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バイオマスに関するデータ ブルキナファソにおける植生バイオマス量調査結果 1. 調査対象地の概況 ベースライン値を把握するのためのバイオマス調査について、 2006年度は西アフリカ のブルキナファソにおいて実施した。ブルキナファソは、西アフリカの内陸に位置し、 年間降水量が約1,000mmから500mm以下の半乾燥・乾燥気候の国である。調査対象地 として選定した中北部州のSanmatenga県は面積が19,508km2、人口が108万人(2003)牧畜・農業が主たる産業の地域で、土地肥沃度が低い,降水量が少ない,人口圧が比 較的高いという特徴がある。気候的には南サヘル地帯に位置している。ここの年間降 水量は400mm程度であるが、年によって降水量の変動は大きい。 農耕作に利用されている以外の土地における自然植生は、比較的降雨の多い南部に Savanna植生、降雨の少ない北部にSteppe植生が広がっている。 Savanna植生は、 Savanna arbore (サバンナ疎林)、Savanna arbustive (サバンナ潅木林)、Savanna herbeuse(サ バンナ草地)の3植生に、 Steppe植生は、 Steppe arbore (ステップ疎林)、 Steppe arbustive (ステップ潅木林)、Steppe herbeuse (ステップ草地)の3植生に、それぞれ細分する ことが出来る。 調査対象地 600mm/600-900mm/900mm/図―1 ブルキナファソ全域の雨量分布と調査対象地

図-2 植生タイプ別バイオマス量調査対象地jofca.or.jp/CDM/CDM_Project_ver3/documents/burkinafaso/...ほかにLeptadenia hastata、Boscia angustifolia、Piliostigma

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バイオマスに関するデータ ブルキナファソにおける植生バイオマス量調査結果 1. 調査対象地の概況 ベースライン値を把握するのためのバイオマス調査について、2006年度は西アフリカのブルキナファソにおいて実施した。ブルキナファソは、西アフリカの内陸に位置し、

年間降水量が約1,000mmから500mm以下の半乾燥・乾燥気候の国である。調査対象地として選定した中北部州のSanmatenga県は面積が19,508km2、人口が108万人(2003年)、牧畜・農業が主たる産業の地域で、土地肥沃度が低い,降水量が少ない,人口圧が比

較的高いという特徴がある。気候的には南サヘル地帯に位置している。ここの年間降

水量は400mm程度であるが、年によって降水量の変動は大きい。 農耕作に利用されている以外の土地における自然植生は、比較的降雨の多い南部に

Savanna植生、降雨の少ない北部にSteppe植生が広がっている。Savanna植生は、Savanna arbore(サバンナ疎林)、Savanna arbustive(サバンナ潅木林)、Savanna herbeuse(サバンナ草地)の3植生に、Steppe植生は、Steppe arbore(ステップ疎林)、Steppe arbustive(ステップ潅木林)、Steppe herbeuse(ステップ草地)の3植生に、それぞれ細分することが出来る。

調査対象地

<600mm/年

600-900mm/年

>900mm/年

図―1 ブルキナファソ全域の雨量分布と調査対象地

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潅木林には主な植生としてAcacia nirotica, A. dudgoini, A. laeta, Pterocuarpus lisens等が自生している。 植生はほぼ10年毎に起きる旱魃の度に退化してきている。具体的には、以前は小さかったパッチ状のギャップは旱魃が起きる度に広がり、その後旱魃が収まっても一旦開

いたギャップが窄まることはなく,次第に大きくなっているという状況がみられる。

フォレスト・リザーブ内では伐採は禁止されているが、落枝や枯死木の採取や放牧は

慣習的に認められているようであり,このことも植生が退化している一因となってい

るものと思われる。 2. 調査対象地の選定 調査対象地の選定の為の現地調査は数次にわたって実施した。2005年12月に実施した第1回予備調査では、Korko地域Barsaloghoにおいて調査対象地が選定された。2006年7月の第2回予備調査では、Pissila地域のステップ低木林、およびBarsalogho - Dablo道路に沿ったBarsalogho地域において、ロストランドとsandy veneeringを確認し、調査対象地が選定された。そして2006年9月の第3回調査視察では、Kaya-Kongoussi道路沿いのRoumtenga村においてタイプ4(サバンナ草原)の調査対象地が選定された。 予備調査の結果、ブルキナファソ中北部の植生は、大むね以下のようなタイプに区分

されることが明らかとなった。 ①:無植生地(Lost land) のパターン ②:無植生地+かん木のパターン③:無植生地+かん木+草のパターン ④:かん木+草のパターン⑤:草本植生(Savannah grass)に覆われているパター

ン⑥:Savanne arbore (サバンナ疎林) これらの植生パターンのうち、①は植生が全く無いこと、また⑥は反対にバイオマス

量が多く、CDM植林の対象地として適当でないと判断されたことから、この2つのパターンを除く、②~⑤の4つの植生パターンについて、ベースライン地算定のための

バイオマス調査を実施することとした。 ②:無植生地+かん木のパターン ⇒ タイプ1③:無植生地+かん木+草のパ

ターン ⇒ タイプ2 ④:かん木+草のパターン ⇒ タイプ3 ⑤:草本植生(Savannah grass)に覆われているパターン ⇒ タイプ4

図-2に今回のベースライン値を把握するのためのバイオマス調査対象地を示す。

#OUAGADOUGOU

#KAYA

N%%%%%%%

%

%%%

%

%

%%%%%%%

%

%%%

T1 P1T3 P1T3 P2

A0 5A3 1A4 8

T1 S3T2 ST1 S2T3 S3T3 S2T3 S3T3 P3 S2T3 P3 S3

PENSA

B ARS

ALO

GHO

DABLO

NAM

ISS

IGM

A

PISSILA

KAYA

CARTE DE LOCALISATION DES SITESD'EVALUATION E BIOMASSE

Carte de situation du Burkina en AfriqueMap of Burkina status in Africa Car te de local isation des s ites prospectésdans les départements de Piss ila, Kaya et Barsalogo Localization map of explored sites in Pissila, Kaya, and Barsalogo region

Carte de localisation de la provincedu sanmatenga

Map of sanmatenga province localization

D

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図-2 植生タイプ別バイオマス量調査対象地

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(1)Steppe shrub候補地の植生のパターン

①無植生地(Lost land)①無植生地(Lost land)②無植生地+かん木②無植生地+かん木

③無植生地+かん木+草③無植生地+かん木+草

④かん木+草④かん木+草

⑤ Savannah   grass⑤ Savannah   grass

①は植生が無いので調査の必要も無し①は植生が無いので調査の必要も無し

②~⑤が調査の対象②~⑤が調査の対象

(2) Steppe grass(3) Savannah grass

Steppe shrub・Steppe grass

Steppe shrub・Steppe grass

図-3 中北部州における植林CDMの候補となる植生タイプ

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3. 調査対象地の植生タイプ 3.1 タイプ 1 調査対象地であるタイプ 1の調査地のひとつである T1S1は、Silmiougouの Pissilaにある(上記図-2を参照)。この調査地は、幹線道路である Kaya - Dori道路からあまり離れておらず、Pissila村から約3kmのところにある。2006年 7月の予備調査で面談した地元住民によると、この地点は30年以上にわたって農業開発が行われてきた。この地域の土壌劣化は、(ⅰ)約 30 年間続いている少雨による干ばつ、(ⅱ)休耕や土地改良を行わずに農業開発を続けた結果、土地の疲弊や植被の荒廃を招き、土地生

産性の低下が生じたこと、(ⅲ)農業開発の停止後、放置された土地が牧草地となっ

たこと、等の様々な現象が結びついて生じたものであるとしている。農業開発が行わ

れなくなって以降は、過放牧がこの地点の土壌劣化における重要な要因となっている。

このことは、この調査地の低木層を構成する低木林の状況から明らかである。ここで

のの主な低木は Guiera senegalensisと Combretum micranthumであるが、これらは常に動物の食害を受けており、樹高がさほど伸長しない。なお住民によると、林野火災は

この数十年間発生していないとのことである。 Silmiougouの 2つの調査地(T1S2および T1S3)は、Kaya - Barsalogho道路沿いの Kayaから約 10 ㎞のところにある。これらの地点は、Combretum micranthum や Guiera senegalensis などの低木がまばらに生育するのみで、植物がほとんど見られない岩状の地域である。 T1S2は Kaya - Barsalogho道路の近くの裸地化した丘陵の斜面にある。ここでの主な植生は Guiera senegalensis、Combretum micranthum、Balanites aegyptiacaであり、そのほかに Leptadenia hastata、Boscia angustifolia、Piliostigma reticulatumが確認された。住民によると、かつてこの地域は農地であったが、現在農業開発は 30 年以上行われていない。土壌劣化は、干ばつ、農業開発、樹木の伐採、過放牧などが結びついて生

じたものである。この地域においても林野火災は過去数十年間発生していない。 T1S3 は、Kaya - Barsalogho 道路から数百メートル離れた場所にあり、Guiera senegalensisや Combretum micranthumなどが生育する丘陵の斜面に位置している。この地点は、T1S2 と植生タイプが同一であるため、同様の歴史を経験しているものと思われる。 以下の表-1は、T1S1において計測された樹種別の幹数について示したものである。ここでの優占種は Guiera senegalensisと Combretum micranthum であり、104本が計測された。

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表-1 タイプ1(T1S1)に設定したサンプリングプロット(50m x 50m)に

出現した樹種の根元径と樹高

Species Stem (number)

Average diameter (cm)

Average height (m)

Combretum micranthum 19 1,83 1,05 Guiera senegalensis 104 1,16 0,46 Leptania hastata 1 0,20 -

Total 124 3.2 タイプ2 タイプ2の調査地のひとつである T2S1 は、わずかな樹木と草地が確認されるロストランドである。sandy veneeringとも呼ばれるこの地点は、Pissila村から約 10㎞離れたKaya - Dori道路沿いにある。ここで確認される主な植生は、Combretum micranthum、Guiera senegalensis、Acacia raddiana、Acacia senegal、Leptadenia hastata、そして Balanites aegyptiaca である。草本層では、Schoenefeldia gracilis、Loudetia togoensis、Zornia glochidiataのほか、Schizachyrium exile、Penissetum pedicellatum、Eragrostis tremula、Borreria radiataが生育している。数十年前(30年以上前になる)には、この場所では農業開発が行われていた。この場所の土壌劣化は、農業、干ばつ、樹木の伐採、過放

牧などが結びついて生じたものである。この地域は全般的に雨季には水みちとなる場

所が多く、土壌も不浸透性であることから、浸食が最も懸念されている。土壌の表層

は砂泥質であり、深層は粘土質である。 タイプ 2の T2S2および T2S3は、Korko地域(Barsalogho地区)の Kogyende村の近くにある。この地点は砂泥質の土壌が広がってほぼ裸地化しており、確認された植生

は、Guiera senegalensis、Acacia raddiana、Balanites aegyptiaca、Acacia laeta、Combretum micranthum である。草本層では、一年生種の Schoenefeldia gracilis、Andropogon fastigiatus、Loudetia togoensis、Zornia glochidiataなどが生育している。Korkoの森林管理グループ組合の代表によれば、かつては豊富な樹木に恵まれていたこの地域は、

全く開発されていないにもかかわらず干ばつと過放牧により確実に土壌が劣化して

いるとの指摘があった。 下の表-2は、T2S1 において計測された樹種別の幹数について示したものである。ここでは全 69 本のうち、Guiera senegalensis が 26 本、Leptadenia hastata が 13 本、

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Combretum micranthum が 12本出現し、これらが優占樹種と考えられた。 表-2 タイプ2(T2S1)に設定したサンプリングプロット(50m x 50m)に

出現した樹種の根元径と樹高

Species Number of

stem Average diameter

Average height

Guiera senegalensis 26 0,96 0,44 Leptadenia hastata 13 1,01 - Acacia seyal 5 1,58 0,66 Acacia raddiana 1 1,30 0,30 Acacia senegal 6 1,20 0,19 Calotropis procera 3 3,57 1,10 Combretum micranthum 12 1,96 0,45 Piliostigma reticulata 2 0,95 0,53

Total 69 1,25 0,45 下の表-3は、T2S1の計測プロットに出現した全 69本のうちから、それらの平均根元径及び平均樹高に最も近似した 3本について抽出したものである。この結果を見ると、Guiera senegalensis及び Combretum micranthum 共平均根元径は 1.0~1.1cm、樹高が 0.45m程度であった。 表-3 タイプ2(T2S1)のサンプリングプロット(50m x 50m)に出現した樹種の

根元径と樹高

N° Species Diameter Height 31 Combretum micranthum 1,10 0,45 05 Guiera senegalensis 1,00 0,45 48 Guiera senegalensis 1,00 0,45

この調査地で多く確認されるのは Guiera senegalensisと Combretum micranthumの 2種類である。しかし、Acacia raddiana、A. seyal、Piliostigma reticulatum、リアナ、すなわち Leptadenia hastataなども生育しており、多様性に富んでいる。 3.3 タイプ3 タイプ3は低木林ステップ植生であり、主に Pissilaと Silmiougouの 2つの地域から抽出された。

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最初の調査地(T3S1)は、タイプ 1 の T1S1 と同じ地域の Pissila 村の付近であるが、Kaya - Dori 道路を挟んで反対側に位置する。この場所は Guiera senegalensis とCombretum micranthumの低木林ステップであり、所によっては Gardenia sokotensisやBalanites aegyptiacaも見られる。住民によると、土壌が劣化したこの地域でも開発が行われた時期があったが、その後、農業用地は 30 年以上放置されている。土壌の劣化は、干ばつ、農業開発、過放牧、薪や木材用の伐採などが結びついて生じたもので

ある。草本層では、若干の Sporobolus festivus、Aristida adscensionis、Zornia glochidiata、Microchloa indica、Pandiaka heudolotii、Ocimum irvenei、Digitaria leucardii、Penissetum pedicellatumが生育している。この地域では、林野火災は発生していない。 他の2調査地(T3S2および T3S3)は、Kayaから約 10㎞離れた Silmiougou村から抽出された。この場所は、1980年代に森林局が植生回復事業を行った地域の上部に位置している。当時、ここはすでに放置された土地であり、完全に劣化していた。住民に

よると、この地域ではかつて農業開発が行われていたが、現在この地域で行われてい

る活動は薪や木材用の伐採と放牧のみである。Silmiougou村の住民によると、この地域で林野火災が発生したことはなく、土壌は、砂礫、泥質土壌、中細砂で構成されて

いる。この地域の土壌劣化も他の地域と同様に、農業開発、干ばつ、過放牧、木材や

薪を供給するための森林伐採が結びついて生じたものである。確認される主な木本植

生は、Combretum micranthum、Guiera senegalensis、Gardenia sokotensis、Combretum glutinosum、Cassia sieberianaである。草本層では主に、Microchloa indica、Sporobolus festivus、Cassia mimosoϊdes、Ocimum irvinei、Zornia glochidiataが生育している。 表-4に T3S1 に設定した2m×2m のサンプリングプロット内に出現した樹種の本数、平均根元径及び平均樹高を示す。この結果も示すとおり、この地域では Guiera senegalensisと Combretum micranthumが主な優占樹種である。

表-4 タイプ3(T3S1)のサンプリングプロット(2m x 2m)に出現した樹種の

根元径と樹高

Species Stem

(number) Average Diameter

Average Height

Guiera senegalensis 8 0,33 0,31 Gardenia sokotensis 5 0,5 0,43 Combretum micranthum 46 0,53 0,55

Total 59 3.4 タイプ4 タイプ4の調査地はサバンナ草原とも呼ばれ、Zorkoumおよび Roumtengaの 2つの村

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から抽出された。 最初の調査地(T4S1)は、Kaya - Kongoussi道路に近い Zorkoum村入り口付近(約 3 km)の丘陵に位置している。この地点は、約5㎞にわたって Cymbopogon schoenanthusが丘陵を覆うサバンナ草原である。丘陵には、Acacia seyal、Balanites aegyptiaca、Cassia sieberiana などがわずかに確認されるが、ほとんどの木本植生は失われている。草本層は平均 70 ㎝から 80 ㎝の高さであり、主に Cymbopogon schoenanthus、Leptadenia hastata、Alysicarpus ovalifolius、Polygala arenaria、Cassia nigricans、Cadaba farinosa、Euphorbia convolvoloidesが生育している。地形的には丘陵であり、土壌の表層と深層には固い部分が存在する。高齢の住民によると、50年から 60年前には、この地域には多くの樹木が生育していた。この森を最初に破壊したのは農業であり、今から 30年前までそれが続けられた。農民がこの土地を離れた後、残ったのは草本層だけであ

り、その後木本被覆は回復しなかった。ここでは 25 年以上、林野火災は発生していない。この地域の土壌劣化は、干ばつ、様々な伐採(わら・木材用)、過放牧の影響、

および農業開発の余波が原因である。この地域で過放牧が行われるのは、デム湖に近

く、しかも農業が行われていない場所のためである。 そのほかの2調査地(T4S2、T4S3)は、Kayaから約 25㎞離れた Kaya - Kongoussi道路の両側に広がる Roumtenga村で抽出された。これらの地点は、約5㎞にわたって続くサバンナ草原に位置する。 はじめの T4S2は、土壌深度が表層 20cmから 30cmしかない非常に薄い地層にある。この場所の草本植生は Loudetia togoensis(平均草丈 20 cm ないし 40 cm)のほか、Andropogon pseudapricus、Andropogon fastigiatus、Lepidagatis anobrya、Sida alba、Ritachnae triaristata、Melliniella micrantha、Chochorus tridens、Leptadenia hastataなどである。この地域で農業が行われたことはない。かつては、地元当局の監督の下、慣

習的な野焼きが毎年行われていたが、1970年代に廃止された。にもかかわらずこの地域では、Combretum micranthumや Combretum glutinosumの低木を主流とする低木層の劣化が進んでいる。こうした土壌劣化は、干ばつ、過放牧(この地域は、雨季におけ

る最大の放牧地)、森林伐採(薪・木材用)などの影響が結びついて生じたものであ

る。最近では、この地域を保護するための対策が実施されている。 2番目の T4S3は、T4S2から約 500m離れた、Kaya - Kongoussi道路を挟んだ反対側にある。この地点は、砂・粘土・泥からなる比較的厚い土壌に、サバンナ草原が広が

っている。草本層では、主に Andropogon pseudapricus、Loudetia togoensisが確認され、そのほかに Borreria stachydea、Leptadenia hastata、Striga bilabiata、Zornia glochidiataなどが見られる。この地域ではこれまで農業が行われておらず、林野火災も発生して

いない。土壌劣化は、干ばつ、過放牧、小規模の森林伐採が原因である。

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植生が殆ど見られないため、調査対象外植生が殆ど見られないため、調査対象外

図-4 ①無植生地(Lost land) のパターン

図-5 ②無植生地+かん木のパターン(Type1)

草が殆ど生えていない草が殆ど生えていない

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図-6 ③無植生地+かん木+草のパターン(Type2)

草が少し生えている

図-7 ④かん木+草のパターン(Type3)

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図-8 ⑤草本植生(Savannah grass)に覆われているパターン(Type4)

図-9 調査対象外の植生の Savanne arbore (サバンナ疎林)、 Savanne arbustive (サバンナ低潅木林)4. 調査結果

4.1 植低タイプ別バイオマス量の分析結果 分析の結果、①無植生地+潅木地の CO2 固定量が CO2・トン換算で 0.1~0.2CO2・t/ha、②無植生地+潅木地+草地の CO2固定量が 1.0~1.6CO2・t/ha、③潅木地+草地の CO2固定量が約3~12CO2・t/ha、④草地の CO2固定量が約 14~40CO2・t/haという結果が得られ、各植生タイプによって CO2固定量が大きく異なることが明らかになった。特に無植生地を含むタイプ1とタイプ2では CO2固定量が小さく、無植生地の広がりが影響を及ぼしていることが見て取れた。また

タイプ1とタイプ2の比較、もしくはタイプ3とタイプ4の固定量に違いから

みても判るように、草本の存在が CO2固定量に大きく影響をしていることも明らかになった。

表-5

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CO2・t/ha

T1P1 T1S2 T1S3 T2P1 T2S2 T2S3 T3P1 T3P2 T3P3 T4S1 T4S2 T4S3

stem 0.055 0.030 0.023 0.043 0.005 0.004 2.16 1.37 1.04 0.00 0.00 0.00

leaves 0.004 0.014 0.010 0.007 0.002 0.000 0.84 0.54 0.51 0.00 0.00 0.00

grass 0.012 0.000 0.008 0.927 0.867 1.412 0.00 0.06 0.00 20.28 26.84 9.43

litter 0.010 0.016 0.020 0.002 0.000 0.077 0.34 0.64 0.00 15.94 0.00 4.26

root 0.141 0.100 0.046 0.175 0.133 0.163 8.96 3.24 1.40 3.72 0.04 0.54

T1,T2タイプのバイオマスのHa当たりCO2トン換算量

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

T1P1 T1S2 T1S3 T2P1 T2S2 T2S3

(CO2t)

root

litter

grass

leaves

stem

T3,T4タイプのバイオマスのHa当たりCO2トン換算量

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

50.0

T3P1 T3P2 T3P3 T4S1 T4S2 T4S3

(CO2t)

root

litter

grass

leaves

stem

図―10 各植生タイプ別のバイオマス量植生