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活気ある授業を創るには? 〜参加型場づくりの技法「ファシリテーション」の活用〜
2016年3月18日 ワークショップ企画プロデューサー
東京工業大学教授
中野民夫
京都大学高等教育研究開発推進センター 第22回大学教育研究フォーラム
小講演(ワークショップ)
中野民夫 自己
• 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院(4月発足)教授
– 社会性・人間性を兼ね備えた志ある人材を!専門:「コミュニケーション論」
• 元同志社大学政策学部・大学院ソーシャルイノベーションコース教授
– 「至福の追求と社会変革」をテーマに、大教室でも参加型授業を実践
• 2012年3月まで、(株)博報堂に30年勤務 – 大阪営業から。愛知万博「地球市民村」、環境・NGO・CSR等、社会テーマ系等。
• ワークショップ企画プロデューサー – 90年前後に米留学、組織変革等。01年『ワークショップ』出版から展開。
– 市民活動、NPO/NGO、企業、行政、まちづくり、研修、学校教育、環境教育等
• 屋久島「本然庵」庵主
• 日本環境教育フォーラム理事、FAJフェロー、Be-Nature Schoolファシ講座監修
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ワークショップ 新しい学びと創造の場
(岩波新書、2001)
ファシリテーション革命 参加型の場づくりの技法
(岩波アクティブ新書、2003 *現在、電子出版のみ)
ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ (共著、岩波書店、2009年)
対話する力 ファシリテーター23の問い (共著、日経出版社、2009年))
中野民夫の主な著作
みんなの楽しい修行 より納得できる人生と社会のために(春秋社、2014年)
スピリチュアリティと教育 (共著、ビイング・ネット・プレス、2015年))
今日の目的
• 「活気ある授業づくり」をテーマに、「教える」より「学び合う」場の楽しさと魅力を実際に体験する。
• そこで使われたファシリテーションの基礎スキルとこころを理解し、各自の現場への参考とする。
大まかな流れ(Agenda)
• 0930- 開会、オリエンテーション
• 0945- 小グループでチェックイン、導入ワーク
• 1015- ミニミニ講義「WSとFとは」
• 1020- 相互インタビューと他己紹介
• 1110- えんたくんでダイアローグ (ワールドカフェの応用)
• 1200- 個人ワークでまとめ・共有
• 1215-ふりかえり・Fの基礎スキル
• 1230-終了
役割と参加の心得
• 役割
–主役=皆さん • ファシリテーター/講師:中野民夫 • スタッフ:飯塚宜子、今堀洋子
• 参加の心得
–1)皆が創る場、積極的に参加しよう!
–2)よく聴こう、他者を、自分も!
–3)身心を開いて、楽しもう!
–4)でも、無理をしないで。
導入ワーク①チェックイン
• どんな人がどんな思いでここに?
• 全員がまず一言話し、お互いに聴き合おう。
• このあと4人の少人数グループに分かれます。
• 先に、A4の紙を4つに折り、次頁の項目について大きくキーワードで書いておいてください。
• 話すときは、 ①と②でまず一周回し、 ③と④でもう一周。
①どこの誰(名前) (どこから来た、所属や活動)
②最近何に忙しい?(忙しさ自慢)
④このフォーラム、このWSに来たわけ
③好きなこと、得意なこと、よくやってること
「たまにはゆっくり呼吸を聴いてみよう〜」
導入ワーク③身体を調える
•調身 :まず身体を調える
•調息 :すると息が調う
•調心 :そしてようやく心も調う
• しばらく、準備運動しま〜す。
• 椅子を周りに寄せてスペースを作ろう。
心を調える
「マインドフルネス」について
• 漢字で書くと「念」(パーリ語のsati) – 「今」の「心」。Present mind
– ベトナム出身の仏教者ティク・ナット・ハンThich Nhat Hanh
• 今ここで起こっていることを、ただはっきりと知る。 – 一切のジャッジメント(判断・評価)なしに、身体、感覚、感情、思考で起こっているありのままを知る。
– 過去や未来、怒りや後悔などに溺れず、今ここ。
• Googleがマインドフルネス・リーダーシップ研修 – 禅、瞑想、脳科学を駆使し、ビジネス界でも話題に
– 今ここで起こっていることの自覚は、Frにも大切!
ワークショップとは? ファシリテーションとは?
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ミニミニ講義
1015〜1020
ワークショップ(WS)とは
• “workshop” :
–工房、仕事場、共同作業場。要は「一緒に創る場」
• 「講義など一方的な知識伝達のスタイルでは
なく、参加者が自ら参加・体験して共同で何か
を学びあったり創り出したりする、学びと創造
のスタイル」(『ワークショップ』中野2001)
• 「参加」「体験」「相互作用」が鍵
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ワークショップの最大の意義
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「当事者意識」 Ownership
が、非常に高まる
「他人事」 「自分事」
人から教えられたり、指示されたことは、なるほどと思っても忘れるし、身になりにくい。
「どうせ変わらないよ」の諦め。
「自分(たち)が考えた、創った!」
「自分がそのアイデアやプロジェクトのかけがえのない一部。」
コミットメントが自然に出てくる。
私の原点
• ジョアンナ・メイシー先生に、湾岸戦争の時のイ
ンタビューで、「戦争を止めるために、私たちに
何ができるのでしょうか?」と聞いたときの返答:
「孤立しないで、集い合い、
問い合うことが、力です。」
*ジョアンナの最新作「アクティブ・ホープ」(春秋社)から出版!
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ファシリテーション(F)とは
• “facilitate” – 「促進する」
• →物事を、効率よく進める。相互作用や創造性を促す。
– 「<事を>容易にする」
• →緊張や紛争を解く。ステップを刻んで、導く。
• 「人々が集い、何かを学んだり、対話したり、創造しようとする時、その過程を、参加者主体で、円滑かつ効果的に促していく技法」 (中野2012)
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相互インタビューと他己紹介
1020〜1110
せんだいみやぎNPOセンターの代表、故加藤哲夫さんに、習ったワークを応用しています。
相互インタビュー
• まずは2人組で、聴きあいましょう。
• 天の采配にまかせて、ペアづくり
• 一人10分ずつ、交代して、合計20分
• あとでインタビュー記事にして他の人に紹介しますので、メモをとってください。
• 両者が終わったら、清書して インタビュー記事に仕上げ ます。
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清書とチェック
• 聴いた内容を、A4一枚に まとめて清書しましょう。
• 書き出しは、「私は〇〇 (相手の名前)です」。
• 最後に、一番上に見出し、 右下にインタビュアー名を。
• 書いたら読み合い、間違い がないかだけチェックを!
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最後に「見出し(タイトル)」
私は◯◯です。・・・・・
インタビュアー名
相手になりきって、一人称で、ポイントを、A4一枚にまとめる。
他己
• 自己ならぬ相手(他己)を紹介
• 4人組(2ペア)で。
• 基本は清書した
ものを読むだけ。
• 一巡したら、一連の
ワーク(話したり、聞いたり、読まれたり)の
感想をシェア。
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私は・・・
えんたくんでダイアローグ ワールドカフェの応用
「活気ある授業創り」についてみんなで話そう
1110〜1200
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「ワールドカフェ」の応用
• 「ワールド・カフェ」とは、くつろいだ雰囲気の中で、
組織や社会の変革に向け、大切な問いについて、
全員参加で話し合う方法。
• 組合せを変えながら、小グループでの会話を積み
重ね、全体の探求につなげていく。
• 世界中の企業やグループ、地域で実践されており、
日本でも最近急速に広まった。
• 対話促進ツール「えんたくん」は
日本で開発!
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カフェの前提 素敵な考え方!
• 私たちに必要な知恵は、
既にこの部屋の中にある。
• その知恵は見出されるの
を待っている。
• それは人と人がうまく関係
しあったときに現れる。
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通常、3ラウンド行います
第1ラウンド
簡潔な自己紹介
対話・メモ 第2ラウンド
(自己紹介)
前の対話の共有
新たな対話・メモ 第3ラウンド
(自己紹介)
前の対話の共有
新たな対話・メモ
ホスト一人残し 席替え
ホスト一人残し 席替え
ハーベスト(収穫)
全体で発見・気づきをわかちあう
最後に個人で書く
20分
20分
20分
5分
【対話(ダイアログ)の心得】
• 1.率直に語ろう!
–思いついたら気楽に。だけど固執はしない。
• 2.他者に関心を持ち、傾聴しよう!
–自分のメガネは置いて、共感的に理解を。
• 3.新たな発見に開いていこう!
–議論の場ではない。一緒に新たな創造を。
まとめのワーク 「活気ある授業づくり、私の3か条」
ファシリテーションの基礎スキル
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1215〜1230
ファシリテーション基礎スキル
• 1:場づくり
– 空間のデザイン+関係性のデザイン
• 2:グループサイズ
– 小グループの活用
• 3:問い
– 共通で触発的、身近・具体・裁かれない問いから、順に。
• 4:見える化
– 言葉、議論のプロセス、アイデアを書き出し、見える形に。
• 5:流れのあるプログラム・デザイン
– 人の身体と心の自然をふまえた起承転結で流れを作る。 27
1:場づくり 空間のデザイン+関係性のデザイン
• 人が集う「カタチ」に敏感になろう – 用意された部屋に合わせることに慣れすぎ!ゼロベースで
• イスや机の並べ方だけでずいぶん違う • 机イスの有無、長方形、菱形、中を埋める、半円形
• 今、必要な形は何か、常に考え、提案しよう • 居心地よく、相互作用の生まれやすい形は何?
• アウトプット(成果)重視のビジネス系vs 相互理解(気持ち)重視のハート系、をバランス良く
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【椅子と机の様々なレイアウト】 それぞれの特長を熟知し、場面に応じてくりだそう!
◎【輪(サークル型)】
【スクール型】
【長方形型】
相互作用
【多角形型】
【劇場型】 【扇型】
【アイランド型】
そもそも「場」って何?
• 人が集う「場」=空間(物理的)+関係性(心理的)
– 物理的スペースに加え、人と人が織りなす関係性で、 全体と個が影響しあう特有の「場」ができる。
• 「空間」の物理的デザイン
– 場所の選択、机やイスの並べ方
• 「関係性」の心理的デザイン
– 知らない人同士は、初めは緊張して当然。
– オリエンテーション+導入ワークで、受け入れる準備
• さらに「時間」の扱い方も影響大!
– 常に限りはある。「時間がない!」は避けて、ゆったり。 30
2.関係性の心理的デザイン
「場づくり」の基本
2−①オリエン テーション (どこへ行くの?を明確に)
OARR
2−②導入ワーク(アイスブレイク) (ほっと安心できるように)
チェックイン
1.空間の物理的デザイン: 机やイスの並べ方
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ベースにあるのは、「おもてなし」の心 Art of Hosting!
オリエンテーション:方向づけ
• 最初に「土俵」をつくる
– ここは何する所?どこへ行こうとしてる?ルールは?
• オリエンテーションのOARR by David Sibbet
– Outcome:成果、どこまで行こうとしているか。ゴール。
– Agenda:プログラムの流れ。大まかなスケジュール。
– Role:そこにいるすべての人の役割
–Rule:共有すべきグランドルール、参加の心得
• 『ファシ・革命』p.69-70、『ファシ・実践』p.128
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「成果」を急ぐより、急がば回れ 「関係の質」を上げる
関係の質
成果の質 思考の質
行動の質 ダニエル・キム
組織の成功循環モデル
2:グループサイズ 小グループの活用
• 一度に皆では話せない
– 他者がどう出るかを気にし、発言を控える文化。同調圧
力
– 一人ずつ話したら時間が足りない。多いと覚えられないし。
• さっとグループのサイズ(人数)を分ける
– ペア(2人)で、3人で、4人で、4〜5人で
– グループ数の「番号!」をかけ、「偶然の出会い」を演出
• 様々なサイズの特長を知り、自由自在に繰り出す
– まずペア→2ペアで4人→8人→全体、など。時には一人。
– 輪になり全体でグループごとの発表や個人の感想シェア
• ただし共有はなかなか困難!→個人で紙に書いてもらって残す。 34
3:問い 共通で触発的、身近・具体・裁かれない問いから
• 「問い」(お題)がいのち
– 問えば人は考え始め、提案すれば動き始める
• 共通で触発的な問いを
– 皆に共通の関心事は何か?→潜在的なものも含め
• 身近で具体的、個人的な体験から
– 頭や建前の「べき論」でなく、実感ベースの具体論から
– 「自分の体験」から始める:「そもそものきっかけは」「個人的体験」
• (頭ごなしに)批判されるのはイヤ!
– 正解、善悪など、裁かれる怖れのない問いから • 「最近ちょっとうれしかったこと」「私の好きなこと、お気に入り」
– 次第に、本質的、抽象的にテーマに肉迫していく
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さらにファシリテーションを学ぶには
• 超新刊!『ファシリテーションで大学が変わる』 – (中野民夫・三田地真実編著、ナカニシヤ出版) – 近刊『ファシリテーションで小中学校が変わる』
• 9月刊!『参加型授業の創り方』(中野著、岩波書店) – 他にも中野・三田地他、関連書籍多数あり
• ビーネイチャースクール「ファシリテーション講座」
– http://be-nature.jp/facilitation
• 日本ファシリテーション協会(FAJ) – 各地に支部あり 、毎月勉強会
• ワークショップデザイナー育成プログラム(WSD) – 青山学院大学と大阪大学を中心に