2
試験の目的 半導体分野の極微量分析では、シリコンウェハー中の不純物分析 など、 Siマトリックス試料の測定が不可欠です。ここではHF/ H 2 O 2 液性のSiマトリックス試料中のTiFeNiCoMoW6素について、 2時間連続測定を実施して、その検出性能と長時間安 定性を評価しました。また、 iCAP Qs ICP-MSのコールドプラズ マがSiマトリックスの影響により感度低下などの影響を受けない ことを実証しました。 測定試料 下記のSiマトリックス試料を調製しました。 【連続測定における安定性評価用】 検量線試料: HF/H 2 O 2 液 性、 01000 ng/L TiFeNiCoMoW6元素) 連続測定試料: HF/H 2 O 2 液性 Si 500 mg/L試料に各元素の標 準溶液を添加したもの (添加量:各元素50 100 ng/L相当) Siマトリックス濃度による影響評価用】 25元素の標準溶液1 µg/LSiマトリックスを添加したもの(Si 濃度01005001000 mg/L 試験内容 【連続測定における安定性評価】 最初に検量線を作成し、その後、 Siマトリックス試料 500 mg/L50試料分連続測定して安定性評価を行いました。 Siマトリックス濃度による影響評価】 Siマトリックスによる不純物元素の信号強度に対する減感の影 響を確認するため、 1 µg/Lの標準溶液にSiマトリックスを添加し た試料溶液を測定し、各元素の信号強度を比較しました。 装置と機器構成 iCAP Qs ICP-MSESI社製 SC-2DXオートサンプラーを用い て、連続測定を行いました。 主な試料導入系の構成と機器パラメーターを1 に示します。元 素によってコールドプラズマモードとHe KEDモードを切り替え ながら、測定を行いました。 Technical Note EL14012 iCAP Qs ICP-MSによる Si マトリックス試料中の 極微量元素分析 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 キーワード ICP-MS /極微量分析/Si マトリックス/コールドプラズマ/安定性試験 概要 このテクニカルノートでは、 Thermo Scientific iCAPQs ICP-MSを用いたSi トリックス試料中の極微量金属元素分析について、その検出性能と安定性を報告し ます。 1 :メソッドパラメーター パラメーター 設定 ネブライザー PFA100ネブライザー(自然吸引) スプレーチャンバー PFA製サイクロン型 インジェクター サファイア製 内径2.0 mm インターフェイス Ptチップ高感度分析用 測定モード コールドモード He KEDモード 高周波出力 530 W 1550 W ネブライザーガス 流量 1.1 L/min 0.8 L/min コリジョンセルガス 流量 4.2 mL/min HeKED設定電圧 +3 V 2 HF/H 2 O 2 液性における検出限界(DL )およびバックグラウン ド相当濃度(BEC測定元素 同位体 測定モード DL ng/L BEC ng/L Ti 48 KED 1.8 11.2 Fe 56 Cold 0.8 0.9 Ni 58 Cold 0.3 0.4 Co 59 Cold 0.6 0 .7 Co 59 KED 0.7 3.9 Cu 65 Cold 1.1 0.5 Mo 95 KED 0.9 2 .1 W 182 KED 0.2 0.3 DLBECは測定試料中不純物量や測定環境に依存します)

iCAP Qs ICP-MSによるSiマトリックス試料中の 極微 …tools.thermofisher.com/content/sfs/brochures/EL14012-JA.pdfiCAP Qs ICP-MSとESI社製SC-2DXオ ートサンプラ

  • Upload
    others

  • View
    3

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: iCAP Qs ICP-MSによるSiマトリックス試料中の 極微 …tools.thermofisher.com/content/sfs/brochures/EL14012-JA.pdfiCAP Qs ICP-MSとESI社製SC-2DXオ ートサンプラ

試験の目的半導体分野の極微量分析では、シリコンウェハー中の不純物分析など、Siマトリックス試料の測定が不可欠です。ここではHF/

H2 O2液性のSiマトリックス試料中のTi、Fe、Ni、Co、Mo、Wの6元素について、2時間連続測定を実施して、その検出性能と長時間安定性を評価しました。また、iCAP Qs ICP-MSのコールドプラズマがSiマトリックスの影響により感度低下などの影響を受けないことを実証しました。

測定試料下記のSiマトリックス試料を調製しました。【連続測定における安定性評価用】・ 検 量 線 試 料:HF/H2 O2液 性、0、1000 ng/L (Ti、Fe、Ni、Co、

Mo、Wの6元素)・ 連続測定試料:HF/H2 O2液性Si 500 mg/L試料に各元素の標準溶液を添加したもの

(添加量:各元素50~100 ng/L相当)【Siマトリックス濃度による影響評価用】・ 25元素の標準溶液1 µg/LにSiマトリックスを添加したもの(Si

濃度0、100、500、1000 mg/L)

試験内容【連続測定における安定性評価】最初に検量線を作成し、その後、Siマトリックス試料 (500 mg/L) を50試料分連続測定して安定性評価を行いました。

【Siマトリックス濃度による影響評価】Siマトリックスによる不純物元素の信号強度に対する減感の影響を確認するため、1 µg/Lの標準溶液にSiマトリックスを添加した試料溶液を測定し、各元素の信号強度を比較しました。

装置と機器構成iCAP Qs ICP-MSとESI社製SC-2DXオートサンプラーを用いて、連続測定を行いました。主な試料導入系の構成と機器パラメーターを表1に示します。元素によってコールドプラズマモードとHe KEDモードを切り替えながら、測定を行いました。

Tec

hn

ica

l No

te  E

L1

40

12

iCAP Qs ICP-MSによるSiマトリックス試料中の極微量元素分析

サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社

キーワードICP-MS/極微量分析/Siマトリックス/コールドプラズマ/安定性試験

概要このテクニカルノートでは、Thermo Scientific™ iCAP™ Qs ICP-MSを用いたSiマトリックス試料中の極微量金属元素分析について、その検出性能と安定性を報告します。

表1:メソッドパラメーター

パラメーター 設定ネブライザー PFA100ネブライザー(自然吸引)

スプレーチャンバー PFA製サイクロン型インジェクター サファイア製 内径2.0 mm

インターフェイス Ptチップ高感度分析用

測定モード コールドモード He KEDモード高周波出力 530 W 1550 W

ネブライザーガス流量 1.1 L/min 0.8 L/min

コリジョンセルガス流量 ― 4.2 mL/min(He)

KED設定電圧 ― +3 V

表2: HF/H2O2液性における検出限界(DL)およびバックグラウンド相当濃度(BEC)

測定元素 同位体 測定モード DL(ng/L)

BEC(ng/L)

Ti 48 KED 1.8 11.2

Fe 56 Cold 0.8 0.9

Ni 58 Cold 0.3 0.4

Co 59 Cold 0.6 0.7

Co 59 KED 0.7 3.9

Cu 65 Cold 1.1 0.5

Mo 95 KED 0.9 2.1

W 182 KED 0.2 0.3

(DLとBECは測定試料中不純物量や測定環境に依存します)

Page 2: iCAP Qs ICP-MSによるSiマトリックス試料中の 極微 …tools.thermofisher.com/content/sfs/brochures/EL14012-JA.pdfiCAP Qs ICP-MSとESI社製SC-2DXオ ートサンプラ

E1408

    TEL 0120-753-670 FAX 0120-753 -671

〒221-0022 横浜市神奈川区守屋町3 -9

E-mail : [email protected]

www.thermoscientific.jp

サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社分析機器に関するお問い合わせはこちら

Ⓒ2014 Thermo Fisher Scientific K.K. 無断複写・転載を禁じます。ここに記載されている会社名、製品名は各社の商標、登録商標です。ここに記載されている内容は、予告なく変更することがあります。

Tec

hn

ica

l No

te  E

L1

40

12

図2:Siマトリックス濃度による不純物検出感度の影響

結果今回の検量線試料の測定より得られた各元素の検出限界(DL)とバックグラウンド相当濃度(BEC)を表2に示します。いずれの元素もシングルng/Lの検出限界値が得られ、HF/H2 O2液性において極微量分析が可能であることを確認しました。Siマトリックスを500 mg/L含む試料の安定性評価の結果を図1

に示します。不純物元素の定量値は100 ng/L未満の低濃度であるにもかかわらず、50試料の測定値の相対標準偏差は10%未満であり、長時間安定性が確認されました(表3)。これにより、コールドプラズマにSiマトリックス試料を導入しても十分な感度と安定性が得られること、および2条件の切り替え測定の再現性も優れていることを実証しました。

Siマトリックス濃度の異なる標準溶液の測定結果を図2に示します。Si濃度(0~1000 mg/L)によって大きく感度が変動することなく、安定した結果が得られることを確認しました。コールドプラズマにSiの高マトリックス試料を導入しても、高感度分析できることが実証できました。

まとめiCAP Qs ICP-MSは、HF/H2 O2液性やSiマトリックスを高濃度で含有する試料に対しても、ng/Lレベルの極微量分析が可能です。オートサンプラーを使用したルーチン分析に対して、非常に安定した極微量分析を提供します。

Si 0 mg/L試料における各元素1 µg/Lの信号強度を100%として、Siマトリックス濃度を変えたときの信号強度比を回収率として表示

表3:Siマトリックス 500 mg/L試料の50回連続測定の安定性

測定元素 同位体 測定モード

平均値(ng/L) 標準偏差

RSD(%)

Ti 48 KED 43.9 3.2 7.4

Fe 56 Cold 46.9 1.8 3.8

Ni 58 Cold 81.5 3.8 4.6

Co 59 KED 43.2 2.3 5.4

Co 59 Cold 43.3 2.1 4.9Cu 65 Cold 88.0 2.7 3.0

Mo 95 KED 56.5 3.0 5.2

W 182 KED 57.8 2.4 4.1

図1:Siマトリックス500 mg/L試料の50回連続測定結果

1 4 72 5 83 6 9 10 11 14 1712 15 1813 16 19 20 31 34 3732 35 3833 36 39 4021 24 2722 25 2823 26 29 30 41 44 4742 45 4843 46 49 50