ イ

  • 74

    系を開いて実験 を行った.今後.['JlZlit:Oの動物実験

    系やヒトでの有効性を検討することが必要であると考

    える.

    ∴参考文献

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    G/ucosam /'neF7esearch

    2006年 9月i5日発行

    編集 ・発行者 グルコサ ミン研究会

    会 長 黒滞 尚

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    20130131125356_0000120130131125356_0000220130131125356_0000320130131125356_0000420130131125356_0000520130131125356_0000620130131125356_0000720130131125356_0000820130131125356_00009