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1 演習問題解答 07: 2015.11.13 演習問題1 (1-1) 電気回路に組み込まれているヒューズは,設定以上の電流が流れると解けて回路を 遮断する.440 [A/cm 2 ] の電流密度で解ける線材を使って,0.50 [A] に制限するヒューズを 作りたい.ヒューズを円筒状にすると半径をいくらにすればよいか? (1-2) 長さ 1.0[m], 断面積 1.0[mm 2 ] のニクロム線(ニッケル-クロム-鉄の合金)の両端に 2.0[V ] の電圧を掛けたら,4.0[A] の電流が流れた.ニクロムの伝導率 σ はいくらか? 演習問題 (1) の解答: (1-1): 円筒の半径を r とすれば断面積は S = πr 2 である.溶融する電荷密度を i m とすれば, i m × S = i m × πr 2 = 0.5[A] となる. (440 [A/cm 2 ])(πr 2 ) = 0.5[A] r = 0.5[A] (3.14)(440 [A/cm 2 ]) = 0.019 [cm] したがって直径は 2 × 0.019 [cm] = 0.38 [mm] である. (-2): 長さを l, 断面積を S , 抵抗率 ρ = 1とすると,オームの法則により,R = V/i = 2.0[V ]/4.0[A] = 0.5[] となる.伝導率は抵抗率の逆数である.抵抗は R = ρl/S = (1)l/S である.したがって R = ρ l S = l σS σ = l RS σ = 1[m] (0.5[])(1 × 10 -6 [m 2 ]) = 2 × 10 6 [· m] -1 演習問題2: 起電力 ϕ e 1 = 2 V 、内部抵抗 r 1 = 0.1 の電池1と、起電力 ϕ e 2 = 1.5 V 内部抵抗 r 2 = 0.2 の電池2を下左図のように並列につなぎ、それに抵抗 R = 10 を接続した。このとき、電 池1と2および R を流れる電流の強さはいくらか?また図の AB 間の電圧はいくらか?

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演習問題解答 07: 2015.11.13

演習問題1(1-1)電気回路に組み込まれているヒューズは,設定以上の電流が流れると解けて回路を遮断する.440 [A/cm2]の電流密度で解ける線材を使って,0.50 [A]に制限するヒューズを作りたい.ヒューズを円筒状にすると半径をいくらにすればよいか?

(1-2)長さ 1.0 [m], 断面積 1.0 [mm2] のニクロム線(ニッケル-クロム-鉄の合金)の両端に2.0 [V]の電圧を掛けたら,4.0 [A]の電流が流れた.ニクロムの伝導率 σはいくらか?演習問題 (1)の解答:

(1-1):円筒の半径を rとすれば断面積は S = πr2である.溶融する電荷密度を imとすれば,im× S = im× πr2 = 0.5 [A]となる.

(440 [A/cm2])(πr2) = 0.5 [A] → r =

√0.5 [A]

(3.14)(440 [A/cm2])= 0.019 [cm]

したがって直径は 2× 0.019 [cm] = 0.38 [mm]である.(1-2): 長さを l,断面積を S,抵抗率 ρ = 1/σとすると,オームの法則により,R = V/i =

2.0 [V]/4.0 [A] = 0.5 [Ω]となる.伝導率は抵抗率の逆数である.抵抗はR= ρl/S = (1/σ)l/S

である.したがって

R= ρlS=

lσS

→ σ =l

RS

σ =1 [m]

(0.5 [Ω])(1 × 10−6[m2])= 2× 106 [Ω ·m]−1

演習問題2:起電力 ϕe

1 = 2V、内部抵抗 r1 = 0.1Ωの電池1と、起電力 ϕe2 = 1.5V内部抵抗 r2 = 0.2Ω

の電池2を下左図のように並列につなぎ、それに抵抗R= 10Ωを接続した。このとき、電池1と2および Rを流れる電流の強さはいくらか?また図の AB間の電圧はいくらか?

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演習問題 2の解答 図の点線で描いた閉曲線に沿って、キルヒホッフの第1,第2法則を適用すると

I = I1 + I2 (1)

RI + r1I1 = ϕe1, RI + r2I2 = ϕ

e2 (2)

(1)と (2)から、I1と I2を消去すると

I =r2ϕ

e1 + r1ϕ

e2

r1r2 + R(r1 + r2)(3)

これを (2)に代入すると

I1 =r2ϕ

e1 + R(ϕe

1 − ϕe2)

r1r2 + R(r1 + r2)

I2 =r1ϕ

e2 − R(ϕe

1 − ϕe2)

r1r2 + R(r1 + r2)

(4)

である。また AB間の電圧 Vは

V = RI =R(r2ϕ

e1 + r1ϕ

e2)

r1r2 + R(r1 + r2)(5)

これらに上の数値を代入すると

I1 = 1.79≃ 1.8A, I2 = −1.61≃ −1.6A (6)

で I = I1 + I2 = 0.18 A、また V = 10× 0.18= 1.8 Vとなる。なお I2が負になったのは、図で仮定した電流の方向と実際は反対向きであったことを意味している。

演習問題3:(3-1)上右図で ϕの起電力を持つ電源に回路をつないだときの電流 I およびコンデンサーに与えられた電荷 Qの間の関係式をオームの法則から導け。(3-2)t = 0でスイッチを閉じた。電荷 Qを時間の関数として求めよ。ただし、I と Q

の間にはI = dQ/dt (7)

の関係があり、t = 0で Q = 0であった。(3-3)回路に流れる電流を時間の関数として求めよ。(3-4)コンデンサーに蓄えられたエネルギーと抵抗で発生したジュール熱の和が電源により tまでに供給されたエネルギー

U =∫ t

0ϕ I (t′)dt′ (8)

と一致することを示せ。ただし、容量Cのコンデンサーに蓄えられるエネルギーは、電位差が Vならば U = QV/2 = CV2/2で与えられる。

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演習問題 3の解答(3-1)オームの法則は

IR+QC= ϕ (9)

(3-2) I = dQ/dtを (9)に入れて変形すると

dQdt+

QRC=ϕ

R(10)

この方程式の特解を Q0、右辺をゼロと置いた同次方程式の一般解を Q1(t)として、Q(t) =

Q0 + Q1(t)とするとdQ1

dt= − 1

RCQ1,

Q0

RC=ϕ

R(11)

より、Q0 = Cϕ、Q1(t) = αe−t/RC (ただし、αは定数)を得る。したがって

Q = Cϕ + αe−t/RC (12)

初期条件: t = 0で Q = 0を入れて α = −Cϕが得られる。したがって

Q = Cϕ(1− e−t/RC

)(13)

これは図のような時間変化を示す。

φ/RQ(t)

I(t)

Q=Q0 t/RC

t

図 1:

(3-3)

I =dQdt=ϕ

Re−t/RC (14)

(3-4)コンデンサーに蓄えられたエネルギーは

UC =12

QV =Q2

2C=

12

Cϕ2(1− e−t/RC

)2 (15)

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4

抵抗内で発生したジュール熱は

UR =

∫ t

0RI2(t′)dt′ = R

R

)2 ∫ t

0e−2t′/RCdt′ =

[ϕ2

R

(−RC

2

)e−2t/RC

]t

0=

Cϕ2

2

(1− e−2t/RC

)(16)

よって

UC + UR =Cϕ2

2

[(1− e−t/RC

)2+

(1− e−2t/RC

)]= Cϕ2

(1− e−t/RC

)(17)

一方、時間 tまでに電源により供給されたエネルギーは

E =∫ t

0ϕI (t′)dt′ = ϕ

ϕ

R

∫ t

0e−t′/RCdt′

=ϕ2

R

(1− e−t/RC

)= Cϕ2

(1− e−t/RC

)= UC + UR

(18)

演習問題4 (演習・物理学の基礎:ハリディー/レスニック/ウォーター/ホワイテントン共著、培風館発行、問題 27-18、28-18より)

心臓発作か感電死か? ある朝、ピクニックに出かけた男性が送電線の鉄塔に近い湿った地面を裸足で歩いていたところ突然倒れた。近くで見ていた家族がすぐに駆け寄ったが、男性は心室細動 (Ventricular fibrillation*1) )に陥っており、救急隊が到着する前に亡くなった。後に家族は男性の死は鉄塔からの漏電事故による感電死であるとして電力会社を訴えた。事故調査委員になったつもりでこの問題を検討してみよう。なお、鉄塔付近の土の抵抗率を ρとする。電力会社の記録を見たところ、事故当日の朝、確かに電力系統の故障に

(a) (b)

より約 1.0秒間、電流 I が金属棒を通して地面に流れていた。電流は図 1(a)のように地面の中に等方的に広がると仮定しよう。

* 1) 心臓の心室が小刻みに震えて全身に血液を送ることができない状態。小児では、キャッチボールなどでボールが胸部に当たってこの不整脈が誘発され(心臓震盪)、突然死の原因となることが指摘されて来ている。また、感電によるショックによって引き起こされる場合もある。人体を用いての心臓マッサージ練習が固く禁じられている理由はこのためである。(正しいタイミングのところに余計な衝撃が加わるため、直ちに細動の原因になりうる)

Page 5: I RIosksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/handai-buturi...1 演習問題解答07: 2015.11.13 演習問題1 (1-1)電気回路に組み込まれているヒューズは,設定以上の電流が流れると解けて回路を

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  (4-1)電流密度  (4-2)電場の強さを、金属棒からの距離 r の関数として表しなさい。  (4-3)電場を表す式から、金属棒の下端と棒からの距離が r である地点の電位差 ∆V

を求めなさい。金属棒の下端は半径 bの半球状である。調査により、 I = 100A、ρ = 100Ω ·m、 b = 1.0cm、被害者の距離は r = 10mであることが分かった。被害者の居た場所での

(4-4)電流密度、 (4-5)電場の強さ、(4-6)電位差はいくらか?図 1(b)に、被害者の一方の足から胴体(心臓を含む)を通ってもう一方の足に電流が流れる様子を示す。  (4-7)被害者の2本の足の間隔が、0.5mで、片方が金属棒に 0.5mだけ近かったとすると、両足の電位差はいくらか?  (4-8)湿った地面に置かれた足(片方)の抵抗値を 300Ω胴体の抵抗値を 1000Ωとすると、被害者の胴体に流れた電流はいくらか?  (4-9)人間の心臓は 0.1Aから 1.0A流れると心室細動になる。被害者の心室細動は漏電によるものか?

演習問題 4の解答 (4-1)電流 I が等方的に広がるので、電流密度は r のみの関数となり、全電流を半球面の面積で割った i(r) = I/A = I/2πr2となる。(4-2)電場の大きさは抵抗率と電流密度の積であるから E = ρi(r) = ρI/2πr2。(4-3)半径 r の電位 V(r)と棒の先の電位 V(b)の差は

∆V = V(r) − V(b) = −∫ r

bE · dr = −

∫ r

b

(ρI

2πr2

)dr =

ρI2π

(1r− 1

b

)(19)

(4-4)

i(r) = I/2πr2 = (100A)/[2π(10m)2] = 0.16A/m2 (20)

(4-5)

E = ρi(r) = (100Ω ·m)(0.16A/m2) = 16V/m (21)

(4-6)

∆V =ρI2π

(1r− 1

b

)=

(100Ω ·m)(100A)2π

(1

10m− 1

0.010m

)= −1.6× 105 V (22)

(4-7)電場の強さは E = 16V/mであったから、両足の間 (d = 0.50m)の電位差は

∆V = Ed = (16V/m)(0.50m) = 8.0V (23)

(4-8)流れる電流は、2本の足の抵抗 Rf と胴体の抵抗 Rt を考えて

i =∆V

2Rf + Rt=

8V2(300Ω) + (1000)Ω

= 5× 10−3 A (24)

(4- 9)この電流値は 0.1Aより十分小さく心室細動に陥る心配はない。