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乳酸についてのオモシロ文献集
慈恵ICU勉強会2016年11月8日亀田慎也
オモシロ文献集
って何??
オモシロ文献集
• まずは PubMedで文献探し
• “ Lactate ”を TitleorAbstractに含むものに加えて
• Intensivecare、Criticalcare、Sepsis、Septic、Criticalill、Cardiacsurgeryなど様々な関連ワードで検索
*:乳酸値が高いと予後不良や乳酸のクリアランスが悪いと予後不良というようなありきたりなものは今回は基本的に割愛
2015年1月20日慈恵ICU勉強会「乳酸について真剣に考える」を参照ください
ベースとなる文献が見つかった
• 敗血症における乳酸アシドーシスについての文献
• Sepsis-3の発表前の文献であるが基本的には問題なさそう
• 乳酸について様々な角度から検討していてオモシロいかと
Chest.2016Jan;149(1):252-61.
乳酸について
乳酸にまつわる雑学• 1922年 ノーベル生理学・医学賞 受賞
• OttoFritzMeyerhof
• “乳酸=疲労物質”と言い始めた→ 運動・スポーツ学における常識に
しかし近年は
• 有酸素運動・無酸素運動という名称への疑問• 蓄積は疲労物質ではなく運動強度の結果であるという考え• 乳酸はエネルギー源であるという考え• 乳酸シャトルトレーニングという言葉の誕生 など
他の業界では乳酸に対する考え方が大きく変化している
乳酸について• 乳酸アシドーシスは酸素供給不足による組織低酸素のバイオマーカーであり予後不良の予測因子であると長い間考えられてきた
• 間違いではないがこの考え方だけではあまりにも単純過ぎであり組織低酸素が存在しない状況でも乳酸アシドーシスが起こることを説明できない
• 解糖系の嫌気的代謝の結果に生じた老廃物というだけではなく嫌気的代謝が起こる以前の代謝が高い状態におけるエネルギーの“シャトル”とも考えられる
Crit CareMed.1992;1(20):80-93.
JPhysiol.2004;558:5-30.
2015年1月20日慈恵ICU勉強会
敗血症の筋肉内では組織低酸素が存在しない
乳酸の産生・代謝
乳酸の産生・代謝
• 乳酸は糖の代謝の結果として生じる
• 正常でも乳酸は大量(約1.5mol/日)に産生されており嫌気的代謝のみで産生されるわけではない
• 代謝はピルビン酸からKrebs回路に入り電子伝達系でATPを産生したり、Cori回路で糖新生に用いられたりする
NatChemBiol.2012;8(6):509-517.
A:酸素不足
B:補酵素チアミンの欠乏
C:細胞内にNADHが増えるような病態(ケトアシドーシスやエタノール中毒)
D:解糖系が活発化した状態(敗血症、カテコラミン過剰、重度の呼吸窮迫)乳酸:ピルビン酸比は保たれる
E:乳酸クリアランスの低下
乳酸が産生される場所
CurrOpinCritCare.2006;12(4):315-321.
筋肉 皮膚 脳
赤血球腸管
肺でも乳酸を産生⑴
• 急性肺障害(ALI/ARDS)を来した敗血症患者において• 動脈ラインと肺動脈カテーテルからサンプルを採取• Group1:ALI/ARDS(+)+高乳酸血症(+)• Group2:ALI/ARDS(-)+高乳酸血症の有無は問わず
Chest.1997;111(5):1301-1305.
• Group1で動脈血の方が混合静脈血よりも乳酸値が高い
肺が障害されると乳酸が産生されている
肺でも乳酸を産生⑵
Crit Care.2002;6(4):327-329.
• 乳酸と肺に関するレビュー
• ALI/ARDS患者の肺で乳酸の産生が見られる
• 通常低酸素ではないと考えられる肺で乳酸産生が見られることがあり低酸素だけでは説明がつかない
炎症性メディエーターの関与が考えられ全身での変化に対する間接的な反応である可能性がある
白血球でも乳酸を産生する
J Clin Invest.1982;70(3):550-557.
• 貪食を起こした白血球では乳酸の産生が高まる
●:糖+STZ■:糖+バッファー◯:糖なし+STZ□:糖なし+バッファー(STZ:Serum treatedzymosan: 貪食を惹起)
敗血症の時のように貪食作用が活性化している白血球でも乳酸が産生されている
乳酸アシドーシスの原因
乳酸アシドーシスの原因
• 臨床的には高乳酸血症は⑴乳酸産生の増加 ⑵乳酸消費の減少 ⑶その両者
によって生じると考えられる
• 要因の多くは組織低酸素に伴うものと考えられるが酸素供給の減少と完全に関連しているかというとそうではない
JAMA.1993;270(14):1724-1730.
乳酸アシドーシスの原因
• 全身の酸素供給低下が生じると通常数時間で死に至るが例えば敗血症患者では高乳酸血症が持続することから組織低酸素以外が関連していると考えられる
• CohenとWoodsらによる乳酸アシドーシスの分類によると他の要因も敗血症における高乳酸血症に関連し得ることが理解されこれらも治療の際には考慮する必要がある
BlackwellScientific;1976.
JAMA.1993;270(14):1724-1730.
組織低酸素以外の原因も常に意識する必要がある
乳酸アシドーシスの分類
ClinicalandBiochemicalAspectsofLacticAcidosis.Oxford,UK:BlackwellScientific;1976.
1976年Cohen・Woodsらが分類
B1:基礎疾患TypeB:明らかな組織低酸素なし
B2:薬物・毒物
B3:先天性代謝異常
TypeA:明らかな組織低酸素あり
酸塩基平衡
Stewart理論
• 乳酸が増えることそのものがアシドーシスを起こす
2015年1月27日慈恵ICU勉強会
Critical Care 2013Mar01;1(1):3.
Lacが増えることでSIDが減少しアシドーシスとなる
Stewart理論の方が単純でわかりやすい
乳酸シャトルと乳酸負荷
CriticalCare2014,18:503
・Cell-to-cell
• 脳:乳酸利用:安静時7%→運動時25%低血糖の際のエネルギー源
• 心臓:高乳酸血症ではエネルギーの60%に乳酸が利用される
(原文:逆)
心臓と乳酸 CritCare.2014Mar25;18(2):R48.
• Open-label、前向きRCT• 心不全を起こした患者、40人• 乳酸ナトリウム投与群は
• 生理食塩水投与群と比較して
• 心拍出量や右心機能が改善
• 死亡率やICU滞在日数は有意差なし
乳酸は心臓にとって栄養
乳酸ナトリウム
• Open-label、前向きランダム化試験• ICU入室のCABG術後患者、208人• 乳酸ナトリウム投与群(10ml / kg)は乳酸リンゲル投与群(30ml/ kg)と比較して
• 尿量低下などを起こさずに心係数が有意に上昇(P=0.02)、輸液必要量も有意に減少(P<0.0001)した
• 有害事象は高Na血症と代謝性アルカローシス
IntensiveCareMed2008,34:1796–1803.
組成
乳酸ナトリウム
乳酸リンゲル
やはり乳酸は心臓にとって良さそう
IntensiveCareMed(2007)33:495–502
• ラットのエンドトキシンモデル• ICI-118551(β2ブロッカー)、Dichloroacetate (DCA)、両者で乳酸を阻害• 意図的に乳酸を減少させるため両者を用いた群ではほとんどが死亡したが乳酸を加えた群では元の状態に近くなった
心臓に対しては意図的に乳酸を低下させるのはむしろ有害?
脳と乳酸
Curr Neurol Neurosci Rep(2016)16:31Astrocyte-neuronlactateshuttle
“Cerebralglucose-sparing(節約)effect”
<頭部外傷患者>
①乳酸はシグナル伝達物質のようにHCA1を通る(Lactormone)。解糖系が抑制(ダウンレギュレーション)され糖はペントースリン酸回路(神経細胞の修復や酸化からの防御)に入る。ピルビン酸へは乳酸代謝が活性化され利用される
②肝臓での糖新生が増えることで乳酸が糖に変換される。全身循環からの糖がエネルギーとして得られる
Lactormone
IntensiveCareMed(2014)40:412–421
• 前向きフェーズⅡ介入研究
• 頭部外傷患者、15人• 乳酸値が5mmol/Lになるように乳酸ナトリウムを投与• Cerebralmicrodialysis (CMD)、 BraintissuePO2 (PbtO2)、
Intracranialpressure(ICP)を用いて測定• 脳の乳酸値、ピルビン酸値、糖が増加しグルタミン酸、頭蓋内圧は低下した
脳の代謝にとって乳酸は良さそう
• 前向きランダム化試験• 頭蓋内圧亢進症状のある重症頭部外傷患者(GCS<8)、34人
• 乳酸ナトリウム投与群は• マンニトール投与群と比較して• 頭蓋内圧の低下が大きく持続時間も長く脳灌流圧が高かった
• 長期予後も良さそう
IntensiveCareMed(2009)35:471–479
乳酸の方が頭蓋内圧を下げて脳灌流圧を上げる
その他乳酸負荷が良さそうな文献Metabolicandhemodynamiceffectsofhypertonicsolutions:sodium-lactateversussodiumchlorideinfusioninpostoperativepatients.• 定時の心臓外科において乳酸負荷で心機能が上がる
Comparisonofhypertonicvs. isotonicfluidsduringresuscitationofseverelyburnedpatients.
• 熱傷患者に高張乳酸ナトリウムを用いることで輸液量を減少したEarlyresuscitationofdengueshocksyndromeinchildrenwithhyperosmolarsodium-lactate:arandomizedsingle-blindclinicaltrialofefficacyandsafety.• デング熱に対する蘇生で乳酸ナトリウムを用いると輸液量が減少でき 血管内皮障害の改善も見込めるかもしれない
Shock 2002,18:306–310.
AmJEmergMed2009,27:1091–1096.
Crit Care2014,18:466.
むしろ乳酸は良いものなのではないか
β受容体と乳酸
β2刺激による解糖系とNa-K-ATPase活性増加• 敗血症では安静時の代謝率が増大することで糖代謝が増加する
• 解糖系への糖の流入が増えるとピルビン酸をアセチルCoAに変換するPDHのキャパシティを超えてしまい増加したピルビン酸はLDHによって乳酸に代謝されてしまう
Crit Care Med.1993;21(7):1012-1019.
β2刺激による解糖系とNa-K-ATPase活性増加• 動物実験では血中エピネフリン・ノルエピネフリン濃度と高乳酸血症に関係があることやβ2刺激によってNa-K-ATPase活性が増大して解糖系への糖の流入が増えることが報告されている LifeSci.2002;70(16):1875-1888.
AmJPhysiol HeartCirc Physiol.2003;284(3):H1028-H1034.Shock.2008;30(4):417-421.CriticalCare2014,18:503
β刺激で乳酸増加
β2刺激による解糖系とNa-K-ATPase活性増加• β2遮断作用のあるエスモロールやNa-K-ATPase阻害薬であるウアバインによってエピネフリンによる糖代謝が抑制されるという実験結果からも裏付けられている
Lancet.2005;365(9462):871-875.J Clin Invest.1996;98(10):2388-2397.AmJPhysiol.1999;277:E176-E186.
JAMA.2013;310(16):1683-1691.
エスモロール(β遮断薬)は酸素供給量を減少するにもかかわらず乳酸値を 低下させる
β刺激薬
Chest.2014Jan;145(1):53-9.• ランダム化試験のプラセボ被験者のサブ解析
• 喘息急性増悪患者、135人• 静注のβ刺激薬と高乳酸血症との関係• 血中アルブテロールは有意に血中乳酸濃度と相関し喘息重症度補正後も相関
• 1週間後の入院率や再発などとは相関しなかった
* 吸入や呼吸筋疲労による乳酸上昇説もある
β=0.45,P<.001(β=0.41, P =.001)
喘息患者は乳酸値が高くなりやすい
Chest.1990;98(3):651-655.BMJCaseRep2013.doi:10.1136/bcr-2013-201015
β遮断薬
CritCareMed.2015Dec;43(12):2616-22.
• 後向きコホート研究、救急外来
• 重症敗血症または敗血症性ショック患者、126人
• 25%がβ遮断薬の長期服用歴あり• β遮断薬内服群は非内服群と比較して• 初回の乳酸値が低い(3.9± 2.3mmol/Lvs.5.6± 3.6mmol/L)(p < 0.001)
なし あり
β遮断薬内服患者は敗血症の重症度を過小評価してしまう可能性がある
AnaesthIntensiveCare2011;39:449-455
• 前向き観察研究
• 敗血症性ショック患者における乳酸値・アドレナリンと生存率について
• 40人の患者、ICU入室後から目標血圧までアドレナリンでの治療を開始• LactateIndex=(LAC2–LAC1)/(ADR2–ADR1)=ΔLAC/ΔADR(LAC1・ADR1は入室直後、LAC2はpeak値、ADR2は目標血圧達成時)
アドレナリンを投与して乳酸値が増加した(Lactate Indexが高い)方がむしろ予後が良い
アドレナリンによって血行動態が改善した半面、解糖系が賦活されて乳酸値が二次的に上昇したと考えられる
β刺激によって乳酸値が上昇しているだけで悪い病態とは言えない
乳酸クリアランス
乳酸クリアランス
• 乳酸は主に肝臓で代謝されるが一部は腎臓でも代謝される
2015年1月20日慈恵ICU勉強会
AmJRespirCritCareMed.1998Apr;157(4Pt1):1021-6.
• 前向き研究
• 循環の安定した敗血症患者、34人• 中等度の乳酸上昇は産生増加か利用障害か?
• 1mmol/kgの乳酸を15分かけて投与• 血清乳酸値で<1.5mmol/Lvs.≧ 2.0mmol/Lで2群に分けたところ高乳酸群でクリアランスが有意に低かったが乳酸の産生量は同様であった
• 二次解析では乳酸値は産生量ではなくクリアランスとの相関が強かった。中等度でも同様の結果であった
二次解析
高乳酸血症は乳酸産生の増加よりも乳酸クリアランスの低下が原因である可能性がある
乳酸値による予後予測
QJMed2015;108:279–287
• 後向きコホート研究• 乳酸値が2-4mmol/Lの重症敗血症患者、535人• Primaryoutcome:発症後48時間以内における(1)院内死亡(2)血管収縮薬が必要(3)人工呼吸器が必要(4)乳酸値が4mmol/L以上に上昇(5)ICU入室の発生率について
• 23.2%で何かしらの有害事象が発生
• 多変量ロジスティック回帰分析では意識変容、低血圧、頻呼吸、BUNの上昇がPrimaryoutcomeと関連
中等度と考えられる乳酸値でも有害事象は起こる
Shock.2012Jul;38(1):4-10.doi:10.1097
• Derivationcohort:VASST cohort(n=665)• Validationcohort:StPaul’sHospital(SPH)cohort(n=469)の• 乳酸濃度を4段階に区別• Q1:<1.4,Q2:1.4-2.3,Q3:2.3-4.4,Q4:>4.4(正常値<2.3mmol/L)• Primaryoutcome:28日死亡率• Q2:1.4-2.3mmol/L群はQ1:<1.4mmol/L群と比較して有意に死亡率が高く(P<0.0001)、Q3:2.3-4.4mmol/L群と同じくらい予後が悪かった。
正常と考えられている範囲内でも予後が悪い可能性がある
• 後向きコホート研究• Medical/surgical ICU、乳酸値0.01-2.00mM、2157人
• Youden Indexを用いてcut-off値(1.35mM)を決定
• 前後での死亡率を検討• 1.35mM以上だと有意に死亡率が上昇する
CriticalCare2013,17:R197
乳酸値による予後予測は困難
FN患者の予後予測
CancerBiol Ther.2010Apr 15;9(8):585-9.Epub 2010Apr 20.• 単施設、前向き研究
• 547人の血液腫瘍患者• うち328人がFNとなり46人が48時間以内に敗血症性ショックに• FN患者の血清乳酸値を測定することで敗血症への進展が予測できるか• 単変量解析:頻呼吸(>20)(OR5.9;95%CI:2.0-16.9,p=0.001)、乳酸値(≥2mmol/L)(OR18.4;95%CI:4.1-81.6,p<0.001)
• 多変量解析:乳酸値(OR12.1;95%CI:2.1-70.1)、 頻呼吸(OR7.6;95%CI:1.6-35.5,p=0.01)
• 乳酸値を加えたROC解析:0.75;CI:0.58–0.91(p=0.02)
乳酸値でFN患者が敗血症性ショックに移行することを予測できる?
乳酸に関する治療について
予後を改善しない治療• 炭酸水素ナトリウム(メイロン®)臨床的予後を改善しないどころか炭酸ガス産生量やイオン化カルシウムを減らして心機能や血管平滑筋緊張に悪影響を及ぼす可能性がある
• Dichloroacetate(DCA)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性を増強して乳酸値を減少させる一方で酸素使用を増やす。RCTでは乳酸値は減少したが予後は改善しなかった
• 腎代替療法(RRT)乳酸値を減らして酸塩基平衡を正常化する可能性はあるが良質な臨床試験はない
AnnInternMed.1990;112(7):492-498.
NEnglJMed.1992;327(22):1564-1569.
J Crit Care.2014;29(4):650-655.
乳酸と透析
• ケースレポート• 28歳男性、敗血症性ショック• 乳酸値16.8mmol/L• 高乳酸血症に対してCRRTを施行• 7L/hr(58ml/kg/hr)で透析を行っても乳酸クリアランスは79ml/min(4.67 μmol/kg/min)で高乳酸血症は改善せず
ClinKidneyJ(2015)8(4):374-377.
CritCareMed.2005Oct;33(10):2235-40.
そもそも乳酸の産生は54μmol/kg/minというデータもありCRRTで乳酸を補正することは困難か
豆知識系
動脈血?中心静脈血?末梢静脈血?
• 動脈血の方が中心静脈血と比較してわずかに高いが臨床的には十分に代用が可能
AnesthAnalg.2012Sep;115(3):605-10.r2= 0.97;P0.0001
やはり肺で乳酸が産生されている
• 末梢静脈血乳酸値は動脈血乳酸値より若干高値であるが相関は強い(r= 0.94[95%CI,0.91-0.96])
動脈血と中心・末梢静脈血どれでも評価に使える
AnnEmerg Med.1997;29(4):479-483.
血液サンプルの管理
• 長時間血液サンプルを放置すると赤血球や白血球に由来する乳酸によって値が上昇するので採血後は可能な限り早く計測すべきである。時間がかかるときは氷冷する
IntensiveCareMed.1999;25(5):508-513.
氷冷あり
小ネタ集
肝臓外科
• 定時肝臓切除術での終了間際の乳酸値(LCT-EOS)で術後の経過が予測できる。3mmol/L以上でCCI(包括的合併症)や90日死亡率、重篤な合併症が増加する
• 術前・術中の予測因子として
AnnSurg.2015Nov;262(5):787-92
DiabetesRepeat-hepatectomyMajor-hepatectomySynchronous-major-procedureInflow-occlusionBlood-transfusion
肝移植
Hepatobiliary Pancreat DisInt.2011Dec;10(6):587-92.
• 前向き観察研究• SICU入室の肝移植後患者、222人• グラフト不全は45人• 早期(入室から6時間の間)の乳酸値のクリアランスが24.8%未満は他の指標と比較してグラフト不全を正確に予測できる
非心臓外科
Earlyhyperlactatemia predictspancreaticfistulaaftersurgery
• 定時膵頭十二指腸切除術、尾部切除術後の高乳酸血症(2.5mmol/L)は膵液漏の予測因子となりうる
Peritoneallactateasapotentialbiomarkerforpredictingtheneedforreintervention afterabdominalsurgery
• 定時・緊急腹部外科術後の再手術の指標として腹水/血漿乳酸比や腹水乳酸値が有用である可能がある
BMCAnesthesiol.2015Jul28;15:109.
JTraumaAcute Care Surg.2014Aug;77(2):376-80.
アルコールと乳酸
Am JEmerg Med.2016May;34(5):825-9.
• 日本の救急外来• 意識障害患者、415人• アルコール群で有意に乳酸値が高い• アルコール群では意識レベルと乳酸値は相関せず
JCS
ストレスと乳酸
• 後向き横断研究• オーストラリア、3施設、7925人• 血糖値・乳酸値と予後の関係を解析• 両者を組み込んだモデルを用いた場合は乳酸値のみが予後不良のリスク因子となり血糖値は独立したリスク因子とはならなかった
• ストレス惹起性の高血糖と高乳酸血症には相互作用があり得る
Crit CareMed2014;42:1379-85.
強いストレス下では血糖値も乳酸値も上昇するが高乳酸血症の方がより悪い可能性
乳酸とECMO
J Thorac Cardiovasc Surg.2015May;149(5):1445-50.
• 後向き観察研究• 心臓外科術後心原性ショックに対するVA ECMO患者、123人
• 年齢、性別、平均乳酸値、乳酸クリアランスが予後と関係する
• 特に乳酸クリアランスはECMOからの離脱の指標としても有用
まとめ
• 高乳酸血症が敗血症や心臓外科、重症患者において予後不良因子であることや乳酸のクリアランスが悪いと予後不良であるという文献はかなりの数が存在するが今回はオモシロ文献集ということでこれら以外の文献を中心に集めてみた
• 乳酸値が上がる原因は組織低酸素だけではなく、その他の様々な原因を含んでいる可能性がある。原因を考えずに何でもかんでも輸液やカテコラミンのみですべてを解決させようとするのは間違っていると考えられる
• 少なくとも心臓や脳にとって乳酸は重要なエネルギー源と考えてよさそう
私見
• 他の業界でも乳酸に対する認識が変わってきていることを考えれば医療における乳酸に対する認識や考え方は遅れているように感じる
• 長年にわたって“乳酸=疲労物質”が常識であったスポーツ・運動学においてはもはや常識ではなくなったように、医学において常識的になっている”乳酸=悪いもの”という考え方も変えなくはいけないと思われる
• 少なからず高乳酸血症を見た時に組織低酸素以外の原因も常に意識することから始めるのが良いのではないか