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Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)中東事務所が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資 料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであ り、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果 については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い 申し上げます。 -1- <更新日:2007/9/6 > <中東事務所:石田 聖> *1 エジプトの母なる大河:ナイル川を基準に、同国北部を下部エジプト、南部を上部エジプトと呼ぶ習慣がある。 *2  「Dana Gas の挑戦 注目される湾岸地域初の民間ガス会社」 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/1/1746/0707_out_f_ae_danagas_kurd_iran_02 3 アラビア語で「神の祝福」の意 エジプト:上部エジプトで初の商業量石油の発見(短報) ■ 新興石油ガス企業である Dana Gas の躍進が続いている。 ■ 同社の子会社 Centurion 社は上部エジプト *1 で初の商業量の石油を発見した。 ■ 古くからスエズ湾での石油の生産、近年はナイルデルタ沖でのガスの生産が盛んなエジ プトではあるが、ナイル川上流域での石油発見は同国にさらなる探鉱ポテンシャルがあ ることを証明した。 1.南部エジプトで初の油田発見 湾岸初の民間ガス企業であるDanaGasについては、既に報告している *2 。DanaGas は、 2007 年春にカナダをベースとし、エジプトに探鉱・生産鉱区を有する Centurion 社(以下、セ 社)を買収し子会社とした。同社は、オペレータを務めるエジプト南部の Komombo 探鉱鉱区 にて掘削を進めていた Al Baraka-1 井にて商業量の石油を発見した。 この発見は、2007 年 9 月 3 日同国 Sameh Fahny 石油大臣の臨席のもと現地にて発表された。 同大臣により、2007 年 5 月に開坑した発見坑井は、それまで用いられていた Komombo-4 井 の名前に代わって、Al Barka-1 井と命名され、また発見された油田は Al Barka *3 油田とされた。 同発見式典には、アスワン州知事、同国石油資源委員会委員長も出席した。近年ガスに比し て生産が頭打ちの石油について、今回の発見は同国にとって新たな探鉱プレイがあることを証 明したものとなり、同国政府の期待が非常に高いことを示している。 発見坑井は、深度 8,712ft で掘り止められた。テスト対象層は北アフリカに広く分布するヌ ビア砂岩(Nubian Sandstone)の一部層で、下部白亜系の Abu Ballas 層である。テストでは、 同層の仕上げ区間 39ft から約 150b/d の油を産出している。原油は 37°API の軽質ハイワック

エジプト:上部エジプトで初の商業量石油の発見(短報) · Matiyah Trap Volcanics Baid (Shumaysi) (Umm Himar) (Usfan) (unnamed clastic) (Adaffa) SUQAH Khurmah

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Page 1: エジプト:上部エジプトで初の商業量石油の発見(短報) · Matiyah Trap Volcanics Baid (Shumaysi) (Umm Himar) (Usfan) (unnamed clastic) (Adaffa) SUQAH Khurmah

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)中東事務所が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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<更新日:2007/9/6 > <中東事務所:石田 聖>

* 1 エジプトの母なる大河:ナイル川を基準に、同国北部を下部エジプト、南部を上部エジプトと呼ぶ習慣がある。* 2  「Dana Gas の挑戦 注目される湾岸地域初の民間ガス会社」

http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/1/1746/0707_out_f_ae_danagas_kurd_iran_02* 3 アラビア語で「神の祝福」の意

エジプト:上部エジプトで初の商業量石油の発見(短報)

 ■ 新興石油ガス企業である Dana Gas の躍進が続いている。

■ 同社の子会社 Centurion 社は上部エジプト* 1 で初の商業量の石油を発見した。

■ 古くからスエズ湾での石油の生産、近年はナイルデルタ沖でのガスの生産が盛んなエジ

プトではあるが、ナイル川上流域での石油発見は同国にさらなる探鉱ポテンシャルがあ

ることを証明した。

1.南部エジプトで初の油田発見

 湾岸初の民間ガス企業である DanaGas については、既に報告している* 2。DanaGas は、

2007 年春にカナダをベースとし、エジプトに探鉱・生産鉱区を有する Centurion 社(以下、セ

社)を買収し子会社とした。同社は、オペレータを務めるエジプト南部の Komombo 探鉱鉱区

にて掘削を進めていた Al Baraka-1 井にて商業量の石油を発見した。

 この発見は、2007 年 9 月 3 日同国 Sameh Fahny 石油大臣の臨席のもと現地にて発表された。

同大臣により、2007 年 5 月に開坑した発見坑井は、それまで用いられていた Komombo-4 井

の名前に代わって、Al Barka-1 井と命名され、また発見された油田は Al Barka * 3 油田とされた。

 同発見式典には、アスワン州知事、同国石油資源委員会委員長も出席した。近年ガスに比し

て生産が頭打ちの石油について、今回の発見は同国にとって新たな探鉱プレイがあることを証

明したものとなり、同国政府の期待が非常に高いことを示している。

 発見坑井は、深度 8,712ft で掘り止められた。テスト対象層は北アフリカに広く分布するヌ

ビア砂岩(Nubian Sandstone)の一部層で、下部白亜系の Abu Ballas 層である。テストでは、

同層の仕上げ区間 39ft から約 150b/d の油を産出している。原油は 37°API の軽質ハイワック

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Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)中東事務所が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

図 1 発見井の位置および周辺の地質

出所:鉱区図に AAPG Bull.(参考文献リスト参照)を合成して作成地質図の桃色部分は先カンブリア代の花崗岩を主体とする基盤岩類、黄色部分はヌビア砂岩、緑色部分は上部白亜系~第四系。発見井の周りの緑の表示はセ社が抽出したプロスペクト位置

ス原油で、スーダン産の原油とよく似ているという。同テスト区間のほかにも下部白亜系で 3

区間がテストされており、それぞれで原油を産出している。

図 1 に発見井の位置および周辺の地質図、図 2 に発見の層準を示した。

 上部エジプト(ナイル川上流)地域は、1980 年代までは探鉱対象地域としてさかんにポテ

ンシャル評価が行われていたが、探鉱では目立った成果が出されなかった。その後、ナイルデ

ルタ沖の「ガスブーム」もあり、一時的に顧みられなかった時期もあった。90 年代後半からは

今回の発見鉱区では、Repsol が探鉱活動を行い、1997 年~ 1998 年に 3 試掘井が掘削された。

同坑井では油ガス徴は得られたものの、いずれも商業量には達せず、同社は撤退した。

!

NUQRA

WEST KOMOMBO

KOMOMBO(BLOCK-2 Ganope)

31°E

31°E

26°N

25°N

24°N

26°N

25°N

24°N

32°E 33°E 34°E 34°E

34°E32°E 34°E

エルカルガ

ルクソール

イドフー

クセイル

アスワン

発見井Al Baraka-1

紅 海

ナセ

ル湖

アスワンハイダム

ナ イ

 ル

 川

Komombo

ISIS

HORUSHEKA

1

2

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)中東事務所が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

図 2 石油発見層準

出所:USGS オープンファイル(参考文献リスト参照)より作成。表示した緑丸(推定産出層準)以外は同資料をそのまま引用層序を示した位置は紅海堆積盆地にあり、本論での層序とは正確には異なる。

 ヌビア砂岩については、貯留岩物性は満足されるものの、単調で厚い陸成砂岩であることから、

石油を胚胎できるだけのシールに乏しいとされている。また、同砂岩の下位まで掘り込んだ坑

井が少ないことから、根源岩性状については不明の点が多い。今回の発見はその原油性状から、

湖沼成のリフト堆積物が根源岩となっている可能性もあり、厚いヌビア砂岩の下位に、スーダ

ンなどで主要産油地域を形成している中生代リフトとが伏在している可能性があることは否定

できない。

AGEMa SYSTEM SERIES

GULF OF SUEZ - EGYPTNOMENCLATURE

SUDAN-ERITREANOMENCLATURE

SAUDI-YEMENNOMENCLATURE

OLIGO- CENE

TERTIARYEOCENE

PALEO- CENE

CR

ETA

CE

OU

S

SE

NO

NIA

NN

EO

CO

MIA

N

JURASSIC(N. GOS and

S. Red Sea only)

TRIASSICPERMIAN

CARBONIFEROUSDEVONIANSILURIAN

ORDOVICIANCAMBRIAN

PRECAMBRIAN

25

30

35

40

45

50

55

60

65

70

75

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85

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115

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VALANG- INIAN

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Volcanics

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(Shumaysi)

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Y Mukattam (Mokatam)

Minia

Thebes (Egma)

( Sudr, Dakhla)

Sudr Formation

(Duwi, Brown)

Madi, Tanka

Y

ElEgma

Matulla, Quseir

Wata

RahaNezza- zat

Malha

Nubia A

(El Tih)

Nubia B

Nubia C, D

Naqus (C), Araba (D)(Qibliat)

Ataqa, Aheimer/Rod El HamalUmm Bogma

Raqaba, Qiseib

Bir MagharaShusha, Rajabiah

Antalo Hanifa Amran

Hammamat

YY

Abu Durba,

MadbiAgula

Khatatba,

Abu Qada

Esna

Darat

Khababa (Khaboba)Samalut

EXPLANATION: This chart is a compilation of stratigraphic nomenclature of the Red Sea region from many sources. It is not intended to be precise with respect to geologic age or correlation. CONT = continental.

Tenmariya

Effective source rockPotential source rock Oil production (reservoir rock)

Oil show (reservoir rock)Mostly shaleMostly carbonate

Um Gurdi,

Pre-Senonian notpenetrated.

Pre-Senonian notpenetrated and/ornot reported.

Burg El Arab, Masajid,Safa

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Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)中東事務所が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

2.躍進する Dana Gas

 セ社は、エジプトにおいてナイルデルタおよびスエズ湾の生産鉱区の他に 26,000km2 の探

鉱鉱区(W. Manzala、W. Qantara、Komombo(Block 2 Ganope))を保有している。

 2007 年 6 月、Dana Gas がセ社買収後、はじめての探鉱井がナイルデルタで成功した。El

Wastani 生産鉱区内で掘削されたこの坑井は、すぐに生産井に転用され、すでに El Wastani 油

田の生産設備に接続されている。2007 年 5 月時点では、同社はエジプト国内で 7 探鉱井と 5

開発井の掘削を実施する計画であるとしていたが、この成功をうけて 2007 年末までに 12 探鉱

井の掘削を実施するとの強気のコメントも出している。

 今回の発見のあった Komombo 探鉱鉱区については、2007 年 4 月にその 50%を KIOEC(Kuwait

International Oil & Environment Company)にファームアウトしている。

 DanaGas は、今回の発見によって南部地域でも早期生産の体制を構築するという。発見油田は、

カイロから約 700km ナイル川をさかのぼった地点で、最寄りの製油所のあるアシュートまでも

約 320km あるが、幸いなことにカイロ~アスワンへの主要鉄道が近傍を通過しており、生産原

油の輸送は、当初列車輸送になるものと思われる。

 既報のとおり DanaGas は、証券市場上場によって 700 億ドル以上の巨額の上場益を得ている。

さらに、中東・北アフリカ産油国に強固な人脈があることから、今回の発見をステップにさら

に拡大路線を進むものと思われる。

 

【参考文献】Gulf News(ドバイの日刊紙)2007/9/4、2007/9/5USGS Open-File Report 99-50-A The Red Sea Basin Province : Sudr-Nubia and Maqna Petroleum

Systemhttp://greenwood.cr.usgs.gov/energy/WorldEnergy/OF99-50A/

Nubia Formation of Central Eastern Desert, Egypt - Major Subdivisions and Depositional Setting AAPG Bull. V.63, No.6, P.975-983

Centurion International Corporate Presentation, September 2006http://www.centurionenergy.com/pdf/Centurion_presentation.pdf

この記事は pdf ファイルで提供しております。図面は拡大印

刷しても解像度がおちませんので、必要図面は拡大プリント

アウトしてお使いください。

2007 年 4 月より、JOGMEC 中東事務所の管轄エリアに東ア

フリカが加わりました。