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冬の花壇材料として欠かせない葉牡
丹。葉牡丹といえば、「紅白」で正月の
門松などの飾り付けに使われるという
昔ながらの古風なイメージがある品目
です。そのイメージを一転させ、今ま
でになかった光沢とメタリックな質感
をもたらすのが、ニュータイプの葉牡
丹「プラチナケール」です。従来の葉
牡丹のような表面にブルーム(白いワ
ックス成分)のある葉とは異なった鮮
やかな彩りの照葉が生み出す高級感が、
冬の花壇や花材として新たな可能性を
引き出します。「F₁ルシール」
シリー
ズ2品種に今年新発売の矮性種「F₁グ
ロッシー
レッド」が加わり、プラチナ
ケールは3品種になりました。この光
り輝く3品種を新たな冬の花材として
提案いただき、栽培・出荷されてはい
かがでしょうか。
品種特性
F₁初の矮性照葉品種です。ブルーム
のない光沢のある鮮やかな緑の外葉と
中心の濃紅色のコントラストがよく映
える待望の花壇用紅色種です。葉の形
状は、ちりめん葉と切葉の中間程度の
縮み葉です。寄せ植え用のポット栽培
に向きますが、大株で作っても照葉が
より鮮明になり一品種でも存在感が増
します。この鮮烈な葉色が特に評価さ
れ、2011年に世界的な新品種コン
テストAAS(All Am
erica Selections
:
オールアメリカセレクションズ)を受
賞しました。
鮮明な発色で、外葉の緑色と着色部
「F₁グロッシー
レッド」
「F₁ルシール
ワイン」
※「プラチナケール」とは、世界で葉牡丹育種をリードするタキイが、葉牡丹の枠を超えた新たなジャンルの品種として考案・商品化したブランドです。葉牡丹の名称をあえて使用せず総称として「プラチナケール」と呼ぶことで、従来のイメージを脱却して新たな利用場面を広げることをねらいとしています。
《照葉葉牡丹の育成方法に関する特許》タキイ種苗は、2009年に「葉面にワックス成分が実質的に分泌、付着されず葉面に光沢を持つ葉牡丹品種の育成方法」に関する特許を取得しました。(特許第4256687号 発明の名称『新奇なハボタン品種の育成方法』)
Brassica O
leracea
タキイ研究農場
佐さ
々さ
木き
理まさ
之ゆき
プラチナケール
「F₁グロッシー
レッド」
「F₁ルシール
ワイン」
「F₁ルシール
バニラ」
Glossy
Lucir
2012 タキイ最前線 秋号 9
の紅色とのコントラストが明瞭です。
色合いも落ち着きのある色調で、クリ
スマスの飾り付けにも向く品種です。
葉はやや開きぎみで、光沢のある着色
部が広く見えます。
葉色は従来種の灰色味ある緑色とは
違い、鮮明で着色部の白色を引き立た
せ、コントラストが美しい品種です。
葉は立葉で葉枚数の多い品種です。
「F₁ルシール
バニラ」
栽培のポイント
●ポット栽培
「F₁グロッシー
レッド」は花壇や寄せ
植えに威力を発揮します。矮化剤を利
用して10・5~12㎝のポット栽培がお
すすめです。従来種の「F₁つぐみ」シ
リーズや「F₁かもめ」シリーズと組み
合わせてより彩り豊かな葉牡丹のポッ
ト苗を出荷することができます。また、
高性種の「F₁ルシール」シリーズも同
様に小作りポット栽培が可能で、この
3品種を上手に組み合わせたプラチナ
ケールでの出荷も可能です。
また、「F₁グロッシー レッド」は、大
作りにすると照葉がより鮮明に、イン
パクトのある株に仕上がるので、18~
21㎝の大苗もおすすめです。
●播種
播種は8月上旬に行い、200穴プ
ラグトレイに1粒まきを基本とします。
用土は「タキイたねまき培土」などの
市販の清潔な用土を使います。発芽適
温は20~25℃ですが、高温時期の播種
なので遮光などをして管理します。播
種後3~4日で発芽がそろったらしお
れさせないように注意しながら潅水は
控えめにし、日の当たる風通しのよい
場所で徒長させないように管理します。
徒長を軽減する目的で、播種後5~7
日目の本葉が展開するステージで矮化
剤ビーナイン水溶剤80の300倍液を
噴霧器などで植物体全面に散布します。
●ポット上げ
播種後約15~20日で本葉3~4枚に
なるので、このステージがポット上げ
の適期になります。2~3日でも鉢上
げが遅れると徒長や老化苗になり、以
降の生長が悪くなるので注意します。
鉢上げ用土は市販の清潔な用土を用
います。肥料はロング70などを用い、
生育初期に葉数と株のボリュームを確
保するようにし、緩効性の肥料は避け
ます。鉢は、「F₁ルシール」シリーズで
9~12㎝、「F₁グロッシー レッド」で
10・5~15㎝のサイズに仕上げると、
それぞれ照葉の魅力がよりよく発揮さ
れるでしょう。
このポット上げのステージが、2回
目の矮化剤処理の時期で、小作り栽培
には欠かせない重要なポイントになり
ます。スミセブンP液剤の10倍液を葉
面に散布するのが効果的で、矮化剤を
処理する場合は、日中の高温時期を避
け気温が下がる夕方に行います。また、
トレイ用土はある程度湿り気をもたせ
て行うようにします。あまり乾燥して
いると溶液の吸収が強くなり過ぎるの
で注意が必要です。
●その後の管理
鉢上げ直後は乾かさないように潅水
管理し、その後表面が乾き始めたら十
分に潅水を行うようにします。輝きの
ある照葉を発揮するには、この時期の
極端なしおれや、肥料切れによる葉の
黄化を起こさないよう十分に管理する
のがポイントです。9月中旬には、追
肥として固形肥料を施すとよいでしょ
う。プロミックの中粒では9㎝ポット
で1粒、10・5~12㎝では2粒、IB
化成なら2~3粒程度施肥します。
また、適宜葉色を見て、色あせてく
るようであればさらに液肥を施します。
矮化剤は2回目の処理でほぼまとまり
ますが、効果が切れるようであれば10
月上旬までに3回目の処理として、ビ
ーナイン水溶剤80の200~300倍
液かスミセブンP液剤10倍液を葉面に
散布します。10月中旬以降の矮化剤処
理は着色に影響することがあるので、
避けるようにします。
18~21㎝の大作りの場合は、2回目
以降の矮化剤処理は必要ありませんが、
液肥などの追肥は、小作りと同様に葉
色を見て小まめに行うようにします。
「今までの葉牡丹のイメージを脱却する新たな商
材は考えられないか?」との思いを合言葉に、約
20年前から品種開発を進めてきました。そのアイ
デアの一つとして「葉のブルームが抜けたら色が
もっと美しくなるのでは?」との発想に基づき、
葉牡丹はいうに及ばず、キャベツなどその他のア
ブラナ属作物にまで素材探しを進める中で見つけ
たのが、ブルームレス葉牡丹です。それをもとに、
葉色・葉型各種の固定を進め、いくつかの劣悪な
形質を取り除くことに年月を重ね、ようやく20
08年に東京丸葉系の高性切り花用品種「F₁ルシ
ール ワイン」と「F₁ルシール バニラ」の2品種を
発表することができました。さらに、本年より新
たにちりめん葉の矮性種「F₁グロッシー レッド」
が新発表となりました。
「ルシール」とは、スペイン語で「光る」という
意味で、「グロッシー」は英語で「光沢のある」と
いう言葉です。いずれもプラチナケールのメタリ
ックな輝きをイメージして命名しました。
→矮性照葉品種の「F₁グロッシー レッド」。ポット栽培向きで、大作りにすると照葉がより鮮明になる。
→「F₁ルシール」シリーズのポット仕立て。9~12㎝鉢で照葉の魅力が発揮される。
10 2012 タキイ最前線 秋号
「F₁ルシール」シリーズは切り花用品
種です。クリスマスシーズンから正月
にかけて、切り花需要での幅広い出荷
が可能です。
●播種
播種は7月中下旬に行い、ポット栽
培と同様に200穴プラグトレイに1
粒まきとしますが、シーダーテープを
利用して直播することで省力的に播種
することもできます。
また、ポット栽培と同様に発芽がそ
ろったらしおれさせないように注意し
ながら控えめに潅水を行い、日の当た
る風通しのよい場所で徒長させないよ
うに管理します。特にこの時期は1年
で一番気温が高い時期にあたるので軟
弱徒長にならないよう温度管理には十
分気をつけてください。徒長を軽減す
る目的で、播種後5~7日の本葉展開
時にビーナイン水溶剤80の300倍液
を散布するのもよいでしょう。
定植床は日当たりと排水のよい場所
を選びます。過湿になりやすい場所で
は畝を高くするなどして排水をよくす
るようにします。施肥量は土壌条件で
異なりますが、CDU化成などの速効
性肥料を10a当たりチッソ成分で8~
12㎏施用します。前作で圃場に残肥が
多い場合は元肥は入れず、生育状況に
応じて追肥を施すようにします。
●定植時期
播種後15~20日、本葉3~4枚が定
植適期になります。定植は遅れないよ
うに注意し、日差しの強い日中を避け
て行います。茎が真っすぐになるよう
に植え付け、子葉が埋まらない程度の
深植えにし、倒れないよう株元を押さ
えます。
定植間隔は10~12㎝とし、定植前に
フラワーネットを畝上に張り、そのマ
ス目に1~2本植えるとよいでしょう。
シーダーテープで直播する場合は、発
芽直後からネットを準備します。
●定植後の管理
定植後の潅水は、活着までは十分に
行い、茎の伸長を促します。フラワー
ネットは、植物体の伸長に合わせて小
まめに上げていき茎が曲がらないよう
にします。茎葉が大きくならないよう
に草丈30㎝程度になったら葉かき(草
勢を抑えるために生育中の葉を除去す
る管理)に入ります。目安としては、
草丈の3分の1程度の葉を残し、下部
の葉はすべて摘葉します。葉かきは、
葉柄のもとの部分を指で挟み、横にひ
ねるように折ります。下向きに行うと
茎が傷つくので注意します。葉柄の基
部が残りますが、自然に脱落します。
この時期までに、茎が太く葉が大きく
なるようであれば、早めに葉かきに入
り草勢を抑えます。順次3~4回程度、
生育に合わせて葉かきに入り、茎の伸
長と太さを調整します。逆に草丈が伸
びず、株も大きくならない場合は、初
期の活着不良、潅水不足あるいは過湿
による根傷みなどが考えられます。十
分な潅水および液肥による追肥も生育
に応じて必要になります。
葉牡丹は低温にあたることで着色し
てきます。最低気温が12~13℃くらい
に下がり始めてから約1カ月を経過し
て着色します。年による変動はありま
すが、一般平坦地で10月下旬から着色
が始まり、11月中旬以降に緑葉と着色
部とのコントラストがはっきりしたも
のになります。出荷の1週間前くらい
に最終の葉かきを行い、外葉を2~3
層残して草姿を整えます。
「F₁ルシール」シリーズは、従来品種
に比べピンチ後の枝の発生は多く、ブ
ーケ仕立てや1年物踊り栽培に適しま
す。播種期を前進することでバリエー
ションの幅は広がります。ピンチ時期
は本葉10枚時のころに4~5枚本葉を
残す程度に切り戻します。その後、生育
を促すように肥培管理を行い、分枝と
葉数を確保します。このピンチ栽培は、
ポットでも仕立てることが可能です。
●切り花栽培
病害虫防除 育苗段階では、シンクイムシやヨトウムシの被害に注意します。また、コナガについては従来種より発生しやすいので、生育初期から徹底した防除が必要です。病害では、べと病に注意が必要です。温度が下がり始める9月以降が発生時期になるので、予防的に薬剤散布を行います。
※文中で紹介している農薬や肥料は、タキイでは取り扱いのないものもございます。ご了承ください。また、農薬をご使用の際は必ず登録の有無や使用方法をご確認ください。(編集部)
↑「F₁ルシール バニラ」は外葉とのコントラストが美しい品種。
↑シックな色調の「F₁ルシールワイン」はクリスマスの装飾にも最適。
→「F₁ルシール」シリーズはピンチ後に枝の発生が多いため、1年物踊り栽培にも向く。本葉10枚時に本葉4~5枚を残す程度に切り戻すのがポイント。
2012 タキイ最前線 秋号 11