144

 · (1)環境基本法の制定 4 (2)環境政策としての各手段の比較 5 規制と罰則から育成へ 7 環境規制と市場メカニズム 7 リスク管理に係る主な環境法令への対応

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3

はじめに

我が国企業における環境経営の状況をみると、ISO 14001認証取得事業所の増加、環境報告書作成企業の拡大、自主的な環境目標の設定、環境パフォーマンス等の情報公開、環境に配慮した製品・サービスの提供など民間企業が独自に環境保全に係る取り組みを実施する例が多くなってきているものの、これらの取り組みは一部の企業にとどまっているのが現状である。特に、中小企業等は、昨今の国際競争激化による大きな打撃を受けている中で、社会・取引先・海外から環境問題への対応、環境経営の推進を求められているが、環境経営を担う人材の欠如や資金的問題から、具体的実施に至らないのが実状である。そこで、中小企業等の経営者層、管理者層及び実務者層を対象に、環境経営の理解促進を図り、その実践的展開に資するための情報提供の一環として、環境経営の実践に有効な環境管理手法等の研修を全国的に展開するものである。この研修は、環境経営の実践に有効な環境管理手法等の概要を、経営者及び管理者等に、講義形式で理解していただくための“環境経営概論コース”と、環境経営実務に有効な環境経営手法類を実務者に、講義形式及び演習形式(一部)で学んでいただくための“環境経営実務コース”から構成されている。本書は、これらの研修におけるテキストとして、さらには、事業活動に伴う環境経営上の問題の予防や解決に役立てていただくための参考書として活用できるように、実用性と分かりやすさに留意して執筆・編集した、以下の全10巻から成る報告書の一部である。(1)環境経営概論コース(全1巻)

(2)環境経営実務コース(全9巻)

①環境リスク管理コース

○有害化学物質管理 ○リサイクルシステムと法整備

○環境・廃棄物/リサイクル関連法規 ○環境リスク管理の実務

②環境配慮型経営管理支援手法コース

○環境マネジメントシステム/監査/パフォーマンス評価 ○環境会計

○環境報告書作成実務

③環境適合製品・サービス支援手法コース

○ライフサイクルアセスメント ○環境適合設計(DfE)/製品アセスメント

なお、本書は、経済産業省平成15年度循環ビジネス人材教育・循環ビジネスアドバイザー派遣事業の一環として作成されたものである。ご協力いただいた監修者、執筆者、その他関係者の皆様に、さらに、ご指導ご支援を下さった経済産業省に深謝する次第である。本書をはじめとするこれらの各報告書が広く有効に活用され、中小企業等における環境経営の促進支援という所期の目的を果たせることを期待している。

平成15年12月

社団法人産業環境管理協会

会長 南 直哉

■法律名略称

■英字略語

略語 英文 日本語

BSR Business for Social Responsibility CMR Carcinogenic,Mutagenic,Toxic to Reproduction 発がん性・突然変異・生殖機能に影響

を及ぼす毒性のある物質COD Chemical Oxygen Demand 化学的酸素要求量COP3 Conferece of the Parties 地球温暖化防止京都会議CSD Commission on Sustainable Development 国連持続可能な開発委員会CSR Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任ELV指令 End-of-Life Vehicle 廃車指令EMAS Eco-Management and Audit Scheme 環境監査規則EPR Extended Producer Responsibility 拡大生産者責任EU European Union 欧州連合EuP Energy using Products エネルギー使用製品GEF Global Environmental Facilities 地球環境ファシリティーISD Intiatives for Sustainable Development 21世紀に向けた環境開発構想MSDS Material Safety Data Sheet 化学物質安全性データシート又は化学

物質等安全データシートOECD Organization for Economic Cooperation and Development 経済協力開発機構PBT Persistent Bioaccumulative and Toxic 残留性、生体蓄積性、毒性のある物質PCB Polychlorinated biphenyls ポリ塩化ビフェニルPOPs Persistent Organic Pollutants 残留性有機汚染物質PPP Polluter-Pays Principle 汚染者負担の原則PRTR Pollutant Release and Transfer Register 環境汚染物質排出・移動登録PVC Poly Vinyl Chloride ポリ塩化ビニルREACH指令 Registration,Evaluation and Authorization of Chemicals 化学物質登録評価許可指令RoHs指令 Restriction of Hazardous Substances 有害物質使用制限指令SRI Socially Responsible Investment 社会的責任投資TEF Toxic Equivalency Factor 毒性等価係数TEQ Toxic Equivalent 毒性等量UNCED United Nations Conference on Environment and Development 国連環境開発会議UNEP United Nations Environment and Development 国連環境計画vPvB very Persistent and very Bioaccumulative 毒性に関係なく極めて残留性が強く、

極めて生体蓄積性の高い物質WEEE指令 Waste Electrical and Electronic Equipment 廃電気・電子機器指令WHO World Health Organization 世界保健機関WSSD World Summit on Sustainable Development 持続可能な開発に関する世界首脳会議

略称 正式名

PCB廃棄物特別措置法 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法オゾン層保護法 特定物質の規制等によるオゾン層保護に関する法律海洋汚染防止法 海洋及び海上災害の防止に関する法律化学物質管理促進法(PRTR法) 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律化学物質審査製造規制法(化審法) 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律家畜排せつ物法 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律家電リサイクル法 特定家庭用機器再商品化法グリーン購入法 国等による環境物品等の調達の促進等に関する法律建設資材リサイクル法 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律公害健康被害補償法 公害健康被害の補償等に関する法律公害防止組織法(管理者法) 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律産業廃棄物処理特定施設整備促進法 産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律資源有効利用促進法 資源の有効な利用の促進に関する法律自動車NOx・PM法 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に

関する法律自動車リサイクル法 使用済自動車の再資源化等に関する法律食品リサイクル法 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律地球温暖化対策推進法 地球温暖化対策の推進に関する法律特定有害廃棄物等輸出入規制法 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律農用地土壌汚染防止法 農用地の土壌汚染防止等に関する法律廃棄物処理法 廃棄物の処理及び清掃に関する法律フロン回収破壊法 特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律容器包装リサイクル法 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律

4

はじめに

英字略語/法律名略称

本書のあらまし

環境法令とリスク管理 3

環境法令の規制の仕組みと政策手法 3

法規制の考え方と政策手法 3

(1)環境基本法の制定 4

(2)環境政策としての各手段の比較 5

規制と罰則から育成へ 7

環境規制と市場メカニズム 7

リスク管理に係る主な環境法令への対応 9

事業者の環境リスクとは 9

(1)最近の環境関連事故、事件の状況 9

(2)環境リスクの考え方 9

企業の社会的責任とは 11

(1)環境事故と企業の社会的責任 11

(2)環境リスクマネジメントの必要性とその対応 13

基本法と法律の仕組み 15

環境基本法と循環型社会形成推進基本法 15

環境基本法 17

循環型社会形成推進基本法 18

(1)循環型社会形成推進基本法の趣旨 18

(2)循環型社会形成推進基本法の概要 19

5

Chapter 1

1.1

1.1.1

1.1.2

1.1.3

1.2

1.2.1

1.2.2

Chapter 2

2.1

2.1.1

2.1.2

環境経営実務コース:Ⅰ 環境リスク管理コース:ⅠC 環境・廃棄物/リサイクル関連法規

Co

nte

nts 目次

第1部 規制の仕組みとリスク管理

法律、条例の読み方、調べ方 21

(1)環境法の規制対象項目 21

(2)法律の体系(法律と命令) 21

(3)国際条約との関連   22

(4)法律の目的を知る   22

(5)用語の定義を知る   22

(6)環境法と条例の関係   23

(7)法令の条文構成   25

(8)条文の読み方   26

(9)範囲等を示す「接続詞」の意味   26

(10)簡便な法令調べ   26

(11)環境法令、条例の情報収集先   27

主な公害関連法令(化学物質規制) 31

大気汚染防止法 31

(1)規制の対象 31

(2)排出基準 35

(3)届出 35

(4)改善命令 36

(5)測定 36

(6)事故時の措置 36

(7)緊急時の措置 36

(8)無過失責任 36

(9)直罰 36

水質汚濁防止法 37

(1)規制の対象 37

(2)規制基準 39

(3)届出 40

(4)改善命令 41

(5)測定、監視 41

6

2.2

Chapter 3

3.1

3.2

環境経営実務コース:Ⅰ 環境リスク管理コース:ⅠC 環境・廃棄物/リサイクル関連法規

第2部 個別法・条例

(6)事故時の措置 41

(7)地下水の水質の浄化 41

(8)無過失責任 42

(9)直罰 42

悪臭防止法 43

(1)規制の対象 43

(2)規制地域 44

(3)規制基準 44

(4)改善勧告・改善命令 44

(5)事故時の措置 44

(6)悪臭の測定 45

化学物質管理促進法(PRTR法) 46

(1)規制の対象物質 46

(2)規制基準 47

(3)規制内容(事業者の責務) 47

(4)情報公開 51

土壌汚染対策法 52

(1)規制対象 53

(2)対象物質 53

(3)基準 53

(4)土壌汚染調査、汚染区域の指定、台帳の調製 54

(5)土壌汚染による健康被害の防止措置 55

フロン回収破壊法   56

(1)規制対象 56

(2)事業者等の責務 56

ダイオキシン類対策特別措置法 59

(1)規制対象 60

(2)事業者の責務 60

(3)特定施設 61

(4)排出基準 61

(5)設置者による測定 61

(6)事故時の措置 61

7

3.3

3.4

3.5

3.6

3.7

目 次

8

環境経営実務コース:Ⅰ 環境リスク管理コース:ⅠC 環境・廃棄物/リサイクル関連法規

3.8

Chapter 4

4.1

4.2

4.2.1

4.2.2

4.2.3

Chapter 5

5.1

(7)罰則 64

PCB廃棄物特別措置法 65

(1)法制化の背景 65

(2)PCB廃棄物特別措置法の体系 66

(3)法規制の対象 66

(4)事業者の責務 67

循環型社会形成関連法令(廃棄物/リサイクル法)69

廃棄物処理法 69

(1)廃棄物の種類 69

(2)事業者の責務 73

(3)事業者の処理 73

(4)資格、許可 74

(5)産業廃棄物管理票(マニフェスト) 74

(6)産業廃棄物処理施設 74

(7)改善命令 76

(8)罰則 76

資源有効利用促進法及びその他のリサイクル法 78

資源有効利用促進法 78

(1)法の概要 78

(2)対象者、対象業種、対象製品など 78

(3)罰則 78

その他のリサイクル法 79

特定有害廃棄物等輸出入規制法 81

(1)規制対象:有害廃棄物の範囲 82

(2)手続き等 82

主な自治体の環境規制(条例、指針等) 85

東京都の例:都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例) 85

(1)条例の概要 85

(2)東京都における「上乗せ」「横出し」の例 85

神奈川県の例:神奈川県生活環境の保全等に関する条例 89

(1)対象物質 89

(2)規制内容 89

大阪府の例:大阪府化学物質適正管理指針 92

(1)指針の概要 92

(2)対象物質 93

(3)対象事業所 93

(4)事業者の責務 93

(5)配慮事項 94

国際的取り組みと国際条約 99

地球環境リスクと国際的取り組み 99

国際条約 102

(1)気候変動枠組条約(地球温暖化防止) 102

(2)バーゼル条約(廃棄物越境移動規制) 102

(3)ウィーン条約(オゾン層保護) 102

(4)ロンドン・ダンピング条約(廃棄物海洋投棄規制) 105

(5)ロッテルダム条約(仮称)及びストックホルム条約

(有害化学物質規制) 105

(6)その他の国際条約 105

主要国の環境規制と最近の動向 109

EU各国(北欧、ドイツ、オランダ等) 109

(1)ドイツ 109

(2)オランダ 111

(3)スウェーデン 112

9

目 次

5.2

5.3

Chapter 6

6.1

6.2

Chapter 7

7.1

第3部 海外規制動向

7.2

7.3

7.4

米国の主な州法 114

(1)カリフォルニア州(有害化学物質規制) 114

(2)バーモント州(水銀規制) 114

アジアの国々 116

(1)中国 116

(2)韓国 117

EUにおける環境政策(EU指令) 119

(1)RoHS指令 120

(2)WEEE指令 121

(3)ELV指令 121

(4)REACH指令 122

索引 125

10

環境経営実務コース:Ⅰ 環境リスク管理コース:ⅠC 環境・廃棄物/リサイクル関連法規

11

12

規制の仕組みとリスク管理

1第 部

3

戦後50年の製造業の変遷を考えると、当初その役割は、戦争により壊滅的な被害を受けた経済の復興であり、基幹産業である重化学工業はめざましい技術革新と優良な労働力に支えられ、1960年代には高度経済成長を達成した。しかし高度経済成長のひずみとして、大気汚染や水質汚濁による深刻で悲惨な公害問題を引き起こした(図1.1-1)。公害問題は全国に広がり、企業や行政当局の対応への不満から被害者は司法にその判断を委ね、公害訴訟が多発した。その中でも水俣病(熊本県)、第二水俣病(新潟県)、イタイイタイ病(富山県)、四日市ぜん息は四大公害訴訟と呼ばれて、全面的な原告勝訴後も被害者の苦しみは長く癒えるこ

Chapter

1

1.1 環境法令の規制の仕組みと政策手法

環境法令とリスク管理

1.1.1 法規制の考え方と政策手法

■図1.1-1 戦後50年の変遷(製造業の潮流と環境問題)

年代� '55 '65 '75 '85 '95 '00

製造業潮流�

環境問題�

復興・国産化�

インフラ�基幹産業�技術導入�

技術改良�方法論導入�

大気汚染�水質汚濁�

オゾン層破壊、酸性雨�地球温暖化等�

環境ホルモン等�化学物質汚染�

技術創造�事業多角化�

グローバル化�R/D国際化�低賃金労働力増大�PB化�

品 質�

公害問題� 地球環境問題�

独 創� メガコンペティション�

△公害対策基本法('67)� △大気・騒音('68)� △水質・廃棄物('70)� △環境庁発足('71)� △悪臭・公害防止組織('71)� ■国連人間環境会議('72)�     △振動('76)�

■地球サミット('92)� △環境基本法('93)� △PRTR('99)�� 循環型社会形成�  推進基本法△('00)��

ダイオキシン類△('99)�

とはなかった。1958年の本州製紙江戸川工場の排水による漁業被害に抗議する漁民と工場側との衝突事件をきっかけに、我が国初めての排水規制である水質二法(注1)が1958年に制定、施行された。さらに、多くの公害(自動車排ガス、光化学スモッグ、新幹線等の交通機

関による騒音・振動、悪臭及び産業廃棄物不法投棄等)問題が頻発した。危機感を持った政府は、1967年に「公害対策基本法」を制定・公布し、守るべき望ましい基準として環境基準を制定した。また、これを実現するための担保として、個別規制法を制定することが国の責務としてうたわれた。同法の基本理念である「人の健康被害の防止と生活環境の保全」を達成するために、1960年から1970年代にかけて各種の公害規制法が相次いで制定・公布された。1968年に「大気汚染防止法」が制定されていたが、1970年の「公害国会」では、これらの法律の改正を含めて、公害関係の法案のすべてが可決・成立した。公害対策基本法で定義された「大気の汚染」「水質の汚濁」「土壌の汚染」「騒音」「振動」「地盤の沈下」「悪臭」の典型七公害規制である。1970年の改正では、経済優先と揶揄されていた「公害対策基本法」をはじめとする各種の規制法に記述されていた「経済の健全な発展との調和」を図りつつ公害対策を進めるという、いわゆる「調和条項」が削除された。成立した法案の多くは、排ガス・排水等の排出基準(濃度規制)を定め、事業者の法的責任を明確化するものであった。過去の健康被害発生に対する反省を踏まえ、被害者保護の観点から大気汚染、水質汚濁に関する規制法には公害の原因者の「無過失賠償責任」が明確にうたわれた。1960年代後半から1970年代前半に制定・公布された主な公害関係法を表1.1-1に示す。

(1)環境基本法の制定各種の規制法への対応を迫られた企業は、1970年からの20年間で合計8兆5,000億円もの公害防止投資を積極的に行ったので、公害防止技術開発の成果が挙がり、公害被害は減少した。1990年代に入り、経済の国際化が進み、産業分野での国際分業が進展するとともに、公害問題も国内の一地域的なものから国際的な広がりをみせるようになってきた。オゾン層の破壊や廃棄物の越境移動などの国と国との問題に発展し、一国一地域のみの対応では解決ができないいわゆる地球規模の問題である。さらに地球温暖化、海洋汚染、野生生物の種の絶滅など地球規模での対

4

(注1)水質二法:公共用水域の水質の保全に関する法律(水質保全法)及び工場排水等の規制に関する法律(工場排水法)。排水規制基準は定められましたが、指定された水域にしか適用されませんでした。

1.1

応を必要とする問題が多発し、地球環境破壊防止が国際的な課題となってきた。1992年にはリオデジャネイロで地球規模の環境問題を議論する「地球サミット」が開催され、各国の利害を越え、21世紀に向けての人類の進むべき道筋としての「アジェンダ21」が各国首脳の間で採択された。1967年に制定された公害対策基本法では、地球規模の環境問題の解決にはならず、新たに国際協調の必要性から1993年に環境基本法が制定・公布され、公害対策基本法はその精神と排出規制に対する考え方を残しつつ廃止された。環境基本法では、規制的措置に加え、従来なかった国家事業から企業活動までを視野に入れた環境アセスメント(環境影響評価)の考え方や環境面での経済的措置として、環境税の考え方なども取り入れられた。

(2)環境政策としての各手段の比較公害を防止し、人の健康を守り、生活環境を保全するための手段として

最も効果を挙げたのは、厳しい規制を課し、それを守らせるための監視と、罰則などの担保措置が有効に働いたためである。確かに健康被害が現に発生し、早急な対策が必要となった場合には即効力は示すが、規制強化のみに頼っていると、産業界への過大な負担と監督行政の監視コストが増大し、フリーライダーの出現により真面目に対策を講じる企業が経済的に不利になるおそれがある。これでは、企業の活力を阻害し、持続的な発展を目指すことに対する弊害となるであろう。

5

環境法令の規制の仕組みと政策手法Chapter

1環境法令とリスク管理

■表1.1-1 典型七公害関係法の制定

区 分

総則

大気

水質

騒音

振動

悪臭

地盤沈下

土壌汚染

廃棄物

化学物質規制

法令名

(旧)公害対策基本法

公害防止組織法

大気汚染防止法

水質汚濁防止法

騒音規制法

振動規制法

悪臭防止法

工業用水法

建築物用地下水採取規制法

農用地土壌汚染防止法

廃棄物処理法

化学物質審査製造規制法(化審法)

目 的

基本理念

組織体制整備

大気汚染対策

水質汚濁対策

騒音対策

振動対策

悪臭防止

地下水揚水規制

建築物設備用水の揚水規制

農作物の有害物質汚染防止

廃棄物適正処理

化学物質の事前審査、製造・輸入規制

公布日

1967.8.3

1971.6.10

1968.6.10

1970.12.25

1968.6.10

1976.6.10

1971.6.1

1956.6.11

1962.5.1

1970.12.25

1970.12.25

1973.10.16

施行日

1967.8.3

1971.6.10

1968.12.1

1971.6.24

1968.12.1

1976.12.1

1972.5.31

1956.7.10

1962.8.31

1971.6.5

1971.9.24

1974.4.15

また、日本国内での厳しい規制は、コスト面でも企業を追い詰め、国際競争力の低下にもつながるおそれが出てくる。環境政策として、一方的な規制強化だけではなく、企業の自主的な取り組みを容認し、かつ、経済的な手段を講ずることによるより、バランスのとれた政策への転換が進められている。表1.1-2、表1.1-3に地球温暖化対策を例にした環境政策としての各手段の比較を示す。

6

1.1

出典:財務省資料(環境問題への税制面からの対応に関する資料)

■表1.1-2 環境政策としての各手段の比較(規制的手段)

■表1.1-3 環境政策としての各手段の比較(経済的手段)

種 類

規制的手段

自主的取り組み

概 要

○汚染物質排出の基準等を設定

○違反に対する制裁

メリット

○企業等が汚染削減費用のみを負担すればよく、(規制の水準にもよるが)比較的合意を得やすい○罰則等の担保措置が強力であれば実効性が高い

○社会的合意が得やすい

デメリット

○排出源が拡散している場合には、その基準設定や網羅的な監視などに多大なコストがかかる○規制値を超える排出削減に対するインセンティブが働かない

○社会的に望ましい水準までの対策がとられるとは限らない○フリーライダーが生じ、対策を講じる企業が経済的に不利になるおそれ

経済的手段

税・課徴金

助成措置

排出権取引

デポジット制

概 要

○汚染物質の排出などに税、課徴金を課し、過剰生産を抑制

○汚染物質の排出削減行為に対する助成

○排出許容量(権利)を個々の主体に割り当て○市場での取引可能

○製品の本来価格に預かり金を上乗せ○使用後製品の返却の際に預金を返却

メリット

○市場メカニズムを通じて各主体が最も効率的な対策を選択するため、多数の排出源があっても社会全体として最も少ないコストですむ

○継続的なインセンティブがあり、技術開発等にも長期的にプラスの影響を与える

○収入をもたらす○経済的には税、課徴金と同様の効果○社会的合意が得やすい

○排出総量自体のコントロールが可能○広範な経済主体について、主体ごとの裁量の余地が大きく、柔軟な対応が可能

○特定の経済主体に対する配慮が可能(地球温暖化対策としては議論されていない)

デメリット

○社会的影響が最も広範囲に及び、社会的合意の形成が大変○排出権取引と比べれば、特定排出源に対する細かな配慮を盛り込みにくい

○PPP*1に反する可能性あり○汚染者に公的資金から便益を供給することの社会的不公平○別途財源が必要○初期割り当て配分の決定が非常に困難○税より市場創設、監視体制にコストがかかる

(地球温暖化対策としては議論されていない)

1

2

3

4

(注)*1 PPP:Polluter-Pays Principleの略で、汚染者負担の原則と訳する。汚染物質を出している者は、公害を起こさないよう自ら費用を負担して環境汚染の防止に努め、公害が発生した場合の防除に必要な費用を負担すべきであるとする考え方。OECD(経済協力開発機構)が1972年に提唱の基本原則の一つとして世界中に浸透したが、環境問題の広がりとともにPPPの適用範囲が増すにつれ限界が生じ、EPR(拡大生産者責任)の原則に移行しつつある。

出典:財務省資料(環境問題への税制面からの対応に関する資料)

罰則の強化が企業の環境法令違反に対する抑止効果を発揮してきたことは事実である。しかし、産業廃棄物の不法投棄のような社会的な影響が大である違反行為に対しては、さらなる社会的・経済的な制裁を強化せよという要求があり、それに応えるべく排出事業者を含めた罰則の強化が進んでいる。一方、近年の環境保全への社会的関心の高まりに対応するため、企業においては環境への自主的な取り組みが進み、環境負荷発生源としての排出等に対する対策が進んでいる。企業の規模や業種によっては経営の重要課題としてとり上げる余裕のない企業も実体としてあることを見逃してはならない。環境管理を経営の重要課題ととらえ、管理手法として環境マネジメント

システムの国際規格である ISO 14001のマネジメントシステムを導入し、審査登録を受けるサイト数が急増している。日本国内での登録数は一万数千サイトと世界トップの状況にあるが、全国の中堅、中小企業数の20万社以上からするといまだ道半ばと思わざるを得ないのが現状でもある。国及び地方公共団体は、環境経営の必要性を示し、経営者の理解を促し、環境経営の立場をとる企業人の育成に努めることとなる。

企業の環境への取り組みを促進させるための政策として、直接規制と間接規制が挙げられる。前者は、従来の公害規制であり、現在でも世界各国で環境問題の解決を目指して開発途上国を含め規制強化の一途をたどっている。後者は、企業の環境対策(化学物質削減や廃棄物の減量・再資源化など)に対して、何らかの経済的なインセンティブを与えることにより自主的な活動が促進されることに期待したもので、課徴金・環境税・補助金などが挙げられる。既に各国で実施されているものもあり、今後も排出権売買などの市場が開設され、拡大することを望む企業も出てきている。国のこれらの施策とは別に、企業の環境対策促進も市場のメカニズムに委ねることが有効な手段としてとり上げられている。商品市場では、消費者の意志決定(どの商品を選ぶか、どのメーカーを選ぶか)に価格要素(高いか安いか)以外に企業の環境への取り組みや社

7

環境法令の規制の仕組みと政策手法Chapter

1環境法令とリスク管理

1.1.2 規制と罰則から育成へ

1.1.3 環境規制と市場メカニズム

会貢献度が注目を集めるようになってきた。これは証券市場においても今後の企業成長の鍵が環境実績の高低にあるとみる投資家が投資先を選択する場合でも同様であろう。このような意思決定の変化が進むと、環境優位企業が環境劣位企業を淘汰するという結果になる可能性があり、環境問題の解決のために、市場メカニズムが有効に働いたこととなる。したがって、企業の生き残りのためには、ステークホルダー(ここでは消費者や投資家)に事業活動(製品、サービス)における環境情報をいかに積極的に公開するかが必要となる。さらに、企業の環境格付けの動きも活発となっており、環境経営の促進のための法制化の準備も進んでいる現状からしても、環境経営への取り組みの必要性が増加している。

8

1.1

(1)最近の環境関連事故、事件の状況企業の不祥事がマスコミに報道され、特に人の健康被害の可能性のある

ような化学物質に係る事故、事件については人々の関心は極めて高いものがある。不祥事の大半は、法規制違反の発覚であり、工業製品に係るものから生活に直結した食品添加物に至るまで多岐にわたっている。これらの事件により、企業は社会的信用を失墜し、場合によっては解散、廃業に追い込まれる可能性もある。

(2)環境リスクの考え方企業の経営上のリスクは、企業の存続を脅かすものから従業員の安全・

健康管理に至るまで多岐にわたっている。近年、企業経営にとっての環境管理が重要な位置を占めるようになり、企業経営上のリスクとしての意味が強くなっている。表1.2-1に企業の機能・業務が潜在的に持つリスクを示す。企業が潜在的に抱えるリスクのうち環境リスクとは操業に係る事業場の立地する地域的な汚染問題が最も重要な問題である。これらは化学物質による汚染問題ととらえることができる。事故等により化学物質による汚染が発生した場合、企業が受ける損失は表1.2-2に示すように財政的損失、人的損失及び社会的信用損失が想定され、特に社会的信用損失については、最も大きな打撃として修復困難な領域に入った場合、企業存続の危機に陥る可能性が極めて高いものがある。市場を席捲していた企業(ブランドを含む)であっても、事故を契機として撤退を余儀なくされた例もある。企業の環境担当部門が単独で企業の環境リスクの回避に注力したとしても、予想される損失のすべてに対して予防効果を発揮することは極めて困難である。組織全体としてのリスク管理の観点からの取り組みが必要であり、経営者の認識と社会的責任の重さを組織全体に浸透させることが必要となっている。一般的に環境部門が担当する業務の範囲は、事業場の操業に係る環境法令・条例及び協定等の遵守に係る許認可・届出業務から環境関連施設の管

9

リスク管理に係る主な環境法令への対応Chapter

1環境法令とリスク管理

1.2 リスク管理に係る主な環境法令への対応

1.2.1 事業者の環境リスクとは

理等が挙げられる。これらの業務に従事する実務者の責務は、事業活動に伴う法的責務の明確化と遵法管理の仕組み作り及び日常の監視である。さらに、環境負荷の低減による経営効率向上の努力にも注力する必要がある。最近の事件にみられるように、化学物質に関する法規制違反はなぜ起こ

10

1.2

①組織体制リスク ②経営リスク ③業務リスク

・関連会社の管理問題 ・事業戦略策定の失敗 ・業務支援システムの故障・セクショナリズム ・事業計画の破綻 ・製品・部品の盗難・リスク管理の意識が低い ・事業リスクの把握失敗 ・重要書類の紛失

・格付け低下 ・製品納期遅れによる補償・監査による問題摘出失敗 ・迅速性の低下・株主へのディスクロージャー不足

・独占禁止法に抵触・企業イメージ戦略失敗・マスコミ対応の失敗・株主総会の運営問題・付保の不十分、又は過剰

④経営管理リスク ⑤経営資源リスク ⑥製品・環境リスク

・収益管理に失敗 ・人材登用の失敗 ・PL訴訟・業務管理システムの故障 ・士気の低下 ・製品回収・修理・苦情処理のミス ・セクハラ訴訟 ・環境リスク・不正な経理操作 ・雇用・昇進差別訴訟 ・大気汚染・水質汚染・顧客管理の失敗 ・社員の病気・自殺・誘拐 ・土壌汚染・在庫管理の失敗 ・社員の引き抜き ・事故による環境汚染・キャッシュフロー管理の失敗 ・社員の不祥事・為替変動への対処失敗 ・労働災害による死傷者・企業年金積み立て不足 ・設備の故障・事故

⑦社会的リスク ⑧購買リスク ⑨研究開発リスク

・少子化による需要減退 ・調達物品の納期遅れ ・知的財産権の権利化稚拙・犯罪組織につけ込まれる ・調達物品の不良品質 ・知的財産権訴訟に敗北・解雇者から恨みをかう ・標準化競争に敗北・文化摩擦 ・研究の効率低下・従来慣行の問題化・学力低下

■表1.2-1 企業におけるリスクの多様性

出典:三菱総合研究所編、リスクマネジメントガイド、(財)日本規格協会

■表1.2-2 企業リスクによる損失

(注)*1 パブリックアクセプタンス:社会的受容性(周辺住民との合意形成等)

財政的損失 人的損失 社会的信用損失

・設備損害 ・企業内死傷者 ・一般公衆、地域住民、監督官庁・供給停止 ・第三者死傷者 の信用低下・補償 ・追加業務発生等 ・社員の意志低下・労務対策費 ・資金徴集力低下等・PA(パブリックアクセプタンス)*1費用等

ったのかを検証してみると、a.環境法令・条例に対する認識不足と遵法管理の徹底不足b.利益優先による事業者としての遵法精神の欠如c.事業部門の士気低下による実務者の無気力化(問題意識の低下)d.従来からの慣行に頼り、善悪の検証機能(法抵触の可否検証)が低下などが挙げられる。いずれも企業風土として遵法精神が希薄となり、利益優先がもたらした結果とみることができる。

(1)環境事故と企業の社会的責任2000年頃から、企業の社会的責任(CSR)に関する議論が活発化し、具

体的な例として、しばしば企業の環境側面に係る問題と対比してとり上げられるようになってきた。米国の企業組織であるBSRによれば、企業の社会的責任を「社会が企業に抱く、倫理的、法律的、商業的、かつ公共的な期待に応え、あるいはそれを上回る方法で事業を展開していくこと」と定義しており、企業の経済的側面(株主への利益還元・配当、収益率向上等の財務的な側面)に加え、社会的側面として法令遵守、不正防止、従業員の労働条件・人権配慮、安全・衛生、企業市民としての地域貢献活動、環境対策等の社会面での活動を示している。社会や市民の関心が集まることで企業の社会的な価値が問われ、企業自身が社会的側面での不足や欠落部分に気づきそれを補うことによってリスク回避が図られ、ブランドイメージを向上させることが経済的価値を高めることにもつながってくる(図1.2-1)。

11

CSR: Corpora teSocial Responsibility

BSR:Business forSocial Responsibility

リスク管理に係る主な環境法令への対応Chapter

1環境法令とリスク管理

1.2.2 企業の社会的責任とは

経済的側面�

利益の還元�

社会的評価の向上�

株主・取引先�

利益の直接・間接�での還元�

社会的側面�

社会貢献�

製品安全�

環境負荷低減� 従業員処遇�

企業倫理・企業行動規範・情報公開�

戦略的な企業価値の創造�

■図1.2-1 企業の社会的責任と企業価値

企業の社会的責任として環境活動が重要視されており、企業評価における環境への対応度合いがますます重要になっている。既に「環境格付け」がスタートしており、企業の環境活動の促進と情報公開が求められている。図1.2-2にCSRへの要求の高まりの背景を示す。

CSRとして一般に考えられている企業活動として、人権・人種・環境・雇用・女性・マイノリティなどの問題への取り組み、ステークホルダーとの関係改善及び保持、地域への貢献、倫理方針の確立などが挙げられる。これらは、企業としても基本的業務として対応してきた分野であると考えられるが、昨今、CSRに関する企業の取り組みやその情報開示が求められている。この背景には、a.消費者行動の変化(企業の責任についての関心の高まり)b.グローバリゼーションによる途上国での多国籍企業の行動に対する懸念

c.情報化の進展に伴う、企業の世界的信用力の維持の必要性d.NGOなど市民社会の台頭などの社会的変化があり、「企業が存在することによる損益を回避したい」、「企業が社会を構成する主体としての責任を果たしてほしい」という企業

12

1.2

CSRに対する要請�

社会的存在として企業が果たすべき責任�環境問題、人権問題、雇用問題、�

労働条件改善、地域への貢献等への取り組み�

社会的期待�

責務としての実施� マイナス影響の回避� チャンス拡大� リスク軽減�

経営的期待�

企業に対する社会の一員としての行動の要請�(責務を果たしてほしい)�

・差別化による競争優位�・SRI(資金調達で有利)�・メディアからの注目�

・社会的信用の保持�・重大事故の回避�

企業の存在による損益の回避�

間接的影響� 間接的影響� 間接的影響� 間接的影響�

消費者行動の変化�:企業の倫理方針に関心を持つ。�

グローバリ�ゼーション�

:途上国への対応に関心が集まっている。�

市民社会の台頭�:CRSに注目するNGOなどの動きが活発化している。�

情報技術の発展�:不祥事など企業情報が瞬時で全世界に伝わる。�

■図1.2-2 CSRへの要求の高まった背景

出典:日本機械輸出組合、内外の環境格付けの現状、第2章

への期待(社会的期待)が高まってきたことが挙げられる。さらに社会的期待のみでなく、CSRに対し、積極的に取り組むことによるチャンスの拡大やリスクの軽減などの経営的観点からの期待もある(経営的期待)。チャンス拡大要因としては、a.差別化による競争優位b.社会的責任投資(SRI)による資金調達力強化c.メディアなどにとり上げられることによる消費行動への影響などが考えられ、リスク軽減要因としては、a.社会的信用の保持b.重大事故の回避が挙げられる。日本では、公害問題をきっかけとして環境事故が発生した場合、CSRの観点から従来に増して、企業が受けるダメージは大きくなっている。最近の雪印食品などの不祥事では、企業の遵法管理体制が企業一部門の業務対応の悪さというよりは企業全体の倫理観の欠如として大きな問題になっている。

(2)環境リスクマネジメントの必要性とその対応企業のリスクマネジメントは、米国で20世紀初頭から研究が続けられ、

その成果として世界の多くの企業が自助努力とリスク管理によって現在の繁栄を築いてきたが、企業の組織が複雑化・高度化するにつれ、管理すべきリスクも複雑化・多様化してきた。その中で環境リスクは、企業が過去に経験した、公害問題とは比較にならないほど規模も大きく、内容も複雑化している。環境リスクに対する対応を誤ると企業経営に取り返しのつかないほどのダメージを受けることを認識しなければならない。社会が企業に求めている社会的な側面での最も重要なものに、法令遵守と不正・腐敗の防止が挙げられるであろう。環境への取り組みに対しては、透明性と公平性が求められている。企業は、公害の発生により、地域住民に対して健康被害を与えたという過去の歴史を踏まえ、利益優先から公害を起こさないことを社是として規制基準の遵守、環境負荷低減の努力を図ってきた。その結果、短期間で、大気・水質の改善を実現し、青空と清い流れを取り戻した。それがいま、新たな環境問題に直面しており、従来の規制強化による対応を迫られている。

13

S R I : S o c i a l l yResponsible Invest-ment

リスク管理に係る主な環境法令への対応Chapter

1環境法令とリスク管理

14

1.2

●参考文献

1)畠山武道、大塚直、北村喜宣:環境法入門、日本経済新聞社(2000.4)2)三橋規宏:環境経済入門、日本経済新聞社(2002.3)3)鈴木敏央:環境法、ダイヤモンド社(2003.7)4)財務省資料 環境問題への税制面からの対応に関する資料5)三橋規宏:環境経済入門、日本経済新聞社(2002.3)6)財務省Web情報:環境問題への税制面からの対応に関する資料(2003.7)7)貿易と環境専門委員会編:内外の環境格付けの現状、日本機械輸出組合(2003.6)8)(株)三菱総合研究所編:リスクマネジメント、日本規格協会(2003.7)9)石名坂邦昭:リスクマネジメントの理論、白桃書房(2002.1)10)貿易と環境専門委員会編:内外の環境格付けの現状、日本機械輸出組合(2003.6)

15

我々国民の諸権利は日本国憲法で保障されているが、それは極めて抽象的な表現となっており、具体的な実現に向けての政策等は、各種の基本法で規定されている。環境に関しても環境基本法が制定されており、その下に個別の環境法が位置づけられている。環境法は、人の健康被害の防止と生活環境の保全を目的とした規制法である。環境法の大まかな体系を図2.1-1に、その構成を図2.1-2に示す。

Chapter

2

2.1 環境基本法と循環型社会形成推進基本法

基本法と法律の仕組み

日本国憲法�

環境基本法�

大気汚染防止法�

水質汚濁防止法�

廃棄物処理法�

資源有効利用促進法�

環 境� 福 祉� 農林業�

循環型社会形成推進基本法�

■図2.1-1 環境法の体系

16

2.1

■図2.1-2 環境法の構成

企業の組織全体、すべての従業員に対してその遵守精神を浸透、定着させるためには、個々の環境関連法の基本理念を定めた二つの基本法の理解が不可欠である。環境基本法では基本理念と国、事業者及び国民の責務が表2.1-1のとおり明確化された。環境基本法の概要を表2.1-2に示す。

17

環境基本法と循環型社会形成推進基本法Chapter

2基本法と法律の仕組み

2.1.1 環境基本法

■表2.1-2 環境基本法の概要

■表2.1-1 環境基本法の基本理念と責務など

項 目 条 文 概 要国・地方公共団体の 第6条 ・基本理念に基づき、施策を講ずることへの義務づけ責務 第7条事業者の責務 第8条 ・製品の製造・加工・販売の過程での公害防止

・製品の使用・廃棄の段階まで考慮した環境配慮製品の開発国民の責務 第9条 ・日常生活での環境負荷低減環境の日 第10条 ・環境保全への関心と理解を深め、環境保全活動への意欲を

高揚する趣旨で設定・国、地方公共団体は趣旨に沿った事業の実施

環境基本計画 第15条 ・政府は施策の総合的かつ計画的な推進のための環境保全に関する環境基本計画を策定

環境保全施策 第16条 ・環境基準の制定第17条 ・排出等の規制第18条 ・公害防止計画の策定第21条

環境アセスメント 第20条 ・環境影響評価の推進(開発事業による周辺環境の影響を事前調査・評価し、必要な措置をとる制度)

⇒「環境影響評価法」の制定経済的措置 第22条 ・環境税の導入(デポジット制度、補助金等も検討)

第24条 ・技術的支援(製品アセスメント、リサイクル)環境教育・広報 第25条 ・環境保全に関する教育の振興

第26条 ・環境保全に関する広報活動第27条 (民間団体の環境保全活動への支援、必要な情報の提供を

義務づけ)国際協調推進 第32条 ・開発途上国、地域への支援、国際協力の推進

第35条 ・国外での事業活動時の地球環境保全のための地域環境への配慮

項 目 条 文 基本理念と責務

第3条 ・環境の恵沢の享受と継承環境は生態系が微妙な均衡を保つことで成り立っており、現在及び将来の世代がその恵沢を享受し将来にわたって継承されるように維持されなければならない。

第4条 ・環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築大量消費社会から省エネやリサイクルに留意した環境にやさしい社会の実現を目指し、その中で健全な経済の発展を図る。

第5条 ・国際的協調による地球環境保全の積極的推進環境保全が性質上グローバルな課題であることを認識し、とりわけ我が国経済の国際的相互依存性からも尽力しなければならない。

基本理念

新しい環境問題に対しては、問題の性格に応じて、科学的知見の充実、科学技術の活用、経済的手法の活用による誘導、環境影響評価の推進、社会資本の整備等の多様な手法を適切に活用しながら、公平な役割分担の下にすべての主体の自主的・積極的行動により、経済社会のシステムのあり方や行動様式を見直し、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を構築することが必要となっている。また、地球環境問題は、人類共通の課題であり、我が国の経済社会が国際社会と密接な相互依存関係にあることから、発展途上国への技術協力などの国際協調による積極的取り組みが不可欠である。1993年11月に制定された環境基本法は、(旧)公害対策基本法及び自然環境保全法を基礎に、新しい地球時代の環境問題の特質を踏まえ、環境保全に関する基本理念と、新たな環境政策の枠組みを提供するものである。なお、(旧)公害対策基本法は、環境基本法の施行に伴い廃止された。

近年の廃棄物をめぐる国内の動きは、廃棄物焼却炉からのダイオキシン類の汚染問題、廃棄物処理・処分に係る住民と処分場のトラブルなどを契機に大きくとり上げられ、結果として最終処分場の新規設置の困難さともあいまって、日本全体として廃棄物の処分場がなくなるという状況に至っている。2000年、ダイオキシン類対策関係閣僚会議で2010年度に向けての目標として最終処分量の半減化が決定し、2010年度に向けて産業界が自主目標の設定、各企業での自主目標の設定等が相次いだ。2000年6月に「循環型社会形成推進基本法」が制定・公布され、循環型社会構築への第一歩を踏み出した。

(1)循環型社会形成推進基本法の趣旨廃棄物・リサイクル対策については、廃棄物処理法の改正、各種リサイクル法の制定等により拡充・整備が図られてきているが、今日、我が国は次のような課題に直面し、これへの対処は喫緊の課題となっている。a.廃棄物の発生量の高水準での推移:近年、一般廃棄物の発生量は約5,000万t、産業廃棄物の発生量は約4億tで推移

b.リサイクルのいっそうの推進の要請:1996年度のリサイクル率は、一般廃棄物約10%、産業廃棄物約42%

c.廃棄物処理施設の立地の困難性:1996年度の最終処分場の残余年数

18

2.1

2.1.2 循環型社会形成推進基本法

は、一般廃棄物で8.8年、産業廃棄物で3.1年d.不法投棄の増大:不法投棄件数は、1998年度では1,273件と1993年度の4.6倍に増大

これらの問題の解決のため、「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会から脱却し、生産から流通、消費、廃棄に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない「循環型社会」を形成することが急務となっている。本法は、このような状況を踏まえ、循環型社会の形成を推進する基本的な枠組みとなる法律として制定・公布された。a.廃棄物・リサイクル対策を総合的かつ計画的に推進するための基盤を確立するとともに、

b.個別の廃棄物・リサイクル関係法律の整備とあいまって、循環型社会の形成に向け実効ある取り組みの推進を図るものである。

(2)循環型社会形成推進基本法の概要①形成すべき「循環型社会」の姿を明確に提示

「循環型社会」とは、a.廃棄物等の発生抑制、b.循環資源の循環的な利用、c.適正な処分、が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会。

②法の対象となる廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と定義

法の対象となる物を有価・無価を問わず「廃棄物等」とし、廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と位置づけ、その循環的な利用を促進。

19

環境基本法と循環型社会形成推進基本法Chapter

2基本法と法律の仕組み

【参考】

循環型社会形成推進基本法は、2000年5月26日に成立し、6月2日に公布された。なお、本法律と一体的に整備された法律は、以下のとおり。これらの法律は循環型社会構築のため、旧法改正・新法制定を行ったものである。a.廃棄物処理関係:廃棄物処理法(改正)b.リサイクル関係:資源有効利用促進法(改正)

建設資材リサイクル法(制定)食品リサイクル法(制定)グリーン購入法(制定)

③処理の「優先順位」を初めて法定化

a.発生抑制、b.再使用、c.再生利用、d.熱回収、e.適正処分、との優先順位

④国、地方公共団体、事業者及び国民の役割分担を明確化

循環型社会の形成に向け、国、地方公共団体、事業者及び国民が主体で取り組んでいくため、これらの主体の責務を明確にする。特に、a.事業者・国民の「排出者責任」を明確化b.生産者が、自ら生産する製品等について使用され廃棄物となった後まで一定の責任を負う「拡大生産者責任」の一般原則を確立

⑤政府が「循環型社会形成推進基本計画」を策定

循環型社会の形成を総合的・計画的に進めるため、政府は「循環型社会形成推進基本計画」を次のような仕組みで策定。a.原案は、中央環境審議会が意見を述べる指針に即して、環境大臣が策定

b.計画の策定に当たっては、中央環境審議会の意見を聴取c.計画は、政府一丸となった取り組みを確保するため、関係大臣と協議し、閣議決定により策定

d.計画の閣議決定があったときは、これを国会に報告e.計画の策定期限、5年ごとの見直しを明記f. 国の他の計画は、循環型社会形成推進基本計画を基本とする

⑥循環型社会の形成のための国の施策を明示

a.廃棄物等の発生抑制のための措置b.「排出者責任」の徹底のための規制等の措置c.「拡大生産者責任」を踏まえた措置(製品等の引き取り・循環的な利用の実施、製品等に関する事前評価)

d.再生品の使用の促進e.環境の保全上の支障が生じる場合、原因事業者にその原状回復等の費用を負担させる措置、等

20

2.1

各種環境法を調査し、必要な対応(許認可、届出等の行政手続、規制基準の遵守等)をするためには、法律の仕組みや地方条例との関係を十分に理解する必要がある。環境法を読む(調べる)ポイントを以下に述べる。

(1)環境法の規制対象項目環境法は、「化学物質の管理」「化学物質の環境への排出規制」が主体で

あり、人の健康被害を起こす可能性のある有害化学物質について環境負荷の形態(大気、水質、廃棄物、悪臭)や特定の物質(ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル、フロン、ハロン等)が対象となっている。化学物質のほかに以下のような対象がある。・物理量の管理……………「騒音」「振動」「X線」「電磁波」等・生活環境の管理…………「地盤沈下」「景観」「工場立地」等・環境管理組織の管理……「公害防止組織」等・その他関連項目の管理…労働安全衛生法「有機則」「特化則」「鉛則」等

…消防法、高圧ガス保安法等

(2)法律の体系(法律と命令)○法律は、国会の議決を経て制定・公布され、憲法・条約に次ぐ効力を持つ。○法律そのものには、規制の細目(命令、規則)は定められておらず、政令、省令により命令の形で発せられる。○命令、規則は、国会の議決を必要とせず行政機関の長の命令の形態をとる。政令、内閣府令(旧総理府令)、省令、告示、通知等があり、いずれも官報により公布される。

(例)法律:「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年12月25日法律第137号)

政令:「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」(昭和46年9月23日政令第300号)

総理府令:「金属を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令」

(昭和48年2月17日総理府令第5号)省令:「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」

(昭和46年9月23日厚生省令第300号)

21

法律、条例の読み方、調べ方Chapter

2基本法と法律の仕組み

2.2 法律、条例の読み方、調べ方

告示:「産業廃棄物に含まれる金属等検定方法」(昭和48年2月17日環境庁告示第13号)

通知:「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について」(昭和46年10月16日厚生省環第784号

厚生事務次官から各都道府県知事・各政令市長宛)

(3)国際条約との関連地球規模の環境問題に対処するための法律には、国際条約から発したものがある。このような法律は、国際的な背景と日本が条約にどのようにかかわり、どのような役割を担っているかなどの経緯を知るとともに、国内法の法制化の経緯等を調べておく必要がある。(例)「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層

保護法)」→「ウィーン条約」「モントリオール議定書」「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(特定有害廃棄物等輸出入規制法)」→「バーゼル条約」「地球温暖化対策の推進に関する法律」→「気候変動枠組条約」「京都議定書」

(4)法律の目的を知る(表2.2-1)法律がいかなる目的で制定されたかを読み取る(第1条参照)。

(5)用語の定義を知る(表2.2-2)対象となる範囲、物質、事象を読み取る。a.法では主なものしか定義しない場合が多い。これは後で修正・追加手続きが簡単にできるようにするためである。

b.詳細については、政令(主務大臣の承認で修正・追加が可能)を読む。c.定型の表現を理解する。○「法」:……であって政令で定める(ものをいう)。

22

2.2

■表2.2-1 環境法の目的の例

法律名 法の目的

水質汚濁防止法 第1条……国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、(中略)人の健大気汚染防止法 康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任につ

いて定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。

騒音規制法 第1条……定めることにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資す振動規制法 ることを目的とする。悪臭防止法

廃棄物処理法 第1条……生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

○「政令」:……法第2条第□項第△号の政令で定めるものは……である。例を挙げると、騒音を発生する機械設備が法の規制対象か否かを調査す

る場合、法律を読んでもすぐに判断ができない。政令の別表に具体的な規制対象となる設備が記述されている。

(6)環境法と条例の関係法律の施行は、関係省庁から地方行政(都道府県・政令指定都市)に委

ねられているが、地方行政はその法律の施行に当たり「条例」を制定する。条例は、地方自治法に基づき地方議会の議決を経て制定される。法律の全国一律基準では、達成できない課題(水質改善等)等を法律の範囲内で制定する。当然、規制基準値等は法律より厳しく設定される。いわゆる「上乗せ」「横出し」である(図2.2-1)。

23

法律、条例の読み方、調べ方Chapter

2基本法と法律の仕組み

上乗せ�

横出し�

値�

法 令�

規制項目�

「上乗せ」 法令で定める全国一律基準を条例でさらに厳しくすること。�

�「横出し」 法令で定める対象範囲、項目

を条例で追加、拡大させること。�

■図2.2-1 上乗せ・横出し基準

法 律 政 令 政令別表

騒音規制法 騒音規制法施行令(政令) 騒音規制法施行令別表

第2条 第1条 別表第1(第1条関係)

この法律において「特定施設」とは工場又は事業場に設置される施設のうち、著しい騒音を発生する施設であって政令で定めるものをいう。

騒音規制法(以下「法」という。)第2条第1項の政令で定める施設は、別表第 1に掲げる施設とする。

1 金属加工機械イ 圧延機械(原動機の定格出

力の合計が22.5キロワット以上のものに限る。)

ロ 製管機械ハ ベンディングマシン

■表2.2-2 用語の定義の例

(例)○水質規制に関するもの:「神奈川県生活環境の保全等に関する条例」の

例(表2.2-3)

公共用水域(河川、湖沼、海域)に排出水を排出する場合の排出基準(濃度基準)は、全国一律基準が設定されているが、生活環境の確保を目指して神奈川県では厳しい基準を県条例で設定している。

○廃棄物に関するもの:「千葉県廃棄物の処理の適正化等に関する条例」

千葉県では、不法投棄多発に対する抑止効果を期待して県独自の産業廃棄物に関する厳しい条例を制定した。廃棄物処理法の上乗せ、横出しに相当する条例規制である。1.産業廃棄物を自ら処理する事業者の講ずべき措置a.廃棄物処理票:廃棄物処理票の作成・交付・携行・保存の義務づけ(産業廃棄物を自ら処理するために自社の事業場の外に設置する施設を利用する場合)

b.自社処分場への搬入時間の制限・自社処分場(積替保管・中間処理・最終処分)への夜間(午後10時から午前6時まで)の搬入の原則禁止・違反行為に対する中止命令

2.産業廃棄物処理業者等の講ずべき措置収集運搬業の許可を有する事業者の登録車両について、標章(ステッカー)(図2.2-2)による表示の義務づけ(許可番号・事業者名その他規則で定める事項を表示)3.小規模産業廃棄物処理施設(許可を必要とする小規模産業廃棄物処理施設)a.小規模焼却炉(法による設置許可対象施設以外で事業場外に設置するものに限る):次のいずれかに該当する焼却炉・1時間当たり処理能力が50kg以上のもの

24

2.2

■表2.2-3 神奈川県条例の上乗せ、横出し

公共用水域への 全国基準 神奈川県基準排出基準 (水質汚濁防止法) (神奈川県条例)

上乗せ BOD 160mg/L 5~60mg/L(県の水域ごとに設定)

横出し ニッケル*1 規制対象外 0.3~1.0mg/L(県の水域ごとに設定)

(注)*1 ニッケル:神奈川県では、ニッケルを有害物質として排水基準を設定している。

・火格子面積又は火床面積が0.5m2以上のもの・燃焼室容積が0.7m3以上のもの

b.破砕施設(事業場外に設置するものに限る):廃プラスチック類、木くず又はがれき類の破砕施設で1日当たりの処理能力が5 t以下のもの(下限なし)

c.積替保管施設(事業場外に設置するものに限る):事業者が排出した産業廃棄物を自ら運搬又は保管の用に供する積替保管施設(面積については、100m2以上とする)

4.不法投棄行為者等の公表不法投棄や不法堆積などの不適正処理を行った者の氏名、住所を積

極的に公表し、その是正を働きかける。5.土地所有者の責任土地所有者は、不法投棄されないよう適正な管理に努めるとともに、

不法投棄された廃棄物を県が取り除いたときは、不法投棄に責任のある土地所有者は、その土地の利用計画について県の確認を受けなければ引き続いて利用することはできない。6.罰則新条例の規定に違反した場合、最高で2年以下の懲役又は100万円以

下の罰金に処せられる。

(7)法令の条文構成条、項、号

(表示) (読み方)第12条 一 ………………… 第12条第1項第1号

二 …………………三 …………………

25

法律、条例の読み方、調べ方Chapter

2基本法と法律の仕組み

■図2.2-2 千葉県ステッカー

1.標章には、標章に係る産業廃棄物処理業又は特別管理産業廃棄物処理業の許可の期間が終了する年に応じて標章の縁に色を施し、平成14年は赤紫色、平成15年は紫色、平成16年は黄色、平成17年は緑色、平成18年は橙色、平成19年は青色、とし、平成20年以降は順次これを繰り返します。��

2.標章の大きさは縦15cm、横20cmとし、標章に色を施す縁の幅は2cmとします。�

交付番号�

千 葉 県�

産業廃棄物収集運搬業許可車両標章�事業者名�許可番号�許可期限�車両の登録番号�

2 ………………… 第12条第2項3 一 ………………… 二 ………………… 第12条第3項第2号

通常、第1項の「1」は記載されていない。同様に「号」がない場合は、第1号の「一」は記載されない。

(8)条文の読み方水質汚濁防止法の例

[ ]内、( )内は飛ばして読んで、何をいわんとしているかを先ず読み取る。

(9)範囲等を示す「接続詞」の意味a. 又は :A又はB ⇒  AかB(A or B)b. 及び :A及びB ⇒  AとB(A and B)c. 並びに :A並びにB ⇒  AとB(A and B)d. 合わせて:A………、合わせてB ⇒  AとB(A and B)e. とともに:AとともにB ⇒ AとB(A and B)f. いずれか:各号のいずれかの要件を備える ⇒ 各号のどれか

「ひとつ(以上)」に該当すればよい

(10)簡便な法令調べ本来は、法律、施行令、施行規則(条例)の全条文を読むことであるが、時間がない、急ぐ場合は、以下の手順で簡便に調べる(ただし、最終的には、時間をかけてじっくり読むこと)。a.法律、施行令、施行規則の「別表」「様式」を調べる

別表:規制値、基準値及び対象となる施設や物質名

26

2.2

第2条 この法律において「公共用水域」とは、河川、湖沼、港湾、沿岸海域その他公共の用に供される水域及びこれに接続する公共溝渠、かんがい用水路その他公共の用に供される水路[下水道法(昭和33年法律第79号)第2条第3号及び第4号に規定する公共用下水道及び流域下水道であって、同条第6号に規定する終末処理場を設置しているもの(その流域下水道に接続する公共下水道を含む)を除く]をいう。

様式:行政機関への届出様式や資格証明書様式(例)「様式」(水質汚濁防止法施行規則)(図2.2-3)

b.「別表」「様式」に記載されている条文を読む:様式例では施行規則の第3条

c.さらにさかのぼって施行令、法の条文を読む:様式例では法の第5条、第6条、第7条

d.「告示」「通達」を調べる:法の解釈等が明記されている場合がある

(11)環境法令、条例の情報収集先a.官報(財務省印刷局発行):法律等の制定・改正(毎日発行)b.インターネット(主なアクセス先):各省庁、都道府県、市町村の環境行政担当部署のホームページが充実しており、優良な情報源となる(表2.2-4)。

c.書籍(主な法令集)(表2.2-5)d.法令講習会:都道府県等の環境行政担当部署の主催する法令講習会等の利用

27

法律、条例の読み方、調べ方Chapter

2基本法と法律の仕組み

様式第1(第3条関係)�特定施設設置(使用、変更)届出書�

年  月  日�

都道府県知事 殿�

(市長)�届出者       印�

 水質汚濁防止法第5条第1項又は第2項(第6条第1項又は第2項、第7条)の規定により、特定施設について、次のとおり届け出ます。�

施行規則:特定施設の設置の届出�

特定施設の設置の届出� 届出に係る経過措置� 特定施設の構造等の変更の届出�

■図2.2-3 様式例

28

2.2

●参考文献

1)畠山武道、大塚直、北村喜宣:環境法入門、日本経済新聞社(2000.4)2)鈴木敏央:環境法、ダイヤモンド社(2003.7)

アクセス先 アドレス 備 考

官報 財務省印刷局 http://kanpou.pb-mof.go.jp/ 印刷不可

首相官邸官報ダイジェスト http://www.kantei.go.jp/jp/kanpo/digest.html 目次のみ

環境法令 環境省ホームページ http://www.env.go.jp/hourei/index.html「環境関連法令集」

総務省ホームページ http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi「法令データ提供システム」

環境条例 東京都環境局ホームページ http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/(東京都)

環境条例 おおさかの環境ホームページ http://www.epcc.pref.osaka.jp/(大阪府)

環境条例 千葉県環境生活部環境政策課 http://www.pref.chiba.jp/syozoku/e_kansei/index.html(千葉県) ホームページ

環境条例 埼玉県環境防災部 http://www.pref.saitama.jp/ken/ken_04/02_09.html(埼玉県) ホームページ

環境条例 環境科学センターホームページ http://www.fsinet.or.jp/̃k-center/laws/contents.htm(神奈川県) 条例・計画・指針

■表2.2-4 環境情報提供ホームページの例

著書名 著 者 発行者 備 考

「環境六法」 環境法令研究会編集 中央法規出版 年度版

「環境 ISO六法」 鈴木敏央編集 ダイヤモンド社

「環境保全関係法令集」 環境法令研究会編集 新日本法規出版 加除式

「よくわかる環境法」 鈴木敏央 ダイヤモンド社

■表2.2-5 環境法関連書籍

個別法・条例2第 部

31

各種の環境法のうち特に環境負荷として化学物質の排出に係る規制を定めた大気、水質、悪臭、土壌や個別の規制法を制定している化学物質(フロン、ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル)に関する環境法の概要を以下に示す(環境法の構成については、図2.1-2を参照)。

(公布:昭和43年6月10日法律第97号)

工場及び事業場から発生するばい煙、粉じんの排出等を規制し、有害大気汚染物質対策の実施を推進し、自動車排出ガスに係る許容限度を定める。大気の汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定める。

(1)規制の対象1)ばい煙発生施設

大気の汚染の原因となるばい煙を発生し、及び排出する施設で政令(施行令)で定めるもの(33種類)。施行令で定めるばい煙発生施設を表3.1-1に示す。

2)ばい煙

燃料その他の物の燃焼、熱源としての電気の使用、物の燃焼、合成、分解等の処理に伴い発生する以下のものをいう。a.硫黄酸化物b.ばいじんc.有害物質:カドミウム及びその化合物、塩素及び塩化水素、ふっ素・ふっ化水素及びふっ化けい素、鉛及びその化合物、窒素酸化物(合計5種類)

Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

3.1 大気汚染防止法

■表3.1-1 大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設

(大気汚染防止法施行令第2条別表第1)

3)特定有害物質(未指定)

4)特定工場

総量規制が行われる地域内で指定ばい煙を発生する一定規模以上の工場又は事業場をいう。

5)特定ばい煙(硫黄酸化物、窒素酸化物)

6)粉じん発生施設、特定粉じん発生施設

32

3.1

1.ボイラー2.[水性ガス、油ガス発生用]ガス発生炉及び加熱炉3.[金属の精錬又は無機化学工業品の製造用]焙焼炉、焼結炉(ペレット焼成炉を含む)及びか焼炉

4.[金属の精錬用]溶解炉、転炉及び平炉5.[金属の精錬又は鋳造用]溶解炉6.[金属の鍛造又は圧延用、金属又は金属製品の熱処理用]加熱炉7.[石油製品、石油化学製品又はコールタール製品の製造用]加熱炉8.[石油精製用]流動接触分解装置のうち触媒再生塔8-2 石油ガス洗浄装置に付属する硫黄回収装置のうち燃焼炉9.[窯業製品の製造用]焼成炉及び溶融炉10.[無機化学工業品又は食料品の製造用]反応炉(カーボンブラック製造用燃焼装置を含む)

及び直火炉11.乾燥炉12.[製銑、製鋼、合金鉄又はカーバイドの製造用]電気炉13.廃棄物焼却炉14.[銅、鉛又は亜鉛の精練用]焙焼炉、焼結炉(ペレット焼成炉を含む)、溶鉱炉、転炉、溶

解炉、及び乾燥炉15.[カドミウム系顔料又は炭酸カドミウムの製造用]乾燥施設16.[塩素化エチレンの製造用]塩素急速冷却施設17.[塩化第ニ鉄の製造用]溶解槽18.[活性炭の製造(塩化亜鉛を使用するものに限る)用]反応炉19.[化学製品の製造用]塩素反応施設、塩化水素反応施設及び塩化水素吸収施設20.[アルミニウム製錬用]電解炉21.[りん、りん酸、りん酸質肥料又は複合肥料の製造(原料としてりん鉱石を使用するもの

に限る)用]反応施設、濃縮施設、焼成炉及び溶解炉22.[ふっ酸の製造用]凝縮施設、吸収施設及び蒸留施設23.[トリポリりん酸ナトリウムの製造(原料としてりん鉱石を使用するものに限る)用]反

応施設、乾燥炉及び焼成炉24.[鉛の第2次精錬用(鉛合金の製造を含む)又は鉛の管、板、線の製造用]溶解炉25.[鉛蓄電池の製造用]溶解炉26.[鉛系顔料の製造用]溶解炉、反射炉、反応炉及び乾燥施設27.[硝酸の製造用]吸収施設、漂白施設及び濃縮施設28.コークス炉29.ガスタービン30.ディーゼル機関31.ガス機関32.ガソリン機関

粉じんとは、物の破砕、選別、その他の機械的処理又は堆積に伴い発生し、又は飛散する物質をいう。このうち、石綿(アスベスト)に関するものを特定粉じんといい、その他のものを一般粉じんという。粉じんを発生し、排出又は飛散させる施設で政令で定めるものを表3.1-2及び表3.1-3に示す。

7)特定施設

物の合成、分解その他の化学的処理に伴い発生する物質のうち、政令で定める特定物質を発生する施設(ばい煙発生施設を除く)をいい、事故が発生した場合に応急措置、知事への通報義務等がある。施行令で定める特定物質は表3.1-4に示す物質をいう。

8)指定物質排出施設(表3.1-5参照)指定物質(継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある

33

大気汚染防止法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

名 称 規模等1 解綿用機械 原動機の定格出力が3.7kW以上であること2 混合機 原動機の定格出力が3.7kW以上であること3 紡織用機械 原動機の定格出力が3.7kW以上であること4 切断機 原動機の定格出力が2.2kW以上であること5 研磨機 原動機の定格出力が2.2kW以上であること6 切削用機械 原動機の定格出力が2.2kW以上であること7 破砕機及び摩砕機 原動機の定格出力が2.2kW以上であること8 プレス(せん断加工用のものに限る) 原動機の定格出力が2.2kW以上であること9 穿孔機 原動機の定格出力が2.2kW以上であること備考 この表の中欄に掲げる施設は、石綿を含有する製品の製造の用に供する施設に限り、湿式

のもの及び密閉式のものを除く。

■表3.1-3 特定粉じん発生施設

(大気汚染防止法施行令第3条の2別表第2の2)

名 称 規模等

1 コークス炉 原料処理能力が1日当たり50t以上であること

2 鉱物(コークスを含み、石綿を除く。以下同じ) 面積が1,000m2であること又は土石の堆積場

3 ベルトコンベア及びバケットコンベア(鉱物、土 ベルトの幅が75cm以上であるか、又石又はセメントの用に供するものに限り、密閉 はバケットの内容積が0.03m3以上で式のものを除く) あること

4 破砕機及び摩砕機(鉱物、岩石又はセメントの 原動機の定格出力が75kW以上である用に供するものに限り、湿式のもの及び密閉式 ことのものを除く)

5 ふるい(鉱物、岩石又はセメントの用に供するも 原動機の定格出力が15kW以上であるのに限り、湿式のもの及び密閉式のものを除く) こと

■表3.1-2 一般粉じん発生施設

(大気汚染防止法施行令第3条別表第2)

大気汚染原因物質で、ばい煙、特定粉じん以外のものを「有害大気汚染物質」といい、このうち政令で定める下記の3物質(注1)(「指定物質」という)a.ベンゼンb.トリクロロエチレンc.テトラクロロエチレンを大気中に排出し、飛散させる施設で政令で定めるものをいう。

34

(注1)ダイオキシン類は、「ダイオキシン類対策特別措置法」(2001.1.15施行)で規制されている。

3.1

1 アンモニア 11 アクロレイン 21 二酸化セレン

2 ふっ化水素 12 二酸化硫黄 22 クロルスルホン酸

3 シアン化水素 13 塩素 23 黄りん

4 一酸化炭素 14 二硫化炭素 24 三塩化りん

5 ホルムアルデヒド 15 ベンゼン 25 臭素

6 メタノール 16 ピリジン 26 ニッケルカルボニル

7 硫化水素 17 フェノール 27 五塩化りん

8 りん化水素 18 硫酸(三酸化硫黄含む) 28 メルカプタン

9 塩化水素 19 ふっ化けい素

10 二酸化窒素 20 ホスゲン

■表3.1-4 特定物質

(大気汚染防止法施行令第10条)

1 ベンゼン(濃度が体積百分率60%以上のものに限る。以下同じ)を蒸発させるための乾燥施設であって、送風機の送風能力が1時間当たり、1,000m3以上のもの

2 原料の処理能力が1日当たり、20 t以上のコークス炉

3 ベンゼンの回収の用に供する脱アルキル反応施設(密閉式のものを除く)

4 ベンゼンの製造の用に供する脱アルキル反応施設(密閉式のものを除く)

5 ベンゼンの貯蔵タンクであって、容量が500kL以上のもの

6 ベンゼンを原料として使用する反応施設であって、ベンゼンの処理能力が1時間当たり、1t以上のもの(密閉式のものを除く)

7 トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン(以下「トリクロロエチレン等」という)。を蒸発させるための乾燥施設であって、送風機の送風能力が1時間当たり、1,000m3以上のもの

8 トリクロロエチレン等の混合施設であって、混合槽の容積が5kL以上のもの(密閉式のものを除く)

9 トリクロロエチレン等の精製又は回収の用に供する蒸留施設(密閉式のものを除く)

10 トリクロロエチレン等による洗浄施設(次に掲げるものを除く)であって、トリクロロエチレン等が空気に接する面の面積が3m2以上のもの

11 テトラクロロエチレンによるドライクリーニング機であって、処理能力が1回当たり、30kg以上のもの

■表3.1-5 指定物質排出施設

(大気汚染防止法施行令附則第4項別表第6)

9)自動車排出ガス

自動車排出ガスとは自動車の運行に伴って発生する以下の物質をいう。a.一酸化炭素b.炭化水素c.鉛化合物d.窒素酸化物e.粒子状物質

(2)排出基準規制基準の種類は下記のとおりである。

1)K値規制

硫黄酸化物対象地域の区分ごとに排出口の高さに応じて定める許容限度。

2)濃度規制

ばいじん、有害物質が対象。特定粉じん、指定物質、自動車排出ガスについても濃度規制がある。地域(施設集合地域)によって厳しい基準(特別排出基準)が定められている。a.上乗せ規制:自治体が地域の状況に応じて定める。b.総量規制:「指定ばい煙」(硫黄酸化物、窒素酸化物)を対象とし、特定工場に対して定める。新設設備に対しては、より厳しい特別総量規制基準を定めることができる。

c.設備基準:一般粉じんが対象。【構造・使用・管理基準】a.燃料使用基準:硫黄酸化物の指定地域において、期間を定めて、特定工場以外の事業場に適用。

b.指定物質抑制基準:指定物質の種類ごとに指定物質排出施設の排出、飛散の抑制基準を定める。

(3)届出○ばい煙又は粉じん発生施設を設置しようとするときは届出が必要。

35

大気汚染防止法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

q= K×10 -3 He2 (m3N/h)�

地域ごとに定める定数(小さいほど厳しい)�

硫黄酸化物� 補正された排出口の高さ(有効煙突高さ)�

○ばい煙発生施設を設置あるいは届出をした施設の構造等を変更しようとするときは、知事に届け出なければならない。○また、届出が受理された日から60日経過後でなければ設置又は構造の変更をしてはならない。○特定粉じん発生施設、一般粉じん発生施設についてもそれぞれ届出義務がある。

(4)改善命令排出基準に適合しないばい煙を継続して排出するおそれがあり、その排出により健康又は生活環境に被害が生ずる場合には、改善命令又は施設の一時使用停止命令が出される。

(5)測定ばい煙発生者には、ばい煙量又はばい煙濃度の測定・記録義務がある

(その規模により、常時、1回/2か月、2回/年等の頻度で測定し、記録を3年間保存)。

(6)事故時の措置ばい煙発生施設、特定施設について故障、破損、その他の事故が発生し、ばい煙、特定物質が大気中に多量に排出されたときは、直ちにその事故について応急措置・復旧措置をし、事故の状況を知事に通報しなければならない。

(7)緊急時の措置汚染物質の大気中濃度が政令で定めた基準に達し、知事から協力要請や命令のあった場合には、ばい煙の排出量を減少させなければならない。

(8)無過失責任工場又は事業場の事業活動に伴い、ばい煙、特定物質、粉じん等の大気中への排出、飛散により人の生命又は身体を害したときは、その損害を賠償しなければならない。

(9)直罰ばい煙発生施設の排出口から排出基準に適合しないばい煙が排出された場合は、6か月以下の懲役又は罰金に処せられる(過失による場合も罰せられる)。

36

3.1

(公布:昭和45年12月25日法律第138号)

工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制する。工場及び事業場から排出される汚水及び廃液に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定める。

(1)規制の対象1)特定施設

人の健康に被害を生ずるおそれがある物質(有害物質:カドミウム等26種類。表3.2-1参照)を含む汚水又は廃液を排出する施設あるいは生活環境に被害を生ずるおそれがある項目(水素イオン濃度等12項目:表3.2-2参

37

水質汚濁防止法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

3.2 水質汚濁防止法

■表3.2-1 有害物質(水質汚濁防止法施行令第2条)

■表3.2-2 生活環境に被害を生ずるおそれがある項目

(水質汚濁防止法施行令第3条)

(注)*1 湖沼植物プランクトン又は海洋植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある場合として環境省令で定める場合におけるものに限る。

1 カドミウム及びその化合物2 シアン化合物3 有機りん化合物(パラチオン、メチルパラ

チオン、メチルジメトン及びEPNに限る)4 鉛及びその化合物5 六価クロム化合物6 ひ素及びその化合物7 水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物8 ポリ塩化ビフェニル9 トリクロロエチレン10 テトラクロロエチレン11 ジクロロメタン12 四塩化炭素13 1,2-ジクロロエタン

14 1,1-ジクロロエチレン15 シス-1,2-ジクロロエチレン16 1,1,1-トリクロロエタン17 1,1,2-トリクロロエタン18 1,3-ジクロロプロペン19 チウラム20 シマジン21 チオベンカルブ22 ベンゼン23 セレン及びその化合物24 ほう素及びその化合物25 ふっ素及びその化合物26 アンモニア、アンモニウム化合物、

亜硝酸化合物及び硝酸化合物

1 水素イオン濃度(pH)2 生物化学的酸素要求量(BOD)及び化学的酸素要求量(COD)3 浮遊物質量(SS)4 ノルマルヘキサン抽出物質含有量5 フェノール類含有量6 銅含有量

7 亜鉛含有量8 溶解性鉄含有量9 溶解性マンガン含有量10 クロム含有量11 大腸菌群数12 窒素又はりんの含有量*1

照)に関する汚水又は廃液を排出する施設で政令で定めるもの74種類。特定施設を設置する工場又は事業場を「特定事業場」という。図3.2-1に示す条件を満たす場合にのみ特定事業場としての法の適用を受ける。

2)指定地域内特定施設

総量規制(注1)が課せられる指定地域(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海へ排出する地域)に設置される特定施設(201人以上500人以下のし尿浄化槽が指定されている)。なお、し尿浄化槽については、別に「浄化槽法」によって、点検基準等が定められているので注意を要する。

3)指定地域内事業場

指定地域内にあって平均排出水量50m3/日以上の特定事業場。

4)有害物質使用特定施設

○有害物質を製造、使用、又は処理する施設。○この施設を設置する事業場(有害物質使用特定事業場)から地下に浸透する水で有害物質使用特定施設に係る汚水等を含むものを特定地下浸透水という。

5)貯油施設

○原油、重油、軽油、灯油、潤滑油、動植物油等を貯蔵する施設及びこれらの油を含む水を処理する油水分離施設。○直接的に排水を公共用水域に排出しなくても、貯油施設を設置している場合は、水質汚濁防止法の適用を受け、事故時の措置(応急対策と報告)義務が課せられる。

38

(注1)総量規制:濃度規制では、排出側が規制基準を守っても汚濁物質量が減少するわけではありません。総量規制は、許容される汚濁物質の総量を算定し、それを排出側に許容限度として割り当てる規制方式です。東京湾などの閉鎖性水域では、総量を抑制しないと、りん、窒素による富栄養化が進み、赤潮などの被害が発生します。

3.2

事業場�事業場�

特定施設を�設置�

公共用水域�

●有害物質を含む水を排出する施設�●生活環境を汚染する水を排出する施設�●貯油施設�

●有害物質を地下に浸透させる事業場�

政令で定められた施設�

■図3.2-1 特定事業場としての条件

(2)規制基準a.規制基準には、一律濃度基準、自治体による上乗せ濃度基準、指定地域内事業場に課せられるCOD(化学的酸素要求量)、窒素・りんの総量規制等がある。全国一律基準を表3.2-3(有害物質)及び表3.2-4(生活環境項目)に示す。

b.特定地下浸透水については、有害物質を含む(検出される)場合は、地下への浸透は禁止される。

39

COD : Chem ica lOxygen Demand

水質汚濁防止法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

有害物質の種類 基準値

1 カドミウム及びその化合物 0.1

2 シアン化合物 1

3 有機りん化合物(パラチオン、メチルパラチ 1

オン、メチルジメトン及びEPNに限る)

4 鉛及びその化合物 0.1

5 六価クロム化合物 0.5

6 ひ素及びその化合物 0.1

7 水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物 0.005

アルキル水銀化合物 検出されないこと

8 ポリ塩化ビフェニル 0.003

9 トリクロロエチレン 0.3

10 テトラクロロエチレン 0.1

11 ジクロロメタン 0.2

12 四塩化炭素 0.02

13 1,2-ジクロロエタン 0.04

14 1,1-ジクロロエチレン 0.2

15 シス-1,2-ジクロロエチレン 0.4

16 1,1,1-トリクロロエタン 3

17 1,1,2-トリクロロエタン 0.06

18 1,3-ジクロロプロペン 0.02

19 チウラム 0.06

20 シマジン 0.03

21 チオベンカルブ 0.2

22 ベンゼン 0.1

23 セレン及びその化合物 0.1

24 ほう素及びその化合物(海域以外) 10

ほう素及びその化合物(海域) 230

25 ふっ素及びその化合物(海域以外) 8

ふっ素及びその化合物(海域) 15

26 アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化 アンモニア性窒素に0.4を乗じたもの、

合物及び硝酸化合物 亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計量

100

■表3.2-3 排水基準(有害物質)

(排水基準を定める省令第1条別表第1) (単位:mg/L)

(注)1.「検出されないこと」とは、検定結果が検定方法の定量下限値を下回ることをいう。2.ひ素及びその化合物についての排水基準は、温泉旅館業に属する事業場に係る排出水については、当分の間、適用しない。

c.下水道に放流する場合は、「下水道法」に従う。この場合は、後述の特定施設の設置、変更届、有害物質の排出規制などは、水質汚濁防止法と同様の規制を課せられるほか、測定義務などは水質汚濁防止法より厳しい義務を課せられる場合もあるので注意を要する。

(3)届出○特定施設(有害物質使用特定施設を含む)を設置あるいは届出をした施設の構造等を変更しようとするときは、知事に届け出なければなら

40

3.2

項   目 許容限度

1 水素イオン濃度(海域以外) 5.8以上8.6以下

水素イオン濃度(海域) 5.0以上9.0以下

2 BOD(mg/L) 160(日間平均120)

3 COD(mg/L) 160(日間平均120)

4 SS(mg/L) 200(日間平均150)

5 ノルマルヘキサン抽出物質量(鉱物油含有量)(mg/L) 5

6 ノルマルヘキサン抽出物質量(動植物油脂類含有量)(mg/L) 30

7 フェノール類含有量(mg/L) 5

8 銅含有量(mg/L) 3

9 亜鉛含有量(mg/L) 5

10 溶解性鉄含有量(mg/L) 10

11 溶解性マンガン含有量(mg/L) 10

12 クロム含有量(mg/L) 2

13 大腸菌群数 日間平均3,000

14 窒素含有量(mg/L) 120(日間平均60)

15 りん含有量(mg/L) 16(日間平均8)

■表3.2-4 排水基準(生活環境項目)

(排水基準を定める省令第1条別表第2)

(注)1.「日間平均」による許容限度は1日の排出水の平均的な汚染状態について定めたものである。

2.この排水基準は、1日当たりの平均的な排出水の量が50m3以上である工場又は事業場に係る排出水について適用する。

3.水素イオン濃度及び溶解性鉄含有量についての排水基準は、硫黄鉱業に属する工場又は事業場に係る排出水については適用しない。

4.水素イオン濃度、銅含有量、亜鉛含有量、溶解性鉄含有量、溶解性マンガン含有量及びクロム含有量についての排水基準は温泉旅館業に属する事業場に係る排出水については、当分の間、適用しない。

5.BODについての排水基準は、海域及び湖沼以外の公共用水域に排出される排出水に限って適用し、CODについての排水基準は海域及び湖沼に排出される排出水に限って適用する。

6.窒素含有量についての排水基準は、窒素が湖沼植物プランクトン及び海洋植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある場合として環境大臣が定める湖沼、海域及びこれらに流入する公共用水域に排出される排出水に限って適用する。

7.りん含有量についての排水基準は、窒素が湖沼植物プランクトン及び海洋植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある場合として環境大臣が定める湖沼、海域及びこれらに流入する公共用水域に排出される排出水に限って適用する。

ない。a.廃ガス洗浄施設b.酸又はアルカリによる表面処理施設c.電気めっき施設d.その他約74種(水質汚濁防止法施行令別表第1に規定)○また、届出が受理された日から60日経過後でなければ設置又は構造等の変更をしてはならない。○この場合、施設そのものを設置することは当然できないが、関連する基礎工事や関連工事も禁止されている。○60日以前に設置工事等への着手が必要な場合には、救済措置として、審査期間を短縮できることとなっており、監督官庁と協議すべきである。

(4)改善命令○排水基準不適合、又は特定地下浸透水を浸透させるおそれがあるときは、改善命令又は施設の使用停止命令が出される。

(5)測定、監視○排出水又は特定地下浸透水については、測定と記録(3年間保存)の義務がある。○排出水の水質測定については、特にその頻度は明記されてない。そのため、監督官庁の指導や汚濁物質の使用形態、排出の可能性等を勘案して自主的な設定が必要である。

(6)事故時の措置○有害物質又は貯油施設からの油を含む水が排出され、又は地下に浸透したことにより人の健康又は生活環境に被害を生ずるおそれがあるときは応急措置をし、知事に届け出なければならない。

(7)地下水の水質の浄化○特定事業場において、有害物質を含む水が地下へ浸透したことにより、人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがあるときは、知事は相当の期限を定めて地下水浄化措置を命令することができる。地下水の水質浄化に係る浄化基準を表3.2-5に示す。

41

水質汚濁防止法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

(8)無過失責任工場又は事業場の事業活動に伴い、汚水又は廃液に有害物質が含まれた状態で排出又は地下浸透したことにより、人の生命又は身体を害したときは、その損害を賠償しなければならない。

(9)直罰特定事業場から排水基準(「排水基準を定める総理府令」に定められている)に適合しない排出水が排出された場合は、6か月以下の懲役又は罰金に処せられる(過失による場合も罰せられる)。

42

3.2

有害物質の種類 基準値

1 カドミウム及びその化合物 0.01

2 シアン化合物 検出されないこと

3 有機りん化合物(パラチオン、メチルパラチオン、 検出されないことメチルジメトン及びEPNに限る)

4 鉛及びその化合物 0.01

5 六価クロム化合物 0.05

6 ひ素及びその化合物 0.01

7 水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物 0.0005

アルキル水銀化合物 検出されないこと

8 ポリ塩化ビフェニル 検出されないこと

9 トリクロロエチレン 0.03

10 テトラクロロエチレン 0.01

11 ジクロロメタン 0.02

12 四塩化炭素 0.002

13 1,2-ジクロロエタン 0.004

14 1,1-ジクロロエチレン 0.02

15 シス-1,2-ジクロロエチレン 0.04

16 1,1,1-トリクロロエタン 1

17 1,1,2-トリクロロエタン 0.006

18 1,3-ジクロロプロペン 0.002

19 チウラム 0.006

20 シマジン 0.003

21 チオベンカルブ 0.02

22 ベンゼン 0.01

23 セレン及びその化合物 0.01

24 ほう素及びその化合物 1

25 ふっ素及びその化合物 0.8

26 アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び 亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の硝酸化合物 合計量 10

■表3.2-5 地下水浄化基準(有害物質)(単位:mg/L)

(注)「検出されないこと」とは、検定結果が検定方法の定量下限値を下回ることをいう。

(公布:昭和46年6月1日法律第91号)

工場及び事業場から発生する悪臭についての排出口、敷地境界線及び排出水における特定悪臭物質の濃度規制、官能試験による臭気指数規制について定める。

(1)規制の対象排出規制の対象とするのは、表3.3-1に示す特定悪臭物質及び臭気指数

についてである。a.特定悪臭物質とは、不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質であって政令で指定するもの。現在、22物質が指定されている。

43

悪臭防止法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

3.3 悪臭防止法

1 アンモニア 1~5

2 メチルメルカプタン 0.002~0.01

3 硫化水素 0.02~0.2

4 硫化メチル 0.01~0.2

5 ニ硫化メチル 0.009~0.1

6 トリメチルアミン 0.005~0.7

7 アセトアルデヒド 0.05~0.5

8 プロピオンアルデヒド 0.05~0.5

9 ノルマルブチルアルデヒド 0.009~0.08

10 イソブチルアルデヒド 0.02~0.2

11 ノルマルバレルアルデヒド 0.009~0.05

12 イソバレルアルデヒド 0.003~0.01

13 イソブタノール 0.9~20

14 酢酸エチル 3~20

15 メチルイソブチルケトン 1~6

16 トルエン 10~60

17 スチレン 0.4~2

18 キシレン 1~5

19 プロピオン酸 0.03~0.2

20 ノルマル酪酸 0.001~0.006

21 ノルマル吉草酸 0.0009~0.004

22 イソ吉草酸 0.001~0.1

■表3.3-1 特定悪臭物質と濃度規制基準

(敷地境界線における濃度規制基準の範囲) (×10-6)

(注)濃度規制基準は「大気中における含有率」を示す。

b.法による特定悪臭物質ごとの濃度規制は、規制の範囲を定めており、具体的な規制値は指定地域を定める都道府県知事が定める。

c.臭気指数とは、人間の嗅覚によってにおいの程度を数値化したもの。d.人間の嗅覚に依存する官能試験は、複合的な臭気(単一物質ではなく複数の物質の臭気、物質が特定できない臭気)の測定に適しており、臭気判定士の免状の交付を受けた「臭気測定業務従事者」により実施される。

(2)規制地域都道府県知事は住民の生活環境を保全するため、悪臭を防止する必要があると認める地域を指定しなければならない。通常は、市街地を指定している。

(指定地域の例)「東京都悪臭防止法の規定に基づく悪臭の規制基準」(抜粋)(昭和48年6月1日告示第641号)規制地域:東京都の区域のうち特別区(注1)並びに大島町、八丈町、

利島村、新島本村、神津島村、三宅村、御蔵島村、青ケ島村及び小笠原村の区域を除く区域

規制基準:指定地域を3区域(第1種区域~第3種区域)に分け、おのおの規制基準を定めている。

(3)規制基準都道府県知事は規制地域における自然的・社会的条件を考慮して、特定悪臭物質又は臭気指数の規制基準を定める。規制基準は、a.敷地境界線b.気体排出口c.排出水について定める。

(4)改善勧告・改善命令市町村長は、事業場において規制基準に適合せず、住民の生活環境が損なわれていると認める場合、改善勧告・改善命令を行うことができる。

(5)事故時の措置規制地域内の事業場設置者は、悪臭を伴う事故の発生があった場合、直

44

(注1)特別区:東京都の下位組織である特別地方公共団体で千代田区等の23区を指す。

3.3

ちに市町村長に通報し、応急措置を講じる等の義務がある。また、市町村長は事故時の状況に応じ応急措置命令を発することができる。

(6)悪臭の測定a.市町村長は、規制地域における大気中の特定悪臭物質の濃度又は大気の臭気指数について必要な測定を行わなければならない。

b.市町村長は、臭気指数等に係る測定の業務を、一定の知識及び適性を有する臭気測定業務従事者等に委託できる。

45

悪臭防止法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

【正式名称:特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促

進に関する法律】

(公布:平成11年7月13日法律第86号)

PRTRは、「環境汚染物質排出・移動登録」とも呼ばれている。化学物質の環境への排出量や廃棄物に含まれて事業所外へ運び出される量(移動量)を毎年集計して、公表する制度である。日本のPRTRは、化学物質管理促進法(化学物質排出把握管理促進法又はPRTR法とも呼ばれる)に基づき、2002年度から実施されている。公表されたデータは、だれでも利用することができ、PRTRデータを通して化学物質に対する関心が高まっていけば、化学物質の利用の方法や管理のあり方が見直されて、化学物質の環境に対する影響が減っていくことが期待されている。

(1)規制の対象物質PRTRの対象物質は第1種指定化学物質(354種類)(脚注A)と呼ばれ、環境中に広く存在し、次のいずれかの有害性の条件に当てはまるものが政令で指定されている。a.人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれがあるものb.その物質自体は人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれがなくても、環境中に排出された後に有害な化学物質に容易に変化するもの

c.オゾン層を破壊するおそれのあるもの第1種指定化学物質は、PRTRの規制対象物質であり、化学物質管理促進法では、化学物質安全性データシート(MSDS)(脚注B)の対象にもなっている。人や生態系への有害性があり、環境中に広く存在すると認められる物質として、354種類の化学物質が政令で指定されている。このうち、発がん性クラス1に該当する物質(12物質)は、特定第1種指定化学物質と呼ばれ、届出対象となる要件が厳しくなっている。MSDSには、化学物質の性状や取り扱い上の注意事項などの情報が記載

46

PRTR: Pol lutantRelease and TransferRegister

MSDS : Mater ia lSafety Data Sheet、化学物質等安全データシートともいう。

3.4

3.4 化学物質管理促進法(PRTR法)

(脚注A)第1種指定物質については、化学物質管理促進法施行令別表第1又は環境省ホームページの下記

アドレスを参照のこと。http://www.env.go.jp/chemi/prtr/list01.pdf

(脚注B)MSDSの一例として石油化学工業協会のホームページの下記アドレスを参照のこと。

http://www.jpca.or.jp/61_f.htm

されており、化学物質を適正に管理するための情報をここから得ることができる。対象化学物質を含有する製品を事業者間で取引するときは、MSDSの提供が義務づけられている。第2種指定化学物質(脚注A)は、MSDS交付の対象物質であり、81種類の化学物質が政令で指定されているが、PRTRの規制対象物質ではない。第1種指定化学物質と同じ有害性の条件に当てはまるが、環境中に存在する量が第1種指定化学物質に比べて少なく、排出量等を届け出る必要のない物質である。

(2)規制基準a.化学物質管理促進法では、一定規模以上の指定化学物質を取り扱う事業者は、年度ごとに対象化学物質の環境への排出量と廃棄物として事業場外に移動した量を把握し、都道府県知事を経由して、おのおのの業種により定められた主務大臣(製造業の場合は、経済産業大臣)に届け出なくてはならない。

b.届け出た排出量、移動量のデータは、国(環境省及び経済産業省)が集計し、非対象事業場、移動体(自動車、船舶、航空機等)及び一般家庭からの排出量を推計したものとともに情報公開を行う。

c.情報開示は、全国レベルから都道府県、事業所単位レベルまで実施される。

(3)規制内容(事業者の責務)指定化学物質を製造、使用、取り扱う事業者を「指定化学物質等取扱事

業者」という。当該事業者のうち、表3.4-1に示す要件に該当する事業者を「第1種指定化学物質等取扱事業者」と呼び、排出量、移動量の届出義務が課せられる。指定化学物質を含有する製品を使用したり、取り扱ったりする事業者も

「指定化学物質等取扱事業者」として法の適用を受ける。該当製品を販売するなど譲渡に際してMSDSを製品の譲渡先に提供するなどの義務が課せられる。製品に係る法適用の条件は、表3.4-2に示すように事業用に限定され、

一般消費者用製品は除外され、指定化学物質を一定以上含有し、かつ、環境中に排出(蒸発、拡散、飛散等)される可能性のあるものに限定される。図3.4-1に、法に定めるPRTR制度(化学物質排出量の把握等の措置)

47

化学物質管理促進法(PRTR法)Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

(脚注A)第2種指定化学物質は、化学物質管理促進法施行令別表第2、又は環境省ホームページの下記ア

ドレスを参照のこと。http://www.env.go.jp/chemi/prtr/list02.pdf

48

3.4

■表3.4-1 化学物質管理促進法対象事業者の要件

指定化学物質の ①物質の製造 ③物質の生成・排出使用条件 ②物質の使用・取り扱い ④物質含有製品の使用・取り扱い

業種 ①金属鉱業 ⑬燃料小売業(令第3条) ②原油及び天然ガス鉱業 ⑭洗濯業

③製造業 ⑮写真業④電気業 ⑯自動車整備業⑤ガス業 ⑰機械修理業⑥熱供給業 ⑱商品検査業⑦下水道業 ⑲計量証明業⑧鉄道業 ⑳一般廃棄物処理業⑨倉庫業(気体、液体貯蔵) 産業廃棄物処理業⑩石油卸売業 高等教育機関⑪鉄スクラップ卸売業 自然科学研究所⑫自動車卸売業

合計23業種

従業員数(令第4条) 常時使用する従業員数:21名以上

特定第1種指定化学物質 0.5t以上(年間取扱量)

第1種指定化学物質 1t以上(年間取扱量)

法の対象となる施設 ①鉱山保安法:建築物、工作物等②下水道終末処理施設③一般廃棄物処理施設④産業廃棄物処理施設⑤廃棄物焼却炉

取扱物質取扱量等

(令第4条)

■表3.4-2 化学物質管理促進法の製品に係る条件

該当区 分 含有量 形状及び取り扱い条件 製品の例

非該当

製品 非該当

非該当

非該当

該当

再生 非該当資源

廃棄物 非該当

天然物 非該当

(1)特定第1種指定化学物質を0.1%以上含有

(2)第1種指定化学物質を1%以上含有

(3)第2種指定化学物質を1%以上含有

取り扱い過程で溶解などにより固体以外にならず、かつ、粉状又は粒状にならないもの

指定化学物質が密閉された状態で取り扱われるもの

一般消費者向け生活用製品

上記以外のもの①気体又は液体のもの②固体のもので固有の形状を有しないもの(粉状のものなど)

③固体のうち固有の形状を有するもので取り扱いの過程で溶融、蒸発又は溶解するもの

④精製や切断等の加工に伴い環境中に排出される可能性があるもの

タンク、組み立て部品、管、板など

バッテリー、コンデンサーなど

殺虫剤、防虫剤、洗剤など

化学薬品、燃料、塗料、はんだ、高圧ガス、インゴットなど

空缶、廃油、金属くずなど

汚泥、焼却灰、建築廃材など

未精製の鉱石など

の仕組みを示す。該当事業者は、まず自社での化学物質の使用実態を調査するとともに、該当化学物質の取扱量の定義及び排出量・移動量の算出方法に関する法に規定されている内容を確認する(表3.4-3、表3.4-4)。取扱量・排出量・移動量ともに事業者の全体量ではなく、事業所ごとの量である。算定年度とは、毎年4月1日から翌年3月31日までをいう。

49

化学物質管理促進法(PRTR法)Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

化学物質管理指針の策定・公表��事業者は指針に留意しつつ、化学物質の排出・管理状況等に係る情報提供を行い、国民の理解の増進を図る。�

国�

国�

国�

対象化学物質の製造事業者等�(業種、規模を指定) 政令�

営業秘密情報は業所管大臣に�直接届出�

届出対象以外の�排出量�(家庭、農地等)�

環境への排出量と移動量を集計し、公表�

国� 環境モニタリング、健康影響等に関する調査�

国民�

個別事業所データの開示請求� 国� 個別事業所データの開示�

対象化学物質�

対象事業者�

都道府県知事(経由)�

環境への排出量・移動量を届出�

都道府県知事�

国の調査へ�の意見�

有害性があり、相当広範な地域の環境中に継続的に存在する物質を指定 政令 �

人の健康に係る被害等が未然に防止されるよう十分配慮�

あらかじめ、それぞれの審議会の意見を聴く。�

営業秘密の届出事項について業所管大臣への説明要�

中央環境審議会(環境省)�生活環境審議会(厚生労働省)�化学品審議会(経済産業省)�

意見を付すことも可�

①事業者からの届出を経由�②国から通知されたデータを活用し、地域ニーズに応じた集計・公表�

③国が行う調査への意見�④事業者への技術的助言�⑤広報活動等を通じた国民の理解増進の支援�

⑥④・⑤のための人材育成�

地方公共団体�

事業者による管理の改善を促進、環境の保全上の支障を未然に防止�

PRTR:Pollutant Release and Transfer Register(環境汚染物質排出移動登録)�

集計データとともに個別事業所データを通知�

国� 届出データをファイル化�

■図3.4-1 化学物質排出量の把握等における措置(PRTR)の実施手順

化学物質管理促進法第5条第1項に第1種指定化学物質の排出量及び移動量の把握に関する事項が定められており、具体的な把握すべき項目については同法施行規則第4条に規定されている(表3.4-5)。把握した排出量、移動量は、表3.4-6に示す方法を用いて毎年6月30日までに前年度の把握結果を都道府県知事を経由して主務大臣に届け出る。

50

3.4

■表3.4-3 取扱量等に関する定義

区 分 定 義

(1)取扱量 算定年度1年間に事業所の敷地において「製造」「使用」もしくは「その他の取り扱い」をした第1種指定化学物質の量【算出式】取扱量=年間購入量(又は年間搬入量)+年間製造量

+年度始め在庫量-年度末在庫量

(2)年間購入量 算定年度1年間に「使用」もしくは「その他の取り扱い」を目的として(年間搬入量) 事業所において購入、もしくは搬入した第1種指定化学物質の量

(3)年間製造量 算定年度1年間に事業所において「製造」した第1種指定化学物質の量

(4)年度始め在庫量 算定年度始めに事業所内に在庫として存在した第1種指定化学物質の量

(5)年度末在庫量 算定年度末に事業所内に在庫として存在した第1種指定化学物質の量

(6)排出量 算定年度1年間に事業所の敷地から「大気」「公共用水域」「土壌」に直接排出した第1種指定化学物質の量事業所内で埋立処分した第1種指定化学物質の量も含める

(7)移動量 算定年度1年間に事業所から産業廃棄物処理業者に中間処理、又は最終埋立処分を委託し、所外に持ち出した廃棄物に含まれる第1種指定化学物質の量事業所から公共下水道へ排出した排出水に含まれる第1種指定化学物質の量

算出方法 内 容

(1)物質収支 取扱量の合計と事業所内での消費量(取り扱いに伴い消失した量及び生産製品に含有され所外に持ち出された量)との差により算出する。【算出式】排出量=取扱量-消費量

(2)実測値 排出物などに含まれる量や濃度の測定値に基づき算出する。【算出式】排出量・移動量=実測した排出媒体中の物質濃度×排出媒体の量

(3)排出係数 取扱量に、取扱量と排出量又は移動量の比である排出係数をかけて算出する。【算出式】排出量・移動量=取扱量×排出係数

(4)物性値 蒸気圧、溶解度などの物性値を用いた計算により算出する。【算出式】排出量・移動量=物性値を用いて計算した排出媒体中の物質濃度×排出媒体の量

(5)その他 1~4のほか、経験値などにより的確に算出可能と認められる方法

■表3.4-4 排出量及び移動量の算出方法

化学物質管理促進法施行規則第2条の1~5、第3条の1~5に定める算出方法

(4)情報公開○当該事業所から届出された排出量、移動量のデータは国が年度ごとに集計し、公表する。○届出事項の開示に当たっては、法に定められた所定の手続きが必要で、法第10条及び第11条に規定されている。○開示請求があった場合には、集計結果は、書面又は磁気ディスク交付により開示される。

51

化学物質管理促進法(PRTR法)Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

排出量a.大気への排出b.公共用水域への排出(下水道への排出は除く)c.当該事業所における土壌への排出(埋立処分の量は除く)d.当該事業所における埋立処分

移動量a.下水道への移動b.当該事業所の外への移動(廃棄物委託処理が該当し、有価物として売却したものは対象外)

■表3.4-5 排出量及び移動量

届出方法 具体的内容・手順

(1)書面による届出 「届出書」(施行規則様式第1)に必要事項を記入して、都道府県知事に提出する。

(2)電子情報処理組 ①「電子情報処理組織使用届出書」(施行規則様式第4)に必要事項を織を使用した届 入して、都道府県知事に届け出る。出 ② 都道府県知事より識別番号(ユーザー ID)及び暗証番号(パスワ

ード)、アクセスポイントの電話番号が通知される。③ ユーザー ID及びパスワードを用いてモデム付パソコンからダイヤルアップによりアクセスポイントに接続し、「届出書/ファイル作支援プログラム」をダウンロードする。

④「届出書/ファイル作成支援プログラム」を使用して、届出ファイルを作成する。

⑤ ユーザー ID及びパスワードを用いてダイヤルアップによりアクセスポイントに接続し、「届出ファイル」を送信する。

(3)磁気ディスクに ① 指定電子計算機(環境省又は経済産業省が指定するホームページ)よる届出 より届出様式電子ファイルをダウンロードし、ファイル内に届出事

項を入力し磁気ディスクに保存する。②「磁気ディスク提出票」(施行規則様式第7)に必要事項を記載する。③ 磁気ディスクと「磁気ディスク提出票」を都道府県知事に提出する。

■表3.4-6 届出方法

(化学物質管理促進法施行令第9条、同法施行規則第5条、第11条~第14条)

(公布:平成14年5月29日法律第53号)

従来、農用地のみに規制対象を限定していた土壌汚染に係る規制を市街地にも適用するため制定。特定有害物質による直接暴露に伴う健康被害を防止するための措置内容の具体化と、特定施設廃止時の自主汚染調査、報告、情報開示の枠組みを制定。土壌汚染対策法の概要を図3.5-1に示す。

52

3.5

3.5 土壌汚染対策法

○目的(法第1条): 土壌汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定め� ること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護する。�○対象物質(特定有害物質)(法第2条):�    ①汚染された土壌の直接摂取による健康影響�      ―表層土壌中に高濃度の状態で長期間蓄積し得ると考えられる重金属等�    ②地下水等の汚染を経由して生ずる健康影響�      ―地下水等の摂取の観点から設定されている土壌環境基準の溶出基準項目�

土壌汚染状況�

調査�

・有害物質使用特定施設の使用の廃止時(法第3条)�・土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県等が認めるとき(法第4条)�

【汚染の除去等の措置】�・指定区域の土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると認めるときは、都道府県等が汚染原因者(汚染原因者が不明等の場合は土地所有者等)に対し、汚染の除去等の措置の実施を命令(法第7条)�

<直接摂取によるリスク>� ○立入禁止、○舗装、○盛土、○土壌入れ替え、土壌汚染の除去(浄化)�<地下水等の摂取によるリスク>� ○地下水の水質の測定� ○不溶化� ○封じ込め(原位置、遮水工、遮断工)� ○土壌汚染の除去(浄化)�・土地の所有者等が汚染の除去等の措置を講じた場合、汚染原因者に対して措置に要した費用を請求することができる(法第8条)�

【土地の形質の変更の制限】(法第9条)�・指定区域において土地の形質変更をしようとする者は、都道府県等に計画を届出�

・適切でない場合は、都道府県等が計画の変更を命令�

土壌汚染の除去が行われた場合には、指定区域の指定を解除・公示(法第5条)�

※土壌汚染対策の円滑な推進を図るため、汚染の除去等の措置の費用を助成し、助言、普及啓発等を行う指定支援法人を指定し、基金を設置(法第20条~第22条)。�

    土地所有者等(所有者、管理者又は占有者)�調査・報告 ※指定調査期間(環境大臣が指定)が調査�

土壌の汚染状態が指定基準に適合  する [非指定区域]�

しない�

指定及び公示�(台帳に記載)�

指定区域�

指定区域の管理�

 都道府県が指定・公示する(法第5条)とともに、指定区域台帳に記載して公衆に閲覧(法第6条)�

○仕組み�

■図3.5-1 土壌汚染対策法の概要

(1)規制対象【法の適用を受ける汚染に係る土地】a.使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地

b.土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがある土地

(2)対象物質法の対象となる特定有害物質は、それが土壌に含まれることに起因して人

の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものであって、次のa.b.がある。a.特定有害物質が含まれる汚染土壌を直接摂取することによるリスク(直接摂取によるリスク)

b.特定有害物質が含まれる汚染土壌からの特定有害物質の溶出に起因する汚染地下水等の摂取によるリスク(地下水等の摂取によるリスク)

地下水などの摂取の観点から定められた土壌の汚染に係る環境基準における溶出基準項目を対象物質とし、そのうち、人が摂取する可能性のある表層土壌中に高濃度の状態で蓄積し得ると考えられる重金属などを対象物質としている。

(3)基準これらの物質によって汚染されている区域を指定する基準(指定基準;

法第5条)は、直接摂取によるリスクに係る基準が「土壌含有量基準」、地下水などの摂取によるリスクに係る基準が「土壌溶出量基準」として次のように定められている(表3.5-1~表3.5-3)。

53

土壌汚染対策法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

(参考)土壌環境基準(検液1Lにつき)(銅を除く)

四塩化炭素 0.002mg以下 0.002mg以下

1,2-ジクロロエタン 0.004mg以下 0.004mg以下

1,1-ジクロロエチレン 0.02mg以下 0.02mg以下

シス-1,2-ジクロロエチレン 0.04mg以下 0.04mg以下

1,3-ジクロロプロペン 0.002mg以下 0.002mg以下

ジクロロメタン 0.02mg以下 0.02mg以下

テトラクロロエチレン 0.01mg以下 0.01mg以下

1,1,1-トリクロロエタン 1mg以下 1mg以下

1,1,2-トリクロロエタン 0.006mg以下 0.006mg以下

トリクロロエチレン 0.03mg以下 0.03mg以下

ベンゼン 0.01mg以下 0.01mg以下

■表3.5-1 特定有害物質の土壌基準(第1種特定有害物質)

特定有害物質(法第2条)

指定基準(法第5条)

土壌含有量基準 土壌溶出量基準(検液1Lにつき)

揮発性有機化合物(第1種特定有害物質)

(4)土壌汚染調査、汚染区域の指定、台帳の調製土壌汚染の状況を把握するため、汚染の可能性のある土地について、一定の契機をとらえて調査を行う。a.使用が廃止された有害物質使用特定施設(注1)に係る工場又は事業場の敷地であった土地の所有者等は、当該土地の土壌汚染の状況について、環境大臣が指定する者(指定調査機関)に調査させて、その結果を都道府県知事に報告しなければならない(土地利用の方法からみて人の健康被害が生ずるおそれがない旨の都道府県知事の確認を受けたときを除く)。

b.都道府県知事は、土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがある土地があると認めるときは、当該土地の土壌汚染の状況について、当該土地の所有者等に対し、指定調査機関に調査させて、その結果を報告すべきことを命ずることができる。

54

(注1)有害物質使用特定施設:有害物質の製造、使用又は処理をする水質汚濁防止法の特定施設

3.5

(参考)土壌環境基準

(検液1Lにつき)(銅を除く)

カドミウム及びその化合物 150mg以下 0.01mg以下 0.01mg以下六価クロム化合物 250mg以下 0.05mg以下 0.05mg以下シアン化合物 50mg以下 検液中に検出され 検液中に検出され

(遊離シアンとして) ないこと ないこと水銀及びその化合物 15mg以下 0.0005mg以下 0.0005mg以下アルキル水銀化合物 15mg以下 検液中に検出され 検液中に検出され

ないこと ないことセレン及びその化合物 150mg以下 0.01mg以下 0.01mg以下鉛及びその化合物 150mg以下 0.01mg以下 0.01mg以下ひ素及びその化合物 150mg以下 0.01mg以下 0.01mg以下ふっ素及びその化合物 4000mg以下 0.8mg以下 0.8mg以下ほう素及びその化合物 4000mg以下 1mg以下 1mg以下

■表3.5-2 特定有害物質の土壌基準(第2種特定有害物質)

特定有害物質(法第2条)

指定基準(法第5条)

土壌含有量基準 土壌溶出量基準(土壌1kgにつき) (検液1Lにつき)

重金属等(第2種特定有害物質)

(参考)土壌環境基準(検液1Lにつき)(銅を除く)

四塩化炭素 0.002mg以下 0.002mg以下シマジン 0.003mg以下 0.003mg以下チウラム 0.006mg以下 0.006mg以下チオベンカルブ 0.02mg以下 0.02mg以下PCB 検液中に検出されないこと 検液中に検出されないこと有機りん化合物 検液中に検出されないこと 検液中に検出されないこと

■表3.5-3 特定有害物質の土壌基準(第3種特定有害物質)

特定有害物質(法第2条)

指定基準(法第5条)

土壌含有量 土壌溶出量基準基準 (検液1Lにつき)

農薬等(第3種特定

有害物質)

都道府県知事は、土壌の汚染状態が基準に適合しない土地については、その区域を指定区域として指定・公示するとともに、指定区域の台帳を調製し、閲覧に供する。

(5)土壌汚染による健康被害の防止措置1)汚染の除去等の措置命令

a.都道府県知事は、指定区域内の土地の土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがあると認めるときは、当該土地の所有者等に対し、汚染の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。

b.汚染原因者が明らかな場合であって、汚染原因者に措置を講じさせることにつき土地の所有者等に異議がないときは、a.によらず、都道府県知事は、汚染原因者に対し、汚染の除去等の措置(注1)を講ずべきことを命ずることができる。

2)汚染の除去等の措置に要した費用の請求

上記a.の命令を受けて土地の所有者等が汚染の除去等の措置を講じたときは、汚染原因者に対し、これに要した費用を請求することができる。

3)土地の形質変更の届出及び計画変更命令

指定区域内において土地の形質変更をしようとする者は、都道府県知事に届け出なければならない。都道府県知事は、その施工方法が基準に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、施工方法に関する計画の変更を命ずることができる。

4)指定調査機関

土壌汚染状況調査の信頼性を確保するため、技術的能力を有する調査事業者をその申請により環境大臣が指定調査機関として指定する。

5)指定支援法人

土壌汚染対策の円滑な推進を図るため、汚染の除去等の措置を講ずる者に対する助成、土壌汚染状況調査等についての助言、普及啓発等の業務を行う指定支援法人に関し、基金の設置等の必要な事項を定める。都道府県等は土壌汚染に関する情報を積極的に開示している。土壌汚染対策法の施行前でも条例等に基づき企業からの申告があった場合には、汚染地域に関する情報を開示してきた。土壌汚染に関する情報開示(東京都ホームページ)の照会先:http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/chem/dojyo-chikasui.htm#hou

55

(注1)汚染の除去等の措置:立入制限・覆土・舗装(直接摂取の場合)、汚染土壌の封じ込め、浄化等

土壌汚染対策法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

【正式名称:特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関

する法律】

(公布:平成13年6月22日法律第64号)

我が国においては、「オゾン層保護法(昭和63年法律第53号)」に基づき、オゾン層破壊物質の生産量及び消費量が削減されており、現在、クロロフルオロカーボン(CFC)をはじめ、主要なオゾン層破壊物質は、生産が全廃されている。このため、我が国においては、現在、業務用冷凍空調機器、カーエアコン等に冷媒として使用されているフロンが、機器の廃棄に伴って大気中に放出されないようにすることが大きな課題となっている。本法律制定の狙いは、事業者(ユーザー)、フロン類回収業者、フロン類破壊業者などがそれぞれの役割分担の下、適切にフロンの回収・破壊処理を進めていくことである(図3.6-1)。なお、業務用冷凍空調機器のフロン回収等については2002年4月1日から、カーエアコンのフロン回収等については2002年10月1日から施行された。

(1)規制対象規制対象となるフロン類はクロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロ

クロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)の3種類のフロンである。対象となるフロン類については「オゾン層保護法」及び「地球温暖化対策推進法」(平成10年法律第117号)に規定されている(表3.6-1)。また、直接規制の対象となる当該フロン類が充填されている特定製品を表3.6-2に示す。

(2)事業者等の責務a.フロン類が充填されている特定製品を廃棄しようとする者(第1種特定製品廃棄者)は、適正な回収・破壊のためにフロン回収業者への引き渡しの義務づけがあり、回収・破壊に要した費用は特定製品廃棄者が負担することになっている。

b.フロン類の放出の禁止:何人も、みだりに特定製品からフロン類を放出してはならないとしており、違反に対しては罰則が適用される。

56

3.6

3.6 フロン回収破壊法

57

フロン回収破壊法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

業務用冷凍空調機器�

第1種特定製品廃棄者�

第2種特定製品廃棄者�

第2種特定製品引取業者�

第2種フロン類回収業者�

自動車製造業者等/(指定義務者)�

自動車ユーザー�

第1種フロン類回収業者�

フロン類� フロン類�

費用請求� 費用請求�

処理費用�(回収・運搬・破壊費用)�

破壊費用�

[2002年4月1日 本格施行]� 登録� 回収量等報告�

都道府県知事� 主務大臣�

者�

登録� 登録※� 回収量等報告�

回収量等�通知� 許可�

破壊量等�報告�

自動車(カーエアコン)�

自動車フロン�類管理書�

自動車フロン�類管理書�

※自動車分解整備事業者については、国土交通大臣の通知に基づき登録�

フロン類� フロン類�

費用請求�

費用請求� 費用請求�

破壊費用�

処理費用(回収・運搬・破壊費用)�

回収・運搬費用�

[2002年10月1日施行]�

カーエアコン�使用済�自動車�

カーエアコン�使用済�自動車�

◆自動車リサイクルに係る法制度において、カーエアコンからのフロン回収を定める際には、原則として上記の仕組みを規定する。�

対象:冷媒用CFC、HCFC、HFC

■図3.6-1 フロン回収破壊法のシステム

58

3.6

対象法律 フロン類

オゾン層保護法 第2条第1項 モントリオール議定書附属書A~C、(昭和63年法律第53号) Eに規定するフロン類等

合計90種類

地球温暖化対策推進法 第2条第3項第4号 ハイドロフルオロカーボンのうち政(平成10年法律第117号) 令で定めるもの

合計13種類

■表3.6-1 フロン類

第1種特定製品 ①エアコンディショナー②冷蔵機器及び冷凍機器(冷蔵又は冷凍機能を有する自動販売機を含む)

第2種特定製品 自動車用エアコンディショナー「自動車リサイクル法」(平成14年法律第87号)に規定する特定エアコンディショナーをいう。ただし、以下の自動車を除く。①被けん引車②二輪車③大型特殊自動車及び小型特殊自動車

■表3.6-2 フロン類を使用した特定製品

(公布:平成11年7月16日法律第105号)

近年、廃棄物焼却施設等から排出されるダイオキシン類による汚染が全国的に大きな問題となっている。現在、ダイオキシン類対策は、1999年3月にダイオキシン類対策関係閣僚会議により策定されたダイオキシン対策推進基本指針と、1999年7月に議員立法により成立したダイオキシン類対策特別措置法の二つの柱をもとに進められている。以下に2000年9月に策定された国のダイオキシン類削減計画(抜粋)を

示す。

59

ダイオキシン類対策特別措置法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

3.7 ダイオキシン類対策特別措置法

【参考】我が国における事業活動に伴い排出されるダイオキシン類の量を削減するための計画

ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)第33条第1項の規定に基

づき、我が国における事業活動に伴い排出されるダイオキシン類の量を削減するため

の計画を次のとおり定めたので、同条第4項の規定により公表する。

我が国におけるダイオキシン類の事業分野別の推計排出量に関する削減目標量我が国におけるダイオキシン類の事業分野別の推計排出量に関する削減目標量は、

平成14年度末において事業分野別に、次のとおりとする。(中略)

削減目標量を達成するため事業者が講ずべき措置に関する事項

1.排出基準の遵守等(1)大気排出基準及び水質排出基準等の遵守事業者は、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号。以下「特別法」

という)第20条に規定するところにより、排出ガス又は排出水に含まれるダイオキシ

ン類の量が、大気基準適用施設にあっては排出ガスの排出口、水質基準対象施設にあ

っては、当該水質基準対象施設を設置している水質基準適用事業場の排水口において、

排出基準に適合しない排出ガス又は排出水を排出してはならない。また、特別法第10

条の総量規制基準が定められた場合には、これを遵守しなければならない。

(2)ダイオキシン類による環境の汚染の防止事業者は、特別法第4条に規定する責務にのっとり、ダイオキシン類の排出につながる

(1)規制対象ダイオキシン類対策特別措置法の規制対象となっている物質は、以下の3物質である。a.ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)b.ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)c.コプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)

(2)事業者の責務ダイオキシン類対策特別措置法は、事業者に対してダイオキシン類を発生させる施設の設置に関する規制及びその施設から発生するダイオキシン類についての厳しい規制基準を定めている。また、事業者の施設管理体制拡充の必要性から「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和46年6月10日法律第107号)を改正し、新たにダイオキシン類に係る公害防止統括者及び公害防止管理者の設置を

60

3.7

事故の発生の防止を含め、その事業活動に伴って発生するダイオキシン類による環境の

汚染の防止をするために必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する

ダイオキシン類による環境の汚染の防止等に関する施策に協力しなければならない。

(3)事故時の措置事業者は、特別法第23条に規定するところにより、ダイオキシン類が大気中又は公

共用水域に多量に排出されたときは、事故時の措置を的確に講じなければならない。

(4)ダイオキシン類による汚染の状況の測定事業者は、特別法第28条に規定するところにより、大気基準適用施設から排出される

排出ガス及び水質基準適用事業場から排出される排出水につき、ダイオキシン類による

汚染の状況について測定を行い、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。

(5)公害防止統括者等の選任事業者は、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和46年法律第

107号)の規定に基づき、ダイオキシン類発生施設について、公害防止統括者及び公

害防止管理者を選任しなければならない。選任された者はダイオキシン類発生施設の

使用の方法の監視等の職務を誠実に行わなければならない。

(6)その他適正な焼却施設を用いない野外焼却については、廃棄物の処理及び清掃に関する法

律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という)及び悪臭防止法(昭和46

年法律第91号)の規定により原則的に禁止されており、行ってはならない。

(以下省略)

義務づけた。

(3)特定施設ダイオキシン類を発生させる施設のうち一定規模以上のものを特定施設

として、その設置・構造などの変更に際しては、工事着工の60日前の事前届出制とした。特定施設は、ダイオキシン類を発生し、大気中に排出する施設とダイオキシン類を含む汚水又は廃液を排出するものに分類される。ダイオキシン類対策特別措置法施行令別表第1・別表第2に定める特定施設を表3.7-1、表3.7-2に示す。

(4)排出基準ダイオキシン類の排出ガス及び排出水に関する規制基準を表3.7-3に示す。

(5)設置者による測定特定施設の設置者は、1回/年以上、排出ガス又は排出水に含まれるダ

イオキシン類を測定し、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。都道府県知事は、報告を受けた測定結果を公表する。

(6)事故時の措置特定施設設置者は、事故等によりダイオキシン類が大気中又は公共用水

61

ダイオキシン類対策特別措置法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

大気関係特定施設

1 焼結鉱(銑鉄の製造の用に供するものに限る)の製造の用に供する焼結炉であって、原料の処理能力が1時間当たり1 t以上のもの

2 製鋼の用に供する電気炉(鋳鋼又は鍛鋼の製造の用に供するものを除く)であって、変圧器の定格容量が1,000kVA以上のもの

3 亜鉛の回収(製鋼の用に供する電気炉から発生するばいじんであって、集じん機により集められたものからの亜鉛の回収に限る)の用に供する焙焼炉、焼結炉、溶鉱炉、溶解炉及び乾燥炉であって、原料の処理能力が1時間当たり0.5 t以上のもの

4 アルミニウム合金の製造の用に供する焙焼炉、溶解炉及び乾燥炉であって、焙焼炉及び乾燥炉にあっては原料の処理能力が1時間当たり0.5 t以上のもの、溶解炉にあっては容量1 t以上のもの

5 廃棄物焼却炉であって、火床面積(廃棄物の焼却施設に二つ以上の廃棄物焼却炉が設置されている場合にあっては、それらの火床面積の合計)が0.5m2以上又は焼却能力(廃棄物の焼却施設に二つ以上の廃棄物焼却炉が設置されている場合にあっては、それらの焼却能力の合計)が1時間当たり50kg以上のもの

■表3.7-1 ダイオキシン類発生特定施設

(ダイオキシン類対策特別措置法施行令第1条別表第1)

62

3.7

水質関係特定施設

1 硫酸塩パルプ(クラフトパルプ)又は亜硫酸パルプ(サルファイトパルプ)の製造の用に供する塩素又は塩素化合物による漂白施設

2 カーバイド法アセチレンの製造の用に供するアセチレン洗浄施設

3 硫酸カリウムの製造の用に供する施設のうち、廃ガス洗浄施設

4 アルミナ繊維の製造の用に供する施設のうち、廃ガス洗浄施設

5 塩化ビニルモノマーの製造の用に供する二塩化エチレン洗浄施設

6 カプロラクタムの製造(塩化ニトロシルを使用するものに限る)の用に供する施設のうち、次に掲げるもの①硫酸濃縮施設②シクロヘキサン分離施設③廃ガス洗浄施設

7 クロロベンゼン又はジクロロベンゼンの製造の用に供する施設のうち、次に掲げるもの①水洗施設②廃ガス洗浄施設

8 8,18-ジクロロ-5,15-ジエチル-5,15-ジヒドロジインドロ[3,2-b :3',2'-m]トリフェノジオキサジン(別名ジオキサジンバイオレット。③において単に「ジオキサジンバイオレット」という)の製造の用に供する施設のうち、次に掲げるもの①ニトロ化誘導体分離施設及び還元誘導体分離施設②ニトロ化誘導体洗浄施設及び還元誘導体洗浄施設③ジオキサジンバイオレット洗浄施設④熱風乾燥施設

9 アルミニウム又はその合金の製造の用に供する焙焼炉、溶解炉又は乾燥炉から発生するガスを処理する施設のうち、次に掲げるもの①廃ガス洗浄施設②湿式集じん施設

10 亜鉛の回収(製鋼の用に供する電気炉から発生するばいじんであって、集じん機により集められたものからの亜鉛の回収に限る)の用に供する施設のうち、次に掲げるもの①精製施設②廃ガス洗浄施設③湿式集じん施設

11 別表第1第5号に掲げる廃棄物焼却炉から発生するガスを処理する施設のうち次に掲げるもの及び当該廃棄物焼却炉において生ずる灰の貯留施設であって汚水又は廃液を排出するもの①廃ガス洗浄施設②湿式集じん施設

12 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)第7条第12号の2及び第13号に掲げる施設

13 水道終末処理施設(第1号から前号まで及び次号に掲げる施設に係る汚水又は廃液を含む下水を処理するものに限る)

14 第1号から第12号までに掲げる施設を設置する工場又は事業場から排出される水(第1号から第12号までに掲げる施設に係る汚水若しくは廃液又は当該汚水若しくは廃液を処理したものを含むものに限り、公共用水域に排出されるものを除く)の処理施設(前号に掲げるものを除く)

■表3.7-2 ダイオキシン類発生特定施設

(ダイオキシン類対策特別措置法施行令第1条別表第2)

63

ダイオキシン類対策特別措置法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

■表3.7-3 ダイオキシン類の排出ガス及び排出水に関する規制

・硫酸塩パルプ(クラフトパルプ)又は亜硫酸パルプ(サルファイトパルプ)の製造の用に供する塩素又は塩素化合物による漂白施設��・カーバイド法アセチレンの製造の用に供するアセチレン洗浄施設�

・硫酸カリウムの製造の用に供する施設のうち、廃ガス洗浄施設�

・アルミナ繊維の製造の用に供する施設のうち、廃ガス洗浄施設�

・塩化ビニルモノマーの製造の用に供する二塩化エチレン洗浄施設*1)��・カプロラクタムの製造(塩化ニトロシルを使用するものに限る)の用に供する施設のうち、硫酸濃縮施設、シクロヘキサン分離施設及び廃ガス洗浄施設��

・クロロベンゼン又はジクロロベンゼンの製造の用に供する施設のうち、水洗施設及び廃ガス洗浄施設��・ジオキサジンバイオレットの製造の用に供する施設のうち、ニトロ化誘導体分離施設及び還元誘導体分離施設、ニトロ化誘導体洗浄施設及び還元誘導体洗浄施設、ジオキサジンバイオレット洗浄施設及び熱風乾燥施設��・アルミニウム又はその合金の製造の用に供する焙焼炉、溶解炉又は乾燥炉に係る廃ガス洗浄施設及び湿式集じん施設*1)��・亜鉛の回収(製鋼の用に供する電気炉から発生するばいじんであって、集じん機により集められたものからの亜鉛の回収に限る)の用に供する施設のうち、精製施設、廃ガス洗浄施設及び湿式集じん施設��・廃棄物焼却炉(火床面積0.5m2以上又は焼却能力50kg/h以上)に係る廃ガス洗浄施設、湿式集じん施設、汚水又は廃液を排出する灰の貯留施設*1)��・廃PCB等又はPCB処理物の分解施設及びPCB汚染物又はPCB処理物の洗浄施設��・下水道終末処理施設(水質基準対象施設に係る汚水又は廃液を含む下水を処理するものに限る)��・水質基準対象施設を設置する工事又は事業場から排出される水の処理施設�

(注)1.廃棄物の最終処分場の放流水に係る基準は、廃棄物処理法に基づく維持管理基準を定める命令により、10pg‐TEQ/L�

  2. *1の既設施設は、ダイオキシン類対策特別措置法の施行後3年間(2003年1月14日まで)は、暫定基準値(20pg‐TEQ/L及び50pg‐TEQ/L)が適用されていた。�

(1)排出ガス 特定施設及び排出基準値�

(2)排出水:特定施設及び排出基準値�

(単位:ng-TEQ/m3N)�

(単位:pg-TEQ/L)�

特定施設種類�

特定施設種類� 排出基準�

新設施設�基準�

施設規模�(焼却能力)�

廃棄物焼却炉(火床面積が0.5m2

以上、又は焼却能力が50kg/ h以上)�

製鋼用電気炉�

鉄鋼業焼結施設�

亜鉛回収施設�

アルミニウム合金製造施設�

0.1�

1�

5�

0.5�

0.1�

1�

1

4 t/h以上�

2~4 t/h�

2 t/h未満�

1�

5�

10�

5�

1�

10�

5

80

20�

2�

40�

20

既施設基準�

2001年1月~2002年11月�2002年12月~�

(注)既に大気汚染防止法において新設の指定物質抑制基準が適用されていた廃棄物焼却炉(火格子面積が2m2以上、又は焼却能力200kg/h以上)及び製鋼用電気炉については、上表の新設施設の排出基準が適用されている。�

10

域に多量に排出されたときは、応急の措置を講じるとともに都道府県知事に事故の状況を通報する。

(7)罰則排出規制基準違反や改善命令違反に対しては罰則が適用される。

64

3.7

【参考】「ダイオキシン類」(関係省庁共通パンフレット:2003年度版)(抜粋)

1.ダイオキシン類の構造を以下に示す(略)。

2.ダイオキシン類の毒性の強さは、毒性等量(TEQ:Toxic Equivalent)で表す。

ダイオキシン類は、毒性の強さがそれぞれ異なっており、PCDDのうち2と3と7と

8の位置に塩素の付いたもの(2,3,7,8-TCDD)がダイオキシン類の仲間の中でも最も毒

性が強いことが知られている。そのため、ダイオキシン類としての全体の毒性を評価

するためには、合計した影響を考えるための手段が必要である。

そこで最も毒性が強い2,3,7,8-TCDDの毒性を1として他のダイオキシン類の仲間の毒性

の強さを換算した係数が用いられている。多くのダイオキシン類の量や濃度のデータは、

この毒性等価係数(TEF:Toxic Equivalency Factor)を用いてダイオキシン類の毒性を

足し合わせた値(通常、毒性等量TEQという単位で表現)が用いられている。

PCDD�(ポリ塩化ジベンゾ-バラ-ジオキシン)������PCDF�(ポリ塩化ジベンゾフラン)���������コプラナーPCB

毒性等価係数(TEF)�

2,3,7,8,-TCDD�1,2,3,7,8-PeCDD�1,2,3,4,7,8-HxCDD�1,2,3,6,7,8-HxCDD�1,2,3,7,8,9-HxCDD�1,2,3,4,6,7,8-HpCDD�OCDD�2,3,7,8-TCDF�1,2,3,7,8-PeCDF�2,3,4,7,8-PeCDF�1,2,3,4,7,8-HxCDF�1,2,3,6,7,8-HxCDF�1,2,3,7,8,9-HxCDF�2,3,4,6,7,8-HxCDF�1,2,3,4,6,7,8-HpCDF�1,2,3,4,7,8,9-HpCDF�OCDF�3,4,4',5-TCB�3,3',4,4'-TCB�3,3',4,4',5-PeCB�3,3',4,4',5,5'-HxCB�2,3,3',4,4',-PeCB�2,3,4,4',5-PeCB�2,3',4,4',5-PeCB�2',3,4,4',5-PeCB�2',3,3',4,4',5-HxCB�2,3,3',4,4',5'-HxCB�2,3',4,4',5,5'-HxCB�2,3,3',4,4',5,5',-HpCB

1�1�0.1�0.1�0.1�0.01�0.0001�0.1�0.05�0.5�0.1�0.1�0.1�0.1�0.01�0.01�0.0001�0.0001�0.0001�0.1�0.01�0.0001�0.0005�0.0001�0.0001�0.0005�0.0005�0.00001�0.0001

化合物名� TEF値�

65

PCB:Polychlorinat-ed biphenyls

PCB廃棄物特別措置法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

【正式名称:ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別

措置法】

(公布:平成13年6月22日法律第65号)

(1)法制化の背景ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、水に溶けない、化学的に安定、絶縁性

がよい、沸点が高いなどの性質を持つ、工業的に合成された化合物である。PCBは、国内では1954年から1972年にかけて生産され、約54,000 tのPCBが国内で使用された。1968年、西日本各地で発生したいわゆる「カネミ油症事件」によりPCB問題が社会的な問題となり、1974年に「化学物質審査製造規制法」に基づく特定化学物質(現在は第1種特定化学物質)に指定され、新たな製造・使用が原則禁止された。製造・使用の中止後、PCBやそれを含むトランス、コンデンサーなどは回収又は保管され、1998年の旧厚生省の調査結果によると、高圧トランス、コンデンサーの保管台数は約22万台。しかし、紛失・不明のものもみられる状況にある。また、現在でも多くの古いPCB含有機器が継続して使用されている。2000年5月24日、同年10月4日に八王子市などの小学校で蛍光灯の耐用年数を過ぎたPCB使用安定器が破裂し、PCB絶縁油が小学生の身体に付着するという事件が発生した。この事件を一つの契機として、使用中及び保管中のPCB含有廃棄物に対し、政府は2000年11月28日の閣議において、以下の対応策を決定した。a.今回の事故における事態の緊急性、重要性にかんがみ、使用中の業務用・施設用蛍光灯などのPCB使用安定器について、原則として2001年度末までにその交換を終えるなど、緊急の安全対策を講じることとする。

b.環境中に蓄積し人体に有害なPCBを含有する廃棄物について、抜本的な処理方策の確立に取り組んでいくこととする。

このような背景の下で、PCB廃棄物の保管及び適正処理に関する法制化がなされ、PCB廃棄物特別措置法が制定、公布された。

3.8 PCB廃棄物特別措置法

66

3.8

(2)PCB廃棄物特別措置法の体系PCB廃棄物の保管及び適正処理に関する法体系を図3.8-1に示す。

(3)法規制の対象法規制の対象となるPCB廃棄物は、以下に示すものをいう。a.PCB、PCBを含む油又はPCBが塗布され、染み込み、付着し、もしくは封入された廃棄物

■図3.8-1 PCB廃棄物特別措置法の体系

事業者� 国、都道府県� PCB製造者�

保管等の届出(第8条関係)�○毎年度、都道府県知事へ保管量等を届け出なければならない。�

PCB処理基本計画及び処理計画の策定�(第6条、第7条関係)�○環境大臣はPCB廃棄物処理基本計画を策定。�○都道府県、政令市は国の基本計画に即してPCB廃棄物処理計画を策定。�

PCBを製造した者等の責務(第4条関係)�○国及び地方公共団体が実施する施策に協力しなければならない。�

保管等の状況の公表(第9条関係)�○都道府県は毎年度PCB廃棄物の保管及び処分の状況を公表。�

改善命令(第16条関係)�○環境大臣又は都道府県知事は、期間内の処分義務に違反した場合に期限を定めて処分等を命令。�

PCB廃棄物処理基金(環境事業団法第35条関係)�○環境事業団に基金を設置。�○環境大臣はPCB製造者へ出捐を要請(第15条関係)。�○政府、都道府県は基金に当てる資金を補助(環境事業団法第36条関係)。�

環境事業団による処理事業(環境事業団法第18条関係)�○環境事業団は、広域的かつ適正な処理を図るためPCB廃棄物の処理及びそのための施設整備を行う。�

PCB使用製品に係る措置�(第13条関係)�○PCB使用製品を使用する事業者が確実かつ適正な処理について都道府県へ協力�

期間内の処分(第10条関係)�○政令で定める期間(施行日より15年以内)に処分するか又は処分を委託しなければならない。�

譲り渡し及び譲り受けの制限�(第11条関係)�○脱法行為を防止するため、PCB廃棄物の譲り渡し及び譲り受けを制限。�

紛失の防止�

反映�

協力�

確   実   な   処   分 �

総合的かつ計画的な施策の実施�

PCB廃棄物の確実かつ適正な処理の確保�

基金への�出捐等の協力�

(注)2004年4月から環境事業団の業務は、日本環境安全事業(株)と(独)環境再生保全機構に移管されることとなる。

67

PCB廃棄物特別措置法Chapter

3主な公害関連法令(化学物質規制)

b.廃棄物への含有の程度が表3.8-1に示す基準以下であるものを除く。

(4)事業者の責務a.前年度末におけるその廃棄物の保管及び処分の状況の届出書を同年6月30日までに都道府県知事に提出する。

b.都道府県知事は、毎年度、届出書を「公衆の縦覧に供する」ことにより公開する。

c.PCB廃棄物を保管する事業場を変更する場合は、変更日から10日以内に変更届出書を都道府県知事に提出する。

d.保管事業場の相続、合併又は分割により保管事業者の地位を承継した相続人、法人は、承継した日から30日以内に承継届出書を都道府県知事に提出する。

e.保管するPCB廃棄物は、法の施行日(2001年7月15日)から15年以内(2016年7月15日まで)に処分すること。

f. PCB廃棄物は、譲り渡し、譲り受け禁止とする(地方公共団体への譲り渡し、譲り受けは除く)。

g.PCB廃棄物を保管する事業者は、事業所ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を設置すること。

電力用トランス、コンデンサーのほかに「蛍光灯安定器用コンデンサー」が対象となるため、事業者は注意を要する。

■表3.8-1 PCB廃棄物の基準

(PCB廃棄物特別措置法施行規則第2条第1項、第2項)

廃棄物の種類 含有基準

1 廃油 0.5mg/L以下

2 廃酸又は廃アルカリ 0.03mg/L以下

3 廃プラスチック類又は金属くず 付着していない、又は封入されていないこと。

4 陶磁器くず 付着していないこと。

5 その他の廃棄物 0.003mg/L以下

検定方法:廃棄物処理法施行規則第1条の2第53項に規定する検定法による。

68

3.8

●参考文献

1)環境法令研究会監修:環境保全関係法令集(1)~(2)、新日本法規2)鈴木敏央:環境法、ダイヤモンド社(2003.7)3)市川芳明編著:PRTRの実務、オーム社(2002.9)4)環境省編:PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック、環境情報科学センター(2001.8)5)環境省:関係省庁共通パンフレット、ダイオキシン類(2003)6)環境省、経済産業省:PRTR説明会資料(2001.3)7)神奈川県編:化学物質の適正管理のために、神奈川県環境部(2001.3)8)かながわPRTR情報室:神奈川県環境科学センター、Web情報(2003.7)

【参考】PCB廃棄物の処理方法について

これまで、環境省及び経済産業省においては、PCB処理を安全かつ早期に実施すべ

く、連携して新処理技術の評価などを進めてきた。

PCBの処理方法は、これまで高温で焼却する方法のみが認められていた(1976年~)

が、1998年6月以降、廃棄物処理法に新たな処理方法として認められているものは以

下のとおりである。

①脱塩素化分解法○化学反応によりPCB中の塩素を水素などに置き換えてPCBではない物質に分解

②還元熱化学分解法○還元雰囲気の高温(約1,400℃)の溶融金属(Ni-Cu)中に酸素とPCBを入れ、

高温溶融金属の持つ炭素を脱離させる触媒作用により、一酸化炭素、水素、塩

化水素に分解

○PCBを無酸素水素雰囲気中、常圧下850℃以上に加熱することで、PCBが分

解・脱塩素化され、塩化水素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、ベン

ゼンに分解

③水酸化熱分解法○化学的反応性が高い超臨界状態(高温、高圧の特殊な状態)の水により、PCB

を二酸化炭素、水、塩化水素に分解

○酸化剤又は炭酸ナトリウムなどを混合し、高温高圧(超臨界又はそれに近い状

態)水中にPCBを吹き込み、二酸化炭素、水、塩化水素に分解

④光分解法○PCBとアルカリ剤などを約60℃、常圧で混合し、紫外線を照射することでPCB

の塩素基が脱離し、一塩化、二塩化ビフェニルやビフェニルなどになり、さら

に、一塩化、二塩化ビフェニルは約75℃に加熱した後、パラジウム/カーボン

触媒によりビフェニルまで脱塩素化、又はPCB分解菌による生物処理により無

機化され、二酸化炭素、水、塩素イオンに分解

69

循環型社会形成に向けて廃棄物の適正処理及びリサイクル推進のための法改正、新法制定などの法整備が急激に進んでいる。廃棄物のリサイクルについては、循環型社会形成推進基本法の基本理念に基づき、整備されたリサイクル関係法の位置づけを図4.0-1に示す。従来の廃棄物の適正処理に関する廃棄物処理法の持つ役割は、極めて重要であったが、リサイクルの推進に関しては改正リサイクル法である「資源有効利用促進法」が重要な役割を担っている。

【正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律】

(公布:昭和45年12月25日法律第137号)

廃棄物の排出を抑制し、廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分などの処理を推進する。

(1)廃棄物の種類廃棄物は、図4.1-1のとおり区分される。a.一般廃棄物産業廃棄物以外の廃棄物をいう。b.特別管理一般廃棄物○一般廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性、その他人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるもの○廃エアコン、廃テレビ、廃電子レンジに含まれるPCB使用部品、一般廃棄物処理施設で生じたばいじん○病院、診療所、老人保健施設などで生じた感染性廃棄物などc.産業廃棄物

Chapter

4循環型社会形成関連法令(廃棄物/リサイクル法)

4.1 廃棄物処理法

70

4.1

1994.8�完全施行�

環境基本法�

環境基本計画�

循環�自然循環�社会の物質循環�

2001.1 完全施行�

循環型社会形成推進基本法(基本的枠組法)�

○基本原則、○国、地方公共団体、事業者、国民の義務、○国の施策�

循環型社会形成推進基本計画 :国の他の計画の基本�

<廃棄物の適正処理>� <リサイクルの推進>�

〔一般的な仕組みの確立〕�2001.4 完全施行� 2001.4 完全施行�

� 拡充整備�

1R→3R�

〔個別物品の特性に応じた規制〕�一部施行�1997.4��完全施行�2000.4

容器包装�

リサイクル法�

家電�

リサイクル法�

建設資材�

リサイクル法�

食品�

リサイクル法�

自動車�

リサイクル法�

完全施行�2001.4

完全施行�2002.5

完全施行�2001.5

公布�2002.7�

�2年6か月以内に完全施行�

完全施行�2001.4

グリーン購入法(国等が率先して再生品などの調達を推進)�

■副産物の発生抑制・リサイクル�■再生資源・再生部品の利用�■リデュース・リユース・リサイクルに配慮した設計・製造�■分別回収のための表示�■使用済製品の自主回収・再資源化�■副産物の有効利用の促進�

■廃棄物の適正処理�■廃棄物処理施設の設置規制�■廃棄物処理業者に対する規制�■廃棄物処理基準の設定� など�

不適正処理対策�公共関与による施設整備等�

・容器包装の市町村による収集�・容器包装の製造・利用業者による再資源化�

工事の受注者が�・建築物の分別解体�

・建設廃材等の再資源化�

・廃家電を小売店が消費者より引き取り�

・製造業者等による再商品化�

食品の製造・加工・販売業者が食品廃棄物の再資源化�

・製造業者等によるシュレッダ-ダスト等の引き取り・再資源化�

・関連業者等による使用済自動車の引き取り・引き渡し�

廃棄物処理法� 資源有効利用促進法�

社会の物質循環の確保�天然資源の消費の抑制�環境負荷の低減�

拡充強化�

■図4.0-1 循環型社会の形成の推進のための法体系

廃棄物(廃棄物処理法の対象である、いらなくなったもの)�

産業廃棄物(事業活動で発生したもののうち、表4.1-1に示した20種類)�

特別管理産業廃棄物(産業廃棄物のうち、特に指定された有害なもの)�

事業系一般廃棄物(事業活動で発生した、産業廃棄物以外のもの)�

家庭廃棄物(一般家庭の日常生活から発生したもの)�

特別管理一般廃棄物(一般廃棄物のうち、特に指定された有害なもの)�

一般廃棄物(産業廃棄物以外のもの)�

■図4.1-1 廃棄物の種類

○事業活動に伴って生じた廃棄物のうち燃え殻、汚泥、廃油、その他政令で定めるもの○輸入された廃棄物d.特別管理産業廃棄物:産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性、その他人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるもの。

表4.1-1~表4.1-3に廃棄物の種類と具体的な例を示す。

71

廃棄物処理法Chapter

4循環型社会形成関連法令(廃棄物/リサイクル法)

区分 種 類 具体的な例

1 燃え殻 活性炭、焼却炉の残灰などの各種焼却かす2 汚泥 排水処理の汚泥、建設汚泥などの各種泥状物3 廃油 グリス(潤滑油)、大豆油など、鉱物性・動植物性を問わず、すべての廃油4 廃酸 廃写真定着液など、有機性・無機性を問わず、すべての酸性廃液5 廃アルカリ 廃写真現像液、廃金属石けん液など、有機性・無機性を問わず、すべてのアルカリ性廃液

6 廃プラスチッ 発泡スチロールくず、合成繊維くずなど、固形・液状を問わず、すべての合成高分子系化合物(合ク類 成ゴムを含む)

7 ゴムくず 天然ゴムくず(注:合成ゴムは廃プラスチック類)8 金属くず 鉄くず、アルミニウムくずなど、不要となった金属、金属の研磨くず、切削くずなど9 ガラスくず、コ 板ガラス、コンクリートくず、耐火れんがくず、石こうボードなどンクリートくず及び陶磁器くず

10 鉱滓 鋳物砂、サンドブラストの廃砂、不良石炭、各種溶鉱炉かすなど11 がれき類 建物解体、工作物の除去によって生じたコンクリート片、れんが片など12 ばいじん 大気汚染防止法のばい煙発生施設、又は産業廃棄物焼却施設の集じん施設によって集められたば

いじん13 紙くず 以下の業種からの紙くずに限る

→建設業(工作物の新築、改築又は除去により生じたもの)、パルプ製造業、製紙業、紙加工品製造業、新聞業、出版業、製本業、及び印刷物加工業(注)これ以外の業種から発生する、不要な書類やコピー用紙などは、事業系一般廃棄物

14 木くず 以下の業種からの木くず、おがくず、バーク類などに限る→建設業(工作物の新築、改築又は除去により生じたもの)、木材又は木製品製造業(家具製品製造業)、パルプ製造業、輸入木材卸売業(注)これ以外の業種から発生する、パレットや梱包材などは、事業系一般廃棄物

15 繊維くず 以下の業種からの天然繊維くずに限る→建設業(工作物の新築、改築又は除去により生じたもの)、衣類その他繊維製品製造業以外の繊維工業(注)これ以外の業種から発生する、不要な衣類やウエスなどは、事業系一般廃棄物

16 動物系固形不 と畜場で解体などをした獣畜や、食鳥処理場で食鳥処理した食鳥に係る固形状の不要物要物

17 動植物性残渣 食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業からの魚や獣のあら、醸造かす、発酵かすなど18 動物の糞尿 畜産農業から排出される牛、馬、めん羊、にわとりなどのふん尿19 動物の死体 畜産農業から排出される牛、馬、めん羊、にわとりなどの死体

20 汚泥のコンクリート固形化物など、1~19の産業廃棄物を処分するために処理したもので、1~19に該当しない

もの

■表4.1-1 産業廃棄物の種類と具体的な例

あらゆる事業活動に伴うもの

業種が限定されるもの

(注) 上記表13~19は、同じ廃棄物であっても業種が該当した場合は産業廃棄物で、それ以外の場合は、事業系の一般廃棄物となる。

72

4.1

種 類 具体的な例

廃油 揮発油類、灯油類、軽油類で引火点70℃未満の廃油:第4類危険(引火性廃油) 物のうち、第3・第4石油類、動植物油類以外のものなど廃酸(廃強酸) pH 2.0以下の酸性廃液:廃硫酸、廃塩酸など廃アルカリ pH 12.5以上のアルカリ性廃液:廃カセイソーダ液など(廃強アルカリ)感染性廃棄物 感染のおそれがある産業廃棄物:病院や研究機関などから排出され

る産業廃棄物であって感染のおそれがある産業廃棄物(医師などによる専門的見地で判断)

廃ポリ塩化ビフェニ 廃ポリ塩化ビフェニル、ポリ塩化ビフェニルを含む廃油:古い難燃ル(PCB)など 性絶縁油の一部などポリ塩化ビフェニル ポリ塩化ビフェニルが付着、封入、又は染み込んだ産業廃棄物:古(PCB)汚染物 い高圧トランス、進相コンデンサーなどの一部ポリ塩化ビフェニル 廃ポリ塩化ビフェニルなど、又はポリ塩化ビフェニル汚染物を処理(PCB)処理物 したもので基準に適合しないもの廃石綿など 飛散性を持つ廃石綿など、又はそれらが付着しているおそれのある(アスベスト) もの:吹き付け石綿、石綿含有保温材、除去工事使用の器具・機材

など

その他 特定施設からの廃棄物のうち、以下の有害物質が基準を超えているもの(単位:mg/L)

廃酸・廃アルカリ

1 アルキル水銀化合物 検出されないこと水銀又はその化合物 0.05 0.005

2 カドミウム又はその化合物 1 0.3(カドミウムイエローなど)

3 鉛又はその化合物(鉛丹、鉛白など) 1 0.34 有機りん化合物 1 15 六価クロム化合物 5 1.5

(クロム酸、クロムめっき液など)6 ひ素又はその化合物 (亜ひ酸など) 1 0.37 シアン化合物 (青酸ソーダなど) 1 18 ポリ塩化ビフェニル(PCB) 0.03 0.0039 トリクロロエチレン 3 0.3

(トリ、トリクレン)10 テトラクロロエチレン 1 0.1

(パーク、パークレン)11 ジクロロメタン(塩化メチレン) 2 0.212 四塩化炭素(テトラクロロメタン、 0.2 0.02

パークロロメタン)13 1,2-ジクロロエタン 0.4 0.0414 1,1-ジクロロエチレン 2 0.215 シス-1,2-ジクロロエチレン 4 0.416 1,1,1-トリクロロエタン 30 317 1,1,2-トリクロロエタン 0.6 0.0618 1,3-ジクロロプロペン 0.2 0.0219 チウラム(農薬の一種) 0.6 0.0620 シマジン(農薬の一種) 0.3 0.0321 チオベンカルブ(農薬の一種) 2 0.222 ベンゼン 1 0.123 セレン又はその化合物 1 0.324 ダイオキシン類 100pg/L ばいじん、

燃え殻、汚泥など3ng/g

特定有害産業廃棄物

■表4.1-2 特別管理産業廃棄物の種類と具体的な例

金属などの名称 汚泥など

(2)事業者の責務a.事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任で適正に処理する責務b.廃棄物の再生利用などによる減量化の推進c.製品、容器などが廃棄物となった場合の処理の困難性についての評価と、適切な処理方法についての開発と情報の提供

(3)事業者の処理事業者は、その産業廃棄物を次の基準に従って自ら処理しなければなら

ない。a.産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(産業廃棄物処理基準、特別管理産業廃棄物処理基準)の遵守

b.産業廃棄物保管基準、特別管理産業廃棄物保管基準の遵守c.産業廃棄物、特別管理産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合の運搬・処分委託基準の遵守

d.産業廃棄物処理施設を設置している事業者は、産業廃棄物処理責任者を置かなければならない。

e.特別管理産業廃棄物を発生させる事業者は、資格を有する特別管理産業廃棄物管理責任者を置かなければならない。

f. 多量の産業廃棄物(1,000 t /年以上)、特別管理産業廃棄物(50 t /年以上)を発生させる事業者は、「多量排出事業者」として減量、そのほか処理計画を作成し、知事に提出する。提出の翌年から計画実施状況報告を定期的に知事に提出する。処理計画及び報告は、公衆の縦覧に供される。

g.産業廃棄物処理施設を設置している事業者、特別管理産業廃棄物を発生させる事業者は、帳簿を備え所定事項を記載し、5年間保存しなければならない。

73

廃棄物処理法Chapter

4循環型社会形成関連法令(廃棄物/リサイクル法)

■表4.1-3 特別管理一般廃棄物の種類と具体的な例

種 類 内 容

PCBを使用した部品 一般廃棄物である廃エアコン、廃テレビ、廃電子レンジに係るもの

ばいじん ごみ処理施設のうち、焼却灰とばいじんが分離して排出されるものに設けられた集じん施設で集められたばいじん

感染性一般廃棄物 感染性病原体を含むか、そのおそれのある一般廃棄物(血液の付着したガーゼ、包帯など)

そのほか ダイオキシン類が基準値を超えて含まれる汚泥、燃え殻、ばいじんなど

(4)資格、許可a.産業廃棄物の収集、運搬、又は処分を業として行おうとする者(産業廃棄物処理業者)は、知事の許可を受け5年ごとにその更新を受けることが必要(古紙、くず鉄、空き瓶類、古繊維のみを取り扱っている再生資源回収業者は許可不要)。

b.特別管理産業廃棄物の収集、運搬、又は処分を業として行おうとする者(特別管理産業廃棄物処理業者)は、知事の許可を受け5年ごとにその更新を受けることが必要。

c.事業者は、その産業廃棄物、特別管理産業廃棄物を、許可を取得した産業廃棄物処理業者、特別管理産業廃棄物処理業者に委託しなければならない。

(5)産業廃棄物管理票(マニフェスト)産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合には、産業廃棄物管理票を受託者に交付し、運搬・処分終了後は当該管理票の写しの送付を受け、これを確認しなければならない(管理票写しは、5年間保存。中間処理委託の場合は、処理残渣物の最終処分完了までの確認義務を有する。マニフェストE票の送付を受け確認する)。なお、1998年11月以前はマニフェストは特別管理産業廃棄物についてのみ義務づけられていたが、同年12月以降すべての産業廃棄物に拡大された。これに伴い管理票の交付に代えて、電子情報処理組織の使用による報告、登録の方式も認められることとなった。産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度の概要については図4.1-2及び

図4.1-3に示す。

(6)産業廃棄物処理施設法律で定める産業廃棄物処理施設(汚泥の脱水施設、廃油の油水分離施設、廃酸・廃アルカリの中和施設など17種類)を設置する場合は知事の許可が必要。許可を必要とする産業廃棄物処理施設を表4.1-4に示す。a.産業廃棄物処理施設を設置している事業者は、産業廃棄物処理責任者のほかに資格を有する技術管理者を置かなければならない。

b.産業廃棄物処理施設は、法律で定める技術上の基準及び許可申請書に記載した維持管理計画を遵守して維持管理することが必要。

c.最終処分場である場合には、災害防止計画の設定も必要。

74

4.1

75

廃棄物処理法Chapter

4循環型社会形成関連法令(廃棄物/リサイクル法)

■図4.1-2 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の運用

マニフェストの運用(標準モデルケース)�

廃棄物の流れ�

マニフェストの流れ�

<交付>�(通称 1次マニフェスト)� <回付>� <回付>� <受領>�

<処分受託者�として受領>�

<処分受託者と�して新たに交付>�

○○商店�

(控)�A

(控)�B1

(控)�A

(控)�B1

(控)�C1

(控)�C1

廃棄物�

残渣物�

産業廃棄物�保管所�

品目:廃プラ�

1m3まで�

管理責任者�事務長�内線361

①� ②� ①� ②�

③� ③�

④�④�

⑤� ⑤�

⑥�

(通称 2次�マニフェスト)�

B2 B2 C2C2

処分終了票�運搬終了票�

DE D、E

処分終了票�

E

最終処分終了票�

(A)、B2、�D、E票�

(A)、B2、�D、E票�

B1、C2票� B1、C2票�C1票� C1票�

�〔保管�

5年間の〕�

運搬終了票�

最終処分の終了を確認�排出業者のE票へ記載、送付�

処分終了票�

処分終了票�最終処分�

終了票の送付�

最終処分�終了の記載�

E票一時留置き�

排出事業者の�

廃棄物[1次処理]� 中間処理� 廃棄物(残渣物)[2次処理]�

排出事業者� 収集運搬業者� 中間処理業者� 収集運搬業者� 最終処分業者�

新製品展示会場�

(7)改善命令産業廃棄物処理基準・保管基準に適合しない保管、収集、運搬、処分が行われた場合は、改善命令が出される。

(8)罰則産業廃棄物の不法投棄防止の観点から、近年廃棄物処理に関する罰則が強化されており、特に排出事業者の委託基準違反に対しては、不法投棄に

76

4.1

■図4.1-3 マニフェストの使用方法

【交付番号】:事業者が当該管理票を特定できる任意の番号(例 プラ-1・2・3…)を記入する。市販品には、あら

かじめ交付番号を打刻するものがあり、その場合は整理番号を活用する。

【交付担当者】:事業者の氏名・名称ではなく、立ち会い・引き渡しを担当した職員名を記入する。

【種   類】:産業廃棄物20品目から該当名を記入する。市販品では、列記した品目名にチェックする形式が多い。

ただし、品目ごとの分別がそれ以上不可能な場合には、混合廃棄物として1種類の扱いとする。混合廃

棄物は具体的な品名(シュレッダーダスト、ロッカー、OA机など)を記入する。

【数   量】:重量(kg・t)、容積(m3・L)、個数(個・箱)など単位は限定されていない。

*行政などの各種調査は重量を基本とすることが多い

【荷   姿】:コンテナ、バラ、ドラム缶、ポリ容器、MD(メディカルボックス)など具体的に記入する。

(注)

対する原状回復の措置命令を含め極めて厳しい罰則が適用される。表4.1-5に廃棄物処理法上の排出事業者に係る主な罰則を示す。

77

廃棄物処理法Chapter

4循環型社会形成関連法令(廃棄物/リサイクル法)

■表4.1-4 許可対象産業廃棄物処理施設

罰 則

懲 役 罰 金

マニフェスト不交付、未記載、虚偽記載 50万円以下 適用

マニフェスト未受領時などの適正措置義務違反 適用

マニフェスト保存義務違反 50万円以下 適用

無許可業者への委託禁止違反 5年以下 1,000万円以下 適用

委託基準違反 3年以下 300万円以下 適用

帳簿、記載違反 30万円以下

産業廃棄物の不法投棄(法人) 1億円以下 適用

措置命令違反(措置命令に従わない場合) 5年以下 1,000万円以下

■表4.1-5 廃棄物処理法の主な罰則

違反項目(排出事業者に係る主なもの)

以下の施設を設置している事業場は、産業廃棄物処理責任者、技術管理者の設置が義務づけられている。1 汚泥の脱水施設(処理能力10m3/日を超えるもの)2 汚泥の乾燥施設(処理能力10m3/日超、天日乾燥施設100m3/日超)3 汚泥の焼却施設(処理能力5m3/日超、200kg/時以上又は火格子面積2m2以上)4 廃油の油水分離施設(処理能力10m3/日超)5 廃油の焼却施設(処理能力1m3/日超、200kg/時以上又は火格子面積2m2以上)6 廃酸・廃アルカリの中和施設(処理能力50m3/日超)7 廃プラスチック類の破砕施設(処理能力5 t /日超)8-1 廃プラスチック類の焼却施設(処理能力100kg/日超又は火格子面積2m2以上、

PCB汚染物、PCB処理物は対象外)8-2 木くず又はがれき類の破砕施設(処理能力5 t /日超)9 有害汚泥のコンクリート固型化施設10 水銀汚泥の焙焼施設11 シアン化合物分解施設12-1 廃PCBなどの焼却施設12-2 廃PCBなど又はPCB処理物の分解施設13-1 PCB汚染物又はPCB処理物の洗浄施設13-2 産業廃棄物の焼却施設(処理能力200kg/h以上又は火格子面積2m2以上)14 最終処分場

○遮断型産業廃棄物○安定型産業廃棄物(水面埋立地対象外)○管理型産業廃棄物(水面埋立は水面指定のみ)

措置命令

【正式名称:資源の有効な利用の促進に関する法律】

(公布:平成3年4月26日法律第48号)

2000年に旧再生資源の利用の促進に関する法律(リサイクル法)を全面改正し、2001年4月1日から完全施行された。

(1)法の概要a.特定製品に対する廃棄物の発生抑制、再使用、回収、再資源化の義務づけ

b.3R(リサイクル・リユース・リデュース)の促進

(2)対象者、対象業種、対象製品などa.物品又は製品の製造、加工、修理もしくは販売、エネルギーの供給もしくは土木工事を含む事業を行う者

b.特定省資源業種:鉄鋼業、紙パルプ製造業、化学工業、非鉄金属製造業○特定再利用業者:紙製造業、ガラス容器製造業、建設業など○指定省資源化事業者:自動車、オートバイ、家電製品、ガス・石油機器、パソコン、複写機、大型家具、パチンコ台○指定表示製品、指定副産物(スラグ、石炭灰、建設廃材)

(3)罰則a.企業名公表b.特定省資源事業者が勧告に従わなかったとき、50万円以下の罰金c.特定再利用事業者が勧告に従わなかったとき、50万円以下の罰金資源有効利用促進法の概要について、図4.2-1に概要図を示す。

78

4.2

4.2 資源有効利用促進法及びその他のリサイクル法

4.2.1 資源有効利用促進法

その他のリサイクル法については、その概要を表4.2-1に示す。

79

資源有効利用促進法及びその他のリサイクル法Chapter

4循環型社会形成関連法令(廃棄物/リサイクル法)

4.2.2 その他のリサイクル法

家電リサイクル法�

自動車リサイクル法�

産構審品目別�ガイドライン�

容器包装�リサイクル法�

食品�リサイクル法�(事業系のみ)�

一般廃棄物�

その他(パソコン、�ガス機器など)�

家電製品 約2%�

家具 約2%�衣料品 約2%�

自動車�約10%�

紙�約25%�

容器包装�約25%�

生ごみ�(事業系、�家庭系)�約30%�

資源有効利用促進法�

廃棄物の�発生抑制�~リデュース(Reduce)の政策の導入~�

・部品の省資源化・長寿命化設計等(自動車、パソコン、家具、ガス、石油機器、パチンコ台等)�

・生産工程の合理化等による副産物の発生抑制を計画的に推進�

部品等の再使用�~リユース�(Reuse)の政策の導入~�

原材料としての再利用�~リサイクル(Recycle)政策の強化~�

事業者による製品の分別回収とリサイクルの義務づけ等�(パソコン等)�

・副産物の原材料としての再利用を計画的に推進�

・部品等の再使用が容易な設計等�(自動車・パソコン、複写機、パチンコ台等)�

資源の有効な利用�

産業廃棄物�

建設業�19%�

農業�19%�

食料品製造業�3%�

電機・ガス・�熱供給・�上下水道業�20%�

鉄鋼業�7%�

鉱業 7%�

パルプ・紙�7%�

化学 5%�

その他�13%�

年間約4億 t年間約5,000万 t

リサイクル法�

建設資材�

排せつ物法�

家畜�

リサイクル法�

食品�

ガイドライン�

産構審業種別�

部品対策�

副産物(=産業廃棄物)対策�

製造、加工、販売、修理などの各段階において�■廃棄物の発生抑制 ■部品等の再使用 �■リサイクルによる総合的な取り組みを実施�

■図4.2-1 資源有効利用促進法の概要図

80

4.2

■表4.2-1 各種リサイクル法の概要

法律名

容器包装リサイクル法(施行:1997.4)

グリーン購入法(施行:2001.4)

食品リサイクル法(施行:2001.6)

家電リサイクル法(施行:2001.4)

建設資材リサイクル法(施行:2002.6)

自動車リサイクル法公布:2002.7施行:2年6か月以内に完全施行

概 要

容器包装の製造・利用事業者などに、PET ボトルや瓶など、分別収集された容器包装の再利用を義務づける

国や地方自治体などが、再生品や環境負荷の少ない物品を率先的に調達する

食品の製造・販売事業者、外食産業などに、食品残渣の発生抑制や飼料、肥料などへの再資源化を義務づける

家電製品の製造・販売事業者などに、廃家電製品(洗濯機、冷蔵庫、エアコン、テレビ)の回収・再利用を義務づける

解体業者や建設工事の受注者などに、建築物などの分別解体や建設廃棄物の再生利用を義務づける

製造業者などによるシュレッダーダストなどの引き取り・再資源化関連業者などによる使用済自動車の引き取り、引き渡しの義務づけ

対象となる事業者

特定容器を利用する中身製造者、容器製造業者、小売・卸売業者、輸入業者、学校法人、宗教法人、テイクアウトのできる飲食店など。農林漁業、製造業、卸売業、小売業、輸入業、飲食店、サービス、民法第34条に規定する法人など、建設業、運輸・通信業、輸入業、食品・清涼飲料・酒類・石けん紙箱・袋などの製造者

国などの各機関:国会、裁判所、各省などの国の機関、及び114の独立行政法人、霞ヶ関の中央省庁やその出先機関、国立大学、日本銀行、宇宙開発事業団(NASDA)、日本中央競馬会(JRA)などの独立行政法人

①食品関連事業者:外食産業、食堂、レストラン、ファーストフード、学校、病院、宴会場、百貨店、スーパー、ホテル②再生利用事業者

家電メーカー、輸入業者、小売業者、市町村、事業者、消費者

建設業を営む者、建設工事の発注者、建設工事の受注者、解体工事事業者

自動車製造業者、自動車輸入業者、引取業者(新車・中古車販売業者、整備業者、解体業者など)、フロン類回収業者、破砕業者、解体業者、自動車所有者

罰 則

リサイクルに関する命令に従わない場合(不履行時)、罰金50万円以下

帳簿の記載、真実の記載及び保存をしなかった場合、罰金20万円以下

食品循環資源の再生利用などの勧告に従わない場合、罰金50万円以下

メーカーが再商品化などを実施しない場合や不当な料金を請求した場合、50万円以下の罰金

①1年以下の懲役又は50万円以下の罰金②法第21条に違反し、登録を受けないで解体を営んだ場合③不正に法第21条の登録を受けた者④次の場合、50万円以下の罰金:建設工事受注者又は自主施工者が、正当な理由なくして分別解体などの適正な実施を行わないことに対する都道府県知事の必要な措置命令に違反したとき

①3年以下の懲役又は300万円以下の罰金②法第122条に違反し、使用済自動車の運搬を他人に委託した者③1年以下の懲役又は50万円以下の罰金④法第60条に違反し、許可を受けないで解体業、破砕業を行った者⑤その他

【正式名称:特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律】

(公布:平成4年12月16日法律第108号)

廃棄物等の輸出入をしようとする場合には、特定有害廃棄物等輸出入規制法(バーゼル法)や廃棄物処理法に基づき、正しい手続きを行うことが必要となる。特定有害廃棄物等輸出入規制法の概要を図4.2-2に示す。

81

資源有効利用促進法及びその他のリサイクル法Chapter

4循環型社会形成関連法令(廃棄物/リサイクル法)

4.2.3 特定有害廃棄物等輸出入規制法

制定:1992年12月�施行:1993年12月�

定義�「特定有害廃棄物等」�

基本的事項の公表�

条約附属書Ⅰ・Ⅲ等に掲げる有害特性を有する廃棄物等若しくは家庭系の廃棄物又はこれらに類する有害廃棄物等(廃棄物だけでなく再生資源として利用される各種金属スクラップ等有価物を含むもの)として条約の規定に基づき締約国が指定したもの。�

経済産業大臣及び環境大臣は、必要な基本的事項を定め、公表するものとする。�

①特定有害廃棄物等を輸出しようとする者は、外為法に基づく輸出の承認を受ける。�

②環境大臣は、経済産業大臣から環境汚染を防止するため特に必要があるものについて、その申請の写しの送付を受け、環境保全上支障がない旨の確認を行い、経済産業大臣に通知する。�③経済産業大臣は、環境大臣の通知を受けた後でなければ①の承認をしてはならないものとする。�

①特定有害廃棄物等を輸入しようとする者は、外為法に基づく輸入の承認を受ける。�②環境大臣は、必要がある場合には経済産業大臣に対し意見を述べることができる。�

(輸出の承認)� (輸入の承認)�

特定有害廃棄物等を輸入する場合において、移動書類を携帯して運搬することを義務づけるとともに、輸入された特定有害廃棄物等の処分が完了した場合等において、その旨を輸入相手方、輸出国に通知するものとする。�

①経済産業大臣及び環境大臣は、必要があると認めるときは、特定有害廃棄物等を輸出した者等に対し、当該特定有害廃棄物の回収、処分、その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。�②経済産業大臣及び環境大臣は、必要があると認めるときは、特定有害廃棄物等(廃棄物を除く)を輸入した者等に対し、当該特定有害廃棄物等を適正に処分すること、その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。�

(移動書類)�

(措置命令)�

■図4.2-2 特定有害廃棄物等輸出入規制法の概要

(1)規制対象:有害廃棄物の範囲バーゼル条約では、「有害廃棄物」としての規制対象となるものを附属

書で規定している。この規定に従って、特定有害廃棄物等輸出入規制法の廃棄物の輸出入規制が定められている。法では、条約附属書に掲げる有害性を有する廃棄物などを「特定有害廃棄物等」と定義している。

(2)手続き等a.有害廃棄物の輸出は、許可制となっており、輸出先で環境上適正に処分がなされないと判断される場合は、不許可となる。

b.輸出を行う場合は、相手国への事前通告及び同意が必要である。c.スクラップ等の輸出入を行う場合は、税関に対して所定の手続き(証明)が必要となる。○特定有害廃棄物等に該当する場合:経済産業大臣の承認○特定有害廃棄物等に該当しない場合:該当しないことの証明

リサイクル目的で再生資源などを輸出入する場合には、バーゼル条約の規制対象となるか否か(「特定有害廃棄物等」に該当するか否か)を判断する必要がある。

82

4.2

【参考】バーゼル条約制定の背景

有害な廃棄物の国境を越える移動が1970年代から欧米諸国を中心にしばしば行わ

れ、1980年代に入り、ヨーロッパの先進国からアフリカの開発途上国に廃棄物が放置

されて環境汚染が生じるなどの問題が発生し、何らの事前の連絡・協議なしに有害廃

棄物が国境を越えて移動し、かつ、最終的な処分の責任者の所在も不明確であるとい

う問題の存在が明らかとなった。

これを受けて、OECD及び国連環境計画(UNEP)で検討が行われた後、1989年3

月、スイスのバーゼルにおいて、一定の廃棄物の国境を越える移動等の規制について

国際的な枠組み及び手続き等を規定した「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処

分の規制に関するバーゼル条約」が作成された[1992年5月5日発効。1999年12月3

日現在締約国数は132か国、1国際機関(EC)]。我が国は、米国、東南アジア諸国な

どとの間で、リサイクル可能な廃棄物を資源として輸出入しており、条約の手続きに

従った貿易を行うことが地球規模の環境問題への積極的な国際貢献となるとの判断の

下、1993年9月17日に同条約への加入書を寄託し、同条約は、同年12月16日に我が

国について効力を生じた。本件条約を実施するための「特定有害廃棄物等の輸出入等

の規制に関する法律」及び関連する法律として「廃棄物の処理及び清掃に関する法律

の一部を改正する法律」が1993年の第125国会で成立。また、1993年9月には国内法

の当時の所管省庁である環境庁、厚生省、通産省において関係政省令等の整備を完了

した。

83

資源有効利用促進法及びその他のリサイクル法Chapter

4循環型社会形成関連法令(廃棄物/リサイクル法)

●参考文献

1)環境法令研究会監修:環境保全関係法令集(1)~(2)、新日本法規2)環境省編:平成15年版循環型社会白書、ぎょうせい(2003.5)3)鈴木敏央:環境法、ダイヤモンド社(2003.7)4)東京都編:適正委託処理ガイドブック、東京都環境局(2003.3)5)神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀市、相模原市:事業活動に伴って発生する廃棄物を適正に処理するために、神奈川県(2002.3)

85

地域の生活環境を保全し、健康で豊かな生活を実現するためには、全国一律の規制法では、地域の実情にそぐわない場合が多く、それを補完する意味で地方自治体は、地域に合った独自の規制を条例や指針などにより実施している。これらは、すべて一律基準に対して厳しい「上乗せ」や「横出し」基準を設けており、事業者にとって条例を遵守することが環境管理の実務上も重要な課題となっている。

(1)条例の概要2000年12月22日、東京都公害防止条例を全面的に改正した「都民の健

康と安全を確保する環境に関する条例」が公布された。一部の規定を除いて、2001年4月1日から施行されている。本条例は、7章165条から成り、従前の工場公害規制に加え、自動車公害対策の充実強化や化学物質の適正管理、土壌地下水汚染対策、そして環境への負荷の低減の取り組みなどを新たに規定している(図5.1-1~図5.1-5)(東京都ホームページより)。2003年10月から施行されるディーゼル車の運行制限も環境確保条例で

規定されている。

(2)東京都における「上乗せ」「横出し」の例法の適用を受けない事業者であっても条例上の適用事業者となる可能性

がある。例えば化学物質の使用量、従業員数、敷地面積などの裾切りが適用されない場合があるため、条例の細則にも十分注意を払う必要がある。法と条例の比較において、「上乗せ」「横出し」の例を表5.1-1、表5.1-2に示す。

Chapter

5主な自治体の環境規制(条例、指針等)

東京都の例:都民の健康と安全を確保する5.1 環境に関する条例(環境確保条例)

86

5.1

エネルギー使用の多い事業者(燃料等の使用量が原油換算で年間1,500kL以上又は電気の使用量が年間600万kWh以上の事業者)は、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出抑制を目標とした地球温暖化対策計画書を知事に提出するとともに、自ら公表する。計画の実績についても同様である。��家庭用冷蔵庫、カ-エアコン、業務用冷凍空調機器、自動販売機等に使用されている冷媒用のフロン(CFC,HCFC,HFC)について、大気中への排出を禁止するとともに、回収したフロンは、原則として、破壊処理をしなければならない。��大規模建築物(延べ床面積が10,000m2を超える建築物)の建築主は、省エネルギー、省資源設計や自然エネルギー利用等を内容とする建築物環境計画書を建築前に知事に提出し、工事完了後は完了の届出をしなければならない。知事は、その概要を公表する。�

2001年4月1日施行(建築物の建設に当たっての環境配慮の取り組みは、2002年6月1日施行)�

1 環境への負荷の低減の取り組み�

事業活動における環境負荷低減の取り組み�

冷媒用フロンの排出禁止及び破壊処理�

建築物の建設に当たっての環境配慮の取り組み�

■図5.1-1 東京都環境確保条例(1)

自動車環境管理計画書の提出�

ディーゼル車の運行禁止�

自動車購入時における環境情報の説明�

重油混和燃料の使用、販売の禁止�

アイドリング・ストップ�

低公害車の導入義務�

2001年4月1日施行(ディーゼル車の運行禁止は、2003年10月1日施行)�

2 自動車公害対策�

自動車を30台以上使用する事業者は、自動車の使用合理化や低公害車の導入等を記載した自動車環境管理計画書を知事に提出し、また、その実績を報告しなければならない。��自動車を200台以上使用する大規模な事業者は、事業の用に供する自動車の台数に対して知事が定める低公害車を2005年度までに5%以上導入しなければならない。��粒子状物質排出基準に適合しないトラックやバス等のディーゼル車は都内での運行が禁止される。なお、新車登録から7年間は規制の対象にはならない。7年を過ぎた場合でも、都が指定する粒子状物質減少装置を装着すれば基準適合車とみなす。�

新車の販売事業者は、条例の規制内容、自動車の排出ガスの量、騒音の大きさ等を記載した書面を備え置き、その内容を自動車購入者に説明しなければならない。��自動車の運転者や使用者は、自動車を駐・停車する場合に、原動機の停止(アイドリング・ストップ)をしなければならない。また、駐車場管理者等は、その施設利用者に対し、駐・停車中の原動機の停止を周知しなければならない。��粒子状物質等の発生を増大させる重油や重油混和燃料等を自動車や建設作業機械等の燃料として使用することは禁止。建設作業機械等の燃料として販売することも禁止される。�

【粒子状物質の�

排出基準の考え方】�

(g/kWh)�

0.25�

0.18<長期規制>�

1998 2003 2005 年度�

<※新長期規制>�

<新短期規制>�国の排出基準�(新車の排出基準)�

都の排出基準(使用過程車に対する規制)�

<※規制値は検討中のレベル>�

■図5.1-2 東京都環境確保条例(2)

87

東京都の例:都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)Chapter

5主な自治体の環境規制(条例、指針等)

適正管理化学物質(57物質)のいずれかを1年間に100kg以上取り扱う事業所は、自主的な管理や安全性の高い代替物質への転換、適正管理化学物質の排出抑制を図るため、当該物質の使用量等を毎年度、報告しなければならない。��従業員が21人以上で適正管理化学物質(57物質)のいずれかを1年間に100kg以上取り扱う事業者は、取り扱いに伴う排出防止や事故時の安全確保を効果的に行うため、化学物質の性状や製造工程等に応じた取扱方法を記載した化学物質管理方法書を作成し、知事に提出しなければならない。�

2001年10月1日施行�

3 化学物質対策�

化学物質の適正管理(使用量等の報告)�

化学物質の適正管理(化学物質管理方法書の作成)�

<化学物質を取り扱う事業者>�適正管理化学物質のいずれかを1年間に100kg以上取り扱う工場等�

使用量等の報告�報告事項�◇使用量、製造量、製品としての出荷量、環境への排出量、廃棄物発生量�

化学物質管理方法書の届出�◇適正な管理方法、事故の防止、組織体制の整備等�

大規模な事業所�このうち従業員が21人以上の工場等�

■図5.1-3 東京都環境確保条例(3)

有害物質(24物質)による土壌汚染により、地下水や大気の汚染を生じ、人の健康に被害が生じるおそれがある場合などに、有害物質取扱業者は、敷地内の汚染土壌の処理をしなければならない。�

有害物質取扱事業者が建物を除却及び廃業する際や、開発事業者等が敷地面積3,000m2以上の土地において改変行為を行う際には、土壌汚染調査を行い、土壌汚染が認められる場合には、汚染の拡散防止の措置をとらなければならない。�

2001年10月1日施行�

4 土壌汚染対策�

有害物質取扱事業者による汚染土壌の処理�

建物除却や土地改変時などの汚染土壌の拡散防止�

有害物質取扱事業者�土壌汚染による�健康被害の発生等�

汚染土壌の�処理�

地下水が汚染されている�地域内の有害物質取扱事業者�

土壌汚染�調査�

土壌汚染�調査�

建物の除却又は事業所の廃止�<土地の改変者>�敷地面積3,000m2

以上の土地において行う土地の改変�

汚染の拡散�防止措置�

■図5.1-4 東京都環境確保条例(4)

88

5.1

ダイオキシン類の発生やばいじん等による生活環境等への支障を防止するため、火床面積0.5m2未満で焼却能力が50/kg・h未満の廃棄物焼却炉での焼却や、焼却炉を用いない廃棄物の焼却を原則として禁止。ただし、ダイオキシン類対策特別措置法対象の焼却炉と同等の性能を有する場合や伝統行事に伴う場合などを除く。���深夜営業等による騒音対策として、規制対象に小売店(売り場面積250m2以上)を加えるとともに、音量基準による規制を行い、住居系地域における深夜の騒音被害の防止を図る。���地盤沈下の防止や地下水位の低下を防ぐため、吐出口断面積6m2以下の揚水施設に対しても、揚水量の制限(平均10m3/月以下)や構造基準(揚水機の出力が2.2kW以下)を適用する。また、総合的な地下水保全を要する地域を地下水保全地域として指定。���工場や指定作業場を設置する際の認可や届出等の公害を未然に防止する総合的な仕組みを充実強化。特に、大気や河川に排出される有害ガスや有害物質の規制を強化する。�

2001年4月1日施行�

5 公害対策の充実強化�

焼却行為の制限�

深夜営業等の制限�

揚水量の制限及び地下水保全地域の指定�

工場公害対策の充実強化�

■図5.1-5 東京都環境確保条例(5)

(注)*1 化学物質の取り扱い時における排出の防止や事故時の安全確保を効果的に行えるように、化学物質の性状や製造工程などに応じた取扱方法を文書化したもので、「化学物質管理方法書」という。

区 分 項 目 土壌汚染対策法 環境確保条例

土壌汚染 調査の実施 土地の所有者 有害物質取扱事業者(条例に規定す主体 る工場等を設置している者で有害物

質の現在・過去取扱者)

調査報告の 施設の使用廃止など、調査の義 工場等を廃止又は除去しようとする期限 務が発生した日から起算して原 日の30日前まで

則として120日以内

その他 猶予規定あり:引き続き工場と 現在及び過去に取り扱った有害物質して使用 が調査対象敷地面積:300m2以下、地下水飲用なしなど

■表5.1-1 法規制と東京都環境確保条例との比較(土壌汚染)

区 分 項 目 化学物質管理促進法 環境確保条例

有害化学 対象業種等 製造業等23業種 条例で指定する工場、指定作業場物質管理

対象物質 第1種指定化学物質354物質 適正管理化学物質58物質(うち化学物質管理促進法対象物質は42物質)

取扱量 年間1t以上 年間100kg以上

届出 排出量、移動量(データのみ届 使用量、製造量、出荷量、排出量、出) 移動量及び化学物質管理方法書*1

従業員数 常用雇用者:21名以上 常用雇用者:21名以上の事業者のみ化学物質管理方法書の提出が必要

■表5.1-2 法規制と東京都環境確保条例との比較(有害化学物質)

神奈川県では、土壌に係る環境保全について条例で以下のように定めている。

(1)対象物質特定有害物質として27物質を指定し(表5.2-1)、土壌汚染に係る対応を定めている。

(2)規制内容条例では、土壌、地下水及び地盤環境の保全について汚染された土壌等

89

神奈川県の例:神奈川県生活環境の保全等に関する条例Chapter

5主な自治体の環境規制(条例、指針等)

神奈川県の例:神奈川県生活環境の保全等に5.2 関する条例

土壌汚染対策法 神奈川県条例特定施設に限定 使用事業所

1 カドミウム及びその化合物 ○ ○2 シアン化合物 ○ ○3 有機りん化合物 ○ ○4 鉛及びその化合物 ○ ○5 クロム及びその化合物 ○ ○6 ひ素及びその化合物 ○ ○7 水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物 ○ ○8 ポリ塩化ビフェニル ○ ○9 トリクロロエチレン ○ ○10 テトラクロロエチレン ○ ○11 ジクロロメタン ○ ○12 四塩化炭素 ○ ○13 1,2-ジクロロエタン ○ ○14 1,1-ジクロロエチレン ○ ○15 シス-1,2-ジクロロエチレン ○ ○16 1,1,1-トリクロロエタン ○ ○17 1,1,2-トリクロロエタン ○ ○18 1,3-ジクロロプロペン ○ ○19 チウラム ○ ○20 シマジン ○ ○21 チオベンカルブ ○ ○22 ベンゼン ○ ○23 セレン及びその化合物 ○ ○24 ほう素及びその化合物 ○ ○25 ふっ素及びその化合物 ○ ○26 アンモニア、アンモニウム化合物、

○ ○亜硝酸化合物及び硝酸化合物

27 フェノール類 - ○

■表5.2-1 神奈川県特定有害化学物質

物質名

に起因する公害の防止について、特定有害物質を取り扱っている事業者には、特定有害物質の使用状況などの記録管理、土地売買などに際しての記録の継承の義務を定め、また、土地の区画形質の変更などを行う者には、土壌の汚染に起因する公害を防止する義務を定めている。表5.2-2に掲げるように、土壌汚染対策法に比較して、神奈川県条例では、有害化学物質を使用している事業者に対して厳しい自主管理を要求している。また、当該物質を使用した履歴がない場所(緑地や事務棟跡地)であっても、同一敷地内であれば調査対象としている。土地の区画形質の変更の際は、形質変更工事を汚染土壌の飛散、流出及び雨水の浸透経路が変わる可能性が生じる事象ととらえ、その時点で調査、対策を要求している。有害物質使用土地が譲渡、返還、貸与などにより管理者が変更になる場合は、使用履歴や土壌調査などの記録を新しい管理者に交付することを義務づけている。これは、不用意に土地を改変することに伴う土壌汚染に起因する公害を未然に防止するとともに、その後の土地の調査の効率化を図ることを目的としている。

90

5.2

区 分

1 対象事業所

2 調査

3 記録

4 記録の継承

5 特定有害物質使用事業所の廃止

6 土地区画形質の変更

条例(事業者の責務)

特定有害物質(27物質)を使用している事業者(事業所規模又は特定有害物質の使用量の大小にかかわらず対象となる)

資料の調査、関係者に対する聞き取り、現場の踏査その他の必要な調査を毎年1回以上行う。

特定有害物質の使用状況などの記録の管理

特定有害物質使用事業所の土地を譲渡、返還、貸与の場合、調査記録を交付する

(1)資料の調査、関係者に対する聞き取り、現場の踏査その他の必要な調査

(2)調査結果の県知事への報告①使用履歴資料等の調査結果 ②表土の汚染調査結果③表層土壌ガス調査結果④ボーリング調査結果(汚染が確認された場合のみ)

(1)県知事への事前届出①汚染調査結果②公害防止計画(汚染が確認された場合)

(2)公害防止計画の完了報告(除外規定)[面積が10m3以下の土地の区画形質の変更で、高さが1.5mを超える法(のり)を生ずる切り土又は盛土を伴わない行為]

土壌汚染対策法

水質汚濁防止法の有害物質(26 物質)を使用する特定施設を設置する事業所で特定施設を廃止した事業所

規定なし

規定なし

規定なし

特定施設を廃止した場合で土地の使用用途を変更する場合のみ調査を実施し、都道府県知事に報告する

規定なしただし、都道府県知事が汚染指定区域に指定した土地については、使用の制限あり

■表5.2-2 土壌汚染に係る規制(土壌汚染対策法との比較)

化学物質管理に関する条例、指針などを定めた自治体では、法律に対する上乗せ・横出し基準を定めている場合が多く、事業規模にかかわりなく、日常の管理の徹底と記録の保存及び記録が継続して引き継がれることを求めている場合が多い。

91

神奈川県の例:神奈川県生活環境の保全等に関する条例Chapter

5主な自治体の環境規制(条例、指針等)

(改正施行:2003年4月1日)

(1)指針の概要大阪府では、化学物質の大気中への排出を抑制し、府民の健康の保護と生活環境の保全を目的として、「化学物質適正管理指針」を1995年5月に定め、事業者による適正管理を推進している。この指針では、管理するべき物質123項目と、それらの化学物質を管理する際に守るべき、又は配慮すべき事項を定めている。また、管理物質の使用量などの報告も義務づけている。図5.3-1に化学物質適正管理指針の仕組みを示す。

92

5.3

5.3 大阪府の例:大阪府化学物質適正管理指針

対象事業所�

○製造業であって、かつ�○当該事業所において使用される管理物質のいずれか一つの使用量又は製造量が以下の条件を満たす事業所��Aランク物質 100kg/年 又は 100L/年以上�Bランク物質 1,000kg/年 又は 1,000L/年以上�Cランク物質 10,000kg/年 又は 10,000L/年以上�

適正管理のための遵守事項�

1.管理規定類の作成�2.管理組織の整備�3.適正管理�○管理物質使用量等の記録・保存�○管理物質の有害性等についての情報収集�○管理物質取扱施設及び処理施設における保守点検事項の設定�

4.従業員の教育�5.事故時の措置�

○排出抑制対策 ○排出ガスの自己監視�○事前評価 ○関連企業に対する支援�

適正管理のための配慮事項�

従業員数50人以上�

毎年6月末まで�

事故状況とその措置�

<大阪市域>� 大阪市長��<堺市域>� 堺市長��<上記以外の地域>� 大阪府知事�

(注)これらの報告書の内容については、大阪府公文書公開条例により、公開の対象となる。�

対象事業所における適正管理の実施�

化学物質の大気中への排出を抑制�

■図5.3-1 化学物質適正管理指針の仕組み

(2)対象物質対象となる化学物質は123種類であり、「管理物質」(脚注A)と呼ばれる。

(3)対象事業所製造業であって、かつ、当該事業所において使用される管理物質のいず

れか一つの使用量(又は製造量)が以下の条件を満たす事業所が対象となる。Aランク物質: 100kg/年又は 100L/年以上Bランク物質: 1,000kg/年又は 1,000L/年以上Cランク物質:10,000kg/年又は10,000L/年以上

(4)事業者の責務1)管理規定類の作成と報告

○管理物質を適正に管理するため、管理組織、適正管理や従業員教育などについての方針を明文化した「管理規定」を作成、報告する。○変更等をした場合にも報告が必要。なお、従業員数が50人未満の事業所は管理規定類等の概要の報告を省略できる。

2)管理組織の整備

管理物質の適正な管理を行うため、事業所内組織を整備し、管理責任者、連絡命令系統、職務分担などをあらかじめ明確にしておくこと。

3)管理物質の使用量等の記録と報告

化学物質の管理が適正に行われていることを、自らが確認するために、使用量及び製造量を把握し、前年度に使用及び製造した管理物質の量を毎年6月末までに報告する。なお、1年間の使用量及び製造量が、Aランクで30kg/年又は30L/年未満、Bランク及びCランクで100kg/年又は100L/年未満の物質については、報告を省略できる。

4)管理物質の情報収集

MSDSなどにより、管理物質の有害性や物理化学的性質等に関する情報の収集に努め、適正管理のために活用できるよう、必要な整理を行うこと。

93

大阪府の例:大阪府化学物質適正管理指針Chapter

5主な自治体の環境規制(条例、指針等)

(脚注A)管理物質一覧照会先(大阪府ホームページ):

http://www.epcc.pref.osaka.jp/shidou/chem/chemgl/table.htm

5)保守点検事項の設定

○管理物質の使用等を行う施設や発生ガスを処理する施設などの保守点検事項の設定。

6)従業員の教育

○適正管理に必要な知識を周知するため、従業員の教育を実施する。

7)事故時の措置と報告

○事故が発生した場合は、管理物質の周辺環境中への排出や飛散などの防止に配慮しつつ、速やかに応急の措置を講じることが必要。○また、その事故の状況及び講じた措置の内容等を速やかに報告すること。

(5)配慮事項1)排出抑制対策

○排出ガスの処理のみならず、管理物質の回収、再利用、代替物質の採用、使用工程の改良など、実態に即した排出抑制対策を検討し、その対策を図っていく。

2)排出ガスの自己監視

○排出ガスに含まれる管理物質についての目標濃度等を設定し、達成状況の調査を行い、その達成のために適切な措置を講じる。○排出ガスの自己監視の方法としては、濃度測定のほか、物質収支や工学的データを用いて間接的に排出濃度を推計する方法がある。

3)事前評価

○新たに使用等を行う管理物質については、その有害性や理化学的性質などの情報を収集し、使用等する工程での挙動等をもとに、大気中への排出状況を予測することが必要である。○排出が想定される場合には、その影響を考慮し、想定される状況に応じた排出抑制対策を講じてから使用等を開始すること。

4)関連企業への支援

○関連企業に対しても、この指針の趣旨が生かされるよう、管理物質の有害性、排出抑制技術、従業員教育メニュー等についての情報提供等の支援について配慮すること。

94

5.3

95

大阪府の例:大阪府化学物質適正管理指針Chapter

5主な自治体の環境規制(条例、指針等)

●参考文献

1)神奈川県規程集2)神奈川県Web情報:神奈川県生活環境の保全等に関する条例施行通知(2000)3)東京都環境局のホームページWeb情報4)大阪府のホームページWeb情報

海外規制動向3第 部

99

近年、人類の活動範囲・規模・種類の拡大に伴い、気候変動、オゾン層破壊等の地球環境問題が顕在化し、人類に対する脅威となり得るものと認識されている。これらは一国のみでは対処が困難で、本質的に国際的な共同の取り組みが必要とされるものであり、「人類の安全保障」の観点からも早期の対策が必要となっている。地球環境問題に関する研究の進展に伴い現象の解明は進みつつあるが、現象が生ずる確率や影響の程度に関する不確実性は環境問題にとって不可避的である。このことを考慮すると、時期を失わずに適切な対応をとるためには、不確実性の定量化及び評価手法の確立を行うとともに、そのような不確実性の下での政策決定を前提とした意思決定手法の検討が不可欠である。このような背景の下でクローズアップされてきたのが「地球環境リスク」という概念である。池田三郎教授(筑波大学社会工学系)は、地球環境リスクをその性質から以下の二つのタイプに分類している。a.ある行動の結果が積み重なって地球全体に影響を及ぼすもの:温室効果ガスの増加による気候変動、成層圏オゾン層の破壊、放射性核種の増加、有害化学物質の拡散、生態系の食物連鎖などによる機能障害、生物多様性の減少

b.地域的な変化が長期的に拡大・蓄積して地球全体に及ぶもの:資源の開発による熱帯雨林の減少、砂漠化、不適性廃棄物処理による土壌・地下水系の損傷

また、地球環境リスク問題を、四つに区分された以下の政策科学的分析の枠組みの中で、最もやっかいな領域(4)に分類している。a.領域(1):リスク事象に関する知識が相当に確実で、その評価について社会的に一致できる問題。従来の行政的規制や法的な整備が可能。

b.領域(2):リスク事象に関する知識が相当に確実であるが、結果に対するリスク受容の評価が利害関係者の間で一致しない場合。合

Chapter

6

6.1 地球環境リスクと国際的取り組み

国際的取り組みと国際条約

意形成手法が重要な課題。c.領域(3):知識の不確実さのレベルが広がるが、その結果の受容リスクレベルの評価に関しては一致できる領域。診断と推論の科学をベースとした事前対応的手法が必要。

d.領域(4):知識の不確実性の幅が大きく、かつその結果の受容レベルの評価に対して利害関係者間で大きな対立が生じる領域。不確実性への評価のメタ科学(注1)の発展と認識の共通化へのリスク対話を中心としたアプローチが必要。

上記の認識を踏まえて、地球環境問題へのリスクアプローチの試みの一つとしてリスクの相対評価とリスクコミュニケーションによる対応を挙げている。特に、リスクの研究、評価、管理の全プロセスにわたって、関係者の間でリスクの事象の認知、評価、判定、削減方法や手段に関する情報(リスク情報)の双方向の対話(リスクコミュニケーション)の重要性を指摘している。このような認識に立って地球環境問題のリスク指標、リスク評価手法などの研究が進められている。地球環境問題のリスク回避のための国際的取り組みの経緯と現状を以下に示す。a.1972年6月「国連人間環境会議」(ストックホルム)「人間環境宣言」の採択。国連における環境機関の創設に合意[国連環境計画(UNEP)創設(1973年)へ]

b.1984~87年「環境と開発に関する世界委員会」(ブルントラント委員会)での検討○原環境庁長官(当時)の提案を契機に設置。環境問題への長期的取り組み検討を目的。大来佐武郎元外務大臣も委員の一人。

○報告書「Our Common Future」を公表(1987年4月)。c.1992年6月「国連環境開発会議(UNCED)」(リオデジャネイロ)○それまでの国際的取り組みの一大集成会議(182か国、102名の首脳が参加)。

○「環境と開発に関するリオ宣言」「アジェンダ21」「森林原則声明」の採択。「気候変動枠組条約」「生物多様性条約」の署名開放。

d.1997年7月「地球環境開発特別総会(UNGASS)」(ニューヨーク)○地球サミットから5年目に、「アジェンダ21の一層の実施のための計画」を採択。

e.2002年9月「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」(ヨハネスブルグ)

地球サミットから10年目に、「アジェンダ21」の見直しや新たに生じた

100

(注 1)メタ科学:metapolicy science、客観的・技術的な部分と文化的・倫理的な部分の両面を含む総合的科学

UN E P : U n i t e dNations EnvironmentProgramme

UNCED : Un i tedNations Conferenceon Environment andDevelopment

WSSD:World Sum-mit on SustainableDevelopment

6.1

課題等について議論。191か国104名の首脳が参加。延べ2万人を超える参加があった。持続可能な開発のための決意を新たにする「ヨハネスブルグ宣言」、21世紀最初の包括的な行動指針を示す「実施計画」文書及び市民社会等との連携・協力に基づいて行うパートナーシップ(タイプ2イニシアティブ)を採択。地球環境問題は我が国が国際貢献を果たしていく最重要分野の一つと位置づけ、以下のような取り組みを進めている。a.国際的枠組み(条約、行動計画など)策定への積極的取り組み○第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)の開催(1997年12月)など

b.環境分野のODAの強化・拡充○2001年度環境分野ODA実績: 2,222億円○途上国支援のため、「21世紀に向けた環境開発構想(ISD)」(1997年6月)、特に地球温暖化分野での「京都イニシアティブ」(1997年12月)を発表。

○環境問題のうち、水問題への取り組みに関する「日本水協力イニシアティブ」(2003年3月)を第3回世界水フォーラム・閣僚級国際会議において発表。

c.環境関連国際機関、フォーラムへの貢献○「国連環境計画(UNEP)」への拠出○「UNEP国際環境技術センター」の大阪・滋賀への誘致(1992年10月)。

○国連持続可能な開発委員会(CSD)(アジェンダ21の各項目のフォローアップを目的として1993年以降毎年国連本部で開催)メンバー国として積極参加。

○途上国支援のための資金メカニズムである「地球環境ファシリティー(GEF)」への拠出(米国に次いで第2位)。[2002年7月時点での実拠出額は、(米国が一部未払いのため)最大]

○小泉総理が出席し、環境と開発の両立と人づくりの重要性を訴え、我が国の貢献策である「小泉構想」を表明。

○「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD)で主要なトピックとなった水問題について、その成果を踏まえ、2003年3月、第3回水フォーラム及び閣僚級国際会議を京都、滋賀及び大阪で開催。

主な国際条約の内容、現状、今後の課題について以下に示す。

101

COP:Conference ofthe Parties

ISD: Initiatives forSustainable Develop-ment

CSD:Commissionon Sustainable Devel-opment

GEF:Global Envi-ronmental Facilities

地球環境リスクと国際的取り組みChapter

6国際的取り組みと国際条約

(1)気候変動枠組条約(地球温暖化防止)大気中の温室効果ガス濃度の安定化を目的に1992年5月に採択、1994年3月発効されたが、具体的な排出削減の義務づけはなし。2003年5月現在の締約国数は187か国・1地域である。COP3が1997年12月に京都で開催され、「京都議定書」が採択された

(表6.2-1)。米国の議定書からの脱退等の問題やロシアの条約批准遅延等により、2003年10月現在未発効である。

(2)バーゼル条約(廃棄物越境移動規制)バーゼル条約は、有害廃棄物の国境を超える移動及びその処分に関する取り組みを規定することにより廃棄物の適正な処理を目指すことを目的として1989年3月及び1992年5月に発効した(表6.2-2)。2003年5月現在の締約国数は155か国・1地域である。

(3)ウィーン条約(オゾン層保護)○ウィーン条約は、オゾン層保護の変化により生ずる悪影響から人の健康及び環境を保護するために適当な措置をとることを目的として、1985年3月に採択、1988年9月に発効した(表6.2-3)。2002年12月現在の締約国数は184か国・1地域。○ウィーン条約によりオゾン層を破壊するおそれのある物質を特定し、当該物質の生産、消費及び貿易を規制して人の健康及び環境を保護す

102

6.2

6.2 国際条約

内 容

京都議定書2008年から2012年の5年間における「先進国・市場経済移行国」の温室効果ガスの排出を、1990年(基準年)比で、附属書に規定された数値(%)に従って削減することが義務づけられた。日本 6%、米国 7%、EU8%。

対象となる温室効果ガスは、二酸化炭素、メタンほか6種類。

現 状

<京都議定書に関する課題>① 京都議定書の早期発効② 議定書実施のための細則の交渉

③ 米国や途上国を含むすべての国が参加する共通のルール構築

<枠組条約に関する課題>技術移転、条約第4条8、9項(温暖化の悪影響、対応措置の影響)、キャパシティビルディング。

■表6.2-1 気候変動枠組条約(京都議定書)の内容など

今後の課題

京都議定書発効後の京都議定書の実施(京都メカニズムの実施など)。

米国や途上国を含むすべての国が参加する共通のルールの構築(この点、京都議定書第3条9において、2013年以降の削減約束は遅くとも2005年末までに検討を開始することになっていることに留意)。

ることを目的として、「モントリオール議定書」が1987年9月に採択され、1989年1月に発効。2002年12月の締約国・地域数は183か国・1地域である。○「オゾン層保護基金」は、1990年6月の議定書第2回締約国会合において、モントリオール議定書に基づく規制措置を自力で実施する十分な資金・技術を有していない開発途上国を援助することを目的に資金設立が合意され、1993年1月に発足した。モントリオール議定書に基づくオゾン層破壊物質削減スケジュールを図6.2-1に示す。

103

国際条約Chapter

6国際的取り組みと国際条約

■表6.2-2 バーゼル条約の内容など

■表6.2-3 ウィーン条約(モントリオール議定書)の内容など

内 容

条約に特定する有害廃棄物の輸出には、輸入国の書面による同意を要する。

締約国は、国内における廃棄物の発生を最小限に押さえ、廃棄物の環境上適正な処分のため、可能な限り国内の処分施設が利用できるようにすることを確保する。廃棄物の不法取引を犯罪性のあるものと認め、この条約に違反する行為を防止し、処罰するための措置をとる。非締約国との廃棄物の輸出入を原則禁止する。

現 状

2002年 12月に第6回締約国会合が開催され、下記の課題が話し合われた。

<条約に関する課題>① 遵守メカニズムの制定

② 今後10年間を対象にした「戦略計画」の作成

③ 技術移転地域センター設立及び有効活用

今後の課題

<改正された条約への対応>OECD諸国から非OECD諸国への最終目的での廃棄物の越境移動及び再生利用、回収目的での廃棄物の越境移動が禁止されることになったが、我が国は、アジア各国の実情に合わせた対応の検討が国内産業界との調整が必要で2003年5月現在、未締結。(2003年5月現在締約国数は、35か国・1地域)

内 容

モントリオール議定書

現 状

<議定書に定める規制措置>① 各オゾン層破壊物質の全廃スケジュールの設定② 非締約国との貿易の規制(規制物質の輸出入の禁止又は制限など)

③ 最新の化学、環境、技術及び経済に関する情報に基づく規制措置の評価及び再検討

<議定書の下での規制措置の強化>モントリオール議定書の採択後、議定書締約国の間でオゾン層の破壊状況と規制措置について、さらに検討が行われた結果、オゾン層の破壊が予想以上に進んでいることが判明し、過去5回にわたって規制措置の強化が実施された。

今後の課題

議定書に基づき 1999年より開発途上国における規制が本格的に開始されたことから、ますます基金の役割が重要。

104

6.2

(注)各物質のグループごとに、生産量及び消費量(=生産量+輸入量-輸出量)が削減される。*1 消費量の基準量は、HCFCの1989年消費量+CFCの1989年消費量 ×2.8%。

生産量の基準量は、HCFCの1989年生産量と消費量の平均値+CFCの1989年生産量と消費量の平均値×2.8%。

*2 基準量は、1995年から1997年までの生産量・消費量の平均値又は生産量・消費量が一人当たり0.3kgとなる値のいずれか低い値。

*3 基準量は、1998年から2000年までの生産量・消費量の平均値又は生産量・消費量が一人当たり0.2kgとなる値のいずれか低い値。

*4 基準量は、1995年から1998年までの生産量・消費量の平均値。*5 検疫及び出荷前処理用として使用される臭化メチルは、規制対象外となっている。

生産が全廃となった物質でも途上国の基礎的な需要を満たすための生産、及び試験研究・分析や定量噴霧式吸入器などの必要不可欠な用途についての生産等は規制対象外となっている。

出典:環境省資料「オゾン層を守ろう」、p.9(2003.9)

特定フロン�(CFC5種)�

ハロン�

HCFC*1

その他のCFC

四塩化炭素�

HBFC

ブロモ�クロロメタン�

臭化メチル*5

1,1,1-トリク�ロロエタン�

消費量�

生産量�

1990

1986年比100%� 基準量比100%*2

基準量比100%*2

基準量比80%*3

基準量比15%*3

基準量比100%*3

基準量比100%*4

1986年比100%�

1989年比100%�

1989年比80%�

1989年比100%�

1991年比100%�

1989年比100%� 2015年比100%�

2015年比100%� 2040年全廃�

1989年比15%�

1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025

1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025

先進国に対する規制� 開発途上国に対する規制�

25%�全廃�

50%�

50%�

15%�

15%�

70%�

10%�

30%�

65%�

80%�

35%�

50%�

75%�50%�30%�

全廃�

全廃�

1989 1994

1994 2002

2002

2003

2003

2007

1992

1996

25%�全廃�

1994

1995

1995

1993

19941993

1996

全廃�

1996

全廃�

1996

1996

1996

2004

1999 2010

全廃�2010

全廃�

全廃�

全廃�

全廃�

全廃� 全廃�

2015

2015 2020

全廃�2010

全廃�2010

2010

2010

2004 2016

2015

20202010

2005

2005

2005

2005

200320011999 2005

2007

100%�

■図6.2-1 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール(1999年12月改正)

(4)ロンドン・ダンピング条約(廃棄物海洋投棄規制)正式名称は「廃棄物その他の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」

といい、船舶、海洋施設、航空機からの陸上発生廃棄物の海洋投棄や洋上での焼却処分を規制するための国際条約。1972年に採択され、1975年に発効。日本は1980年10月に批准した。条約は、「自国の管轄権内又は管理下における活動が、他の国又は国の管轄外の地域の環境に損害をもたらさないことを確保する責任を有すること」と規定している。

(5)ロッテルダム条約(仮称)及びストックホルム条約(有害化学物質規制)(表6.2-4)

「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前の、かつ情報に基づく同意の手続きに関するロッテルダム条約(仮称)」が1998年9月に採択されたが、2003年10月現在未発効である。2003年6月現在、43か国が締結しており、我が国は署名済みであるが未発効である。「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」は残留性有機汚染物質からの人の健康保護及び環境保全を目的として2001年5月に採択された。2003年6月現在、我が国を含む33か国が署名したが、発効条件の50か国に達しておらず未発効である。

(6)その他の国際条約地球環境関連のその他の国際条約を表6.2-5に示す。

105

POPs:PersistentOrganic Pollutants

国際条約Chapter

6国際的取り組みと国際条約

■表6.2-4 ロッテルダム条約(仮称)及びストックホルム条約の内容など

(注)*1 WSSD:「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(ヨハネスブルグ地球サミット)

内 容

① ロッテルダム条約(仮称)有害化学物質の国際取引に際しての事前通報制度等につき規定。条約対象物質は、31物質。② ストックホルム条約残留性有機汚染物質(PCB、DDT、ダイオキシン類など)の製造、使用及び輸出入の原則禁止、非意図的な放出の放出源の特定、廃棄物の適正な管理等につき規定。条約対象物質は、12物質。

現 状

① ロッテルダム条約及びストックホルム条約とも未発効なものの、条約発効後の円滑な条約の実施に向け、政府間交渉委員会を年1回開催し、種々の課題につき議論を継続。

②2002年9月に開催されたWSSD*1の「実施計画」において、ロッテルダム条約は2003年、ストックホルム条約は2004年の発効を目指すことが合意された。

今後の課題

① 我が国のロッテルダム条約の早期締結(2003年 5月 22日、国会で承認)

② 両条約の早期発効に向けた各国への働きかけ

③ 両条約の適正な実施のための国内体制の構築

106

6.2

区 分

大気汚染

海洋汚染

自然保護

砂漠化防止

南極環境保護

条約名

1.長距離越境大気汚染条約(LRTAP条約)2.欧州における大気汚染物質の長距離移動の監視及び評価に関する協力計画の長期的資金供与に関する議定書(EMEP議定書)

3.硫黄酸化物排出量削減に関するヘルシンキ議定書(ヘルシンキ議定書)

4.窒素酸化物排出規制とその越境移動に関するソフィア議定書(ソフィア議定書)

5.揮発性有機化合物の排出規制とその越境移動に関するジュネーブ議定書(ジュネーブ議定書)

6.硫黄酸化物排出量のさらなる削減に関するオスロ議定書(オスロ議定書)

7.重金属類に関するオーフス議定書(オーフス議定書)8.残留性有機汚染物質に関するオーフス議定書(POPs議定書)

9.酸性化・富栄養化・光化学スモッグ軽減のための議定書(グーテンベルグ議定書)

1.石油による海洋汚染防止のための国際条約(OILPOL条約)2.石油汚染災害時における公海への干渉に関連する国際条約3.1973年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する1978年の議定書(MALPOL 73/78条約)

4.石油汚染に対する準備・対応・協力に関する国際条約(OPRC条約)

1.絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際的取り引きに関する条約(ワシントン条約)

2.移住性野生生物保護条約(ボン条約)3.コウモリの保全に関する協定(EUROBATS)4.バルト海及び北海の小型鯨類の保全に関する協定5.黒海、地中海及び(ジブラルタル海峡以西の)大西洋の接続水域の鯨類の保全に関する協定(ACCOBAMS)

6.アフリカ・ユーラシア渡り性水鳥の保全に関する協定(AEWA)

7.特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)

8.世界の文化遺産及び自然遺産保護条約(世界遺産条約)9.生物多様性条約(CBD)10.バイオセイフティーに関するカルタヘナ議定書(カルタヘ

ナ議定書)11.1994年の国際熱帯木材協定(1994年の ITTA)

砂漠化対処条約(CCD)

1.南極条約2.環境保護に関する南極条約議定書(マドリード議定書)3.南極のアザラシ保存のための条約4.南極海洋生物資源の保存に関する条約(CCAMLR)

採択年

19791984

1985

1988

1991

1994

19981998

1999

195419691973/19781990

1973

1979199119911996

1995

1971

197219922000

1994

1994

1959199119721980

発効年

19831988

1987

1991

1997

1998

未発効未発効

未発効

195819751983

1995

1975

1983199419942001

1999

1975

19751993未発効

1997/2001

1996

1996199819781982

■表6.2-5 その他の地球環境関連国際条約

107

国際条約Chapter

6国際的取り組みと国際条約

●参考文献

1)日本機械輸出組合:海外環境関連情報誌、environment update,Vol.4, No.6(2003.3)2)タエ・ヒー・リー、ノーバート・スガヤン:TALISMAN別冊、海外進出と環境汚染シリーズ、アジア編その1、韓国、東京海上火災保険(1993.1)

3)マークF.テンアイク:TALISMAN別冊、海外進出と環境汚染シリーズ、米国編その21、東京海上火災保険(1994.2)

4)片岡直樹:TALISMAN別冊、アジア編その5、中国の環境法、東京海上火災保険(2002.12)5)牧明彦:TALISMAN別冊、日本編、企業に求められる環境リスク評価、東京海上火災保険(2000.12)6)(株)三菱総合研究所編:リスクマネジメント、日本規格協会(2003.7)7)米本昌平:地球環境問題とは何か、岩波書店(1994.4)

109

(1)ドイツドイツ連邦環境省が2002~2003年に発表した環境関連法規について以

下に示す。

1)大気保全令

連邦参議院は、大気保全令の改正を承認した。同令では、二酸化硫黄、二酸化窒素、鉛、一酸化炭素などの有害物質に関する環境汚染基準を定め、移行期間(2005年あるいは2010年)の後、その基準値を超えるものを規制する。また、公衆に大気環境の情報を公開するとともに、規制対象を施設だけでなく、交通などの分野にまで広げることとしている。また、連邦参議院は、大気中の二酸化硫黄による環境負荷を軽減するため、暖房用軽油に含まれる硫黄の上限値を0.1%に強化することを承認した。この規制値は、2008年1月1日から適用される(現在は0.2%)。他方、暖房用重油については、2003年1月1日から硫黄含有率1.0%となる。

2)廃棄木材令

連邦参議院は、廃棄木材令を承認した。これは、最初の連邦レベルで統一した廃棄木材の処理の基準を定めた法令である。将来的には、木材は、廃棄物集積場に捨てられるのではなく、熱処理が求められる。同令の成立には、連邦議会の承認が必要であり、2003年はじめに施行されるよう求められている。また、連邦参議院が承認した廃棄物処分場令では、廃棄物処分場の技術基準、設置条件、管理状況、廃棄物処分場・廃棄物長期保管施設の閉鎖やそのアフターケアなどについて定めている。2009年以降、環境に配慮していない廃棄物集積場の運営は禁じられる。同令についても、2003年中の施行を目指している。

Chapter

7

7.1 EU各国(北欧、ドイツ、オランダ等)

主要国の環境規制と最近の動向

3)環境監査特別令及び改正環境監査法

連邦参議院は、EU環境監査規則「EMAS」に従って、環境マネジメントシステムを自発的に導入する経営者に対し、行政の監視を緩和する連邦統一の基準を定めた特別令を承認した。この政令は、EMASを魅力的にするために策定されたものである。また、連邦参議院は、EUの環境監査規則改定に伴い、環境監査法の改正を承認した。これにより企業と行政機関に対する認証も、共通のものとなる。

4)低硫黄燃料に対する税制優遇措置

硫黄含有濃度が10ppm以下の脱硫ガソリンと脱硫ディーゼルに対する税優遇策が始まる。欧州委員会の動力用燃料に関する指令案では、EU全体としては、2005年から各加盟国における低硫黄燃料の優遇措置がスタートするが、ドイツはこれに先駆的に取り組んでいる。

5)デポジット制度

ワンウェイ容器に対するデポジット制度が導入される。デポジットは、リターナブル容器減少の原因となっているビール、ミネラルウォーター、炭酸清涼飲料水の缶やワンウェイ瓶に課せられる。デポジット金は通常のもので0.25ユーロ(27.5円)、1.5 L以上のものには0.5ユーロ(55円)で、空の容器を返還すると払い戻される。ワイン、フルーツジュース、スパークリングワイン、スピリット、ミルクにはデポジットはかけられない。

6)産業廃棄物令

産業廃棄物令が施行され、企業は、家庭と同様に廃棄物の分別を行うことが必要となる。産業廃棄物令は、産業廃棄物の分別促進と実効的な事前処理等の促進を目指している。企業は、紙、ガラス、プラスチック、金属等の分別を行わなくてはならない。将来的に85%のリサイクル率の達成が必要とされる。

7)トリブチルすずを含む船舶燃料の使用禁止

トリブチルすずを含む船舶塗料が禁止される。トリブチルすずは、有機すず化合物の一種で、生殖異常の発生につながることが確認されている。これは、2002年6月に欧州委員会で採択された指令を国内法に転換したものである。

110

E U : E u r o p e a nUnion

EMAS:Eco-Mana-gement and AuditScheme

7.1

(2)オランダ【化学物質政策】

オランダ政府は、有害化学物質に関する今後の政策方針を2001年3月下旬に発表し、「人の健康と環境に対するゼロリスクの達成」を掲げ、製品・物質のライフサイクルの考慮を企業に義務づける姿勢を明らかにした。PBT物質(残留性、生体蓄積性、毒性のある物質)を遅くとも2020年までに排除し、化学物質を含む製品の安全性を確保することを目標としている。オランダ政府が発表した政策内容の骨子は以下のとおり。a.予防原則の適用b.化学物質に関する情報の開示c.製品や物質の持つリスクの可能性に関する情報収集とリスク削減措置を企業に義務づける

d.自社製品のライフサイクルを考慮し、リスク管理を実施することを企業に義務づける

e.一般消費者向け製品から有害物質を排除。産業用製品については、有害物質を極力削減

また、国内で販売される製品に含まれる化学物質について企業に義務づけられるデータ収集等の期限は、以下のとおり提案されている。a.2004年までに、すべての物質、製品についておおまかな選別を行い、リスク別に5段階に分類

b.2010年までに、有害と考えられる物質・製品に関し、さらに詳細なデータの収集を完了

c.2015年までに、すべての化学物質の詳細なデータ収集を完了オランダではこれまでに、産業界、政府(環境省)、環境保護グループの間で化学物質管理をめぐる議論が重ねられてきており、以上の政府提案に対しても産業界は、今後の化学物質規制の厳格化を受け入れるとのコメントを発表。これまでの話し合いを反映し、化学物質、特に有害化学物質の管理を強化する方向で国内で大筋の合意が形成されていることを示した。しかし一方では、オランダの化学産業協会(VNCI)をはじめとする多くの産業団体が、遅くとも2020年までにPBTを排除しゼロリスクを目指

111

PBT : Pers is ten tBioaccumulative andToxic

EU各国(北欧、ドイツ、オランダ等)Chapter

7主要国の環境規制と最近の動向

出典:EICネット海外ニュース http://www.eic.or.jpEICネットは(独)国立環境研究所の環境情報案内・交流サイトで(財)環境情報普及センターが運用している。

すとの目標について、「完全に非現実的」とコメント。具体的には、数千種類存在する既存の化学物質のリスク評価を行うためには、おおまかな選別を実施することは支持する一方、データ提供義務が新たに産業界にコスト負担を強いることは避け、現在入手可能なデータを活用することに重点を置くべきであるとしている。また政府側は、データのない物質の使用、販売を禁止する方針を示しているが、産業界は、単にデータが不十分であることは物質の禁止の根拠になり得ないとし、反対している。今後はオランダ環境省が示した政策について、国内で話し合いが進められるが、オランダ政府は、国内の化学物質規制の実施に当たってはEUレベルの政策決定の動向にも部分的に左右されるとし、「EUとのリンク」も表明している。

(3)スウェーデン【スウェーデンの化学物質政策】

EU域内において化学物質の環境規制に厳しい態度をとっているスウェーデンは、2020年までに国内からの「有害化学物質の完全排除」を目標として掲げ、これを達成するため、2003年までに国内の化学物質製造、販売などの監視を行う機関(National Chemicals Inspectorate: KEMI)強化のための大幅な予算及び人員増加計画を発表している。同国がEU議会の議長国(任期:半年)となったこと、及びEUの「化学物質政策白書」が発表されたのを契機として、EU域内に対してもスウェーデン国内と同程度の規制の実施を求め、本件に関し政治的イニシアティブをとっていくことを表明した。具体的には、2007年までに国内で一般消費者を対象として販売される新規製品から、可能な限り発がん性・突然変異性・生殖機能に影響を及ぼす毒性のある物質(CMR)を排除することを目的に、その手段として、2005年までに新規の残留性有機汚染物質(POPs)の禁止、2010年までにvPvB(毒性に関係なく極めて残留性が強く、極めて生体蓄積性が高い)物質の禁止、2015年までにその他の残留性有機汚染物質の禁止導入などが提案されている。またこの中には、金属についても、水銀を2003年から、さらにいまだ議論の余地があるカドミウム、鉛を2015年から、それぞれ使用禁止とすることが含まれている。2000年、デンマークが鉛の全面使用禁止提案を行ったが、域内関係者からは科学的根拠に欠けるとの批判を受けている。しかし、デンマークは、「禁止措置は、将来の鉛問題の表面化及び深刻化を防ぐことを目的としており、EUの他の加盟国の状況等は関係なく、将来の鉛汚染を削減するた

112

CMR:Carcinogenic,Mutagenic, Toxic toReproduction

vPvB:verry Persis-tent and very Bioac-cumulative

7.1

めには、禁止措置が最も有効」との考えを示し、EU各加盟国や産業界の強い反対にもかかわらず「同国では鉛の使用禁止措置の導入を決行する」と発表。2001年3月から、バッテリー、家電製品を除き鉛の使用を禁止し、さらにこの禁止措置を鉛金属だけでなく、PVC、プラスチック安定剤や自動車部品、鉛化合物を含む製品にまで広範にわたり適応させ、これらから2004年までに鉛を排除する計画であることを明らかにしている。また、スウェーデン政府は、リスクの高い化学物質を厳重に管理するため、認可及び評価制度を導入し、2010年以降は、その物質が人体や環境に与える影響についてのデータが明示されていない物質の製造を禁止することも提案しており、中でも製造量の多い物質については、さらに前倒しで実施することも検討するとしている。

113

PVC: Poly VinylChloride

EU各国(北欧、ドイツ、オランダ等)Chapter

7主要国の環境規制と最近の動向

出典:金属鉱業事業団ホームページ、EUエコ・ブリーズhttp://www.mmaj.go.jp

(1)カリフォルニア州(有害化学物質規制)1)プロポジション65

カリフォルニア州は、有害化学物質の暴露対策として「飲料水及び有害物質の安全性に係る法律」(プロポジション65)を1986年に制定した。対象物質は、発がん性物質、生殖機能障害や先天性欠損症を引き起こす物質を特定した。規制内容は、次のとおりである。a.飲料水水源への有害化学物質の排出禁止b.メーカーに対する化学物質への接触に対する警告義務づけ(製品への「警告ラベル」の貼り付け)

警告ラベルの内容は、以下のようなものを要求している。

2)SB20

電子機器に含まれる有害化学物質対策として、2003年「電子機器リサイクル法」(SB20)が制定された。不要になった電子製品の回収とリサイクルが義務づけられた。小売業者とメーカーが費用を負担する。電子機器に含まれる対象有害化学物質は鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBDE、PBBの6種類となっている。発効は2004年7月の予定。

(2)バーモント州(水銀規制)バーモント州では、1998年に水銀を含んだ製品の州内での使用及び販売を禁止する州法が成立。1999年10月1日までにメーカーは対応策を提出する義務を負う。2000年3月1日発効。これは他の州への影響も大きく、さらに鉛を含む他の有害物質への規制強化につながる可能性のあるものとみられる。規制内容は、次のとおりである。2000年3月1日以降、製造者・販売業者は、廃棄物となった場合の注意

114

7.2

7.2 米国の主な州法

この製品に触れると、先天性欠損症又は生殖機能障害を引き起こす可能性のある鉛に暴露するおそれがあります。取り扱い後は、手を洗ってください。

喚起ラベル貼り付けのない水銀含有製品を小売店で販売すること、使用することが禁止となった。注意喚起ラベルには、以下の記述を要求している。

注意喚起ラベル貼り付け対象製品は表7.2-1のとおりで、違反に対しては最高25,000ドルの罰金刑か、6か月以下の禁固刑が科せられる。

115

米国の主な州法Chapter

7主要国の環境規制と最近の動向

水銀含有廃棄物は、ごみ箱に捨てないでください。リサイクルもしくは有害廃棄物として扱ってください。

■表7.2-1 注意喚起ラベル貼り付け対象製品

1 サーモスタット、体温計、温度計

2 スイッチ

3 医療器具

4 継電器又は電気装置

5 蛍光灯

6 ボタン電池以外の電池

(1)中国1)中国の環境法

中国の環境法は、1979年の「環境保護法(試行)」から始まった。環境汚染関係の法律は、表7.3-1に示すように六つあり、近年数度にわたり改正されている。頻繁な改正は汚染問題が深刻で制度の整備が追いついていないことの現れである。特に大気汚染の状況は極めて深刻で、世界保健機関(WHO)の公表でも世界ワースト10にいくつかの都市が入っている。

2)電子信息産品生産汚染防治管理弁法

中国は、日本の家電リサイクル法、EUのWEEE指令及びRoHS指令(p.120~121参照)に匹敵する新法の制定を目指しているが、制定作業に遅れが出ている様子である。規制内容は、以下のとおりとなることが予想されている。a.所轄機関:国務院の「信息産業部」b.公布時期:2003年6月までには公布される見込みだったが、まだ公布されていない。

116

WHO:World HealthOrganization

7.3

7.3 アジアの国々

法律名:中国名を使用 制定・改正年月

環境保護法(試行) 1979年 9 月 制定海洋環境保護法 1982年 8 月 制定水汚染防治法 1984年 5 月 制定大気汚染防治法 1987年 9 月 制定環境保護法 1989年12 月 改正大気汚染防治法 1995年 8 月 改正固体廃物汚染環境防治法 1995年10 月 制定水汚染防治法 1996年 5 月 改正環境噪声汚染防治法 1996年10 月 改正海洋環境保護法 1999年12 月 制定大気汚染防治法 2000年 4 月 改正環境評価法 2002年10 月 制定(環境アセスメント等従来にない発展した内容で2003年9月1日施行)

■表7.3-1 環境汚染関係の法律の制定改正

出典:「中国の環境法」(片岡直樹著)TALISMAN別冊、一部追記

c.骨子:○電子信息産品製造者は、2003年7月1日から、有毒有害物質の減量化生産措置を実行。

○2006年7月1日以降販売する電子信息産品に、「国家重点監管目録」に示された、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE等の含有を禁止。

○メーカーは、国が指定した「廃旧電子信息産品回収機構」と廃旧電子信息産品回収契約を結び、安全使用期限を超える産品の回収をそれらの回収機構に委託。

○メーカーは、電子信息産品の上に安全使用期限を表示。○電子信息産品の上に「材料の成分標準番号」「回収利用可否のマーク」貼り付け。

d.概要:○EUのWEEE指令及びRoHS指令を参照して策定されており、使用禁止の6物質を規制。

○内容的にWEEE指令、RoHS指令及びEuP(エネルギー使用製品)指令を合わせたものになると推測。

(2)韓国1)韓国の環境法

大韓民国憲法で「すべての国民は、健康的かつ快適な環境に居住する権利を有しており、国家並びに国民は環境保全のために努力しなければなら

117

EuP:Energy usingProducts

アジアの国々Chapter

7主要国の環境規制と最近の動向

【参考】新法制定に関する新華社の報道(抜粋)

パソコンや携帯電話などの電子機器で、2006年から鉛など環境汚染を引き起こすお

それのある物質の使用が禁止される。中国情報産業部が主導して制定準備を進めてい

る「電子信息汚染防治管理弁法」によると、2003年7月から企業に対し、有害物質の

削減を要求。2006年1月1日からは、「国家重点管理目録」の対象製品には鉛、水銀、

カドミウム、PBB、PBDE などの使用が禁止される。

同弁法では、有害物質の禁止のほか、電子廃棄物の回収や処理、再利用についても

規定される。同弁法は、年内にも施行される見通し。中国では、ほかにも、家電の回

収や再利用について定めた「廃旧家電回収処理与再利用管理弁法」、環境汚染の防止を

強化する「家電及電子産品汚染防治技術政策」の策定作業が進行中。うち、家電関連

の規定については、費用負担などの問題から、作業が遅れている。

(2003年3月6日新華社)

ない」と定められている。環境法の始まりは、1987年に施行された「環境保護法」で、その後1991年に特定分野の法律に分割され(表7.3-2)、より強い効力を発揮するようになった。また、成文化された強制力のある先例がなく、また、政府各省に広く自由裁量が与えられており、環境法と規制遵守について不確定要素がある。

2)有害物質規制

有害物質の製造、輸出入、販売、取り扱いは有害化学物質規制法により規制されている。対象物質は、1991年2月以降、一般有害物質(424物質)と特別有害物質(94物質)に分類され、いずれも取り扱う企業は環境省の地方支局に登録の義務がある。また、新規に使用、輸入する未規制化学物質は、その毒性などを事前に国の分析・評価を必要とする。有害化学物質規制法に違反すると、3年以下の禁固刑又は1,000万ウォン(約100万円)以下の罰金刑が科せられる。

118

7.3

法律名 施行年月

1 環境保護法 1987年4月

2 廃棄物取締法 1987年4月

3 海洋汚染防止法 1987年7月

4 基本環境環境政策法 1991年2月

5 大気環境保全法 1991年2月

6 水質環境保全法 1991年2月

7 騒音振動取締法 1991年2月

8 汚染損害調停法 1991年2月

9 有害化学物質規制法(旧有害物資法:1981.1施行) 1991年2月

10 環境汚染処罰特別法 1991年5月

11 下水・排出物・家畜排泄水処理法 1991年9月

12 環境改善費用徴収法 1992年7月

13 自然環境保護法 1992年9月

■表7.3-2 韓国の主な環境法

EU(欧州連合)は、諸法の立法機関であるEU理事会及び欧州議会とEU理事会共同の意思決定制度により、地域法を制定する。諸法は、批准手続きや拘束性により次のように分類される。a.規則(Regulations):ダイレクトに加盟国に適用され、各国における立法手続きを要しない。

b.指令(Directives):加盟国は、目的を達成する義務を負うが、達成の方法や形式については各国に任せる。

c.決定(Decisions):特定国、あるいは全加盟国に対するもので、当事者だけを束縛する。

d.勧告と意見(Recommendation and opinions):拘束性を持たない。したがって、EU指令とはEU加盟国全体が“ある目的を達成すること”、

を義務づけるが、それらの目的を果たす方法や形式は各国に任せられているものである。EUにおいて環境政策は、1987年の単一欧州議定書(ローマ条約の大改正、Single European Act 1986)の発効以来、重要な政策として位置づけられている。特に、1992年に決定された第5次環境行動計画は、「持続可能な開発(Sustainable Development)」を基本としたEUの環境政策のガイドラインとなった。第6次環境行動計画「環境2010:我々の未来、我々の選択」は、2001年から2010年におけるEUの環境政策の主要な優先事項と目的及び対策の詳細を明らかにしている。第6次計画の優先分野は、気候変動、自然と生物多様性、環境と健康、天然資源と廃棄物の四つがとり上げられており、これらの優先分野における改善を目指し、第6次計画は以下のような五つの対策を打ち出している。これは、より効果的な施策及び革新的な解決策の必要性を強調したもので、対策の策定で企業や市民が参加しやすい手段を採用するとともに、法規制のより効果的な適用が求められている。○既存の環境関連法を確実に実施すること○すべての関連分野に環境への配慮を結び付けること○解決策を見極めるために企業や消費者と密接に協力すること○環境について、適切かつ入手しやすい環境情報を市民に提供すること○土地利用に関して、より環境を意識した姿勢を育成すること以下にEU指令の代表例であるRoHS指令とWEEE指令の概要を表7.4-

1に示す。

119

EUにおける環境政策(EU指令)Chapter

7主要国の環境規制と最近の動向

7.4 EUにおける環境政策(EU指令)

近年のEUの動きで特徴的なのは、ELV指令やWEEE指令で、メーカーがリサイクルにかかるコストを負担しなければならないなど、「汚染者負担」の原則に則ったものとなっていることである。利害関係が絡んでくるため、このような動きに対しては産業界の強い抵抗や加盟国間の対立がみられ、指令案の採択の遅れや、最終的な内容も欧州委員会の当初の提案から大きく妥協したものとなるなどの影響が出ている。

(1)RoHS指令WEEE指令とともに導入が検討されてきた「電化製品への有害物質使用制限(RoHS)指令」も、WEEE指令と同時に2003年2月13日に発効となった。同指令では、電子・電気業界は2006年7月以降に販売される製品について、現在製品に使用している鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、臭素系難燃剤のポリ臭化ビフェニール(PBB)及びポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)を使用停止し、代替物質を調達しなければならない。これら化学物質の段階的廃止は、電球や蛍光灯にも適用される。ただし、代替物質がまだ開発されていないものについては例外措置が認められいる。この措置は、2005年2月15日までに欧州委員会が見直しを行い、科学技術の進歩に応じて変更が提案される。例外措置は4年ごとに見直しが行われることになっている。また、リサイクルされた製品が有害物質で汚染されるのを防止するため、特別な処理が必要とされる各種の部品は、廃棄物から分別しなければならない。これには、電池、ブラウン管、携帯電話用回路基板、ふっ化炭化水素、外部用電気ケーブル、及び臭素系難燃剤を含有するプラスチック類などが含まれる。なお、はんだや、電子部品のガラス部分、圧電気装置、コンピュータサーバー、その他のデータ保管システムに使用される鉛につい

120

RoHS:Restrictionof Hazardous Sub-stances

7.4

■表7.4-1 RoHS指令とWEEE指令

RoHS指令(有害物質使用制限指令)

○鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、難燃剤2種の6物質の使用禁止

○2006年7月1日施行○対象製品:WEEE指令と同じ○ただし、除外規定あり・測定器、医療機器等除外・ネットワーク基幹製品は当面除外・サーバー機器の鉛は2010年まで除外・高温鉛はんだ、ガラス中の鉛等除外・スペアパーツは適用除外○閾値:TACで現在検討中○測定方法:TACで現在検討中

WEEE指令(廃電気・電子機器指令)

○EEE製品の回収・リサイクルの義務○2005年8月13日施行○消費者:廃棄時費用負担なし○対象者:EEE製品の大部分の生産者(製造・販売・ブランド販売、輸入業者)○廃棄物処理費用は企業負担(個別費用負担責任原則)○加盟国目標として、カテゴリーごとにリカバリー率とリサイクル率目標○製品上市時に保証金を準備○登録、表示、情報公開が必要○ユニット(プリント基板、LCD)は分離処理

ては、使用禁止の適用除外とすることとされた。

(2)WEEE指令EUでは2001年6月、「廃電気・電子機器(WEEE)指令」案が合意され、

2003年2月13日に発効した。WEEE指令は、廃家電・廃電子機器を分別収集し、埋立処分量の削減や自治体のごみ焼却負荷の低下を図るもので、製造メーカーが、消費者により地域の回収場所に廃棄された廃製品を回収・リサイクルする責任を負うことになる。各加盟国で、発効から18か月後となる2004年8月13日までに実施することが求められている。施行後2005年8月13日までの1年間で、最終所有者からの廃品を無料で引き取る制度を各国で確立し、すべての廃棄物の収集、処理、再生、廃棄のコストはメーカーが責任を持つ。同日以降販売される製品については、各社が自社製品に対してコストを負担し、それ以前に市場に出された製品の廃棄物リサイクルのコストについてはメーカーが共同で負担するが、後者については、メーカーは8年(冷蔵庫のような大型家電製品の場合は10年)の移行期間に限って廃棄物処理のコストを新しい製品の価格に含むことが認められている。

(3)ELV指令2000年10月に発効された「廃車(ELV)指令」(2000/53/EC)は自動車メーカーに廃車の解体とリサイクルのコスト負担を義務づけるものである。同指令の優先的目標は可能な限り廃棄物を出さないことにあり、そのため、自動車メーカー及び素材・部品メーカーは以下のような対応が求められる。a.車両設計段階で有害物質の使用を削減する。b.廃棄車両の解体、再利用、回収、リサイクリングが可能となる車両を設計・製造する。

c.車両製造においてリサイクル素材の活用を増加する。d.2003年7月1日以降に販売される自動車部品に水銀、六価クロム、カドミウム、鉛が含まれないようにする(一部例外措置あり)。

加えて、同指令により、廃車の回収・リサイクル制度も導入される。EU加盟国は、廃車並びにこれに含まれる廃棄部品の回収システム、さらに認定された解体施設への移動、解体証明書の発行(無料)と車両登録からの抹消を行うシステムを確立しなければならない。廃車の所有者によるコスト負担はなく、自動車メーカーが負担する。廃車の保管及び処理に関しても厳格な管理が求められる。廃車を解体した上、環境に有害な部品を除去しなければならない。その際、バッテリー、

121

WEEE:Waste Elec-trical and ElectronicEquipment

ELV: End-of-LifeVehicle

EUにおける環境政策(EU指令)Chapter

7主要国の環境規制と最近の動向

タイヤ、オイルなど再利用やリサイクルが可能な部品が優先される。欧州委員会によると現在、廃棄処分となる車両の75%がリサイクルされているという。同指令では、廃車1台当たりの平均重量で、再利用率及び(再利用に適さない部品の)回収率を2006年までに85%に、また2015年までには95%に、再利用率及びリサイクル率もそれぞれ80%と85%に増加させることを最低目標としている。EU各加盟国は2002年4月21日までに同指令を国内法として整備することが求められていたが、期限内に実施することができた国は一つもなかった。2003年4月時点で指令を施行済みの加盟国は、従来から廃車リサイクルに関する国内法が存在しており、おおむね指令に合わせて国内法を修正するだけですんだドイツ、オランダ、及びスウェーデンのみである。イギリスでは2003年3月に入って同指令の国内法移管について諮問を開始している。実施が遅れた大きな原因としては、メーカーの廃棄コスト負担に関し、指令で「全面的に又は大部分を」製造者が負担するとされていた点であいまいさがあったことが指摘されている。これに関し、ベルギー、フィンランド、フランス、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ及びイギリスが、同指令を期限までに国内法に移行せず、またそれ以降対策を連絡することもなかったとして法廷で審判を受ける予定である。加盟国は指令案の作成にも関与しているため、指令の内容に不備があったとしても完全に責任を免れることはできないとみられる。

(4)REACH指令化学物質登録評価許可制度(REACH)は化学物質を登録・評価・許可するための統合的制度の略称である。登録(Registration)は、企業に対しその製品の毒性及び人間や環境が

それらにどのように暴露するかについての情報を含むデータを用意することを求めるものである。企業の製品に関するこの情報についての責任と発生するコストは企業側に求められる。大量に製造される化学物質、あるいは特に有毒な化学物質には評価

(Evaluation)が要求される。評価の結果、使用が禁止される化学物質もあり得る。最も有毒な化学物質には認可(Authorization)が要求される。これらの化学物質の中には、発がん性物質、突然変異誘発性物質、生殖毒性物質、及び難分解性で環境中に蓄積する化学物質が含まれる。認可対象の化学物質は、実質上完全に禁止され、より安全な代替物質が求められる。REACH指令は、化学品の各国管理を欧州化学品機構への一元化が目的

122

REACH:Registra-tion, Evaluation andAuthorization ofChemicals

7.4

であるが、ただし、評価は加盟各国、許可は共同体と加盟国自身が行う。a.新規化学物質及び既存化学物質に関する登録義務づけの統一規制の枠組みへの移行

b.有害性データや暴露データの提出等リスク評価実施義務を産業界に転嫁

c.製品の安全性評価や追加的暴露試験等のリスク評価義務を製造・輸入業者だけでなく、ユーザー産業にも課す

d.発がん物質等懸念される化学物質については個々の用途ごとに上市許可システムを導入

e.製品含有化学物質についての情報開示を要求する規制の導入

123

EUにおける環境政策(EU指令)Chapter

7主要国の環境規制と最近の動向

●参考文献

1)片岡直樹:TALISMAN別冊、アジア編その5、中国の環境法、東京海上火災保険(2002.12)2)蛇抜信夫:日本機械輸出組合会報誌「JMC JOURNAL」、Web版p.24、日本機械輸出組合(2003.6)3)EICネット、海外ニュースWeb情報 http://www.eic.or.jp4)金属鉱業事業団ホームページ、EUエコ・ブリーズWeb情報 http://www.mmaj.go.jp

【A~Z】

3R ……………………………78

BSR ……………………………11

CFC(クロロフルオロカーボン)

………………………………56

CMR …………………………112

COP3(地球温暖化防止京都

会議)………………………101

CSR(企業の社会的責任)……11

EICネット ……………………111

ELV指令………………………121

EU(欧州連合)………………119

HCFC(ハイドロクロロフル

オロカーボン)………………56

HFC(ハイドロフルオロカ

ーボン)………………………56

ISO14001…………………………7

K値規制 ………………………35

MSDS(化学物質安全性データ

シート)………………………46

PBB(ポリ臭化ビフェニール)

………………………………120

PBDE(ポリ臭化ジフェニル

エーテル) …………………120

PBT物質………………………111

PCB(ポリ塩化ビフェニル)…65

PCB廃棄物特別措置法 ………65

PCDD(ポリ塩化ジベンゾ-

パラ-ジオキシン)……………60

PCDE(ポリ塩化ジベンゾフラン)

………………………………60

POPs(残留性有機汚染物質)

………………………………112

POPs条約(ストックホルム

条約)………………………105

PRTR(環境汚染物質排出・

移動登録)……………………46

PRTR法(化学物質管理促進法)

………………………………46

REACH(化学物質登録評価

許可制度)…………………122

REACH指令 …………………122

RoHS指令 ………………119,120

SB20 …………………………114

SRI(社会的責任投資)………13

UNCED(国連環境開発会議)

………………………………100

UNEP(国連環境計画) ……100

vPvB …………………………112

WEEE指令 ………………119,121

WSSD(持続可能な開発に

関する世界首脳会議)……100

【あ】

悪臭………………………………4

悪臭防止法 ……………………43

アジェンダ21 ………………5,100

アスベスト(石綿)……………33

硫黄酸化物 …………………31,32

イタイイタイ病 …………………3

一時使用停止命令 ……………36

一酸化炭素 ……………………35

一般廃棄物 ……………………69

インセンティブ …………………7

ウィーン条約 …………………102

上乗せ ………………………23,85

上乗せ規制 ……………………35

上乗せ濃度基準 ………………39

塩化水素 ………………………31

塩素 ……………………………31

大阪府化学物質適正管理指針

………………………………92

汚染の除去等の措置命令 ……55

オゾン層破壊物質 ……………56

125

索 引索 引

Ind

ex

オゾン層破壊物質削減スケ

ジュール……………………103

オゾン層保護…………………102

オゾン層保護基金……………103

オゾン層保護法 ………………56

オランダ………………………111

【か】

改善命令 ……………………36,41

化学物質安全性データ

シート(MSDS)……………46

化学物質管理促進法(PRTR法)

………………………………46

化学物質審査製造規制法 ……65

化学物質政策…………………111

化学物質登録評価許可

制度(REACH)……………122

拡大生産者責任 ………………20

家電リサイクル法 ……………80

カドミウム……………31,120,121

神奈川県特定有害化学物質 …89

カネミ油症事件 ………………65

カリフォルニア州 ……………114

環境アセスメント(環境影響

評価)…………………………5

環境汚染物質排出・移動

登録(PRTR)………………46

環境格付け …………………8,12

環境基準…………………………4

環境基本法 ………………4,15,17

環境と開発に関する世界

委員会(ブルントラント

委員会)……………………100

環境と開発に関するリオ宣言

………………………………100

環境法の構成 …………………16

環境マネジメントシステム ……7

環境リスク………………………9

環境リスクマネジメント ……13

韓国……………………………117

勧告……………………………119

感染性廃棄物 …………………69

官能試験 ……………………43,44

官報 ……………………………21

企業の社会的責任(CSR)……11

気候変動枠組条約 ………100,102

規則 ………………………21,119

京都議定書……………………102

緊急時の措置 …………………36

金属鉱業事業団………………113

グリーン購入法 ………………80

クロロフルオロカーボン(CFC)

………………………………56

警告ラベル……………………114

建設資材リサイクル法 ………80

公害国会…………………………4

公害対策基本法…………………4

公害問題…………………………3

国際条約 …………………22,102

告示 ……………………………22

国連環境開発会議(UNCED)

………………………………100

国連環境計画(UNEP) ……100

国連人間環境会議……………100

コプラナーPCB(コプラナー

ポリ塩化ビフェニル)………60

コンデンサー …………………65

【さ】

産業廃棄物 ……………………69

産業廃棄物管理票

(マニフェスト) ……………74

産業廃棄物処理施設 …………74

産業廃棄物令…………………110

残留性有機汚染物質(POPs)

………………………………112

資源有効利用促進法 …………78

事故時の措置 ………………36,41

指針 ……………………………85

施設集合地域 …………………35

持続可能な開発………………119

持続可能な開発に関する

世界首脳会議(WSSD)……100

四大公害訴訟……………………3

指定化学物質 …………………47

指定化学物質等取扱事業者 …47

指定基準 ………………………53

指定区域 ………………………55

指定支援法人 …………………55

指定省資源化事業者 …………78

指定地域内事業場 ……………38

指定調査機関 …………………54

指定表示製品 …………………78

指定副産物 ……………………78

指定物質 ………………………33

指定物質排出施設 ……………33

指定物質抑制基準 ……………35

自動車排出ガス ………………35

自動車リサイクル法 …………80

地盤の沈下………………………4

社会的信用………………………9

社会的信用損失…………………9

社会的責任投資(SRI)………13

臭気指数 ………………………43

臭気指数規制 …………………43

臭気測定業務従事者 …………44

臭素系難燃剤…………………120

循環型社会形成推進基本法 …18

循環資源 ………………………19

情報公開 ………………………51

省令 ……………………………21

126

索 引

条例 …………………………23,85

食品リサイクル法 ……………80

指令……………………………119

振動………………………………4

森林原則声明…………………100

水銀 ………………………120,121

水質汚濁防止法 ………………37

水質二法…………………………4

水質の汚濁………………………4

スウェーデン …………………112

ステークホルダー ………………8

ストックホルム条約(POPs条約)

………………………………105

生活環境 ………………………37

生殖毒性物質…………………122

生物多様性条約………………100

政令 ……………………………21

石綿(アスベスト)……………33

設備基準 ………………………35

騒音………………………………4

総理府令 ………………………21

総量規制 ……………………35,38

測定 …………………………36,41

【た】

第1種指定化学物質 …………46

ダイオキシン対策推進基本指針

………………………………59

ダイオキシン類対策特別措置法

………………………………59

ダイオキシン類発生特定施設

……………………………61,62

大気汚染防止法 ………………31

大気の汚染………………………4

大気保全令……………………109

台帳 ……………………………54

第2種指定化学物質 …………47

第二水俣病………………………3

多量排出事業者 ………………73

単一欧州議定書………………119

炭化水素 ………………………35

地下水浄化基準(有害物質)…42

地球温暖化防止………………102

地球温暖化防止京都会議

(COP3)……………………101

地球環境関連国際条約………106

地球環境問題 …………………99

地球環境リスク ………………99

地球サミット……………………5

窒素酸化物 …………………31,35

地方自治体 ……………………85

注意喚起ラベル………………115

中国……………………………116

調和条項…………………………4

直罰 …………………………36,42

貯油施設 ………………………38

通知 ……………………………22

テトラクロロエチレン…………34

デポジット制度 ………………110

典型七公害規制…………………4

電子・電気業界………………120

ドイツ…………………………109

東京都環境確保条例 …………86

登録……………………………122

特定悪臭物質 …………………43

特定工場 ………………………32

特定工場における公害防止

組織の整備に関する法律 …60

特定再利用業者 ………………78

特定事業場 ……………………38

特定施設 ……………………33,37

特定省資源業種 ………………78

特定第1種指定化学物質 ……46

特定地下浸透水 ………………39

特定ばい煙 ……………………32

特定粉じん発生施設 …………32

特定有害廃棄物等 ……………82

特定有害廃棄物等輸出入

規制法 ………………………81

特定有害物質 …………………32

特別管理一般廃棄物 …………69

特別管理産業廃棄物 …………71

特別排出基準 …………………35

土壌汚染対策法 ………………52

土壌含有量基準 ………………53

土壌の汚染………………………4

土壌溶出量基準 ………………53

突然変異誘発性物質…………122

届出 …………………………35,40

トランス ………………………65

トリクロロエチレン …………34

トリブチルすず ………………110

【な】

内閣府令 ………………………21

鉛………………………31,120,121

鉛化合物 ………………………35

燃料使用基準 …………………35

濃度規制 ………………………35

【は】

バーゼル条約………………82,102

バーモント州 …………………114

ばい煙 …………………………31

ばい煙発生施設 ………………31

廃棄物 …………………………18

廃棄物越境移動規制…………102

廃棄物海洋投棄規制…………105

廃棄物処理法 …………………69

廃棄木材令……………………109

廃車(ELV)指令……………121

127

索 引

排出基準 ………………………35

排出基準(生活環境項目)……40

排出基準(有害物質)…………39

排出者責任 ……………………20

ばいじん ………………………31

廃電気・電子機器(WEEE)

指令…………………………121

ハイドロクロロフルオロカー

ボン(HCFC)………………56

ハイドロフルオロカーボン

(HFC)………………………56

発がん性 ………………………46

発がん性物質…………………122

ふっ化けい素 …………………31

ふっ化水素 ……………………31

ふっ素 …………………………31

ブランドイメージ ……………11

ブルントラント委員会(環境と

開発に関する世界委員会)

………………………………100

プロポジション65 ……………114

フロン回収破壊法 ……………56

フロン類 ………………………56

粉じん発生施設 ………………32

ベンゼン ………………………34

法律 ……………………………21

ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキ

シン(PCDD)………………60

ポリ塩化ジベンゾフラン

(PCDF)………………………60

ポリ塩化ビフェニル(PCB)…65

ポリ臭化ジフェニルエー

テル(PBDE)………………120

ポリ臭化ビフェニール(PBB)

………………………………120

【ま】

マニフェスト(産業廃棄物

管理票)………………………74

水俣病……………………………3

無過失責任 …………………36,42

無過失賠償責任…………………4

命令 ……………………………21

メタ科学………………………100

モントリオール議定書 ………103

【や】

有害化学物質規制……………105

有害大気汚染物質 ……………34

有害廃棄物 ………………82,102

有害物質 ……………………31,37

有害物質使用特定施設 ……38,54

容器包装リサイクル法 ………80

横出し ………………………23,85

四日市ぜん息……………………3

【ら】

リサイクル ……………………18

リサイクル法 …………………79

リスク ………………………9,100

リスクコミュニケーション …100

粒子状物質 ……………………35

六価クロム ………………120,121

ロッテルダム条約 ……………105

ロンドン・ダンピング条約 …105

128

索 引

平成15年度経済産業省産業技術環境局リサイクル推進課委託事業「循環ビジネス人材教育・循環ビジネスアドバイザー派遣事業」研修用テキスト

環境経営実務コースⅠ 環境リスク管理コース:ⅠC 環境・廃棄物/リサイクル関連法規

平成15年12月25日 発行

著 者  神田英治発行所  社団法人 産業環境管理協会

東京都台東区上野1-17-6 広小路ビル電話 03(3832)7084

編集協力 スレッドプランニング

(非売品)禁無断転載 Printed in Japan(本テキストは古紙配合率100%の再生紙を使用しています)

著 者 神田英治株式会社日立製作所情報事業統括本部環境推進センタシニア・マネージャー