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(8) J-FaB 技報 No.2
(5)既設桁との連結
一次床版,壁高欄の施工完了後に既設桁との連結部材
の高力ボルトの本締めを行った.連結前の連結部孔明状
況を写真-10に示す.既設桁との連結完了後に,二次
床版などの施工を行った.
写真-10 連結部孔明状況
6.おわりに 本稿では,拡幅工事における既設橋梁の誤差吸収方法
および,国道近接部での施工について紹介した.
本工事は,外環自動車道と常磐自動車道の2つの路
線を接続するランプ橋の増設工事であり,132箇所の連
結横桁,対傾構をはじめ,10基の伸縮装置,90基の支承
の施工があった.しかし,設計の検討段階より,既設桁
との取り合いや誤差吸収方法について製作と施工部門も
含めた多面的な検討が積み重ねられたことから,現場施
工時に部材や製品の再製作が必要な事象は発生せず,無
事施工を完了した.
このことから,本工事で採用した誤差吸収方法が有効
であり,今後の拡幅工事の参考となるといえる.また,
国道近接部の桁架設および床版施工では,施工ヤードを
工夫することで無事故で工事を完了することができた.
今回の経験を同種工事の設計・施工に役立ててゆく所
存である.
謝辞:本工事の施工にあたり,発注者である東日本高速
道路株式会社さいたま工事事務所の皆様には多大なご指
導を頂きました.また,JV構成会社である㈱IHIイン
フラシステムの皆様とはお互いに助け合い工事を完成さ
せることができました.ここに厚くお礼申し上げます.
AREA1 外環道拡幅部 AREA2 外環道側単路部
AREA3 常磐道側単路部 AREA4 常磐道側拡幅部
完成写真
[報告] 寒冷積雪期における橋梁上部工事の現場施工 -国道 45 号 坪川橋上部工工事-
村上 大和 *
* 橋梁事業本部 工事統括工事一部工事一課
J-FaB 技報 No.2 (1)
1.はじめに 坪川橋は,東北縦貫自動車道八戸線を構成する天間林
道路の起点側で坪川河川上に位置している.架設場所の
青森県上北郡七戸町は,十和田湖の南東部にある田園地
帯の積雪地域であり,架設ヤード周辺も広大な田園に囲
まれている.
本橋の中央径間の橋梁下には坪川が交差しており,河
川管理者との協議により,河川内現場施工時期が渇水期
である11月~3月に制約された.そのため,冬季施工に
伴う積雪や凍結,季節風に伴う強風等により,安全およ
び品質面で過酷な環境での施工が予測された.
本稿では,寒冷積雪期における支承工,現場塗装工の
品質管理および輸送工の安全管理に対する留意点と対応
例について報告する.
本橋の施工位置および構造一般図を図-1,図-2に,
本橋の施工期間中の積雪状況を写真-1に示す.また,
工事概要を以下に示す.
工 事 名:国道45号坪川橋上部工工事
発 注 者:国土交通省東北地方整備局
工事場所:青森県上北郡七戸町
工 期:自)平成29年04月01日
至)平成30年03月23日
橋 長:171.0m
支 間 長:53.1+58.2+57.5m
幅 員:11.750m
形 式:鋼3径間連続5主鈑桁橋
縦断勾配:0.320%~0.712%
架設工法:クレーンベント工法
図-1 施工位置図
2.冬季施工時の課題
本橋の支承工および現場塗装工,輸送工は,冬季の12
月~3月に施工を行う必要があるため,過去の気象デー
タや地域特性から,積雪,凍結,低温等による品質低下
や安全性低下が予測された.以下に,各工種の施工時の
課題を挙げる.
2.1 支承工の課題
本橋の沓座アンカーホールは,最深部で1500㎜あり,
支承仮据付後にアンカーホール内が凍結した場合には,
解氷を行うことが困難となるため,アンカー部の凍結防
止方法が重要な課題であった.また,無収縮モルタル打
設後の材齢初期の凍害防止対策が必要であった.
(a) 橋梁側面図
(b) 橋梁断面図
図-1 構造一般図
写真-1 本橋施工時の積雪状況
日本ファブテック技報 No.238 日本ファブテック技報 No.2 39
J-FaB 技報 No.2 (2)
2.2 現場塗装工の課題
本橋の現場塗装工は,現場添接部外面の塗装を行うた
め,低温による塗料硬化不良,降雪および凍結による塗
装面の常湿化による品質低下が懸念された.
各塗装工程における外気温の作業禁止条件を表-1に
示す.
表-1 塗装作業禁止条件
2.3 輸送工の課題
本橋の搬入路は,敷鉄板による養生を行い,トレーラ
等の大型車両に必要なトラフィカビリティを確保してい
た.しかし,降雪・積雪時の搬入路路肩の視認性確保や
8%勾配のスロープ凍結時の通行性確保への対策が必要
であった.
3.解決策と適用結果
3.1 支承工の施工方法
支承据付前に,アンカーホール内への雨水や降雪等
による浸水を防止するため,シート養生を行うととも
に,万一の浸水に備えてアンカーホール内に不凍液を
注入することで凍結を防止した.
支承仮据付後は,支承全体をシート養生し,沓座内
への浸水を防止した.また,支承部無収縮モルタルの打
設時には,モルタル温度の急激な低下を防止するため,
沓座周囲を風防設備で囲い,打設後速やかに練炭によ
る給熱養生を実施した.
給熱養生は材齢 3 日までの期間とし,養生温度は
5℃以上になるよう管理した.また,気中試験体によ
る材齢3日の圧縮強度が無収縮モルタルの基準強度で
ある 25N/mm2 以上発現していることを確認後,風防設
備解体と脱型を行った.
これらの対策により,アンカーホールの浸水や凍結
を防止でき,初期凍害を防止することで無収縮モルタ
ルの品質と耐久性を確保した.
なお,凍結防止に使用した不凍液はモルタル打設前
に完全に除去,清掃して適切に処分した.
支承シート養生状況,不凍液の注入状況,風防設備
設置状況,および練炭による給熱養生状況を写真-2
から写真-5に示す.
3.2 現場塗装工の施工方法
本橋の現場塗装作業は,一般地域における作業と同
様に行うと,塗装箇所への積雪や凍結,塗料の硬化期
変性エポキシ樹脂塗料下塗(低温用) 5以下超厚膜形エポキシ樹脂塗料 5以下ふっ素樹脂塗料中塗 5以下ふっ素樹脂塗料上塗 0以下有機ジンクリッチペイント 5以下
塗 装 の 種 類 気温(℃)
写真-2 支承シート養生状況
写真-3 不凍液注入状況
写真-4 風防設備設置状況
写真-5 練炭による給熱養生
J-FaB 技報 No.2 (3)
間の長期化,既塗面の凍結による塗膜の脆弱化など,
低温や凍結・積雪が原因による品質低下が考えられる.
このため,本橋の現場塗装作業は,これらの気象条
件を克服するために,主桁地組立時はすべての主桁添
接部を風防設備で覆い,風防内に温熱設備を併用する
ことで作業環境を改善した.また,主桁架設後に塗装
する主桁添接部と二次部材添接部については,箇所数
が膨大となり個々に風防設備を設置することは非効率
となる.そのため,主桁上に鋼桁全体を覆うための上
屋設備を設けることで作業箇所への積雪を防止した.
これら風防設備の組立解体には,延べ 20 日間を要
した.したがって,本橋と同規模の従来鋼 I 桁橋の場
合には,通常の現場塗装工程の 2 倍の期間をあらかじ
め考慮する必要がある.
塗装作業時は,風防内部の温度,湿度が塗装禁止条
件にならないように計測管理し,作業環境を確認しな
がら施工を進めた.作業時の風防内温度は,地組作業
時には 10℃以上,および架設後作業時には 7℃以上,
並びに湿度は 85%以下で管理した.
また,風防設備内は閉ざされた空間となるため,作
業員の有機溶剤中毒を防止するために 30 分に一度の
休憩とダクトによる換気などの安全管理を行うことも
必要であった.
風防設備,温熱設備,上屋設備および温熱設備を写
真-6から写真-9に示す.
3.3 輸送工の施工方法
本橋の搬入路の幅員外には,スノーポールを積雪前
に設置し,積雪時の搬入路路肩の視認性を確保した.
また,積雪時にはタイヤショベルによる除雪作業を
行うとともに,スロープ部の敷鉄板に鉄筋を溶接する
ことで車両通行時の安全性を確保した.
スノーポール設置を写真-10,積雪時の除雪状況
を写真-11,スロープ部の鉄筋溶接状況を写真-1
2に示す.
写真-8 温熱設備稼働状況
写真-9 温熱設備ダクト配置状況
写真-10 スノーポール設置
写真-6 主桁地組時の風防設備と温熱設備
写真-7 主桁上の上屋設備
日本ファブテック技報 No.240 日本ファブテック技報 No.2 41
J-FaB 技報 No.2 (2)
2.2 現場塗装工の課題
本橋の現場塗装工は,現場添接部外面の塗装を行うた
め,低温による塗料硬化不良,降雪および凍結による塗
装面の常湿化による品質低下が懸念された.
各塗装工程における外気温の作業禁止条件を表-1に
示す.
表-1 塗装作業禁止条件
2.3 輸送工の課題
本橋の搬入路は,敷鉄板による養生を行い,トレーラ
等の大型車両に必要なトラフィカビリティを確保してい
た.しかし,降雪・積雪時の搬入路路肩の視認性確保や
8%勾配のスロープ凍結時の通行性確保への対策が必要
であった.
3.解決策と適用結果
3.1 支承工の施工方法
支承据付前に,アンカーホール内への雨水や降雪等
による浸水を防止するため,シート養生を行うととも
に,万一の浸水に備えてアンカーホール内に不凍液を
注入することで凍結を防止した.
支承仮据付後は,支承全体をシート養生し,沓座内
への浸水を防止した.また,支承部無収縮モルタルの打
設時には,モルタル温度の急激な低下を防止するため,
沓座周囲を風防設備で囲い,打設後速やかに練炭によ
る給熱養生を実施した.
給熱養生は材齢 3 日までの期間とし,養生温度は
5℃以上になるよう管理した.また,気中試験体によ
る材齢3日の圧縮強度が無収縮モルタルの基準強度で
ある 25N/mm2 以上発現していることを確認後,風防設
備解体と脱型を行った.
これらの対策により,アンカーホールの浸水や凍結
を防止でき,初期凍害を防止することで無収縮モルタ
ルの品質と耐久性を確保した.
なお,凍結防止に使用した不凍液はモルタル打設前
に完全に除去,清掃して適切に処分した.
支承シート養生状況,不凍液の注入状況,風防設備
設置状況,および練炭による給熱養生状況を写真-2
から写真-5に示す.
3.2 現場塗装工の施工方法
本橋の現場塗装作業は,一般地域における作業と同
様に行うと,塗装箇所への積雪や凍結,塗料の硬化期
変性エポキシ樹脂塗料下塗(低温用) 5以下超厚膜形エポキシ樹脂塗料 5以下ふっ素樹脂塗料中塗 5以下ふっ素樹脂塗料上塗 0以下有機ジンクリッチペイント 5以下
塗 装 の 種 類 気温(℃)
写真-2 支承シート養生状況
写真-3 不凍液注入状況
写真-4 風防設備設置状況
写真-5 練炭による給熱養生
J-FaB 技報 No.2 (3)
間の長期化,既塗面の凍結による塗膜の脆弱化など,
低温や凍結・積雪が原因による品質低下が考えられる.
このため,本橋の現場塗装作業は,これらの気象条
件を克服するために,主桁地組立時はすべての主桁添
接部を風防設備で覆い,風防内に温熱設備を併用する
ことで作業環境を改善した.また,主桁架設後に塗装
する主桁添接部と二次部材添接部については,箇所数
が膨大となり個々に風防設備を設置することは非効率
となる.そのため,主桁上に鋼桁全体を覆うための上
屋設備を設けることで作業箇所への積雪を防止した.
これら風防設備の組立解体には,延べ 20 日間を要
した.したがって,本橋と同規模の従来鋼 I 桁橋の場
合には,通常の現場塗装工程の 2 倍の期間をあらかじ
め考慮する必要がある.
塗装作業時は,風防内部の温度,湿度が塗装禁止条
件にならないように計測管理し,作業環境を確認しな
がら施工を進めた.作業時の風防内温度は,地組作業
時には 10℃以上,および架設後作業時には 7℃以上,
並びに湿度は 85%以下で管理した.
また,風防設備内は閉ざされた空間となるため,作
業員の有機溶剤中毒を防止するために 30 分に一度の
休憩とダクトによる換気などの安全管理を行うことも
必要であった.
風防設備,温熱設備,上屋設備および温熱設備を写
真-6から写真-9に示す.
3.3 輸送工の施工方法
本橋の搬入路の幅員外には,スノーポールを積雪前
に設置し,積雪時の搬入路路肩の視認性を確保した.
また,積雪時にはタイヤショベルによる除雪作業を
行うとともに,スロープ部の敷鉄板に鉄筋を溶接する
ことで車両通行時の安全性を確保した.
スノーポール設置を写真-10,積雪時の除雪状況
を写真-11,スロープ部の鉄筋溶接状況を写真-1
2に示す.
写真-8 温熱設備稼働状況
写真-9 温熱設備ダクト配置状況
写真-10 スノーポール設置
写真-6 主桁地組時の風防設備と温熱設備
写真-7 主桁上の上屋設備
日本ファブテック技報 No.240 日本ファブテック技報 No.2 41
J-FaB 技報 No.2 (4)
4.おわりに
本稿では,寒冷積雪期の上部工施工時の留意事項とそ
の対策例を中心に報告した.本橋のように,河川区域内
での架橋作業の場合では,渇水期での施工条件が付され
ることにより冬季施工となる場合が多い.冬季施工では,
支承工および現場塗装工における作業環境の整備改善,
ならびに日々の作業管理が品質管理上の重要な課題とい
える.また,本橋で示した対策を実施する際には,設備
整備の準備,撤去期間を考慮した工程計画も重要であり,
一般的な工程に加え,対策工程を考慮した全体工程の立
案が必要である.
今回の経験を今後の同種工事の施工に役立てていく所
存である.
完成写真
写真-11 搬入路除雪
写真-12 スロープ部の鉄筋溶接
[報告]供用道路近接におけるケーブルエレクション架設報告 -菅波大橋上部工工事-
山 崎 俊 幸*
* 橋梁事業本部 工事統括 計画技術部 副部長
J-FaB 技報 No.2 (1)
A2 橋台 A1 橋台
P2 橋脚 P1 橋脚
国道 6 号常磐バイパス
上り線
下り線架設地点
1.はじめに 本工事は,国道6号常磐バイパス4車線化事業として,
供用中の既設橋梁(上り線)に並行して下り線に上路式
逆ローゼ橋を建設する工事である.架設工法は,ケーブ
ルエレクション斜吊工法により行い,アーチリブ基部は
鋼コンクリート剛結構造を急峻地形に施工した.
常磐バイパスの事業は,いわき市内の交通混雑の緩和
と主要幹線道路機能の強化を目的として推進され,平成
30年3月30日に全線4車線供用となった.
工事概要を以下に示す。
(1) 工 事 名:菅波大橋上部工工事
橋 梁 名:菅波大橋(すぎなみおおはし)
(2) 発 注 者: 東北地方整備局 磐城国道事務所
(3) 工事場所:福島県いわき市平菅波字菅波入
(4) 工 期:自)平成28年12月29日
至)平成30年 3月20日
(5) 橋 長:110.0m
(6) 橋梁形式:上路式逆ローゼ橋
本橋梁の位置図を図-1,着工前を写真-1,構造一般図
を図-2に示す.
図-1 位置図
写真-1 着工前
図-2 構造一般図
本橋の特徴として,アーチリブ基部が鋼コンクリート
剛結構造,アーチリブ本体はバスケットハンドルタイプ
のため2本のアーチリブ間隔が変化し,鉛直面に対して
角度を有する.そのため支柱,アーチリブ横構・支材の
長さが一定でなく複雑な構造となっている.支間割は
17.5+74.0+17.5m,上り線との離隔は地覆端から0.3mで
ある.
2.架設時の問題点
施工ヤードは,国道6号常磐バイパス(以下現道)に
近接し,下り線幅(11.5m)の狭小ヤードである.施工
ヤード内にケーブルクレーンアンカーおよび鉄塔設備を
配置し,スムーズに工事用車両を施工ヤード内へ搬入,
搬出しなければならないこと.施工時の資機材落下およ
び飛散防止策,現道への部材侵入防止策が課題であった.
架設状況を写真-2に示す.
側面図
平面図(補剛桁)
平面図(アーチリブ)
断面図
端支点部 中間支点部 アーチリブ部
(主)いわき上三坂小野線 菅波大橋
夏井川
新川
常磐線 いわき駅
国道 6 号常磐バイパス
橋長:110.0m
橋長:110.0m
アーチスパン:74.0m
74.0m 17.5m 17.5m
総幅員:11.5m 有効幅員:8.0m 補剛桁間隔:6.0m
アーチリブ間隔:8.5m
A1 A2
P1 P2
A1 A2
P1 P2
G1 G2 G1 G2
AG2
AG1
日本ファブテック技報 No.242 日本ファブテック技報 No.2 43