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ICUにおける筋弛緩薬 慈恵ICU勉強会 2013.07.16 小林 秀嗣

ICUにおける筋弛緩薬 - JSEPTIC筋弛緩薬の現状 <ここ10数年で・・・>$ • 重症呼吸不全くらいにしか使わなくなってきた。 (しかも最重症症例においてやむなく的な感じ?)$

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ICUにおける筋弛緩薬

慈恵ICU勉強会  2013.07.16      

小林 秀嗣

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ICUでの筋弛緩薬・・・  当院での使用は挿管、PDTの時くらいか。   

世界的には?

30年前は「人工呼吸≒筋弛緩薬」  90%の患者に使われていた。  

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•  Mechanical  ven9la9on  >  12hr  adult,  n=5183  •  between  March  1,  1998,  and  March  31,  1998.  •  Prospec9ve  cohort,  20countries,  361ICU  <Result>  •  Neuromuscular  Blockers  (NMBs)          :  686例(13%  [95%CI:  12-­‐14])        ※ 挿管時使用もおそらく含まれている  •  Seda9ves:  3540例(68%  [95%CI:  67-­‐69])  

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<Result>  •  Median:  2days 

(IQR:  1-­‐4)  •  NMBsの使用患者 

での死亡率:50%。使用患者では死亡率高かった。   (OR:  1.39,  95%CI:  1.08-­‐1.79  p<0.001)  

⇒NMBs投与患者は、   より重症だった?

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<NMBsが投与された患者の解析>  •  ARDS  •  Full  ven9latory  support  •  Permissive  hypercapnia,  Prone  posi9on,  Respiratory  acidosis  •  High  PEEP,  Peak/Plateau  pressure・・・    ⇒やはり重症呼吸不全患者か

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筋弛緩薬の現状

<ここ10数年で・・・>  •  重症呼吸不全くらいにしか使わなくなってきた。     

(しかも最重症症例においてやむなく的な感じ?)  •  より最近の報告は見当たらないが、1998年より使用

頻度はもっと減っていることが推測される  

<激減している理由は?(私見)>  •  人工呼吸器の進歩(同調性の改善など)  •  「スキあらば浅い鎮静管理」が主体になってきた  •  筋弛緩薬自体のデメリットが注目されてきた  •  ・・・  

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筋弛緩薬を使うということは・・・

•  挿管+陽圧換気が必要。意識や神経所見、反射、自発運動を失うことになる。  

•  自発呼吸が消える・・・陽圧呼吸、横隔膜機能不全など  •  咳反射が消える・・・VAPリスク?  •  不動・・・リハビリ不能、DVT  •  相対的に浅いSeda9onでawareness  in  paralysis起こす  •  ICU-­‐acquired  weakness  ?  

•  筋弛緩薬の持続投与≒長時間の人工呼吸器の見込み  •  長期投与では感覚的にもデメリットがかなり多そう・・・。

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本日のメイン文献

•  Neuromuscular  Blocking  Agents:  NMBAs  •  NMJの解剖・生理に始まり筋弛緩薬の基礎的知識のおさらい  •  ICUにおける筋弛緩薬の適応のまとめ  •  まさに「review」だが、ちょっと教科書的な印象  

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ANATOMY/PHYSIOLOGY  OF  NEUROMUSCULARTRANSMISSION  

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Neuromuscular  junc9on  (NMJ)

•  Three  component:  Neuron,  Transmiger  (=ACh),  Muscle  fiber  •  一つの末梢運動神経が分枝して神経終末となり100以上のNMJを形成  

シナプス間隙  :細胞外液+ACh  esterase

AChの代謝  ①再取り込み  ②ACh  esteraseによる分解

シナプス前膜にも  ACh受容体は存在  (親和性は低い)

約500万個/1NMJ

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ACh  receptor •  5個のサブユニット  •   α  x2,  β,  δ,  ε  •  Ach  2分子がαに結合   ⇒チャネルの開口  

•  筋弛緩薬もαに結合  •  少なくとも1分子が  

結合してAchの結合を阻害⇒筋弛緩作用  

ε ε

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Extra  junc9onal  receptor

•  NMJ以外のAch受容体   :接合部外型、胎児型  •  サブユニットに違い(ε⇒γ)  

•  熱傷受傷24時間以降~数年  •  脊髄損傷  •  神経筋疾患や運動麻痺  •  長期臥床、廃用    などの病態で増加  

•  脱分極性筋弛緩薬   ⇒高K血症のリスク増大  •  非脱分極性筋弛緩薬   ⇒作用抵抗性  

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CLASSIFICATION  OF  NMBAs  AND  PHARMACODYNAMICS

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Classifica7on

•  Mechanism:  depolarizing,  non-­‐depolarizing  •  Dura9on  of  ac9on:  short,  intermigent,  long  •  Structural  formula  (non-­‐depolarizing  drugs)             :  aminnosteroids,  benzylisoquinoliniums  

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•  Atracurium,  Cisatracuriumは日本では未発売  •  排泄は肝・腎機能に影響されず、蓄積性もない⇒ICU向き  •  ただし、治験もやっておらず国内導入の見込みは・・・???  

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Pharmacology

① Altered  Physiology  During  Cri9cal  Illness  •  いわゆる「重症患者」では、全身状態により筋弛緩薬の薬物動態に変

化が起きている。   •  特に、筋弛緩作用の増強・遷延が問題になることが多い。    <患者因子の例>  •  高齢   体内水分量の減少や痩せによる分布容積の低下   低アルブミン血症、心拍出量や肝・腎機能の低下  •  低体温  •  電解質・酸塩基平衡異常   低K、高Mg:  作用遷延、高Ca:  作用短縮(Ach  releaseの増加)   呼吸性 or  代謝性アシドーシス:  作用増強(機序不明)   呼吸性アシドーシス、代謝性アルカローシス:  拮抗薬効果の減弱  

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Pharmacology

② Organ  Dysfunc9on  and  NMBAs  <Aminosteroids  (Vecuronium,  Rocuronium)>  •  肝障害   分布容積の増大により排泄遅延⇒作用遷延  •  腎傷害   Vecuronium:活性代謝産物の蓄積⇒作用遷延   Rocuronium:影響なし(作用延長の報告もあり)    <Benzylisoquinoliniums>  •  Aminosteroidsに比べて肝・腎機能の影響が少ない。  

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③ Drug  Interac9ons  and  NMBAs  

筋弛緩作用減弱

筋弛緩作用の延長

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③ Drug  Interac9ons  and  NMBAs  

ACh  releaseの減少

ACh  releaseの減少  ACh  Receptorのsensi9vity減少

NMBAの代謝を阻害

終板のsensi9vity減少 筋弛緩作用の延長

免疫抑制薬、循環作動薬、抗菌薬・・・筋弛緩作用延長に注意

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Reversal  Agents

•  長い間Ach-­‐esterase  inhibitorが使われてきた。  ただし、①深い筋弛緩状態での拮抗は不可  

       ②抗コリン薬との併用投与が必要  

•  Sugammadex   ・Aminosteroidsに特異的に拮抗(包接して活性⇓)   ・深い筋弛緩でも緊急拮抗できる点は特に有用。   ・複合体はほぼ100%腎排泄だが薬理活性なし。    透析効率は不明(大分子なので良くないはず)    包接体自体の腎(組織)への影響もまだ不明   ・アナフィラキシーの報告が散見  

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理想の筋弛緩薬の条件

•  作用が非脱分極性である  •  作用発現が急速である  •  作用持続時間が短い(調節性が良い)  •  作用からの回復がすみやかである  •  蓄積作用がない  •  循環器系への悪影響がない  •  ヒスタミンを遊離しない  •  薬理的にその作用が拮抗し得る  •  神経筋伝達遮断作用が強力で選択的である  •  薬物代謝、排泄が臓器機能に依存しない  •  薬が安価である

須永宏:  新しい筋弛緩薬;  東京麻酔専門医会リフレッシャーコース2011

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「ICU」での理想の筋弛緩薬の条件

•  作用が非脱分極性である  •  作用発現が急速である  •  作用持続時間が短い(調節性が良い)  •  作用からの回復がすみやかである  •  蓄積作用がない  •  循環器系への悪影響がない  •  ヒスタミンを遊離しない  •  薬理的にその作用が拮抗し得る  •  神経筋伝達遮断作用が強力で選択的である  •  薬が安価である  •  電解質異常・酸塩基平衡異常などの病態下の影響が少ない  •  薬物代謝、排泄が臓器機能に依存しない  •  他薬剤との相互作用が少ない

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MONITORING

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筋弛緩薬の感受性

•  Vecroniumの単回投与後、筋収縮の回復過程において母子内転筋と喉頭筋で明らかに差がみられた。  

•  Onsetも有意差あり   Larynx  vs.  Adductor  pollicis        :  3.3±0.1  vs.  5.7±0.2  min               (p<0.01)  

 

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筋弛緩薬の感受性

•  筋により感受性異なる  •  筋収縮の回復は低い筋から  •  横隔膜の回復は早い⇒respiratory  sparing  effect  

筋弛緩薬の感受性

咽頭筋群

咬筋、オトガイ舌筋

母指内転筋など四肢

腹筋

眼輪筋

喉頭筋

皺眉筋

横隔膜

Neuromuscular blocking agents Clinical Anesthesia,5th ed. より一部改変

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モニタリング部位

•  母指内転筋を用いることが多い  •  浮腫、低体温、不適切な電極位置などで信頼性落ちる  •  眼輪筋、皺眉筋の方が声帯筋の感受性に近い  

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Train  of  Four:  TOF

•  TOF  < 0.2となると、数字(4~0)で表示  •  筋弛緩の回復:一般的にはTOF  > 0.9  •  ただしTOF  > 0.9でもAch  receptor占拠率はまだ50%程度  

•  TOF:0以上の深い遮断はPost  Tetanic  S9mula9on  (PTS)で評価          

薬物投与

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「至適な」筋弛緩とは・・・

Opera9on  Room    or    

 Intensive  Care  Unit  

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NMBAs  AND  ASSOCIATED  COMPLICATIONS

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① ICU  acquired  weakness:  ICU-­‐AW

<MRC:Medical  Research  Council  score>  •  肩外転、肘屈曲、手伸展、股屈曲、膝伸展、足背屈  •  各1~5点(MMTと同じ)×2(左右)

ICU-­‐AW診断基準

①重症疾患後に発症した筋力低下

②左右対称、弛緩性で全身(近位・遠位とも)に及ぶ。脳神経は正常(顔の歪みなし)

③MRC  score:48/60点以下を24時間以上あけて2回以上満たす

④人工呼吸管理中

⑤重症疾患に関連しない疾患は除外されている

1,2,5は必須。3,4のどちらか1つ以上 Crit  Care  Med  2009;37:S299-­‐308

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•  ICU-­‐AWの原因:微小循環不全、栄養不良、全身性炎症、長期の不動    <過去に言われている下記のRisk  factorを改めて検証>   ①多臓器不全   ②ベッド上安静   ③高血糖   ④ステロイド   ⑤NMBAs    •  他に・・・  ・長期人工呼吸はweaknessと関連強い    ・動物実験ではAminosteroidsの方が   横隔膜機能不全などの頻度が高い   という報告もある

Crit  Care  Med.  2010  Mar;38(3):779-­‐87

Review中の記載

Crit  Care  Med  2006;  34:  3018-­‐23

NMBAsが独立した原因として  特定できる根拠は乏しかった

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<NMBAsとICU-­‐AWの関連を調べた16個の観察研究に     対するsystema9c  review>  

•  そもそも、「NMBAs=ICU-­‐AWのrisk  factor」というのは1970年代に人工呼吸管理+ステロイドを使用した喘息重責患者での報告から始まった。  

•  以降20年で40個以上のcase  reportあり。  

•  ほとんどの研究でステロイドのbiasが強く、NMBAsとICU-­‐AWの関連を証明できる質の高い研究は現在でもほとんどない  

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•  「NMBAsとICU-­‐AWに関連あり」は5文献  •  3つは喘息重責患者が対象で、全例で高容量ステロイド使用    1つはICU-­‐AWの診断自体があやしい(=近年の定義には該当しない)    1つは電気生理検査の異常の有無でICU-­‐AWを診断し、多変量解析で    NMBAs使用がリスク因子になったが、検査異常とICU-­‐AWの相関は不明  

結局・・・

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•  ちなみに全身麻酔における術中覚醒は0.1-­‐0.2%くらい  

•  ICUにおけるawarenessもcase  seriesは散見。頻度不明     生命危機の感覚、悪夢、PTSD・・・  

•  鎮静鎮痛薬の9tra9onはBISモニタの使用が有用と  されているが、予防として十分な方法ではない。  

•  Seda9on  scaleとBISの相関関係についての研究は  いくつかあるが、結論は出ていない  

② Awareness  During  Induced  Paralysis  

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•  鎮静・鎮痛に関する最新のガイドライン  •  筋弛緩薬投与中の鎮静に関する記載は少しだけ

Crit  Care  Med.  2013  Jan;41(1):263-­‐306

We  suggest  that  objec7ve  measures  of  brain  func7on  (e.g.,  AEPs,  BIS,  NI,  PSI,  or  SE)  be  used  as  an  adjunct  to  subjec7ve  seda7on  assessments  in  adult  ICU  pa7ents  who  are  receiving  neuromuscular  blocking  agents,  as  subjec7ve  seda7on  assessments  may  be  unobtainable  in  these  pa7ents  (+2B).

NMBAs投与中の鎮静モニタは、現状はBISくらい

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③ DVT  and  Corneal  Abra9ons

Pediatr  Crit  Care  Med  2009;  10:171-­‐175 他に、まばたき消失による角膜損傷:  8~60%    ⇒眼軟膏、eye  patchによる保護

NMBAがDVTのRisk  factorとしている報告はその他多数あり

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ICUにおけるDVTのRisk  factorの検証

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④ Anaphylaxis

•  典型はIgEを介したI型反応      <麻酔中に使用した薬剤調査>  •  症例の半分以上が筋弛緩薬  •  サクシニルコリン、ロクロニウム

が多い  •  ラテックス、抗菌薬と続く   

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NMBAsはVAPのリスク?

•  2003-­‐2009年のVAPの疫学調査とリスク因子の検討  •  single  center,  medical-­‐surgical-­‐trauma  ICU  in  Saudi  Arabia  •  N=2812    <Result>  •  VAP発症群とcontrol群にAPCHE  IIの差なし  •  2009年時点でVAP発症:  433例(15.8%)  •  6.3  per  1000  ven9latory  daysまで減少(2003年:  19.1)  •  MV期間、ICU滞在・入院期間はVAP発症群で長い。  •  死亡は有意差なし

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VAPの報告体制整備、スタッフ教育、手指衛生キャンペーン  VAP  bundle(30-­‐45度の頭部拳上、Daily  interrup9on、胃潰瘍予防、DVT予防)の導入

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NMBAsはVAPのリスク?

<PICUにおいてNMBAsは予後に影響するか?>  •  Retrospec9ve  cohort  (3  years),  single  center  •  n=317,  ven9lated  over  3474  days    •  Age:  from  30days  to  12years  •  Recceived  NMBA  for  at  least  12hr  or  not

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•  重症度スコアを含め、両群の患者背景に有意差なし  •  NMBA  groupは80%が呼吸不全、20%がsepsis  •  NMBAs:  atracurium  (82%),  rocuronium  (18%)

NMBA  34例 Control  283例

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•  MV期間、PICU滞在期間はNMBA群で長いが、PICU死亡や 入院期間に差はなし。  

•  VAPの発症に有意差あり      11.8%  vs.  4.2%,  (6.6    vs.  4.1  per  1000  ven9latory  days)  ,  p=0.01

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合併症のまとめ

•  単回使用程度ではICU-­‐AWのriskは考えなくてよさそう。  

•  BISモニタを使えば「金縛り」は防げるかもしれない  

•  DVTのリスクになるので、適切な予防は必要  

•  角膜損傷予防に軟膏やアイパッチを用いる  

•  ロクロニウムでアレルギー反応はわりと良く起こるので注意。  

•  VAPのリスクになりうる  

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やはりそれなりに合併症がある。    

じゃあNMBAsの適応って・・・

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いわゆる「Guideline」

•  もう10年以上更新されていない  

•  人工呼吸管理、ICP上昇、筋痙攣、酸素消費減少などの治療で考慮  

•  投与が少量かつ 短期間になるようTOFでモニタリング  

あまり特別な推奨はない  重症呼吸不全で考慮?  SSCGでも推奨の記載なし

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NMBA  ICU  Applica9ons

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① Urgent/Emergent  Intuba9on

•  High-­‐dose  rocuronium  (1.0-­‐1.2mg/kg)とsugammadexの登場により、サクシニルコリンの使用価値は薄れてきている。  

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<緊急挿管時のNMBAs使用有無と合併症率の比較>  •  prospec9ve,  observa9onal  study  •  MGH  or  UCLA(Ronald  Regan  Med  center)において緊急挿

管した患者のうち蘇生患者を除く454人  •  挿管実施者は200例以上のトレーニングを受けた人  

•  低酸素血症(minimum  SpO2  <  80%,  挿管中と挿管5分後)  •  挿管時合併症(食道挿管、trauma9c  intuba9on、誤嚥、歯

牙   損傷、気管支挿管)、使用麻酔薬・・・    <Result>  •  Use  of  NMBAs:  287,  Not  use  of  NMBAs:  167  

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挿管時のNMBAはメリットも大きいが、挿管困難が予測 される場合は自発呼吸がなくなるデメリットもよく考える

難易度↓

挿管に伴う合併症↓

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② ARDS

•  そもそものNMBAs投与の目的   人工呼吸器の同調性改善、気道内圧や胸郭コンプライア   ンスの改善、呼吸仕事量軽減、酸素化の改善、機械的    合併症軽減・・・  

•  珍しく(?)NMBAsが良い影響を及ぼすとする報告が散見  

•  ほとんどの報告で「Cisatracurium」が使われており、   日本の現状では結果を鵜呑みにできない。  

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死亡率改善

炎症性サイトカイン減少、酸素化改善

酸素化改善、必要PEEP減少

酸素化改善

これだけ死亡率悪化

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<ARDS患者に対する筋弛緩薬の効果の評価>  •  Sewng:  Mul9-­‐center,  prospec9ve  RCT  •  Pa9ents:  発症48時間以内のARDS患者36人に対し          controlとCisatracurium群各18人で比較  •  全例でARDS-­‐netの肺保護戦略に従ったMV設定    

•  Primary  end  point:  48hr後のサイトカイン(IL-­‐1β,  6,  8)の                                                                                BAL中濃度、血中濃度  •  Secondary:  P/F  ra9o推移,  ICU  mortality,  Ven9lator  free                                                        days  (VFD)  at  28  days    

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•  一部のサイトカイン(IL-­‐6,8)はNMBA群で低かった  

•  24hr以降NMBA群でP/F改善。  

•  ICU  Mortality  (%)            (NMBA  vs.  control)      27.8%  vs.  55.6%        (p=  not  significant)  •  VFD  at  28  days  (days)            (NMBA  vs.  control)      20.0±11.6  vs.  18.0±8.3                                              (p=  not  significant)  

5日間のP/F変化

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<NMBAsによりARDSの予後は改善するか?>  •  Mul9-­‐center(20  ICU),  France,  double-­‐blind,  prospec9ve  •  発症48時間以内のP/F  <  150のARDS患者  •  Cisatracurium  (n=177)  vs.  Placebo  (n=162)を   各々48時間投与し、比較  •  人工呼吸管理はARDS-­‐netのprotocolに従う。  

•  Primary  outcome:  hospital  mortality,  90day-­‐mortality  •  Secondary:  28day-­‐mortality,  barotrauma,  28day-­‐VFD,  ICU-­‐AW(MRC  score),  organ  failure・・・

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•  患者背景  Cisatracurim群の方がP/F  ra9oが低かった(p=0.03)。  その他は両群に差なし  

•  adjusted-­‐90day  mortality      Hazard  ra9o:  0.68    (95%CI:  0.48-­‐0.98,  p=0.04)  

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28日死亡率改善

28,90-­‐VFD改善

Barotrauma、気胸少ない

ICU-­‐AWにならない

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<結局NMBAsにメリットあるか?のmeta-­‐analysis>  •  MEDLINE,  Cochraneなど5つのdatabaseで検索    <Result>  •  関連文献は740個あるが、RCTはほとんどない  •  2人のreviewerがRandomiza9onの適切さ、Biasの状況

などを「Cochrane  Risk  of  Bias  tool」で評価  •  残った文献のNMBAは全てCisatracuriumだった  

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•  残ったRCTは前述のCCMとNEJMの 2文献+1文献の 計3個だけ!!

•  3文献合わせて 20施設431人 (Franceの同一研究グループ)  

•  NEJMの規模が 最大 (n=339)  

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28日死亡、ICU死亡、院内死亡の全てでrisk低下

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Barotrauma減った

酸素化は投与48時間の時点だけ有意に改善

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人工呼吸期間に影響なし

ICU-­‐AWの発症増えない

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③ Status  Asthma9c •  ICU-­‐AWのhigh-­‐risk  popula9onとされている。  •  NMBAsの使用というよりどうやらSteroidの併用が悪い。  ⇒どうしてもNMBAsが必要なら少量かつ短期投与で。  

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④ Increased  ICP •  吸引刺激、咳によるICP上昇予防に使われ始めた。  •  近年では、NMBAsによりICP,  CPP,  CBFに良い影響が   

示された研究はほとんどない。  •  死亡率低下を示したn=100の後ろ向き研究が1個

あったが、神経学的予後は悪化していた。  

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⑤ Increased  IAP •  Intra-­‐abdominal  hypertension  (IAH)  :  IAP  ≧ 12mHg                  ※ 詳細は勉強会「腹部コンパートメント症候群」参照  

•  NMBAsを使うとIAPが下がったとするcase  reportや閉腹に至った症例が増えた小規模retrospec9ve  studyなど。  

•  2006年のACSガイドラインでは、mild-­‐moderateのIAHに対するNMBAの使用は「Grade  2C」  

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•  2013年6月にACSガイドライン改訂版が発表

改訂までの6年間で 推奨が変わる根拠になるほどの研究は  なかった。

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⑥ Therapeu9c  Hypothermia  Azer  Out-­‐of-­‐Hospital  VF-­‐associated  Cardiac  Arrest

•  院外心停止における低体温療法のreview  •  NMBAsの主な役割:Shiveringの予防・治療  •  Shiveringは冷却中35-­‐37℃で起こり、酸素消費量の

増加だけでなくtarget  (32-­‐34)に達するまでの時間も延長させてしまう  

•  NMBAsは必須ではないが、四肢末梢の保温、Mgや鎮静・鎮痛薬の増量だけで対処に難渋する場合は考慮  

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「予防としてルーチンで使用を」とまでは書かれていない  モニタリングや推奨使用量についても記載はない

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まとめ

•  手術の麻酔維持とICU管理では筋弛緩薬の使用目的が大きく異なる  

•  現状、ICUでNMBAが必要になるのは気道管理の変更時くらい  

•  単回使用程度では、ICU-­‐AWのリスクになるという根拠はない  

•  適応と言われている病態でも根拠は乏しく、使用は限定される  

•  気道確保などの目的が達成したら、NMBAの作用持続時間を考慮し、作用時間内は鎮静(BISの併用がbeger)するか拮抗薬を使うことでawareness  in  paralysisを予防する  

•  「NMBAs  in  ICU」という点では良質なエビデンスは非常に少なかった